食料自給率はゼロでもかまわない。誤解を恐れずに言えば、安全保障の観点からは、そう断じることが出来る。ここ何日かのアゴラでの議論を拝見していると、安全保障上の理由から食料自給率を一定以上にすべきとの意見が散見される。しかし、そうした議論は日本語が通じる範囲での議論でしかないし、軍事的観点を無視した議論である。もっというならば、太平洋戦争という人類史上極めて特殊な戦争を一般化した議論でしかない。本稿では、軍事的、政治的な観点から見た場合、「シーレーン途絶がありえないこと」を根拠に食料自給率議論の無意味さを主張したい。 シーレーン切断は軍事的、政治的に不可能 1.純軍事的説明 食料自給率を上昇させるべきという議論の根拠にされるのが、太平洋戦争で発生したようなシーレーン途絶が起きたら・・・という前提である。しかし、そうした現象を起こすのは軍事的・政治的に不可能だ。まず、軍事的理由としては、(1)「