30歳の誕生日の日に子供が来た。役所だけは俺の誕生日を忘れないできっちりと祝ってくれる。 徹夜続きのやつれた顔で顔を出すと赤ん坊を抱えた配達員が突っ立っていて,サインお願いしますと無表情のまま言った。拒否した場合,以後の結婚は受理されないし子供を産む権利も与えられず,税金だけはどっと増えることを考えるとサインするしかないのだ。受け取った子どもはずしり,と重かった。おめでとうございます,とだけ言って配達員は帰って行った。よく寝ている子供の顔を見下ろすとため息が漏れた。 中絶が法律で禁止される代わりに,30歳の誕生日が来たら強制的に養子を養う義務が生じたのは数年前からだが,国会議員どもは30歳などはるか昔の話だと思っているのかすんなりと法案は成立してしまった。世論は大荒れだったが一度始まってしまうとなかなか変わらないもののようだ。 やってきた子どもはおとなしい健康な子で,忙しい俺の下で育ってい