「異」の方は簡単で、大竹先生は「格差拡大は見かけ上のもの」という当時の政府見解(小泉政権)に根拠を提供する研究を著し、橘木先生はそれに反論する形となった。こうして論争が繰り広げられた。大竹先生は「高齢者や単身世帯はもともと所得格差が大きいものであるが、高齢化社会や家族構成の変化で、そうした層が増加したため、全体的にも格差が拡大したように見える」というふうに説明する。それに対して、橘木先生は「高齢単身者において貧困者が増えていることを『見かけ』で済ますのか」と問いかけている。この論争はまだ決着がついていないようだが、ここでは相対的貧困と絶対的貧困について両者の意見をまとめておきたい。大竹『競争と公平感』の説明によると、相対的貧困率で計算すると、日本の中位所得は高めに出る。したがって相対的貧困率が高く出たとしても、貧困とされる中位の半分以下の所得の人は「絶対的に貧しいのではない。病院に行けない