債務危機が深刻化し欧州統合への懐疑が広がる中、それでも「欧州への道」をひた走る国々がある。ソ連の独裁者スターリンによってソ連圏から追放され、チトー(1892~1980年)の指導で独自の共産主義を歩んだ旧ユーゴスラビア諸国だ。ソ連が崩壊した91年にユーゴ連邦の解体が始まり、血で血を洗う内戦の後遺症で旧ユーゴ諸国は欧州統合から長い間、取り残されていた。 ユーゴ解体から20年-。欧州連合(EU)への加盟準備を急ぐクロアチアにはしかし、消すことができない“もう一つの共産主義”の傷痕があった。避けられぬリストラ アドリア海に面したクロアチア西岸の港湾都市リエカ。45年5月3日、ナチス・ドイツの占領から解放されたことを記念して「サード・メイ(5月3日)」と名付けられた造船所がある。 ここで30年間働くエディ・クーチャン社長(56)は「今後2年間で300人の従業員を削減しなければならない」と頭を抱える。