SCSKが健康経営に乗り出すきっかけとなったのは、2009年に同社の前身の1社である住商情報システムの社長に中井戸信英氏(現SCSK相談役)が就任したことだ。今でこそ健康経営の推進企業として知られるSCSKだが、当時は「社員たちが、昼休みに弁当も食べず机に突っ伏し、夜になるとタクシーが列を成す」(人事グループ ライフサポート推進室長の山口功氏)という状況。「IT企業は時間でなくインテリジェンスで勝負すべきなのに、時間を売り、健康を売っているだけだ。これではこの会社の未来はない」。中井戸氏は決意を固めた。 残業削減は経営にとっても重要である──。そう認識していても気になるのが「1人月いくら」というIT業界の受託開発の典型的な費用体系だ。「残業を減らしたら受注額も減ってしまい、業績に影響してしまうのでは」。役員や社員のなかには、そう心配する声もあったというが、中井戸氏ら経営トップは「たとえ一時