東日本大震災発生から約30分後、津波発生源上空の電離層(高度80〜300キロ)を構成する電子の数が通常より30%減る異常現象が起きていたことを、北海道大学の柿並義宏・研究員(超高層大気物理学)と東京学芸大学の鴨川仁(まさし)助教(大気電気学)のチームが発見した。電離層の異変は、東北地方沿岸に大津波が押し寄せる前に始まっており、大津波の早期検出と避難指示に役立つ可能性がある。 この異常現象を「電離層ホール(穴)」と命名し、米地球物理学会誌に発表した。 チームは、全地球測位システム(GPS)に使われる電離層と地上の間を行き来する電波のデータを分析した。 その結果、地震と津波が発生した9分後の昨年3月11日午後2時55分から、津波の発生源のほぼ真上(北緯142度、東経38度)で電子の数が減少し始めたことが分かった。午後3時10分に減少率は最大30%に達し、徐々に元に戻った。一方、その周辺でも数が
金環日食で地面の影が濃淡二重に見える珍しい現象を、滋賀県米原市の小中学生13人が、21日の観測会で見つけていた。 同県の共同観測実行委がこのほど発表した。参加した小中高8校約650人の感想文を集計すると、13人が「影が二重に見えた」と回答。石川、兵庫、京都でも同様の報告があるという。 「太陽のリングの両端から出た光の角度の差が原因らしい」と同委。「空ばかり見上げていた大人にはとても気付かない」と、下も見ていた子どもの柔軟な視点に舌を巻いた。【松井圀夫】
「あいつは明らかに世の中を憎んでいた。社会的な理不尽や不平等に対する強い怒り。既存の勢力に対する激しい憤り、憎しみ。ものすごく大きなエネルギーを感じた」 兵庫県明石市の泉房穂市長(48)は、第49期司法修習生=1995年研修所入所=の同期、橋下徹・大阪市長(42)の印象をそう語り始めた。 修習生時代、橋下氏と同じラグビー同好会に所属。衆院議員(民主党)を経て昨年5月に市長に就任した。同じ自治体トップとして橋下氏をよく知る人物の一人だ。ラグビーの練習後に聞かされた話を今も覚えている。 「橋下は破れた革ジャンをタダ同然で仕入れて1着3万円とか5万円で売って大学を卒業したと言っていた。『破れたやつを売ったらまずいやろ』と言うと『どこが悪いんですか。気付かずに買うのはお人よしや』と」。あっけらかんとした物言いには、同じように苦学して大学を卒業したこともあり驚いた。 「橋下の大きなエネルギーは確かに
全国に暴風雨をもたらした「爆弾低気圧」の成因について、気象庁気象研究所は6日、対流圏とより上部の成層圏の境目(対流圏界面)がくぼみ、その境目に沿い気流が上昇したことで、きれいな渦を巻く台風に似た構造になったとする分析結果を公表した。【池田知広】 一般的に気象の変化が起こるのは対流圏までで、対流圏界面はいわば気象現象の「天井」となる。気象研によると、地球規模の大気の蛇行に伴い、対流圏界面が通常の高度1万メートル付近から5500メートル付近まで下降。これが低気圧の西側に位置したため、くぼみの下部から界面に沿って気流が上昇する形となった。 また対流圏界面が降下した影響で、気圧の谷が日本海上でも列島の近くに入り込み、東シナ海の暖かく湿った空気(暖湿流)が対馬海峡を通って気圧の谷へ流入。暖湿流の水蒸気が上昇して凝結する際に放出された熱で、低気圧付近の上昇気流が一層強められた。
【モスクワ大前仁】ロシア大統領選挙は4日夜(日本時間5日深夜)、投票が締め切られた。出口調査の結果、ウラジーミル・プーチン首相(59)が約58%を獲得し、他の4候補を引き離し当選を決めた。08年以来4年ぶりの復帰で、第4代大統領となる。ロシア大統領経験者の返り咲きは初めてで、08年の憲法条項改正で、任期は4年から6年に伸ばされた。5月7日に就任式を迎える。 ロシアでは昨年12月の下院選での不正疑惑を発端にした抗議運動が広がったが、最有力候補のプーチン氏が批判を抑えて逃げ切った格好だ。 プーチン氏は08年5月に大統領を退任した後も、後継のメドベージェフ大統領(46)から首相に指名されて、2人で統治する「双頭体制」を敷いてきた。大統領復帰後はメドベージェフ氏を首相に起用する方針で、成長と安定に重点を置いた政策を継続する。
大阪市の橋下徹市長が、市職員からの内部告発などをメールや手紙で受け付け始めたところ、多くの「通報」が寄せられていることが市への取材で分かった。橋下市長は自分のメールアドレスを全職員に公開、「(通常の)ラインでは上がってこない貴重な情報がどんどんくる」と独自の情報収集術に胸を張る。しかし、「密告奨励」とも取れる手法で、「職場がギスギスし始めた」との声が出ているほか、専門家も「職員同士の連帯を損なう」と指摘している。 「(市の労働)組合の意向で昇任試験の受験を遅らされた」「組合に迎合する(区役所の)総務課長だと、組合(の人事)案を受け入れてしまう」 昨年末に橋下市長が就任した際、職員から複数のメールが寄せられた。労働組合が市の人事に介入しているとの証言で、橋下市長は不当な介入がないか、調査を指示した。 年明けには市教育委員の視察に関する情報もメールで寄せられた。今月10日の市長と教育委員の意見
大阪市の橋下徹市長が市教育委員会に対し、2014年度末をめどに、市立小学校(全297校)を統廃合する再編プランの作成を指示したことが分かった。児童数が減少し、市教委が統廃合対象としている小学校は全体の約3分の1に当たる101校。これまでは住民の反対もあって進まなかったが、橋下市長は、一定の区域で学校を選べる「学校選択制」を導入し、学校間の競争を促して統廃合を加速させる考えだ。【林由紀子】 市教委によると、同市内の児童数は79年度に約24万人だったが、10年度は約12万人と半減。一方、学校数は290校から297校と逆に増加した。統廃合の対象になっているのは、学校全体の学級数が11学級以下で、1学級しかない学年が存在する学校。全学年で1学級以下の学校も47校ある。このため、有識者でつくる市学校適正配置審議会は10年に答申を出し、1学校で12~24学級を「適正規模」とし、11学級以下の小規模校を
東日本大震災で、東京電力福島第1原発事故の対応を指揮した陸上自衛隊中央即応集団の宮島俊信・前司令官(58)が、毎日新聞の単独インタビューに応じた。深刻さを増す原発、見えない放射線の恐怖の中で、「最悪の事態を想定し、避難区域を原発から100~200キロに広げるシミュレーションを重ねた。状況によっては関東も汚染されるので、日本は終わりかと考えたこともあった」と緊迫した状況を明かした。 自衛隊が警察や消防などの関係機関を指揮下に置いて任務に当たったのは自衛隊史上初めて。しかし、自衛隊に暴走する原子炉を止める能力はない。宮島さんは「ヘリコプターによる原発への放水は、本格的な冷却装置ができるまでの時間稼ぎにすぎなかった。高濃度の放射能などへの不安はあったが、我々がここまでしなくてはいけなくなったというのは、かなり危険性があるという裏返しだった」と語る。 その上で、「危険に立ち向かってでも事故を抑える
厚生労働省は24日、生活保護費の抑制策として、12年度から福祉事務所に「医療扶助相談・指導員」(仮称)を配置し、診察を受ける生活保護受給者に安価な後発医薬品(ジェネリック)の服用を促す方針を明らかにした。これにより、保護費を141億円(国費ベース106億円)削減するという。ただ、後発薬には不信感を抱く医師もいる。同省は「本人の意向を尊重する。強制ではない」と説明しているが、額面通りには受け止められない可能性もある。 生活保護受給者が医療機関にかかる時は原則、事前に福祉事務所から医療券の発行を受ける。その際、12年度以降は薬剤師や看護師の資格を持つ相談員が受給者と面談し、後発薬の使用を促すことにした。本人の了解が得られれば、薬局で後発薬を選んでもらう。 厚労省は日本医師会や日本薬剤師会にも、理解を求める文書を出す。一度後発薬を使用した受給者の6割程度は、先発薬へ切り替えずに後発薬の服用を続け
子ども手当に代わる来年度からの新たな手当について、財務、総務、厚生労働などの関係4閣僚は20日協議し、焦点だった国と地方の負担割合を「2対1」とすることで合意した。地方の負担額は今年度の5500億円から7800億円程度に増えるものの、厚労省の当初案9800億円よりは2000億円程度圧縮された。地方側も同日の「国と地方の協議の場」で大筋了承した。 また、政府は新手当の名称を「子どものための手当」とし、所得制限額を夫婦と子ども2人の世帯で「年収960万円以上」と明確化、旧児童手当で会社員より基準額が低かった自営業者も同一水準とした。所得制限世帯への支給は1人一律5000円と決めた。ただし、自民、公明両党は新手当の協議に応じる姿勢を示しておらず、政府案通り実施できるかどうかは不透明だ。 現行の子ども手当を続けた場合、来年度の地方負担は5400億円となる。厚労省は当初、年少扶養控除廃止による地方増
落ち葉や雑草などから放射性セシウムを完全に除去する方法を、千葉大工学部の片山栄作特別研究員(62)=元東大医科学研究所教授=と群馬県渋川市の阿藤工務店専務、川上勇さん(63)が開発した。セシウムが葉や茎に含まれる「プラントオパール」(植物石)と呼ばれる粒子に結合していることを突き止め、プラントオパールを分離することでセシウム除去に成功。片山さんは「さまざまな除染に応用できる」と期待している。 2人は放射性セシウムに、雲母などケイ酸化合物を主成分とする鉱物と強く結合する性質があることに着目。同じ主成分のプラントオパールにも同様の現象が起きるとの仮説を立てて実験した。 福島県南相馬市で11月中旬、刈り取られた雑草570グラムを水分が蒸発しないよう密封。どろどろの液状に腐らせた後の12月10日に測定すると、1キロあたり2万8924ベクレルの放射性セシウムが計測された。これに水を加えてコーヒーフィ
酵素液に浸した生分解性プラスチック製マルチフィルムの断片(右)。30分後に完全に分解した。左側は普通の水に浸した断片=茨城県つくば市の農林水産技術会議事務局筑波事務所で、安味伸一撮影 農業環境技術研究所(茨城県つくば市)は、生分解性プラスチック(生プラ)製の農業用フィルムを短時間で分解する酵素を大量生産する技術を開発した。この酵素を農地に張った生プラ製フィルムに散布すると、半日程度で穴が開くほど分解が早まる。必要な時に現場で消滅させることができ、生プラを多彩な分野に応用できるようになるという。 30日~来月2日に千葉・幕張メッセで開かれるアグリビジネス創出フェアに出展する。 生プラは微生物の働きで自然に分解される。農業の現場では、回収の労力とごみの量を減らすため、さまざまな生プラ製資材が使われ始めた。ただ、生プラの分解時期は人為的に決めることができず、数カ月は分解しない。 農環研は08年、
厚生労働省は、求職者支援制度に基づく職業訓練を受ける生活保護受給者が理由なく訓練を中断した場合、生活保護を打ち切ることを検討する方針を固めた。同省は「本人が訓練を希望し、ハローワークも就労の可能性が高まると認めたのに合理的な理由なく欠席を続けた場合などを想定している」と説明するが、就労支援強化の名目で安易な打ち切りが乱発される懸念もある。 7月時点で生活保護受給者は205万人を突破し、過去最多を更新。保護費も今年度予算で3.4兆円に達している。厚労省は東京都や大阪市などと協議を続け、今回の方針は12月のとりまとめに盛り込まれる見通し。 求職者支援制度は失業者らが無料で職業訓練を受けられ、10月から法に基づく制度として恒久化された。低収入の場合は月10万円が支給され、生活保護との併用も可能だ。 厚労省保護課は「稼働能力があるのに保護に頼るのは望ましくない。しかし訓練を無理やり受けさせるという
京都大生存圏研究所(京都府宇治市)の矢野浩之教授(生物材料学)は21日、カニの甲羅を透明にすることに成功したと発表した。熱に強く柔らかな材料として、有機ELディスプレーや太陽光発電の素材への応用が期待できるという。英国王立化学会の専門誌「ソフトマター」に掲載される。 カニの甲羅は、「キチン」という高分子の極めて細い繊維からできている。研究グループは、化学処理してたんぱく質などを除いた甲羅に、アクリルなどの樹脂を染み込ませると透明化することを発見した。 この原理を応用し、たんぱく質などを除いた甲羅を粉末にして紙でろ過し、樹脂を加えて透明シートを作製。シートはキチン繊維の効果で、元の樹脂より10倍も熱に強く、ディスプレー基板にも十分な強度があるという。ガラスと違ってロール状にもでき、加工も容易だ。 矢野教授は「カニやエビだけでなく、将来は植物繊維も利用できるだろう。バイオマス資源の可能性がさら
◇キーワードは自己充足 世代間格差が話題だ。「若者がかわいそう」だの、「かわいそう」はウソだの、若者以外が騒いでいる。ところが26歳の社会学者、古市憲寿(のりとし)さんはいう。「世代間格差に一番怒ってるのは40代のオジサン世代じゃないですか」。ええっ!? 40代としては聞き捨てならない。ならば聞かせてもらいましょう。「若者ってかわいそうではないの?」【小国綾子】 ◇気の合う仲間と日常を楽しみ、案外社会に真剣に向き合って、自分にできることをしようと、まじめに思ってる 古市さんは現在、東大大学院生。9月には「絶望の国の幸福な若者たち」(講談社)、10月には社会学者の上野千鶴子さんとの対談集を出版した。ポスト・ロスジェネ世代の若者論の旗手として、今やメディアで引っ張りだこだ。 待ち合わせ場所は、昼下がりの東大本郷キャンパス(東京都文京区)。古市さんと同世代の意見も聞きたくて、研究仲間の大学院生(
ヨーロッパ南天天文台(ESO)が発見した惑星「HD85512b」(手前)の想像図。恒星との距離が適度で、液体の水が存在しうる「生命居住可能領域」内で見つかった惑星としては2番目。生命が存在するかもしれない=ESO/M.Kornmesser提供 ヨーロッパ南天天文台(ESO)は、星座の「ほ座」の方向に35光年離れた宇宙で地球によく似た岩石質の惑星を発見したと発表した。恒星から適度に離れ、液体の水が存在しうる「生命居住可能領域」の中にぎりぎり位置しているため、生命が存在する可能性があるという。 惑星の名は「HD85512b」。南米チリの惑星探査装置を使って見つけた。質量は地球の3.6倍で、大気中に雲が十分あれば海があり得るという。惑星は全体的に蒸し風呂のように高温多湿とみられる。 生命居住可能領域内での惑星の発見は、てんびん座方向に20光年離れた「グリーゼ581d」(07年)に次いで2番目。【
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