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ブックマーク / huyukiitoichi.hatenadiary.jp (23)

  • 会話にはルールがある──『会話の科学 あなたはなぜ「え?」と言ってしまうのか』 - 基本読書

    会話の科学 あなたはなぜ「え?」と言ってしまうのか (文春e-book) 作者:ニック・エンフィールド文藝春秋Amazon書『会話の科学』は、会話全般に光をあて、そこにどのようなルールや傾向があるかを分析していく一冊だ。我々は会話をしている時、無意識的にそうしたルールを遵守していて、(ルールを)守らないと……とがんばっていることはそうそうないが、書を読めば確かに自分がルールを無意識的に遵守していることに気がつくだろう。 あるいは、会話がうまくいかないと感じている人は、自分が認識していない会話のルールが存在することに気がついて衝撃を受けるかもしれない。ルールや会話の傾向自体は記載されてみれば、「相手が「肯定」を返しやすい質問をする」など「いわれてみればそうだな」と思うものばかりで意外なものはないのだけど、あらためて意識すると、自分がいかに複雑なことを簡単そうにやっているのかがよくわかる。

    会話にはルールがある──『会話の科学 あなたはなぜ「え?」と言ってしまうのか』 - 基本読書
  • ホームズがクトゥルーの古き神々と遭遇する大胆不敵なマッシュアップ──『シャーロック・ホームズとシャドウェルの影』 - 基本読書

    シャーロック・ホームズとシャドウェルの影 (ハヤカワ文庫FT) 作者:ジェイムズ ラヴグローヴ早川書房Amazon映画も含めたシャーロック・ホームズ関連作品はコナン・ドイルによる正典の他に数多くのパスティーシュ、クロスオーバー、二次創作で溢れかえっているが、その流れに新たに連なっているのが『シャーロック・ホームズとシャドウェルの影』だ。ラブクラフトによって打ち立てられた巨大な世界「クトゥルフ神話」、そしてそこに現れる古き神々とホームズが出会う様を描き出す、大胆不敵なマッシュアップである。 ホームズの持ち味といえばその鋭い観察眼と明快なロジック、腕っぷしが必要になるときはバリツによって事件を解決に導いていくところにあるが、クトゥルーの神々には当然ながらロジックもバリツも通じない。理屈が通じない神々と出会った時、ホームズとワトソンはどのような反応を返すのか──!? と、正直座組を聞いた段階でワ

    ホームズがクトゥルーの古き神々と遭遇する大胆不敵なマッシュアップ──『シャーロック・ホームズとシャドウェルの影』 - 基本読書
  • 仕事が行き渡らない世界がやってきたら、我々はどうやって生きていけばいいのか?──『WORLD WITHOUT WORK――AI時代の新「大きな政府」論』 - 基本読書

    WORLD WITHOUT WORK――AI時代の新「大きな政府」論 作者:ダニエル・サスキンドみすず書房Amazon近年、AIなどのテクノロジーの進歩は、人間から仕事を奪う。いや歴史が証明しているようにテクノロジーの進歩は新しい仕事を作り出すから人は新しい仕事へと移るだけだ。その移行には数十年かかるから現代を生きる我々の救いにはならない! など、さまざまな「テクノロジーの進歩と仕事」についての主張が交わされてきた。 数十年に渡るそうした論争の末、近年のノンフィクションでは、「多かれ少なかれテクノロジーの進歩は人間の仕事を奪う」方向に傾いているように思う。たしかにこれまで多くの仕事は、自動車やトラクターが馬を(少なくとも移動の手段としては)不要としたように、テクノロジーの進歩によって消え、また新たな仕事を作り出してきた。だが、それはいうても新しいテクノロジーが結局人間の完全な代替にはならな

    仕事が行き渡らない世界がやってきたら、我々はどうやって生きていけばいいのか?──『WORLD WITHOUT WORK――AI時代の新「大きな政府」論』 - 基本読書
  • アフリカの文化が色濃く反映された、様々な種族の文化摩擦と対立、その調和を描き出すSF長篇──『ビンティ ー調和師の旅立ちー』 - 基本読書

    ビンティ ー調和師の旅立ちー (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) 作者:ンネディ オコラフォー早川書房Amazonこの『ビンティ』は、米国オハイオ州生まれのアフリカアメリカ人作家ンネディ・オコラフォーによるスペースオペラ的SF長篇である。三作の中篇から構成され、第一部の「ビンティ」は2016年のヒューゴー、ネビュラの中篇賞を受賞している。 著者のデビューは2000年の短篇で、その後ノベライズなど多数の作品を手掛けているベテランだが、邦での翻訳作品は多くない。あまり調べてないが書以前だとナディ・オコルフォア名義の『光の妖精 イリデッサ』だけかな? なので、僕も著者の書(ビンティ)ではじめて読んだが、著者のルーツを活かしたアフリカ文化をスペースオペラの広大な宇宙の中に投入し、考えや文化の大きく異なる種族の接触と、その際に避けることのできない文化摩擦を描きながら、筋としてはドストレ

    アフリカの文化が色濃く反映された、様々な種族の文化摩擦と対立、その調和を描き出すSF長篇──『ビンティ ー調和師の旅立ちー』 - 基本読書
  • 暗殺作戦、苦難のすべてがこの一冊にまとまった、圧倒的な密度を誇る大著──『イスラエル諜報機関 暗殺作戦全史』 - 基本読書

    イスラエル諜報機関 暗殺作戦全史(上) 作者:ロネン バーグマン発売日: 2020/06/04メディア: Kindle版イスラエルの諜報機関──モサド、シン・ベト、アマンの3機関はその能力の高さから世界中に恐れられている。何より暗殺の作戦数が豊富で、一説によるとイスラエルがこれまで国として行ってきた暗殺作戦は2700件にも及ぶという。イスラエルが国として成立したのが70年前の1948年であることを考えると、驚異的な数といえる。 というわけでこの『イスラエル諜報機関』は、そんなイスラエルの諜報機関がこれまで行ってきた暗殺作戦を、その最初期から現代に至るまで丁寧に追った一冊になる。イスラエルの諜報機関の情報って公開されてんの?? と疑問に思ったが、やはりまったく公開されていないみたいで、国防省に調査協力を求めても無意味。イスラエルの各情報機関に、法律の規定に基づいて過去の文書の資料開示を要求す

    暗殺作戦、苦難のすべてがこの一冊にまとまった、圧倒的な密度を誇る大著──『イスラエル諜報機関 暗殺作戦全史』 - 基本読書
  • 薬物はどのように精神を変質させるのか?──『幻覚剤は役に立つのか』 - 基本読書

    幻覚剤は役に立つのか (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズIII-10) 作者:マイケル・ポーラン発売日: 2020/05/26メディア: 単行LSDやマジックマッシュルームと聞くと僕などは「やばいドラッグ」ぐらいの認識しかないが、近年こうした幻覚剤が再度盛り上がりつつある。アングラな連中が製造しているというわけではなく、医療目的や研究対象として再注目を浴びているのだ。 たとえば、2010年頃、ニューヨーク・タイムズの一面に幻覚剤を用いる医師たちについての記事がのった。これは、ガンの末期患者に死を目前とした時の「実存的苦痛」に対処するため、マジックマッシュルームの有効成分であるサイロシビンを与える措置についての記事で、余命宣告されて精神的に参っている人に対して、幻覚剤を用いることでその苦痛を少しはやわらげられるのではないかという。 で、これを実施したところ、有志の被験者の多くがガンや

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    minemuracoffee
    minemuracoffee 2020/06/10
    おもしろそう
  • ハヤカワの1000作品が最大50%割引の超大型電子書籍セールがきたのでオススメを紹介する!! - 基本読書

    三体 作者:劉 慈欣発売日: 2019/07/04メディア: Kindle版うおおおコロナで外に出る理由もない今日この頃、突如として早川書房から1000作品が最大50%割引の超大型電子書籍セールをはじめたのでオススメを紹介します!! 早川は毎年、海外SFだったり日SFだったりと、わりとテーマを絞った数十〜数百点規模のセールはやっていたのだけど、垣根がなくここまで大規模のセールははじめてでは!? 早川といえばSFとミステリと科学ノンフィクションなので、そこらへんを重点的に紹介してみようかと思いやす。ちなみにセール商品全点は下記の通り。 www.amazon.co.jp SF篇 まず「これは当然だよなあ?」レベルの王道から行くと、なんといっても劉慈欣の『三体』だ! 識者らがアンケート形式で投票し、その得票数でランキングを決める「SFが読みたい!」というムックのランキングで2位を大きく突き放し

    ハヤカワの1000作品が最大50%割引の超大型電子書籍セールがきたのでオススメを紹介する!! - 基本読書
    minemuracoffee
    minemuracoffee 2020/03/13
    アツい
  • 今世紀最高のSF短篇集といっても過言ではない、テッド・チャン最新作──『息吹』 - 基本読書

    息吹 作者:テッド・チャン出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/12/04メディア: 単行ついにテッド・チャン最新短篇集『息吹』が刊行された! テッド・チャンは映画『メッセージ』の原作が含まれているSF短篇集『あなたの人生の物語』の著者として知られるが、その圧倒的な質の高さと反比例するかのように寡作で、これが17年ぶりの作品*1である。だが、それだけ待っただけのことはある圧巻の作品集だ。 現在までの29年のキャリアの中で出したのは短篇集二作のみなのだから、まさに寡作の王といってもいい貫禄ではあるが、(それだけの時間をかけたから、といっていいのかどうかはともかく)テッド・チャンが描き出す世界はとてつもなく緻密で、ありえないほど美しい。この短篇集も、SFを読む喜びに満ちていて、このような作品に出会うために小説を読んでいるのだ、と改めて実感させてくれる傑作揃いである。 テッド・チャン

    今世紀最高のSF短篇集といっても過言ではない、テッド・チャン最新作──『息吹』 - 基本読書
  • ジャレド・ダイアモンドが導き出す、国家はどのように危機を乗り越え、今どのような危機の中にいるのか?──『危機と人類』 - 基本読書

    危機と人類(上) 作者: ジャレド・ダイアモンド,小川敏子,川上純子出版社/メーカー: 日経済新聞出版社発売日: 2019/10/26メディア: 単行この商品を含むブログを見る危機と人類(下) 作者: ジャレド・ダイアモンド,小川敏子,川上純子出版社/メーカー: 日経済新聞出版社発売日: 2019/10/26メディア: 単行この商品を含むブログを見る『銃・病原菌・鉄』で一世を風靡したジャレド・ダイアモンドの最新刊がこの『危機と人類』である。七カ国を対象として、それぞれの国が陥ってきた危機と、それをどのようにして乗り越えてきたのか。また、今現在まさに危機にある国を取り上げ、比較しながら「国家的危機」についての枠組みについて考察しよう、という一冊だ。 「危機」にもいくつもの種類があるが、書で取り上げられるのは、国家を揺るがすほど大きな危機、また現代の国家で起こったことについて限定され

    ジャレド・ダイアモンドが導き出す、国家はどのように危機を乗り越え、今どのような危機の中にいるのか?──『危機と人類』 - 基本読書
  • SFミステリアドベンチャーゲームの快作──『AI:ソムニウムファイル』 - 基本読書

    AI: THE SOMNIUM FILES(アイ: ソムニウム ファイル) -Switch 【CEROレーティング「Z」】 (【予約特典】スペシャルサウンドトラック~REVERIES IN THE RaiN~ 同梱) 出版社/メーカー: スパイク・チュンソフト発売日: 2019/09/19メディア: Video Gameこの商品を含むブログを見る先日中国のミステリ/SF作家の陸秋槎さん(だけど金沢に住んでる)がこの『AI:ソムニウム ファイル』を中国のミステリーファンの間で話題だとツイートしていて気になってすぐ買ってやったのだが、確かにSFミステリとして抜群におもしろい。 陸秋槎 on Twitter: "三連休にこれをクリアした。最近中国のミステリーファンの中に結構話題になったが(中国語訳があるから)、日であんまり注目されていないね。SFミステリー傑作だと思う。… " 最初の3時間ぐら

    SFミステリアドベンチャーゲームの快作──『AI:ソムニウムファイル』 - 基本読書
    minemuracoffee
    minemuracoffee 2019/10/03
    欲しい
  • 全篇詩のように短い文体で綴られた、復讐と暴力の連鎖──『エレベーター』 - 基本読書

    エレベーター 作者: ジェイソン・レナルズ,青木千鶴出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/08/20メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る全篇詩のような短い文体で綴られていく、復讐と暴力の連鎖を描く物語だ。一ページに十数行、場合によっては一行や二行、常に最大限の効果を発揮するように文字が配置されており、文章のビートにのって途切れずに読み進めると、復讐心と悲しみの詰まったカオス的な感情へと深くシンクロしていくことになる。全篇詩のような文体と書いたが、実際には極限まで切り詰められた詩の入り口に立っているような小説の文体であり、すべてが象徴的に機能するように綿密に設計されているのが素晴らしい。 あらすじとか紹介する 主人公は、銃撃で兄を突然殺された黒人の少年ウィル。彼の属するコミュニティには3つの掟があった。ひとつ、『泣くな。何があろうと、けっして泣いてはならない

    全篇詩のように短い文体で綴られた、復讐と暴力の連鎖──『エレベーター』 - 基本読書
    minemuracoffee
    minemuracoffee 2019/08/22
    おもしろそう
  • ゾンビ化が始まったが最後、緩やかに自我と身体が失われてゆく──『マーチング・ウィズ・ゾンビーズ ぼくたちの腐りきった青春に』 - 基本読書

    マーチング・ウィズ・ゾンビーズ ぼくたちの腐りきった青春に (ジャンプジェイブックスDIGITAL) 作者: 折輝真透,うえむら出版社/メーカー: 集英社発売日: 2019/06/19メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る第四回ジャンプホラー小説大賞の、初の金賞受賞作にして著者折輝真透のデビュー作。地味に凄いのが先日早川書房のアガサ・クリスティー賞でも折輝真透は受賞していることで、早速その実力の高さ、平均値の高さを証明してみせたといったところ。 実際、作(『マーチング・ウィズ・ゾンビーズ』)はゾンビ物にして青春物、しかも主人公(ゾンビ化して死を待っている状態)はフィッツジェラルドに憧れており、しきりとフィッツジェラルドの作品や人生を振り返ってみせる──というなんだかよくわからない取り合わせながらも、全体を通して実に読ませるのだ。何らかのジャンルの枠組みに入るというよりかは、

    ゾンビ化が始まったが最後、緩やかに自我と身体が失われてゆく──『マーチング・ウィズ・ゾンビーズ ぼくたちの腐りきった青春に』 - 基本読書
    minemuracoffee
    minemuracoffee 2019/07/11
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  • 〈ゲーム・オブ・スローンズ〉原作者のSF短篇集──『ナイトフライヤー』 - 基本読書

    ナイトフライヤー (ハヤカワ文庫SF) 作者: ジョージ・R・R・マーティン,鈴木康士,酒井昭伸出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/05/02メディア: 文庫この商品を含むブログを見るゲーム・オブ・スローンズの最終章の終幕が間近に迫るさなか、その原作者ジョージ・R・R・マーティンの中短篇集が刊行。ゲースロ視聴者であっても原作の〈氷と炎の歌〉シリーズはその凄まじい分厚さもあって読んでいない人が多いだろうが、実は(もなにもないが)ジョージ・R・R・マーティンは小説も超おもしろいのだ! この中短篇集も文庫で570ページ超え(第五短篇集の全訳。初刊行は1985年だが、昨年改題のうえ再刊されている。)と、短篇集のわりに非常に重たいのだが、ゾンビあり、超能力者あり、なんだかよくわからない色んな生物や異星人あり、様々な神話や宗教が出てきて──と、ゲースロのあの異種格闘技戦じみたジャンル混交っ

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  • 異常な傑作──『雛口依子の最低な落下とやけくそキャノンボール 』 - 基本読書

    雛口依子(ひなぐちよりこ)の最低な落下とやけくそキャノンボール 作者: 呉勝浩出版社/メーカー: 光文社発売日: 2018/09/19メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る呉勝浩さんの作品はこれが初読だが、異常な傑作であった。最近僕はKindleの読み上げでを読むのを試しており、順調に20冊ぐらい読んでいたのだが、はじめて「先が気になって気になってしょうがなくなって聞いているだけじゃ遅いので実際に読み始めてしまった」である。それはいったい、どのようななのか? 簡単に説明してしまえば、主に2017年を舞台にした現代物で、とある連続殺人事件に巻き込まれた女子二人が、謎まみれの事件の背後に何があったのかを追っていく過程で、女子二人のうちの一人である雛口依子のおぞましい人生、そしてやけくそなキャノンボールが描かれていく──と、タイトルを絡ませながら紹介するとそんな感じに

    異常な傑作──『雛口依子の最低な落下とやけくそキャノンボール 』 - 基本読書
  • デビュー作にして超ド級の傑作ハードSF──『ランドスケープと夏の定理』 - 基本読書

    ランドスケープと夏の定理 (創元日SF叢書) 作者: 高島雄哉出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/08/30メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る書『ランドスケープと夏の定理』は第5回創元SF短編賞を受賞した高島雄哉の、受賞作を端緒とする3編の連作短編集にして、単行のデビュー作になる。その作風を一言でいえばキャラ萌えが追加されたグレッグ・イーガン(いや、イーガン作品のキャラに萌えないってわけじゃないですよ!)、日作家でいうならば小松左京みたいなもんで、ちゃくちゃおもしろい。ぜんぜんデビュー作って感じじゃない。 21世紀後半を舞台に、22歳で教授になった天才物理学者の姉と、姉には及ばないものの優秀な弟が、世界を激変させる知性に関する3つの新しい定理を解き明かしていく──と、ざっくり表現すればそんな話になる。第一作「ランドスケープと夏の定理」では、”すべての

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  • 人類のほぼ全てが視力を失った終末世界──『トリフィド時代―食人植物の恐怖』 - 基本読書

    トリフィド時代 (人植物の恐怖)【新訳版】 (創元SF文庫) 作者: ジョン・ウィンダム,中村融出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/07/30メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見る英国SF界にその名を轟かすジョン・ウィンダムの代表作『トリフィド時代』の新訳版が出た。僕も三足の動く植物がまあなんかスゲーんだよ!! という雑な評判は知っていたのだが読むのは今回がはじめて。第二次世界大戦の爪痕が色濃く残る1951年に刊行された作品だけれども、今読んでもめちゃくちゃおもしろい。 基的には終末世界をわずかに生き残った人間がロードームービー的に旅をしていくのだが、その世界には人間をべる凶悪な植物〈トリフィド〉がいて──と、今でいうと終末ゾンビ物のゾンビがトリフィドに入れ替わったような感じか(内容はずいぶん違うが)。ゾンビだと「死」の象徴としての側面が強いし、手垢が

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  • 『火星の人』のアンディ・ウィアー最新作──『アルテミス』 - 基本読書

    アルテミス(上) (ハヤカワ文庫SF) 作者: アンディ・ウィアー,小野田和子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2018/01/24メディア: 文庫この商品を含むブログを見るアルテミス(下) (ハヤカワ文庫SF) 作者: アンディ・ウィアー,小野田和子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2018/01/24メディア: 文庫この商品を含むブログを見る火星でひとり生き残った男の決死のサヴァイブを描く超ド傑作ハードSF『火星の人』のアンディ・ウィアーが月を舞台に書いた最新作がこの『アルテミス』だ。 『火星の人』はめちゃくちゃおもしろかったとはいえ、商業としてはアンディ・ウィアーの第一作で、一発だけの特大の花火だった可能性は捨てきれない。なので随分時間が経ってから刊行されたこの第二作、もちろんめちゃくちゃ楽しみではあったものの、ひょっとしたらひょっとして大駄作だったりするのでは──という不安

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    minemuracoffee
    minemuracoffee 2018/01/26
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  • かくも多様な性交の世界──『セックス・イン・ザ・シー』 - 基本読書

    セックス・イン・ザ・シー (講談社選書メチエ) 作者: マラー・J・ハート,桑田健出版社/メーカー: 講談社発売日: 2017/08/10メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る多くの生物は何事か崇高な目的のためというよりかは、自身の遺伝子を後世に残す衝動によって突き動かされている。『生存術に優れ、長生きできたとしても、禁欲的な生活を送っていたら進化の面では敗者だ。一方、性的な魅力にあふれ、相手を魅了してものにすることに長けているなら、事をすませるまでの間だけ生きてさえいればいいということになる。』『結局のところ、すべてはセックスに行き着く。』 というわけで書は海の中で暮らす生物はどんな風にセックスしているのか、と色んな事例が網羅された一冊になる。『海中において、正常位は少数派だ。』というように、複数の個体が輪になってヤったり、体の小さいオスがメスの腎臓の内部で暮らし

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  • なぜ、地球に巨大人型ロボットが埋められていたのか?──『巨神計画』 - 基本読書

    巨神計画〈上〉 (創元SF文庫) 作者: シルヴァン・ヌーヴェル,加藤直之,渡邊利道,佐田千織出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2017/05/11メディア: 文庫この商品を含むブログ (2件) を見る巨神計画〈下〉 (創元SF文庫) 作者: シルヴァン・ヌーヴェル,加藤直之,渡邊利道,佐田千織出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2017/05/11メディア: 文庫この商品を含むブログ (2件) を見るある時、アメリカで全長約6.9メートルの巨大な手と、謎の記号が記されたパネルが発見される。16枚からなるパネルは、縱橫の長さは3メートル×9.8メートル。それらは、放射線炭素年代測定によると3000年前に作られた物だと考えられる。 そのうえ"手"はイリジウムという特別密度が高く、地球ではほとんど手に入らない(年間の採掘量はわずか4トンしかないレアメタル)珍しい金属で構成されている。

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  • 笑ってしまって読み進まない──『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』 - 基本読書

    鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。 作者: 川上和人,出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2017/04/18メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログ (2件) を見る書は一言でいうと鳥類学者による研究生活をつづった鳥エッセイ集なのだが、これがまあ異様におもしろい。鳥類学者として著者がしてきた研究内容、体験談がそのまんまおもしろいのはもちろんだが、それ以上に文体がエキセントリックである。 霧の中に点々と鳥の死体が落ちている。日常生活では、鳥の死体は反物質と対消滅してしまうため目にする機会は少ないが、南硫黄島には反物質がないので消滅しない。それどころか、ネズミやカラスなど死体をべる脊椎動物もおらず、死体はゆっくり分解される。よく見ると、蔓や枝にも死体が引っかかっている。生体よりも死体が好きな私には、天国のような地獄絵図である。多産される死体は豊かな自然の証拠だ。結構

    笑ってしまって読み進まない──『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』 - 基本読書
    minemuracoffee
    minemuracoffee 2017/04/30
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