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ブックマーク / sakstyle.hatenadiary.jp (15)

  • デイヴィッド・M・アームストロング『現代普遍論争入門』(秋葉剛史訳) - logical cypher scape2

    普遍についての現代形而上学の入門書 普遍論争というと中世スコラ哲学が連想されるだろうが、現代の哲学においてもなお論争の続いているトピックである。 普遍についての問いというのは、「トークンa、b、c……が同じタイプFであるとはどういうことか」というもの よくある例で恐縮だけど、リンゴとかトマトとか郵便ポストとか太陽とかはみな「赤い」。つまり、同じ「赤い」というタイプのトークンなんだけど、それは一体どうやったら説明出来るのか、と。 (ここでは「赤い」という性質を例に挙げたが、「aはbより前にある」とか「aはbを愛している」とかいった関係もまた書では同様に扱われている) これに対して、アームストロングが6つの立場(さらにもう少し細かく分かれるけど)について解説し、それぞれの道具立てや問題点を挙げ、比較を行っている。 各説の問題点などを比較考量した上で、その中でも最も伝統的な立場である普遍者説(

    デイヴィッド・M・アームストロング『現代普遍論争入門』(秋葉剛史訳) - logical cypher scape2
  • スティーブン・ピンカー『心の仕組み』 - logical cypher scape2

    ちくま学芸文庫になったのでそっちの方で読んだ。 心の科学についてまとまって読める。 すなわち、認知科学(心の演算理論)と進化生物学(自然淘汰による進化論)が合体した進化心理学による、心の説明である。 心は進化によってデザインされた演算装置であるというのを筋として、多くの研究を紹介している。だから、ピンカー自身の研究について書かれているというのではなく、心の科学に関する様々な分野の研究が次々と出てくる。もちろん、心理学が中心ではあるが、人類学などもよく出てくる。そういう意味で、教科書的なともいえる。 また、このはいわゆる「左翼」からの反論を想定していて、人間の心はタブラ・ラサで経験によって(社会や文化に相対的に)形成されるものだという考えへの反駁と、科学的判断と倫理的判断は分けて行うようにという注意を再三している。例えば、男性は女性に対してレイプなどの暴力をふるいやすい傾向があるというの

    スティーブン・ピンカー『心の仕組み』 - logical cypher scape2
  • 高井研『生命はなぜ生まれたのか――地球生物の起源の謎に迫る』 - logical cypher scape2

    この前、しんかい6500のニコ生を見て高井さんが面白かったので、読んでみたw (前から読もうと思っていたではあったけど) そこかしこにネタを挟んでくる軽い文体で進むのだが、内容はかなり濃い 非常に面白いだった 生命の起源についての自説を紹介しているなのだが、それに対するライバルの話もしていて、研究者たちが鎬を削っているさまが読み取れるのも楽しい。 また、周辺分野(地質学)などについては、著者は改めてを読んだり同僚研究者に話を聞いたりして書いていたようなのだが、文中で「今、わかった!」みたいなことが書いてあったりする ネタ的な意味での面白ポイントもひろっていきたいが、そんなことをするときりがないので、以下はそういうのは削って、淡々と内容についてまとめておこうかと思う。それだけでも十二分に面白いと思うが、書の面白さの全てを伝えるものではない。 第1章 生命の起源を探る、深海への旅

    高井研『生命はなぜ生まれたのか――地球生物の起源の謎に迫る』 - logical cypher scape2
  • ロバート・ステッカー『分析美学入門』 - logical cypher scape2

    その名の通り、美学の入門書であり、複数のトピックについて基的な議論が紹介され、各章末には練習問題と参考文献が付されている。 また訳注も充実しており、時に、いわゆる分析哲学における議論の進め方についての一般的な解説とでもいうべきようなものまで書かれている。 あと、表紙のデザインがよい。 ちなみに原題は、Aesthetics and the Philosophy of Art: an Introductionであり、分析美学の名はない。「現代英語圏における美学と芸術の哲学」といった方がよりよいのかもしれない(とはいえ、近年では非英語圏でもこのスタイルでの研究があるということで、この言い方も正確ではない)。 さて、美学と芸術の哲学ということで、書も二部構成となっていて、一部が美学、二部が芸術哲学となっている。 Ch.1 はじめに 第1部 美学 Ch.2 環境美学――自然の美 Ch.3 〈美的

    ロバート・ステッカー『分析美学入門』 - logical cypher scape2
  • 竹中夏海『IDOL DANCE!!!』 - logical cypher scape2

    サブタイトルは、「歌って踊るカワイイ女の子がいる限り、世界は楽しい」 全くもって正しいですね。世界の真理だ。 ぱすぽ☆、アップアップガールズ(仮)の振付師である竹中が、ダンスという視点からアイドルを語る。 そもそもアイドルダンスというジャンルはあるのか。 これまで、アイドルが踊っているのであれば、それがジャズダンスだろうとヒップホップダンスだろうと何だろうと「アイドル(の)ダンス」であり、そもそもそういうジャンルだとは思われていなかった。また、ダンス業界からはあまり注目されていなかった。 このは、それに対して、アイドルダンスというジャンルがあるのだと主張し、その特徴を挙げていくものだ、とひとまずは言うことができる。 だが、このはそれにとどまるものではない。振付師としてアイドルをいわば育てる立場から、アイドルとは何かについて考えるともなっている。 今まで自分は、アイドル論というジャン

    竹中夏海『IDOL DANCE!!!』 - logical cypher scape2
  • 山口尚『クオリアの哲学と知識論証』 - logical cypher scape2

    これぞ分析哲学だよねーという感じので、非常に面白い。 後半は結構議論が難しくなってくるが、それでも議論が追いやすくなるように作られているので基的には分かりやすいと思う。 もっとも、心の哲学全く知らないとなると多少つらいかもしれない。 注釈がいい(後述) サブタイトルは、メアリーが知ったこと。 オーストラリアの哲学者、フランク・ジャクソンが提唱した「メアリーの部屋」という思考実験ないしそれを元にした知識論証を巡って書かれたである。 第1章と第2章では、知識論証の論争史がまとめられ 第3章から第5章では、知識論証に対する応答のうち、筆者とは立場を異にするものを紹介・批判され、 第6章から第8章では、筆者と立場を同じくする論が紹介され、筆者の立場・主張が展開される。 第9章は、結語で、筆者の主張に対する補足。 「メアリーの部屋」というのは、以下のようなものである。 物理(学)的に全知な*1

    山口尚『クオリアの哲学と知識論証』 - logical cypher scape2
  • 後藤和久『決着!恐竜絶滅論争』 - logical cypher scape2

    いいだった、これー 2010年に発表された、恐竜絶滅は小惑星衝突説で論争に決着が付いているとの論文を発表した41名の研究者たちの1人である地質学者による。 恐竜絶滅の原因が、小惑星衝突によるものだということは、専門家のあいだでは定説になっているのだが、反対論者たちのプレスリリースが相次ぐことによって、非専門家に対して「まだ議論が分かれているのだ」という印象がついてしまっていることを危惧した研究者たちによって、件の論文は発表された。 このも、同じ動機に基づいて書かれており、小惑星衝突説についてと、その反対説の問題点、そして何故このようなことが起きたのかということについて書かれている。 恐竜絶滅論争についてだけでなく、科学の論争に決着が着くというのはどういうことなのか、そして科学とメディアの関係についてまで触れられていて、面白い一冊。 筆者は、1977年生まれとまだ若く、研究者として活動

    後藤和久『決着!恐竜絶滅論争』 - logical cypher scape2
  • ラマルク+オルセン編『美学と芸術の哲学:分析的伝統:アンソロジー』 - logical cypher scape2

    原題は"Aesthetics and the philosophy of art : the analytic traditon : an anthology"で、編者はPeter LamarqueとStein Haugom Olsen。 英語なので、ブログ記事タイトルは自分の勝手な翻訳。以前、洋書のタイトルをそのままブログのタイトルにしたら、何か反応が悪かったような疑いがあるので、あえて訳してみた。分析的伝統は日ではあまり使われない言葉。日では「分析美学」と言った方がまだ通じやすいと思うが、向こうではあまり使わないらしい*1 46の分析美学論文が収録されているアンソロジー。 だが、実は収録論文をまだ1も読んでいない! 各章に簡単なIntroductionがついており、まずそれらだけを読んでみた。ので、今回の記事はIntroductionのみの紹介となる。 各論文については、こ

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  • 青山拓央『分析哲学講義』 - logical cypher scape2

    ちくま新書から出た分析哲学の入門書。 分析哲学の入門書というと、先日、講談社選書メチエから、八木沢敬『分析哲学入門』というも出ているが、この両者はある意味ではよく似ているし、ある意味では結構違う。 どちらも分析哲学とは何かというところから始め、言語哲学について説明したあと、クリプキを挟んで、心の哲学と形而上学へと至るという構成になっている。 新書と選書という違いはあるが、どちらも大体同じページ数であり、コンパクトながらもぎゅっと詰め込まれている。どちらも入門書として丁寧に書かれていると思う。 両者の共通点として、入門書としては珍しく、筆者の自説が展開されているところもあるだろう。青山におけるそれは後述するが、八木沢では例えば様相実在論の主張などがそれにあたる。 この両者の違いはいくつかあるが、まずは文体の違いが大きいだろう。 心の哲学における機能主義について説明しているところから引用

  • 北野圭介『映像論序説――デジタル/アナログを越えて』 - logical cypher scape2

    映像を巡る言説を、アナログとデジタルの区別について吟味する形でまとめたもの。 冒頭で、方法論として概念分析と系譜学的考証というのを挙げている通り、映像という言葉がどのように使われてきたのかというのを追いかけている。 アナログ映像とデジタル映像というのは連続しており、はっきりと分けられるものではないと前半で述べつつ、後半ではその新たな区別も検討している。 問題設定や個々の話のいくつかは面白かったのだけど、具体的な作品や映像についての分析がなかった*1。映像論ではなくて映像論論のようにも感じた。 web版を読んだ*2。と目次を見比べると、後半が違うよう。 まずは、アナログとデジタルという安易な二分法に対して、実際に我々が普段見ている映像というのはアナログ的なものとデジタル的なものが混ざり合ってて簡単に綺麗には分けられない、連続していることを指摘する。そのような連続性を指摘するものとして、ニュ

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  • 大和田俊之『アメリカ音楽史』 - logical cypher scape2

    僕の周辺で覇権*1とまで呼ばれていたをようやく読んだ。 その名の通り、アメリカ音楽歴史であるが、いわゆる大文字のHistoryを解体し、様々な伏線を通してhistoriesを見出していくタイプの研究。自分が大学の時に受けていた授業には、これと似たようなアプローチのものもあったこともあって、アメリカ音楽には全く明るくないけれど、面白く読めた。 著者は、アメリカ文学とポピュラー音楽研究を専攻しているらしいが、音楽研究がどういうものなのかあまりよく知らないけれど、文学研究っぽいということは感じた。 基的には、アメリカ音楽史というのは白人と黒人とのせめぎ合いとして記述される。 例えば、白人のカントリー・ミュージックと黒人のリズム&ブルースが混淆して、ロックンロールが生まれた、というように。 書でも、白人と黒人の関係というものが軸に進んでいくことになるが、上に述べたような、白人+黒人→

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  • アール・コニー+セオドア・サイダー『形而上学レッスン――存在・時間・自由をめぐる哲学ガイド』 - logical cypher scape2

    タイトルにあるとおり、形而上学の入門書である。 が、そもそも形而上学とはなんぞやというところが分からないとならないだろうが、それはそれ自体が一つのトピックになるほど、実は厄介であったりする。 とりあえず、訳者あとがきから要約しておくと、 形而上学とはまず哲学の中の一分野であり、わけても「時間」や「自由意志」や「必然性」などといったことを扱う哲学である。 「時間」や「自由意志」など誰もが哲学的だと思うトピックであろう。つまり、形而上学は、言うなれば哲学の中の哲学、「ザ・哲学」なのである。 さらに付け加えるならば、書が扱う形而上学は、分析哲学のスタイルで行われるそれである。それはすなわち、「アメリカン・スタイル」の形而上学のことである。 「アメリカン・スタイル」であるということは、分析哲学であるということに加えて、例えば「ターミネーター」などの例が使われていることや、過去の哲学者の引用が使わ

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  • 山内志朗『普遍論争』 - logical cypher scape2

    中世哲学のトピックの一つである普遍論争について、従来的な図式を壊して解説するもので、語り口は平易なのに難解な。 難解なのは、中世哲学独特の単語や言い回しのせいだが、テクストを引用した後、ちゃんと噛み砕いてくれているので、見慣れない単語に目をくらませずにいけば、一応読める。とりあえず、難しいなーということは分かるw あと、中世哲学って時代がとても長いことに読んでいる最中に気がついた。11世紀から15世紀くらいまである。当然色んな人が出てくるが、ほとんど名前も知らない。知っていても、それこそ名前を聞いたことあるレベル。そういうあたりも、中世哲学のとっつきにくさにはなっている。 ただ、こののすごいところは、後ろに人名小辞典というのがついていて、それがなんとのおよそ3分の1を占めていることで、これを参照すればいいのかもしれない*1。 さて、普遍論争というと、普遍をめぐって、唯名論と実在論と概

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  • エリオット・ソーバー『進化論の射程』 - logical cypher scape2

    三中さんので紹介されていたで、ようやく読めた*1。 日語サブタイトルは「生物学の哲学入門」、原著タイトルはそのものずばり“Philosophy of Biology”である。 では、生物学の哲学とは何か。まあ、何かと問われてはっきりとした答えが出せるものでもないのだが、その名の通り生物学における哲学的な問題を扱う学問領域である。科学哲学でもあるし生物学でもある。生物学における様々な議論が、科学哲学の概念を踏まえて整理されている、とも言えるかもしれない。ここで、序の一部を引用してみる。 私は生物学を、実証主義や還元主義、科学的実在論のテストケースとして見ようと言う気にはならない。それは、私がこうした哲学的な〜主義をつまらないものだと感じているからではない。生物学の哲学を、生物学のただ中から浮かび上がらせるというのが、私の好む編集方針だからである。 〜主義のテストケースとして生物学の例に

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  • ラリー・ラウダン『科学と価値』 - logical cypher scape

    語版のサブタイトルに「相対主義と実在論を論駁する」とある通り、科学哲学における二つの極端な(?)考えを批判していく中で、ラウダン*1の網状モデルという科学哲学が展開されている(解説で戸田山さんが述べているが、「網状モデル」というより「三項ネットワーク」というネーミングの方が確かに適切だと思う)。 ここで相対主義と言われているのは、主にクーン以降の科学哲学・科学社会学の流れであり、ラウダンの主張は、クーンを継承しつつもその相対主義的な側面に対して批判を加えたものとなっている*2。 全部で五章から成るが、第一章と第二章でこれまでの科学哲学の流れを概観した上で、第三章と第四章で相対主義を批判しながら網状モデルを展開し、第五章で実在論批判を行っている。 こので主に説明が試みられていることは、科学者の見解がこれまで何度となく不一致と一致を繰り返してきたことについてである。 論理実証主義やポパー

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