能力主義・実力主義に通底する公平の理念の下に、先進諸国は先天的な格差を是正する政策を推進してきたが、現在その思潮にあらがう形でポピュリズムの台頭をみる。RIETIの小泉秀人研究員・政策エコノミストは、平等なスタートラインから競争をした場合、人の能力や功績はどの程度運に影響されるのか、といった問いから、モーターのくじ引き制度を持つ「ボートレース」に着目し、後天的な運によるバタフライエフェクト的な影響の積み重なりを実証していく。後天的な運の影響を定量的に実証したことにより、過度な自己責任を追及する能力主義社会の限界を認識し、また結果に対する運の介在を認めることでより寛容な社会を目指す政策的含意を持つ。 本講演「能力と功績のどれくらいが運によるものか?」において、私は、後天的な運の影響を「ボートレース」を使って定量的に実証します。その際、論文本体では言及できていない思想的、政策的含意について、説