いわゆる「セゾン文化」は日本の高度経済成長期以後の、バブル期を頂点とする75-95年代における人文知の都市型の沸騰にかんしてひとつの象徴的な文化的役割を果たしました。そしてその書物文化の中枢にあった書店が「リブロ池袋店」でした。これら二つ――セゾン文化とリブロ――について、今月は重要な証言集が二冊も出ました。業界内部の証言というのは外部の人間に伝わる形ではほとんど表に出ませんから、とても歓迎すべきことです。 こうした証言をリアルなものと感じることのできる読者は、同時代を生きた70年代前半生まれまでの人々だろうと思います。その世代はこの本を様々な思い出や感慨とともに読むでしょう。あるいは直接的な関係者の皆さんは読みたくないかもしれません。生々しい記憶を持つ人にとっては、記憶を掘り返したり、万が一自身の体験と異なる記述を発見したりすることは、時として耐えがたいでしょうから。しかし、同時代的に経