日本酒業界に新風を吹き込む新たな挑戦が、京都の地で静かに始まった。その中心にいるのは、「日々(にちにち)醸造株式会社」の代表・松本日出彦さんだ。松本さんは、2020年まで実家である「松本酒造」の杜氏を務めていたが、より理想とする酒を造るべく、同社蔵元だった父・保博さんとともにその職を退き、新たに酒造会社を設立した。 退任、武者修業、そして新天地へ 2021年に誕生した日々醸造は、京都市伏見にある。石炭を貯蔵していた蔵をリノベーションした社屋と、そこに隣接する新設の醸造場からなる小規模の酒蔵だ。小規模とはいえ、前職を退任してから1年足らずでこれを完成させたのだから、新拠点立ち上げまでの段取りの良さに感心するとともに、松本さんの酒造りに対する強い想いと欲求を感じずにはいられない。 この想いを象徴するのが、松本さんが“武者修業”と呼ぶ酒造り行脚。松本さんが前職を退いてから間もなく、同年代の仲間と
