5月20日、国際政治学者イアン・ブレマー氏は、インド次期首相となるモディ氏には、国民が望むスピードで劇的な変化をもたらすことが求められていると指摘。写真は記者団に応じるモディ氏(2014年 ロイター/Adnan Abidi)
5月20日、国際政治学者イアン・ブレマー氏は、インド次期首相となるモディ氏には、国民が望むスピードで劇的な変化をもたらすことが求められていると指摘。写真は記者団に応じるモディ氏(2014年 ロイター/Adnan Abidi)
あっという間に1カ月が経ってしまった。前回「中国株式会社の研究」を掲載したのは1月20日。忘れもしない、あの極悪非道のIslamic State(以下IS)がオレンジ色の「囚人服」を着た湯川遥菜、後藤健二両氏の衝撃的映像を公表した、まさにその日だった。 爾来、来る日も来る日も、世の中の関心はIS関連ニュースばかり。正直なところ、筆者も過去1カ月間は中国にまで手が回らなかった。 一方、中国は中国で、中東情勢を固唾を飲んで見守っていたはずだ。北京はISに参加した数百人とも言われるウイグル人の動向を強く懸念していたに違いないからだ。 こうした中国外交の不気味な静寂は春節明けの2月23日に破られた。同日中国の王毅外交部長が国連安全保障理事会で、具体的国名こそ言及しなかったものの、「過去の侵略の犯罪を取り繕おうとする試み(attempts to whitewash past crimes of ag
2月19日、南シナ海で中国が建設を拡大させている人工島は、同国の軍や漁船の拠点となる可能性があり、領有権を争う周辺国に警戒感を与えている。写真は南シナ海を航行する中国の海洋監視船。昨年6月撮影(2015年 ロイター/Nguyen Minh) [香港 19日 ロイター] - 南シナ海で人工島の建設を急ピッチで進めている中国。そう遠くない将来、同国の海軍や空軍、漁船がそうした人口島を拠点に活動範囲を広げる可能性があり、同海域で領有権を争う周辺国に警戒感を与えている。 最近公開された衛星画像とフィリピン当局者の話を基にすると、人工島の建設はスプラトリー(南沙)諸島の6つの岩礁に拡大。またフィリピン政府は、今月には、中国の浚渫(しゅんせつ)船が7つ目の岩礁で作業を開始したと主張している。
□ヴァンダービルト大学名誉教授・ジェームス・E・アワー 先の戦争が終結して70年という記念の年にあたり、安倍晋三首相が何を話すべきか、あるいは話すべきでないかについて、外国人は誰も口を挟む余地などない。そこで、私が安倍首相だったら、このようなことを話したいと考えるだろうという私見だけをここで述べてみたい。 《誰でも権利がある靖国参拝》 記念日とは多くの場合、過去、現在と将来について考える機会となる。日本や他のアジア諸国を含む多くの国の大勢の人々に多大な苦しみを与えた戦争を振り返り、戦争で亡くなり負傷した、あまりにも多くの人々とその家族がこうむった多大な生命の損失と苦しみに対して、私が安倍首相であれば、理解と同情の念を表したいと思う。 また、昭和天皇と今の天皇陛下、前任の歴代首相が幾度も述べたように、戦争では悲惨な事態が引き起こされてしまうことを、わが国が理解していることを示すとともに、多く
安倍晋三首相の戦後70年談話は謝罪の表明を含むべきか。オバマ米政権は国務省報道官の言明などでその表明を望む意向をちらつかせる。だが同じ米側でも民間の識者の間では、日本のこれ以上の謝罪表明は不毛であり、中韓両国との関係改善や和解には寄与しない、との意見も目立ってきた。 米大手紙ウォールストリート・ジャーナル13日付は、同紙コラムニストで中国やアジアの専門家のアンドリュー・ブラウン氏の「日本にとって謝罪表明は難しい技だ」と題する論文を掲載した。同氏は安倍首相が70年談話で日本の戦時行動を全面的に謝罪して、中韓両国との関係改善や東アジアでの和解を図るべきだという声が米国でもあがっているが、「事態はそんなに簡単ではない」と論じる。 同氏はそのうえで、日本がすでに当時の宮沢喜一首相や村山富市首相らが数え切れないほど謝罪を述べてきたことを強調し、それでも中韓両国との「関係改善」や「和解」をもたらさなか
歴史の中に未来はない。あれば将来の得を取ろうと皆が歴史学者になってしまう。そういうことはあり得ないので、歴史の中に未来はないのである。他方、未来に対する先見性はいらないという社会科学者がいる。だが、先見性がなければ政策提言はできない。だから先見性は必要なものだ。 『大明律』にみる法の粗放性歴史を学ぶと情感は豊かになるかもしれない。だが現在ではそんなに悠長なことは言っていられない。先見性は跳ばなければ分からないが、この撥(は)ね板の位置と方向性を教えてくれるのが歴史である。とすれば役に立つ歴史とは、現在から遡(さかのぼ)って自分で調べてみるほかないというのが実感である。 中国や韓国の法治がどうもおかしいと、最近気がついた。あまりに恣意(しい)的で放埓(ほうらつ)である。粗放というべきかもしれない。そこで明国14~17世紀の『大明律』をひもといてみる。名前の偉そうさに騙(だま)されてはいけない
「TINA(ティナ)」という言葉がある。英国のマーガレット・サッチャー元首相が好んで使ったフレーズで、「There is no alternative(他に方法はない)」の略語だ。自民党も選挙スローガンで「景気回復、この道しかない」と掲げていたが、私もアベノミクスは「TINA」だと考えている。 こう話すと、2四半期連続のマイナス成長を指して、アベノミクスは正しくないのではないかと批判する人もいよう。ただ、思い起こしてほしいのは、アベノミクスは最初の1年半は非常にうまく行っていたということだ。日経平均株価は約70%上昇し、実質国内総生産(GDP)成長率も2012年度のプラス1%から2013年度にはプラス2.1%へと大きく改善した。 歯車を狂わせたのは、率直に言って、当初アベノミクスのメニューにはなかった消費増税(5%から8%への第一弾)を2014年4月に実施したことだ。安倍晋三首相も菅義偉官
ついに恐れていた事件がパリで起きた。フランス生まれのイスラム過激主義者が風刺週刊紙本社に乱入、自動小銃を乱射して記者や警官十数人を殺害したのだ。この許し難い蛮行には驚愕(きょうがく)と憤りを禁じ得ない。犠牲者のご冥福を心からお祈りする。 欧米メディアは連日、言論・表現の自由の重大な侵害として事件を大々的に取り上げた。各国首脳も口をそろえて「卑劣なテロを断固非難」した。当然だろう、異存などあるはずがない。だが、あまのじゃくの筆者はどこか引っ掛かる。ここは誤解を恐れず疑問点を挙げてみよう。 まずは問題とされた風刺画の質だ。漫画家たちに「表現の自由」があることは疑いない。風刺画の内容を変えろとか、掲載するななどというつもりもない。驚くのは風刺画家たちの無知と傲慢さだ。 特に、預言者ムハンマドに関する一部の風刺画は第三者の筆者が見ても悪趣味としか思えない。漫画家の自由はあくまで「表現」の自由であり
昨年末からロシアの経済状況がかなり深刻になっていることが日々伝えられている。ロシアは昨年のウクライナ危機深刻化まではG8メンバーであり、BRICSを牽引し、主に欧州のエネルギー輸入元となっているなど、世界での経済ポジションの大きさは小さくなく、ロシアの経済状況は、ロシアのみならず国際的にも影響を及ぼしつつある。 ロシアは2000年頃から、石油価格の上昇を受け、ソ連解体後の経済の停滞から脱し、経済大国としての評価を確立した。だが、2010年頃から資源の輸出は2009年以前のように強力な経済成長の源とならなくなっており、2013年頃からは経済成長率の予測もかなり低いものとなっていた。そしてそれを一番認識していたのはロシアかもしれない。表1のように、2013年の各種経済成長率の予測を比較すると、ロシア発のもの(ロシア連邦経済開発省(MED)によるもの)が一番低く、実際、MEDは2013年11月に
中東ではイスラム国(IS)の台頭に隠れ目立たないが、大きな変動が着実に進んでいる。それは、国をもたないクルド人が、北イラクを中心に独立国家への道を歩んでいることだ。 ISは、2014年8月にイラクのクルド地域政府(KRG)への本格的な攻撃を始めたが、それはトルコ、イラン、シリア、イラクに分散しているクルド人に国民形成と国家建設を促す大きなきっかけとなった。しかも、KRGを北イラク地方の自治政権から、米欧にとって国際政治に死活的な存在に転換せしめる触媒にもなったのだ。 KRGとISは、イラクとシリアにまたがる地域を迅速に占領することで、国際的に承認された既存の国境線をぼやけさせ、イラクとシリアの分裂が残した政治的真空を満たそうとしている。双方ともに、自治の強化や独立国家の既成事実化を図るために、1千キロにわたり直接に「国境」を接する互いの存在を強く意識するようになった。かれらは、相手を映し出
第4に、価格下落は純輸出国から純輸入国へ所得を再配分する。後者に入るのはユーロ圏、日本、中国、インドだ。米国は今では純輸出国だ。だが、重要な純輸出国は、こうした収入に大きく依存している国々だ。そこに入るのが、イラン、ロシア、ベネズエラだ。もっといい政権にはこんなことは起きようがないのだ! だが、独裁者が窮地に陥った時には危険もある。 第5に、エネルギー価格の下落は資産価格に変化をもたらす。すでにロシアルーブルの急落に見て取れるように、エネルギー生産国の為替レートは下落圧力にさらされる。原油安から直接的、間接的に恩恵を受ける企業の株価は上昇する。これは新たな株式市場のバブルを生むかもしれない。 最後に、原油安は経済の炭素強度を高くし、エネルギー効率を下げる恐れがある。だが、原油安は石油の税金を引き上げる、あるいは少なくとも石油消費に対する無駄な補助金を永遠に削減するチャンスも与えてくれる。こ
「日本の23歳に生まれ変わりたい」 海外エコノミストが語る、日本がこれから黄金時代を迎える3つの根拠 Uncovering Japan’s new golden age | Jesper Koll | TEDxKyoto バブル崩壊後 、経済成長が滞り「失われた20年」と評される日本経済。その将来について悲観論者が多いなか、エコノミストのJesper Koll(イェスパー・コール)氏は「もし生まれ変われるのであれば、23歳の若者に生まれ変わりたい」と語ります。「お金・イノベーション・人口」という3つの切り口から、日本経済が今後5~10年で新たな黄金時代を迎えると予想します。(TEDxKyoto2014より) 日本経済は新たな黄金時代に入った イェスパー・コール氏:私はエコノミストです。同時に私は日本の将来に対する真のオプティミスト(楽観主義者)でもあります。ただし、来年の国内総生産(GDP
米ワシントン・ポスト紙のコラムニスであるファリード・ザカリアが、11月13日付の同紙に「中国の増大する力」と題する論説を寄せ、中国は既存の国際秩序に挑戦しており、アジアでの冷戦にもなりかねない、と論じています。 すなわち、ロシアはその部隊をウクライナに送り、西側に正面から挑戦しているが、長期的には中国がより大きな脅威である。ロシアは、世界のGDPの3.4%しかない衰退する大国である。一方、中国のGDPは16%で、世銀によると、日本の約4倍、ドイツの5倍にあたる。 オバマ大統領と習近平主席が気候変動について歴史的合意をしたのは良いが、中国政府は、米国が作った1945年以来の戦後国際秩序を、中国の秩序で置き換えようとしている。もし中国がこの道を継続すれば、この四半世紀で最も重要で危険な国際政治のシフトになろう。 もちろん、胡錦涛時代にも、米国に替わり、中国が世界を主導するように求める本、例えば
12月3日、中国の潜水艦増強に近隣諸国が警戒感を強めるなか、インドは海軍の近代化プログラムを加速させている。写真はインド東部のビシャーカパトナムの軍港に停泊する、同国海軍のアリハント潜水艦(2014年 ロイター/R Narendra) [ニューデリー 3日 ロイター] - 中国の潜水艦増強に近隣諸国が警戒感を強めるなか、インドは海軍の近代化プログラムを加速させている。同時に、中国のインド洋進出を食い止めるべく、インドはスリランカなどの周辺国に圧力をかけている。 インドと中国の係争地カシミール地方で両国軍がにらみ合う事態に発展した直後の今年9月、中国の潜水艦がインドの南に位置するスリランカに初めて寄港した。中国はまた、インド洋に浮かぶ島国モルディブとの関係も強化している。
原油価格の下落は世界経済にとって何を意味するのか? その答えは、原油価格が下落した理由と原油安が続く期間によって変わってくる。だが、総合的には、原油安は注意事項を伴うとはいえ、世界経済にとって有益なはずだ。 とりわけ重要なのは、石油純輸出国に与える影響かもしれない。脆弱な生産国の中には、弱体化が切に望まれる政権が含まれる。その筆頭格がウラジーミル・プーチン大統領のロシアだ。 だが、ここでも、良いことがあれば悪いこともある。モスクワのガイダル研究所のキリル・ロゴフ氏が指摘している通り、原油価格の下落はプーチン氏の失地回復主義を激化させる恐れがあるのだ。 6月下旬から今月初めにかけて原油価格は38%下落した。これは大幅な下落だ。だが、それ以上に大幅な原油安が1985年の春から1986年の夏にかけて起きた。1980年代の初めから半ばにかけての原油急落――偶然ではなく、ソ連崩壊に先行して起きた出来
ベトナムとフィリピンは、この1カ月ほど、中国相手に実に奮闘している。とりわけ筆者がかねて注目しているのは、その戦い方である。 中国は、法律戦、心理戦、世論戦からなる、いわゆる「三戦」がお家芸のようだが、ベトナムとフィリピンが眼前で展開しているのも、まさに彼らなりの「三戦」なのだ。 中国が、国際法上根拠のない歴史のロジックをまま主張するのに対して、ベトナムとフィリピンの三戦はずいぶんと性質が違う。 現代世界では、「事実をして語らしめる」ことほど強力な武器はない。今、軍事力では中国に正面から立ち向かうことができないベトナムとフィリピンは、武器のようなハードなパワーではなく、ありのままの事実を語ることで、その潜在的なソフトなパワーを全開しつつある。 ベトナム政府が記者会見で示した動かぬ事実 この点で、6月5日午後4時からベトナム政府のゲストハウスで行われた「東海(ベトナムで言う南シナ海のこと)情
中国が、パラセル(西沙)諸島西側のベトナムの排他的経済水域(EEZ)内に石油採掘施設を持ち込み、それを艦艇多数で守り同国漁船を沈没させたりしている。中国は、南シナ海のほぼ全域を囲むように勝手に引いた「九段線」内に現場はあるとして自国領海内だと主張するが、九段線の国際法上の根拠を示したことはない。 ≪近代国家失格の軍幹部発言≫ 先頃シンガポールで開かれたアジア安全保障会議で、王冠中・中国人民解放軍副総参謀長は「南シナ海での中国の主権と管轄権は2千年前から確立しており(国連海洋法)条約発効のはるか前だ」と述べたと伝えられる。国際法に基づく国際秩序の原則も理解できない中国の態度が領土紛争の原因を作っているのであり、こんな国は到底、近代国家とはいえない。 中国側は今回、ベトナムの船舶が中国船に衝突してきた、中国は軍艦も派遣していないなどと主張しているが、現場の状況をみて、中国を信用する国はあるまい
尖閣諸島(沖縄県石垣市)への中国の攻勢がまた一段と激しくなった。毎週のような日本領海への侵犯に加え、最近では戦闘機の異常接近などの軍事的威圧も増してきた。 そんな状況下、尖閣問題を長年研究してきた米国のアジア政策専門家のラリー・ニクシュ氏が、現状では日本がますます劣勢になるとの認識から、日本政府はこの問題を国際司法裁判所(ICJ)に提訴すべきだという提案を公表した。同氏は米議会調査局のアジア専門官を長年務め、いまはワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)の上級研究員である。 日本政府は、尖閣は日本固有の領土であり、紛争はないとの立場から国際提訴に反対する。だがニクシュ氏は、提訴方針の表明が日本を大きく利すると説く。同氏は尖閣問題で日本の主張の正当性を暗に認めてきた研究者だけに、その新提案は紹介に値するだろう。 同氏は、中国の尖閣領域への浸透が軍事衝突を招く危険が日に日に増していると警告し
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