筆者が話を聞いたアルコール依存症の本人や家族は13人だ。その中で、既婚者のすべてが離婚していた。アルコール依存症は本人だけではなく、家庭を壊し、家族を痛める。これは、「ある日突然、彼女は2人の息子を連れて家から姿を消しました」と語るアルコール依存症の男性の物語。 ◇怒り狂った男性 男性が「彼女」と呼ぶ妻が家から姿を消したことを知ったのは、何度目かの入院中だった。 「私は怒り狂いました」 アルコール依存症は無自覚の病気だ。 「確かに酒をたらふく飲んで、家族に不自由をかけたことがあるかもしれないけれど、酔っ払って彼女や子どもを殴ったことはなかったし、家具を壊したこともない。なぜ、彼女が逃げるように姿を消したのか、その時はまったく分からず、怒りしか湧いてきませんでした」 妻と子どもに逃げられ、怒りで我を忘れたのは男性が42歳の時だった。男性によると、30代半ばくらいまでは、妻は酒を飲むことにあま