中国南部の広西チワン族自治区の町、三江。そこは「紫血」という、料理名に思えない不思議な食べ物が存在した。聞けば、「生の豚の血の和え物」だという。本当は「豚血(ジュシュエ)」なのだが、これではあまりに外聞が悪いので、似た発音である「紫血(ズシュエ)」に呼び名を変えたとか。 私と、同行していた大学探検部のヤマダ先輩はこれを「血豚」と勝手に名付けた。 町でも血豚が美味しいことで知られるレストランに行くと、「これはちょっと特別な料理だから予約がないと出せない」と言われた。血を市場に買いに行く必要があるという。そこでその場で翌日分を予約した。料理の場面も見学させてもらうことにした。 当日の昼、店を再訪したが、二人してなんだか気が重い。やっぱり豚の生血はあんまり食欲をそそられない。とても美味そうに思えないし、生の豚は病原菌や寄生虫の宝庫として知られる。 でも行かないわけにはいかない。店を訪れるとオーナ
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