「この、ブタ野郎!」などという時には、当然相手を蔑んでいるケースが多い。豚を用いる慣用句の多くは、大食いと官能を表している。泥の中で転げ回り、飽くことなき怠惰、我がまま、肉欲、食欲を顕にして悔いることがない。そんなイメージが前提条件となっている。 しかし、われわれは豚について、どれほどのことを知っているのだろうか?研究の世界においても、古くから豚は軽んじられてきたという。世界中の野生豚を追跡している人間の数を合わせても、ニホンザルを実地調査している生物学者の数にかなわないそうだ。豚の不運は、彼ら自身の問題というよりは、捉えられ方に問題が潜んでいるのである。 本書は、そんな豚の「文化」や「知性」について語った一冊。中東地域では厳格にタブー視されながら、片や太平洋地域の大部分では厳格に崇敬の念を抱かれている不思議な存在の豚、その真の姿に迫っている。 ◆本書の目次 序章 なぜ、人間の関心を引く