日本のリノベーションの第一人者と言われる建築家・大島芳彦(46)。間取りや使い方を大胆に見直し、新たな価値を持つ物件に生まれ変わらせる。さらにそれを通じて、地域のつながりやまちづくりにも影響を及ぼしているとして、全国から注目を集めている。たとえば去年グッドデザイン賞に輝いた、築50年の団地のリノベーション。建物は廃虚同然だったが、大島が閉鎖的だった空間を開放したことで、今、人がにぎわう地域の“顔”になっている。 そんな大島の信念は、「物語をデザインする」ことだ。今回請け負っていた大阪・船場(せんば)のとあるビル。オーナーは愛着を抱いていたが、築40年を越えたビルは機能性に乏しく、建て替えしかないと言われてきた。だが大島は、ビルは生かせると断言した。人が集まれるようにと願った創業者の思いをくみ取ることで、建物の個性に注目、複数の人で使うシェアオフィスに生まれ変わらせるプランを提案した。1階に