すでに秋である。 森見登美彦氏はこの夏のことを振り返っている。 アニメ「有頂天家族」は登美彦氏に良い想い出をたくさんもたらしてくれた。南座のイベントに始まり、監督たちとたくさん喋り、富山のPAワークスへ遊びに行ったり、監督のサイドカーにのせてもらったり、人生で初めてオーディオコメンタリーに出たり、諏訪部氏と能登さんを京都に迎えて倉の中にある酒場でお酒を飲んだり、下鴨神社で皆さんと対談したり、とにかくさまざまな経験をしたのであった。 アニメの世界は豊かに膨らんだが、ここで原作の世界に目を転じると、登美彦氏は渋い顔になる。 続篇の執筆はなかなか進まないからである。 まさかアニメが終わりを迎えてもなお、終わりが見えていないとは。 これは登美彦氏が思い描いていた秋ではない。 「別の宇宙に迷いこんでしまったに違いない……宇宙が悪い、宇宙が……」 しかし、筆者はここで登美彦氏のために弁明しない。 登美