漫画家、手塚治虫が描く天才外科医ブラック・ジャックに、妙に記憶に残るセリフがある。 「ボンカレーはどう作ってもうまいのだ」 大塚食品(本社・大阪市)が昭和43(1968)年に発売した、世界初とされる市販のレトルト食品「ボンカレー」。あらかじめ調理されたカレー1食分が個別包装されており、短時間温めるだけ。誰がどう作っても味は変わりようがない。ラーメンなど他のインスタント食品と比べても、お湯を注ぐという一手間さえいらない。極めて手軽な“料理”だった。 画期的なレトルト食品だが、発明自体は日本オリジナルというわけではない。 日本缶詰協会によると、レトルト食品の研究は1950年代、アメリカ陸軍の研究所で始まったという。重くて携行性が悪い缶詰に代わる、新しい形の保存食を目指した。真空状態で密封できる包装材の開発など実用化は順調に進み、61年に始まったアポロ計画では宇宙食として採用された。