中学入試問題は「最初の授業」といわれています。その学校の社会科の先生が、いま子どもたちにいちばん考えてほしいテーマを選んで、オリジナルの問題文を執筆します。「いまの社会のここがおかしい。ここを変えていかなきゃいけない。そのためにはどんな方法があるか?」という問題意識が込められています。拙著『中学入試超良問で学ぶニッポンの課題』でも述べているとおり、中学入試の社会科は現実社会を映す鏡なのです。 たとえば2022年の麻布中学の問題文のテーマは日本に暮らす外国人です。小学生の子どもでもよく利用するコンビニのシーンから文章は始まり、日本が東アジアで植民地支配を行っていたころの歴史をさかのぼり、その経緯から、さまざまな立場の外国にルーツをもつ人々が日本社会のなかに溶け込んで暮らしていることを解説してくれます(表1が問題文に添えられている)。