森田朗・東大教授の「会議の政治学」(慈学選書)は政府の審議会の意思決定メカニズムに焦点を当てた、珍しい書物である。審議会が「客観性を装って役所の考え方をオーソライズする『隠れ蓑』としての性質をもっている」(同書 p.10)ことは広く知られている事実だが、本書には数多くの審議会において座長を務めた著者だからこそ語れる審議会の本質が明快に整理されている。 「本書は、そもそもは退屈でフラストレーションの溜まる会議の最中に、会議の退屈な理由と運営化の効率化の方法について考え、作成したメモが出発点である」(p.181)という執筆の経緯も興味深いが、内容の専門性を考えると「多くの出版社が、このマニアックな本の出版をなかなか引き受けてくれないなか」(p.183)という出版社への謝辞の言葉も納得がいく。 本書の第一章第五節では「意見主張のテクニック」として、論理性・合理性には欠けるがよく見られる手法として