2000年ころに新潮文庫がキャンペーンをうった時、「カラマーゾフの兄弟」の帯には上中巻(第1部から第3部まで)を読むのに2か月、下巻を読むのに2日というようなことが書いてあった。これはミステリー読みからするととてもまっとうな感想。というのは、第4部になると父フョードル殺人事件の捜査がストーリーの中心になっているから。事件の目撃者や関係者の証言が並べられ、重要容疑者が尋問に応じ、検事や関係者が事件を推理する。途中で、真犯人の自白があり、最後の第12編「誤審」では裁判でこれまでに記述された事件が再検討される。モダンな探偵小説と同じフォーマットで書かれているので、とても読みやすい。「カラマーゾフの兄弟」が書かれたのは1880年。同時期のコリンズやガボリオなどと比べると、はるかにモダンであり、このあとのコナン・ドイルの長編よりも洗練されている(ただし文字量は桁違いに多いが)。ミステリーに近いとよく