*「夏へのトンネル、さよならの出口」のネタバレを含みます。 スマホのアラームが鳴るより先に、暑苦しさで目が覚めた。 ベッドから上体を起こす。時計を見ると、六時半だった。カーテンの隙間から朝日が差し込み、セミの鳴き声が聞こえてくる。トレーナーの襟元をぱたぱたしながら、僕はアラームを解除した。二度寝するには微妙な時間だった。 寝室からダイニングに移ると、むわっとした熱気が全身を包んだ。 暑い……もう九月なのだから、いい加減涼しくなってほしい。 エアコンを点けて、カーテンを開ける。それからキッチンに入って、食パンをトースターにセットした。焼き上がるまでの時間で、顔を洗い、歯磨きを済ませる。東京に引っ越してからもうじき二年、朝のルーチンは効率化が進んでいた。 焼き上がったパンにバターを塗っていると、花城がダイニングに入ってきた。ヘアバンドで髪をまとめて、額には冷えピタが貼ってある。目の下には、うっ
