2017年、アメリカ国家安全保障局(NSA)の契約社員リアリティ・ウィナーが逮捕された。2016年の大統領選にロシアのハッカーが介入していた疑惑に関する報告書、すなわち国家の機密書類をメディアに漏洩した疑いだ。ドナルド・トランプ政権を揺るがすスキャンダルは世界を驚愕させ、リアリティは「第二のスノーデン」として注目を浴びた。 映画『リアリティ』は、FBIによるリアリティ本人への尋問音声記録を、ほぼリアルタイムで完全再現するという、野心的な仕掛けで世界中から注目された心理スリラーだ。監督・脚本は、ニューヨークの演劇界で注目される気鋭の劇作家ティナ・サッター。2019年に自身が手がけた舞台『Is This A Room(原題)』をもとに、緊迫感が終始持続する充実の82分間をつくりあげた。 なぜ、リアリティ・ウィナーという人物に注目したのか。リアリティを通じて見えるアメリカ社会とは。そして、「尋問