記者コラム「多事奏論」 原真人 池田勇人の「所得倍増」、田中角栄の「日本列島改造論」。時の政権がバラ色の未来を描き、国民に希望や夢を与える。そんな試みはいつの時代にもある。 最近では第2次安倍政権の「アベノミクス」がそうだ。異次元の量的金融緩和を起爆剤に高成長を実現、強い日本経済を取り戻す、と高らかに宣言した。 とはいえ、国が貧しく国民が若くて人口が増えていた時代と、経済が成熟し超高齢化と人口減少が進む現代とでは求められる夢や希望のかたちがまったく異なる。 アベノミクスの掲げる夢は時代を誤っているし、その手法はあまりに危険だ。私は紙面で警鐘を鳴らしてきたが、その懸念がどれだけの人に共有されたかわからない。 「あなたは批判するが代案はあるのか」 以前、アベノミクスを肯定する大学教授からそう問われたことがある。「バラ色でない案ならある」と答えたら、「それじゃあ話にならないね」と突き放された。
![岸田首相にほしいサッチャーの道徳的勇気 愛されない覚悟で経済再建:朝日新聞デジタル](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/a42554b0c67210aa945cb0a2001434470f060227/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fimgopt.asahi.com%2Fogp%2FAS20211109001266_comm.jpg)