JR水道橋駅は、人でごった返していた。3月9日。みな、そろって同じ方向へ歩みを進めた。西口から後楽橋を渡ると、目的地は見えてきた。東京ドーム。WBCの日本の初戦(対中国)ということもあり、人の数は異常だった。まして大谷翔平(28=エンゼルス)が先発するということもあり、球場周辺には「OHTANI」のユニホームを着た子どもたち、仕事終わりのサラリーマンであふれていた。 そこから約50メートル手前だろうか。球場に吸い込まれる笑顔の人々とは相反し、どこか神妙な面持ちで6階建てのビルに入って行く人たちがいた。多くの人々は「原田大輔」のグッズを持参している。目的地は5階の後楽園ホールだった。日本中がWBCに熱視線を送る中で、プロレスリング・ノアの原田大輔の引退試合がひっそりと行われた。 36歳。現役引退には、まだ早いとも思える年頃。それは突然だったという。昨夏。ノアが定期的に行っている健康診断で、M