平居謙『「ワンピース」に生きる力を学ぼう!』(データハウス)は、本としてはなかなかにひどい出来だと思うが、マンガ『ONE PIECE』をどうとらえるかということを示唆したという一点において、ぼくにとっては非常に刺激的な一冊だった。「生きる力」をテーゼ的というかドグマ的にバラバラにわけて解説した第一章・第二章は、ほとんど役に立たなかったのだが、 第三章の「『相互扶助』から『意識的疾走へ』」は、叙述の乱暴さは別として、クロポトキン『相互扶助論』と関連づけたという点で、刺激に満ちていた。 「クローズアップ現代」の『ONE PIECE』論への違和感 平居の同書にも書いてあるが、『ONE PIECE』のヒットをNHK「クローズアップ現代」は特集し(2011年2月9日放映)、格差社会・「生きづらさ」を抱えた社会のなかで個人がバラバラにされ、絆・仲間が失われていることと関連づけて語った。 馬場伸彦(甲南