絶句した、わたしはこの老夫婦を笑えない。むしろ、いまの"わたし"そのものだ。 イギリスの片田舎が舞台、時代から取り残されたような老夫婦を描く。絵本というよりグラフィック・ノベルやね。穏やかな二人の生活に、さいしょはジワジワと、次に割り込むよう、最後は全面的にのしかかってくる「核の恐怖」が、すべてを塗りつぶしてゆく。初読は二十ン年前、「さむがりやのサンタ」しか知らなかったわたしには、ほのぼの+おどろおどろのギャップが衝撃だった。 しかし、当時のわたしは、「フィクションというフィルター」を通じて受け止めたがる節があった。全面核戦争が勃発すれば、日曜大工の「シェルター」や、窓ガラスに白ペンキごときで防げるワケがない。それでも政府が発行するパンフレットを、一字一句、忠実に守ろうとする彼らに、一種ほほえましさを感じ、待ちかまえる運命を案じ、微笑しながら涙ぐんだ。 核戦争が「ラジオ」で告げられ、3分後