「人類学」という言葉を聞いて、どんなイメージを思い浮かべるだろう。聞いたことはあるけれど何をやっているのかわからない、という人も多いのではないだろうか。『はじめての人類学』では、この学問が生まれて100年の歴史を一掴みにできる「人類学のツボ」を紹介している。 ※本記事は奥野克巳『はじめての人類学』から抜粋・編集したものです。 『地獄の黙示録』、ふたたび 人類学の発展に多大な影響を与えたひとりに、フレイザーという人物がいます。彼の著作として有名なものは、なんといっても『金枝篇』です。内容は知らなくても、この本のタイトルだけは聞いたことがある、という人は多いのではないでしょうか。『金枝篇』は1890年から1936年にかけて公刊された、十三巻からなる労大作です。 『金枝篇』は、古代ローマのネミ湖のほとりにある神聖な森の祭司であり王である人物が、前任者を殺すことによってその地位を継承するという伝説