悲願成就は東の支度部屋で迎えた。テレビ画面で、2敗の白鵬が力なく土俵を割る瞬間を見届けると、把瑠都はにやりと静かに笑い、歓喜をかみ締めた。 「言葉がない。今まで夢だったこと」 大関が13日目に優勝を決めるのは平成14年九州場所の朝青龍以来という快挙。人さし指を1本立て、気持ちよさげにカメラのフラッシュを浴びた。 母国エストニアで相撲と出合い、日大OBの仲介で来日したのが8年前。ナイトクラブでボディーガードをしていたという大柄な男は、所要8場所で関取の座を射止めるなど瞬く間に番付を駆け上がってきた。停滞に苦悩したのは大関昇進後だ。約1年前、「次の目標が決まらない。大関に上がって『良かった』という気持ちになってしまった」とこぼした。そして「自分は強いと自信を持たないといけないけど難しい。自分にプレッシャーを掛けて、勝たないと強くなれない」とも。程なく「目標は優勝」と公言するようになった。 13