ブックマーク / blog.goo.ne.jp/hiroyuki-ohba (279)

  • 日本における教育格差の執拗な提示 - 29Lib 分館

    松岡亮二『教育格差:階層・地域・学歴』ちくま新書, 筑摩書房, 2019. 日における教育格差を、幼児教育・小学校・中学校・高校の各ステージで検証するという360頁に及ぶ厚い新書版である。学術書ではないが、図表が満載かつ文章も図表の説明がほとんどで、こういうのに読み慣れていないと辛いだろう。著者は早稲田大学所属の若手研究者である。 書籍全体を通じて、学力、意欲、勉強時間、所属学校の偏差値などなどについての、階層別のデータがこれでもかこれでもかと繰り出される。その結論は、日は国際的にみて凡庸な教育格差社会であり、他の国がそうであるように親の社会経済的地位や居住地域によって教育水準が決まってしまう、ということである。その差は、幼児期から始まり、高校までずっと維持されるという。(ただし、最終学歴獲得・初職・現職を通じて、格差が拡大するわけではなく、維持されて平行移動するとのことである)。

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  • 海外の大学所属の研究者となるためのハウツー兼日本人研究者事情 - 29Lib 分館

    増田直紀『海外で研究者になる:就活と仕事事情』中公新書, 中央公論, 2019. 外国の大学の先生となるにはどうしたらよいか。著者自身の経験と海外在住日人研究者のインタビューによって、そのノウハウを伝授するという書籍。大学採用事情を知らない人向けの用語の説明(テニュアなど)はあるので、一般の人ももわからないことはない、というレベルである。著者は東大から英ブリストル大学に異動した数学研究者である。 インタビューは英米の大学の日人在籍者に対してだけでなく、オーストラリア、ドイツ、スイス、デンマーク、グアテマラ、韓国台湾中国土、香港、シンガポールの研究機関にいる日人在籍者に対しても行われている。各国で大学教員の待遇は異なるのだが、1)日の大学よりも競争的研究費の申請機会が潤沢(もっと言えば研究費を取ることのできる人物しか採用されない)、2)学務や教育負担は国によりけりで、一般的にレ

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  • 歴史的にみて格差縮小には必ず悲惨な暴力を伴う - 29Lib 分館

    ウォルター・シャイデル『暴力と不平等の人類史:戦争・革命・崩壊・疫病』鬼澤忍, 塩原通緒訳, 東洋経済新報, 2019. 世界的に見て平等が進展するのは秩序が崩壊したときだけだ、と説く比較歴史学の書。余剰のあるところに富の偏在があるのは通常のことで、経済成長は格差を拡大する。対して、戦争・革命・崩壊・疫病の四現象だけが格差縮小に寄与するという。ただし、その四つうちどれかが起きれば必ず平等に向かうというわけでもなく、さまざまな条件も付随しなければならない。著者はスタンフォード大学の歴史家で、原書はThe great leveler : violence and the history of inequality from the Stone Age to the Twenty-First Century (Princeton Univ Press, 2017.) である。 平等化を促す「戦争

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  • 地方自治体の現状についてさまざまな側面から報告・評価 - 29Lib 分館

    曽我謙悟『日の地方政府:1700自治体の実態と課題』中公新書, 中央公論, 2019. 日の地方自治体の現状と問題点について伝える概説書。新書ではあるが、トピックの範囲が広く、またそれぞれの情報量も多いため、気軽には読めない内容である。著者は京大の政治学者である。 最初のトピックは地方政治。大選挙区制のため政党が形成されにくく、一貫した政策を採ることができない。一方で首長のプレゼンスが高まっている。二つ目は、行政組織と住民の関係。地方自治体の組織規模は小さいため、職員をスペシャリストとして育成できず、一方でジェネラリストにするには与えられる職務の幅が狭い。このためスキルが低い。この他、住民・民間の行政への関与の話がある。三つ目は、地方経済。生産活動に従事する昼間人口が採りあげられ、大都市と郊外市の関係のように、納税先とサービス受益がずれていることや、無秩序な開発志向が問題とされている。

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  • 会計導入の攻防史、勝利はまだ遠く - 29Lib 分館

    ジェイコブ・ソール『帳簿の世界史』村井章子訳, 文藝春秋, 2015. 会計の歴史。原書は、The reckoning: financial accountability and the rise and fall of nations(Basic Books, 2014)。著者は米国の大学の先生で、日の話(江戸時代の大阪商人の複式簿記など)はない。2018年に文庫版が発行されている。 まずはメソポタミアや古代ギリシアの会計にも触れられるものの、現在まで継承される会計のはじまりはルネサンス期のイタリア都市国家だという。収支を測るために貿易商人や銀行家のあいだで発展し、会計についての著作も残されたとのこと。著者によればキリスト教倫理はプラスにもマイナスにも働いたという。現世の罪を善行によって帳尻を合わせるという意識は会計への感覚を発達させた。一方で、商業を軽視するその教えはメディチ家をも破

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    min2-fly
    min2-fly 2019/06/11
    これ積読になってしまっているので読まないとなあ・・・
  • 数値評価が非効率を生み、目標達成を阻害する - 29Lib 分館

    ジェリー・Z.ミュラー『測りすぎ:なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?』松裕訳, みすず書房, 2019. 定量評価の戒め。統計学の細かい話ではなく、数値評価の導入によってメンバーの行動が歪められてしまうケースを集めて紹介している。ただし、数値評価全般が批判されているというわけではなく、組織の目標達成が損なわれるような、誤ったインセンティヴを与える数値評価を止めよう、という限定された主張を行っている。原書はThe Tyranny of Metrics (Princeton University Press, 2018.)で、著者の専門は歴史(経済史)である。 定量的評価の失敗例は、大学、学校、医療、警察、軍、ビジネス、慈善などの領域からとられている。手術の成功数で医者の報酬が決まるならば、医者は手術して治る見込みのある患者を優先し、状態の悪い患者を引き受けなくなる。重犯罪の発生数で警

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  • 近い将来のことならば予測の精度を高めることはできる、と - 29Lib 分館

    フィリップ・E.テトロック, ダン・ ガードナー『超予測力:不確実な時代の先を読む10カ条』土方奈美訳, 早川書房, 2016. 未来を予測する能力を測定することを試み、平均より成績のよい人たちの特徴を分析するという一般向け書籍。著者のテトロックはカナダ出身米国在住の心理学を専門とする大学教授、もう一人のガードナーはジャーナリストである。原書はSuperforecasting: the art and science of prediction (Crown, 1995.)。2018年に早川書房から文庫版が発行されてる。 話のネタは、米国のインテリジェンス機関の支援を受けた"The Good Judgment Project"なるテトリックによる予測コンテストから。コンテストでは、北米全土から参加者を募り、「北朝鮮は半年以内にミサイル発射実験を行うか」といったさまざまな事象に、起こりうる確

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  • 日本人は教育を私的なものと考える - 29Lib 分館

    中澤渉『なぜ日の公教育費は少ないのか:教育の公的役割を問いなおす』勁草書房, 2014. 教育社会学。日における教育への公的支出は諸外国に比べて低い。タイトル通り、なぜそのような現状となったのか理由について探っている。結論としては、日国民が教育の社会的メリットを理解しておらず、教育への公的負担を強く支持していない、ということになる。一方、副題の「教育の公的役割」は十分検討されているわけではなく、それを前提として教育費の増額を求めているという印象だ。その検討は次著『日の公教育』に詳しい。書は、学術書ながら一般の人にも読める内容ではある。ただし、公会計における教育費や日人の意識における教育費の地位を探るような細かい議論が続く。 政府支出における教育費の割合の国際比較から議論を説き起こし、教育の社会的機能を確認した後に次のようにトピックが展開する。近代教育制度発展の歴史教育費と社会

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  • 米国20世紀後半の出版業の変遷の回顧録 - 29Lib 分館

    アンドレ・シフレン『理想なき出版』勝貴子訳, 柏書房, 2002. 米国出版事情および回想録。著者はユダヤ系でフランス出身、幼いころの第二次大戦期に家族とともにニューヨークに移住している。父が出版業を営んでいた縁もあって、出版業の世界に身を投じたとのこと。原書はThe business of books : how the international conglomerates took over publishing and changed the way we read (Verso, 2000)である。20世紀後半になると、大手出版社の吸収合併によって、米国では良心的な小規模出版が難しくなっているというのが大筋の話である。 すでに多くの書評が出ているので詳しい内容については割愛。僕が疑問に感じたのは、著者が記すような「それほど経営に苦しくなく、過去のカタログの販売で細々とやっていける

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  • さまざまな領域の統計予測をめぐる長めの考察 - 29Lib 分館

    ネイト・シルバー『シグナル&ノイズ:天才データアナリストの「予測学」』川添節子訳, 日経BP社, 2013. 統計分析を根拠とした「予測」の問題点や限界について、事例を使って説明する一般書籍。ベイズ式が出てくるが、それ以外の数式はない。著者は在野のアナリストで、MLBや大統領選のデータを集めてブログで分析結果を発表してきた人であるとのこと。特に、2012年の大統領選でオバマが勝つ州と得票差を完璧に当てたことで知られているらしい。もともと野球のデータ集めが趣味で、趣味が高じてというやつらしい。ただし、シカゴ大の経済学部出身である。 挙げられている事例は、野球、天気予報、地震、経済、インフルエンザ、チェス、ポーカー、地球温暖化、テロ、である。それぞれの領域での予測における問題点が採りあげられ──相関と因果の混同、モデルの過剰適合など──シグナル(予測に貢献するデータ)とノイズを見分けることの難

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  • 商業雑誌に需要があって面白く感じられた時代 - 29Lib 分館

    吉田則昭, 岡田章子編『雑誌メディアの文化史:変貌する戦後パラダイム』森話社, 2012. 10人の著者による商業雑誌の研究書だが、一般の人でも読める。取り上げられているのは以下の雑誌。前半は『週刊朝日』ほか総合週刊誌、『婦人公論』と『暮らしの手帖』などで、これらは1940年代~50年代の動向が主。『non・no』『anan』を筆頭とする女性誌については1970年代~00年代の変遷が扱われている。この他『popeye』の全盛期、台湾における日情報誌、海外雑誌ビジネスについての各論がある。 総合週刊誌については、よく知っているというほどではないけれども、(中年男性ならば)なんとなく勘があるので、確認するように読む感じだった。一方、女性誌については未知の領域であるために面白く読めた。『婦人公論』と『暮らしの手帖』が、主婦の扱いを巡って一時期ライバル関係にあったとは知らなかった。また、1980

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  • 知られざる明治の大衆文化は極度に野蛮だった - 29Lib 分館

    山下泰平『「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので20万字くらいかけて紹介する』柏書房, 2019. 明治大衆文学史。タイトルの面白さに惹かれて読んでしまった。著者は、国立国会図書館のデジタルコレクションを使って明治の大衆向け小説を読み漁り、ブログ1)を通じて紹介してきたとのこと。 読む前は著者の興味に従って目立つ作品をチェリーピッキングして紹介するだけの内容かと想像していたが、予想以上に体系的な歴史書となっている。とはいえ、著者の踏み込みすぎた解釈や言及もあり、真面目な研究書という感じでもない。明治の大衆娯楽物語には、著者の見立てによれば講談速記、最初期娯楽小説、犯罪実録の三種類あって、それらは現在まで残っている純文学作品とはまったく異なるものだったという。これらは大正期にちゃんとした大衆小説が誕生することで一掃されたとのこと。 で、

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  • 税収減の中で公共施設をどう維持してゆくか - 29Lib 分館

    南学編著『先進事例から学ぶ成功する公共施設マネジメント:校舎・体育館・プール、図書館、公民館、文化施設、庁舎の統廃合と利活用の計画から実践まで』学陽書房, 2016. 公民館や公営体育館などの施設経営についてノウハウを集めた一般向け書籍で、読者対象は地方公務員である。タイトルには誤解を招くところがあり、「地方自治体の予算減少を前提として、効率よく施設を運営するにはどうしたらよいか」を論ずる内容であり、集客方法の話ではないことに注意されたい。全体の2/3以上を東洋大学教授の南学が、残り1/3以下を寺澤弘樹・堤洋樹・松村俊英の3人で章を分けて執筆している。 予算減が見込まれるなかでの施設運営に対する回答は以下のようなもの。まずは公会計についての見直しで、人件費や減価償却費などを可視化せよという。次に、図書館、体育館、公民館などはできるだけ複合施設化して管理コストを下げよ、というもの。これに抵抗

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  • 大阪の中央図書館と近大に行ってきました - 29Lib 分館

    出張二つめの行き先は大阪。ついでに図書館をまわってきた。大阪市立中央図書館大阪府立中央図書館を見てきた。どちらも規模の大きい素晴らしい図書館だ。なるほど、パッと見には二重行政と言われてしまうのがわからないでもない。ただ、多くの場合、都道府県立図書館は市区町村立図書館と異なるコンセプトで運営されているので、短時間の滞在では見えないところもあっただろう。どちらでも館内を巡回する警備員が目立った。トラブルが多いということか。 もう一つ、目的地が近畿大学だったので、近大アカデミックシアターなる図書館分館(というのは正確ではないかもしれない)にも行ってきた。アウトレットモールの店かと見紛うおしゃれな建物があり、その中のいくつかの小部屋の壁が書架となっている。暗い色の書架の真ん中あたりの棚には照明が付いていて、の背に光があたってタイトルが浮かび上がるという仕掛けになっていた。棚の上の方は飾りのシリ

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  • 当時悪書とされていた貸本マンガの魅力とは - 29Lib 分館

    長谷川裕『貸屋のぼくはマンガに夢中だった』草思社文庫, 草思社, 2018. 回想録。著者は1950年生まれで、親が副業で貸屋を始めた1958年から、二つあった店の一つを閉める1967年までを回想している。書は、1950年代後半から60年代前半の貸マンガの批評を主としつつ、貸屋の運営実態や周辺状況などについても記述する内容だ。1999年に草思社から最初の版が発行されている。 著者の家が貸屋を開業した1958年が貸業のピークで、以降は衰退期となる。著者の貸屋は、新しく魅力的な書籍を仕入れ続けることで過当競争を乗り切った。以降、今世紀までなんとか店は続いているという。当時は貸マンガ専門の出版社があり、大手取次や大手出版社からは冷遇されていた。未返却を回収してまわるエピソードも、貸屋に対するイメージが分かって面白い。 貸マンガ家としては、手塚治虫、水木しげる、白土三平、さ

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  • メディアコスモスを見てきました - 29Lib 分館

    二月半ばからとある業務にかまけていたためしばらくブログが更新できなかった。その業務はまだ終わっていないし、終わりの目途もたっていない。けれども、別の無関係な業務が入ったおかげで一時中断とした。ブランクが開いたので適当に書いてみる。 現在、出張で岐阜市に来ている。愛知県小牧市にある僕の実家からは名鉄電車で一時間なのだが、予算を消化しなければならないので岐阜市内で泊まりの予定である。務は明日である。日は岐阜市立中央図書館「みんなの森 ぎふメディアコスモス」を見てきた。 デザインがとても洗練されている。落ち着いたオレンジ色の照明、渦巻き状に配置された書架、弧を描くテーブルなど。子どもだったら迷路を作ってみたくなるよね。書架の背が低いので大人ならばフロア全体を見渡せる。書棚はけっこう空いていて、空白スペースを面出しで埋めていた。僕がよく使うさいたま市立中央図書館と比べると、机を占拠して何やら

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    min2-fly
    min2-fly 2019/03/12
    まだ行けてないっていう・・・
  • 文系大学教育はやっぱり役に立っていないらしい - 29Lib 分館

    田由紀編『文系大学教育仕事の役に立つのか:職業的レリバンスの検討』ナカニシヤ出版, 2018. 社会学。文系学部卒業者に対してアンケートし、大学時代に受けた教育と職業との関係を分析する内容である。手堅い実証研究であり、内容がインタビューである7章を除いて各章で統計分析満載の学術書である。アンケートはインターネットでの回答を元にしている。 タイトルの疑問の答えは3章に記されている。およそ7割の回答者が大学教育仕事に活用されていないと答えている。やっぱり役に立たないわけだ。その他は、回答からわかる教育スタイルや、大学時代の授業への意欲、資格、出身地、就いた職業を検討することで、大学教育が役に立つケースを浮き彫りにしようとしている。 大学教育が職業に活かされる文系領域は?答えは「教育学部」です、ってまあそうだよね。また大学時代のディスカッションやプレゼンの経験は役に立っている感を高めるらし

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  • 実験を使った研究に誘われるも先立つものが必要 - 29Lib 分館

    ウリ・ニーズィー, ジョン・A.リスト『その問題、経済学で解決できます。』望月衛, 2014. 行動経済学分野の内容だが、特に「実験経済学」というランダム化対照実験を使った著者二人の研究を紹介している。一般向けに分かりやすくかみ砕いた説明となっており、ストーリー性もあって読みやすい。だが、実験での検証を強く訴えているわりには、実験の設計や方法については詳しい説明を省いており、この点に不満が残る。原著はThe why axis : Hidden motives and the undiscovered economics of everyday life (Public Affairs, 2013)である。 著者の一人はイスラエル人で、幼稚園のお迎えを罰金制にしたら罪の意識が無くなって遅刻が増えた、という発見で有名である。もう一人は労働者階級出身の白人で、『ヤバい経済学』のレヴィットと共同研

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  • 米国の政治制度は特異で機能不全を起こしているという - 29Lib 分館

    フランシス・フクヤマ『政治の衰退:フランス革命から民主主義の未来へ(下)』会田弘継訳, 講談社, 2018. 上巻の続き。下巻冒頭ではアフリカ諸国が言及される。アフリカは19世紀に植民地化されたが、宗主国側は投資をケチり、十分な統治機構を用意しなかった。この点が独立後マイナスに作用した、というのが著者の見立てである。機能する官僚制が形成される以前に民主制が導入されることになり、結果として政治が利益配分と利益誘導の道具に堕したという。ただし、例外もあり、タンザニアは独立後時間をかけて国民形成に成功した例だとのこと。 大きく頁が割かれているのはやはり米国だ。19世紀後半か20世紀半ばにかけて猟官制度をかなりの程度克服することができ、能力や専門性の面で優れた官僚制度を備えるようになった。しかし、近年は「拒否権政治」のために行政効率が落ちているという。拒否権政治には二つのルートがある。一つは議会で

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  • 能力主義官僚選抜と民主制の導入には順序がある - 29Lib 分館

    フランシス・フクヤマ『政治の衰退:フランス革命から民主主義の未来へ(上)』会田弘継訳, 講談社, 2018. 比較政治学。『政治の起源』(上 / 下)の続編となる大著で、安定した民主制と資主義はどのような条件のもとで発生し・維持されているのかを探ってゆく。原著は、Political order and political decay: from the industrial revolution to the present day (Farrar, Straus and Giroux, 2015.)である。 政治の衰退とは、前著で近代国家の三つの要件として挙げられた「国家(=能力主義的選抜に基づく官僚を備えた行政機構)」「法の支配」「政府の説明責任」の間のバランスが崩れることを指している。この上巻で強調されるのは、国家と民主制の導入の順序である。先に「国家」が成立し、その後に民主制が導

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