2023年1月29日のブックマーク (1,000件)

  • 感染予防には握手よりフィストバンプ?

    人と挨拶をするとき、病気の感染を防ぐには握手よりフィストバンプのほうが安全かもしれない。 PHOTOGRAPH BY SCOTT OLSON, GETTY IMAGES フィストバンプ(拳と拳を突き合わせるしぐさ)は、細菌の伝播率を握手の約4分の1に低減するという。「Journal of Hospital Infection」誌に発表されたこの驚くべき研究成果は、友人同士の笑い話から始まった。 ウェストバージニア州モーガンタウンの形成外科医で手外科医のW・トーマス・マクレラン(W. Thomas McClellan)氏はあるとき、同僚2人とメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)について話していた。MRSAは抗生物質に耐性をもち、治療の困難な感染症を引き起こす病原菌で、よく院内感染の原因となる。 「MRSAに感染している患者の部屋に入るときは、ガウンを着け、手を洗う」とマクレラン氏は述べる

    感染予防には握手よりフィストバンプ?
  • クリスマスの歴史とトリビア

    イタリア、ローマのコロッセオ正面で華やぐクリスマスツリー(2013年12月20日)。 PHOTOGRAPH BY GABRIEL BOUYS, AFP/GETTY IMAGES イブの今夜、クリスマスの起源から最近の祝われ方まで、あれこれをまとめてみた。◆クリスマスはなぜこの季節なのか 最も昼が短く、夜が一番長い冬至を過ぎると、太陽が再び高く昇るようになる。この季節を祝う風習は、イエス・キリストの誕生以前から各地に存在したごく自然な振る舞いだった。 古代ローマのサートゥルナーリア祭もその一つで、常緑樹を家に置き、ごちそうをべ、贈り物を渡すなど、今日のクリスマスの直接的な「先祖」とみなされることもある。 両者がこれほど似ている理由は、キリスト教徒が古代ローマの祝祭を乗っ取ったからだというのが現在の定説だ。古代ローマの祝祭シーズンの真っただ中に「キリストの誕生日」を配置し、キリスト教の祝祭に

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  • クリスマスの悪魔、クランプスの起源

    ゲルマンの伝統に起源をもつ怪物クランプスは、聖ニコラウスの“相棒”として子どもたちを怖がらせ、悪いことをせず良い子にするよう戒める。 PHOTOGRAPH BY SEAN GALLUP/GETTY IMAGES クランプス(Krampus)をご存じだろうか。半分ヤギ、半分悪魔の姿をして、“良い子”にするよう人々を叩いて回る恐ろしい怪物だ。 クランプスはあまり楽しげな存在ではない。頭に角、黒い髪、口に牙をもつ聖ニコラウス(サンタクロースの起源とされる人物)の“裏バージョン”は、手にした鎖と鐘を振り回し、さらに悪い子どもをお仕置きするための、束ねたカバノキの枝を持っている。そして悪い子どもたちを地獄へと引きずっていく。 この“クリスマスの悪魔”には、どのような起源があるのだろうか? ドイツ語の「Krampen」(鉤爪)に由来する名をもつクランプスは、北欧神話の女神ヘルの息子といわれている。この

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  • 写真家が語る博物標本の愉しみ

    ロザモンド・パーセル氏が撮影したピラニアの標。ハーバード大学が1859年に設立したアメリカ、マサチューセッツ州ケンブリッジの比較動物学博物館に収蔵されている。 Photograph by Rosamond Purcell 博物館の奥深く、埃だらけの保管室には、動植物の標が数多く眠っている。人々のイマジネーションを刺激する想像の宝庫でもあるが、ボストンを拠点に活動する写真家、ロザモンド・パーセル(Rosamond Purcell)氏にとっては生き方そのものだ。 同氏は自然史コレクションに潜り込み、忘れがたいイメージを表現する手法でキャリアを築いてきた。ときに恐ろしく、ぞっとするような美しさを持つ作品群は、アートに向き合う彼女のマニフェストでもある。 「普通一般の美を表現する題材は、私には必要ない。解き明かすおもしろさに欠けるからだ。それだけで完結してしまうような美しさよりも、工夫の余地が

    写真家が語る博物標本の愉しみ
  • アンモナイト、博物標本の愉しみ

    「アンモナイトが集中している化石層の切片標。各化石の成長段階はそれぞれ異なる」と写真家ロザモンド・パーセル(Rosamond Purcell)氏は説明する。この標はイギリス、ケンブリッジ大学のセジウィック地球科学博物館に保管されている。 Photograph by Rosamond Purcell 「アンモナイトが集中している化石層の切片標。各化石の成長段階はそれぞれ異なる」と写真家ロザモンド・パーセル(Rosamond Purcell)氏は説明する。「断面からさまざまな情報が読み取れる。例えば、上方の化石は殻が未熟だが、下方ほど完全な形のアンモナイトが多い。大量の標を見比べていると、単体だとわからない特徴が見えてくる」。 この標はイギリス、ケンブリッジ大学のセジウィック地球科学博物館に保管されている。 Photograph by Rosamond Purcell

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  • ハコフグ、博物標本の愉しみ

    トランクフィッシュとも呼ばれるハコフグの標。ほぼ四角の骨ばった魚で、ハチの巣模様の皮で知られる。「魚の模様から連想して、この箱に置いてみた。可愛い模様には、成長過程が刻まれている」と写真家ロザモンド・パーセル(Rosamond Purcell)氏は語る。 Photograph by Rosamond Purcell トランクフィッシュとも呼ばれるハコフグの標。ほぼ四角の骨ばった魚で、ハチの巣模様の皮で知られる。「魚の模様から連想して、この箱に置いてみた。可愛い模様には、成長過程が刻まれている」と写真家ロザモンド・パーセル(Rosamond Purcell)氏は語る。 そこまで詳細に理解するには、緻密に観察するしかないという。「対象との距離を詰めれば、もっと見つめたくなるはず」。 収集家ジョン・トラデスカントのコレクションで、イギリス、オックスフォード大学アシュモレアン博物館に収蔵されて

    ハコフグ、博物標本の愉しみ
  • オオサンショウウオ、博物標本の愉しみ

    19世紀にオランダから来日したドイツ人医師・博物学者のフィリップ・フランツ・フォン・シーボルトは、『日動物誌』で日の動物を西欧に紹介した。シーボルトが収集した標をもとに全5巻が刊行され、このオオサンショウウオの図版も含まれているという。 Photograph by Rosamond Purcell 19世紀にオランダから来日したドイツ人医師・博物学者のフィリップ・フランツ・フォン・シーボルトは、『日動物誌』で日の動物を西欧に紹介した。シーボルトが収集した標をもとに全5巻が刊行され、このオオサンショウウオの図版も含まれているという。「200年前の標収集では、画家が貴重かつ重要な役割を果たしていた」とロザモンド・パーセル(Rosamond Purcell)氏は指摘する。「専門家用に標を描く仕事は、現代の画家には馴染みがない。しかし、化石をイラストに起こせば、実物よりわかりやくな

    オオサンショウウオ、博物標本の愉しみ
  • サイの角、博物標本の愉しみ

    ハーバード大学の比較動物学博物館が長年収集したサイの角。撮影した写真家のロザモンド・パーセル(Rosamond Purcell)氏は、「角と陰が交錯する様子を気に入っている」とコメント。 Photograph by Rosamond Purcell ハーバード大学の比較動物学博物館が長年収集したサイの角。撮影した写真家のロザモンド・パーセル(Rosamond Purcell)氏は、「角と陰が交錯する様子を気に入っている」とコメント。「この標は何度も撮影しているが、今回は銅製のボックスに並べてみた。博物館では、天井、窓枠、容器、金属、紙など、現場にある物を背景として利用する場合が多い。回りを探せば必ず何か見つかるわね」。 Photograph by Rosamond Purcell

    サイの角、博物標本の愉しみ
  • Redditが温暖化否定の投稿を規制

    気候変動に否定的なユーザーの投稿を認めないRedditの姿が議論を呼んでいる。 Photograph by Paul Souders, Corbis 人気WebサイトRedditでは、ユーザーは音楽や科学などのテーマごとに、外部のニュース記事へのリンクやコメントを自由に投稿できる。ここでモデレーターとして掲示板の管理を行っている人物の1人がこのほど発表した論説記事が、議論を巻き起こしている。記事によると、Redditでは気候変動を否定する投稿を規制しているというのだ。 Redditの科学部門には、専門家とアマチュアを合わせて400万人を超す購読者がおり、24人のユーザーがモデレーターを務めている。そのうちの1人、ネイサン・アレン(Nathan Allen)氏が今月16日に、環境に関するニュースサイトGristに論説記事を投稿した。そこでは、気候変動に否定的な投稿をする一部のユーザーの投稿を

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  • 米国で進む若者の車離れ、4つの仮説

    アメリカでは、運転免許を持つ若者の割合はピーク時の1983年から大幅に減少している。この傾向は特に10代で顕著で、現在ではこの世代の若者の運転免許取得率は50%強にすぎない。 Graph by NG staff. Sources: U.S. Department of Transportation, U.S. Census Bureau アメリカでは、10代の若者が以前と比べて車の運転に興味を示さなくなっている。そんな中、米国エネルギー省エネルギー情報局(EIA)は年次報告書の中で、今後25年間の輸送エネルギー消費動向について、伸び率が大幅にダウンするとの見通しを示した。 EIAでは、12月16日付で発表した2014年版年間エネルギー見通しの中で、「自動車走行距離」(VMT)の伸び率が今後大幅に縮小するとの予測を示した。EIAの新たな予測では、VMTの年間成長率は0.9%とされているが、こ

    米国で進む若者の車離れ、4つの仮説
  • 同性愛行為が犯罪となる国々

    インド最高裁が下した判決に対して抗議する同性愛者権利活動家ら(12月11日)。 Photograph by Altaf Qadri, AP インドの最高裁判所は12月11日、イギリス植民地時代の1861年に制定された同性愛行為を禁止する刑法第377条を有効とする判決を下し、2009年に下級裁が示した違憲判断を却下した。この判決をめぐり、世界的に議論が巻き起こっている。 最高裁は、下級裁の越権行為であり、「自然の摂理に反する男性、女性または動物との性行為」を犯罪とする刑法を撤廃できるのは議会だけであるとした。 この法に違反した者は、最高10年の懲役刑に問われる。 「ビクトリア朝時代のこの古い法制度は、インドやジャマイカ、カリブ諸国など、イギリスが統治下の植民地に持ち込んだもので、“バガリー法”と呼ばれる。いわば同性愛行為を犯罪とする法律だ」と、国際人権保護団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」

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  • 対立の複雑さ、N・マンデラの足跡

    1990年9月15日、南アフリカ共和国のソウェト地区で、政党間の武力衝突が激化。炎に包まれるインカタ自由党(IFP)支持のズールー人男性を、対立政党であるアフリカ民族会議(ANC)の支持者がこん棒で殴りつけている。 Photograph by Greg Marinovich, AP 1990年9月15日、南アフリカ共和国のソウェト地区で、政党間の武力衝突が激化。炎に包まれるインカタ自由党(IFP)支持のズールー人男性を、対立政党であるアフリカ民族会議(ANC)の支持者がこん棒で殴りつけている。 ANCが勝利を収め、ネルソン・マンデラの大統領選出につながる1994年の全人種参加選挙まで、多くの国民が増加の一途を辿る武力衝突に脅えていた。特に、当初は共闘関係にあったANCとIFPの党派間抗争が激しさを増していた。さらに、これにつけ込んで多数派の黒人を抑圧しようと、白人至上主義者が両者の対立を煽

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  • 全人種の選挙、N・マンデラの足跡

    1994年4月、南ア史上初の全人種参加選挙に投票するため、早朝から人々が列をなす。26~29日の4日間に、すべての成人が国民議会と州議会議員の選出に1票を投じた。アフリカ民族会議(ANC)が圧倒的な勝利を収め、ネルソン・マンデラは第8代大統領に就任。4月27日は現在、「自由の日」として祝日に定められている。 Photograph by Tom Stoddart, Getty Images 1994年4月、南ア史上初の全人種参加選挙に投票するため、早朝から人々が列をなす。26~29日の4日間に、すべての成人が国民議会と州議会議員の選出に1票を投じた。アフリカ民族会議(ANC)が圧倒的な勝利を収め、ネルソン・マンデラは第8代大統領に就任。4月27日は現在、「自由の日」として祝日に定められている。 Photograph by Tom Stoddart, Getty Images

    全人種の選挙、N・マンデラの足跡
  • 27年後の釈放、N・マンデラの足跡

    ウィニー夫人と手をつないで歩きながら、拳を突き上げるネルソン・マンデラ氏。1990年2月11日の日曜日、世界中の目が、ケープタウン郊外のビクターフェルスター刑務所からの同氏釈放を報じるテレビに釘付けになった。 Photograph from AP ウィニー夫人と手をつないで歩きながら、拳を突き上げるネルソン・マンデラ氏。1990年2月11日の日曜日、世界中の目が、ケープタウン郊外のビクターフェルスター刑務所からの同氏釈放を報じるテレビに釘付けになった。 Photograph from AP

    27年後の釈放、N・マンデラの足跡
  • ウィニー夫人、N・マンデラの足跡

    1986年12月、拳を掲げてヨハネスブルグの治安判事裁判所に出頭するウィニー・マンデラ氏。ネルソン・マンデラ元大統領の夫人は前日、同市ソウェト地区への立ち入り禁止命令を無視し、警察に拘束されていた。 Photograph by Greg English, AP 1986年12月、拳を掲げてヨハネスブルグの治安判事裁判所に出頭するウィニー・マンデラ氏。ネルソン・マンデラ元大統領の夫人は前日、同市ソウェト地区への立ち入り禁止命令を無視し、警察に拘束されていた。 夫が終身刑で刑務所に収容されている間、夫人は自身の力で政治指導者として頭角をあらわす。しかし、リーダーとしての姿勢や、仲間の一部が起こした事件などにより、賛否が分かれる人物でもある。特に、夫人の家で少年が殴打され、後に謎の死を遂げた事件はスキャンダルに発展した。1996年3月、離婚。 Photograph by Greg English

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  • 独居房、N・マンデラの足跡

    ネルソン・マンデラが収監されていた、ロベン島刑務所の独房(政治犯区域Bセクションの独房5)。寒々とした房内には、ベッド代わりのマットと机、バケツが備えてあるだけだ。マンデラは釈放後も、刑務所時代と変わらず毎朝自分のベッドを整えていた。この習慣は、大統領就任後も変わらなかったそうだ。 Photograph by Matt Shonfeld, Redux ネルソン・マンデラが収監されていたロベン島刑務所の独房(政治犯区域Bセクションの独房5)。寒々とした房内には、ベッド代わりのマットと机、バケツが備えてあるだけだ。マンデラは釈放後も、刑務所時代と変わらず毎朝自分のベッドを整えていた。この習慣は、大統領就任後も変わらなかったそうだ。 当時、南アフリカ政府は、知名度が高い政治犯をロベン島に投獄していた。外部との郵便物はすべて検閲され、訪問者も時折許可されるだけだった。トイレとシャワーは共用で、マン

    独居房、N・マンデラの足跡
  • ネルソン・マンデラ、自由への闘争

    12月5日夜、南アフリカ共和国初の黒人大統領、人権運動指導者ネルソン・マンデラ氏が死去。95歳だった。写真は2006年撮影。 Photograph by Kim Ludbrook, European Pressphoto Agency 12月5日夜、南アフリカ共和国初の黒人大統領、人権運動指導者ネルソン・マンデラ氏が死去した。享年95歳。同国で3世紀にわたった白人による黒人支配は、1994年の大統領就任により終焉を迎えた。 ネルソン・ホリシャシャ・マンデラ(Nelson Rolihlahla Mandela)は1918年7月18日、南アフリカの主要民族集団のひとつ、コーサ人の首長の家系に生まれた。 フォートヘア大学とウィットウォータースランド大学で法学を学び、在学中の1944年にアフリカ民族会議(ANC)に入党、反アパルトヘイト運動に身を投じる。1952年、ANC副議長に就任。キューバ革命

    ネルソン・マンデラ、自由への闘争
  • 引退後の生活、N・マンデラの足跡

    ヨハネスブルグのネルソン・マンデラ財団で会談を終え、手を振って別れを惜しむドイツのアンゲラ・メルケル首相(左)に笑顔で応えるネルソン・マンデラ元大統領。2007年撮影。 Photograph by Peter Dejong, AP ヨハネスブルグのネルソン・マンデラ財団で会談を終え、手を振って別れを惜しむドイツのアンゲラ・メルケル首相(左)に笑顔で応えるネルソン・マンデラ元大統領。2007年撮影。 政界を引退した後もマンデラ氏は、数年にわたり各国首脳と親交を深めた。ここ数年は家族と隠遁生活を送り、公の場に姿を見せる機会は主要な国民行事の際に限られていた。90歳を超えてからは病気がちで、刑務所暮らしで患った肺疾患のため入退院を繰り返していたという。 Photograph by Peter Dejong, AP

    引退後の生活、N・マンデラの足跡
  • 伊400発見:さらに未発見の潜水艦も

    伊号第四〇〇潜水艦の発見に用いられた、ハワイ大学が運用する潜水艇「パイシーズV」。 Photograph courtesy NOAA HURL Archives 第二次世界大戦中に旧日海軍が建造した巨大潜水艦が発見された。この伊号第四〇〇潜水艦(伊400)は、1945年にハワイ州オアフ島南岸沖に沈んだものだ。 全長46メートルの巨大格納庫に水上攻撃機「晴嵐」を3機搭載できる同艦は、旧日軍が戦争のために建造した伊四〇〇型(または潜特型)潜水艦と呼ばれる潜水空母のひとつで、3隻あった同型艦の一番艦だ。 伊四〇〇型潜水艦は、1960年代に弾道ミサイル搭載原子力潜水艦が登場するまで、世界最大の規模を誇った。 「連合国側は、日が降伏するまで、これら潜水艦の存在さえ知らなかった」と、今回の引き揚げ作業を手がけたホノルルにあるハワイ大学の運用担当責任者、テリー・カービー(Terry Kerby)氏

    伊400発見:さらに未発見の潜水艦も
  • 人身御供、チムー王国の墳墓

    8月下旬、南米ペルー北部沿岸の砂漠地帯で、チムー文明末期の墳墓(複式構造)が発見された。貴族階級に属する音楽家と機織りの男女など、少なくとも4名が埋葬されている。写真は生贄と見られる遺骸2体で、墓の主に殉じたと考えられている。 Photograph by Matthew Helmer, NG Grantee 8月下旬、南米ペルー北部沿岸の砂漠地帯で、チムー文明末期の墳墓(複式構造)が発見された。貴族階級に属する音楽家と機織りの男女など、少なくとも4名が埋葬されている。写真は生贄と見られる遺骸2体で、墓の主に殉じたと考えられている。 古代都市遺跡サマンコ(Samanco)は、ネペーニャ川(Nepena River)の谷間にあり、規模は300平方メートルほど。紀元前800~200年に栄えた、小さな交易都市の遺跡が全体を占める。 しかし、紀元前の石造りの構造物以外に、日干しれんが造りの竪穴(たて

    人身御供、チムー王国の墳墓
  • 儀式用ナイフ、チムー王国の墳墓

    チムー王国末期の墳墓から遺骸と共に発掘された、銅製の儀式用ナイフ。色鮮やかな緑青が、数世紀の歴史を感じさせる。柄の先端を小さな鋳物の頭で飾ったインカ様式で、左はリャマ、右は人間をかたどっている。 Photograph by Matthew Helmer, NG Grantee チムー王国末期の墳墓から遺骸と共に発掘された、銅製の儀式用ナイフ。色鮮やかな緑青が、数世紀の歴史を感じさせる。柄の先端を小さな鋳物の頭で飾ったインカ様式で、左はリャマ、右は人間をかたどっている。 この2は、珍しい羽根に覆われた木製の担架の頭側に縄で括り付けられていた。墓の主である男女は、担架ごと運ばれたと考えられる。傍らには大量の楽器と織物の道具も埋められていた。 考古学者のマシュー・ヘルマー(Matthew Helmer)氏は、「ぜいたくな墓の作りから、機織りや音楽家など、さまざまな職人も高貴な身分であったことが

    儀式用ナイフ、チムー王国の墳墓
  • 米NRC、急激な気候変動の監視を提唱

    北極の海氷:1979~2013年、毎年9月の月間平均量の推移。単位は100万平方キロ。 Graph by NG Staff. Source: NSIDC 現在進行中の気候変動はやがて“転換点”を迎え、“急激な”影響がもたらされるのではないかと専門家らは懸念している。そのリスクは現実的なものであるとして、専門家によるパネルがこのほど、気候変動を初期段階で感知する監視システムの構築を提唱した。 地球温暖化から災害につながる“転換点”を検討している全米研究評議会(NRC)のパネルが、このほど“急激な気候変動”の影響に関する報告書を作成した。そこでは、今後数十年間の注意すべきリスクとして、海水面の急激な上昇、水不足、生物種の絶滅を挙げている。 「気候変動は実際に今まさに起こっていることで、対処しなくてはならない。その第一歩は、われわれが急激な影響の手前のどの地点にいるのかを認識することだ」と、パネ

    米NRC、急激な気候変動の監視を提唱
  • 貴重な宝飾品、チムー王国の墳墓

    チムー王国末期の墳墓から遺骸と共に発掘された、銅製の儀式用ナイフ。色鮮やかな緑青が、数世紀の歴史を感じさせる。柄の先端を小さな鋳物の頭で飾ったインカ様式で、左はリャマ、右は人間をかたどっている。 Photograph by Matthew Helmer, NG Grantee ペルー北部で発見されたチムー王国の墳墓の主は、ラピスラズリやトルコ石、石英、スポンディルス貝などで作った首飾りをまとっていた。発掘チームが当時を予想して並べ直すと、非常に美しい意匠が蘇った(写真)。 3室構造の墳墓は、さらに2000年さかのぼる遺跡の地下に作られている。現地の祖先崇拝のしきたりに従った構造だ。発掘チームの責任者、マシュー・ヘルマー(Matthew Helmer)氏は、「チムー・インカ期の貴族階級や、アンデス社会の先祖に対する畏敬の念がうかがい知れる」と語る。 Photograph by Matthew

    貴重な宝飾品、チムー王国の墳墓
  • 鳥の笛、チムー王国の墳墓

    チムー王国の墳墓から見つかった、2個の壺をつなげた形の笛は、鳥のように美しい音色を奏でる。左の口からフルートのように息を吹き込みながら傾けると、中の液体が右側に流れてさえずりが生まれる。音色は液体の量によって変わるそうだ。 Photograph by Matthew Helmer, NG Grantee チムー王国の墳墓から見つかった、2個の壺をつなげた形の笛は、鳥のように美しい音色を奏でる。左の口からフルートのように息を吹き込みながら傾けると、中の液体が右側に流れてさえずりが生まれる。音色は液体の量によって変わるそうだ。 洗練された造りの黒い陶器はチムー文化の特徴で、型を用いる場合が多い。主に魚やカエル、または鳥やサル、、犬といった哺乳類を象っている。くすぶる窯で黒ずんだ表面を、陶工が丁寧に磨いて仕上げたという。 Photograph by Matthew Helmer, NG Gra

    鳥の笛、チムー王国の墳墓
  • 人体の細菌で発酵させたチーズ

    ヘソや足の裏など、人体各部に寄生する細菌で発酵させたチーズ。 Photograph by Alexandra Daisy Ginsberg 先ごろ、アイルランド、ダブリンのサイエンス・ギャラリーで開催された「Selfmade」という展示会に、一風変わった11種類のチーズが出品された。人間のヘソ、足の裏、口内、涙などから採取した細菌で発酵させたチーズだ。 作成者は、生物学者のクリスティナ・アガパキス(Christina Agapakis)氏と、臭いの専門家であるシセル・トラース(Sissel Tolaas)氏。生物学とアートやデザインとのコラボレーションを模索する「Synthetic Aesthetics(合成美学)」プロジェクトの一環として行われた展示会で、予想通り、来訪者の多くは問題のチーズを目の前に拒否反応を示していた。 「文字通り“考える糧”にしてもらおうと作った」とアガパキス氏は意

    人体の細菌で発酵させたチーズ
  • 北極海航路が活況、ロシアの思惑は?

    ロシアの原子力砕氷船「ヤマル」。ロシアは、4隻の原子力砕氷船を含む計37隻の砕氷船団を所有している。東アジアからロシア沖合を通ってヨーロッパに至る北極海航路では、ロシアの砕氷船の伴走が義務付けられている。 Photograph by Allan White, Corbis 北半球が冬に入り、アジアとヨーロッパをつなぐ最短の海上ルートが、間もなく今年のシーズンを終えようとしている。ロシア沖合の北極海を経由する全長およそ4800キロの「北極海航路(NSR)」は近年、地球温暖化の影響により夏場は解氷が進み、数カ月間限定で商業運行が具体化した。 ロシアの原子力砕氷船団を運用する国営企業ロスアトムフロートによると、今年、大西洋側のバレンツ海と太平洋側のベーリング海峡を結ぶロシア沿海の北東航路を航行した船舶は71隻で、昨年と比較して50%以上の増加だという。総数としてはまだ小規模だが、わずか4隻だった

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  • 系統学で見る「赤ずきん」のルーツ

    民話「赤ずきん」は、さまざまなバージョンが世界中で語られている。最新研究では「赤ずきん」と、もう1つの似た物語「狼と七匹の子山羊」がどこで生まれ、どのように進化していったかが定量分析によって追跡された。 Map by Matthew Twombly, NG staff. Source: Tehrani, J. J. PLOS ONE 2013;8(11):E78871 これは世界中で語られてきた物語だ。「赤ずきん」が祖母の家を訪ねると、祖母をべたオオカミが、祖母の服を着て、赤ずきんのこともべようと待ち構えていた。その後の展開は、話のバージョンによって異なる。 赤ずきんはべられたのか? 通りがかった狩人がオオカミの腹を割いて赤ずきんを助け出したのか? 赤ずきんがオオカミをだまして外へ出るのか? イランの一部地域では、幼い女の子が一人で出歩いたりしないという理由から、危険な目に遭うのは男

    系統学で見る「赤ずきん」のルーツ
  • 米国留学が世界にもたらすもの

    アメリカにやって来る交換留学生は、このところ増え続けている(資料写真)。 Photograph by George Rose, Getty Images アメリカでは、11月の感謝祭(サンクスギビング)に家族や友人が集まり、感謝の祈りを捧げ、お祝いをする。今年の祝日のテーブルを囲む客の中には、海外からの留学生もたくさんいることだろう。交換留学プログラムなどで教育を受けにやってきた学生たちだ。アメリカでは、留学生は非常に大きな存在となっている。アメリカ人は彼らの貢献に感謝しなければならない。 11月12日からの1週間は「国際教育週間」だった。これに合わせ、ワシントンの非営利団体、国際教育研究所(IIE)が、国際的な教育潮流に関する重要な年次調査報告書「オープン・ドアーズ」(Open Doors)を公表した。ここに報告されたアメリカへの留学生の数(とアメリカからの留学生の数)を通して、世界の様

    米国留学が世界にもたらすもの
  • クランベリーは“元祖スーパーフード”

    水を張った畑でクランベリーを収穫する農夫。 Photograph by Melanie Stetson Freeman, The Christian Science Monitor/Getty Images クランベリーは、アメリカの先住民族と入植者にとって重要な栄養源だった。 新世界に渡った入植者ピルグリム・ファーザーズが、アメリカ先住民の助けを借りて生き延びたことは有名な話だ。先住民族は彼らに、どのような作物を植えればよいか教え、トウモロコシやその他の栄養豊富な物を教えた。その1つ、アメリカのクランベリーは今も感謝祭の伝統的なごちそうに欠かせない材だ。 しかし、このクランベリーが400年前の“元祖エナジーバー(栄養補給品)”の材料だったことは、おそらくあまり知られていない。まだ“スーパーフード”(健康促進効果のある品)などという概念がない時代のことだ。 アルゴンキン族、チペワ族

    クランベリーは“元祖スーパーフード”
  • 個人業者の実態、ミャンマーの原油掘削

    ミャンマー中部の町ミンフラで、男性が油井のクランクを回して原油を汲み上げている(10月27日)。19世紀を思わせる光景だが、同国では前近代的で危険な手掘りの油井がいまだ現役で、個人レベルの原油採掘がそこら中で横行しているという。汲み上げた原油は地元の精製業者に売却、収入の足しにしている農民が多い。写真の男性の場合、1日の採掘で得る収入は3000円ほどだが、人によっては大幅に上回る場合もあるという。 Photograph by Damir Sagolj, Reuters ミャンマー中部の町ミンフラで、男性が油井のクランクを回して原油を汲み上げている(10月27日)。19世紀を思わせる光景だが、同国では前近代的で危険な手掘りの油井がいまだ現役で、個人レベルの原油採掘がそこら中で横行しているという。汲み上げた原油は地元の精製業者に売却、収入の足しにしている農民が多い。写真の男性の場合、1日の採掘

    個人業者の実態、ミャンマーの原油掘削
  • 廃業の危機、ミャンマーの原油掘削

    地下約90メートルの油井から汲んだ原油を、漏斗を使ってポリタンクに移す(10月27日)。ミャンマーの人権や環境の問題に取り組むNGO「アラカン・オイル・ウォッチ(Arakan Oil Watch)」によると、農民が原油を汲み上げる定番の方法は次の通りだ。まず竹竿か丸太で高さ12~15メートルの三脚を組み、上部に滑車を取り付けて掘削パイプを地面に降ろす。次に、人力で上げ下げしながら、何時間もかけて繰り返し地面に突き立てる。油層に達したら、手回しのクランクで原油を汲み上げるという。 Photograph by Damir Sagolj, Reuters 掘削のやぐらが取り囲む中、手回しのクランクで原油を汲み上げる女性(10月27日)。手掘りの油井は環境汚染などお構いなしで、生産性も非常に低い。しかし、彼らが得る利益は莫大で、ミャンマー国内に一大ブームが巻き起こった。も杓子も一山当てようと、そ

    廃業の危機、ミャンマーの原油掘削
  • 危険な手作業、ミャンマーの原油掘削

    地下約90メートルの油井から汲んだ原油を、漏斗を使ってポリタンクに移す(10月27日)。ミャンマーの人権や環境の問題に取り組むNGO「アラカン・オイル・ウォッチ(Arakan Oil Watch)」によると、農民が原油を汲み上げる定番の方法は次の通りだ。まず竹竿か丸太で高さ12~15メートルの三脚を組み、上部に滑車を取り付けて掘削パイプを地面に降ろす。次に、人力で上げ下げしながら、何時間もかけて繰り返し地面に突き立てる。油層に達したら、手回しのクランクで原油を汲み上げるという。 Photograph by Damir Sagolj, Reuters 地下約90メートルの油井から汲んだ原油を、漏斗を使ってポリタンクに移す(10月27日)。ミャンマーの人権や環境の問題に取り組むNGO「アラカン・オイル・ウォッチ(Arakan Oil Watch)」によると、農民が原油を汲み上げる定番の方法は次

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  • 世界最古の仏教寺院発見、ネパール

    ネパール中南部、ルンビニ村の寺院で祈りを捧げる巡礼僧。後ろでは地下の発掘が進められている。 Photograph by Ira Block, National Geographic 世界最古の仏教寺院がネパールで発掘された。紀元前550年ごろの遺跡で、釈迦(しゃか)の生年が従来の主流学説から100年ほど遡る可能性があるという。 発掘現場のネパール中南部、ルンビニ村は、釈迦(ゴータマ・シッダールタ)の生誕地として知られている。 研究チームのリーダーで、イギリスにあるダラム大学の考古学者ロビン・カニンガム(Robin Coningham)氏は、「分析の結果、世界最古の仏教寺院と判明した」と話す。 古代の木造遺跡は、毎年数十万規模の巡礼者が訪れる寺院のレンガ構造の地下に埋もれていた。 後年その上部に建立されたレンガ造りの仏教寺院は、古代のレイアウトを複製している。「つまり、仏教の聖地としての連続

    世界最古の仏教寺院発見、ネパール
  • 知られざるケネディ、未発表テープ公開

    没後50年を迎えたジョン・F・ケネディ元大統領。その素顔に関する友人たちの証言がラジオ番組となった。 Photograph by Henry Burroughs, AP 第35代アメリカ大統領、ジョン・F・ケネディが暗殺されてから11月22日で50年を迎える。友人たちが思い出を語った録音テープが発見され、ラジオ番組「We Knew JFK: Unheard Stories From the Kennedy Archives」にまとめられた。 同番組は、公共ラジオをインターネット配信する「Public Radio Exchange(PRX)」で11月18日に公開。プロジェクトの責任者スティーブン・アトラス(Stephen Atlas)氏は、「テープの存在自体はよく知られている。公開にこぎ着けるまでが大変だった」と語る。 インタビューの期間は事件後の数カ月間にわたり、有名人や政治家、バス運転手

    知られざるケネディ、未発表テープ公開
  • ペルー、モチェ文化の生贄は戦争捕虜か

    生贄とみられる複数の遺体。人々にさらされた後、竪穴に放り込まれたと考えられている。 Image courtesy Dr. John Verano 南米ペルーの古代神殿遺跡で発掘された遺体は、戦争の際に捕虜となった遠方出身者である可能性が高いことが明らかになった。考古学者らの研究チームが、生贄とみられる遺体の骨や歯を分析した結果が公表されている。 これらの遺体は、西暦100年から850年頃にかけてペルー沿岸部に栄えたモチェ文化の神殿遺跡で見つかった。部分的に切断された状態で竪穴に埋められている。 研究に参加したアメリカ、テュレーン大学の考古学者ジョン・ベラーノ(John Verano)氏によると、モチェ文化の生贄の素性に関して、高貴な人々、もしくは戦争捕虜という2つの説が存在したという。 ◆頻繁に行われていた生贄の儀式 ペルー北西部の都市トルヒーリョ近郊にあるワカ・デ・モチェ遺跡(Huaca

    ペルー、モチェ文化の生贄は戦争捕虜か
  • 古代人は巨石をいかにして運んだか

    クメール文明の象徴、カンボジアのアンコールワット。 Photograph by Robert Clark, National Geographic アンコールワットの寺院やエジプトのピラミッド、ストーンヘンジ、イースター島のモアイ像には、いずれも巨大な石材が使用されている。フォークリフトや油圧式クレーン、トラックなど存在しない時代、どのように何トンもの石材を運んだのだろうか? アメリカ、オレゴン大学でイースター島のポリネシア文化を研究する考古学者、テリー・ハント(Terry Hunt)氏は、「つい忘れがちだが、古代の人々も私たちに劣らない知性を備えていた」と指摘する。 巨大な石材を石切り場から運ぶために考案された、古代人の独創的な方法をいくつか紹介しよう。 ◆イースター島のモアイ像 火山岩から切り出されたモアイ像の重量は、4.5トンから73トンに及ぶ。石切り場から10~12キロメートル先の

    古代人は巨石をいかにして運んだか
  • 1万年前から? 英で蛙食の証拠発見

    『ラルース料理大辞典』によると、カエルの体でべられる部位は脚だけなのだそうだ。 Photograph by Jean-Daniel Sudres, Hemis/Corbis イギリスではしばしば、フランス人はカエルをべるといって侮蔑されてきた。 そこへ驚きのニュースが飛び込んできた。イギリスのウィルトシャー州にあり、ストーンヘンジからもほど近い考古学の発掘現場から、明らかに何らかの形で調理された痕跡のあるカエルの骨が発見されたのだ。 この骨のかけらはほぼ1万年前のものと見られる。「これはフランス最古の蛙の記録よりもはるかに古い」と、発掘を率いたバッキンガム大学のデイビッド・ジェイクス(David Jacques)氏は言う。「フランスでカエルの脚がべられていたことを示す最古の記録は、12世紀のカトリック教会の年代記に見られる」。 人類による蛙歴史は謎に包まれている。しかしジェイク

    1万年前から? 英で蛙食の証拠発見
  • ミシシッピ文化、カホキアは洪水で衰退

    カホキア(写真)付近で見つかった手がかりから、この集落にとって人口と繁栄のピークにあたる時期に洪水が起きたことが判明した。 Photograph by Ira Block, National Geographic 約1000年前、現在のイリノイ州セントルイス近郊にあたるミシシッピ川の氾濫原に、北アメリカ先住民の人々が住む大集落が忽然と現れた。今ではカホキアという名で知られるこの集落は、誕生から300年後には、ほぼ廃墟と化した。 カホキアの突然の登場とその後の急激な衰退の理由は、北米大陸の先史時代に関する最大の謎の1つとなっている。しかし新た研究により、集落の衰退の原因について、1つの可能性が浮上してきた。それは大洪水の発生だ。 これはウィスコンシン大学マディソン校の博士課程に在籍する学生、サミュエル・E・ムニョス(Samuel E. Munoz)氏が率いる研究チームの発表で明らかになったも

    ミシシッピ文化、カホキアは洪水で衰退
  • 男性と女性、並行作業が得意なのは?

    女性は男性より並行作業に向いている。だが、1つの作業を集中して行えば仕事はもっとはかどるという。 Photograph by Roel Burgler, Hollandse Hoogte/Redux 好むと好まざるとにかかわらず、並行作業は我々の生活の一部となっている。例えば、運転中に電話をしたり(感心しない行為だが)、仕事中にインターネットをやったり(自己責任でどうぞ)、授業中に友達に携帯メールを送ったり(上に同じ)といったように、さまざまな作業を同時にこなしている。 グラスゴー大学の心理学者、ハイスベルト・ストエト(Gijsbert Stoet)氏らの研究チームは、男性と女性のどちらが並行作業に向いているかを見極めるための研究を行い、「BMC Psychology」誌オンライン版に10月24日付で掲載された論文で、平均すると女性が上回ると結論付けている。このテーマについてストエト氏の見

    男性と女性、並行作業が得意なのは?
  • シリアでポリオ発生、根絶への道は?

    シリアでポリオ(小児麻痺)の感染が確認された。保健機関はこの病気の復活を懸念している。 Photograph by Muhammed Muheisen, AP 麻痺(まひ)をもたらすポリオウイルスはほぼ根絶されていた。ところが、シリアで再び姿を現した。 10月、シリアで1999年以来14年ぶりにポリオ(小児麻痺)の感染が確認された。世界保健機関(WHO)の世界ポリオ根絶計画(GPEI)の広報担当者オリバー・ローゼンバウアー(Oliver Rosenbauer)氏によれば、北東部デリゾール県で10件の症例が確認されており、さらに疑わしい症例が12件あるという。 シリアの感染者は、ほとんどが2歳以下の子どもだ。2011年の内戦勃発以来、予防接種が行き渡らない状況が続いている。国内への感染経路は不明だが、ローゼンバウアー氏によると感染力が強く、今後“野火のように広がる”可能性があるという。 さら

    シリアでポリオ発生、根絶への道は?
  • ローマ時代の鷲の彫像、ロンドンで発見

    新たに発掘されたローマ時代の石灰石像をクリーニングするロンドン博物館の保存管理者ルイーザ・デュアルテ(Luisa Duarte)氏。 Photograph by Andy Chopping, EPA 1800年前の鷲の彫像がロンドンで発見された。考古学者チームによると、身悶えするヘビをクチバシにくわえているという。 イングランド中央部、コッツウォルズ産の石灰石を彫刻したもので、高さは65センチ。破損している右側の羽を除けば、保存状態も非常によい。 発掘場所の16階建てのホテル建設予定地には、墓の土台も埋まっていた。専門家によると彫像は、高級官僚や裕福な商人など、ローマ時代のロンドン市民の墓を装飾していたという。 ◆ロンディニウムの生活 彫像が作られた当時の古い呼び名「ロンディニウム」は、テムズ川に沿って伸びる城郭都市で、人口は3万人ほど。発掘された墓は、都市の外部に通じる道路沿い、城壁のす

    ローマ時代の鷲の彫像、ロンドンで発見
  • 山上の巨大な鏡、冬の町に日光を

    ノルウェー、テレマルク県の町リューカン(人口3400人)では、“へリオスタット”と呼ぶ3枚の巨大鏡のプロジェクトに予算を投じることにした。鏡は町を見下ろす山に設置され、太陽の動きに合わせて角度を変え、日光を地上に反射するようになっている。 Photograph by Tore Meek, Scanpix/EPA 太陽の光を浴びたい。そんな人々の悲願を叶えるため、ノルウェーのある町で84万7000ドル(約8300万円)をかけた一大プロジェクトが行われた。 ノルウェー、テレマルク県の町リューカン(人口3400人)では、“へリオスタット”と呼ぶ3枚の巨大鏡のプロジェクトに予算を投じることにした。鏡は町を見下ろす山に設置され、太陽の動きに合わせて角度を変え、日光を地上に反射するようになっている。 オスロの西方約160キロに位置するリューカンの町は、ガウスタトッペン山麓の谷の中にひっそりと隠れるよう

    山上の巨大な鏡、冬の町に日光を
  • ノルウェーの太陽、冬の町に日光を

    ノルウェーの山間部、リューカンの町の広場に集まった人々。近くの山の上に設置された鏡に太陽光が反射し、明るい光が彼らを照らし出す。 Photograph by Tore Meek, Scanpix/EPA リューカンの町の広場に集まった人々。近くの山の上に設置された鏡に太陽光が反射し、明るい光が彼らを照らし出す。 冬になると、人々は山に登って日光浴をするのを習慣としている。おそらく体内でのビタミンDの生成を助けるためだろう。1928年にケーブルカーが導入されてからは、山に行くのも楽になった。 1913年10月31日、ソルスペイル(solspeil:ノルウェー語で“太陽の鏡”)を山の上に設置して太陽光を下の町に反射させるという、町の創設者のアイデアが地元紙に掲載された。それからちょうど100年目となる2013年10月31日、太陽の鏡はいよいよ格始動する。 Photograph by Tore

    ノルウェーの太陽、冬の町に日光を
  • 太陽を追って、冬の町に日光を

    “へリオスタット”と呼ばれる3枚の鏡の表面積は51平方メートル。コンピューターで制御され、太陽を追いかけて動くようになっている。動力源は再生可能エネルギー(太陽光と風力)だ。 Photograph by Tore Meek, Scanpix/EPA “へリオスタット”と呼ばれる3枚の鏡の表面積は51平方メートル。コンピューターで制御され、太陽を追いかけて動くようになっている。動力源は再生可能エネルギー(太陽光と風力)だ。 報道によると、鏡に反射した太陽光は楕円形の形で町の中央広場に注ぎ、その強度は山頂の直射日光の少なくとも80%に相当するという。 Photograph by Tore Meek, Scanpix/EPA

    太陽を追って、冬の町に日光を
  • 「宇宙戦争」、パニックはなかった?

    H・G・ウェルズのSF小説『宇宙戦争』を下敷きにしたラジオ番組を放送するオーソン・ウェルズ。1938年10月30日、ニューヨークのスタジオにて。火星人襲来のリアルな描写は、一部のリスナーをパニックに陥れた。 AP Photo オーソン・ウェルズの有名な『宇宙戦争(The War of the Worlds)』がラジオで放送されてから、2013年10月30日で75年になる。このドラマは、ウェルズのラジオ番組「マーキュリー・シアター・オン・ジ・エア」で流れたもの。火星人が地球を侵略する詳細な描写に、多くのリスナーは当に火星人がやってきたと信じた。 ハーバート・ジョージ・ウェルズ(H・G・ウェルズ)による1898年の小説を、当時の現代風にアレンジしたハワード・コッチの脚は、偽のニュース番組として放送された。他の番組を中断しての速報という形をとり、ニュージャージー州ウェストウィンザー・タウンシ

    「宇宙戦争」、パニックはなかった?
  • 古代エジプトのエリート医師の墓を発見

    偽扉の周囲に、医師のさまざまな称号がヒエログリフで記されている。偽扉は、この世とあの世をつなぐ象徴的な通り道だ。 Photograph by Martin Frouz, Archive of the Czech Institute of Egyptology カイロの南27キロにあるアブシールの遺跡で、チェコの考古学チームが石灰岩でできた大きな墓を発見した。墓の主は、紀元前2400年ごろに王家の筆頭侍医を務めていた人物だ。 医師の名前は、シェプスセスカフ・アンク(Shepseskaf-Ankh)という。“シェプスセスカフは生きている”という意味で、エジプト古王国時代に属するエジプト第4王朝最後のファラオにちなんだ名前だ。 “上下エジプトの医師長”だったシェプスセスカフ・アンクは、第5王朝の王家に仕えた。この医師と特に関連が深いのは、在位10年以上に及んだファラオ、二ウセルラーだ。 チェコ・

    古代エジプトのエリート医師の墓を発見
  • アメリカの記念建造物、建設の歴史

    政府機関閉鎖に対する抗議集会に参加した、13歳のケイリー・カントレル(Kaylee Cantrell)さん(左側)、シェリー・カントレル(Sherry Cantrell)さん、マイケル・カントレル(Michael Cantrell)さん。ワシントンD.C.にある第2次世界大戦記念碑の閉鎖を伝える掲示板を掲げる3人の後ろには、撤去された鉄柵が見える。この日、ケイリーさんはメリーランド州レキシントンパークから、シェリーさんとマイケルさんはテネシー州クロスビルから駆けつけた。 Photograph by Alex Brandon, AP 政府機関が一部閉鎖されたアメリカの首都ワシントンD.C.では先週、退役軍人やトラック運転手、共和党議員など大勢の人々が首都中心部の国立公園ナショナル・モールに集結。第2次世界大戦記念碑やリンカーン記念館など、国の聖地の閉鎖に抗議する集会を開いた。 ナショナル・モ

    アメリカの記念建造物、建設の歴史
  • テスラに脚光、エジソンに並ぶ発明家

    1900年代前半に撮影されたニコラ・テスラ。物理学者、技術者で、交流電流の発明者として知られる。 Photograph by Everett Collection Inc., Alamy 19世紀末から20世紀初め、アメリカで活躍した電気技師ニコラ・テスラ(1856~1943年)。先見性のある著名な発明家へのオマージュとして、ニューヨーク州ロングアイランドに新しい銅像が建てられた。9月23日、研究所跡地のウォーデンクリフで行われた除幕式で、出身国セルビアのトミスラヴ・ニコリッチ大統領は、「彼のアイデアは、時代のはるか先を行っていた」と献辞を述べた。 かつての雇い主であるトーマス・エジソンの影に隠れて人々の記憶から遠ざかっていたが、テスラは才能あふれる科学者・エンジニアで、700件以上の特許を取得した電気工学の巨人だ。最も有名なのは交流電流の開発で、彼の仕事は後の無線通信、レーザー、X線、レ

    テスラに脚光、エジソンに並ぶ発明家
  • イラク戦争の犠牲者は推定50万人

    ひび割れた窓ガラスの向こうに立つイラクの少年。このマイクロバスはバグダッドの路肩に仕掛けられた爆弾の標的となり、市民2人が死亡、13人が負傷した。 Photograph by Ahmad Al-Rubaye, AFP/Getty 2003~2011年のイラク戦争によって、イラクでは約50万人の命が直接的、間接的に奪われたことが、同国の1960世帯を対象とした画期的調査によって明らかとなった。公衆衛生専門家が行った同調査によると、戦争による暴力行為は2006年と2007年がピークだったという。 2003年3月19日、アメリカ主導の連合軍がイラクに侵攻して地上戦を開始、首都バグダッドを速やかに制圧し、サッダーム・フセイン政権は崩壊した。戦闘終結後、連合軍がイラクを占領していた2011年までの間、度重なる爆破やアルカイダの関与する反乱、民兵の戦闘などにより、人口3260万人の国では多くの血が流さ

    イラク戦争の犠牲者は推定50万人
  • 贖罪の儀式、9月ベストフォト

    ユダヤ教の一宗派、超正統派の男性信者が、2人の子どもの頭の上でニワトリを振り回す。ヘブライ語で償いを意味する儀式、カパロットのシーンだ。2010年9月15日、イスラエルの首都エルサレムのメーアー・シェアーリーム地区で撮影。 Photograph by Edgar Su, Reuters ユダヤ教の一宗派、超正統派の男性信者が、2人の子どもの頭の上でニワトリを振り回す。ヘブライ語で償いを意味する儀式、カパロットのシーンだ。2010年9月15日、イスラエルの首都エルサレムのメーアー・シェアーリーム地区で撮影。 カパロットは贖罪(しょくざい)の日、ヨム・キプールの前に行われ、過去1年の罪をニワトリに背負わせるのだという。ニワトリはその後、貧しい人々に振る舞われる。 ◆ベストフォト選考理由 「鮮やかな陽光と濃密な影が生み出す、明暗の構図が気に入った。背景の影や壁のパターンも効果的で、被写体の周囲の

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  • サメと泳ぐ、9月ベストフォト

    水族館のサメの水槽内で遊泳を楽しむニック・ブイチチ(Nick Vujicic)氏(9月5日)。生まれつき手足がない同氏は、モチベーショナル・スピーカーとして活躍。約5000人の観衆を前に、激励のスピーチを行う目的でシンガポールを訪れていた。 Photograph by Edgar Su, Reuters 水族館のサメの水槽内で遊泳を楽しむニック・ブイチチ(Nick Vujicic)氏(9月5日)。生まれつき手足がない同氏は、モチベーショナル・スピーカーとして活躍。約5000人の観衆を前に、激励のスピーチを行う目的でシンガポールを訪れていた。◆ベストフォト選考理由 「微妙な光加減や慎重なポジショニングから、撮影者が払う敬意がよくわかる。センセーショナルな表現を避けた結果、かえってインパクトや精神性が強調されている。それは、可能性は無限であるというメッセージだ」、モニカ・コーコラン氏(フォト編

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  • ガザの婚礼の日、9月ベストフォト

    パレスチナのガザ地区北部、ベイトラヒヤ(Beit Lahiya)で結婚式を挙げた、15歳の花婿と14歳の花嫁(9月24日)。二人の新居は花嫁の実家で、3つの寝室を9人の親族とシェアしている。 Photograph by Mohammed Salem, Reuters パレスチナのガザ地区北部、ベイトラヒヤ(Beit Lahiya)で結婚式を挙げた、15歳の花婿と14歳の花嫁(9月24日)。二人の新居は花嫁の実家で、3つの寝室を9人の親族とシェアしている。◆ベストフォト選考理由 「状況がわからないので戸惑ってしまうが、パレスチナの若者二人にフォーカスした構図がかえって効果的なのかもしれない。一方から差し込む光が視線を引きつけ、生まれた深い闇が上半身を隠す慣習を強調している。彼女の人生はこれから何が去来するのか、想わずにはいられない」、シェリー・ブルックバッカー(Sherry Brukbach

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  • 走る少女、9月ベストフォト

    異様な雰囲気を感じ取ったのか、少女も思わず走り出す(9月21日)。ケニアの首都ナイロビにあるショッピングモール、「ウエストゲート」で発生したテロ事件の現場。 Photograph by Goran Tomasevic, Reuters 異様な雰囲気を感じ取ったのか、少女も思わず走り出す(9月21日)。ケニアの首都ナイロビにあるショッピングモール、「ウエストゲート」で発生したテロ事件の現場。◆ベストフォト選考理由 「強ばった表情がすべてを語っている。現場の緊張感が手に取るようだ。巨大なモール内の片隅から、われわれはテロの恐怖を同時体験するのだ。人々が家具の下に身を隠し、他人が互いに助け合う様。そして、どのように巻き込まれたかを。同じ渦中にいながらも、撮影者は助け合う人々への眼差しを忘れない。人間の可能性に、いつも私は驚嘆させられる」、シェリー・ブルックバッカー(Sherry Brukbach

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  • 難民の家路、9月ベストフォト

    パキスタンの首都、イスラマバードの家路を急ぐアフガン難民の女性(2013年9月16日撮影)。ブルカ(イスラム教徒の女性が着用する外衣)が風に膨らんでいる。30年以上前から繰り返す紛争に追われて、多数のアフガニスタン国民がイランやパキスタンなどに脱出、難民生活を余儀なくされている。2002年以降、国際的な帰還支援プログラムが展開されているが、帰還予定の登録済み難民はパキスタン国内だけで160万人近いという。 Photograph by Muhammed Muheisen, AP パキスタンの首都、イスラマバードの家路を急ぐアフガン難民の女性(2013年9月16日撮影)。ブルカ(イスラム教徒の女性が着用する外衣)が風に膨らんでいる。30年以上前から繰り返す紛争に追われて、多数のアフガニスタン国民がイランやパキスタンなどに脱出、難民生活を余儀なくされている。2002年以降、国際的な帰還支援プログ

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  • ケニア襲撃事件の中のインド系住民

    ケニアの首都ナイロビで行われた、ミトゥル・シャー(Mitul Shah)氏の追悼式(9月26日)。インド系ケニア人のシャー氏は、21日に発生したウエストゲート・ショッピングモール襲撃事件において、子どもの身代わりに銃弾を受けて命を落とした(享年38歳)。 Photograph by Zhang Chen, Xinhua/Eyevine/Redux ケニアの首都ナイロビにある巨大ショッピングモール「ウエストゲート」の1階に、「アートカフェ(ArtCaffe)」という高級なコーヒーショップがテナントとして入っていた。ナイロビで成功したビジネスマンたちの御用達だったが、その多くは黒人ではなくインド系だ。ケニアには古くからインド人が大勢移住しており、母国を除く最大のインド人コミュニティーを形成している。 国内では少数派のインド系ケニア人は、大小さまざまな規模にわたるケニア経済を握っており、都市部の

    ケニア襲撃事件の中のインド系住民
  • 政府閉鎖問題、アップルの教訓

    政府機関が一部閉鎖された影響で、リンカーン記念館に公開中止のパネルをかける国立公園局の職員。 Photograph by Matt McClain, Washington Post/Getty Images アメリカの国としての価値、ブランディングが揺らいでいる。 政府機関の閉鎖は、アメリカの価値や影響力を世界に伝える理想的な方法とは言えない。中でもアメリカの象徴として多くの人を引き付ける国立公園を閉鎖すれば、開かれた社会、寛大な国情、そして世界の良きパートナーであるというメッセージが根底から覆されることになる。 機関閉鎖は非暴力的な対応であるため、意見の多様性や権力間での抑制と均衡、多数決の原理、異議を唱える権利といったアメリカの価値を強化するという主張もあるだろう。 しかし、筆者は賛成できない。ブランディングの世界では、対象が国であれ企業であれ、目に見える形で積極的にイメージの維持に努

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  • ケニアのモール襲撃、原因はソマリア

    ソマリアのアル・シャバーブの聖戦士たち(2008年11月4日)。今月、ケニアの首都ナイロビのショッピングモールが襲撃された事件では、アル・シャバーブが犯行声明を出している。 Photograph from AP ケニアの首都ナイロビのショッピングモール、ウエストゲート(Westgate)が襲撃されて4日目、ウフル・ケニヤッタ大統領は武装グループの制圧を宣言した。政府発表によれば、少なくとも民間人62人の死亡が確認され、175人以上が負傷しているという。 ソマリアのイスラム過激派組織アル・シャバーブはツイッターで犯行を認め、ケニアの軍事行動に対する報復だと述べている。 ケニアでのテロ事件にはいくつもの前例がある。この10年、アル・シャバーブとつながりのあるグループが、同国をはじめとする東アフリカで何度もテロ攻撃を実行している。 カナダ王立軍事大学政治経済学部の准教授クリスチャン・ロイプレヒト

    ケニアのモール襲撃、原因はソマリア
  • シリア難民キャンプで見た5つの事実

    2人の子どもの手を引く母親。彼らはシリア難民で、検問所からトルコに入ろうとしている。 Photograph by Gregorio Borgia, Associated Press アメリカのジョージ・メイソン大学のシンクタンク、「宗教および外交と紛争解決に関する国際研究センター(Center for World Religions, Diplomacy, and Conflict Resolution, CRDC)」のディレクターであり、ナショナル ジオグラフィックの探検家でもあるアジズ・アブ・サラ(Aziz Abu Sarah)氏は先月、シリア難民の子どもたち数百人のためにサマーキャンプを開催する目的で、現地スタッフとボランティア数人とともに、トルコとシリアの国境沿いで数週間を過ごした。現地は予想以上に深刻で、一触即発の状況を迎えているという。サラ氏に、その問題点を挙げてもらった。 シ

    シリア難民キャンプで見た5つの事実
  • 恒例、イグ・ノーベル賞が発表

    授賞式の司会役を務めるマーク・エイブラハムズ(Marc Abrahams)氏が、イグ・ノーベル医学賞を受賞した日の研究チームを紹介する様子。授賞式はマサチューセッツ州ケンブリッジにあるハーバード大学で、2013年9月12日(木)に開催された。 Photograph by Winslow Townson, AP 米国時間9月12日に2013年度のイグ・ノーベル賞が発表され、オペラが持つ延命効果、半生のトガリネズミを丸のみした場合の消化の度合い、天の川を頼りに方角を知るフンコロガシなど、にわかには信じがたい研究成果がこの賞を受賞した。 この毎年恒例のユニークな賞は、「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる」実際の研究に与えられると、同賞のウェブサイトでは説明している。第23回目にあたる今年度の受賞者は、ハーバード大学のサンダーズシアターを会場に、科学誌「Annals of Improbable

    恒例、イグ・ノーベル賞が発表
  • 世界幸福度ランキング2013、国連

    デンマーク、コペンハーゲンで自転車に乗り、仕事先に向かう女性。国連の最新調査で、デンマークは世界で最も幸福度の高い国にランキングされた。 Photograph by Joachim Adrian, Polfoto/AP 2013年度の世界幸福度レポート(World Happiness Report)が、コロンビア大学地球研究所から発表された。これによると、世界で最も幸福度の高い国はデンマークで、続く2~5位は順にノルウェー、スイス、オランダ、スウェーデンとなっている。 国連の「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」の支援を受けて行われたこの調査は、2010年から2012年にかけて実施され、世界156カ国に住む人々の幸福度を国別のランキングにまとめたものだ。評価基準としては、富裕度、健康度、人生の選択における自由度、困ったときに頼れる人の有無、汚職に関するクリーン度や同じ国

    世界幸福度ランキング2013、国連
  • イランのユダヤ教徒

    テヘランにあるユダヤ教の礼拝堂、ユセフ・アバド・シナゴーグ(Yousef Abad Synagogue)で祈りをささげるユダヤ教徒(2006年11月)。イスラエルを別にして、イランには中東で最も多い2万5000のユダヤ教徒がいる。 Photograph by Raheb Homavandi, Reuters ユダヤ教の新年祭ローシュ・ハッシャーナーの前日、イランのハッサン・ロウハニ新大統領、あるいはその後援会とおぼしきアカウントから、意外なツイートが投稿された。ユダヤ教徒、中でも国内の教徒にあてた新年のあいさつだ。 このツイートを目にした人々は当惑した。互いに背を向ける宗教の顔合わせも意外だが、欧米ではほとんど注目されていないイランのユダヤ教徒に言及していたためだ。 「ここテヘランはもうすぐ日没です。すべてのユダヤ教徒、特にイランのユダヤ教徒が幸せなローシュ・ハッシャーナーを迎えられますよ

    イランのユダヤ教徒
  • 現代国家も昔と変わらず戦争好き?

    マリ国内のイスラム系武装組織の掃討に向けた、セルヴァル作戦に参加するチャド軍(北部の町キダルで4月5日に撮影)。 Photograph by Patrick Robert, Corbis 化学兵器の使用が疑われるシリアに対して、アメリカのオバマ大統領は軍事攻撃の承認を議会に要請している。是非を巡る審議が開始されているが、国家の戦争指向は昔と変わらず強いものだと主張する研究成果がこのほど発表された。 近年、ハーバード大学の心理学者スティーブン・ピンカー(Steven Pinker)氏をはじめ複数の学者が、国家間の戦争が起きる可能性は過去に比べて低くなっているという理論を提唱している。 しかし、先週のアメリカ政治学会年次総会で、オハイオ州立大学の教授ベア・ブラウムラー(Bear Braumoeller)氏は、現代国家の暴力性は歴史的に見て現在も変わっていないと反論。 第2次世界大戦の終結以降、

    現代国家も昔と変わらず戦争好き?
  • トルコの結婚、8月ベストフォト

    トルコ南部の歴史的都市、アンタキヤを背に丘を登る新郎新婦(8月29日)。内戦が続くシリアとの国境に近く、難民の避難先となっている。 Photograph by Bulent Kilic, AFP/Getty Images トルコ南部の歴史的都市、アンタキヤを背に丘を登る新郎新婦(8月29日)。内戦が続くシリアとの国境に近く、難民の避難先となっている。◆ベストフォト選考理由 「動と静の均衡がこの作品のカギとなる。新郎新婦はどちらが先に頂上にたどり着けるか競い合っているようであり、背景にはアンタキヤの町並みが広がる。身近な人間の営みと広大な景観の両方を巧みにとらえた写真はなかなかない」、ジャンナ・ドチュカル氏(フォト共同編集者)。 Photograph by Bulent Kilic, AFP/Getty Images

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  • リボーンベイビー、8月ベストフォト

    ベルギーのアーティスト、ベアトリス・ファン・ランデヘム(Beatrice Van Landeghem)氏が制作する、非常にリアルな赤ちゃんの人形。ラ・ルヴィエール市のアトリエで、眼球を入れる工程を撮影した。「リボーンベイビー(Reborn Babies)」と題された作品で、材質はビニール。髪の毛やまつげも付けられ、気味が悪いほど実物そっくりに再現している。コレクターだけではなく、子どもを亡くした親が購入する場合も多いという。 Photograph by Yves Herman, Reuters ベルギーのアーティスト、ベアトリス・ファン・ランデヘム(Beatrice Van Landeghem)氏が制作する、非常にリアルな赤ちゃんの人形。ラ・ルヴィエール市のアトリエで、眼球を入れる工程を撮影した。「リボーンベイビー(Reborn Babies)」と題された作品で、材質はビニール。髪の毛やま

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  • 海峡横断水泳、5つの歴史的偉業

    64歳にしてフロリダ海峡の横断水泳に成功したダイアナ・ナイアドさん。支援者やファンに「いくつになっても夢を追い続けることはできる」と語りかけた。 Photograph by Andy Newman, Florida Keys News/EPA 64歳のアメリカ人女性、ダイアナ・ナイアド(Diana Nyad)さんが現地時間9月2日、フロリダ州キーウェストのスマザーズ・ビーチに上陸、史上初めてサメよけのケージに入らずにキューバ~フロリダ州間を泳ぎ切った。ナイアドさんは52時間54分18秒で、この偉業を達成した。 サメが数多く生息するフロリダ海峡を横断した例は今までもあるが、ナイアドさんの今回の挑戦は、サメよけのケージに入らずに泳ぎ切ったという点で特筆すべきものだ。海に浮かぶこのケージは、格子で泳ぐ人をサメから守るだけではなく、船で引っ張るため、波の荒い外海では泳ぎをアシストする効果もあるので

    海峡横断水泳、5つの歴史的偉業
  • トーロの闘牛士、8月ベストフォト

    スペイン北西部のトーロで、神聖な入場行進の儀式、パセイージョ(paseillo)の開始を待つ3人の闘牛士(8月28日)。1カ月の間、スペイン中の村々が各々の守護聖人に感謝し、闘牛や音楽、路上パーティーで祝う。スペイン語のトーロ(toro)は都市の名前であり、“闘牛”という意味でもある。 Photograph by Daniel Ochoa de Olza, Associated Press スペイン北西部のトーロで、神聖な入場行進の儀式、パセイージョ(paseillo)の開始を待つ3人の闘牛士(8月28日)。 1カ月の間、スペイン中の村々が各々の守護聖人に感謝し、闘牛や音楽、路上パーティーで祝う。スペイン語のトーロ(toro)は都市の名前であり、“闘牛”という意味でもある。 ◆ベストフォト選考理由 「斜光がそれぞれを照らす構図に惹かれた。顔、体、足が別々に照らされ、3人合わせて1人の姿にな

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  • バマコの宝石店、8月ベストフォト

    マリの首都バマコのジュエリー・ショップで、ショーケース内の商品を眺める青年。アマドゥ・トゥマニ・トゥーレ前大統領が軍事クーデターで追放されてから1年余り。先月行われた同国の大統領選挙では、イブラヒム・ブバカール・ケイタ(Ibrahim Boubacar Keita)氏が選出された。 Photograph by Joe Penney, Reuters マリの首都バマコのジュエリー・ショップで、ショーケース内の商品を眺める青年。 アマドゥ・トゥマニ・トゥーレ前大統領が軍事クーデターで追放されてから1年余り。先月行われた同国の大統領選挙では、イブラヒム・ブバカール・ケイタ(Ibrahim Boubacar Keita)氏が選出された。 ◆ベストフォト選考理由 「実にシンプルかつ鮮やかにアフリカの日常を描いている。ひっそりと佇む店、壁に描かれた宣伝、モペッド、そして明るい色合いは、アフリカのどこの

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  • キンシャサの誇り高きアーティストたち

    ロバート・ドレイパー(Robert Draper)と画家のダリオ(Dario)。コンゴ民主共和国の首都キンシャサで撮影。 Photograph by PASCAL MAITRE, National Geographic アフリカ中部に位置するコンゴ民主共和国の首都キンシャサ。ロバート・ドレイパー(Robert Draper)氏はナショナル ジオグラフィック誌2013年9月号に執筆した記事の中で、キンシャサを“芸術都市”と呼んだ。混沌としたこの街を取材しながら同氏は、そこで必死に生き延びようとする多くのアーティストたちに出会う。そして、その中の1人に絵の制作を依頼。ドレイパー氏と1人の画家、それにドレイパー氏の飼い犬をめぐるささやかな挿話を紹介する。 ダリオは画家だ。生活は苦しいが、いつも毅然としている。ある日、彼の小さなアトリエを訪ねた私は、夢見心地の雰囲気が漂う彼の絵にすっかり魅了されて

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  • 動乱の狭間、8月ベストフォト

    エジプトの首都カイロ、ナセルシティ地区にあるラバ・アル・アダウィヤ(Rabaah Al-Adawiya)モスクで、工事用の足場を組み立てる作業員(8月21日)。 Photograph by Manu Brabo, Associated Press エジプトの首都カイロ、ナセルシティ地区にあるラバ・アル・アダウィヤ(Rabaah Al-Adawiya)モスクで、工事用の足場を組み立てる作業員(8月21日)。 2011年の革命以降、度重なる抗議運動によってエジプトの国情は混乱が続いている。イスラム教徒に対する弾圧を強化する軍主導の暫定政府は先月20日、ムスリム同胞団の最高指導者、ムハンマド・バディア氏を拘束。翌21日にも、リビア国境から国外逃亡を図った強硬派のイスラム聖職者、サフワット・ヘガジ氏や、イタリアへの脱出を試みたとされる同胞団の報道官、モウラド・アリ氏を逮捕した。 ◆ベストフォト選考

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  • 中石器エルテベレ文化に家畜ブタ

    ドイツのラーアーで飼育されている希少品種の家畜ブタ、ベントハイムブタ。新たに見つかった証拠から、ドイツの古代人は、これまで考えられていたよりも早くから家畜ブタを手に入れていたと推測される。 Photograph by Sascha Schuermann/AFP/Getty Images 北ドイツでは、これまで考えられていたよりも約500年早く、紀元前4600年頃に家畜のブタがいたことが、化石とDNAの調査から明らかになった。 この調査結果が大きな意味を持つのは、その頃ヨーロッパのこの地域にいたのは中石器文化の狩猟採集民で、彼らは主に野生の動物を狩って暮らしていたからだ。 エルテベレ文化として知られるこの人々は、狩猟用のイヌは飼っていたが、家畜を育て、農耕を始めるのは、それから数百年先のこととされる。 エルテベレ文化がどのようにして家畜ブタを手に入れたかについては、1つの仮説として、南方の近

    中石器エルテベレ文化に家畜ブタ
  • 残された棺、エジプトの博物館襲撃

    マラウィ国立博物館の略奪者が残した木製の棺。象形文字が側面に記されている。この棺は古代の巡礼地、トゥナ・エル・ゲベル(Tuna el-Gebel)の民間墓地で発掘された。 Photograph by Roger Anis, El Shorouk/AP マラウィ国立博物館の略奪者が残した木製の棺。象形文字が側面に記されている。 この棺は古代の巡礼地、トゥナ・エル・ゲベル(Tuna el-Gebel)の民間墓地で発掘された。グレコローマン時代(紀元前140年~西暦300年)の貴重な墓もあり、報道によれば今回の略奪を受け、厳重な警戒態勢がとられたという。 Photograph by Roger Anis, El Shorouk/AP

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  • 音楽は人々を結束させるツール?

    カリフォルニア州インディオで開かれた「コーチェラ・ミュージック・フェスティバル (Coachella Music Festival)」のコンサートで歓声を上げる人々。 Photograph by Mario Anzuoni, Reuters なぜ人類は音楽を発明したのか。映画のようなタイムマシンが実現するまで、この疑問は1960年代のガレージバンド「クエスションマーク&ザ・ミステリアンズ」(Question Mark and the Mysterians)の正体ともども、謎のままであり続けるだろう。 それでも、学問の世界は常に何らかの説を提起しようとしている。チャールズ・ダーウィンは、音楽は異性を引きつけるために発明されたと考えた。この説は、ロビン・シックの楽曲『ブラード・ラインズ~今夜はヘイ・ヘイ・ヘイ♪』が2013年夏に世界中でヒットしたことで信憑性を増している。 しかし一方で、音楽

    音楽は人々を結束させるツール?
  • 倒された木棺、エジプトの博物館襲撃

    ほとんどの収蔵品が略奪されたエジプトのマラウィ国立博物館で、破壊された展示室に横たわる木棺。プトレマイオス朝(紀元前305~30年)時代の制作と見られ、襲撃時に倒されたが大きな損傷は受けていないようだ。 Photograph from Rouge/Demotix ほとんどの収蔵品が略奪されたエジプトのマラウィ国立博物館で、破壊された展示室に横たわる木棺。 プトレマイオス朝(紀元前305~30年)時代の制作と見られ、襲撃時に倒されたが大きな損傷は受けていないようだ。 Photograph from Rouge/Demotix

    倒された木棺、エジプトの博物館襲撃
  • エジプトの考古学博物館でまたも略奪

    カイロの南約300キロ、ミンヤ県にあるマラウィ国立博物館の展示室。同博物館は1963年の開館から、近くの遺跡で発掘された遺物を展示していた。混乱が続くエジプトで、貴重な文化財を収めた博物館がたびたび略奪者に襲われている。 Photograph by Roger Anis, El Shorouk/AP 混乱が続くエジプトで、貴重な文化財を収めた博物館がまたもや略奪者に襲われた。メチャクチャに荒らされたマラウィ国立博物館の展示室では、運び出すには大き過ぎたのか、一部の収蔵品が瓦礫とともに取り残されている(8月17日)。 カイロの南約300キロ、ミンヤ県にある同博物館は1963年の開館から、近くの遺跡で発掘された遺物を展示していた。 アメリカン大学カイロ校でエジプト学の教授を務めるサリマ・イクラム(Salima Ikram)氏は、「どの収蔵品も極めて貴重で、多くは分類すらされていない」と嘆く。「

    エジプトの考古学博物館でまたも略奪
  • 世界最古のスパイス料理の痕跡を発見

    インドの市場に並ぶスパイス類。先史時代のヨーロッパでも利用されていたという。 Photograph by Partha Pal, Getty Images 6000年前のヨーロッパで暮らしていた狩猟採集民は、アリアリア(学名:Alliaria petiolata、和名:ネギハタザオ、別名:ガーリックマスタード)という香辛料で料理の味付けをしていたという。 研究チームは、デンマークとドイツにまたがる地域で発掘された、古代土器の破片に残された料理の残留物を分析。アブラナ科でニンニク臭がするアリアリアの種の痕跡を発見した。 チームの一員で、イギリスにあるヨーク大学の考古学者オリバー・クレイグ(Oliver Craig)氏は、「料理目的で利用されたスパイスの証拠として世界最古となる」と語る。 「土器の中でほかの材と混ざっており、料理に香味を加えるため意図的に使用されたことは間違いない」。 クレイ

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  • ダチョウの卵に描かれた小さな北米大陸

    ダチョウの卵殻を利用した地球儀(手前左)。年代調査のため、放射線解析で現代の卵と密度が比較された。 Photograph courtesy Washington Map Society ダチョウの卵殻に描かれた地球儀を分析したところ、1500年代初頭に初めてアメリカ大陸を描いた貴重な品の可能性があるという。 半分の卵殻が2つ繋ぎ合わせられており、ラテン語がところどころに刻まれている。さらに注目すべきは、北米の位置に描かれている2つの小さな島だ。コロンブスがアメリカ大陸に到達したのは1492年。時代と重ね合わせると、この地球儀の来歴に俄然興味がわいてくる。 問題の地球儀は、ヨーロッパの地図商人の間を転々とした後、2012年にロンドンの展示会で匿名の人物の手に渡る。その後、ベルギーの地図収集家ステファン・ミシネ(Stefaan Missinne)氏が入手し、分析を開始するに至った。 ミシネ氏に

    ダチョウの卵に描かれた小さな北米大陸
  • 最古の金属工芸、エジプトの隕石ビーズ

    エジプトのゲルゼ遺跡の墓所から発掘されたビーズ3点。これまで発見された中で最古の金属工芸品である。 Photograph by Gianluca Miniaci, Petrie Museum of Egyptian Archaeology 約100年前にエジプトの遺跡で発掘された5000年前のビーズ。その材料は長らく謎とされてきた。このほど最新の研究によって、それが「天からもたらされた」ものだと確認された。空から降ってきた隕石だったのだ。 1911年、エジプト北部のゲルゼ遺跡の墓所から、9つの小さな金属のビーズが発掘された。当初の化学分析によって、鉄のほかにニッケルを含むことが示されたため、研究者らはこのビーズの材料を隕石ではないかと考えた。 このビーズは、金やカーネリアンのような貴金属や宝石と並んで首飾りに使用されていたことから、希少な工芸品と見なされていたのであろう。 それから時代が下

    最古の金属工芸、エジプトの隕石ビーズ
  • 有刺鉄線、分断されたエジプト

    軍主導の暫定政権とムハンマド・モルシ前大統領の両支持派に分断されたエジプト。その対立は一層深刻化している。暫定政権に「テロリスト」と見なされた前大統領の出身母体ムスリム同胞団は、数百人が治安部隊との一連の衝突で死亡。一方、エジプトの裁判所は8月21日、2011年から勾留されているホスニ・ムバラク元大統領の保釈を命令。軍の意向と見られ、さらなる緊張度の高まりが予想されている。写真は、同胞団のデモに備えて最高憲法裁判所に設置されていた有刺鉄線を撤去する兵士。 Photograph by Virginie Nguyen Hoang/AFP/Getty Images 軍主導の暫定政権とムハンマド・モルシ前大統領の両支持派に分断されたエジプト。その対立は一層深刻化している。暫定政権に「テロリスト」と見なされた前大統領の出身母体ムスリム同胞団は、数百人が治安部隊との一連の衝突で死亡。一方、エジプトの裁

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  • 黒焦げの教会、分断されたエジプト

    黒焦げの廃墟と化したエジプトのキリスト教会。「ムスリム同胞団」に対する軍事弾圧に激怒したイスラム教徒は、暫定政権を支持する少数派キリスト教徒をスケープゴートにしている。少なくとも数十カ所の教会が、襲撃、放火された。 Photograph courtesy of Rex Features via AP Images 黒焦げの廃墟と化したエジプトのキリスト教会。「ムスリム同胞団」に対する軍事弾圧に激怒したイスラム教徒は、暫定政権を支持する少数派キリスト教徒をスケープゴートにしている。少なくとも数十カ所の教会が、襲撃、放火された。 Photograph courtesy of Rex Features via AP Images

    黒焦げの教会、分断されたエジプト
  • 戦時体制、分断されたエジプト

    エジプト国旗に覆われた25個の棺。シナイ半島北部の町ラファ(Rafah)周辺で、イスラム過激派の襲撃により死亡した警察官が収められている。同地域はパレスチナ自治区ガザとの境界に近く、数年前から治安が悪化していたが、これほどの犠牲者数は異例という。 Photograph by Khaled Desouki/AFP/Getty Images エジプト国旗に覆われた25個の棺。シナイ半島北部の町ラファ(Rafah)周辺で、イスラム過激派の襲撃により死亡した警察官が収められている。同地域はパレスチナ自治区ガザとの境界に近く、数年前から治安が悪化していたが、これほどの犠牲者数は異例という。 Photograph by Khaled Desouki/AFP/Getty Images

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  • 米政府が認めた“エリア51”の実際

    ネバダ州東部、「エリア51」の東側を走る“エクストラテレストリアル(ET)ハイウェイ”沿いに生えたユッカの木。 Photograph by Laura Rauch, AP アメリカ政府は米国時間8月15日、それまで認めてこなかった「エリア51」の存在を初めて認めた。人里離れたネバダ州の砂漠に位置するその施設は、長らく陰謀論やエイリアンの目撃談、小型宇宙船のうわさと結びつけられてきた。 この日機密指定を解除されたのは、1992年作成のアメリカ中央情報局(CIA)の文書。そこに含まれていた地図は、ラスベガスから約120キロの人里離れた区画をエリア51の名で表記していた。そこはU-2偵察機など、アメリカ軍の極秘プロジェクトの試験と開発に用いられてきた場所だ。 エリア51と、政府が新たに公開した情報について詳しく知るため、調査ジャーナリストで『エリア51 世界でもっとも有名な秘密基地の真実』の著者

    米政府が認めた“エリア51”の実際
  • 命の盾、戦場と化したエジプト

    エジプト治安部隊のブルドーザーに立ちはだかる女性(8月14日)。負傷してうずくまる若者を守ろうとしている。軍に解任されたムハンマド・モルシ前大統領を支持するムスリム同胞団は、首都カイロで座り込みの抗議デモを続けていた。しかしこの日、治安部隊が強制排除に乗り出し、市内はさながら戦場と化した。保健省の集計では死者600人以上の惨事となり、世界各国から激しい非難の声が上がっている。 Photograph by Mohammed Abdel Moneim, AFP/Getty Images エジプト治安部隊のブルドーザーに立ちはだかる女性(8月14日)。負傷してうずくまる若者を守ろうとしている。 軍に解任されたムハンマド・モルシ前大統領を支持するムスリム同胞団は、首都カイロで座り込みの抗議デモを続けていた。しかしこの日、治安部隊が強制排除に乗り出し、市内はさながら戦場と化した。保健省の集計では死者

    命の盾、戦場と化したエジプト
  • 投石と防御、戦場と化したエジプト

    機動隊員と兵士が盾を並べ、ムルシ派の投石に身構える(8月14日)。パレスチナのインティファーダ(住民蜂起)が思い起こさせる光景だ。 Photograph by Asmaa Waguih, Reuters カイロ市街、機動隊員と兵士が盾を並べ、ムルシ派の投石に身構える(8月14日)。パレスチナのインティファーダ(住民蜂起)が思い起こさせる光景だ。 Photograph by Asmaa Waguih, Reuters

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  • 怒りの破壊行動、戦場と化したエジプト

    エジプトの首都カイロのギザ地区で、焼け焦げたトラックを押し倒そうとするムスリム同胞団支持者(8月14日)。この日、治安部隊によるデモ隊の強制排除で多数の犠牲者が出たが、同胞団は新たなデモの計画を発表。暴力には屈しない姿勢を示している。 Photograph by Khaled Elfiqi, European Pressphoto Agency エジプトの首都カイロのギザ地区で、焼け焦げたトラックを押し倒そうとするムスリム同胞団支持者(8月14日)。この日、治安部隊によるデモ隊の強制排除で多数の犠牲者が出たが、同胞団は新たなデモの計画を発表。暴力には屈しない姿勢を示している。 Photograph by Khaled Elfiqi, European Pressphoto Agency

    怒りの破壊行動、戦場と化したエジプト
  • 支配者の名前、マヤの巨大彫刻

    グアテマラ北部、ホルムル遺跡から最近発掘された、古代マヤ文明のフリーズの全体像。古代建築一般に組み込まれた帯状の部分で、装飾が施されている場合が多い。発掘チームの一員、アメリカ、ハーバード大学でマヤ文明の碑文を研究するアレクサンドル・トコビニン(Alexandre Tokovinine)氏が、数百枚の高解像度写真をデジタル処理で1枚に合成した。チームを率いているのは、同じくマヤ文明の専門家フランシスコ・エストラダ・ベリー(Francisco Estrada-Belli)氏だ。 Photograph courtesy Alexandre Tokovinine, CMHI/Harvard/Proyecto Aqueologico Holmul グアテマラ北部、ホルムル遺跡から最近発掘された、古代マヤ文明のフリーズの全体像。古代建築一般に組み込まれた帯状の部分で、装飾が施されている場合が多い。発

    支配者の名前、マヤの巨大彫刻
  • 象形文字の紋章、マヤの巨大彫刻

    先月グアテマラで発見された、マヤ文明の建築物の側面を飾るフリーズ(帯状の彫刻)は、大きな象形文字の紋章で装飾されている。 Photograph courtesy Francisco Estrada-Belli 先月グアテマラで発見された、マヤ文明の建築物の側面を飾るフリーズ(帯状の彫刻)は、大きな象形文字の紋章で装飾されている。 マヤ考古学者フランシスコ・エストラダ・ベリー(Francisco Estrada-Belli)氏は、王族の住居と裏付ける証拠だと説明する。おそらく市民から神のように崇拝されていた、地域の支配者に捧げられたと考えられるという。 Photograph courtesy Francisco Estrada-Belli

    象形文字の紋章、マヤの巨大彫刻
  • マヤ文明の巨大彫刻発見、グアテマラ

    グアテマラ北部、マヤ文明の古代都市ホルムルの遺跡で発見された、漆喰製の巨大なフリーズ。山の精霊の上にあぐらをかいて座る人物が彫刻されており、トンネルの入り口から差し込む日光がその足下を照らしている。下部の碑文から土を取り除いているのは、考古学者アニヤ・シェトラー(Anya Shetler)氏。 Photograph courtesy Francisco Estrada-Belli 先月、グアテマラ北部のペテン県にあるマヤ文明の古代都市ホルムルで、漆喰(しっくい)製の巨大なフリーズ(建築物の帯状の装飾)が発見された。 埋まっていたのは、ホルムルの長方形ピラミッドの基礎部分で、全長8メートル、高さは2メートルに及ぶ。マヤ神話の世界観に沿って複数の人物が描かれており、神格化された統治者であることを物語る。 盗掘者に荒らされたトンネルを調査中のマヤ考古学者フランシスコ・エストラダ・ベリー(Fran

    マヤ文明の巨大彫刻発見、グアテマラ
  • 誘拐に注意、7月ベストフォト

    メキシコの首都メキシコシティでブリーダーは、高価な犬種を車で運んで外に出さない(7月18日)。同国では身代金目的のイヌの誘拐がここ数年で4倍に増加しており、その手口は、公園で散歩中の飼い主に銃を突き付けて強奪する荒っぽいものから、発情期のメスを使っておびき寄せるなど様々。 Photograph by Edgard Garrido, Reuters メキシコの首都メキシコシティでブリーダーは、高価な犬種を車で運んで外に出さない(7月18日)。同国では身代金目的のイヌの誘拐がここ数年で4倍に増加しており、その手口は、公園で散歩中の飼い主に銃を突き付けて強奪する荒っぽいものから、発情期のメスを使っておびき寄せるなど様々。◆ベストフォト選考理由 「ほんの少し開いたドアのすき間からのぞく不安そうな顔が何とも愛おしい。車体の赤にスパッと割り込む縦線が構図として効いている。まるでイヌのトーテムポールのよ

    誘拐に注意、7月ベストフォト
  • 地底の車、7月ベストフォト

    道路が陥没した巨大な穴に車が落下、車内に取り残された女性が救助を待つ(7月3日)。現場はアメリカ、オハイオ州トレド市内。幸いにも、女性に大きなけがはなく、無事救出された。駆けつけた消防隊によると、原因は水道管の破損だという。 Photograph by Matthew Hertzfeld, Toledo Fire and Rescue/Reuters 道路が陥没した巨大な穴に車が落下、車内に取り残された女性が救助を待つ(7月3日)。現場はアメリカ、オハイオ州トレド市内。幸いにも、女性に大きなけがはなく、無事救出された。駆けつけた消防隊によると、原因は水道管の破損だという。◆ベストフォト選考理由 「どこか遺跡の発掘現場のような趣がある。(道路の下に見える)いくつもの地層に時代の重なりを感じるからだろう」、アレクサ・キーフ氏(フォトプロデューサー)。 「ひと目見て映画のセットかと思った。割れて

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  • 青のナイアガラ、7月ベストフォト

    ブルーにライトアップされたナイアガラの滝が、イギリスのウィリアム王子とキャサリン妃の第1子、ジョージ王子の誕生を祝福する(カナダ側で7月22日撮影)。ナイアガラのライトアップのルーツは1860年に遡る。アルバート・エドワード皇太子(後のイギリス国王エドワード7世)の訪問を祝うためだった。 Photograph by Warren Toda, European Pressphoto Agency ブルーにライトアップされたナイアガラの滝が、イギリスのウィリアム王子とキャサリン妃の第1子、ジョージ王子の誕生を祝福する(カナダ側で7月22日撮影)。 ナイアガラのライトアップのルーツは1860年に遡る。アルバート・エドワード皇太子(後のイギリス国王エドワード7世)の訪問を祝うためだった。 ◆ベストフォト選考理由 「最も印象的な部分をあえてアップにしないで、少し引いた構図で全体を巧みに撮影している。

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  • 自転車と装甲車、7月ベストフォト

    ムハンマド・モルシ大統領失脚後の7月4日、首都カイロ市内の通りで配置に就くエジプト軍の装甲車。数日間続いた大規模なデモの後、大統領が追放され、最高憲法裁判所長官アドリ・マンスール氏がこの日、暫定大統領に就任した。しかし、8月に入っても前大統領の支持派による抗議デモが行われており、依然として緊迫した状態が続いている。 Photograph by Mohamed El-Shahed, AFP/Getty Images ムハンマド・モルシ大統領失脚後の7月4日、首都カイロ市内の通りで配置に就くエジプト軍の装甲車。数日間続いた大規模なデモの後、大統領が追放され、最高憲法裁判所長官アドリ・マンスール氏がこの日、暫定大統領に就任した。しかし、8月に入っても前大統領の支持派による抗議デモが行われており、依然として緊迫した状態が続いている。◆ベストフォト選考理由 「構図に潜む温度差が私を惹きつけた。夜の静

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  • 聖ヨハネ騎士団の大病院、遺構が公開に

    発掘調査により見つかった11世紀の巨大な建築物。この建物は当初、キリスト教の修道士によって病院として使われていたと考えられている。 Photograph courtesy Yoli Shwartz, Israel Antiquities Authority 十字軍が派遣されていたおよそ1000年前、中東で最大の病院として使われていた巨大建造物の一部が、近く一般公開される。これは13年間にわたりこの遺構の調査にあたってきたイスラエル考古学庁(IAA)が、現地時間8月5日に発表したものだ。 この遺構は11世紀に建設されたもので、エルサレム旧市街のキリスト教徒地区に位置し、ムスリムのワクフ(イスラム教に基づき、慈善あるいは宗教的な目的のために寄付された信託財産)が所有している。その面積は約1.4ヘクタール以上におよび、建物は巨大な柱と肋材で補強された丸天井を特徴とする。丸天井の高さは6メートル以

    聖ヨハネ騎士団の大病院、遺構が公開に
  • ダーバンの競馬場、7月ベストフォト

    アフリカ共和国最大のG1レース「ダーバンジュライ」の会場で、豪華なファッションを競う女性たち(7月6日)。1897年創設のダーバンジュライは、毎年7月第1土曜日に開催されるハンディキャップ戦。現在のコースは2200メートル、賞金額は250万ランド(約2490万円)。 Photograph by Chip Somodevilla, Getty Images 南アフリカ共和国最大のG1レース「ダーバンジュライ」の会場で、豪華なファッションを競う女性たち(7月6日)。1897年創設のダーバンジュライは、毎年7月第1土曜日に開催されるハンディキャップ戦。現在のコースは2200メートル、賞金額は250万ランド(約2490万円)。◆ベストフォト選考理由 「愉快で野性味を感じさせる作品だ。個性的な帽子の婦人と馬の対比が見事」、アレクサ・キーフ氏(フォトプロデューサー)。 「さまざまな要素が含まれている

    ダーバンの競馬場、7月ベストフォト
  • 写真アーカイブ:カイロのモスク

    エジプト、カイロのアルマルダニ・モスク(Al-Mardani Mosque)で祈りを捧げるイスラム教徒(1920年)。 Photograph by Donald McLeish, National Geographic イスラム教徒の宗教的な試練、約30日間におよぶラマダンが、今年は8月7日に終わりを迎える。イスラム暦の第9月の名で、開祖ムハンマドが唯一神アッラーから聖典クルアーン(コーラン)の啓示を受けた最も神聖な月とされる。信者は日の出から日没まで一切の飲を絶ち、クルアーンの朗唱や礼拝をして過ごす。 イスラム歴は月の満ち欠けの周期に基づく太陰暦を厳格に採用するため、ラマダンの期間も毎年、約10日ずつ前にずれて行く。初日と最終日はいずれも新月が姿を現す日に当たる。 ワシントンD.C.を拠点とするシンクタンク、ピュー研究所によると、世界のイスラム教徒は現在およそ16億人、うち10億人近く

    写真アーカイブ:カイロのモスク
  • 朝鮮半島を分断する38度線の秘話

    朝鮮半島を分断する軍事境界線上の板門店で警備に就く北朝鮮軍兵士。 Photograph by David Guttenfelder, Associated Press 60年前の1953年7月、朝鮮戦争休戦協定が締結された。平和条約ではなくあくまで休戦協定であり、朝鮮半島は軍事境界線(MDL)と、幅2キロの非武装地帯(DMZ)によって分断された。「戦争の再開につながりかねない衝突を回避する」ことが目的だった。 朝鮮半島を蛇行しながら東西に貫く軍事境界線は長さ約248キロ。韓国が東海と呼ぶ日海と、西岸の京畿湾を結んでいる。 朝鮮戦争が3分の2を経過した時点で、共産国側とアメリカ率いる国連軍が掌握していた陣地を基に軍事境界線は設定されている。ただし、北朝鮮韓国に侵攻を開始する1950年6月以前の「国境」とは同じではない。 「国境」とは、第2次世界大戦後に北部をソ連、南部をアメリカが分割占領

    朝鮮半島を分断する38度線の秘話
  • リチャード3世の遺跡から第2の棺

    15世紀のイングランド王、リチャード3世が埋葬されていた駐車場近くで、石棺の蓋を持ち上げるレスター大学の考古学者たち(7月29日公開)。 Photograph from University of Leicester via Reuters 2012年に発見されたリチャード3世の遺骨発掘現場から、新たな棺が見つかった。イギリス、イングランド中部のレスターの駐車場で丁重に葬られており、1485年、ボズワースの戦いで亡くなった王の墓より1世紀以上遡ると専門家は述べている。 被葬者は不明だが、重要人物であったことは間違いない。権力闘争に敗れたリチャード3世は、穴に埋めるだけで十分と判断されたようだが、今回見つかった墓は豪華だ。遺体は十字架で装飾された鉛の容器に密閉され、さらに石灰岩のサルコファガス(棺)に収められている。しかも、当時の修道院の目立つ場所に埋葬されていた。 発掘チームを率いるレスタ

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  • 古代インカ、生贄の子らは薬物漬け

    生贄として生き埋めにされた13歳の少女のミイラ。死を迎える1年前からコカを大量摂取し、最後の数週間には多量のアルコールも飲んでいたことが、最新の研究で明らかになった。 Photograph courtesy Johan Reinhard アルゼンチン北部のジュジャイジャコ火山(標高6739メートル)の山頂で1999年、インカ帝国時代の子どものミイラ3体が発見された。古代インカの生贄の儀式カパコチャで生き埋めにされたミイラは、保存状態が極めて良く、非常に安らかな表情で知られている。 最近、新たな研究結果が公表され、3人の子どもはいずれも、生贄として捧げられる1年前から向精神作用成分の摂取を強いられていたという。 イギリス、ブラッドフォード大学の法医学と考古学の専門家アンドリュー・ウィルソン(Andrew Wilson)氏はまず、13歳の少女のミイラについて生化学分析を行った。毛髪には、死を迎

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  • 女性器切除、根絶の日は来るか?

    女性器切除を受けた若い女性の髪をなでる女性。シエラレオネで。 Photograph by Jan Grarup/laif/Redux エジプトでは、15~49歳の女性の91%が女性器切除を受けている。女性器切除とは、外性器の一部またはすべてを除去する行為だ。ソマリアでは98%の女性が受けている。アフリカと中東で女性器切除を施された女性および女児の数は1億2500万人以上にのぼり、今後10年でさらに3000万人の女児が切除を受ける可能性がある。 しかし、ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)が米国時間7月22日に発表した報告書によると、女性器切除(女子割礼)の慣習は徐々に減少しつつあるという。若い女性は上の世代の女性に比べて女性器切除を受けた人の割合が低く、また自分の娘に受けさせたいと考えている人も少ない。 女性器切除についてさらに詳しく知るため、ナショナル ジオグラフィックでは女性の人

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  • ロイヤルベビーの名前予想が過熱

    イギリス、ロンドン市内にあるセント・メアリー病院の前で、ロイヤルベビー出産を待ちわびる熱烈な王室サポーター。 Photograph by Bogdan Maran, European Pressphoto Agency ウィリアム王子とキャサリン妃の第1子誕生に沸くイギリスでは早速、ロイヤルベビーの名前に注目が集まっている。ブックメーカー各社が行っている名前予想の賭けには、イギリス全土から申し込みが殺到しているという。 イギリスでは、ロイヤルベビーに関してさまざまな事柄が賭けの対象になっている。例えば、生まれて初めて口にする言葉(1位は「パパ」でオッズは2.75倍)や、誕生後初めて公の場に姿を現す際、ウィリアム王子とキャサリン妃のどちらに抱かれているか(「ウィリアム王子」が1.57倍、「キャサリン妃」が2.5倍)など細事にわたる。だがイギリス国民の最大の関心事は、何と言っても「未来の国王」

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  • サメ除けデザインのウェットスーツ

    サメ除けデザインを採用したウェットスーツを着たサーファーとダイバー。 Photograph from Shark Attack Mitigation Systems via AFP/Getty Images オーストラリアの企業が、サメに気付かれないウェットスーツを販売する。もし宣伝文句の通りならスキューバダイバーたちは、陸に上がった魚のような違和感から解放されるかもしれない。 495豪ドル(約4万5000円)のワンピース型ウェットスーツで、白とさまざまな色合いの青で模様が描かれている。発表したシャーク・アタック・ミティゲーション・システムズ(Shark Attack Mitigation Systems, SAMS)社は、同じようなパターンのステッカーも販売。こちらはサーフボードやスキューバダイビング用のタンク、カヤックに貼って使用する。 しかし視覚的な効果はあっても、サメに気付かれてし

    サメ除けデザインのウェットスーツ
  • 詳細は語らず、弾薬の断面写真

    オーストリア出身のアーティスト、ザビーネ・パールマン(Sabine Pearlman)氏が撮影した、弾薬の断面(2012年10月)。史上最も破壊的な兵器の内部を明らかにする、という衝動に駆られた同氏は、スイスで弾薬900個の断面をカメラに収めた。 Photograph by Sabine Pearlman オーストリア出身のアーティスト、ザビーネ・パールマン(Sabine Pearlman)氏が撮影した、弾薬の断面(2012年10月)。史上最も破壊的な兵器の内部を明らかにする、という衝動に駆られた同氏は、スイスで弾薬900個の断面をカメラに収めた。 公開にあたりパールマン氏は、弾薬の名称や目的など、仕様に関する詳細情報の提供は意図的に避けた。 「人によって見方は異なるので、詳しく説明する必要はないと考えた」と同氏は語る。 「あらゆる情報を欲しがる弾薬マニアのような方もいるだろうが、それほど

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  • 個人所蔵、弾薬の断面写真

    ザビーネ・パールマン(Sabine Pearlman)氏が発表した写真シリーズ、「弾薬(Ammo)」の1枚(2012年)。カットされた弾薬900個はプライベート・コレクションの一部で、スイスにある第2次世界大戦当時の地下弾薬庫に保管されていた。作業を行ったのは武器弾薬の専門家だという。 Photograph by Sabine Pearlman ザビーネ・パールマン(Sabine Pearlman)氏が発表した写真シリーズ、「弾薬(Ammo)」の1枚(2012年)。カットされた弾薬900個はプライベート・コレクションの一部で、スイスにある第2次世界大戦当時の地下弾薬庫に保管されていた。作業を行ったのは武器弾薬の専門家だという。「爆発しないよう事前に処理されている。非常に高度なテクニックであり、決して真似しないでほしい」とパールマン氏は語る。 切断面作りでは、各種2個の弾薬を用意したそうだ。

    個人所蔵、弾薬の断面写真
  • 内部構造、弾薬の断面写真

    薬莢(やっきょう)なども含めた全体を「弾丸(ブレット)」と呼ぶ場合が多いが、「弾薬(アムニション)」または「実包(カートリッジ)」が正式名称。専門用語としての「弾丸」は、銃口から発射される部分のみを指し、砲弾と違って爆薬は内蔵していない。 Photograph by Sabine Pearlman 銃の引き金を引くと、まず撃鉄が解放され、撃針が実包(じっぽう)の後ろを叩く。すると火薬が点火し、弾丸が発射される。 薬莢(やっきょう)なども含めた全体を「弾丸(ブレット)」と呼ぶ場合が多いが、「弾薬(アムニション)」または「実包(カートリッジ)」が正式名称。専門用語としての「弾丸」は、銃口から発射される部分のみを指し、砲弾と違って爆薬は内蔵していない。 ザビーネ・パールマン(Sabine Pearlman)氏が撮影した実包は、弾丸の種類に応じて形状がまったく異なる。小さな球、小型の矢(防弾チョッ

    内部構造、弾薬の断面写真
  • 単純性と美、弾薬の断面写真

    薬莢(やっきょう)なども含めた全体を「弾丸(ブレット)」と呼ぶ場合が多いが、「弾薬(アムニション)」または「実包(カートリッジ)」が正式名称。専門用語としての「弾丸」は、銃口から発射される部分のみを指し、砲弾と違って爆薬は内蔵していない。 Photograph by Sabine Pearlman 昨年、スイスを訪れたザビーネ・パールマン(Sabine Pearlman)氏は、カットされた弾薬の断面を目にして思わず魅了されたと話す。同氏は写真を公開するにあたり、個々の違いを明確にし、さまざまな解釈を可能とするため、飾り気のない白を背景色に選んだ。「カタログを作るつもりはなかった。機能性のシンプルさと、造形美の絶妙なバランスが伝わればうれしい」。 Photograph by Sabine Pearlman

    単純性と美、弾薬の断面写真
  • 拘束道具、黒ひげが残した遺物

    沈没船「クイーン・アンズ・リベンジ」(アン女王の復讐)号から発見されたばかりの、18世紀の鉄製拘束道具。この船は悪名高きカリブの海賊、「黒ひげ」が率いた艦隊の旗艦として知られ、1718年にアメリカのノースカロライナ州ビューフォート沖で座礁、沈没した。 Photograph courtesy Mathew Waehner, North Carolina Department of Cultural Resources 沈没船「クイーン・アンズ・リベンジ」(アン女王の復讐)号から発見されたばかりの、18世紀の鉄製拘束道具。この船は悪名高きカリブの海賊、「黒ひげ」が率いた艦隊の旗艦として知られ、1718年にアメリカのノースカロライナ州ビューフォート沖で座礁、沈没した。 1995年、州の文化財課に所属する考古学者チームが船体を発見。16年後にようやく黒ひげの船と認定された。チームは同州グリーンビル

    拘束道具、黒ひげが残した遺物
  • 英海軍との戦い、黒ひげが残した遺物

    アメリカ人画家ジーン・レオン・ジェローム・フェリス(Jean Leon Gerome Ferris)が1920年に描いた、悪名高き海賊黒ひげとイギリス海軍との戦い。1718年、アメリカ、ノースカロライナ州沖で繰り広げられた最後の死闘に破れ、黒ひげは短いながらも派手な海賊人生を終えた。 Illustration from SuperStock/Getty Images アメリカ人画家ジーン・レオン・ジェローム・フェリス(Jean Leon Gerome Ferris)が1920年に描いた、悪名高き海賊黒ひげとイギリス海軍との戦い。1718年、アメリカ、ノースカロライナ州沖で繰り広げられた最後の死闘に破れ、黒ひげは短いながらも派手な海賊人生を終えた。 黒ひげの名は、エドワード・ティーチ(Edward Teach)、あるいはエドワード・サッチ(Edward Thatch)とされる。1701~1

    英海軍との戦い、黒ひげが残した遺物
  • 海賊の食卓、黒ひげが残した遺物

    カリブの海賊「黒ひげ」の旗艦「クイーン・アンズ・リベンジ」号から引き揚げられた、ピューター(スズの合金)製の皿とスプーン。18世紀の海賊がどのような卓を囲んでいたのか、想像を巡らしてみるのも一興だ。 Photograph courtesy Mathew Waehner, North Carolina Department of Cultural Resources カリブの海賊「黒ひげ」の旗艦「クイーン・アンズ・リベンジ」号から引き揚げられた、ピューター(スズの合金)製の皿とスプーン。18世紀の海賊がどのような卓を囲んでいたのか、想像を巡らしてみるのも一興だ。 折れ曲がっている右上を含め3枚は、小さめの取り分け皿。キッチンからダイニングまでは左上の大皿に盛られていたらしい。現在はいくつかの破片に割れてしまっている。 修復作業の過程で、制作した職人のマークが見つかり、ヨーロッパ製と判明。

    海賊の食卓、黒ひげが残した遺物
  • 剣の柄、黒ひげが残した遺物

    アメリカ、イーストカロライナ大学で保管されている、剣の柄。海賊「黒ひげ」の旗艦、「クイーン・アンズ・リベンジ」(アン女王の復讐)号から発見された。 Photograph courtesy Mathew Waehner, North Carolina Department of Cultural Resources アメリカ、イーストカロライナ大学で保管されている、剣の柄。海賊「黒ひげ」の旗艦、「クイーン・アンズ・リベンジ」(アン女王の復讐)号から発見された。 凝った金箔が部分的に施された柄は、シカの角と金属からできている。海底で約300年眠っていたが、砂と泥に埋まって酸化を免れ、当時の状態を保っている。 柄頭には「フルール・ド・リス」として知られるフランス王家ゆかりの紋章、アヤメの装飾が施されている。 黒ひげが1717年に奪取するまで、クイーン・アンズ・リベンジ号はフランスの奴隷船だった。

    剣の柄、黒ひげが残した遺物
  • 写真アーカイブ:1953年の戴冠式

    母エリザベス2世の戴冠式を見つめる、幼き日のチャールズ皇太子(1953年)。 Photograph by United Press Photos 時は1953年、当時27歳だった現イギリス女王エリザベス2世の戴冠式が執り行われた(写真)。左側がエリザベス2世の母エリザベス・ボーズ・ライアン、右側が妹のマーガレット・ローズ、2人の間で頬杖をつきながら戴冠する母を見つめているのが幼き日のチャールズ皇太子だ。彼は、新女王の即位に伴ってイギリス王位継承順位第1位となったが、その地位は64歳の今も変わっていない。 イギリス国内には、チャールズ皇太子が国王に即位する日は巡ってこないのではないかという見方も多い。 エリザベス2世にとって3人目のひ孫が今月誕生する予定だ。王位継承権者が新たに加わっても、女王が退位することはないだろうと専門家は見ている。現在もいたって健康状態が良い上、依然として高い人気を誇

    写真アーカイブ:1953年の戴冠式
  • その食品の表示は本当に正しいのか?

    スペイン北部、ブルゴスのスーパーマーケットに並ぶ冷凍品(2013年2月)。今年の初頭、ヨーロッパでは、ラ・コチネラ(La Cocinera)社をはじめとして、「牛肉」と表記された製品に馬肉の混入が発覚、大きな問題となった。 Photograph by Cesar Manso, AFP/Getty Images 現在、各家庭の卓に上る料は、多国籍企業の製品が占める割合が増加している。流通も複雑化しており、ヨーロッパの馬肉混入事件をきっかけに、安全性について大きな注目が集まっている。品にも「透明性」が求められる新たな時代を迎えつつあるようだ。 しかし、品偽装は後を絶たない。 アメリカ、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の品法・料政策センター(Center for Food Law and Policy)で代表を務めるマイケル・ロバーツ(Michael Roberts)氏

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  • 観光スポット、中国最後の銃士部落

    爆発的な成長を遂げる中国都市部から遠く離れた貴州省、芭沙(ばしゃ)村は、最後の銃士部落として知られている。14歳を迎えた男子は全員、火薬銃と腰刀を身につけて生活を送る。射撃練習に備えて、火薬を詰めた銃を腰刀でたたく少年も手慣れた様子だ(5月21日)。 Photograph by Jason Lee, Reuters 爆発的な成長を遂げる中国都市部から遠く離れた貴州省、芭沙(ばしゃ)村は、最後の銃士部落として知られている。14歳を迎えた男子は全員、火薬銃と腰刀を身につけて生活を送る。射撃練習に備えて、火薬を詰めた銃を腰刀でたたく少年も手慣れた様子だ(5月21日)。 銃所持の長い歴史を持つ中国人にとって、この村は故郷のような場所かもしれない。火薬が発明された中国でも、現在は厳しい取り締まりの下にあり、一般市民による銃器の所有は禁止されている。しかし芭沙村の男性は、いまだ銃を手放さない。 14歳

    観光スポット、中国最後の銃士部落
  • 試し打ち、中国最後の銃士部落

    中国の少数民族、ミャオ族の伝統行事に備え、銃の試し撃ちを行うグン・ユエングゥ(Gun Yuangu)さん(5月21日)。中国最後の銃士部落、貴州省の芭沙(ばしゃ)村では、文化保護の観点から銃の所持が特別に許可されている。14歳以上の男子は誰もが火薬銃を身につけており、銃を使った行事の際には、女性も踊り子や楽器の奏者として参加する。 Photograph by Jason Lee, Reuters 中国の少数民族、ミャオ族の伝統行事に備え、銃の試し撃ちを行うグン・ユエングゥ(Gun Yuangu)さん(5月21日)。中国最後の銃士部落、貴州省の芭沙(ばしゃ)村では、文化保護の観点から銃の所持が特別に許可されている。14歳以上の男子は誰もが火薬銃を身につけており、銃を使った行事の際には、女性も踊り子や楽器の奏者として参加する。 Photograph by Jason Lee, Reuters

    試し打ち、中国最後の銃士部落
  • 独特の髪型、中国最後の銃士部落

    中国、貴州省の芭沙(ばしゃ)村で、観光客相手のショーの稼ぎをミャオ族の男達が分けあう(5月21日)。射撃技術だけではなく、「戸棍」という独特の髪型に散髪する様子もしばしば披露される。中国でも最古の髪型とされ、頭頂部だけ髪を伸ばして団子のように結い、ほかの部分は鎌でそり落とす。 Photograph by Jason Lee, Reuters 中国、貴州省の芭沙(ばしゃ)村で、観光客相手のショーの稼ぎをミャオ族の男達が分けあう(5月21日)。射撃技術だけではなく、「戸棍」という独特の髪型に散髪する様子もしばしば披露される。中国でも最古の髪型とされ、頭頂部だけ髪を伸ばして団子のように結い、ほかの部分は鎌でそり落とす。 Photograph by Jason Lee, Reuters

    独特の髪型、中国最後の銃士部落
  • 鉄砲鍛冶、中国最後の銃士部落

    銃所持の伝統が今なお残る中国、貴州省の芭沙(ばしゃ)村のグン・ラオシェン(Gun Laosheng)さんはベテランの鉄砲鍛冶だ(5月22日)。村に暮らすミャオ族の男子は、14歳を迎えると腰刀とともに身に付けるようになるという。2008年には、銃を受け継ぐため父を捜し求める少年を描いた映画も現地ロケで製作されている。 Photograph by Jason Lee, Reuters 銃所持の伝統が今なお残る中国、貴州省の芭沙(ばしゃ)村のグン・ラオシェン(Gun Laosheng)さんはベテランの鉄砲鍛冶だ(5月22日)。村に暮らすミャオ族の男子は、14歳を迎えると腰刀とともに身に付けるようになるという。2008年には、銃を受け継ぐため父を捜し求める少年を描いた映画も現地ロケで製作されている。 Photograph by Jason Lee, Reuters

    鉄砲鍛冶、中国最後の銃士部落
  • 国境の先、密入国者たちの旅の記録

    アメリカ、アリゾナ州のソノラ砂漠で見つかった子ども用のバックパック(2010年撮影)。 Photograph by Michael Wells アメリカ上院は先月27日、不法移民に市民権獲得への道を開く移民制度改革法案を可決した。警備態勢の強化も盛られており、国境を不法に越えるメキシコ人を押しとどめようとする内容だ。法案の審議は休会明けの下院に移り、採決の結果は現段階では予測できない。 メキシコとアメリカの国境を徒歩で越えようと試みる人々は、非情なリスクを抱えることになる。不法入国が最も多い州の1つ、アリゾナでは2012年だけで約22万人が逮捕され、過酷なソノラ砂漠で絶命したケースは2011~12年で179件に上る。真夏の砂漠の道中は、摂氏46度に達することも珍しくない。 アメリカへの不法入国を試みるのは、中南米の祖国で希望を失った人や貧困者が多い。再出発を夢見る老若男女が、自ら途方もない

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  • アシアナ機事故、背景に韓国文化?

    サンフランシスコ国際空港に横たわるアシアナ航空214便。炎上の跡が生々しく残る。 Photograph by Marcio Jose Sanchez, AP Photo アメリカのサンフランシスコ国際空港(SFO)で7月6日(現地時間)、アシアナ航空214便(ボーイング777型機)が着陸に失敗し炎上した。この事故によって、乗客乗員307人のうち2人が死亡し、180人以上が重軽傷を負った。 事故当時の天候は良好であり、アシアナ航空の社長兼CEOの尹永斗(ユン・ヨンドゥ)氏は、事故機にエンジンなどの機械的な異常はなかったと述べた。このため、事故の原因が人為的ミスにあったかどうかが調査の焦点となっている。 今回の事故には、アシアナ航空が拠点を置く韓国文化が関係しているのではないかとする見方もある。こうした議論の中で引用されているのが、2008年にベストセラーとなったマルコム・グラッドウェル氏の

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  • 騒乱のエジプト、国軍の歴史と役割

    エジプトの首都カイロで、デモの参加者と相対する共和国警備隊。 Photograph by Ed Giles, Getty Images 2013年7月3日、エジプトで軍部のクーデターが発生。ムハンマド・モルシ大統領が解任された。2年前に続く政変で、再び国軍が自国内で強大な影響力を維持していることを示す形となった。 軍部は2011年にもクーデターを主導、長らく政権の座に就いていたホスニ・ムバラク大統領を解任に追い込んでおり、当時この事件は、アラブ中で巻き起こっていた大規模な反政府運動「アラブの春」における最も劇的かつ重要な政変と言われていた。 7月3日、軍最高司令官アブドル・ファタ・アル・シシ国防相は軍の最高評議会で、2005年までムスリム同胞団の議員団長を務めていたモルシ大統領に対する最後通告を表明、同大統領を解任に追い込んだ。街頭を埋め尽くしているデモ参加者の要求に応え、野党の発言力を高

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  • 平壌の地下鉄、6月ベストフォト

    首都平壌の栄光(ヨングァン)駅に停車する北朝鮮の地下鉄(6月18日)。北朝鮮を訪れた外国人は、行動を厳しく制限される。核シェルターを兼ねる2路線の地下鉄も最近までは、市内を南北に走る千里馬(チョルリマ)線の復興(ブフン)駅と、隣の栄光駅間以外の乗車は許されていなかった。 Photograph by Alexander F. Yuan, AP 首都平壌の栄光(ヨングァン)駅に停車する北朝鮮の地下鉄(6月18日)。北朝鮮を訪れた外国人は、行動を厳しく制限される。核シェルターを兼ねる2路線の地下鉄も最近までは、市内を南北に走る千里馬(チョルリマ)線の復興(ブフン)駅と、隣の栄光駅間以外の乗車は許されていなかった。◆ベストフォト選考理由 「車窓越しの通勤客と、一緒に乗車しているような気分になる。重苦しく張り詰めた車内の雰囲気がひしひしと伝わってくるのは、写真と絵画を合成したようなイメージだからだろ

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  • 祈りの準備、6月ベストフォト

    セネガル西部にあるンダンデ(Ndande)という村で、「ガモウ・ンダンデ(Gamou-Ndande)」の祭りに参加する準備を進めるビネタ・ンジャイ(Bineta Ndiaye)さん(左、22歳)とクンバ・ファイ(Coumba Faye)さん(19歳)。ガモウ・ンダンデは、年に一度のイスラム神秘主義「スーフィズム」の儀式で、祈りと詠唱を毎夜行い、土着のアニミズム(精霊信仰)の要素も組み込まれている。 Photograph by Joe Penney, Reuters セネガル西部にあるンダンデ(Ndande)という村で、「ガモウ・ンダンデ(Gamou-Ndande)」の祭りに参加する準備を進めるビネタ・ンジャイ(Bineta Ndiaye)さん(左、22歳)とクンバ・ファイ(Coumba Faye)さん(19歳)。ガモウ・ンダンデは、年に一度のイスラム神秘主義「スーフィズム」の儀式で、祈りと

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  • 記録破りの誕生日、6月ベストフォト

    教会で114歳の誕生日を祝うジェラレアン・タリー(Jeralean Talley)さん。ミシガン州在住のタリーさんは1899年5月生まれ、アメリカで最高齢の人物だ。 Photograph by Rebecca Cook, Reuters 教会で114歳の誕生日を祝うジェラレアン・タリー(Jeralean Talley)さん。ミシガン州在住のタリーさんは1899年5月生まれ、アメリカで最高齢の人物だ。◆ベストフォト選考理由 「コミュニティで慕われている様子が伝わってくる、魅力的な場面だ。小手先のテクニックに頼らず、人物を中心に据えた構図を高く評価したい」、ジャンナ・ドチュカル氏(フォト共同編集者)。 Photograph by Rebecca Cook, Reuters

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  • 自由の女神、独立記念日に一般公開再開

    2012年10月、巨大ハリケーン「サンディ」の爪痕が残る自由の女神像周辺。管理する国立公園局(NPS)は、アラスカからカリフォルニアまで全国の職員を緊急招集。翌年の独立記念日に間に合わせるべく、急ピッチで修復が進められた。約8カ月後の今年7月4日、リバティ島と自由の女神の一般公開が再開される。 Photograph by Richard Drew, AP 2012年10月、巨大ハリケーン「サンディ」の爪痕が残る自由の女神像周辺。アメリカ東海岸で猛威を振るった「サンディ」は、洪水、倒木、建築物の全半壊など甚大な被害をもたらした。約6万平方メートルの小さなリバティ島でも、女神像周辺のレンガ造りの歩道など施設や電力システムが損傷、被害額は約5900万ドル(約59億円)に上った。 管理する国立公園局(NPS)は、アラスカからカリフォルニアまで全国の職員を緊急招集。翌年の独立記念日に間に合わせるべく

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  • パレードの舞台裏、6月ベストフォト

    ルーマニアの首都ブカレストで、パフォーマーの足下を作業員が通り抜ける(5月30日)。派手な衣装のまま休憩しているのは、興行団体「International Show Parade」が演出した仮装パレード「Red Ladies」のフランス人たちだ。彼らは、ブカレスト中心街のオールドシティセンター(Old City Center)地区で開催された路上パフォーマンスの一大イベント、「B.Fit in the Street」でパレードを披露した。 Photograph by Bogdan Cristel, Reuters ルーマニアの首都ブカレストで、パフォーマーの足下を作業員が通り抜ける(5月30日)。派手な衣装のまま休憩しているのは、興行団体「International Show Parade」が演出した仮装パレード「Red Ladies」のフランス人たちだ。 彼らは、ブカレスト中心街のオール

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  • 窓から見た焼け跡、6月ベストフォト

    壁に掛けられた絵画のような山火事の跡。実際は、焼けた住宅の窓越しに覗いた現実だ。6月初め、発電所付近で発生した森林火災「パワーハウス・ファイア(Powerhouse fire)」が、アメリカ、カリフォリニア州ロサンゼルス北、レイクヒューズ地域を襲った。数軒の住宅が破壊され、避難を余儀なくされた住民は数千人に上る。 Photograph by Reed Saxon, AP 壁に掛けられた絵画のような山火事の跡。実際は、焼けた住宅の窓越しに覗いた現実だ。6月初め、発電所付近で発生した森林火災「パワーハウス・ファイア(Powerhouse fire)」が、アメリカ、カリフォリニア州ロサンゼルス北、レイクヒューズ地域を襲った。数軒の住宅が破壊され、避難を余儀なくされた住民は数千人に上る。◆ベストフォト選考理由 「窓から外を見た、という構図が印象的。変わり果てた風景の焼け残った部分が、被害の大きさを

    窓から見た焼け跡、6月ベストフォト
  • 増える移民、世界各国の対応は

    イギリスの市民権を獲得し、国籍取得の証明書を抱える女性。 Photograph by Cate Gillon, Getty Images 現在、アメリカに滞在する不法移民は1100万人を数える。しかし、よりよい生活を求めて母国を離れた人のすべてが、アメリカに行き着くわけではない。世界中の国々は、それぞれに移民の入国基準を定める必要に迫られている。 アメリカ連邦議会で移民政策改革をめぐる論議が山場を迎える中、この記事では、他の国々では押し寄せる移民にどのように対処しているのか、その現状を紹介する。 ◆カナダ カナダでは1970年代以降、技能を持つ労働者の不足により経済成長が滞ってきた。このため、カナダは世界でも最も開放的とされる移民政策を採用している。2010年の時点で、同国の総人口に占める外国生まれの人の割合は21.3%にも達した。 2013年4月1日には、既に移民を積極的に受け入れている

    増える移民、世界各国の対応は
  • スノーデン氏のように“消える”方法

    消息を絶って逃亡したい人は、痕跡を残さずウクライナなどへ飛ぶといいようだ。 Photograph by Maria Danilova, AP エドワード・スノーデン(Edward Snowden)氏の“世界一周”はハワイに始まり、香港を経て、現在地はモスクワだ。 30歳で、アメリカ国家安全保障局(NSA)の契約企業の元従業員であるスノーデン氏は、アメリカ政府の監視プログラムに関する重大な機密情報を暴露した後、滞在していた香港を現地時間6月23日に離れ、空路モスクワへ向かった。 ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir V. Putin)大統領は現地時間6月25日、スノーデン氏がモスクワのシェレメチェボ空港の乗り換えエリアにいることを認め、同氏はロシアの法律を何ら犯していないと述べた。プーチン大統領が会見を開く数時間前には、ロシアのセルゲイ・ラブロフ(Sergey Lavrov)外相

    スノーデン氏のように“消える”方法
  • 金銀の耳飾り、ワリ文化の王族墓

    翼を持つ神秘的な生き物が刻まれた、金銀製の大きな耳飾り。ペルーの首都リマの約300キロ北、エル・カスティーリョ・デ・ウアルメイ(El Castillo de Huarmey)遺跡の王室の墓で、ワリ帝国の3人の女王を含む63体の遺骨とともに発掘された。ワリ文化の高貴な女性の装飾品と考えられている。 Photograph by Daniel Giannoni 翼を持つ神秘的な生き物が刻まれた、金銀製の大きな耳飾り。ペルーの首都リマの約300キロ北、エル・カスティーリョ・デ・ウアルメイ(El Castillo de Huarmey)遺跡の王室の墓で、ワリ帝国の3人の女王を含む63体の遺骨とともに発掘された。ワリ文化の高貴な女性の装飾品と考えられている。 Photograph by Daniel Giannoni

    金銀の耳飾り、ワリ文化の王族墓
  • 女王の遺骨、ワリ文化の王族墓

    現在のペルー沿岸部と高地を中心に、約1200年前に栄えたとされるワリ帝国の女王の遺骨。墓を略奪から守るため、当時の会葬者が30トンもの軽石で覆ったとみられている。発掘プロジェクトの科学顧問を務める考古学者クリシュトフ・マコフスキー・ハヌラ(Krzysztof Makowski Hanula)氏によれば、沿岸部の町ウアルメイで発見されたワリの霊廟は、ローマやパリのパンテオン(万神殿)と同じように、王族がみな埋葬されたという。 Photograph by Milosz Giersz 現在のペルー沿岸部と高地を中心に、約1200年前に栄えたとされるワリ帝国の女王の遺骨。墓を略奪から守るため、当時の会葬者が30トンもの軽石で覆ったとみられている。発掘プロジェクトの科学顧問を務める考古学者クリシュトフ・マコフスキー・ハヌラ(Krzysztof Makowski Hanula)氏によれば、沿岸部の町ウ

    女王の遺骨、ワリ文化の王族墓
  • 生贄か? ワリ文化の王族墓

    ペルーで発掘されたワリ文化の王族墓では、ほとんどの遺体が座位の姿勢で葬られている。リャマの毛と綿から織られた布に包まれており、同時に宝飾品も見つかった。また、横たえられた遺体も6体確認され、神への生贄と推測されている。 Photograph by Patrycja Przadka Giersz ペルーで発掘されたワリ文化の王族墓では、ほとんどの遺体が座位の姿勢で葬られている。リャマの毛と綿から織られた布に包まれており、同時に宝飾品も見つかった。また、横たえられた遺体も6体確認され、神への生贄と推測されている。 Photograph by Patrycja Przadka Giersz

    生贄か? ワリ文化の王族墓
  • ワリ文化の霊廟と財宝を発見、ペルー

    南米ペルーで発見されたワリ文化時代の墓の主室で、被葬者の骨の発掘作業が行われた。ロベルト・ピメンテル・ニタ(Roberto Pimentel Nita)氏(左)、生物考古学者のビエスワフ・ビエツコフスキ(Wieslaw Wieckowski)博士(中央)、考古学者のパトリツィア・プジョントカ・ギェルシュ(Patrycja Przadka-Giersz)博士(右)の3氏が、プロジェクトの共同責任者を務めている。手前にある杖状の木彫りは、墓標の役目を果たしていたという。 Photograph by Milosz Giersz 南米ペルーのエル・カスティーリョ・デ・ウアルメイ(El Castillo de Huarmey)遺跡で、未盗掘の王族の墓が発見された。西暦700~1000年頃に南アメリカに最初の帝国を建設した古代文明、「ワリ文化」の霊廟と考えられている。しかし、薄暗い埋葬室で黄金の輝きを

    ワリ文化の霊廟と財宝を発見、ペルー
  • アラバスターの器、ワリ文化の王族墓

    新たに発見されたワリ文化の王族墓からは、数多くの貴重な副葬品が見つかっている。アラバスター(雪花石膏)をくり抜いて作ったカップもその1つだ。古代アンデス文明固有の技法として知られている。 Photograph by Daniel Giannoni 新たに発見されたワリ文化の王族墓からは、数多くの貴重な副葬品が見つかっている。アラバスター(雪花石膏)をくり抜いて作ったカップもその1つだ。古代アンデス文明固有の技法として知られている。 Photograph by Daniel Giannoni

    アラバスターの器、ワリ文化の王族墓
  • 木製スプーン、ワリ文化の王族墓

    ワリ文化の王族墓からは、理想的な保存状態の木製副葬品がいくつも発掘された。約1200年前に制作されたスプーンの柄には、翼を持つ架空の生き物の姿が彫られている。 Photograph by Daniel Giannoni ワリ文化の王族墓からは、理想的な保存状態の木製副葬品がいくつも発掘された。約1200年前に制作されたスプーンの柄には、翼を持つ架空の生き物の姿が彫られている。 Photograph by Daniel Giannoni

    木製スプーン、ワリ文化の王族墓
  • 登山者襲撃テロ、世界の危険な山岳地帯

    強風の中、パキスタンのナンガ・パルバット山を歩く登山者。 Photograph by Tommy Heinrich, National Geographic 6月23日、世界第9位の8000メートル峰、パキスタンのナンガ・パルバット山で、外国人登山者ら11名がテロリストの襲撃を受けて殺害された。報道によると死亡者の内訳は、中国人2名、ネパール人1名、アメリカ人1名、パキスタン人のガイド1名、ロシア人1名、ウクライナ人5名と伝えられている。ヒマラヤ山脈の登頂は大きな危険を伴うが、テロ、犯罪、さらには地政学的問題も絡んでくると、さらに憂慮すべき事態になる。「New York Times」紙は、「アメリカ軍の無人偵察機による部族地帯への攻撃に対する報復として、パキスタンのタリバン関係者が犯行声明を出している」と伝えた。 現場のパキスタン北部のギルギット・バルティスタン州は、領有権を巡る争いが続く

    登山者襲撃テロ、世界の危険な山岳地帯
  • 要塞と満月、スーパームーン2013

    古い灯台とスーパームーンの下で愛を誓う新婚のカップル。先週末、ギリシャのコルフ島にある旧要塞、パレオ・フルリオで2人を見守ったのは、バシリス・メタリノス(Vasilis Metallinos)氏。 Photograph courtesy Vasilis Metallinos, National Geographic Your Shot 古い灯台とスーパームーンの下で愛を誓う新婚のカップル。先週末、ギリシャのコルフ島にある旧要塞、パレオ・フルリオで2人を見守ったのは、バシリス・メタリノス(Vasilis Metallinos)氏。米ナショナル ジオグラフィックのオンライン・フォトコミュニティ「Your Shot」に投稿された。 同じく日曜の満月を見上げて、「普通より大きくて明るい」と思った人は世界中に大勢いることだろう。6月23日は、月が地球に近づく今年一番の日で、普段より8%大きく、17%

    要塞と満月、スーパームーン2013
  • スペイン語が話せないメキシコ系移民

    アメリカ、カリフォルニア州フレズノに移住してきたメキシコの先住民族「ミシュテカ」の男性。タマネギ畑で収穫作業に励んでいる。 Photograph by Antonio Nava, Nava Photos アメリカで、英語スペイン語も話せないメキシコ系移民が増加し、社会問題となっている。今回取材したミゲル・ビジェガス(Miguel Villegas)さんの母語はミシュテカ語。7歳で国境を越えた16年前は、ミシュテカ語しか話せなかった。 現在は、カリフォルニア州フレズノにある「オアハカ先住民コミュニティの地位向上を促進する2国間センター(Binational Center for the Development of Oaxacan Indigenous Communities, CBDIO)」の部で支援活動を行っている。しかし2年間働いたブドウ園で、今も兄弟が重労働に苦しんでいる。CBD

    スペイン語が話せないメキシコ系移民
  • 世界自然遺産、新たに5件

    イタリア、カタニアの夜景を見下ろすエトナ山から、空に向かって吹き出す溶岩の泉。 Photograph by Cartsten Peter, National Geographic 米国時間6月21日、ユネスコの世界自然遺産217件に、新たに5つの顔ぶれが加わった。霧にけむる砂漠、世界有数の活火山、峡谷や氷河が点在する国立公園などだ。 世界遺産は、ユネスコの世界遺産委員会が毎年候補リストの中から選出して登録される。1972年に採択された世界遺産条約に基づき、委員会は「顕著な普遍的価値」をもつ自然遺産および文化遺産の選出と保護支援にあたっている。 自然遺産に登録されるには、以下の4つの基準のいずれかを満たす必要がある。 1. 最上級の自然現象、または、類まれな自然美・美的価値を有する地域を包含する。 2. 生命進化の記録や、地形形成における重要な進行中の地質学的過程、あるいは重要な地形学的また

    世界自然遺産、新たに5件
  • ハリケーンから“救出”されたパレード

    ニューヨーク、ブルックリン区のコニーアイランドで、マーメイドパレードに参加する人々(2012年6月23日)。 Photograph by Eric Thayer, Reuters ハリケーン「サンディ」の被害を受け、存続の危機にあったコニーアイランドのマーメイドパレードが、クラウドファンディングの力で復活を果たした。 アメリカ、ニューヨーク市ブルックリンの南端にあるコニーアイランドは、大西洋に張り出した娯楽の半島だ。ビーチや木製のボードウォーク、遊園地目当てに夏の観光客がどっと押し寄せる有数のリゾート地として知られる。 しかし昨年、ハリケーン「サンディ」の直撃を受け、1世紀の歴史を持つ通りや建物に約1.5メートル高の海水が流れ込んだ。小商いを営む人たちは休業を余儀なくされ、アパートの1階の住人たちは避難を強いられた。7カ月以上が経過した現在も、約4分の1の事業主には再建の目処が立っていない

    ハリケーンから“救出”されたパレード
  • 古代文明の王子の遺骨を発見、パナマ

    少年が身に着けていた金の腕飾り。獰猛なクロコダイル姿の神が2つ彫られている。 Photograph courtesy Julia Mayo パナマの首都パナマシティから145キロ南西、太平洋岸近くにある「エル・カーニョ(El Cano)」遺跡。ナショナル ジオグラフィック協会の研究助成金を受けている考古学者ジュリア・メイヨー(Julia Mayo)氏は、エル・カーニョの発掘調査を5年間続けている。2011年には、金の装飾品を身に着けた支配者の墓を発見。1500年代前半にスペイン人に征服されるまで、数世紀にわたり繁栄した無名の文明である。 支配者たちはどのように権力を掌握したのか? その経緯を示す証拠が最近見つかった。 スペイン人征服者の記録によると、この地域では、力のある支配者同士が絶えず戦っていた。軍隊を率いて領土を獲得し、捕まえた敵の戦士を奴隷として働かせたという。 支配者の地位を獲得

    古代文明の王子の遺骨を発見、パナマ
  • アメリカ、ペットを巡る最新世論調査

    ペットに関する最新の世論調査では、ペットと一緒に寝ていると回答した飼い主が3分の1に上った。 Photograph by D. Corson, Corbis ペットに関する最新世論調査の結果がアメリカで公表された。かいがいしく世話をするペット好きのアメリカ人は、動物(および人)に対する向き合い方に少々気になる点が見られるという。 回答者の6割を占めた飼い主の中には、ペットと一緒に寝ているケースも少なからずいた(その中に爬虫類が含まれるかどうかは不明)。 またある程度は予想できた結果だが、全体の2割は人付き合いよりもペットと過ごす方に時間を割くと答えている。 イヌとネコの好みを尋ねた質問に対しては、「イヌ」が52%、「ネコ」が21%、「どちらとも言えない」が27%だった。 「イヌの飼い主は管理をもっとしっかりすべきだ」という意見に賛同する人は48%に上った。一方、「ネコの飼い主にはイヌの飼い

    アメリカ、ペットを巡る最新世論調査
  • アステカの動物供犠、400種以上

    博物館に展示されている、かつてアステカの神に捧げられたワニの骨。 Photograph courtesy Hector Montano, INAH 古代国家アステカの首都テノチティトランの発掘現場から見つかった供物の中に400種を超える動物が存在することが、考古学者の検証により明らかになった。 首都テノチティトランでは、現在ではテンプロ・マヨール(大神殿)の名で知られるピラミッド式神殿が、聖域にそびえ立っていた。14世紀以降、アステカの民はここで神々に供物を捧げ、自身にとって重要な象徴的意味を持つ動物の死骸を葬る儀式を行った。 かつてこの聖域があった場所は、現在ではメキシコシティの中心部に位置している。ここでは30年以上にわたって考古学者による発掘調査が行われており、アステカ文化に関するさまざまな情報が明らかになっている。これらの文化は、1519年、スペイン人征服者エルナン・コルテスがメキ

    アステカの動物供犠、400種以上
  • 土地の高さが発音に影響?

    地理的条件が言語の発音に影響を及ぼしうることが最新研究で明らかになった。 Photograph by George Steinmetz, National Geographic 高度の高い土地で話される言語は、空気を短く押し出して発音する“放出音”という子音を含む割合が高いことが最新研究で明らかになった。地理的条件が言語の発音に影響を及ぼしうることを示した初めての研究だ。「私は(特定の音が)高地ではより多く用いられるという仮説を立てた」と、研究著者でマイアミ大学の人類言語学者ケイレブ・エバレット(Caleb Everett)氏は話す。「その証拠を見つけられるという確信はまるでなかったが、実際にデータを見てみると分布は実に顕著だった」。 エバレット氏は、言語を特徴別に分類したオンラインデータベースを用いて、世界に7000ほどある言語のうち約600言語が話されている場所を分析した。 すると、そ

    土地の高さが発音に影響?
  • 催涙ガスの歴史と科学

    トルコ、イスタンブールのタクシム広場で、催涙ガス弾を警察隊に投げ返すデモ参加者(6月11日)。 Photograph by Kostas Tsironis, AP Photo トルコの警察隊は6月11日、数千人規模の反政府デモ隊を制圧するため、イスタンブールのタクシン広場で催涙ガスを発射、放水を行った。5月31日以来、広場は抗議行動の中心地となっている。報道によると、当初の目的は再開発のための樹木伐採への抗議だったが、次第に政権批判の性格が強まり、混乱はトルコ全土の200カ所以上に広がっている。 戦争行為での催涙ガスの使用はジュネーブ条約で国際的に禁止されており、一般市民に対して用いる行為も問題となっている。数年前の「アラブの春」では、各国政府がデモ制圧に利用、多くの市民が負傷し死者も出た。 ナショナル ジオグラフィックでは、催涙ガスの危険性について、イェール大学医学部の薬理学教授スベン・

    催涙ガスの歴史と科学
  • 5000年前のビーズ、材料は隕石

    エジプトのゲルゼ遺跡で発見された鉄製ビーズ。 Photograph by Andy Tindle, Open Univeristy 製鉄技術が普及するはるか以前、約5000年前の鉄製のビーズが、加工した隕石であることが判明した。 学術誌「Meteoritics and Planetary Science」によると、エジプトの首都カイロの南、およそ70キロにあるゲルゼ遺跡の墓所から発見され、エジプト最古の鉄の加工品だという。研究チームの一員、ジョイス・ティルディスレイ(Joyce Tyldesley)氏はこう話す。「古代エジプト人にとって、天空は非常に重要な意味を持つ。空から物が落ちてくれば、神々からの贈り物と受け止めた」。 既にいくつかの鉄の加工品が発掘されているが、いずれもツタンカーメンなど身分の高い人物の墓の副葬品だった。ゲルゼ遺跡のビーズは、走査型電子顕微鏡(SEM)やCTスキャナー

    5000年前のビーズ、材料は隕石
  • バビロンの空中庭園はやはり伝説?

    複数の歴史書で語られるバビロンの空中庭園だが、遺跡発掘には至っていない。しかし、バビロン以外の可能性を探る研究者も存在する。 イギリス、オックスフォード大学でアッシリア学の研究を行うステファニー・ダリ―(Stephanie Dalley)氏 によれば、世界の七不思議として有名なバビロンの空中庭園は、古代都市バビロンから550キロほど北上したニ ネベにあったという。現在のイラク、モスル近郊、ティグリス川のほとりだ。 今夏に『The Mystery of the Hanging Garden of Babylon』(バビロンの空中庭園の謎)の出版を予定してい るダリー氏は、史料の不正確な翻訳が混乱を招いたと書いている。長年の発掘作業にも関わらず、伝説の庭園が 存在した確かな証拠が見つかっていない理由も同じ原因からと言う。バビロンはユーフラテス川を中心に栄えた バビロニアの首都で、現在のバグダッ

    バビロンの空中庭園はやはり伝説?
  • 航空機のドアは飛行中に開けられるか?

    航空機の安全カードには、ドアを開けて乗客を脱出させる様子が描かれているが、飛行中にドアを開けたらどうなるのだろうか。 Photograph from Coaster/Alamy 5月27日、アラスカ州アンカレッジからオレゴン州ポートランドへ向かうアラスカ航空の機内で、23歳の男が非常用出口を開けようとする事件が起きた。男は乗客らに取り押さえられたが、このような場合、非常口が実際に開いていた可能性はあるのだろうか? この事件、そして5月28日(日時間)にアメリカ空軍のパイロットがF-15戦闘機から緊急脱出した件について、民間航空会社のパイロットで空の安全に詳しいダグ・モス(Doug Moss)氏に話を聞いた。 ◆民間ジェット機の飛行中に乗客がドアを開けることは可能なのでしょうか? 民間機は与圧されており、機内は機外より圧力が高くなっています。機内圧力が内側から押すことでドアを密閉しているの

    航空機のドアは飛行中に開けられるか?
  • 本初子午線はなぜグリニッジを通るのか

    グリニッジ王立天文台の旧館を通る初子午線。 Photograph by Danita Delimont, Alamy 今からちょうど250年前にイギリスの天文学者が出版した船員向けのガイドブックが、後にイングランドのグリニッジが地球の経度の基点として定められるきっかけを作った。ここでは、初子午線が定められるまでの“経緯”を振り返ってみる。 ネヴィル・マスケリンの1763年の著作『英国航海者ガイド』(The British Mariner's Guide、以下『ガイド』と記載)は、その後の数十年にわたって、洋上で現在位置を知るための標準的な方法として用いられた。『ガイド』の内容を補う『航海年鑑と天体暦』(The Nautical Almanac and Astronomical Ephemeris、以下『年鑑』と記載)も、マスケリンによって1766年以降の毎年出版された。 『ガイド』と

    本初子午線はなぜグリニッジを通るのか
  • ラクダで運搬、エチオピアの岩塩採掘

    エチオピア北部の町ベラヒレ(Berahile)で、アファール低地の厚い塩の層から切り出したプレートを荷下ろしする労働者たち。アフリカでは、中世から塩の運搬にラクダが使われてきた。砂漠を出たラクダのキャラバンがベラヒレの市場に到着すると、仲買人が買い取ってトラックに積み込む。 Photograph by Siegfried Modola, Reuters エチオピア北部の町ベラヒレ(Berahile)で、アファール低地の厚い塩の層から切り出したプレートを荷下ろしする労働者たち。アフリカでは、中世から塩の運搬にラクダが使われてきた。砂漠を出たラクダのキャラバンがベラヒレの市場に到着すると、仲買人が買い取ってトラックに積み込む。 Photograph by Siegfried Modola, Reuters

    ラクダで運搬、エチオピアの岩塩採掘
  • 塩の板、エチオピアの岩塩採掘

    男性の周囲に積み上げられているのはすべて塩の塊だ(4月24日)。エチオピア北部のメケレは塩取引の重要な中継地で、ここから国中に流通している。現地で「アモレ(amole)」と呼ばれる塩の塊は他の地域と同様、かつては通貨として使われていた。 Photograph by Siegfried Modola, Reuters 男性の周囲に積み上げられているのはすべて塩の塊だ(4月24日)。エチオピア北部のメケレは塩取引の重要な中継地で、ここから国中に流通している。現地で「アモレ(amole)」と呼ばれる塩の塊は他の地域と同様、かつては通貨として使われていた。 Photograph by Siegfried Modola, Reuters

    塩の板、エチオピアの岩塩採掘
  • 大地の恵み、エチオピアの岩塩採掘

    地獄の釜がひっくり返ったような大地の上を1人の男性が歩く(4月22日)。エチオピア北部、アファール低地(ダナキル低地)のダロル近郊では、硫黄や塩など色とりどりのミネラルがむき出しになっている。 Photograph by Siegfried Modola, Reuters 地獄の釜がひっくり返ったような大地の上を1人の男性が歩く(4月22日)。エチオピア北部、アファール低地(ダナキル低地)のダロル近郊では、硫黄や塩など色とりどりのミネラルがむき出しになっている。 地球上で最も“熱い”場所。それはアファール低地だという。海抜マイナス90メートル以下の盆地に熱風が吹き寄せ、地下ではマグマが活発に活動している。夏期には気温が50度近くにまで達し、大地はカラカラに干上がってしまう。 かつてこの一帯は、度重なる紅海の洪水に見舞われた。3万年前の洪水を最後に、広大な塩の大地が出現。現地の人々は何世紀に

    大地の恵み、エチオピアの岩塩採掘
  • ラクダの隊列、エチオピアの岩塩採掘

    エチオピアのアファール低地で採掘された岩塩を、市場へ運ぶラクダのキャラバン(4月22日)。何百年も続くこの光景も、やがては廃れてしまう日が来るだろう。 Photograph by Siegfried Modola, Reuters エチオピアのアファール低地で採掘された岩塩を、市場へ運ぶラクダのキャラバン(4月22日)。何百年も続くこの光景も、やがては廃れてしまう日が来るだろう。 ロイター通信によると、アファール地方では現在、新たな舗装道路を建設中だという。市場がある2つの町、ベラヒレ(Berahile)とメケレ間の所要時間は既に短縮されており、道路が整備されれば採掘現場との往来もずっと便利になる。ただし、長く続く手掘りの伝統も大きく変わってしまうおそれもある。一部の地域では、既に機械化が進んでいるという。 Photograph by Siegfried Modola, Reuters

    ラクダの隊列、エチオピアの岩塩採掘
  • アフリカの夕日、5月ベストフォト

    アフリカ共和国の半砂漠地帯、カルーで開催されたフェスティバル、「AfrikaBurn(アフリカ・バーン)」のワンショット(5月5日)。大地に沈む雄大な夕日を参加者が見つめている。アフリカ・バーンは音楽やアート、パフォーマンスのイベントで、アメリカで人気の「バーニング・マン(Burning Man)」の派生系だ。約1週間の期間中参加者は、料、水、宿泊施設、生活道具をすべて持参し、ひとつの街を作り上げる。終了後は、すべてを無に帰すことを原則にしている。 Photograph by Kim Ludbrook, European Pressphoto Agency 南アフリカ共和国の半砂漠地帯、カルーで開催されたフェスティバル、「AfrikaBurn(アフリカバーン)」のワンショット(5月5日)。大地に沈む雄大な夕日を参加者が見つめている。 アフリカバーンは音楽やアート、パフォーマンスのイベン

    アフリカの夕日、5月ベストフォト
  • キャンドルに火を、5月ベストフォト

    聖金曜日の典礼でキャンドルに火を灯す女性(5月3日)。ブルガリアの首都ソフィア、黄金のドームが印象的なアレクサンダル・ネフスキー寺院は、ブルガリア総主教の拠地である。 Photograph by Dimitar Dilkoff, AFP/Getty Images 聖金曜日の典礼でキャンドルに火を灯す女性(5月3日)。ブルガリアの首都ソフィア、黄金のドームが印象的なアレクサンダル・ネフスキー寺院は、ブルガリア総主教の拠地である。◆ベストフォト選考理由 「何とも言えない温かみを感じる。表情が当に輝いているね」、クリス・コムズ氏(ニュースフォト編集者)。 Photograph by Dimitar Dilkoff, AFP/Getty Images

    キャンドルに火を、5月ベストフォト
  • ジオ・ビー過去問題に挑戦

    スペイン北部のバスク地方にある、ビルバオ・グッゲンハイム美術館。近くにある大きな湾は? Photograph by Alfredo Aldai, European Pressphoto Agency 5月20日から、子ども向け全米地理コンテスト「ナショナル ジオグラフィック・ビー」(通称「ジオ・ビー」)が開催された。25年目を迎えた今年も、アメリカ全土から地理学のスーパースターが集結した。 数千人の参加者から選ばれた各州の代表が難問に挑戦、地理の知識を競い合い、22日の決勝ラウンドで優勝の栄冠を手にしたのは、マサチューセッツ州代表のサズウィク・カーニック君(Sathwik Karnik、12歳)だった。 全国大会へ出場した子どもたちはこの数カ月、地理の知識に磨きをかけてきた。ジオ・ビーでは、世界中のあらゆる場所にまつわる問題が出題される。ドイツ、バイエルン州の都市やネパールの国立公園、南極

    ジオ・ビー過去問題に挑戦
  • 今年で25回目、2013年ジオ・ビー

    2013年の「ナショナル ジオグラフィック・ビー」の決勝ラウンドで、熾烈な戦いを繰り広げたサズウィク・カーニック君(左)とコンラッド・オーバーハウス君。 Photograph by Rebecca Hale, National Geographic 5月22日、子ども向け全米地理コンテスト「ナショナル ジオグラフィック・ビー」(通称「ジオ・ビー」)の決勝ラウンドが開催され、マサチューセッツ州代表のサズウィク・カーニック君(Sathwik Karnik、12歳)が優勝を飾った。 マサチューセッツ州ノーフォーク在住のカーニック君は、地元の中等学校に通う7年生(日の中学1年生)。アフリカ南部の国ボツワナに生息するライオン、アジアの山岳地帯、イギリスの港湾都市など地理をテーマとしたさまざまな難問に立ち向かい、最後は「地球の中心から山頂までの距離が最も長い山は?」という問題に見事正解(答えはエクア

    今年で25回目、2013年ジオ・ビー
  • 不当な評価を受けてきた女性科学者6人 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト

    顕微鏡を覗くイギリスの物理化学者、ロザリンド・フランクリン(1954年撮影)。 Photograph from Science Source 女性科学者は、何世紀にもわたって研究のボランティア的存在にすぎなかった。彼女らの業績は夫や同僚の男性研究員の手柄となり、科学史から閉め出されてきたのだ。「現在の女性科学者は、そのような慣習は過去のものとなったと信じている。しかし、実際に問題に直面して初めて考えを変えるのだ。彼女たちに対するあからさまな偏見は影を潜めたが、なくなったわけではない」と、女性科学者について研究するアメリカ、カリフォルニア州にあるポモナ大学のローラ・フープス(Laura Hoopes)氏は指摘する。 今回は、革新的な業績を残したにも関わらず、不当な扱いを受けた6人の女性研究者を紹介しよう。知名度が低い理由は、女性だからにほかならない。 ◆ジョスリン・ベル・バーネル(Jocel

    不当な評価を受けてきた女性科学者6人 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト
  • 聖地で捧げる祈り、5月ベストフォト

    エルサレム、聖墳墓教会の外で、祈りを捧げるエチオピア正教会の女性信者(5月2日)。古来より、十字架で磔にされたイエス・キリストの埋葬地と考えられている。今年の東方正教会の復活祭は5月5日に行われ、世界中の信者がこの聖地に集まったという。 Photograph by Ariel Schalit, AP エルサレム、聖墳墓教会の外で、祈りを捧げるエチオピア正教会の女性信者(5月2日)。古来より、十字架で磔にされたイエス・キリストの埋葬地と考えられている。 今年の東方正教会の復活祭は5月5日に行われ、世界中の信者がこの聖地に集まったという。 ◆ベストフォト選考理由 「フレーム内の収まりが非常に印象的で、控え目で繊細な雰囲気もある。信者の真っ白なローブと古めかしい壁の質感が絶妙なバランスだ」、ベン・フィッチ(Ben Fitch)氏(フォト共同編集者)。 Photograph by Ariel Sc

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  • 生きた女神、5月ベストフォト

    自宅の窓際で佇むサミタ・バジュラチャルヤ(Samita Bajracharya)さん(5月13日)。ネパールのヒンズー教徒から「クマリ(生きた女神)」と崇められている少女は、この後、古都パタンで開催される「ラト・マチャンドラナート(Rato Machchhindranath)」の山車祭りへと向かう。ラト・マチャンドラナートは雨の神として知られ、米の収穫時期になると、ヒンズー教徒と仏教徒は干ばつに見舞われぬよう降雨を祈願する。 Photograph by Navesh Chitrakar, Reuters 自宅の窓際で佇むサミタ・バジュラチャルヤ(Samita Bajracharya)さん(5月13日)。ネパールのヒンズー教徒から「クマリ(生きた女神)」と崇められている少女は、この後、古都パタンで開催される「ラト・マチャンドラナート(Rato Machchhindranath)」の山車祭りへ

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  • ジェット・アート、5月ベストフォト

    アート界の“プリンセス”、タリナン・フォン・アンハルト(Tarinan von Anhalt)氏が、小型ビジネスジェット40XR機のリアエンジン排気の中で、絵具をキャンバスに叩きつける(4月30日)。アメリカ、フロリダ州ウェストパームビーチの飛行場でお披露目された。 Photograph by Joe Raedle, Getty Images アート界の“プリンセス”、タリナン・フォン・アンハルト(Tarinan von Anhalt)氏が、小型ビジネスジェット40XR機のリアエンジン排気の中で、絵具をキャンバスに叩きつける(4月30日)。アメリカ、フロリダ州ウェストパームビーチの飛行場でお披露目された。「ジェット・アート」技法と呼び、飛行機とキャンバスを配置した“アトリエ”に芸術家が立ち、エンジン排気の強力な空気の流れを利用しながら、絵具をキャンバスに吹き付けて抽象画を描く。 フォン・ア

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  • 退役ユダヤ人赤軍兵、5月ベストフォト

    旧ソ連軍の礼装に身を包む、90歳のユダヤ人ヤコブ・ビルコビッチ(Yaakov Vilkovich)氏(4月11日)。同氏の自宅は、イスラエル南部の都市アシュドッドにある。ビルコビッチ氏は1941年に赤軍(ソ連軍)に入隊、陸軍第31歩兵大隊に配属され、1945年の「ベルリンの戦い」にも従軍している。 Photograph by Oded Balilty, AP 旧ソ連軍の礼装に身を包む、90歳のユダヤ人ヤコブ・ビルコビッチ(Yaakov Vilkovich)氏(4月11日)。同氏の自宅は、イスラエル南部の都市アシュドッドにある。 ビルコビッチ氏は1941年に赤軍(ソ連軍)に入隊、陸軍第31歩兵大隊に配属され、1945年の「ベルリンの戦い」にも従軍している。イスラエルに移住したのは1998年。第二次大戦時に赤軍に参加した旧ソ連のユダヤ人は50万人に上るが、存命の人は大半がイスラエルで暮らしてい

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  • 失敗したスパイの歴史

    拘束された後、ロシア連邦保安庁(FSB)で尋問を受けるライアン・フォグル氏。 Photograph from FSB/AFP/Getty Images モスクワで5月14日、ライアン・C・フォグル(Ryan C. Fogle)氏がスパイ容疑で拘束された。ロシアの対外諜報機関であるロシア連邦保安庁(FSB)のおとり捜査の一環とみられる。 ロシア当局の発表によると、在モスクワ米国大使館に下級外交官として勤務していたフォグル氏は、アメリカ中央情報局(CIA)の秘密工作員であり、ロシアのテロ対策当局関係者をCIAに勧誘するべく接触を図ろうとしていたという。数時間後、フォグル氏は“好ましくない外交官”として国外退去処分を受けた。しかし、この事件を取り巻く状況にはあまりに奇妙な点が多い。 FSBが好都合にも撮影していたフォグル氏の拘束時の映像が、ロシア政府出資の衛星ニュース専門局RT(ロシア・トゥデイ

    失敗したスパイの歴史
  • 専門家に聞く、乳癌の遺伝子診断

    今週、両乳房の切除手術を受けたことを明らかにした女優アンジェリーナ・ジョリーさん。 Photograph by Amel Emric, AP ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが、遺伝性乳癌の発症リスクを減らすために両乳房の切除手術を受けたというニュースがメディアをにぎわしている。今回は、乳癌の専門家であるパウエル・H・ブラウン(Powel H. Brown)氏とマリサ・ワイス(Marisa Weiss)氏に、乳癌の遺伝子診断について話を聞いた。 パウエル・H・ブラウン氏:乳癌専門医。アメリカ、テキサス州ヒューストンにあるテキサス大学MDアンダーソンがんセンターの教授で、同センター臨床癌予防部門の部門長を務めている。 ◆乳癌の遺伝子研究はどのようなきっかけで始まったのでしょうか。 研究が始まったのは20年ほど前です。乳癌に家系内遺伝の可能性があるとの指摘がきっかけでした。顕著な事

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  • メキシコのカルト宗教、バチカンも非難

    メキシコのカルト宗教が崇拝するサンタ・ムエルテ(死の聖人)。 Photograph by Shaul Schwarz, National Geographic メキシコの新しいカルト宗教が勢力を拡大し、バチカンも無視できない状況になった。先住民の宗教とカトリックが融合した独特の民間信仰で、刑務所や麻薬カルテルから広まったと考えられる。 信者が崇拝するのはハロウィーンもどきの骸骨。大鎌を担いだ死神が、ピンクのシルクやスパンコールをあしらった派手なドレスに身を包んでいる。サンタ・ムエルテ(死の聖人)はもともと男性だったが、キラキラ着飾った姿を女性と見なす人も多い。恐ろしい姿をしているが、信者を無条件に受け入れてくれる。 メキシコ北西部、シナロア州クリアカンの刑務所でインタビューした若い受刑者は、彼女は仲間だと話す。「サンタ・ムエルテはいつも側にいてくれる。彼女の図柄なら、郵便切手ぐらいのサイズ

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  • 国連が昆虫食を推奨、人気の8種とは?

    イスラエル、ネゲブ砂漠のクメヒン近郊の市場で売られている、トビバッタの素揚げ(5月5日)。昆虫はさまざまな国で人気の“スナック”だ。 Photograph by Amir Cohen/Reuters 5月13日、国連糧農業機関(FAO)が昆虫を推奨する報告書を発表した。地球上にはべられる昆虫が1900種以上存在し、既に数百種がさまざまな国の卓に上っているという。 昆虫を常としている地域はアフリカ36カ国、南北アメリカ23カ国、アジア29カ国、ヨーロッパ11カ国に広がり、延べ人口はおよそ20億人に達する。 身の回りの昆虫は、追い払ったり、たたき殺したり、時には殺虫剤で戦ったりするような不快な存在だ。しかし優れた栄養品でもあり、ほかの材に引けを取らない量のタンパク質、繊維質、良質の脂肪、必須ミネラルを含んでいる。 さらに飼育の観点からも利点がある。必要な土地は、ウシやブタ、ヒツジ

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  • 幻の大西洋横断機、続く捜索の試み

    1927年、北米を目指す大西洋横断飛行の最中に行方不明となったフランス人飛行士、シャルル・ナンジェッセ(Charles Nungesser)とフランソワ・コリ(Francois Coli)。2人の手がかりを求める捜索は、今も続いている。 Photograph from Central Press/Getty Images 86年前の5月20日、チャールズ・リンドバーグはニューヨークを飛び立ち、フランス・パリ郊外に着陸、史上初の単独無着陸による大西洋横断飛行に成功した。この偉業により、リンドバーグの名はあらゆる人の記憶に刻まれることになった。 しかしリンドバーグが歴史を作る13日前、第1次世界大戦で活躍したフランス人飛行士2人が、ヨーロッパ大陸土から北米を目指し、無着陸大西洋横断飛行の旅に出たことはあまり知られていない。ちなみに史上初の無着陸大西洋横断飛行は1919年、2人のイギリス人パイ

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  • 失われた大陸の痕跡を発見、ブラジル沖

    ブラジル沖の海底で岩石サンプルを採取する有人潜水調査船「しんかい6500」。 Video still courtesy CPRM ブラジル、リオデジャネイロ沖の大西洋で“失われた大陸”の痕跡とみられる岩石が見つかったと、日の海洋研究開発機構(JAMSTEC)が5月7日に発表した。 JAMSTECと共同研究を行っているブラジル地質調査所の地質学ディレクター、ロベルト・ベンチュラ・サントス(Roberto Ventura Santos)氏によると、同じリオグランデ海膨で2年前に見つかった花崗岩の塊は、はるか昔に消滅した大陸の一部である可能性が高いという。 サントス氏は、「ブラジルの“アトランティス大陸”かもしれない」と語った。ただし、これは比喩的な意味で、海底に沈んだ伝説上の世界だと主張しているわけではないという。「もちろん、大西洋のど真ん中に“失われた都市”が見つかるとは思っていない」。

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  • 出生日死亡率、先進国トップはアメリカ

    お死産だった娘を忍んで、おくるみを抱くドハーティ(Doherty)夫。 Photograph by Layne Bailey, Charlotte Observer/MCT/Getty Images 国際援助団体「セーブ・ザ・チルドレン」が発表した最新レポートで、出生日に死亡する新生児の割合は、先進国中アメリカが最も高いことが明らかになった。 世界全体で見ても、新生児の死亡リスクが最も高いのは出産直後である。生後24時間以内に死亡するケースは毎年100万例を超える。 セーブ・ザ・チルドレンは毎年、「母の日レポート(State of the World's Mothers)」という報告書を発行している。世界176カ国を対象に、母子を取り巻くさまざまな環境の評価結果をランキング形式にまとめたものだ。2013年の報告書では、特に新生児の健康状態に重点が置かれ、国別の「出生日リスク指標(Birt

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  • 世界初の飛行機をめぐって揺れる論争

    グスターヴ・ホワイトヘッドと娘のローズ(1901年頃)。傍らで翼を休めているのは、1901年製単葉機「ナンバー21」だ。ホワイトヘッドがライト兄弟よりも3年早く有人動力飛行を成功させていたという説が、一部では有力視されている。 Photograph from Corbis 世界初の有人動力飛行を成功させたのは、ライト兄弟ではなくグスターヴ・ホワイトヘッドかもしれない。 航空機年鑑『ジェーン世界の航空機年鑑(Jane's All the World's Aircraft)』の出版100周年記念版では、ライト兄弟(ウィルバー・ライトとオービル・ライト)が、世界初の有人動力飛行の成功者という栄光の座から引きずり下ろされた。 新たにその地位に輝いたのはドイツ生まれの発明家、グスターヴ・ホワイトヘッド。以前から、ライト兄弟より2年以上前に、初飛行を成功させていたという説が唱えられていた。ライト兄弟が

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  • 鳥インフルとの戦い、4月ベストフォト

    中国、上海の肉解体場で、ニワトリを処理する作業員(4月12日)。鳥インフルエンザ対策の防護服に身を包んでいる。 Photograph from Reuters 中国、上海の肉解体場で、ニワトリを処理する作業員(4月12日)。鳥インフルエンザ対策の防護服に身を包んでいる。 新型インフルエンザH7N9の感染者は5月6日時点で130人に拡大、死者は31人に達している。最も致死性の高いインフルエンザウイルスの1つと、世界保健機関(WHO)は指摘している。 ロイター通信によれば、現時点では鳥(おそらくニワトリ)から人間への感染に限られているという。 ◆ベストフォト選考理由 「不気味な雰囲気が気に入った。殺されるニワトリと作業員の間には、窺い知れない劇的瞬間があるかのように妄想がふくらむ。顔を外し、血まみれのエプロンとナイフに焦点を合わせた構図から、より強烈な印象が伝わってくる」、ベン・フィッチ(

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  • 舞台裏、4月ベストフォト

    4月12日、北朝鮮の首都、平壌の競技場で「朝鮮少年団」の式典が開催された。孤立した独裁政権の政治構造には、学童を取り込む「少年団」という組織がある。 Photograph by Alexander F. Yuan, AP 4月12日、北朝鮮の首都、平壌の競技場で「朝鮮少年団」の式典が開催された。孤立した独裁政権の政治構造には、学童を取り込む「少年団」という組織がある。 式典当日は、金正恩氏率いる同国がアメリカに対し、弾道ミサイル発射準備などの挑発行為を続け、政治的緊張が高まっていた時期に当たる。 ◆ベストフォト選考理由 「盛大な政治イベントの前の穏やかな瞬間を、巧みにとらえている点が素晴らしい」、クリス・コムズ氏(ニュースフォト編集者)。 Photograph by Alexander F. Yuan, AP

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  • 草上の食卓、4月ベストフォト

    中国、四川地震発生から2日後の4月22日、同省西部の雅安(があん)市で、倒壊した家屋から逃れた家族が卓を囲む。地震の規模はマグニチュード6.6、犠牲者は約200人に及ぶ。2008年5月の四川大地震は、まだ記憶に新しい。アメリカ地質調査所(USGS)の発表よると、マグニチュードは7.9、死者・行方不明者は9万人に上った。その後に建設された建物も、一部は今回の地震で倒壊などの被害を受けている。 Photograph from AFP/Getty Images 中国、四川地震発生から2日後の4月22日、同省西部の雅安(があん)市で、倒壊した家屋から逃れた家族が卓を囲む。地震の規模はマグニチュード6.6、犠牲者は約200人に及ぶ。 2008年5月の四川大地震は、まだ記憶に新しい。アメリカ地質調査所(USGS)の発表よると、マグニチュードは7.9、死者・行方不明者は9万人に上った。その後に建設さ

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  • 生存者の捜索、4月ベストフォト

    バングラデシュ、首都ダッカ近郊のビル倒壊事故現場で、コンクリートのがれきに埋もれた生存者の捜索が懸命に行われている(4月25日)。一瞬で灰燼に帰した8階建てビル上層階では、縫製工場で大勢の労働者が働いていた。専門家や当局によれば、建築基準に反した違法建築が原因だという。工場の発電機や数千台のミシンの振動も呼び水になったようだ。5月5日の時点で、死者は600人を超え、約150人が行方不明だという。 Photograph by Kevin Frayer, AP バングラデシュ、首都ダッカ近郊のビル倒壊事故現場で、コンクリートのがれきに埋もれた生存者の捜索が懸命に行われている(4月25日)。一瞬で灰燼に帰した8階建てビル上層階では、縫製工場で大勢の労働者が働いていた。専門家や当局によれば、建築基準に反した違法建築が原因だという。工場の発電機や数千台のミシンの振動も呼び水になったようだ。 5月5日

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  • 「漂う」ロン・ミュエク

    オーストラリア生まれの彫刻家、ロン・ミュエク(Ron Mueck)氏の2009年の作品「Drift」(4月15日撮影)。フランスのパリにあるカルティエ現代美術財団が主催する展覧会では、ハイパーリアリズム彫刻で知られるミュエク氏のさまざまな作品が、9月29日まで展示されるという。 Photograph by Charles Platiau, Reuters オーストラリア生まれの彫刻家、ロン・ミュエク(Ron Mueck)氏の2009年の作品「Drift」(4月15日撮影)。フランスのパリにあるカルティエ現代美術財団が主催する展覧会では、ハイパーリアリズム彫刻で知られるミュエク氏のさまざまな作品が9月29日まで展示されるという。 Photograph by Charles Platiau, Reuters

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  • グッバイ、女王陛下

    オランダ国内では今、シンボルカラーのオレンジ色が街中を飾っている。ベアトリックス女王のイラスト入りTシャツを着た男性も満足げだ(4月29日)。在位33年の女王は翌30日に退位、長男のウィレム・アレキサンダー皇太子が王位を継承した。男性の国王誕生は123年ぶりとなる。 Photograph by Cris Toala Olivares, Reuters オランダ国内では今、シンボルカラーのオレンジ色が街中を飾っている。ベアトリックス女王のイラスト入りTシャツを着た男性も満足げだ(4月29日)。在位33年の女王は翌30日に退位、長男のウィレム・アレキサンダー皇太子が王位を継承した。男性の国王誕生は123年ぶりとなる。 Photograph by Cris Toala Olivares, Reuters

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  • エベレスト登山、シェルパの役割に変化

    滑落が頻繁なエベレスト斜面を下るシェルパ。 Photograph by Kristoffer Erickson 世界最高峰エベレストで4月29日、ネパール人ガイド(シェルパ)と欧州の登山家グループの間で乱闘事件が発生した。その後、シェルパの文化や登山者との社会的な関係性について、素朴な疑問が投げかけられている。ヒマラヤ登山には欠かせないシェルパだが、彼らが実際に果たす役割については、ほとんど知られていない。 今や登山ガイドや荷運び役として一般名称化したシェルパだが、元は小数民族グループを表す名称だ。その文化や人種、言語は、チベット人と共通点が多い。居住地域もチベット人と隣り合わせで、エベレスト直下の河川流域に約3000人、南麓の村には2万人以上が暮らしている。 1950年代前半まで、ヒマラヤの高峰群への挑戦は失敗続きで、犠牲者も多数に上った。当時も今もシェルパの人たちは、神々が跳梁する王国

    エベレスト登山、シェルパの役割に変化
  • 米でムスリム差別、爆弾テロ以降

    コロラド州のロッキーマウンテン国立公園を訪れたイスラム教徒の女性2人。 Photograph by Richard Olsenius, National Geographic ボストンマラソンの会場で起きた爆破事件の容疑者として、アメリカ連邦捜査局(FBI)がタメルラン・ツァルナエフ(Tamerlan Tsarnaev)とジョハル・ツァルナエフ(Dzhokhar Tsarnaev)兄弟の身元を特定したことで、アメリカのイスラム社会に緊張が走った。2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ以来続いてきた、反イスラム的な空気が再燃するのではないかとの恐れが出てきたためだ。 実際、イスラム教徒が疑いの目で見られたり、糾弾を受けたりする動きは、容疑者の特定前から既に始まっていた。ボストンの爆破事件の現場では、負傷したサウジアラビア出身の学生が居合わせた人に取り押さえられたうえに、「New York

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  • インダス文明で新発見、女性優位と暴力

    インダス文明の存在が初めて認識されるきっかけとなったハラッパー遺跡。人口約8万人の大都市として栄えた。 Photograph by James P. Blair, National Geographic 今からおよそ4000年前に、現在のパキスタンからインド西部の一帯に栄えたインダス文明。都市計画の行き届いた居住地をはじめ、精巧な宝飾品や、当時としては最高度の排水溝設備など、極めて高かった文明の水準がうかがわれる。だが、文明を築き恩恵を享受していた人々については、今なお多くが謎に包まれている。 都市を築いた世界最古の文明の1つ、インダス文明では文字も使われていたが、未だ解読には至っていない。ビーズや陶片などの工芸品を丹念に調査し、さまざまな手掛かりを得ようと努力が続いている。 別の視点からの取り組みが求められている中、墓地の遺跡から発掘された人骨に注目が集まっている。最新の研究結果によると

    インダス文明で新発見、女性優位と暴力
  • マヤ文明の起源に迫る祭祀跡を発見

    グアテマラのセイバルにあるマヤ遺跡、A-24の作業場から紀元前1000年頃の基礎部分まで発掘する考古学者チーム。 Photograph courtesy Takeshi Inomata あまたの文明は栄枯盛衰の理をあらわすものだが、それぞれの起源は曖昧で、ほとんど未解明の場合も多い。最近、マヤ文明に関して新たな論文が発表され、謎に包まれた初期時代に驚くべき光が当たっている。 メソアメリカのマヤ低地の古典期(西暦300~950年)は考古学でよく扱われるテーマだが、先古典期前半(紀元前1000年以前)についてはほとんど知られていない。考古学者の立場は、「マヤ文明はより古い“母なる文化”であるオルメカ文明から直接発展した」という説と、「マヤ文明は独自に登場した」という説に二分されている。 アリゾナ大学の人類学者、猪俣健教授はどちらの説にも異議を唱える。ナショナルジオグラフィックの研究助成金を受け

    マヤ文明の起源に迫る祭祀跡を発見
  • 人気高まる障害物レースで死亡事故

    2012年7月15日、アメリカ、バーモント州ウェストドーバーで開催された障害物レース「タフマダー(Tough Mudder)」。夏期とはいえ参加者は、いきなり氷水のプールに飛び込まなくてはならない。2013年4月にアメリカのウェストバージニア州で開催された「タフマダー」では、男性参加者が溺れて死亡する事故が発生した。 Photograph by Jessica Rinaldi, Reuters このところ、「タフマダー(Tough Mudder)」、「ラグドマニアック(Rugged Maniac)」、「ウォリアーダッシュ(Warrior Dash)」などと銘打った、過激な障害物レースの人気が急速に高まっている。電流が流れるワイヤの下をはって進んだり、氷水を張ったプールの中に飛び込む、または油や泥を塗った棒にぶら下がったりするなど、コース途中のさまざまな障害をクリアする仕掛けが呼び物になって

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  • テロ容疑者の裁判手続き、各国の状況

    イスラエルのヨルダン川西岸地区にある検問所で、刃物を携帯していたパレスチナ人の取り調べを行うイスラエル警察。イスラエルの法律では、ヨルダン川西岸地区およびガザ地区在住のパレスチナ人は、イスラエル人に比べて長期間、訴追手続きなしで勾留できる。 Photograph by Nasser Shiyoukhi, AP ボストンマラソンの爆発事件に関与が疑われているジョハル・ツァルナエフ容疑者には当初、敵性戦闘員として軍事法廷で裁くべきとの声も上がっていた。しかしツァルナエフ容疑者は米国の市民権を取得しているため、連邦当局は軍事法廷で裁くことはできないと結論した。 ツァルナエフ容疑者は今後、大量破壊兵器使用などに関して米連邦地裁で裁かれることになる。22日に判事がツァルナエフ容疑者の病室に出向いて罪状を説明し、被告人の権利を説明した。また、公選弁護人が任命された。 もし敵性戦闘員に指定されていれば、

    テロ容疑者の裁判手続き、各国の状況
  • 両脚切断からの復帰、帰還兵が語る

    アメリカ陸軍のグレゴリー・ガドソン大佐。イラクで両脚を失った。 Photograph by Mark Thiessen アメリカ陸軍大佐グレゴリー・ガドソン(Gregory Gadson)氏はイラクで従軍中の2007年、即製爆発装置(IED)によって両脚を失った。しかしその後のガドソン氏は、次世代の“バイオニック”義足などの助けを借りながら、人の言葉を借りると「新しい普通」に適応している。 ガドソン氏は現役に留まりながら、ジョージタウン大学公共政策大学院で修士号を取得、2年間にわたって米陸軍の負傷帰還兵プログラムを率いた。アメリカン・フットボールの2007年シーズン、ガドソン氏の言葉に奮起したニューヨーク・ジャイアンツは快進撃を重ね、スーパーボウルを制した。昨年は大作映画『バトルシップ』にも出演し、現在はワシントンD.C.近郊のフォート・ベルボアールで基地司令官を務めている。 ガドソン氏

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  • ビザンチン時代の教会型ランタン

    ビザンチン帝国(東ローマ帝国)時代のワイン醸造所の近くで発掘された、教会型のランタン(4月4日撮影)。部屋の壁に光の十字架を映し出していたと思われる。 Photograph by David Buimovitch, AFP/Getty Images イスラエルほど地面を掘るたびに驚くべき歴史の断片が見つかる国はない。まさに最近、首都エルサレムの南西にある温泉の町、ハメイ・ヨアブ(Hamei Yoav)近くで、ビザンチン帝国(東ローマ帝国)の初期にあたる西暦500年頃の大規模なワイン醸造所が発掘された。 イスラエル考古学庁の専門家たちは、発見場所が同国南部のアシュケロンの港につながる古代の道沿いだったことから、ヨーロッパや北アフリカへの輸出用ワインを製造していたと考えている。 現場では、宴会用の庭園の建設工事を中断して、まず発掘作業が行われた。その結果、80平方メートルを超える範囲から、6つ

    ビザンチン時代の教会型ランタン
  • 爆破事件で注目されるチェチェン問題

    ロシア大統領ウラジーミル・プーチンの式典用の肖像写真を若者が運んでいる。チェチェン共和国の首都グロズヌイで2009年撮影。 Photograph by Mikhail Galustov, laif/Redux アメリカ、ボストンの現地時間4月19日午後8時45分(日時間20日午前9時45分)ごろ、マラソン会場で起きた爆破事件の容疑者ジョハル・ツァルナエフ(Dzhokhar Tsarnaev, 19)の身柄が拘束された。共犯が疑われる兄のタメルラン・ツァルナエフ(Tamerlan Tsarnaev, 26)は、19日未明に警察官との銃撃戦で死亡。報道によると、2人はアメリカ移住してきたチェチェン人で、ダゲスタンやキルギスでの居住経験もあるという。 現時点で、チェチェンのテロ組織と結び付く証拠はない。しかし、兄弟の出自の報道により、ロシアのコーカサス地方に再び注目が集まっている。 カスピ海

    爆破事件で注目されるチェチェン問題
  • アンモニアの危険性、米で肥料工場爆発

    テキサス州ウェーコ近郊の肥料工場で現地時間4月17日夜に爆発が発生した。工場は大破して瓦礫の山と化し、負傷者は100人以上に達した。 Photograph by Mike Stone, Reuters テキサス州ウェストで現地時間4月17日、この町にある肥料工場が爆発、死者を出す惨事となった。この工場では揮発性が高く、取り扱いを誤ると危険な窒素化合物、無水アンモニアが肥料の原料として製造、貯蔵されていた。 無水アンモニアは窒素原子1つ、水素原子3つからなる分子で、常温では気体で存在する。ミシガン州立大学(MSU)の土壌学者カート・スタインク(Kurt Steinke)氏によると、多くの肥料工場ではさまざまな種類の肥料を生産する原料として、無水アンモニアを製造、あるいは使用しているという。 「硝酸や硫酸などの化合物、さらには大気中の二酸化炭素などを無水アンモニアと結合させることで、現在使われ

    アンモニアの危険性、米で肥料工場爆発
  • 米大統領を狙った猛毒リシンとは

    リシンを含むトウゴマ(ヒマ)の種子。リシンは自然界でも極めつけの猛毒物質だ。 Photograph by Jim Richardson, National Geographic 今月、アメリカのバラク・オバマ大統領(17日)とロジャー・ウィッカー上院議員(16日)に、リシンの付着した郵便物が送り付けられ、リシンという毒物に注目が集まっている。 リシンがニュースの見出しになったのは、これが初めてではない。1978年に、ブルガリアからイギリスに亡命したゲオルギー・マルコフ氏がロンドンで暗殺される事件が起こった。このとき犯人はマルコフ氏に近づいてきて、リシン入りの小さな弾丸を発射するよう改造した傘でいきなり突き刺した。 リシンは天然に存在する毒物で、東アフリカからインドが原産とされるトウゴマ(学名Ricinus communis)の種子に含まれる。トウゴマは別名ヒマ(蓖麻)と呼ばれ、その種子から

    米大統領を狙った猛毒リシンとは
  • シリア難民、ピューリッツァー2013

    シリア政府軍の空爆でやけどを負い、難民キャンプで治療を受けるアブドラ・アハメド(Abdullah Ahmed)君(10歳)。内戦により一家での避難を余儀なくされたという。2013年度ピューリッツァー賞のニュース速報写真部門を受賞したシリーズ写真20枚の一部だ。AP通信のチームが、子どもたちにも及ぶ内戦の暴力を記録した。 Photograph by Muhammed Muheisen, AP シリア政府軍の空爆でやけどを負い、難民キャンプで治療を受けるアブドラ・アハメド(Abdullah Ahmed)君(10歳)。内戦により一家での避難を余儀なくされたという。2013年度ピューリッツァー賞のニュース速報写真部門を受賞したシリーズ写真20枚の一部だ。AP通信のチームが、子どもたちにも及ぶ内戦の暴力を記録した。 Photograph by Muhammed Muheisen, AP

    シリア難民、ピューリッツァー2013
  • 泣く女性、ピューリッツァー2013

    自宅がシリア政府軍の砲撃を受けて重傷を負ったアイダ(Aida)さん。紛争の直接的な影響を受けている何万人もの女性の1人だ。2012年3月10日、同国北西部のイドリブ(Idlib)で撮影され、2013年度ピューリッツァー賞のニュース速報写真部門を受賞した。AP通信の報道によれば、アイダさんは一命を取り留めたものの、夫と2人の子どもは死亡。彼女の人生は文字通り崩れ落ちてしまった。 Photograph by Rodrigo Abd, AP 自宅がシリア政府軍の砲撃を受けて重傷を負ったアイダ(Aida)さん。紛争の直接的な影響を受けている何万人もの女性の1人だ。2012年3月10日、同国北西部のイドリブ(Idlib)で撮影され、2013年度ピューリッツァー賞のニュース速報写真部門を受賞した。AP通信の報道によれば、アイダさんは一命を取り留めたものの、夫と2人の子どもは死亡。彼女の人生は文字通り崩

    泣く女性、ピューリッツァー2013
  • ボストン爆発事件に見るSNSの位置

    4月15日の爆発事件後、泣きながらコースを離れるボストンマラソンの参加者。 Photograph by Winslow Townson, AP ボストンにあるマサチューセッツ眼科耳鼻科病院に勤務する医師、サラ・ボゾーグさんは米国時間4月15日、ボストンマラソンに参加していた。フィニッシュラインを越えてから15分経ったとき、最初の爆発音が聞こえた。それからもう1回。煙が立ち上るのが見えた。 すぐに警官たちがフィニッシュラインの周辺に駆けつけてきた。携帯電話がほとんど通じなかったため、ボゾーグさんは一緒にいた男友達の家に戻り、テレビのニュースチャンネルをつけ、フェイスブックにログインして、自分は大丈夫だが電話が通じないと投稿した。 ボゾーグさんは15日夜の電子メールに、「現場の近くにいた友人のフェイスブック(アカウント)をフォローしているのだが、彼女は事件がニュースで流れる前に、全員に向けてア

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  • 戦闘員、ピューリッツァー2013

    シリア北部、アレッポの前線、仮設の狙撃兵の隠れ家で待機する反体制派の戦闘員。フランス通信社(AFP)の仕事を請け負うフリーカメラマン、ハビエル・マンサーノ(Javier Manzano)氏が2012年10月18日に撮影、今月15日に発表された2013年度ピューリッツァー賞で特集写真部門を受賞した。 Photograph by Javier Manzano, AFP/Getty Images シリア北部、アレッポの前線、仮設の狙撃兵の隠れ家で待機する反体制派の戦闘員。フランス通信社(AFP)の仕事を請け負うフリーカメラマン、ハビエル・マンサーノ(Javier Manzano)氏が2012年10月18日に撮影、今月15日に発表された2013年度ピューリッツァー賞で特集写真部門を受賞した。壁は銃弾でいくつもの穴が開けられ、そこから差し込む光があちこちを照らしている。2人は顔くらいの大きさの隙間か

    戦闘員、ピューリッツァー2013
  • 近年のスポーツイベント・テロ事件

    ボストンマラソンの1回目の爆発現場で負傷者を助ける人々(4月15日)。 Photograph by John Tlumacki, Boston Globe/Getty Images アメリカ、マサチューセッツ州ボストンで15日に開催されたボストンマラソンのゴール付近で2回にわたり爆発が起き、アメリカ全土を震撼させた。これまでに少なくとも3人が死亡、負傷者も多数出ている。 しかし、世界的に見てスポーツイベントはこうした攻撃の標的となってきた長い歴史がある。その多くはテロ行為とみなされた。以下、スポーツイベントを狙った過去のテロ攻撃をいくつか紹介しよう。 ◆1972年ミュンヘンオリンピック ミュンヘンオリンピック開催中の1972年9月5日、パレスチナ武装組織「黒い九月」のメンバー8人がオリンピック村に侵入し、イスラエル選手団の2人を殺害、9人を人質に取った。 1日にわたって交渉が行われたが失敗

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  • 失われた世代、シリアの子どもたち

    3月26日、内戦が続くシリア北部の古都アレッポで、家族の糧を受け取るため窓口に並ぶ女の子。戦争は前線で戦う兵士の命を奪うだけではない。分裂した国の政治対立の影響は幼い子どもたちにも及んでいる。2011年以降、政府軍と反体制派が激しく衝突を繰り返すシリアでは、終わりの見えない泥沼状態が続いている。恐怖におびえながら暮らす一般市民の中でも特に、国際支援が不十分なまま放置されたシリアの子どもたちは“失われた世代”とも呼ばれ、暴力の犠牲になっている。 Photograph by Bulent Kilic, AFP/Getty Images 3月26日、内戦が続くシリア北部の古都アレッポで、家族の糧を受け取るため窓口に並ぶ女の子。戦争は前線で戦う兵士の命を奪うだけではない。分裂した国の政治対立の影響は幼い子どもたちにも及んでいる。 2011年以降、政府軍と反体制派が激しく衝突を繰り返すシリアでは

    失われた世代、シリアの子どもたち
  • 奪われた夢、シリアの子どもたち

    内戦状態のシリアでは、多くの少年が抱く将来の夢が、ジハード(聖戦)と暴力によって奪われている。ある反政府勢力の司令官はフランス通信社(AFP)に対し、「彼らの進む道は、自爆攻撃に向かうジハードの戦士以外にない」と語る。「もう普通の生活は忘れてしまっている。2-3歳の幼児なら、生まれた時から戦場での暮らしがすべてなのだ」。 Photograph by Dimitar Dilkoff, AFP/Getty Images 内戦状態のシリアでは、多くの少年が抱く将来の夢が、ジハード(聖戦)と暴力によって奪われている。 ある反政府勢力の司令官はフランス通信社(AFP)に対し、「彼らの進む道は、自爆攻撃に向かうジハードの戦士以外にない」と語る。「もう普通の生活は忘れてしまっている。2-3歳の幼児なら、生まれた時から戦場での暮らしがすべてなのだ」。 Photograph by Dimitar Dilko

    奪われた夢、シリアの子どもたち
  • 貴重な授業、シリアの子どもたち

    シリア、アレッポのカディ・アスカール(Kadi Askar)地区で授業を受ける少女たち。通う学校があるだけでも幸せだ。ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)によれば、5分の1の校舎が損壊、または避難所として使われているという。国際援助団体「セーブ・ザ・チルドレン」で広報を担当するフランシーヌ・ウエヌマ(Francine Uenuma)氏は、アレッポで学校に通っている子どもはわずか6%と見積もっている。 Photograph by Aamir Qureshi, AFP/Getty Images シリア、アレッポのカディ・アスカール(Kadi Askar)地区で授業を受ける少女たち。通う学校があるだけでも幸せだ。ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)によれば、5分の1の校舎が損壊、または避難所として使われているという。国際援助団体「セーブ・ザ・チルドレン」で広報を担当するフランシーヌ・

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  • 難民キャンプ、シリアの子どもたち

    隣国のヨルダン北西部、マフラクのザータリ難民キャンプに逃れたシリアの市民。シリア内戦による難民は100万人以上に上り、多くの市民は家を捨てて避難を余儀なくされた。国際援助団体「セーブ・ザ・チルドレン」の推計によれば、300万軒の建物が破壊され、約8万人が洞穴や公園、納屋で夜を過ごしているという。「家が壊されて、おもちゃもゲームもなくなった」と、ある12歳の少年はユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)に話している。「砲弾が家に降ってきたとき、僕と家族は中にいて、とても怖かった。壁が崩れて何もかも壊れたけど、家族は神様のおかげで助かったんだ」。 Photograph by Jeff J. Mitchell, Getty Images 隣国のヨルダン北西部、マフラクのザータリ難民キャンプに逃れたシリアの市民。シリア内戦による難民は100万人以上に上り、多くの市民は家を捨てて避難を余儀なくされ

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  • 民族の狭間で、シリアの子どもたち

    シリア北部、アレッポのサイフ・アッダウラ(Saif al-Dawla)地区の自宅で、3人の子どもを持つ寡婦が娘のそばに腰掛けている。戦争は、この母親のようにパレスチナ人とシリア人の血を引く人々にとって、とりわけ複雑化する。両者の板挟みとなり、たびたび自分の素性を隠さなければならない。「男達が前線で戦っている間、女達はより大きなジハード(聖戦)を遂行している。未来の世代への教育、すなわち祖国の行く末を担っているのだから」と、ある自由シリア軍兵士は語った。 Photograph by Maysun, European Pressphoto Agency シリア北部、アレッポのサイフ・アッダウラ(Saif al-Dawla)地区の自宅で、3人の子どもを持つ寡婦が娘のそばに腰掛けている。戦争は、この母親のようにパレスチナ人とシリア人の血を引く人々にとって、とりわけ複雑化する。両者の板挟みとなり、た

    民族の狭間で、シリアの子どもたち
  • 教師の手振りで数学の成績が上がる

    手振りを交えて指導する教師。スーダン、ダルフールの難民キャンプで撮影。 Photograph by Raul Touzon, National Geographic 簡単な手振りを加えるだけで、子どもの数学の成績が上がる。最新の研究によれば、指導者が手振りを加えて教えると生徒の成績が上がるという。アメリカの教師は他国に比べてあまり手振りを交えない。 研究チームを率いたのは2人の心理学者、ミシガン州立大学のキンバリー・フェン(Kimberly Fenn)氏とアイオワ大学のスーザン・ワグナー・クック(Susan Wagner Cook)氏。ミシガン州の小学2~4年生184人を対象に、4+5+7=[ ]+7のような等式の解答能力をテストした。クラスを半数に分け、それぞれ別の指導法のビデオを視聴した生徒の理解度を確認する方法だ。一方は等式の両側で手を振りながら、左右を同じ値にするよう説明。もう一方

    教師の手振りで数学の成績が上がる
  • 4万2千カ所確認、ナチス収容所新調査

    現在のチェコにあったリパ農場労働施設で、ユダヤ人労働者が築いた干し草の山の前を通り過ぎるナチス・ドイツ親衛隊(SS)の隊員。 Photograph courtesy U.S. Holocaust Memorial Museum and Oldrich Stransky 第三帝国と呼ばれたナチス・ドイツ時代のヨーロッパの地図が、大幅に書き改められようとしている。 13年前、研究者のジェフリー・メガーギー(Geoffrey Megargee)氏は過去の資料をもとに、ナチス統治時代のゲットー(隔離地区)や強制収容所の数とその詳細を記録する調査を開始した。当初、同氏はその数を7000カ所ほどではないかと見積もっていたが、これは実態よりもはるかに少ない数字だった。結果として4万2200カ所を超える施設が、同氏が編集を進めている全7巻予定の「The United States Holocaust Me

    4万2千カ所確認、ナチス収容所新調査
  • ウクライナ、地下のダンスパーティ

    ウクライナの首都キエフで開催される地下ダンスパーティ。毎週土曜と日曜の夜、市の地下鉄駅に隣接した広いスペースに約200人が集まるという。多くは年金生活者で、経済的な余裕がない。このダンスパーティはお金をかけずに楽しめる社交の場であり、民族衣装や民族音楽を通じて祖国の伝統に接する良い機会となっている。 Photograph by Gleb Garanich, Reuters ウクライナの首都キエフで開催される地下ダンスパーティ。毎週土曜と日曜の夜、市の地下鉄駅に隣接した広いスペースに約200人が集まるという。多くは年金生活者で、経済的な余裕がない。このダンスパーティはお金をかけずに楽しめる社交の場であり、民族衣装や民族音楽を通じて祖国の伝統に接する良い機会となっている。 Photograph by Gleb Garanich, Reuters

    ウクライナ、地下のダンスパーティ
  • 出会いの場、地下のダンスパーティ

    週末のダンスパーティで楽しいひとときを過ごす、ナタリア・ストリャレンコ(Natalia Stolyarenko)さんとミコラ・ミレフスキー(Mykola Milevsky)さん。会場はウクライナ、キエフ中心部の地下だ。年金生活者である2人は、数年前のダンスパーティで出会った。ストリャレンコさんは「EuroNews」に、気が沈みがちで退屈だったので参加してみたと話している。そこでダンスの相手に誘ったのはミレフスキーさん。彼の一目ぼれだった。 Photograph by Gleb Garanich, Reuters 週末のダンスパーティで楽しいひとときを過ごす、ナタリア・ストリャレンコ(Natalia Stolyarenko)さんとミコラ・ミレフスキー(Mykola Milevsky)さん。会場はウクライナ、キエフ中心部の地下だ。 年金生活者である2人は、数年前のダンスパーティで出会った。スト

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  • 伝統的な音楽、地下のダンスパーティ

    一般の利用客が軽をとる地下カフェの前で、アコーディオンの一種バヤン(bayan)とタンバリンに似たブボン(bubon)がダンスの音楽を奏でる。ウクライナの民族音楽が響く地下通路は、暖房がなくてもダンスを楽しむ高齢者でいっぱいだ。 Photograph by Gleb Garanich, Reuters 一般の利用客が軽をとる地下カフェの前で、アコーディオンの一種バヤン(bayan)とタンバリンに似たブボン(bubon)がダンスの音楽を奏でる。ウクライナの民族音楽が響く地下通路は、暖房がなくてもダンスを楽しむ高齢者でいっぱいだ。 Photograph by Gleb Garanich, Reuters

    伝統的な音楽、地下のダンスパーティ
  • 高齢者の集い、地下のダンスパーティ

    ウクライナのミコラ・ミレフスキーさん(75歳)とナタリア・ストリャレンコさん(58歳)。人生を前向きにエンジョイする2人は、首都キエフの地下鉄通路のダンスパーティに毎週末参加している。場所は市長が提供してくれた。年金生活者のグループが伝統舞踊を楽しむ場所を探していたが、賃貸料は払えない。見かねた行政が、地下鉄通路の利用許可を出したのである。今や民族衣装などに身を包んだ高齢者が約200人も集い、歌や演奏、ダンスに興じている。 Photograph by Gleb Garanich, Reuters ウクライナのミコラ・ミレフスキーさん(75歳)とナタリア・ストリャレンコさん(58歳)。人生を前向きにエンジョイする2人は、首都キエフの地下鉄通路のダンスパーティに毎週末参加している。 場所は市長が提供してくれた。年金生活者のグループが伝統舞踊を楽しむ場所を探していたが、賃貸料は払えない。見かねた

    高齢者の集い、地下のダンスパーティ
  • 秘密主義の国、北朝鮮の基本情報

    新たに開発された地区の地下道を歩く北朝鮮の人々。平壌、万寿台(マンスデ)の丘で2012年に撮影。 Photograph by David Guttenfelder, AP 北朝鮮は不明な点が多すぎる。核兵器開発の進展、権力を握るエリートたちの階層、ミサイルの射程、地下に隠された産業の規模など。世界は現在、国連の制裁決議に反発する新指導者の金正恩氏が、挑発行為をどこまで繰り返すのか、最後通告を貫き通すのかどうか注視している。まるで真っ暗な片隅に身を隠してしまったかのようなこの国について、数少ない情報を紹介しよう。【地理】国土の80%が山岳地帯。干ばつや豪雨に襲われると、限られた農地はストレスを受け、慢性的な糧不足の原因となる。 【平均寿命】韓国より11年短い69歳。健康上の最大の脅威は飢えで、1990年半ばに国民の10人に1人に相当する約250万人が命を落とした。国連が昨年発表した報告書に

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  • サメの歯の武器から地域絶滅が明らかに

    ギルバート諸島の住民が戦いに用いていた、サメの歯でできた武器。枠内は、取り付けられた歯のクローズアップ。 Images courtesy Drew J., Philipp C., and Westneat M.W. かつて中部太平洋で使われていたサメの歯を用いた武器の調査から、2種のサメが周辺海域から既に姿を消していることがわかった。 現在キリバス領であるギルバート諸島の先住民は、木製の剣や槍、短刀のほか、この一帯に生息していたサメの鋭利な歯を武器に利用していた。 アメリカ、イリノイ州シカゴのフィールド自然史博物館が保管している120点の武器類では、17種以上のサメが使われている。 だがこのうち2種は、ギルバード諸島沖では生息が確認されていないメジロザメ属のホウライザメ(学名:Carcharhinus sorrah)とドタブカ(学名:Carcharhinus obscurus)だった。 「

    サメの歯の武器から地域絶滅が明らかに
  • 祭りの起源、インドのホーリー祭

    インド北部、ブリンダーバンのバンケ・ビハリ(Banke Bihari)寺院で、“色彩”とたわむれるヒンズー教の信者たち(3月27日)。色彩の宴であるホーリー祭は、ヴィシュヌ神の第8番目の化身といわれるクリシュナと、その恋人ラーダという女神にまつわるヒンズー教の伝説がルーツだという。 Photograph by Daniel Berehulak, Getty Images インド北部、ブリンダーバンのバンケ・ビハリ(Banke Bihari)寺院で、“色彩”とたわむれるヒンズー教の信者たち(3月27日)。 色彩の宴であるホーリー祭は、ヴィシュヌ神の第8番目の化身といわれるクリシュナと、その恋人ラーダという女神にまつわるヒンズー教の伝説がルーツだという。 ヒンズー教の言い伝えでは、若きクリシュナがラーダの色白の肌に嫉妬し、自分の色黒について母親のヤショーダに尋ねたことが発端とされている。 ヤシ

    祭りの起源、インドのホーリー祭
  • 色の祭り、インドのホーリー祭

    ヒンズー教の春の祭典「ホーリー祭」が始まった。インド北部の各地の村ではネオンカラーの色粉が舞い、誰彼無く色とりどりに染まる。3月26日、米ナショナル ジオグラフィックのオンライン・フォトコミュニティ「Your Shot」に投稿されたこの写真も、よく見ないと顔のクローズアップとわからない。 Photograph by Tinto Alencherry, Your Shot ヒンズー教の春の祭典「ホーリー祭」が始まった。インド北部の各地の村ではネオンカラーの色粉が舞い、誰彼無く色とりどりに染まる。3月26日、米ナショナル ジオグラフィックのオンライン・フォトコミュニティ「Your Shot」に投稿されたこの写真も、よく見ないと顔のクローズアップとわからない。 3月27日は、通称「色祭り(Festival of Colors)」の初日にあたり、ヒンズー教の主神ビシュヌの化身とされるクリシュナ神を

    色の祭り、インドのホーリー祭
  • ベルリンで不発弾、さらに大量に残存

    1945年4月のベルリン市街戦の後に、破壊された議事堂ライヒスタークの屋根にテーブルクロス製の赤旗を掲げるソ連軍の兵士たち。これらの戦闘の際の不発弾は、今なおドイツ全土に眠っている。枠内は今回発見され、信管を取り外されたソ連軍の100キロ爆弾。 Photographs by Yevgeny Khaldei, Getty Images; (inset) Markus Schreiber, AP ベルリンで現地時間3日、中央駅近くの線路脇の地中から爆発物が発見され、交通網が一時封鎖される騒ぎとなった。周辺のホテルや住居、学校などから数百人が避難し、近くの空港でも航空機の発着を約30分にわたって見合わせる中、警察の爆発物担当者らが慎重に処理に当たった。 と言っても、これはテロ事件ではない。発見された爆発物は重さ約100キロ、長さ約1メートルのTNT爆弾で、約70年前の第2次大戦中に当時のソビエト

    ベルリンで不発弾、さらに大量に残存
  • 地方独自の風習、インドのホーリー祭

    インド北部の村ナンドガオン(Nandgaon)にあるラーダ寺院(3月21日)。座って待つヒンズー教徒の男性グループに向けて、赤い粉が大量に投げかけられる。同地のホーリー祭は「ラトゥマー・ホーリー(Lathmar Holi)」と呼ばれ、この男性たちはその一環として、隣村のバルサナ(Barsana)に向けて行進を行うために集まっている。 Photograph by Kevin Frayer, AP インド北部の村ナンドガオン(Nandgaon)にあるラーダ寺院(3月21日)。座って待つヒンズー教徒の男性グループに向けて、赤い粉が大量に投げかけられる。 同地のホーリー祭は「ラトゥマー・ホーリー(Lathmar Holi)」と呼ばれ、この男性たちはその一環として、隣村のバルサナ(Barsana)に向けて行進を行うために集まっている。 バルサナとナンドガオンは、それぞれラーダとクリシュナというヒンズ

    地方独自の風習、インドのホーリー祭
  • 染料は近代化、インドのホーリー祭

    色水をかけられ真っ赤に染まったヒンズー教徒の男性。インドの祭典「ホーリー祭」では、観光客もこうなる覚悟が必要だ。ホーリー祭で伝統的に用いられてきた色粉は、ハナモツヤクノキの花などが原料で、天日に干して粉末にする。水と混ぜると濃いオレンジ色になる。 現在主に使用されている色粉は「グラール」と呼ばれ、さまざまな色合いが揃う。光沢を出すため、雲母の粉末が混ざっている場合もある。 Photograph by Ahmad Masood, Reuters 色水をかけられ真っ赤に染まったヒンズー教徒の男性。インドの祭典「ホーリー祭」では、観光客もこうなる覚悟が必要だ。 ホーリー祭で伝統的に用いられてきた色粉は、ハナモツヤクノキの花などが原料で、天日に干して粉末にする。水と混ぜると濃いオレンジ色になる。 現在主に使用されている色粉は「グラール」と呼ばれ、さまざまな色合いが揃う。光沢を出すため、雲母の粉末が

    染料は近代化、インドのホーリー祭
  • 写真アーカイブ:1910年のキプロス

    世代の異なる女性たちが、キプロス伝統の機織りに精を出している(1910年代)。 Photograph by J.P. Foscolo, National Geographic 伝統衣装で機織りをするキプロスの女性。「アフロディーテの島」という仮タイトルの誌記事に掲載するため、1920年に購入された写真だ。この地中海の島国は現在、深刻な財政難にあえいでいる。 ここ数週間、世間はキプロス経済危機の話題で持ちきりだ。欧州連合(EU)で100億ユーロ(約1兆2000億円)の金融支援策がまとまるまで、すべての銀行が営業を停止、ATMの前には長蛇の列ができた。しかも、取り付け騒ぎを回避するため、預金引き出しは厳しく制限されていた。いずれ10万ユーロ超の預金の一部は、キプロス政府に没収されることになる。 キプロスで金融が逼迫するのは、今回が初めてではない。十字軍国家だった12~13世紀頃、支配層のテン

    写真アーカイブ:1910年のキプロス
  • エピオルニスの巨大な卵を探して

    希少なエピオルニスの卵。3月27日、イギリス、ロンドンのクリスティーズ(Christie's)で撮影。 Photograph by Andy Rain, European Pressphoto Agency イースター・エッグ探しは先月末でお開きだが、史上最大級の卵の行方を世界中が見守っている。4月24日、イギリスの競売会社のクリスティーズが、化石化したエピオルニスの卵を競売にかける。高さ30.5センチ、直径22.9センチの巨大なサイズだ。 イギリス、ロンドンで開催されるオークション、「旅行・科学・自然史(Travel, Science and Natural History)」がその舞台。クリスティーズは4万5000ドル(約420万円)以上の値が付くと予想している。 17世紀に絶滅したエピオルニスは、マダガスカル島の固有種だ。開発による生息地の消失や狩猟が原因で絶滅したと考えられている。

    エピオルニスの巨大な卵を探して
  • 教皇の新居、カサ・サンタマルタとは?

    フランシスコ新ローマ教皇は、当面の間、バチカン宮殿内の教皇用公邸ではなく、カサ・サンタマルタという比較的質素なホテルに居住することを選択した。 Photograph from L'Osservatore Romano/AP 就任以来、さまざまな面で質素を旨とするフランシスコ新ローマ教皇。住居に関しても、少なくとも当面の間は、贅沢なバチカン宮殿内の教皇用公邸の利用を控えると公表した。 代わりに選んだのは「カサ・サンタマルタ」という市内のホテルで、先の教皇選出会議「コンクラーベ」の期間中、教皇を含めローマカトリック教会の枢機卿団が滞在していた。 ローマ教皇庁広報部の報道官フェデリコ・ロンバルディ氏は、「シンプルな生活環境を試してみたいようだ。コミュニティーの中での生活を望んでおられ、このホテルなら申し分がない」と話す。 教皇は、コンクラーベの際に抽選で割り当てられた部屋からスイートルーム201

    教皇の新居、カサ・サンタマルタとは?
  • ブラックキャブ、存続の危機を回避

    ロンドン、トラファルガー・スクエア周辺の黒塗りのタクシー、通称「ブラックキャブ」の車列(2012年5月28日)。 Photograph by Matthew Lloyd, Getty Images ロンドンを象徴する黒塗りのタクシー「ブラックキャブ」。製造者のロンドン・タクシー・カンパニーが経営難に陥り、存続が危ぶまれていたが、消滅の危機は回避されることになった。中国最大の自動車メーカー、浙江吉利控股集団が、ロンドン・タクシー・カンパニーとその親会社、マンガニーズ・ブロンズ・ホールディングスを買収したのだ。 コベントリーに拠点を置くマンガニーズ・ブロンズは6年前に赤字に転落、2012年10月以降は財産管理下に置かれていた(イギリスでは倒産に相当する)。吉利は以前から同社株の20%を保有していたが2013年2月、残株をおよそ16億円で取得した。 ブラックキャブは、世界的な催しにもしばしば登場

    ブラックキャブ、存続の危機を回避
  • 親族の祝福、ガザに密輸される花嫁

    地下トンネルを通り抜けてガザ地区に到着した、花婿のエマド・アル・マラルハ(Emad al-Malalha)さんとマナル・アブ・シャナー(Manal Abu Shanar)さん(3月21日)。花婿の親族から祝福を受けている。エジプト政府は密輸トンネルの封鎖作戦を強化。大量の排水を流し込んだり、ブルドーザーで入口を封鎖しているという。 Photograph by Ibraheem Abu Mustafa, Reuters 地下トンネルを通り抜けてガザ地区に到着した、花婿のエマド・アル・マラルハ(Emad al-Malalha)さんとマナル・アブ・シャナー(Manal Abu Shanar)さん(3月21日)。花婿の親族から祝福を受けている。 エジプト政府は密輸トンネルの封鎖作戦を強化。大量の排水を流し込んだり、ブルドーザーで入口を封鎖しているという。 Photograph by Ibrahee

    親族の祝福、ガザに密輸される花嫁
  • 地下トンネル、ガザに密輸される花嫁

    暗い地下回廊で花嫁を導くのは、21歳の花婿エマド・アル・マラルハ(Emad al-Malalha)さん。17歳のマナル・アブ・シャナー(Manal Abu Shanar)さんはエジプト生まれ。ガザの花婿に嫁ぐためには、エジプトとガザ地区をつなぐトンネルを通らなければならなかった。イスラエルとエジプトによって遮断されている陸路は警戒が厳重だが、密輸用の地下トンネルが縦横に巡っている。しかし、このルートもしばしば危険が伴う。頑丈な岩が支え、通気口を備えている場合もあるが、多くは作りが脆弱だ。崩落事故や火災の危険性に加えて、イスラエル軍の空爆が襲ってくる。 Photograph by Ibraheem Abu Mustafa, Reuters 暗い地下回廊で花嫁を導くのは、21歳の花婿エマド・アル・マラルハ(Emad al-Malalha)さん。17歳のマナル・アブ・シャナー(Manal Abu

    地下トンネル、ガザに密輸される花嫁
  • 婚礼写真、ガザに密輸される花嫁

    3月21日、道中無事にガザ地区のラファへ到着した花嫁は、身内を交えた記念撮影までこぎつけた。1979年締結のエジプト・イスラエル平和条約により、ラファはエジプトとガザ地区に分断(1982年)。現在、街の市場には、境界を結ぶ地下トンネル経由で密輸された物資が並んでいる。 Photograph by Ibraheem Abu Mustafa, Reuters 3月21日、道中無事にガザ地区のラファへ到着した花嫁は、身内を交えた記念撮影までこぎつけた。 1979年締結のエジプト・イスラエル平和条約により、ラファはエジプトとガザ地区に分断(1982年)。現在、街の市場には、境界を結ぶ地下トンネル経由で密輸された物資が並んでいる。 Photograph by Ibraheem Abu Mustafa, Reuters

    婚礼写真、ガザに密輸される花嫁
  • ガザに密輸される花嫁

    3月21日、パレスチナ自治区のガザ地区で結婚式を挙げる2人が、密輸用のトンネルを通る。花嫁はエジプト人のマナル・アブ・シャナー(Manal Abu Shanar)さん、花婿はパレスチナ人のエマド・アル・マラルハ(Emad al-Malalha)さんだ。 Photograph by Ibraheem Abu Mustafa 3月21日、パレスチナ自治区のガザ地区で結婚式を挙げる2人が、密輸用のトンネルを通る。花嫁はエジプト人のマナル・アブ・シャナー(Manal Abu Shanar)さん、花婿はパレスチナ人のエマド・アル・マラルハ(Emad al-Malalha)さんだ。 アル・マラルハさんがロイター通信に語ったところによれば、シャナーさんはラファ検問所に行ったが、エジプト当局はガザ地区への通行を許可しなかったという。 そこで、代替案を実行に移すことにした。地下ルートだ。 1979年締結のエ

    ガザに密輸される花嫁
  • 中世の本にネコの足跡、ネットで話題に

    インクを踏んだネコが横切った跡がある15世紀の文書。 Photograph courtesy Emir O. Filipovic 古代エジプトの宗教を皮切りにエドガー・アラン・ポーの「黒」、新しいところでは人気ネコ画像サイト「I Can Has Cheeseburger」まで。ネコと文学、文化は昔から蜜月の関係にある。しかし、15世紀の文書を横切る足跡を残し、その存在を歴史に残したのはクロアチアの古都、ドゥブロヴニクのネコくらいだろう。 ボスニア・ヘルツェゴビナのサラエボ大学で授業、研究の助手として働くエミール・O・フィリポビッチ(Emir O. Filipovic)氏は2011年7月、中世に記された手書きの文書に目を通しているとき、インクを踏んだと思われるネコの足跡が横切るページを見つけた。早速、フィリポビッチ氏はカメラを向けてパチリ。同僚や生徒に見せ、笑いの種にするためだ。 「これほ

    中世の本にネコの足跡、ネットで話題に
  • 世界のミイラでわかる古代の病気

    ペルーで見つかった子どものミイラ。生まれつき心臓に欠陥があった。 Photography by Robyn Beck, AFP/Getty Images 安息の地が質素な墓であれ、豪華な墓所であれ、人間の身体が時の流れを越えて原形を留めることはめったにない。しかし、遺体を丹念にミイラ化した場合や、極端な乾燥や高湿度などの環境条件が整うと、骨や肉が保存される場合もある。 現代では、こうした遺体をCTスキャン、MRI(核磁気共鳴画像法)、DNA鑑定などで調査し、古代人の生活や死因について興味深い知見を得ている。 2011年、カイロにあるエジプト考古学博物館で52体のミイラを調査したところ、半数近くで動脈血栓症(動脈硬化)の症状が見つかった。心臓発作や脳卒中につながる疾患だ。暴飲暴に運動不足? それとも慢性的な炎症? 王室の近親結婚による遺伝的要因も…。さまざまな要因が研究者の想像力をかき立て

    世界のミイラでわかる古代の病気
  • シドニー港、アースアワー2013

    上は「アースアワー2013」を2日後に控えた3月21日、オーストラリア、シドニー港のハーバーブリッジ付近では観光スポットの夜景が華々しい。下は3月23日のアースアワー当日、照明が落とされたビルがシルエットで浮かび上がる。 Photographs by David Gray, Reuters 上は「アースアワー2013」を2日後に控えた3月21日、オーストラリア、シドニー港のハーバーブリッジ付近では観光スポットの夜景が華々しい。下は3月23日のアースアワー当日、照明が落とされたビルがシルエットで浮かび上がる。 世界自然保護基金(WWF)のキャンペーン、アースアワーは2007年、シドニーでのローカルな試みから始まった。アースアワーのWebサイトによると、2007年はシドニーに限られたイベントだったが、約220万人の市民と企業2000社以上が参加したという。 翌年から、世界中の午後8時半(現地時

    シドニー港、アースアワー2013
  • 香港の金融街、アースアワー2013

    世界三大金融センターの一つ、香港島の金融街は超高層建築が林立する。3月23日、午後8時過ぎは、眠るにはまだ早すぎる時間だ(上)。地球温暖化防止の意思を示す国際的キャンペーン、「アースアワー2013」に賛同し、香港島の金融街も闇に沈んだ(下)。 Photographs by Bobby Yip, Reuters 世界三大金融センターの一つ、香港島の金融街は超高層建築が林立する。3月23日、午後8時過ぎは、眠るにはまだ早すぎる時間だ(上)。地球温暖化防止の意思を示す国際的キャンペーン、「アースアワー2013」に賛同し、香港島の金融街も闇に沈んだ(下)。 向かいの香港一のノッポビル、環境貿易広場(ICC)から、明かりが消える瞬間を目撃する幸運に恵まれた人々もいた。100階の展望台スカイ100に昇れば、360度のパノラマで香港が見渡せる。 Photographs by Bobby Yip, Reu

    香港の金融街、アースアワー2013
  • ウィーン市庁舎、アースアワー2013

    いつものようにライトアップされる3月21日のオーストリア、ウィーン市庁舎(上)。3月23日午後8時半、ゴシック建築のファサードも束の間の暗闇に包まれる(下)。オーストリア中の城や歴史的建造物でも、ウィーン市庁舎同様のアピールが行われた。昨年度のアースアワー参加は、世界150カ国以上、7000以上の都市に上った。 Photographs by Heinz-Peter Bader, Reuters いつものようにライトアップされる3月21日のオーストリア、ウィーン市庁舎(上)。3月23日午後8時半、ゴシック建築のファサードも束の間の暗闇に包まれる(下)。オーストリア中の城や歴史的建造物でも、ウィーン市庁舎同様のアピールが行われた。 昨年度のアースアワー参加は、世界150カ国以上、7000以上の都市に上った。 Photographs by Heinz-Peter Bader, Reuters

    ウィーン市庁舎、アースアワー2013
  • 野良ネコの殺処分を巡り新たな波紋

    アメリカ、フロリダ半島南端沖に位置するフロリダ・キーズで、ボランティアに抱えられて避妊手術を待つ子どもの野良ネコたち。 Photograph by Melissa Farlow, National Geographic 野良ネコの処置をめぐって、このところ活発な議論が交わされている。最近、安楽死による野良ネコの殺処分を訴えるコラムがアメリカの地方紙に掲載され、動物愛護団体などの間に新たな波紋が広がっている。 問題となっているのは、3月14日付けの「Orlando Sentinel」紙に掲載されたコラム。寄稿者は、アメリカの環境保護団体「全米オーデュボン協会」が発行する「Audubon Magazine」誌の元総合監修者テッド・ウィリアムズ(Ted Williams)氏だ。この中で同氏は、小鳥などの小型動物を襲うばかりか、トキソプラズマ症などの原虫感染症を媒介するとも言われている野良ネコは、

    野良ネコの殺処分を巡り新たな波紋
  • 写真アーカイブ:北朝鮮の戦争捕虜

    戦争捕虜収容所の隅で、たばこを吸う北朝鮮の捕虜。アメリカ海兵隊のロバート・H・モージャー(Robert H. Mosier)二等軍曹が1951年11月8日に撮影し、1953年1月、ナショナル ジオグラフィックのアーカイブに収められた。 Photograph by Robert H. Mosier, U.S. Marine Corps. 北朝鮮アメリカ韓国に対し、反発姿勢を強めている。今月11日に始まったアメリカ韓国の合同軍事演習に抗議するため、1953年に結ばれた朝鮮戦争の休戦協定を“白紙”に戻すと宣言した。北朝鮮は既に、核開発を理由に国連から制裁を受けている。にも関わらず、2月には新たな核実験を行い、アメリカ韓国に対して核兵器を使用する意思があると明言した。 写真は、朝鮮戦争時の捕虜収容所の一場面。アメリカ海兵隊のロバート・H・モージャー(Robert H. Mosier)二等軍

    写真アーカイブ:北朝鮮の戦争捕虜
  • インタビュー:「円周率の日」25周年

    円周率の日」のイベントの一環として、ピザ生地を投げて円形にする男性(資料写真)。 Photograph courtesy Exploratorium 3月14日を「円周率(パイ)の日」として祝う慣行が始まったのは1988年のこと。サンフランシスコにある科学博物館、エクスプロラトリアム(Exploratorium)所属の物理学者ラリー・ショウ(Larry Shaw)氏がカレンダーを見ていて、円周率の最初の3桁と一致するこの日を、円周率の日として祝うことを思い付いた。ショウ氏らはお菓子のパイを注文してスタッフにふるまい、これが現在に続く伝統の始まりとなった。 今日では、円周率の日には世界各地の学校や博物館でさまざまなイベントが行われている。25周年を迎える今年の円周率の日にちなみ、エクスプロラトリアムのロン・ヒプシュマン(Ron Hipschman)氏に、円周率円周率の日について話を聞いた

    インタビュー:「円周率の日」25周年
  • 新ローマ教皇、初の中南米出身者

    3月13日、新ローマ教皇に選出された、アルゼンチン出身のホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿。 Photograph by Natacha Pisarenko, AP 3月13日(日時間14日)、キリスト教カトリック教会の新教皇に初の中南米出身者が選出された。カトリック教会の未来は欧州以外の地域にあり、アメリカ大陸との絆も修復したい・・・。教会の勢力図をめぐる枢機卿たちの強いメッセージが込められている。 76歳のホルヘ・マリオ・ベルゴリオ(Jorge Mario Bergoglio)枢機卿はアルゼンチン出身。教皇名はフランシスコ1世に決まった。 アメリカ、ベイラー大学で世界の宗教を研究するフィリップ・ジェンキンス(Philip Jenkins)氏は、「教皇の職位がイタリア人の手から離れる象徴的な動きと感じた」と話す。先月退位したベネディクト16世の後継として、候補に上った枢機卿の多くはイタリ

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  • 結婚を強要される少女たち

    イエメンに暮らす、25歳の夫マジェド(Majed)と6歳のタハニ(Tahani)の結婚当時の写真。タハニは、「夫の姿を見るたびに隠れた。顔を会わせるのが嫌でたまらなかった」と話す。一般的な古典イスラム法解釈では、女性は9歳で一人前となり、結婚も可能とされる。イスラム法を厳格に守ろうとするサウジアラビアやイランなどではこれが法制化されているが、他の多くのイスラム教国では結婚最低年齢を15~18歳程度に定めている場合が多い。イエメンは例外的で、結婚最低年齢を定める法律がなく、9歳未満で嫁ぐ女児が数多い。 Photograph by Stephanie Sinclair, VII/National Geographic 結婚を強要される女子児童や少女の数を想像できるだろうか。この悪しき慣習は驚くほど一般的に行われている。国連によると、発展途上国の少女9人に1人が15歳までに結婚させられる。何も

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  • イリノイ州、“ライオン肉禁止”の法案

    アメリカ、アリゾナ州メサのレストラン「イル・ビナイオ(Il Vinaio)」が提供するライオン肉のパテ(2010年撮影)。 Photograph by Matt York, AP アメリカ、イリノイ州では最近、ライオン肉の取り扱いを一切禁止しようという動きが出ている。もっとも世間では、「そもそもべる人がいるのか」という疑問の声も上がっている。 イリノイ州議会のルイス・アローヨ(Luis Arroyo)下院議員は先ごろ、「ライオン肉処理、および肉処理を目的として、ライオンを所有、飼育、輸入、輸出、購入、または販売する行為は違法」とする法案を提出した。 AP通信によるとアローヨ氏は、名指しはしていないが、アフリカイオンの販売業者がイリノイ州には少なくとも2社あるとしている。 野生生物の違法取引に詳しい世界自然保護基金(WWF)のクロフォード・アラン(Crawford Allan)氏も

    イリノイ州、“ライオン肉禁止”の法案
  • 古代エジプト、人骨が語る過酷な暮らし

    アマルナの平民墓地に葬られていた男性。19歳前後の若さで亡くなっている。 Photograph courtesy Amarna Trust 古代エジプトの都市アマルナの壁に刻まれた彫刻は、豊かな暮らしを物語る。農場では牛が肥え、倉庫には穀物と魚があふれ、ファラオは音楽家の演奏を聴きながら肉のごちそうをべている。 しかし、アマルナでの暮らしは、少なくとも一般庶民には過酷な労働と貧困に耐えるものだったことが、最新研究によって示唆された。彼らは水をくんで運び、ナイル川の船から荷を下ろし、壮麗な石の神殿を急ピッチで建設した。神殿の建設は、時の支配者で“異端の王”とも呼ばれるアクエンアテン(アメンヘテプ4世から改名)の命によるものだ。 アマルナの平民墓地から発掘された人骨を調査したところ、子どもの多くは栄養失調で発育不全だったことが明らかになった。大人も過酷な労働に従事していたらしく、事故による負

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  • 世界のカトリック教徒数と有権枢機卿

    2013年、世界各国の有権枢機卿の人数。数字(人数)があるのは2人以上の有権枢機卿を有する国、黒丸のみは有権枢機卿が1人の国を示す。 Map: Alexander Stegmaier, Maggie Smith, NGM Staff Source: World Christian Database, Vatican 3月12日、ローマカトリック教会の枢機卿団がバチカンに集合した。世界で最大級の影響力を持つ宗教指導者、ローマ教皇を選出する有権枢機卿たちだ。前教皇のベネディクト16世は先月、自ら退位を表明、719年ぶりの歴史的な事態となった。 枢機卿団は12日から教皇選出会議「コンクラーベ」を開始。ローマカトリック教会の未来と新しい指導者について議論を重ねた結果13日、5回目の投票で、アルゼンチン人のホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿が新教皇に選出された。自ら選んだ法王名は「フランシスコ1世」で

    世界のカトリック教徒数と有権枢機卿
  • アフガン・スキー・チャレンジ2013

    海外の参加選手から提供されたスキー板を手に、スタートラインへと向かう地元の少年。アフガン・スキー・チャレンジ(Afghan Ski Challenge)は、今年で3回目の開催となる。 Photograph by John Wendle 3月1日、アフガニスタンのバーミヤン州で、地域の観光振興を目的としたスキーレース「アフガン・スキー・チャレンジ(Afghan Ski Challenge)」が開催された。 3回目となる今年は国内外から30人ほどの選手が参加。主催者の「3、2、1、ゴー!」の掛け声とともに一斉にスタートを切ると、まずは300メートルほど続く雪原の上り斜面を勢いよく駆け上がる。標高3200メートルの厳しい環境に早くも息を切らす海外選手を、アフガニンスタンの選手たちがさっそうと追い抜いていく。彼らのほとんどは近隣の町に暮らす農家の少年で、スキーはわずか数週間前に始めたばかりだという

    アフガン・スキー・チャレンジ2013
  • 発掘した財宝は誰のもの? 英米の違い

    2009年に古代アングロサクソン時代の金銀の細工品が出土したイギリスのスタフォードシャーで昨年12月、さらに多くの遺物が見つかった。これはヘルメットの頬当ての一部と考えられている。 Photograph courtesy Staffordshire County Council 2009年9月、スコットランドの都市スターリングでパークレンジャーとして働くデビッド・ブース氏は、真新しい金属探知器(「家で釘や工具を探す練習をした」とブース氏は言う)を荷物に詰め込み、原野に出かけた。車を停めて6メートルほど歩いたところで、大当たりが出た。探知器の最初のひと探りで、とんでもないものを見つけたのだ。紀元前1世紀の黄金の首飾りだ。その4点の首飾りは、これまでにスコットランドで見つかっている鉄器時代の金製品の中でも最も重要な遺物だった。 数日後、スコットランド国立博物館(National Museum

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  • 米の歳出強制削減で国立公園運営に暗雲

    アメリカ、ケンタッキー州のマンモスケーブ国立公園。このほど発令された歳出強制削減によって、国立公園での観光事業にも悪影響が及ぶ危険性があるという。 Photograph by David S. Boyer and Arlan R. Wiker, National Geographic 景気の悪化を受けて3月1日に発動された歳出強制削減によって、アメリカの景観や自然、公園が窮地に立たされるかもしれない。3月1日の数日前の記者会見で、国立公園局(NPS)の局長ジョナサン・ジャービス氏とアメリカ内務省のケン・サラザール長官は、“sequestration(差し押さえ)”と呼ばれる今回の歳出強制削減によってアメリカ経済全体に悪影響が及び、特に国立公園の運営が大打撃を受けると警告した。その理由を見ていこう。◆国家財政への打撃 サラザール氏によると、アメリカの国立公園は投資収益率が非常に高く、税金1ド

    米の歳出強制削減で国立公園運営に暗雲
  • 恐竜とのふれあい、2月ベストフォト

    イギリス、ロンドンに突如現れた肉恐竜「アウストラロベナトル(Australovenator)」(2月18日)。オーストラリアに拠点を置くエンターテイメント企業「エス(Erth)」が展開する、恐竜の移動動物園「エスの恐竜ふれあい動物園(Erth's Dinosaur Petting Zoo)」の一コマだ。リアルな恐竜パペットを前に、子どもたちがさまざまなリアクションを見せている。エス社によると、このインタラクティブなショーでは、子どもも大人も先史時代の動物に触れ、エサや水をあげるなど、ペットのように世話をすることができるという。 Photograph by Kirsty Wigglesworth, AP イギリス、ロンドンに突如現れた肉恐竜「アウストラロベナトル(Australovenator)」(2月18日)。オーストラリアに拠点を置くエンターテイメント企業「エス(Erth)」が展開す

    恐竜とのふれあい、2月ベストフォト
  • 墓に住むホームレス、2月ベストフォト

    セルビア南部の都市ニシュにある墓地で、ろうそくを灯すブラチスラフ・ストヤノビッチ(Bratislav Stojanovic)さん(2月9日)。建設作業員だが仕事が見つからず、ホームレス生活を続けている。ロイター通信によると、何軒もの空き家を転々とし、15年前にこの墓地で暮らし始めたという。 Photograph by Marko Djurica, Reuters セルビア南部の都市ニシュにある墓地で、ろうそくを灯すブラチスラフ・ストヤノビッチ(Bratislav Stojanovic)さん(2月9日)。建設作業員だが仕事が見つからず、ホームレス生活を続けている。ロイター通信によると、何軒もの空き家を転々とし、15年前にこの墓地で暮らし始めたという。◆ベストフォト選考理由 「地上の暗い色調と、墓の下を照らす輝きが興味深いコントラストを生みだし、人物に視線が吸い寄せられる」、リディア・ミハイチ

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  • 武器を持った部族、2月ベストフォト

    エチオピア南部、オモ渓谷の村で、自動小銃を抱えてポーズをとる部族民の男性。2月4日、米ナショナル ジオグラフィックのフォトコミュニティ・サイト、「My Shot」に投稿された。ケニアとの国境付近に位置するオモ渓谷では、ムルシ、カラ、ハマー、スリなど20万人ほどの部族が、全長約800キロのオモ川に頼って生活している。 Photograph by Benjamin Eagle, My Shot エチオピア南部、オモ渓谷の村で、自動小銃を抱えてポーズをとる部族民の男性。2月4日、米ナショナル ジオグラフィックのフォトコミュニティ・サイト、「My Shot」に投稿された。ケニアとの国境付近に位置するオモ渓谷では、ムルシ、カラ、ハマー、スリなど20万人ほどの部族が、全長約800キロのオモ川に頼って生活している。◆ベストフォト選考理由 「自己主張の強い表情、ポーズだが、決して威嚇的ではない。サイドから

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  • 陥没穴、発生のしくみと原因

    アメリカ、フロリダ州タンパ郊外のセフナーで、就寝中の男性が陥没穴に飲み込まれた現場を大勢の人々が見守る(3月1日撮影)。 Photograph by Edward Linsmier, Getty Images アメリカのフロリダ州で2月28日、就寝中の男性が突然、住宅の直下に出現した巨大な陥没穴に寝室ごと飲み込まれるという、悪夢のような事故が起きた。同州中部タンパ近郊のセフナーの民家の床下に、突如として幅6メートルほどの穴が開き、寝室で寝ていたジェフ・ブッシュ(Jeff Bush)さん(37歳)が転落。弟のジェレミー(Jeremy)さんが救助を試みたが、発見することはできなかった。ジェレミーさんをはじめ家族5人は全員無傷で避難したという。ジェフさんは依然として行方不明だが、生存の可能性は低いとして捜索は打ち切られた。家屋は既に解体作業が始まっている。 隣人の痛ましい事故を目にして住民には動

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  • 北京の冬の金魚、2月ベストフォト

    有害な煙霧が覆う北京、水の中で金魚も呼吸している。米ナショナル ジオグラフィックのフォトコミュニティ・サイト、「My Shot」に投稿された(2月4日)。AP通信によると、1月中はほぼ毎日、大気汚染が過去最悪水準に達し、休校や工場閉鎖が相次いだ。また、呼吸器の症状など健康異常を訴える患者が増えたという。 Photograph by Li Xin, Your Shot 有害な煙霧が覆う北京、水の中で金魚も呼吸している。米ナショナル ジオグラフィックのフォトコミュニティ・サイト、「My Shot」に投稿された(2月4日)。AP通信によると、1月中はほぼ毎日、大気汚染が過去最悪水準に達し、休校や工場閉鎖が相次いだ。また、呼吸器の症状など健康異常を訴える患者が増えたという。◆ベストフォト選考理由 「何気ない撮影に見えるが、金魚鉢の水位など細かな構図に気を配っている」、クリス・コムズ氏(ニュースフォ

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  • 巻かれたヘビの山、2月ベストフォト

    オーブンで乾燥させるため、コイル状に巻かれ、積み上げられた大量のヘビ。インドネシア、西ジャワ州の加工場で2月8日撮影。肉は薬効があると信じられており、革はハンドバッグ、、ベルトなどに利用される。 Photograph by Beawiharta, Reuters オーブンで乾燥させるため、コイル状に巻かれ、積み上げられた大量のヘビ。インドネシア、西ジャワ州の加工場で2月8日撮影。肉は薬効があると信じられており、革はハンドバッグ、、ベルトなどに利用される。◆ベストフォト選考理由 「優雅で抽象的な螺旋模様を見ても、肉と革のために殺されたとはだれも思いつかないだろう」、リディア・ミハイチュク(Lydia Mihaychuk)氏(フォト・インターン)。 Photograph by Beawiharta, Reuters

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  • ドライバー救出、2月ベストフォト

    濁流が襲いかかる中、車内に取り残されていた女性の救出を試みる男性。2月22日、ギリシャの首都アテネは、過去50年余りの記録を塗り替える最悪の豪雨に見舞われた。ロイター通信によると、車内に閉じ込められた女性1人が死亡、通勤通学者からの救助要請電話は90件以上にのぼった。 Photograph by John Kolesidis, Reuters 濁流が襲いかかる中、車内に取り残されていた女性の救出を試みる男性。2月22日、ギリシャの首都アテネは、過去50年余りの記録を塗り替える最悪の豪雨に見舞われた。ロイター通信によると、車内に閉じ込められた女性1人が死亡、通勤通学者からの救助要請電話は90件以上にのぼった。◆ベストフォト選考理由 「実に恐ろしい場面だ。この水は一体何なの? もう逃げられない! 女性の表情にはそんな絶望感が漂っている」、ジャンナ・ドチュカル氏(フォト共同編集者)。 「自然のパ

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  • リエカのカーニバル、2月ベストフォト

    クロアチア北西部、アドリア海に面した港町リエカのカーニバル。毎年1月20日前後から「灰の水曜日」(四旬節の初日)まで1カ月ほど開催される。ベネチアの向こうを張る大規模な仮装パレードも行われるが、写真は民族色の濃いハルビエ(Halubje)地区のジボンチャリ(Zvoncari)と呼ばれる鳴鐘人(めいしょうにん)たち。撮影したフォトグラファー、アルセン・ミレティッツ(Arsen Miletic)氏によると、かぶり物をしたジボンチャリは、腰に着けた鐘を鳴らして冬を追い払う。「小さな子どもたちは父親や仲間のやり方を見て覚える」という。 Photograph by Arsen Miletic, My Shot クロアチア北西部、アドリア海に面した港町リエカのカーニバル。毎年1月20日前後から「灰の水曜日」(四旬節の初日)まで1カ月ほど開催される。ベネチアの向こうを張る大規模な仮装パレードも行われるが

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  • 人間は犬に飼いならされた?

    人間と犬の友情は、どちらからの働き掛けによるものだろう?(資料写真) Photograph by Vincent J. Musi, National Geographic 寒空の下で生きていた犬が居間のソファでぬくぬく暮らすようになった経緯を語るとき、われわれはそれを人間の手柄にする傾向がある。最も一般的な仮説は次の通りだ。可愛い生き物に弱い狩猟採集民が、オオカミの子どもを見つけて飼い始めた。飼いならされたオオカミは狩りの能力を発揮するようになり、たき火を囲みながら一緒に暮らしているうちに犬へと進化した。 しかし、両者の馴れ初めにさかのぼってみると、この仮説はつじつまが合わない。まず、オオカミが家畜化された時代、人類は競合相手の肉動物にあまり寛容ではなかった。約4万3000年前、現生人類がヨーロッパにわたってから、サーベルタイガーやジャイアント・ハイエナ(学名:Pachycrocuta

    人間は犬に飼いならされた?
  • 野生生物の密輸増加、手口も巧妙化

    タイ、バンコクのスワンナプーム国際空港で、乗客の荷物から見つかったカワウソ。全部で11匹が救出された。 Photograph courtesy TRAFFIC タイ、バンコクのスワンナプーム国際空港の手荷物受取所で、乗客の荷物から生きたカワウソが11匹発見された。 内訳は、東南アジア最大級のビロードカワウソが6匹と、体重5キログラム以下で世界最小のコツメカワウソが5匹。いずれも東南アジアで絶滅の危機に瀕している。 衣服や料、医薬品用途で皮や臓器の需要が高騰し、生息地の減少や環境汚染などの要因も、個体数の減少につながっているという。 しかし、違法取引の魔の手にかかる野生生物はカワウソだけではない。密売人たちはスーツケースなどの荷物や木箱を隠れ蓑に、あらゆる野生生物を空港から密輸しようとしている。 「アメリカでの検挙数は年間1000万ドル(約9億円)相当に上るが、氷山の一角にすぎない」と、米

    野生生物の密輸増加、手口も巧妙化
  • トンブクトゥ、貴重な古文書も被害

    トンブクトゥのアハメド・ババ研究所でイスラム文書の保管に気を配る職員。2004年撮影。 Photograph by Ben Curtis, AP フランスとマリの連合軍が1月28日にマリ北部にあるトンブクトゥを包囲し、迷路のような町の中でイスラム武装勢力の兵士をしらみつぶしに探し始めた。だが、町の人々によると、武装勢力は数日前に町を離れ、砂漠の中に逃げ込んでしまったという。この町は10カ月にわたり、国際テロ組織アルカイダとの関係を自称するイスラム武装勢力に占拠され、タリバン流の支配を受けていた。 ところが、武装勢力は逃げ出す前に、いくつかの建物や多くの貴重な古文書に火をかけていったと報じられている。実際にどの程度の古文書が燃やされたかについては、情報が錯綜している。 イギリスの放送局スカイ・ニュースが、アハメド・ババ研究所(Ahmed Baba Institute)の職員という男性のインタ

    トンブクトゥ、貴重な古文書も被害
  • コロッセオで紀元1世紀の落書き発見

    ローマのコロッセオ内部の壁面。2000年前(赤)と観光客の落書きが入り乱れている。 Photograph by Gregorio Borgia, AP イタリア、ローマの観光名所コロッセオ(円形闘技場)で、昨年12月から73年ぶりの修復工事が始まり、何世紀にもわたる落書きが見つかっている。堆積した汚れと石灰化した部分を専門家が取り除くと、壁の一部に幾重にも刻まれた文字が現れた(写真)。赤や色あせたグレーの古代の模様の上に、現代の観光客が残した黒い文字が重なっている。 西暦1世紀に建設されたコロッセオは約5万人を収容できた。番号が振られた入り口や覆いのある通路は、観客のスムーズな出入りや、貴族と一般大衆を分けるために設計されたという。 写真の壁は上層階に続く通路の側面から見つかった。当時上層階では、女性、子ども、奴隷などが安価な椅子に腰掛けて、18メートル下のアリーナで繰り広げられる剣闘士や

    コロッセオで紀元1世紀の落書き発見
  • シチリアのミイラ分析、調査結果を発表

    イタリア、シチリア島のピラーイノにある安置所の棚に並ぶミイラ。 Photograph by Vincent J. Musi, National Geographic 地中海のイタリア領シチリア島では、教会や安置所に多数のミイラが保管されている。古いミイラの調査・解析を目的とした「シチリア・ミイラ・プロジェクト(Sicily Mummy Project)」の開始から5年。ミイラ6体分の分析・調査が完了し、16世紀後期~20世紀半ばの島民の生と死に関する詳細が明らかになった。 シチリアのパレルモにある文化遺産・シチリア理念局(Department of Cultural Heritage and Sicilian Identity)の人類学者、ダリオ・ピオンビーノ・マスカリ氏が主導するプロジェクトは現在も続行中だ。当時の修道士やその裕福な支援者たちの生活や病気の対処法、そして遺体の取り扱い方

    シチリアのミイラ分析、調査結果を発表
  • 熱気球、過去の死亡事故

    1785年にフランスの科学者、ジャン・フランソワ・ピラートル・ド・ロジェ(Jean-Francois Pilatre de Rozier)ら搭乗の熱気球が炎上、墜落したときの様子を描いたイラスト。フランスの化学者ガストン・ティサンディエ(Gaston Tissandier)が1890年に発表した『Histoire des ballons et des aeronautes celebres(History of balloons and famous aeronauts)』に掲載された。世界初の航空事故として知られる。 Illustration from SSPL/Getty Images エジプト南部のルクソールで2月26日、観光客ら21人を乗せて古代遺跡上空を飛行していた熱気球が爆発炎上、墜落し、日人観光客を含む19人が死亡した。原因は燃料ホースの破損、あるいはバーナーの炎が気球に燃

    熱気球、過去の死亡事故
  • ペンギン、ベスト報道写真2013

    氷の浮かぶ海面に向かって上昇するコウテイペンギン。専門家の調査によると、羽毛に蓄えた空気を細かい泡として放出し、海水と体の間の摩擦抵抗を減らすと、泳ぐ速度が通常の2~3倍に上がる。米ナショナル ジオグラフィック誌の寄稿写真家、ポール・ニックレン(Paul Nicklen)氏が、南極のロス海でその様子をとらえている(2011年11月19日)。「ナショナル ジオグラフィック」誌2012年11月号の特集記事「海を飛ぶコウテイペンギン」に掲載され、2013年世界報道写真コンテスト「自然部門」で組写真の第1位を獲得した。 Photograph by Paul Nicklen, National Geographic 氷の浮かぶ海面に向かって上昇するコウテイペンギン。専門家の調査によると、羽毛に蓄えた空気を細かい泡として放出し、海水と体の間の摩擦抵抗を減らすと、泳ぐ速度が通常の2~3倍に上がる。米ナシ

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  • 流された松、ベスト報道写真2013

    10メートルの津波が東北地方太平洋岸を襲ってから1年、根こそぎ流された松が陸前高田の海岸に打ちあげられている(2012年3月7日撮影)。写真家ダニエル・ベレフラク(Daniel Berehulak)氏による写真シリーズ、「津波の後の日(Japan After the Wave)」の1枚で、自然災害が残した爪痕を記録している。2013年世界報道写真コンテスト「一般」部門で第3位に選出された。「被災者にとっては現在も進行中なのだと示唆する作品だ。今も残る破壊の力を非常にうまくとらえている」と審査員のアン・ウィルクス・タッカー(Anne Wilkes Tucker)氏は語る。 Photograph courtesy Daniel Berehulak, Getty Images, via WPP 10メートルの津波が東北地方太平洋岸を襲ってから1年、根こそぎ流された松が陸前高田の海岸に打ちあげら

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  • ガザ空爆、ベスト報道写真2013

    イスラエル軍の空爆を受け、煙が立ち昇るパレスチナ自治区、ガザ市。この爆撃で、外国メディアの事務所やイスラム原理主義組織ハマスが使用していた建物2棟が破壊された。中東を拠点に活動するAP通信のカメラマン、ベルナト・アルマング(Bernat Armangue)氏が、長年続くイスラエル・パレスチナ紛争が再び激化した2012年11月18日に撮影。2013年世界報道写真コンテスト「スポットニュース(速報)」部門で、組写真の第1位を獲得した。 Photograph by Bernat Armangue, Associated Press イスラエル軍の空爆を受け、煙が立ち昇るパレスチナ自治区、ガザ市。この爆撃で、外国メディアの事務所やイスラム原理主義組織ハマスが使用していた建物2棟が破壊された。中東を拠点に活動するAP通信のカメラマン、ベルナト・アルマング(Bernat Armangue)氏が、長年続

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  • 拷問する兵士、ベスト報道写真2013

    シリア北部のアレッポで、政府内通者の疑いをかけられた男性が、反政府勢力の戦闘員に拷問されている(2012年7月31日)。48時間後、この男性は解放された。2013年世界報道写真コンテスト「スポットニュース(速報)」部門で単写真の第2位は、トルコ人フォトジャーナリストのエミーン・オズメン(Emin Ozmen)氏が受賞した。審査員のアン・ウィルクス・タッカー(Anne Wilkes Tucker)氏は、シリア紛争の現実を伝えるため、困難な状況にカメラを持ち込んだ撮影者を賞賛する。「拷問者は撮影を拒むケースがほとんどだから。銃で締め上げられている男性を中心に、人物が十字に配置されている構図が刺激的だ」。 Photograph courtesy Emin Ozmen via WPP シリア北部のアレッポで、政府内通者の疑いをかけられた男性が、反政府勢力の戦闘員に拷問されている(2012年7月31

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  • 老老介護、ベスト報道写真2013

    認知症を患う夫ルイジ(Luigi)さんが入浴後、のミレラ(Mirella)さんが優しくタオルでぬぐう(2010年6月1日)。写真家のファウスト・ポダビーニ(Fausto Podavini)氏による連作の1枚で、2013年世界報道写真コンテスト「日常生活」部門で組写真の第1位を獲得した。現在71歳のミレラさんは、43年間連れ添った夫がアルツハイマー病を発症して以来、日々介護に明け暮れている。イタリア人老夫婦の生活を記録したポダビーニ氏は、老老介護の厳しい実相をありのままに表現した。ポダビーニ氏によると、「体を拭き始めた途端、鏡の曇りがみるみる消えた」という。「すべてはほんの一瞬のことだったが、編集段階になってようやく、このショットには私が意図していたすべてが込められていると実感した」。 Photograph courtesy Fausto Podavini via WPP 認知症を患う夫ル

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  • 老人の置き去り多発、インドの宗教大祭

    インド東部の都市コルカタ近郊に設営されたテントで、はぐれた家族を待つヒンズー教の巡礼者。 Photograph by Parth Sanyal, Reuters インド北部のイラーハーバードでは、ヒンズー教の大祭「マハ・クンブメーラ(Maha Kumbh Mela)」の12年に1度の開催年を迎えた。1月から3月にかけて、約8000万人の巡礼者が集まると予想されている。 人々は聖なるガンジス川で沐浴して現世の罪を洗い流す。多くのヒンズー教徒にとって、ガンジス川での沐浴は人生の目標。達成すれば喜びに満たされ、活力を取り戻す。しかし、この世界最大の宗教的祝祭には暗い側面もある。人混みを利用して、高齢の親族を置き去りにする事例が相次いでいるのだ。 見捨てられた高齢者を支援する人権活動家(匿名希望)は、「役立たずだと面倒を厭う人々が放置してしまう。マハ・クンブメーラの群衆に紛れれば、誰にも気づかれな

    老人の置き去り多発、インドの宗教大祭
  • 多種の鳥と共存共栄の農場、米で試み

    カリフォルニア州スタテン島で、エサを探して歩く2羽のカナダヅル。 Photograph courtesy Cynthia Tapley, The Nature Conservancy 1月末のよく晴れた日の午後、カリフォルニア州セントラルバレーのスタテン島に広がるトウモロコシ畑では、ガン類やカナダヅルなどの鳥たちの群れがエサ探しに余念がない。「こんなガンの群れを見かけたら、ショットガンを持ち出して銃声で威嚇する農場経営者がいても不思議ではない」と、スタテン島の3700ヘクタールに及ぶ農場で畜産業を営む「Conservation Farms and Ranches」社のブレント・タドマン(Brent Tadman)氏は話す。 しかし、スタテン島の鳥たちのエサ探しが脅かされることはない。サンフランシスコの北東約130キロに位置する同島の農地は、自然保護団体ザ・ネイチャー・コンサーバンシー(TN

    多種の鳥と共存共栄の農場、米で試み
  • 女性兵士の戦闘参加、各国の状況

    イスラエルとエジプトの国境付近で訓練中のイスラエル国防軍(IDF)カラカル大隊の女性兵士。 Photograph by Uriel Sinai, Getty Images アメリカ国防総省は、これまで男性のみだった歩兵隊や砲兵隊などに女性兵士を受け入れるべく詳細を策定中だが、その参考として、既に女性の戦闘行為を許可している他国の軍隊を熱心に研究している。 国防総省高官の話によると、参考にしているのはオーストラリアやカナダなど、イラクやアフガニスタンでアメリカ軍と協力した国々の事例だという。中には、戦闘任務に「女性を組み込むプロセスに3~10年」を費やした国もあると高官は述べている。 現在、世界で10カ国あまりが女性兵士の「白兵戦任務」への参加を許可している。イギリス国防省(MOD)が2010年の研究で定義しているところによると、白兵戦任務とは「地上で敵と交戦し(中略)敵の攻撃にさらされ、高

    女性兵士の戦闘参加、各国の状況
  • ナイフで自衛、タンザニアのアルビノ

    タンザニア北西部、キボンド県のネンゴ(Nengo)村に暮らすマジャブ・ボアズ(Maajabu Boaz)君(20歳)。「マジャブ」はスワヒリ語で「驚異」や「奇跡」を意味する。ネンゴ村ではアルビノ(先天性白皮症)の子どもを狙う襲撃事件が頻発しているが、保護施設への入所を拒否して村に残った。外出時には自衛の短刀を携行しており、その噂が広まったおかげで被害を免れているという。 国際赤十字赤新月社連盟によると、東アフリカのアルビノ患者は、少なくとも1万人が移住を余儀なくされたり、人目を避けた生活を送っている。殺されたアルビノの骨や体毛、皮膚から薬などを調合する呪術医は、数万ドル(数百万円)もの収入を得ているという。

    ナイフで自衛、タンザニアのアルビノ
  • 安息の地、タンザニアのアルビノ

    タンザニア西部、カバンガ保護センター(Kabanga Protectorate Center)で保護されている、アルビノ(先天性白皮症)の子どもたち。ベッドは定員を大幅に超過しているが、子どもたちにとって蚊帳の下は数少ない安息の場だ。全寮制の学校と様相を異にするのは、アルビノの身体を狙うギャングや呪術医を防ぐ高く厚い塀。あくまで緊急避難の施設で、今後の見通しは誰にもわからない。

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  • レイプの標的に、タンザニアのアルビノ

    タンザニア西部、カバンガ保護センター(Kabanga Protectorate Center)の敷地内を元気いっぱいに走るフェリスタ・ダウディ(Ferista Daudi)ちゃん(写真右)。まだ2歳の幼子が生まれ故郷の村を離れることになったのは、アルビノ(先天性白皮症)の身体の一部を求める呪術医によって姉が殺されたためだ。 タンザニアのアルビノたちが直面するもう1つの恐怖は、性的暴行だ。主に北西部の人里離れた地域などで、アルビノの少女が男に襲われる事件が頻発している。アルビノとの性交渉で、エイズ(後天性免疫不全症候群)が治るというデマが信じられているのだ。犠牲者の正確な数は不明。社会的な烙印(らくいん)を押されるため、被害を名乗り出る犠牲者は少ない。2007年の推計によると、同国ではおよそ140万人がエイズを発症するHIVに感染している。

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  • 家族の崩壊、タンザニアのアルビノ

    カバンガ保護センター(Kabanga Protectorate Center)で、ライトネス・フィルバート(Lightness Philbert)さんが愛おしそうに背負う生後3カ月のジェシカちゃん。村人たちの脅しを受け、ジェシカちゃんは母親のヘレン・セカリマ(Helen Sekalima)さんと避難してきた。兄も自宅で暴力を受け、保護センターで暮らしている。父親は息子を守ろうとして負傷し、片腕が不自由になった。タンザニアではアルビノの殺害や襲撃が横行し、多くの家族が崩壊を余儀なくされている。センターに保護された子どもの中には、フィルバートさんのように二度と両親に会えなくなったケースも珍しくない。また、白人男性と関係を持ったと疑う夫に捨てられ、母親が1人で育てる場合もある。思いあまって一部の患者は一番の理解者、つまり同じアルビノとの結婚を選ぶ。しかし、両親が共に抱えた遺伝子疾患は、生まれてく

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  • 進まない対策、タンザニアのアルビノ

    娘のジェシカちゃんに面会するため、カバンガ保護センター(Kabanga Protectorate Center)を訪れたヘレン・セカリマ(Helen Sekalima)さん。子ども9人のうち3人がアルビノ(先天性白皮症)という。「村の人々からは、この子たちは普通ではない、まるで悪魔のようだと言われます」。タンザニア政府は、アルビノ患者の殺害を止めようと公衆の啓発に取り組んでいるが、闇市場ではいまだに身体が高値で売買されているのが現状だ。“アルビノ狩り”はブルンジ、ケニア、スワジランドなど、アフリカ各地にも広がっている。 Photograph by Jacquelyn Martin, AP 娘のジェシカちゃんに面会するため、カバンガ保護センター(Kabanga Protectorate Center)を訪れたヘレン・セカリマ(Helen Sekalima)さん。子ども9人のうち3人がアルビノ

    進まない対策、タンザニアのアルビノ
  • タンザニアで続くアルビノ狩り

    タンザニア西部のカバンガ保護センター(Kabanga Protectorate Center)で、17歳のエンジェル(Angel)さん(左)は、母親のベスティダ・サルバトリー(Bestida Salvatory)さんと再会を果たした。父親違いの弟エゼキエル(Ezekiel)君も一緒だ。アルビノに加えて皮膚癌を患うエンジェルさんは4年前、実の父親が率いるグループに襲撃され、実家から避難を余儀なくされた。 Photograph by Jacquelyn Martin, AP タンザニアでは、皮膚や毛髪、目のメラニン色素に欠乏をきたす遺伝子疾患、すなわちアルビノ(先天性白皮症)として生まれることは、死刑宣告を意味すると言っても過言ではない。2006年以降、71人が命を奪われ、29人が襲撃されている。1万7000人とされる同国のアルビノの多くは政府の保護下にあるが、ほとんどは緊急避難の施設であり、

    タンザニアで続くアルビノ狩り
  • 空爆の犠牲者、ベスト報道写真2013

    イスラエル軍のミサイル攻撃の犠牲となり、葬儀に運ばれるパレスチナ人の2人の子ども(2012年11月20日撮影)。ガザ地区の民家を狙った空爆で父親も死亡、担架に載せられた遺体が我が子の後に続く。重傷の母親は一命を取り留めた。スウェーデンのフォトジャーナリスト、ポール・ハンセン(Paul Hansen)氏が撮影し、2月15日、「2013年世界報道写真コンテスト」の大賞とスポットニュース(速報)部門第1位に選出されている。 Photograph courtesy Paul Hansen via WPP イスラエル軍のミサイル攻撃の犠牲となり、葬儀に運ばれるパレスチナ人の2人の子ども(2012年11月20日撮影)。ガザ地区の民家を狙った空爆で父親も死亡、担架に載せられた遺体が我が子の後に続く。重傷の母親は一命を取り留めた。スウェーデンのフォトジャーナリスト、ポール・ハンセン(Paul Hansen

    空爆の犠牲者、ベスト報道写真2013
  • ヒクイドリ、ベスト報道写真2013

    オーストラリア北部、ダチョウ目のヒクイドリが、クァンドンの木から落ちた青い果実を採餌する(2012年11月16日撮影)。米ナショナル ジオグラフィック誌の寄稿写真家、クリスチャン・ツィーグラー(Christian Ziegler)氏が、ついばむ瞬間のクローズアップを見事にとらえ、2013年世界報道写真コンテスト「自然部門」で単写真の第1位を獲得した。ヒクイドリは背が高く飛べない鳥だが、移動しながら排泄する種子が広範囲に散布され、熱帯雨林の生態系に極めて重要な役割を果たしている。しかし、生息環境の減少などにより絶滅が危惧されているという。 Photograph by Christian Ziegler, National Geographic オーストラリア北部、ダチョウ目のヒクイドリが、クァンドンの木から落ちた青い果実を採餌する(2012年11月16日撮影)。米ナショナル ジオグラフィック

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  • 馬肉騒動、問題の根はいまだ見えず

    フランスの歴史ある街ニースの馬肉屋で馬肉を選ぶ店員。 Photograph by Eric Gaillard, Reuters 先週ネスレ(Nestle)社が一部のパスタ製品をスペイン、イタリア、フランスの店舗から回収すると発表したことで、ヨーロッパの馬肉混入問題はさらなる拡大の様相を呈している。 この発表により、世界有数の品会社でスイスに拠を置くネスレ社は、“牛肉”と表示した製品から馬肉を検出した企業の一覧に名を連ねることになった。企業が検出した馬肉の量は、DNAの痕跡程度から使用した肉の100%までとさまざまだ。 ネスレは声明の中で「品の安全性に問題はない」が、「誤表示があったことは、消費者が当社に求める非常に高い水準を当該製品が満たしていないことを意味する」と述べている。 実際、先ごろお伝えした馬肉混入問題の記事にも、偽装こそ消費者に対してなされた最も悪質な犯罪行為だというコメ

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  • 牛レース、ベスト報道写真2013

    インドネシア、西スマトラ州で行われる、村対抗の伝統競技「パチュ・ジャウィ(Pacu Jawi)」(2012年2月12日撮影)。フォトグラファー、ウェイ・ソン・チェン(Wei Seng Chen)氏が撮影、2013年世界報道写真コンテスト「スポーツ」部門で単写真の第1位を獲得した。収穫を祝う行事の1つで、2頭のウシに木製のそりを取り付け、尻尾をつかみながら泥の水田を駆け抜ける。審査員のビル・フレークス(Bill Frakes)氏は、「目の前に迫ってくる勢いがある。シャープで躍動的だ。私もスポーツを撮り続けてきたが、このような場面をモノにできたらとても誇りに感じるだろうね」と高く評価している。 Photograph courtesy Wei Seng Chen via WPP インドネシア、西スマトラ州で行われる、村対抗の伝統競技「パチュ・ジャウィ(Pacu Jawi)」(2012年2月12日

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  • シリア紛争、ベスト報道写真2013

    内戦下のシリア北西部、イドリブ(Idlib)で、自宅が政府軍の砲撃を受け、重傷を負った女性が涙を抑えきれない(2012年3月10日撮影)。夫と2人の子どもは死亡した。2013年世界報道写真コンテスト「一般」部門で単写真の第1位を受賞したのは、AP通信のカメラマン、ロドリゴ・アブド(Rodrigo Abd)氏。他の受賞作品と異なり、ピントが合っているのは被写体のわずかな部分でしかない。審査員のビル・フレイク(Bill Frakes)氏は、「女性の手のボケが最初は気になった。でもそれは、涙を湛えた目に視線を導くためにある。この女性の想いをだれでも知りたくなるはずだ」。 Photograph courtesy Rodrigo Abd, Associated Press, via WPP 内戦下のシリア北西部、イドリブ(Idlib)で、自宅が政府軍の砲撃を受け、重傷を負った女性が涙を抑えきれない(

    シリア紛争、ベスト報道写真2013
  • 本を読む、ベスト報道写真2013

    ケニア、ナイロビのスラム近郊、約12ヘクタールのゴミ捨て場で、見つけた書物を雨に濡れながら読む女性(2012年4月3日)。アメリカ、カリフォルニア州を拠点に活動するフリーカメラマン、ミカ・アルバート(Micah Albert)氏が撮影し、2013年世界報道写真コンテスト「現代社会の問題」部門で単写真の第1位に輝いた。ゴミ拾いで生計を立てるこの女性は、「(読書は)毎日の中で唯一の楽しみ」と語ったという。 Photograph courtesy Micah Albert via WPP ケニア、ナイロビのスラム近郊、約12ヘクタールのゴミ捨て場で、見つけた書物を雨に濡れながら読む女性(2012年4月3日)。アメリカ、カリフォルニア州を拠点に活動するフリーカメラマン、ミカ・アルバート(Micah Albert)氏が撮影し、2013年世界報道写真コンテスト「現代社会の問題」部門で単写真の第1位に輝

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  • ツール・ド・フランス、不正の歴史

    ツール・ド・フランスにおける不正行為の長い歴史においても、ランス・アームストロングは際立っている。 Photograph by Spencer Platt, Getty Images ツール・ド・フランスには確かに不正の長い歴史がある。しかしアームストロングは、これまでとレベルが違う。 ツール・ド・フランスの元チャンピオンにして、同世代で最高のサイクリストなどと長年もてはやされてきた人物に、テレビ局の記者が尋ねた。サイクリストとしてのキャリアのなかで薬物を使ったことがありますか? 「使ったよ。必要なときには」 「頻度はどれくらい?」 「ほとんどいつもだね!」 これは、失墜した“7連覇王者”ランス・アームストロング(Lance Armstrong)がオプラ・ウィンフリー(Oprah Winfrey、著名な米テレビ司会者)に告白した記録ではない。1949年と1952年にツール・ド・フランスで優

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  • フロリダでニシキヘビ捕殺コンテスト

    フロリダ州で開催中の“ヘビ狩り”コンテスト「ニシキヘビ・チャレンジ2013」で、仕留めた獲物に得意顔の男性。 Photograph by Wilfredo Lee, AP アメリカ、フロリダ州で1月12日から「ニシキヘビ・チャレンジ2013(Python Challenge 2013)」という1カ月にわたるイベントが開催されている。哺乳動物を次々と補し、生態系を破壊する東南アジア原産の外来種、ビルマニシキヘビを退治した数などを競う“ヘビ狩り”コンテストである。 主催者はフロリダ州魚類野生生物保護委員会(FWCC:Florida Fish and Wildlife Conservation Commission)。参加者はエバーグレーズ国立公園の湿地帯に銃などを持って入り、2月10日の終了日まで賞金を争ってニシキヘビを追う。最も数をこなすと1500ドル(約13万円)、最大の個体には1000

    フロリダでニシキヘビ捕殺コンテスト
  • ドバイ・アイ、世界の巨大観覧車

    2月14日のGoogleのロゴ(Google Doodle)は、機械式観覧車の発明者ジョージ・フェリス生誕154周年と、バレンタインデーを記念した遊園地のデザインだった。これを機会に、世界の観覧車巡りにお誘いしよう。まずは中東の金融センター、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイだ。超高層ビル、ブルジュ・ハリファを始めスケールの大きさで注目を集めているが、世界最大の観覧車「ドバイ・アイ(Dubai Eye)」(イラスト)の建設も計画されている。ドバイ・アイの高さは210メートル。2月13日、ムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥーム首長が建設計画を承認した。総額16億ドル(約1500億円)の観光開発事業の目玉となり、世界的な景気後退後の新たな野心と不屈の象徴となるとドバイ当局は期待している。 Illustration courtesy Dubai Media Office 2月14日のG

    ドバイ・アイ、世界の巨大観覧車
  • ニューヨーク、世界の巨大観覧車

    アメリカ、ニューヨーク市に建設が予定されている高さ190メートルの観覧車、「ニューヨーク・ホイール(New York Wheel)」(完成予想図)。同市は2年間にわたり、世界最大の観覧車を目指し構想を練ってきたが、その座はアラブ首長国連邦(UAE)が今月発表した210メートルの「ドバイ・アイ(Dubai Eye)」に譲ることとなった。マイケル・ブルームバーグ市長は、同市のウォーターフロント、スタテン島の観光事業と小売業の活性化プランの一環として、建設に踏み切ったという。完成は2014年、営業開始は2015年を予定している。 Illustration courtesy Office of the Mayor of New York/AP アメリカ、ニューヨーク市に建設が予定されている高さ190メートルの観覧車、「ニューヨーク・ホイール(New York Wheel)」(完成予想図)。 同市は

    ニューヨーク、世界の巨大観覧車
  • 南昌之星、世界の巨大観覧車

    観覧車なら中国も負けていない。江西省の南昌市にそびえる南昌之星(なんしょうのほし)は、2006年の完成。当時の高さ160メートルは世界最大だった。現在は、シンガポール・フライヤー(高さ165メートル)に抜かれ第2位となっている。アジアでは1960~70年代に最初のブームが起こり、中国や日の中規模都市で家族連れや観光客向けに盛んに建設された。 Photograph from EyePress/AP 観覧車なら中国も負けていない。江西省の南昌市にそびえる南昌之星(なんしょうのほし)は、2006年の完成。当時の高さ160メートルは世界最大だった。現在は、シンガポール・フライヤー(高さ165メートル)に抜かれ第2位となっている。 アジアでは1960~70年代に最初のブームが起こり、中国や日の中規模都市で家族連れや観光客向けに盛んに建設された。 Photograph from EyePress/

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  • 中国「時来運転」、世界の巨大観覧車

    中国、江蘇省常州市で建設が進む、中心軸のないセンターレス観覧車「時来運転」(1月2日撮影)。リング自体は回転せずに、リングの外側に設けられたレール上を24台のゴンドラが移動するタイプ。センターレスとしては世界最大規模とされるが、最終的な高さは不明。斬新なデザインは、先進性とエコなイメージを象徴しているという。 Photograph by Wang Qiming, Imaginechina/AP 中国、江蘇省常州市で建設が進む、中心軸のないセンターレス観覧車「時来運転」(1月2日撮影)。リング自体は回転せずに、リングの外側に設けられたレール上を24台のゴンドラが移動するタイプ。センターレスとしては世界最大規模とされるが、最終的な高さは不明。斬新なデザインは、先進性とエコなイメージを象徴しているという。 Photograph by Wang Qiming, Imaginechina/AP

    中国「時来運転」、世界の巨大観覧車
  • シンガポール、世界の巨大観覧車

    盛大な花火で公式開業を祝う「シンガポール・フライヤー(Singapore Flyer)」(2008年4月15日)。高さ165メートルで現役世界一を誇る。2006年操業開始の中国、「南昌之星(なんしょうのほし)」を上回る新たなレコードホルダーとして、シンガポールのマリーナエリアに建設された。 Photograph by Wong Maye-E, AP 盛大な花火で公式開業を祝う「シンガポール・フライヤー(Singapore Flyer)」(2008年4月15日)。高さ165メートルで現役世界一を誇る。2006年操業開始の中国、「南昌之星(なんしょうのほし)」を上回る新たなレコードホルダーとして、シンガポールのマリーナエリアに建設された。 Photograph by Wong Maye-E, AP

    シンガポール、世界の巨大観覧車
  • NZ地震被害の建物跡に19世紀の品々

    ニュージーランドのクライストチャーチ、2011年2月22日の地震で被害を受け、解体された建物のあとから見つかった陶器人形の頭部。19世紀後半、中心部のホテル付近でゴミと共に捨てられたようだという。 Photograph courtesy Jessie Garland, Underground Overground Archaeology 2011年2月22日の12時51分(現地時間)、ニュージーランド南島はマグニチュード6.1の地震に襲われ、185人が死亡、数千人が負傷した。クライストチャーチ市中心部だけでも750棟以上の建物が修復不可能な損傷を受け、解体を余儀なくされている。 解体作業には考古学者も参加し、建物の写真撮影や、地下から発掘された物品の記録に取り組んだ。 2年間で発掘されたのは、ソーダ水のボトル、医薬品の容器、陶器のビール瓶、陶製パイプの破片など。ヨーロッパ人がクライストチャ

    NZ地震被害の建物跡に19世紀の品々
  • アメリカ大統領と生物標本(3)

    【T・ルーズベルトとヒョウ】年老いたオスのヒョウ(学名:Panthera pardus)の頭蓋骨。1900年代初頭、アフリカのケニア山付近に住む女性を襲ってエサにしていたと考えられている。退任直後の第26代大統領セオドア・ルーズベルトと博物学者エドマンド・ヘラ―の探検隊が1909年に仕留めたという。現在はスミソニアン研究所国立自然史博物館に眠っている。 Photograph courtesy Donald E. Hurlbert, Smithsonian Institution 【T・ルーズベルトとヒョウ】 年老いたオスのヒョウ(学名:Panthera pardus)の頭蓋骨。1900年代初頭、アフリカのケニア山付近に住む女性を襲ってエサにしていたと考えられている。 1909年、第26代大統領のセオドア・ルーズベルトは、職を退いたわずか3週間後にスミソニアン研究所国立自然史博物館と共同でア

    アメリカ大統領と生物標本(3)
  • アメリカ大統領と生物標本(4)

    【ジェファーソンとナマケモノ】古代の地上性ナマケモノ(学名:Megalonyx jeffersonii)の手の骨。アメリカ、ペンシルバニア州フィラデルフィアにある自然科学アカデミーの脊椎動物学者テッド・デシュラー(Ted Daeschler)氏によれば、この骨は18世紀にフランスの博物学者ビュフォンが『博物誌』で提唱した“新世界退化説”に反証する役割を果たしたという。 Photograph courtesy Academy of Natural Sciences of Drexel University 【ジェファーソンとナマケモノ】 アメリカ大統領の自然界への関心は、祖国への抑えがたいプライドに端を発することもある。 写真は古代の地上性ナマケモノ(学名:Megalonyx jeffersonii)の手の骨。アメリカ、ペンシルバニア州フィラデルフィアにある自然科学アカデミーの脊椎動物学者テ

    アメリカ大統領と生物標本(4)
  • アメリカ大統領と生物標本(5)

    【ニクソンと恐竜】古生物学者のポール・オルセン氏(左、1970年撮影)が、恐竜を追いかけるようになったのは1967年。友人のトニー・レッサ(右)少年によるロビー活動で、ニュージャージー州リビングストン付近一帯の公園化が実現された。「ニクソン大統領のスピーチライターを務めていたウィリアム・サファイア氏によれば、絶滅した恐竜が自分のイメージにそぐわないとして大統領は二の足を踏んだらしい」とオルセン氏。しかし最終的に2人は、ニクソンから大統領表彰を受けた。2人から感謝の気持ちとして贈られた足跡の複製は現在は、カリフォルニア州ヨーバ・リンダにあるリチャード・ニクソン大統領生誕地図書館に保管されている。ただし、現物の足跡の化石は行方不明だという。 Photograph by Bill Ray, Time Life Pictures/Getty Images 【ニクソンと恐竜】 古生物学者のポール・オ

    アメリカ大統領と生物標本(5)
  • コックニーがATMに進出、ロンドン

    イギリス、イーストロンドンのホワイトチャペルにあるATM(2009年8月撮影)。言語選択の中には、何とロンドン訛りのコックニーがある。 Photograph by Raphael G. Satter, AP ロンドンへ行くなら、ゴダイバ夫人とまだら模様のめんどりの違いは覚えておいた方がいい。 2012年、ロンドン五輪の夏にイーストロンドンで現金自動預け払い機(ATM)を利用した観光客は、コマーシャル・ストリート(Commercial Street)のATMを前にして頭が真っ白になったに違いない。画面をタップするとまず、英語かコックニー(ロンドン訛り)を選択するよう促される。間違ってコックニーを選ぶと、現金(cash)が欲しいのに、“すぐべられるソーセージとマッシュポテト”(fast sausage and mash)と表示される。金額はといえば、“ゴダイバ夫人”(Lady Godiva、

    コックニーがATMに進出、ロンドン
  • アメリカ大統領と生物標本(1)

    【クーリッジとコビトカバ】アメリカの有名なタイヤメーカー「ファイアストン」を創立したハーベイ・ファイアストンは1927年、動物好きだった第30代大統領カルビン・クーリッジにコビトカバを贈った。「ビリー」と名付けられたコビトカバは同年6月10日、クーリッジからスミソニアン国立動物園に寄贈されている。コビトカバは絶滅の危機に瀕しており、動物園での繁殖が試みられた。ビリーは合計24頭の父親となったが、1歳まで生き延びたのは12頭のみだったという。1955年10月10日に死んだビリーの頭蓋骨(写真)は同博物館で保管されている。 Photograph courtesy Brittany M. Hance, Smithsonian Institution 【クーリッジとコビトカバ】 アメリカの有名なタイヤメーカー「ファイアストン」を創立したハーベイ・ファイアストンは1927年、動物好きだった第30代大

    アメリカ大統領と生物標本(1)
  • アメリカ大統領と生物標本(2)

    【F・ルーズベルトと野鳥】第32代大統領のフランクリン・ルーズベルトは、シークレットサービスの警護を抜け出し、ニューヨーク州ダッチェス郡、ハイドパークの自宅周辺の森で野鳥を観察したという。野鳥への強い関心は、少年時代の趣味に端を発している。従兄が第26代大統領セオドア・ルーズベルトで、熱心なバードウオッチャーだった。11歳当時、その影響を受けたフランクリンは、自宅付近に生息する各種の鳥を収集し始める。父親の「1種あたりオス・メス1羽ずつ」という言いつけに従い、14歳までに収集、確認した野鳥は300種を超えたという。コレクションの一部は、フランクリン・ルーズベルト邸のキャビネットに展示されている(写真)。 Photograph courtesy Bill Urbin, National Park Service 【F・ルーズベルトと野鳥】 ウォーターゲート事件、ニューディール政策、第1合衆国

    アメリカ大統領と生物標本(2)
  • 最後の仕上げ、ラシュモア山の大統領像

    1927~41年にアメリカ、サウスダコタ州のラシュモア山に製作された大統領像。写真はワシントン大統領像の仕上げ作業にあたる彫刻家のガットスン・ボーグラム(Gutzon Borglum)氏ら。彫刻にあたっては、ボーグラム氏が作成したモデル像を元に眼窩の深さ、鼻の位置を決め、作業員は赤い塗料で印をつける。モデル像の1インチ(約2.5センチ)は石像の1フィート(=12インチ、約30センチ)に相当する。リンカーン大統領像の鼻孔下には今でも赤い塗料がかすかに残っているという。 Photograph from Rise Studio/National Geographic 1927~41年にアメリカ、サウスダコタ州のラシュモア山に製作された大統領像。写真はワシントン大統領像の仕上げ作業にあたる彫刻家のガットスン・ボーグラム(Gutzon Borglum)氏ら。 彫刻にあたっては、ボーグラム氏が作成した

    最後の仕上げ、ラシュモア山の大統領像
  • ダイナマイト、ラシュモア山の大統領像

    アメリカ、サウスダコタ州にあるラシュモア山の頂上で、雷管を装填する作業員。壁にかかっているのは、ワシントン大統領像の試作品だ。アメリカの化学企業、デュポンが発行する「DuPont Magazine」誌の1930年12月号では、ラシュモア山にある歴代アメリカ大統領4人の顔をかたどった巨大モニュメントの製作にあたって、同社の果たした役割が大々的に宣伝されている。「ワシントン大統領の顔の彫像は、縦およそ18メートル、横およそ14メートルで、数キロ先からでも肉眼で確認できる。製作にあたっては、1500立方メートルを超える量の花崗岩を破砕。この作業には、デュポン社特製の40%ゼラチンダイナマイト約2.7トンと6号電気雷管4万が使用された」。 Photograph from Rise Studio/National Geographic アメリカ、サウスダコタ州にあるラシュモア山の頂上で、雷管を装填

    ダイナマイト、ラシュモア山の大統領像
  • 動く作業場、ラシュモア山の大統領像

    1927年から1941年にかけアメリカ、サウスダコタ州のラシュモア山に作成された大統領像。山の上に置かれた建造物は、大半がウインチで動くようになっている。それぞれに5~6のウインチがつながり、作業員を上下に運ぶ。それぞれの“ウインチハウス”の中には、高さ1.5メートルの「顔」の模型が備えられており、作業員がそれぞれどこを彫っているのかイメージできるようになっていた。ラシュモア山を研究する歴史家エイミー・ブレイスウェル(Amy Bracewell)氏は、「一日中、花崗岩に顔を向けているだけでは、全体像を描くことはできなかっただろう」と話す。 Photograph by Edwin L. Wisherd, National Geographic 1927年から1941年にかけアメリカ、サウスダコタ州のラシュモア山に作成された大統領像。山の上に置かれた建造物は、大半がウインチで動くようになって

    動く作業場、ラシュモア山の大統領像
  • 危険な作業、ラシュモア山の大統領像

    アメリカ、サウスダコタ州のラシュモア山で、大統領像の彫刻作業に当たる作業員。製作に参加する際、特別な訓練は必要とされなかった。求められたのは、危険を恐れぬ度胸だ。ラシュモア山を研究する歴史家エイミー・ブレイスウェル(Amy Bracewell)氏は、「意欲のある男たちだけが雇われた」と話す。この作業が進められたのは、折しも世界大恐慌の真っただ中。当時仕事にあぶれていた地元の鉱山労働者や、牧場主、農場主などが作業員の多くを占めた。 Photograph from Rapid City Chamber of Commerce/National Geographic アメリカ、サウスダコタ州のラシュモア山で、大統領像の彫刻作業に当たる作業員。製作に参加する際、特別な訓練は必要とされなかった。求められたのは、危険を恐れぬ度胸だ。ラシュモア山を研究する歴史家エイミー・ブレイスウェル(Amy Brac

    危険な作業、ラシュモア山の大統領像
  • “大統領の日”とラシュモア山の彫像

    アメリカ、サウスダコタ州のラシュモア山で、ワシントン大統領像の彫刻作業にあたる作業員(1936年頃に撮影)。 Photograph from Rapid City Chamber of Commerce/National Geographic 今年の2月18日は、アメリカでは祝日だった。一般に「大統領の日(Presidents' Day)」と呼ばれるが、実は正確ではない。アメリカ連邦政府の規定によると、この祝日の正式名は「ワシントン誕生日(Washington's Birthday)」で、1885年からアメリカ全土で祝日になったという。 ただし、アメリカ国民の間では、初代大統領だけを祝う日とは思われておらず、1960年代にはほかの大統領も祝う対象となり、1980年代には「大統領の日」という呼び方が普及し、定着した。現在では、2月の第3月曜日がこの祝日になる。たしかにジョージ・ワシントン(1

    “大統領の日”とラシュモア山の彫像
  • 隕石は米の新兵器? ロシアンジョーク

    ロシア中部チェリャビンスク州で、隕石落下による衝撃波で壊れた窓を修理する地元住民(2月15日撮影)。 Photograph by Boris Kaulin, AP 2月15日朝、ロシア、ウラル山脈東麓の都市チェリャビンスクの空を、目がくらむほどまぶしい火の玉が猛スピードで横切った。そして、耳をつんざくような衝突音とともに、約80キロ西の湖に落下したと考えられている。衝撃波によって街中の建物の窓ガラスが吹き飛ばされ、1000人以上が負傷、そのうち3人が重症という。被害総額は10億ルーブル(約31億円)に上るとみられる。 チェリャビンスク市長はすぐさまラジオ出演し、混乱状態の住民たちが既に想像していた通りの発表を行った。街からそう遠くないどこかに隕石が落ちたという内容だ。ロシア科学アカデミーは、この隕石の重さは10トン、時速約5万4000キロで大気圏に突入したと推測している。 しかし、ロシア

    隕石は米の新兵器? ロシアンジョーク
  • メキシコシティ、渋滞緩和に成功

    メキシコシティの中心部を通行する路線バス。バス専用道路の増設が功を奏して渋滞の緩和に成功。同市は2013年度の「持続可能な交通賞」を見事獲得した。 Photograph courtesy Adam Wiseman 自転車、歩行者に優しい広場や歩道、新設されたバス路線、パーキングメーターなど自在な対策で、メキシコシティは世界最悪の渋滞都市から通勤天国へと華麗なる変身を遂げた。世界最大級の人口を抱えるメキシコの首都が1月15日、交通開発政策研究所(ITDP)の2013年度「持続可能な交通賞」を受賞した。 つい最近行われた2011年9月のIBMの調査報告で、メキシコシティは最も車通勤に不適な都市と評価された。交通渋滞、ストレス度、通勤時間などを基に苦痛レベルを指数化した結果、メキシコシティが北京、ナイロビなど世界19都市を抑えてワースト1位にランキング。中産階級の増加に伴い自動車を保有する人が増

    メキシコシティ、渋滞緩和に成功
  • いつ出るか、インフルエンザ新ワクチン

    米国疾病予防管理センターの試算では、今年のインフルエンザワクチンの有効率は62%だという。 Photograph by Sean D. Elliot, Associated Press インフルエンザの予防接種は、なぜ毎年受けなければならないのだろう? それはインフルエンザウイルスが不安定だから。アメリカ、ヴァンダービルト大学の予防医学委員会会長ウィリアム・シャフナー(William Schaffner)氏によると、はしかや水疱瘡など変異しないウイルスもあるが、インフルエンザウイルスは遺伝子変異の頻度が高い。他の株と結合し、新しい変異体も定期的に生まれるという。 変異が常態であるため、前年に感染や予防接種の経験があっても、免疫系は今年のウイルスを必ずしも脅威と認識しない。インフルエンザワクチンも変異に対応して毎年改良しなければならないが、どのように変異するのか事前の予測が難しい。 仮に予測

    いつ出るか、インフルエンザ新ワクチン
  • 乗組員の運命、南北戦争時代の砲艦

    蒸気機関のピストンと外輪の接続部品に、漁網が覆い被さっている。砲艦「USSハタラス」は約150年前に沈没したが、漁網はまだ数十年しか経っていないようだ。米国海洋大気庁(NOAA)の考古学者ジェームズ・デルガード(James Delgado)氏の研究によれば、砲撃を受けたハタラスは左舷に傾いて沈み始め、ホマー・ブレーク(Hommer Blake)艦長が降伏を決めたという。乗組員は負傷者も含めて敵船アラバマに移送、足枷で自由を奪われた。船上で反乱を企てないことを条件に、将校は帯剣や甲板での移動が許可された。ジャマイカで下船した捕虜たちは、自力でアメリカに帰還している。デルガード氏はハタラスの乗組員についてさらに調査を続けたいと話す。名簿を一般の人々にも確認してもらい、素性の解明につなげる計画という。「まさに考古学の醍醐味だ」と同氏は語っている。 Photograph by Jesse Canc

    乗組員の運命、南北戦争時代の砲艦
  • 高解像度で画像化、南北戦争時代の砲艦

    アメリカ南北戦争時代の砲艦「USSハタラス(USS Hatteras)」(上)。2013年1月11日、米国海洋大気庁(NOAA)が残骸の3D画像(下)を新たに公開し、かなりの部分まで詳細が明らかになった。ハタラスは150年前の1863年1月11日にメキシコ湾で沈没した。その後、2008年のハリケーン「アイク」をはじめとする猛烈な嵐によって、残骸を覆っていた砂が取り払われたという。水深17メートルに沈む船体は、高解像度ソナーによる位置の特定が可能になった。NOAAの国立海洋保護区局の考古学者で、海事遺産の責任者を務めるジェームズ・デルガード氏によると、画像の解像度はとても優れており、「ほとんど写真のようだった」という。 Illustration courtesy Becker Collection, Boston College; sonar image courtesy Teledyne

    高解像度で画像化、南北戦争時代の砲艦
  • 私掠船との戦い、南北戦争時代の砲艦

    150年前の1月11日、砲艦「USSハタラス」(手前)が、アメリカ連合国(南軍)の私掠船「アラバマ(CSS Alabama)」を追撃する光景を描いた絵画。アラバマは、ハタラスがテキサス州ガルベストンの港に築いた封鎖を突破しようとしていた。だが、ホーマー・ブレーク(Hommer Blake)艦長の指揮下で、ハタラスはこの“命を懸けた追撃”に完敗、砲撃で穴だらけの船体は海の底へと沈んだ。機関室には乗組員2人が残っていたという。考古学者のジェームズ・デルガード(James Delgado)氏は、記録によれば命を落とした2人はアイルランドからの移民だったと説明する。市民権を得るため、あるいは厳しい経済状況から逃れるために海軍に入隊したのではないかと、デルガード氏は推測している。「彼らは任務に全力を尽くした。炎と蒸気が充満した機関室で持ち場を離れなかったのだ」。 Illustration court

    私掠船との戦い、南北戦争時代の砲艦
  • 外輪の損傷、南北戦争時代の砲艦

    アメリカ南北戦争時代の砲艦「USSハタラス」の外輪(右舷側)。ソナー分析から、この外輪の1つと連結されているシャフトに歪みがあることもわかっている。米国海洋大気庁(NOAA)によると、船体が転覆した際に損傷したという。「艦長と何名かの部下は、沈みかけた艦内に留まって事態の収拾に努め続けた」と、NOAAのジェームズ・デルガード(James Delgado)氏は語った。 Photograph by Jesse Cancelmo アメリカ南北戦争時代の砲艦「USSハタラス」の外輪(右舷側)。ソナー分析から、この外輪の1つと連結されているシャフトに歪みがあることもわかっている。米国海洋大気庁(NOAA)によると、船体が転覆した際に損傷したという。「艦長と何名かの部下は、沈みかけた艦内に留まって事態の収拾に努め続けた」と、NOAAのジェームズ・デルガード(James Delgado)氏は語った。 P

    外輪の損傷、南北戦争時代の砲艦
  • シリンダー、南北戦争時代の砲艦

    テキサス州ガルベストン沖に眠る、砲艦「USSハタラス」の蒸気機関のシリンダー(ソナー画像)。海底に埋もれていたが、ハリケーンなどで砂が取り除かれ姿を現した。米国海洋大気庁(NOAA)のジェームズ・デルガード(James Delgado)氏によれば、デラウェア州ウィルミントンで1861年9月に竣工、当初は「セントメアリー」という民間の外輪船だった。リンカーン大統領は同年4月、南部に対する海上封鎖を宣言していたが、海軍には十分な艦船が揃っていなかったという。早急な増強策に迫られていた海軍は、すぐにセントメアリーを購入して砲艦に改造、「ハタラス」と改名し、フロリダでの封鎖任務に投入した。 Sonar image courtesy Teledyne BlueView and James Glaeser, Northwest Hydro テキサス州ガルベストン沖に眠る、砲艦「USSハタラス」の蒸気機

    シリンダー、南北戦争時代の砲艦
  • 勇敢なボーイ、南北戦争時代の砲艦

    俯瞰で見た砲艦「USSハタラス」。上部が外輪で、下の蒸気機関のシリンダーに繋がっている。海底から船の一部が新たに見つかったときと同じように、米国海洋大気庁(NOAA)のジェームズ・デルガード氏は今回のプロジェクトを機に、沈没した砲艦の乗組員にかかわる資料を探した。艦長によれば、最も勇敢だったのは任務を超えた働きをした2人のボーイだとデルガード氏は話す。弾薬庫に火の手が近づいていることに気付いた1人は、それを阻止しながら、甲板の乗組員に弾薬を渡した。もう1人はライフルを手に取り、私掠船アラバマ(CSS Alabama)に向けて発砲を続けたという。 Sonar image courtesy Teledyne BlueView and James Glaeser, Northwest Hydro 俯瞰で見た砲艦「USSハタラス」。上部が外輪で、下の蒸気機関のシリンダーに繋がっている。 海底から船

    勇敢なボーイ、南北戦争時代の砲艦
  • 雪合戦、米猛吹雪の余波

    こうなったら雪合戦だ。大人も子どもも関係ない。マサチューセッツ州、サマービルでダン・スクワイア(Dan Squire)氏が撮影。「熱いココアを飲んだり、雪だるまを作ったり。そしてもちろん雪合戦もね。猛吹雪「ネモ」の後は、みんな笑顔だった」と彼は語る。 Photograph by Dan Squire, Your Shot こうなったら雪合戦だ。大人も子どもも関係ない。マサチューセッツ州、サマービルでダン・スクワイア(Dan Squire)氏が撮影。「熱いココアを飲んだり、雪だるまを作ったり。そしてもちろん雪合戦もね。猛吹雪「ネモ」の後は、みんな笑顔だった」と彼は語る。 Photograph by Dan Squire, Your Shot

    雪合戦、米猛吹雪の余波
  • スノーボーダー、米猛吹雪の余波

    アメリカ、マサチューセッツ州ボストンのショッピングセンター裏手が、“特設“スキー場に早変わり。撮影者のスコットランド・ウィリス(Scotland Willis)氏によると、この男性が予定していたスキー旅行は猛吹雪のためキャンセルになったという。 Photograph by Scotland Willis, Your Shot アメリカ、マサチューセッツ州ボストンのショッピングセンター裏手が、“特設“スキー場に早変わり。撮影者のスコットランド・ウィリス(Scotland Willis)氏によると、この男性が予定していたスキー旅行は猛吹雪のためキャンセルになったという。 Photograph by Scotland Willis, Your Shot

    スノーボーダー、米猛吹雪の余波
  • 格好のスロープ、米猛吹雪の余波

    猛吹雪も、一夜明ければ積もった雪でそり遊びだ。アメリカ、コネティカット州の光景を撮影したのはケリー・プルード(Kelly Plourde)氏。 Photograph by Kelly Pourde, My Shot 猛吹雪も、一夜明ければ積もった雪でそり遊びだ。アメリカ、コネティカット州の光景を撮影したのはケリー・プルード(Kelly Plourde)氏。 Photograph by Kelly Pourde, My Shot

    格好のスロープ、米猛吹雪の余波
  • オバマ政権の今後のエネルギー政策

    アメリカ、ニューメキシコ州マルジャマー(Maljamar)のガス・石油生産地で講演する、バラク・オバマ大統領(2012年3月21日撮影)。今年の一般教書演説では、気候変動対策の道筋を立てられるかどうかが注目された。 Photograph by Ross D. Franklin, AP バラク・オバマ米大統領は先月に行われた2期目の就任演説の際に、「われわれは気候変動の脅威に対処していく。それができなければ子どもたちや将来の世代を裏切ることになると誰もがわかっている」と述べた。その言葉が真意だとしたら、大統領は壮大な地球温暖化対策を練っているのかもしれない。気候だけではなく、エネルギー技術、新産業、そしてさらに広い意味では、経済成長も含めて、“包括的な”対策が重要だと彼は話している。 アメリカだけでなく、全世界で化石燃料の排出ガスを削減するための取り組みが行き詰まっている。大統領はこの状態を

    オバマ政権の今後のエネルギー政策
  • 聖なる沐浴、ヒンズーのクンブメーラ

    インド北部の都市イラーハーバードのサンガム(Sangam)河岸で、ヒンズー教の祭典「クンブメーラ(Kumbh Mela)」の沐浴を行うヒンズー教徒(2月10日)。世界最大の宗教行事クンブメーラはこの日、ピークを迎えた。ヤムナー、ガンジス、伝説上のサラスヴァティーという3つの川が合流する聖地イラーハーバードでは期間中、聖人や何千万もの巡礼者が俗世の罪を洗い流すためにガンジス川で沐浴し、水の中で祈りを捧げる。 Photograph by Roberto Schmidt, AFP/Getty Images インド北部の都市イラーハーバードのサンガム(Sangam)河岸で、ヒンズー教の祭典「クンブメーラ(Kumbh Mela)」の沐浴を行うヒンズー教徒(2月10日)。世界最大の宗教行事クンブメーラはこの日、ピークを迎えた。ヤムナー、ガンジス、伝説上のサラスヴァティーという3つの川が合流する聖地イラ

    聖なる沐浴、ヒンズーのクンブメーラ
  • 新人サドゥー、ヒンズーのクンブメーラ

    ガンジス河畔で、ヒンズー教のサドゥー(苦行僧)の承認式に臨む人々。インド北部のイラーハーバードで開かれているヒンズー教の祭典「クンブメーラ(Kumbh Mela)」の一幕だ。3年ごとに4つの聖地で順繰りに開催され、イラーハーバードの年が最も神聖で、世界最大規模の宗教行事となる。 Photograph by Sheeraz Rizvi, Hindustan Times/Getty Images ガンジス河畔で、ヒンズー教のサドゥー(苦行僧)の承認式に臨む人々。インド北部のイラーハーバードで開かれているヒンズー教の祭典「クンブメーラ(Kumbh Mela)」の一幕だ。3年ごとに4つの聖地で順繰りに開催され、イラーハーバードの年が最も神聖で、世界最大規模の宗教行事となる。 Photograph by Sheeraz Rizvi, Hindustan Times/Getty Images

    新人サドゥー、ヒンズーのクンブメーラ
  • 火の儀式、ヒンズーのクンブメーラ

    ガンジスの川辺で、ヒンズー教の司祭たちが行うアールティの儀式。クンブメーラが始まったインド北部、イラーハーバードで1月15日に撮影。今年の祭典は55日間にわたって行われ、1億人以上の巡礼者が参加すると見込まれている。 Photograph by Daniel Berehulak, Getty Images ガンジスの川辺で、ヒンズー教の司祭たちが行うアールティの儀式。クンブメーラが始まったインド北部、イラーハーバードで1月15日に撮影。今年の祭典は55日間にわたって行われ、1億人以上の巡礼者が参加すると見込まれている。 Photograph by Daniel Berehulak, Getty Images

    火の儀式、ヒンズーのクンブメーラ
  • 川岸のサドゥー、ヒンズーのクンブメーラ

    ヒンズー教の祭典「クンブメーラ(Kumbh Mela)」で、瞑想にふけるサドゥー(苦行僧)。ガンジスの川辺、イラーハーバードで1月26日撮影。 Photograph by Baciu Cristian, Demotix/Corbis ヒンズー教の祭典「クンブメーラ(Kumbh Mela)」で、瞑想にふけるサドゥー(苦行僧)。ガンジスの川辺、イラーハーバードで1月26日撮影。 Photograph by Baciu Cristian, Demotix/Corbis

    川岸のサドゥー、ヒンズーのクンブメーラ
  • 橋を渡る信者、ヒンズーのクンブメーラ

    幾重にも架けられた舟橋を渡るヒンズー教の信者たち。この後、ガンジス川、ヤムナー川、伝説上のサラスヴァティー川が合流する、サンガム(Sangam)河岸で身を清める。行列を率いるのは、寺院の司祭と灰を全身に塗った裸のサドゥー(苦行僧)たちだ。 Photograph by Manish Swarup, AP 幾重にも架けられた舟橋を渡るヒンズー教の信者たち。この後、ガンジス川、ヤムナー川、伝説上のサラスヴァティー川が合流する、サンガム(Sangam)河岸で身を清める。行列を率いるのは、寺院の司祭と灰を全身に塗った裸のサドゥー(苦行僧)たちだ。 Photograph by Manish Swarup, AP

    橋を渡る信者、ヒンズーのクンブメーラ
  • 馬肉偽装問題、食文化を考える契機に

    オランダの精肉店の店先。さまざまな部位や形状の馬肉が売られている。 Photograph by Bram Budel, Hollandse Hoogte/Redux ヨーロッパは今、馬肉の話題で持ち切りのようだ。先頃、牛肉100%と表示された加工品の一部に、さまざまな比率で馬肉が混入していることが発覚して、一大スキャンダルとなっている。馬肉混入の疑いのある品には、バーガーキング社のハンバーガーや、市販の冷凍ラザニアも含まれている。 中には、牛肉として売られているのに、中身は100%馬肉だった事例まである。 ベジタリアンにとっても肉系の人々にも、このスキャンダルはショッキングだったようだ。バーガーキング社は渦中の肉加工業者との取引を停止したと報じられた。冷凍品のフィンダス社も、イギリスとフランスで冷凍ラザニアを小売店から回収した。シェパーズパイやムサカも同様に姿を消した。 豚、鶏、

    馬肉偽装問題、食文化を考える契機に
  • ローマ教皇、退位後の住まいは?

    ベネディクト16世の教皇退位後の住居、マーテル・エクレジエ修道院(写真右)。 Photograph by Alessandra Tarantino, AP 2月11日、高齢を理由にローマ教皇ベネディクト16世が2月28日での退位を表明した。突然の発表に驚きの声も多かったが、バチカンの動向に詳しい人は、数カ月前から何らかの気配を感じていた可能性がある。2012年11月、バチカン庭園内にあるマーテル・エクレジエ(教会の母)修道院で生活していた修道女らが、残り2年の滞在期間を繰り上げて退去していたからだ。同修道院はその後、改装工事で閉鎖が続いている。 退位の発表後に行われた記者会見で、ローマ教皇庁広報部の報道官フェデリコ・ロンバルディ神父は、マーテル・エクレジエ修道院がベネディクト16世の住居になると明らかにした。 工事が終わるまでは、バチカン宮殿と教皇の別荘で暮らす予定という。ちなみに別荘は、

    ローマ教皇、退位後の住まいは?
  • 縄跳びをする少女、1月ベストフォト

    パキスタンの首都、イスラマバード郊外のがれきに囲まれた一帯で、子どもたちは一筋の小さな光を見出した(1月28日撮影)。同国では、北西部にあるアフガニスタン国境地帯で戦闘が続いており、多くの家族が避難を余儀なくされている。 Photograph by Muhammed Muheisen, AP パキスタンの首都、イスラマバード郊外のがれきに囲まれた一帯で、子どもたちは一筋の小さな光を見出した(1月28日撮影)。同国では、北西部にあるアフガニスタン国境地帯で戦闘が続いており、多くの家族が避難を余儀なくされている。◆ベストフォト選考理由 「光加減と色合いが、少女の晴れやかな笑顔とくすんだ背景という対比を生み出している。一番の決め手は、何と言っても彼女の表情だ」、ジャンナ・ドチュカル(Janna Dotschkal)氏(フォト共同編集者)。 「あなたが笑顔になれば、みんなも笑顔になる。少女はそんな

    縄跳びをする少女、1月ベストフォト
  • インドのレンガ工場、1月ベストフォト

    インド、西ベンガル州のレンガ工場で働く女性。米ナショナル ジオグラフィックのオンライン・フォトコミュニティ「Your Shot」へ1月24日に投稿された。埃まみれの苛酷な作業に従事するのは、出稼ぎ労働者やその子どもが多い。 Photograph by Souvik Rodricks, Your Shot インド、西ベンガル州のレンガ工場で働く女性。米ナショナル ジオグラフィックのオンライン・フォトコミュニティ「Your Shot」へ1月24日に投稿された。埃まみれの苛酷な作業に従事するのは、出稼ぎ労働者やその子どもが多い。◆ベストフォト選考理由 「柔らかな朝の光とは対照的な過酷な仕事だ。混沌とした厳しい現場のはずだが、埃が漂うモノトーンの画面からはある種の暖かみを感じる。巧みにレンガのバランスを取る彼女の落ち着いた姿のおかげだろう」、サラ・ポルガー(Sarah Polger)氏(フォト編集

    インドのレンガ工場、1月ベストフォト
  • 増加する脳震盪、対策を進めるNFL

    アメリカン・フットボールのハイテクな防具の一例。エアーで調整するヘルメットとショルダーパッド。 Photograph by Mark Thiessen, National Geographic 2月3日に開催されたアメリカン・フットボールの第47回スーパーボウルは、脳震盪(のうしんとう)との闘いという側面も持っていた。今回からメディアボックスの中に、チームドクターやトレーナーが専用で使用するカメラが複数台設置され、選手の動きに脳震盪を疑われる異変が生じた場合に、すぐに気づけるようになっていた。 カメラの設置は「以前なら論争になっただろう。相手チームが自分たちのプレーを監視しているのではないかと疑われたかもしれない。でも今では、この映像は純粋に安全のためのもの(と理解されている)」と、アメリカ・ナショナル・フットボールリーグ(NFL)の頭部・首・脊髄医療委員会の共同チェアマンであるリチャード

    増加する脳震盪、対策を進めるNFL
  • 義足のダンサー、1月ベストフォト

    2010年1月にハイチの首都、ポルトー・プランス周辺を襲ったマグニチュード7の大地震は、同国に壊滅的な被害をもたらし、現在も復興作業が進行中だ。犠牲者は膨大な数に上っており、プロのダンサー、ジョルジュ・エグザンタス(Georges Exantus)さん(写真)もその1人だ。報道によると、エグザンタスさんは倒壊した自室に3日間閉じ込められた。友人たちによって掘り起こされたものの、右足の膝下切断を余儀なくされた。今では義足の助けを借りて、舞台に復帰している。 Photograph by Dieu Nalio Chery, AP 2010年1月にハイチの首都、ポルトー・プランス周辺を襲ったマグニチュード7の大地震は、同国に壊滅的な被害をもたらし、現在も復興作業が進行中だ。犠牲者は膨大な数に上っており、プロのダンサー、ジョルジュ・エグザンタス(Georges Exantus)さん(写真)もその1人

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  • 古代メキシコの神殿で大量の頭蓋骨発見

    メキシコの首都、メキシコシティ近郊の神殿で発掘された大量の頭蓋骨。 Photograph by Christopher T. Morehart メキシコ中央部にある古代神殿から、150以上の頭蓋骨が発掘された。先史時代のメソアメリカで生贄になったと推定されており、一度に出土した数としては最大規模となる。 頭蓋骨は、砕けた岩を積み上げた小山の下に埋められており、多くは東を向くように配置されている。この地域の土壌は現在は完全に乾燥しているが、かつては浅い湖が大きく広がっており、小山は湖の中の人工島の上に築かれていた。 発掘チームのリーダーで、アメリカにあるジョージア州立大学の考古学者クリストファー・モアハート(Christopher Morehart)氏は、「現場は人里離れた何もないところで、埋葬所だけわずかに地平線から隆起していた」と話す。大量の生贄が見つかる場所といえば、宗教の聖地中心部に

    古代メキシコの神殿で大量の頭蓋骨発見
  • カイロ騒乱再び、1月ベストフォト

    エジプト首都カイロのタハリール広場付近で発生した、反政府デモ隊と機動隊の衝突(1月27日撮影)。2年前の「アラブの春」のシンボルとなった広場を始め、全国規模で民主化闘争が再燃している。抗議の矛先は、権力を掌握したイスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」に向かっている。ボイス・オブ・アメリカによれば、北東部のポートサイドなどエジプト各地でも、「革命を盗むな」と訴える声が目立つ。 Photograph by Virginie Nguyen Hoang, AP エジプト首都カイロのタハリール広場付近で発生した、反政府デモ隊と機動隊の衝突(1月27日撮影)。2年前の「アラブの春」のシンボルとなった広場を始め、全国規模で民主化闘争が再燃している。 抗議の矛先は、権力を掌握したイスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」に向かっている。ボイス・オブ・アメリカによれば、北東部のポートサイドなどエジプト各地でも、

    カイロ騒乱再び、1月ベストフォト
  • 飛び出す前に、1月ベストフォト

    ドイツで開催されたノルディック複合のワールドカップで、ジャンプ前にウォーミングアップする選手(1月26日撮影)。ノルディック複合はスキージャンプとクロスカントリースキーを組み合わせた競技。グンダーセン方式で実施する場合、まずジャンプを飛び、得点をタイムに換算。クロスカントリーはその時間差で上位者からスタートし、ゴール到着順が競技の順位となる。 Photograph by Jens Meyer, AP ドイツで開催されたノルディック複合のワールドカップで、ジャンプ前にウォーミングアップする選手(1月26日撮影)。 ノルディック複合はスキージャンプとクロスカントリースキーを組み合わせた競技。グンダーセン方式で実施する場合、まずジャンプを飛び、得点をタイムに換算。クロスカントリーはその時間差で上位者からスタートし、ゴール到着順が競技の順位となる。 ◆ベストフォト選考理由 「純粋に写真としての観点

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  • 女優の赤い衣装、1月ベストフォト

    インドネシア、東ジャワ地方に伝わる男性だけの大衆芸能、「ルドルック」に出演する“女優”が衣装をチェックする。1月16日、米ナショナル ジオグラフィックのフォトコミュニティ・サイト、「My Shot」に投稿された作品だ。ルドルックには、庶民の日常生活を題材とした演目が多く、音楽や踊り、喜劇的要素を取り入れる場合もある。 Photograph by Ali Usman Wahyu Hidayat, My Shot インドネシア、東ジャワ地方に伝わる男性だけの大衆芸能、「ルドルック」に出演する“女優”が衣装をチェックする。1月16日、米ナショナル ジオグラフィックのフォトコミュニティ・サイト、「My Shot」に投稿された作品だ。ルドルックには、庶民の日常生活を題材とした演目が多く、音楽や踊り、喜劇的要素を取り入れる場合もある。◆ベストフォト選考理由 「際立った色、舞台の背景幕、衣装、人物の独特

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  • 帰郷の列車、1月ベストフォト

    Joy in a mud-brick alley and a contemplative hummingbird are among our photo editors' picks of the most interesting news pictures from January. 帰路につくイスラム教徒を乗せた超満員の列車が、人の波をかき分け進む。1月20日、バングラデシュの首都ダッカで撮影。ダッカ近郊のチュラグ川(Turag River)では毎年3日間、大規模なイスラム教徒の大会「ビッショ・イジュテマ(Biswa Ijtema)」が行われ、世界中から数百万人が集う。信者たちは最終日の礼拝「アキリ・ムナジャット(Akheri Munajat)」で最後の祈りを捧げた後、故郷に帰る。◆ベストフォト選考理由 「珍しいアングルと構図で、お馴染みの光景を新鮮な視点からとらえた作品。あふれんばか

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  • リチャード3世の遺骨発見、熱狂の理由

    リチャード3世の遺骨から復元した樹脂製の模型。500年前のイングランド王の顔が明らかになった。 Photograph by Justin Tallis, AFP/Getty Images イングランド王リチャード3世の在位期間はわずか2年と47日で、世を去ってからも500年以上が経過している。ところが突然、TwitterやFacebookで話題の人物となった。 2月4日に発表されたリチャード3世の遺骨特定は、考古学が築き上げた一里塚となった。しかし、ネット上のフィーバー振りには驚くほかない。考えられる理由をいくつか挙げてみよう。 ◆シェイクスピアの創作 甥を手にかけて王座を奪うなど、劇作家シェイクスピアはイギリス文学でも極めて残忍な人物として描いた。芝居は不滅の名台詞で幕を開ける。「いまや不満の冬は去り、ヨーク家の太陽によって輝かしい夏が訪れた」。最期を迎えることになる戦場で落馬、「馬をく

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  • アレッポの戦火、12月ベストフォト

    政府軍と反体制派の戦闘が続く、シリア第2の都市アレッポ(2012年12月1日深夜)。戦場となった市街の爆破跡の瓦礫を、かなたの火災が照らし出す。政府軍による反政府デモの弾圧が始まった2011年3月以降、約2年間にわたり内戦状態に陥っているシリア。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が1月2日に発表した報告書では、2011年3月15日から2012年11月30日の20カ月で、約6万人の一般市民や戦闘員が死亡したと推定されている。死者の76%が男性という。 Photograph by Javier Manzano, AFP/Getty Images 政府軍と反体制派の戦闘が続く、シリア第2の都市アレッポ(2012年12月1日深夜)。戦場となった市街の爆破跡の瓦礫を、かなたの火災が照らし出す。 政府軍による反政府デモの弾圧が始まった2011年3月以降、約2年間にわたり内戦状態に陥っているシリア。

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  • 魚網の修繕、12月ベストフォト

    スペイン、バルセロナの港で、網を繕う漁師(2012年12月13日撮影)。EUの漁師達と環境保護活動家にとって、去年の12月は先の見えない緊迫した年末となった。欧州連合(EU)議会が割り当てていたEUの商業漁船に対する漁獲枠は、科学的に合意された漁獲可能量を大きく超過。12月18日、枠を削減する“改革案”が議会を通過した。ところがその2日後にEU各国の漁業相が決定した2013年の漁獲枠は、「その約半数が、最新の調査で裏付けられた維持可能な漁獲量を超えている」と環境保護団体は訴えている。 Photograph by Emilio Morenatti, AP スペイン、バルセロナの港で、網を繕う漁師(2012年12月13日撮影)。 EUの漁師達と環境保護活動家にとって、去年の12月は先の見えない緊迫した年末となった。欧州連合(EU)議会が割り当てていたEUの商業漁船に対する漁獲枠は、科学的に合意

    魚網の修繕、12月ベストフォト
  • 時を超えて、12月ベストフォト

    ポルトガルはリスボン、カイス・ソドレ・キャバレー(Cais Sodre Cabaret)で、5周年パーティーの出番前に一服する演者たち(12月2日撮影)。好景気に沸いた狂乱の1920年代、大恐慌で始まった30年代のアメリカでは、ダンスや歌、コメディーなどのステージで楽しませるキャバレーが全盛期を迎えた。カイス・ソドレは、同形式のエンターテインメントをポルトガルで花開かせようと奮闘している。 Photograph by Rafael Marchante, Reuters ポルトガルはリスボン、カイス・ソドレ・キャバレー(Cais Sodre Cabaret)で、5周年パーティーの出番前に一服する演者たち(12月2日撮影)。 好景気に沸いた狂乱の1920年代、大恐慌で始まった30年代のアメリカでは、ダンスや歌、コメディーなどのステージで楽しませるキャバレーが全盛期を迎えた。カイス・ソドレは、同

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  • 傷ついた背中、12月ベストフォト

    2012年3月にギリシャに不法入国した32歳のスーダン人男性、ハッサン・メッキ(Hassan Mekki)さん(2012年12月5日撮影)。同年8月、首都アテネで受けた暴虐の傷跡が痛々しい。ロイター通信の報道によれば、友人とアテネ市内を歩いていたメッキさんに、ギリシャ国旗を掲げた男たちが人種差別的な暴言を叫びながら接近、その場で殴り倒されたという。意識を取り戻したメッキさんの体は血まみれで、背中に深い切り傷を負っていた。 Photograph by Yannis Behrakis, Reuters 2012年3月にギリシャに不法入国した32歳のスーダン人男性、ハッサン・メッキ(Hassan Mekki)さん(2012年12月5日撮影)。同年8月、首都アテネで受けた暴虐の傷跡が痛々しい。 ロイター通信の報道によれば、友人とアテネ市内を歩いていたメッキさんに、ギリシャ国旗を掲げた男たちが人種差

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  • ケニアの現実、写真コンテスト2012

    ケニアの首都ナイロビ東部、ダンドラ(Dandora)スラムの投棄場で、ゴミを漁る女性たち。「ナショナル ジオグラフィック国際写真コンテスト2012」、人部門の最優秀賞に選ばれた。首都の廃棄物の大半がダンドラに集まり、アフリカで最大規模の集積地となっている。 Photograph by Micah Albert ケニアの首都ナイロビ東部、ダンドラ(Dandora)スラムの投棄場で、ゴミを漁る女性たち。「ナショナル ジオグラフィック国際写真コンテスト2012」、人部門の最優秀賞に選ばれた。 首都の廃棄物の大半がダンドラに集まり、アフリカで最大規模の集積地となっている。 Photograph by Micah Albert

    ケニアの現実、写真コンテスト2012
  • 魚網の修繕、12月ベストフォト

    スペイン、バルセロナの港で、網を繕う漁師(2012年12月13日撮影)。EUの漁師達と環境保護活動家にとって、去年の12月は先の見えない緊迫した年末となった。欧州連合(EU)議会が割り当てていたEUの商業漁船に対する漁獲枠は、科学的に合意された漁獲可能量を大きく超過。12月18日、枠を削減する“改革案”が議会を通過した。ところがその2日後にEU各国の漁業相が決定した2013年の漁獲枠は、「その約半数が、最新の調査で裏付けられた維持可能な漁獲量を超えている」と環境保護団体は訴えている。 Photograph by Emilio Morenatti, AP スペイン、バルセロナの港で、網を繕う漁師(2012年12月13日撮影)。 EUの漁師達と環境保護活動家にとって、去年の12月は先の見えない緊迫した年末となった。欧州連合(EU)議会が割り当てていたEUの商業漁船に対する漁獲枠は、科学的に合意

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  • 昔話は遺伝子よりも伝わりにくい

    グリム童話の一編「ホレのおばさん」の挿絵。2人の少女にまつわる有名な昔話が、グループ間で新しい文化が伝播されていく仕組みの研究に重要なヒントをもたらした。 Illustration from Mary Evans Picture Library/Alamy 14世紀ごろのヨーロッパで広まった、2人の少女にまつわる昔話がある。1人は思いやりのある少女で、その優しさと勤勉さの見返りにご褒美をもらった。意地が悪いもう1人は、その強欲さと身勝手さの代償として罰を受けた。 この昔話には多種多様なバリエーションがあり、グリム童話の一編である「ホレのおばさん」やシェイクスピアの『ベニスの商人』など、さまざまに形を変えてヨーロッパ全土に伝わっている。 ニュージーランド、オークランド大学の進化心理学者クエンティン・アトキンソン(Quentin Atkinson)氏は、この有名な昔話に焦点を当て、人間の文化

    昔話は遺伝子よりも伝わりにくい
  • リチャード3世の遺骨、DNAで特定

    イギリス中部のレスターで、駐車場の地下から発掘された頭蓋骨。リチャード3世の遺骨と断定された。 Photograph courtesy University of Leicester 中世イングランド王、リチャード3世は、1483年の即位からわずか2年後に戦死、ウィリアム・シェイクスピアの史劇によって惨忍な暴君のイメージが定着している。その遺骨をめぐる探求のドラマが終幕を迎えつつあるようだ。 イギリスのレスター大学の研究チームは2月4日の記者会見で、2012年8月にイングランド、レスターシャー州の駐車場で発掘された遺骨について、「リチャード3世の白骨化した遺体」であると特定、「合理的な疑いを差し挟む余地がない」と述べた。当地は、遺体が埋葬されたと伝えられる修道院の跡地にある。 約40分の会見では、考古学者による発掘後に、医学、歴史学、系譜学、遺伝学など多方面から詳細に実施された調査の結果が

    リチャード3世の遺骨、DNAで特定
  • 二日酔いの治療法、世界でさまざま

    二日酔いの対処方法は文化によってさまざまだ。 Photes by Rebecca Hale, NG staff; Caty Smith さまざまなお酒は休暇シーズンに欠かせない楽しみだ。ラム酒入りエッグノッグのクリーミーな味を心待ちにする人もいれば、華やかな味付けのカクテルやスパイシーなホットワインを好む人もいる。 グラスの中身が何であれ、新年の幕開けとともに乾杯するのが伝統行事だ。お祭り気分は最高潮。問題は、1杯目を飲み干すとすぐに2杯目、パーティーが進むにつれて3杯目…、と気前よく注がれる点だ。やがて音楽が静かになり、朝が訪れる。そして、やっかいな二日酔いも。 ズキズキする頭痛、胃のむかつき、発汗、全身の倦怠感など症状はさまざまだが、ダメージを受けたら治療が必要だ。痛みを和らげる最も簡単な方法は? その答えは尋ねる相手によって異なるだろう。 医者に行けば大抵の場合、水分補給のために水を

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  • シカの角成分、その効能は?

    アメリカ、コロラド州に生息する成熟したオスのアメリカアカシカ。シカの袋角や枝角は人体への効能があると信じられている。 Photograph by Richard T. Nowitz, Corbis シカの袋角(ふくろづの)が、アメリカのスポーツ界でスキャンダルに発展するかもしれない。ナショナル・フットボールリーグ(NFL)、ボルチモア・レイブンズのラインバッカー、レイ・ルイス選手(37)が、この禁止薬物の入手を試みたと報道されたのだ。 2月3日、スーパーボウルがニューオーリンズで開催される。大舞台を控えたチームの司令塔ルイス選手は、右上腕三頭筋断裂の回復を早めるため、シカの角成分が入った点鼻スプレーの入手を試みたと、「Sports Illustrated」誌2月4日号が報じた。「USA Today」紙によると、ルイス選手はこの報道を否定し、「悪魔のいたずらだ」と話しているという。 この点鼻

    シカの角成分、その効能は?
  • グーグルマップと地図製作の“民主化”

    Google北朝鮮地図。右はナショナル ジオグラフィック版。 Maps by AutoNavi/SK M&C/Google (left) and National Geographic Maps (right) 2013年1月末、Google北朝鮮の詳細な地図を公開した。この孤立した警察国家の地図は大部分が空白だったが、首都平壌の通りの名前や政府庁舎、一般企業の所在地のほか、強制収容所とみられる施設4カ所もGoogleは追加している。 Googleの発表によると、プロジェクトは地図製作に関心を持つ一般市民の協力で実現したという。「Googleマップメーカー」というオンラインツールを使い、何年も前からGoogleマップの編集に携わってきたユーザーたちだ。 1月28日に公開されたGoogleマップのブログには、「新しい北朝鮮の地図が公開されました。これまでより情報豊富でかなり詳しい地図にな

    グーグルマップと地図製作の“民主化”
  • リチャード3世の遺骨、駐車場から発掘

    イギリスのレスターで、駐車場の地下から遺骨が発掘された。この駐車場は教会の跡地に造られており、シェイクスピアの史劇で有名なリチャード3世の遺骨である可能性が高いという。 Photograph by Andrew Testa, New York Times/Redux イギリス中部のレスターで、駐車場の地下から遺骨が発掘された。この駐車場は教会の跡地に造られており、遺骨は中世のイングランド王、リチャード3世のものである可能性が高いという。リチャード3世は1483年に王位に就くが、わずか2年後のボズワースの戦いで命を落とした。シェイクスピアの史劇でも、非常に個性的な人物として描かれている。発掘チームは最先端の技術を用いて人物特定を試みており、結果は2013年1月に公表される予定だ。◆リチャードを探して イギリス、レスター大学のチームがリチャード3世の埋葬地を発掘したのは2012年8月。歴史記録

    リチャード3世の遺骨、駐車場から発掘
  • 消えた住民、チェルノブイリ密閉作業

    ウクライナ北部の都市、プリピャチ。高所からチェルノブイリ原子力発電所を望む距離にあり、現在はゴーストタウン化している。発電所の建設・運転要員の居住地として設立された町で、かつては約5万人が生活していたが、全員が避難し、事故後には誰も戻っていない。チェルノブイリの近接区域では、計33万人以上が住み慣れた土地を追われることとなったという。「車で走ると、25年以上にわたって朽ち果てていった村をいくつも通り過ぎる」と、テキサス工科大学で行動生態学の教授を務めるロン・チェッサー(Ron Chesser)氏は話した。同氏は1992年にアメリカ人として初めて立ち入り禁止区域に足を踏み入れることを許可され、事故による野生生物への影響調査を行った。「かつては人が住んでいたという事実に呆然となる」。 Photograph by Gerd Ludwig, National Geographic ウクライナ北部の

    消えた住民、チェルノブイリ密閉作業
  • 設計テスト、チェルノブイリ密閉作業

    チェルノブイリ原発事故で爆発した原子炉を覆う新シェルターの建設現場。アーチ型屋根の組み立て作業が進められている。プロジェクトの資金調達は1997年に開始、欧州復興開発銀行(EBRD)によれば、国際的な拠出金は十分な額に達しているという。EBRDの原子力安全局長ビンス・ノバク(Vince Novak)氏は、「建設には莫大な費用がかかる。遅れは許されない」と述べるが、完成までの道のりはまだまだ長い。同氏は、11月に無事完了した計画案の検証が第1関門だったとしている。現場作業を想定したシュミレーションをイタリアで行うなど、想定されるすべての工程に注意が払われた。「おかげで順調に進行している」。 Photograph by Efrem Lukatsky, AP チェルノブイリ原発事故で爆発した原子炉を覆う新シェルターの建設現場。アーチ型屋根の組み立て作業が進められている。 プロジェクトの資金調達は

    設計テスト、チェルノブイリ密閉作業
  • 崩落の懸念、チェルノブイリ密閉作業

    未舗装の路面や足場が組まれた建物は、どこにでもある建設現場の風景に見える。しかし、チェルノブイリ原発の密閉作業ははるかに困難だ。老朽化した壁を支えているのが、足場のような構造だ。原子炉を覆う石棺は崩落の危険性が高まっており、新たなシェルター建設前の補強が不可欠だった。その新安全閉じ込め設備(NSC)による密閉を完了するには、他にも多数の課題を解決しなくてはならない。欧州復興開発銀行のビンス・ノバク(Vince Novak)氏は、高くそびえる換気煙突の撤去が特に困難だと指摘する。まず支持部が損傷している煙突を固定し、その後で解体や放射線検査を進める必要があるという。 Photograph by Sergey Dolzhenko, European Pressphoto Agency 未舗装の路面や足場が組まれた建物は、どこにでもある建設現場の風景に見える。しかし、チェルノブイリ原発の密閉作業

    崩落の懸念、チェルノブイリ密閉作業
  • 鉄製アーチ、チェルノブイリ密閉作業

    クレーンに乗った作業員が、鉄製アーチ型の巨大構造物の下に回り込む。1986年に史上最悪の原発事故を起こしたウクライナのチェルノブイリ原発では、爆発した原子炉4号機(遠景)を覆う新たなシェルターが建設されている。完成すれば、約300メートル先の4号機までレールに乗せて移動させ、上から覆って密閉する。最終的な大きさは高さ約105メートル、幅約257メートルにもなる。プロジェクトを率いる欧州復興開発銀行(EBRD)の原子力安全局長ビンス・ノバク氏によると、建設スピードを上げ、作業員の安全を確保するため、原子炉から距離を置いて工事を行っているという。「現場の放射能レベルは、特別な防護服を着用しなくても時間制限なく作業できるほど低い」。チェルノブイリの原発事故直後、ソ連は何十万人もの作業員を事故現場に派遣。平均年齢約35歳の「リクビダートル(清算人)」は、処理作業中に大量の放射線を浴びた。 Phot

    鉄製アーチ、チェルノブイリ密閉作業
  • 甲状腺癌、チェルノブイリ密閉作業

    ベラルーシの首都ミンスクの甲状腺癌(がん)センターで治療を受ける、男性と少年(2005年撮影)。チェルノブイリ事故の影響は現在も続いている。甲状腺癌の発症率上昇はその一つだ。汚染された牛乳を飲んだ子どもへのダメージは特に大きい。国連によると、2005年までに、ベラルーシ、ウクライナロシアの高汚染地域で6000人以上の子どもが放射線による甲状腺癌を発症。患者は生涯にわたって治療が必要になり、今後さらに増加すると予想されている。 Photograph by Gerd Ludwig, National Geographic ベラルーシの首都ミンスクの甲状腺癌(がん)センターで治療を受ける、男性と少年(2005年撮影)。 チェルノブイリ事故の影響は現在も続いている。甲状腺癌の発症率上昇はその一つだ。汚染された牛乳を飲んだ子どもへのダメージは特に大きい。国連によると、2005年までに、ベラルーシ、

    甲状腺癌、チェルノブイリ密閉作業
  • インタビュー:健康な長寿の秘訣

    ギリシャのイカリア島に住む98歳の男性。との1枚。 Photograph by Gianluca Colla, National Geographic イタリアでは誕生祝いの言葉に「Cento di questi giorni(こんな日が100回ありますように)」というのがある。実際に100歳まで長生きするイタリア人は少なくない。 世界のあちこちに、長生きする人の局地的に多い地域が存在する。ナショナル ジオグラフィック協会のフェロー会員であるダン・ビュイトナー(Dan Buettner)氏はこうした地域を「ブルーゾーン」と名付けた。この呼称は、ビュイトナー氏らが十数年かけて作成した地図の中で、これらの地域を青く縁取ったことに由来する。 ビュイトナー氏の著書『The Blue Zones』(邦訳『ブルーゾーン 世界の100歳人(センテナリアン)に学ぶ健康と長寿のルール』、ディスカヴァー・ト

    インタビュー:健康な長寿の秘訣
  • チェルノブイリ密閉作業、なお残る影響

    アーチ型巨大シェルターの建設が格化しているウクライナのチェルノブイリ原子力発電所(2012年11月撮影)。 Photograph by Sergey Dolzhenko, European Pressphoto Agency 史上最悪規模の原子力事故を起こした、ウクライナのチェルノブイリ原子力発電所で、アーチ型巨大シェルターの建設が格化している。骨組みの一部が完成した「新安全閉じ込め設備(New Safe Confinement)」は、損壊した原子炉4号機全体を覆い、放射性物質を閉じ込めるよう設計されている。現地では、事故後26年以上にわたって除染作業が続けられてきたが、NSCは最新の防護策となる。 1986年4月26日、4号機が爆発、大量の放射性物質がウクライナ、ベラルーシ、ロシア西部の上空に放出された。近隣区域では避難活動が進められ、ヨウ素や放射性核種の拡散はヨーロッパの大部分に及

    チェルノブイリ密閉作業、なお残る影響
  • アメリカで増加を続けるセリアック病

    目にも楽しいジンジャーブレッドだが、グルテンを摂取できないセリアック病患者には縁がない。 Photograph by Jeffrey LaMonde, Saginaw News/AP アメリカでは1980年代以降、セリアック病の患者数が倍増している。体がグルテンを有毒と判断してしまう自己免疫疾患の一種で、クリスマスのお菓子など、グルテンを含む品は生涯口にできない。もしべれば小腸の組織が破壊され栄養を摂取できなくなり、どんなに沢山べても栄養失調・低栄養になってしまう。 グルテンは小麦粉に含まれる粘りのあるタンパク質で、サクサクしたピッツェル(薄焼きクッキー)からバターたっぷりのショートブレッドまで、伝統的なクリスマスのレシピに欠かせない。また、粉末の香辛料も避ける必要がある。容器の中で塊にならないよう、グルテンが添加されているからだ。つまり、スイートポテトやペカンパイ(ペカンナッツで作

    アメリカで増加を続けるセリアック病
  • サンタの帽子、カビが描くクリスマス

    数種の菌類で描かれた、サンタの帽子とお馴染みの笑い声「Ho Ho Ho」。アメリカ、J・クレイグ・ベンダー研究所の伝染病研究者、ステファニー・モーナード氏が作成した。成長速度が異なる複数の菌類が同居しているので、あまり長くは持たない。期待通りの作品となるのは非常に短い時間だ。「カビでアートを作るには、全体像を見通す必要がある」とモーナード氏は語る。例えば、「Ho Ho Ho」に使用した黄色麹菌は、非常に成長が早い。「次の日には、ムニャムニャムニャ(blah blah blah)に変わっていたわ」とモーナード氏は笑う。最後には緑色に変身。「当にきれいな色で、私の期待通りだった。黄色もまんざら捨てたもんじゃないけど」。帽子の部分は特に難しかった。「菌の種類によって成長に適した温度が違う。室温より高い温度が必要だった種類も」とモーナード氏は説明する。 Photograph courtesy S

    サンタの帽子、カビが描くクリスマス
  • スノーマン、カビが描くクリスマス

    雪だるまが微笑んでいる。カビが描く、一風変わったアートだ。生きる絵画とも言えるこの作品は、メリーランド州ロックビルにあるJ・クレイグ・ベンター研究所で、感染病を研究しているステファニー・モーナード(Stephanie Mounaud)氏の手による。モーナード氏はここ数年、さまざまな種類のカビを培養してクリスマス用のアートを作成している。この雪だるまは、味噌や醤油にも使う一般的なコウジカビや、感染症の原因ともなるペニシリウム・マルネッフェイなど、4つの菌類で描いている。難しいのは配色だ。菌と培地(微生物や細胞を培養するための物質)を適切に選ぶ必要がある。モーナード氏によると、例えば発色している部分では、種子を拡散させる胞子が形成されているという。 Photograph courtesy Stephanie Mounaud, J. Craig Venter Institute 雪だるまが微笑ん

    スノーマン、カビが描くクリスマス
  • 青いツリー、カビが描くクリスマス

    オーソドックスなクリスマスツリーはいかがだろうか。材料はちょっと変わっていて、黄色い星はタラロミセス・スティピタトゥス(Talaromyces stipitatus)、緑の葉はアスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、飾りはペニシリウム・マルネッフェイ(Penicillium marneffei)、幹はアスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)という菌類なのだが。作成者はJ・クレイグ・ベンター研究所のステファニー・モーナード(Stephanie Mounaud)氏。人々が、身の周りのカビに対する理解を深めるきっかけになればと願ったという。「菌類はさまざまな役を担っている。イヤーな臭いの嫌われ者というイメージが強いが、意外な一面も知ってほしい」。 Photograph courtesy Stephanie Mounaud, J. Cra

    青いツリー、カビが描くクリスマス
  • 白いツリー、カビが描くクリスマス

    シャーレに現れた白いクリスマスツリー。深紅の飾りも含め、すべてカビでできている。作成したアメリカ、J・クレイグ・ベンター研究所のステファニー・モーナード(Stephanie Mounaud)氏は、まず紙にデザインを描き、シャーレの裏にテープで貼り付けた。続いて最適な色や形に成長する菌株を選び、培養を始めたという。「大変な手間に聞こえるかもしれないけれど、菌類は私の専門分野。培養の結果は予想できていたので、それほど時間はかからなかった。楽しい作業よ」とモーナード氏はコメントしている。 Photograph courtesy Stephanie Mounaud, J. Craig Venter Institute シャーレに現れた白いクリスマスツリー。深紅の飾りも含め、すべてカビでできている。 作成したアメリカ、J・クレイグ・ベンター研究所のステファニー・モーナード(Stephanie Mou

    白いツリー、カビが描くクリスマス
  • 中国、マンション建設現場に「釘の墓」

    建築現場のまっただ中で、高さ約10メートルの残土の上に取り残された「釘の墓」。 Photograph by Youth Jin, European Pressphoto Agency 中国の建築ブームは誰に対しても容赦なく続き、その対象の生死を問わない。山西省太原市では、ぽつんと残された墓を囲むように高層マンションが建築されている。新しい建物は地面を掘り下げて基礎を打っているため、墓は現在、約10メートルの高さの土の塔の上に乗っている格好だ。 この墓に故人が埋葬されたのは2004年のことで、建設に伴い墓地の補償金として100万元(約1350万円)が提示されたが、遺族はこの受け取りを拒否した。地元の報道によると、遺族は開発業者がこの場所を建設現場に選んだ理由が理解できないと主張、説明を求めているという。一方で、現場の作業員はあくまでスケジュールに従い、2013年4月の竣工に向けて工事を進めて

    中国、マンション建設現場に「釘の墓」
  • 戦時中の水陸両用車、伊の湖底で発見

    イタリア、ガルダ湖の水中を撮影したビデオの1コマ。第2次世界大戦中にアメリカ軍が使用したDUKWの残骸が映っている。 Video still from Voluntary Association of Lake Garda via EPA イタリア北部のガルダ湖で、アメリカ軍が第2次世界大戦で使用した水陸両用トラックが発見された。 12月10日、ガルダ湖ボランティア協会(Voluntary Association of Lake Garda)が、水中でさび付いたトラックの映像を公開。ソナーシステムで探知し、深海調査用の小型無人潜水艇で確認したという。調査には、海洋考古学者の非営利団体プロメア(ProMare)も参加している。 “ダック(アヒル)”の愛称で知られる六輪の水陸両用トラックDUKWは、陸上走行に加えて、水上での航行も可能。第2次大戦時には、物資や兵士の輸送用に2万台以上が生産され

    戦時中の水陸両用車、伊の湖底で発見
  • セルビアで「吸血鬼警報」、その真相は

    窓に吸血鬼よけのニンニクの束をかける住民。セルビアの町、ザロジェで12月3日に撮影。 Photograph by Dalibor Danilovic, AFP/Getty Images ニンニクの売れ行きがよくなった。木製の十字架が飛ぶように売れている。この事実が意味することはただ1つ・・・、吸血鬼の襲来だ!? だがこれは、映画の脚小説の一節ではない。セルビアの町、ザロジェで実際に起きていることだ。11月にこの町の役場が地域の公衆衛生に関して、この地区に住むと伝えられる吸血鬼、サバ・サバノビッチ(Sava Savanovic)が徘徊している可能性があると警告を発したのだ。 この吸血鬼を巡る騒動は、吸血鬼サバノビッチの棲家と伝えられる古い水車小屋が倒壊したとの報道をきっかけに始まった。ABCニュースによれば、この町の首長を務めるミオドラグ・ブイェティッチ(Miodrag Vujetic)

    セルビアで「吸血鬼警報」、その真相は
  • 迫る“終末”、マヤ暦の真の予言とは

    メキシコ、タバスコ州のトルトゥゲーロ(Tortuguero)遺跡にある「モニュメント6(Monument 6)」の石板は、2012年12月に「世界が終わる」と予言しているとされるが、実際にはある支配者の生涯と戦いが記されている。 Photograph by Gilberto Villasana, AFP/Getty Images 2012年12月。この時期、新年の予定を立てるのに忙しい人ばかりではない。新年より先に、“世界の終わり”がやってくると信じている人たちもいる。パーティーを計画する代わりに、彼らは物を備蓄し、避難ルートを調べ、サバイバル術を磨いて、マヤ暦が“終わり”を迎えるとされる2012年12月21日に備えている。 人類はみな、間近に迫った世界の終末に備えるべきなのか? その必要はないというのが、学者たちの答えだ。 古代マヤ人は、世界が今月終わりを迎えると予言したとされる。マヤ

    迫る“終末”、マヤ暦の真の予言とは
  • 世界の平均寿命と罹患率が上昇

    ペルーの病院で、生まれたばかりの愛娘を抱くビルマ・サントス(Vilma Santos)さん。同国は1970年以降、平均寿命が最も上昇している国の1つである。 Photograph by Karel Navarro, AP 世界中の人類全体が健康診断を受けたとしたら、医師はどのような診断を下すのだろうか。最新の研究によると、「良くもあり、悪くもある」が正解だという。「2010年世界の疾病、傷害、リスク要因負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study 2010)」と題された大規模な共同調査には、世界50カ国約500人の著者らによる論文が含まれている。過去40年分のデータを網羅しており、世界中の健康問題に関するこれまでで最も包括的な分析であるとされている。 世界的に長寿命化の傾向にあるが、年齢を重ねるにつれ罹患率

    世界の平均寿命と罹患率が上昇
  • 小さな犠牲者、11月ベストフォト

    性的暴行を受けた5歳の女児が横たわるベッド脇で、沈痛な表情を浮かべる家族。アフガニスタン北部マザリシャリフの病院で11月12日に撮影された。警察は近所に住む22歳の男を容疑者として逮捕している。 Photograph by Qais Usyan, AFP/Getty Images 性的暴行を受けた5歳の女児が横たわるベッド脇で、沈痛な表情を浮かべる家族。アフガニスタン北部マザリシャリフの病院で11月12日に撮影された。警察は近所に住む22歳の男を容疑者として逮捕している。◆ベストフォト選考理由 「寒々とした光が、幼く無防備な被害者を強調している。毛布に覆われ、見えるのは足先のみ。鉄格子のようなベッドのフレームが、暴力の連鎖に押さえつけられたアフガニスタン女性の現状を示唆するようだ」、モニカ・コーコラン氏(フォト編集主任)。 「実に象徴的な作品だ。光はベッドに向けられているが、横たわっている

    小さな犠牲者、11月ベストフォト
  • 赤い服の女性、11月ベストフォト

    中国、北京の天安門広場で、身を寄せ合いながら寒さをしのぐ2人の女性。11月14日、北京の人民大会堂で中国共産党第18回全国代表大会の閉会式が行われた。彼女達は、会場に到着する代表者らの案内係だ。ロイター通信によると、1週間の日程で開催された党大会で、胡錦濤氏は党総書記など党の要職を退いた。後任には国家副主席の習近平氏が選出され、中国共産党の新たな指導体制が発足した。 Photograph by Ed Jones, AFP/Getty Images 中国、北京の天安門広場で、身を寄せ合いながら寒さをしのぐ2人の女性。11月14日、北京の人民大会堂で中国共産党第18回全国代表大会の閉会式が行われた。彼女達は、会場に到着する代表者らの案内係だ。 ロイター通信によると、1週間の日程で開催された党大会で、胡錦濤氏は党総書記など党の要職を退いた。後任には国家副主席の習近平氏が選出され、中国共産党の新た

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  • コックピット、第2次大戦の戦闘機

    アメリカのミシガン湖から12月に引き揚げられた、第2次世界大戦時代の戦闘機「FM-2ワイルドキャット」のコックピット。計器類が水浸しになっている。アメリカ海軍の訓練用空母セーブル(U.S.S. Sable)から発艦中に機体のエンジンが停止、船首から転げ落ちて海に沈んだという。驚くことに、パイロットのウィリアム・フォーブス(William Forbes)少尉は一命を取り留めた。フォーブス氏の娘のクリスティン・スミス(Christine Smith)さんは、「あの寒さは生涯忘れられないと話していた」とイリノイ州の「Daily Herald」紙に語っている。 Photograph by Scott Olson, Getty Images アメリカのミシガン湖から12月に引き揚げられた、第2次世界大戦時代の戦闘機「FM-2ワイルドキャット」のコックピット。計器類が水浸しになっている。 アメリカ海軍

    コックピット、第2次大戦の戦闘機
  • 70年前の事故、第2次大戦の戦闘機

    およそ70年前の第2次世界大戦中に、空母からの離艦に失敗して墜落したとみられる戦闘機「FM-2ワイルドキャット」。アメリカ、ミシガン湖に眠っていたが、日軍の真珠湾攻撃から71年後の2012年12月7日に引き揚げられた。今後は、フロリダ州ペンサコラの国立海軍航空博物館で修復される予定だという。この機体は1944年12月28日、アメリカ海軍の航空母艦セーブル(U.S.S. Sable)からの離艦時にエンジンが損壊、水深約61メートルの地点に沈んでいた。セーブルは姉妹艦のウルバリンと共に、1940年代にミシガン湖上でパイロットの訓練用に使用されていた。FM-2はグラマンF4Fワイルドキャットの軽量タイプで、ゼネラル・モーターズ(GM)が製造に当たった。 Photograph by Scott Olson, Getty Images およそ70年前の第2次世界大戦中に、空母からの離艦に失敗して墜

    70年前の事故、第2次大戦の戦闘機
  • 輸送準備、第2次大戦の戦闘機

    アメリカ、ミシガン湖の湖底で眠っていた、第2次世界大戦当時の戦闘機「FM-2ワイルドキャット」。引揚業者A&Tリカバリー(A&T Recovery)のスタッフが、フロリダ州にある国立海軍航空博物館への輸送準備を進めている。現地到着後は修復作業を経て展示される予定。ミシガン湖には歴史的に重要な航空機が多数沈んでおり、A&Tリカバリーは国立海軍航空博物館の運営母体から引揚作業を請け負っている。1980年代の会社設立以降、約40機を引き揚げたが、あと80機は沈んでいるという。 Photograph by Scott Olson, Getty Images アメリカ、ミシガン湖の湖底で眠っていた、第2次世界大戦当時の戦闘機「FM-2ワイルドキャット」。引揚業者A&Tリカバリー(A&T Recovery)のスタッフが、フロリダ州にある国立海軍航空博物館への輸送準備を進めている。現地到着後は修復作業を

    輸送準備、第2次大戦の戦闘機
  • 空気が残る車輪、第2次大戦の戦闘機

    アメリカ、ミシガン湖から引き揚げられた戦闘機「FM-2ワイルドキャット」の車輪。70年間も湖底に沈んでいたが、タイヤの空気は抜けていなかった。引き揚げ作業を主導したA&Tリカバリー(A&T Recovery)社のタラス・リセンコ(Taras Lyssenko)氏は、10代の頃からミシガン湖底に眠る過去の遺物の捜索に関心があったという。「航空機が眠っているとわかってからは、位置を特定する調査を進めていた」。同氏は研究者らと協力し、墜落事故の報告書で正確な場所を特定しようと試みた。しかしかなり前から、記録には正確性を欠く場合があるとわかっていたという。 Photograph by Scott Olson, Getty Images アメリカ、ミシガン湖から引き揚げられた戦闘機「FM-2ワイルドキャット」の車輪。70年間も湖底に沈んでいたが、タイヤの空気は抜けていなかった。 引き揚げ作業を主導し

    空気が残る車輪、第2次大戦の戦闘機
  • ミシガン湖で第2次大戦の戦闘機引揚げ

    編隊飛行するアメリカ海軍の戦闘機、グラマンF4Fワイルドキャット。今回引き揚げられたFM-2は、小型空母での離着艦を容易にするためにF4Fを軽量化したタイプ。 Photograph from Keystone/Hulton Archive/Getty Images およそ70年前の第2次世界大戦中に、空母からの離艦に失敗して墜落したとみられる米海軍の戦闘機「FM-2ワイルドキャット」。アメリカのミシガン湖に眠っていたが、日軍の真珠湾攻撃から71年後の2012年12月7日に引き揚げられた。今後は、フロリダ州ペンサコラの国立海軍航空博物館で修復される予定だという。 この機体は1944年12月28日、アメリカ海軍の訓練用空母セーブル(U.S.S. Sable)からの離艦時にエンジンが損壊、水深約61メートルの地点に沈んでいた。 機体は船首から転げ落ちて海に沈んだというが、驚くことにパイロットの

    ミシガン湖で第2次大戦の戦闘機引揚げ
  • トンブクトゥ崩壊:アルカイダとリビア

    西アフリカ、マリの名家の葬儀には、多数の参列者が並ぶ。 Photograph by Brent Stirton, Getty Images/National Geographic [ アルカイダはいかにして伝説の都市を奪ったか ] 2008年11月、バラク・オバマ氏がアメリカ大統領に選出された夜、私はマリのトンブクトゥでトランジスタラジオを聞いていた。 私が座る小さなゲストハウスの屋上には、地元の教師イサカ(Issaka)さん、ゲストハウスのオーナー、モハメド(Mohammed)さんもいる。 予想外だったのだが、マリ北部の古代都市トンブクトゥはオバマ氏の当選に熱狂していた。 今にも壊れそうな日干しれんがの建物が雑然と並ぶ町並みを眺めながら、ふと、この伝説的な都市の可能性について考えてみたくなった。 振り返れば、豊かな貿易の中心地として絶頂を迎えたトンブクトゥが衰退して数世紀が経つ。しかし、

    トンブクトゥ崩壊:アルカイダとリビア
  • トンブクトゥ、四肢切断の刑

    窃盗犯の腕を切り落とす刑の執行に立ち会うよう、イスラム系反政府勢力「アンサール・ディーン(Ansar Dine)」に動員された人々。若者が米を盗んだという。人権保護団体の調べによると、マリ北部の街や村を実効支配しているイスラム過激派勢力が、罪人の四肢を切断する例がいくつか確認されている。イスラム国家では、シャリーア(イスラム法)による鞭打刑や手首切断刑などの身体刑が現在でも行われている。 Photograph from AP 窃盗犯の腕を切り落とす刑の執行に立ち会うよう、イスラム系反政府勢力「アンサール・ディーン(Ansar Dine)」に動員された人々。若者が米を盗んだという。人権保護団体の調べによると、マリ北部の街や村を実効支配しているイスラム過激派勢力が、罪人の四肢を切断する例がいくつか確認されている。イスラム国家では、シャリーア(イスラム法)による鞭打刑や手首切断刑などの身体刑が現

    トンブクトゥ、四肢切断の刑
  • トンブクトゥ、反政府勢力の少年兵

    トンブクトゥの住民の話によると、イスラム原理主義組織「アンサール・ディーン」は、12才の少年を徴兵し軍事訓練を強要しているという。国際刑事裁判所(ICC)は、こうした行為を戦争犯罪であるとして警告を発した。 Photograph from AFP/Getty Images トンブクトゥの住民の話によると、イスラム原理主義組織「アンサール・ディーン」は、12才の少年を徴兵し軍事訓練を強要しているという。国際刑事裁判所(ICC)は、こうした行為を戦争犯罪であるとして警告を発した。 Photograph from AFP/Getty Images

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  • トンブクトゥ、街の監視

    西アフリカ、マリの砂漠都市トンブクトゥで、イスラム過激組織「アンサール・ディーン(Ansar Dine)」の兵士たちが市街地の要所を固めている。2012年4月、アンサール・ディーンは同じトゥアレグ族の反政府勢力「アザワド解放民族運動(MNLA)」と手を組み、マリ北部の主要都市を制圧。イスラム法に従わないトゥアレグ族の兵士を排除した。 Photograph by AP 西アフリカ、マリの砂漠都市トンブクトゥで、イスラム過激組織「アンサール・ディーン(Ansar Dine)」の兵士たちが市街地の要所を固めている。2012年4月、アンサール・ディーンは同じトゥアレグ族の反政府勢力「アザワド解放民族運動(MNLA)」と手を組み、マリ北部の主要都市を制圧。イスラム法に従わないトゥアレグ族の兵士を排除した。 Photograph by AP

    トンブクトゥ、街の監視
  • トンブクトゥ、マリ反政府勢力の制圧

    西アフリカ、マリの砂漠都市トンブクトゥ。サハラ南端にトゥアレグ族が季節キャンプを置くようになった12世紀から、征服者が何度も入れ替わってきた。2012年4月、トゥアレグ族の反政府勢力「アザワド解放民族運動(MNLA)」と、アルカイダ系イスラム原理主義組織「アンサール・ディーン(Ansar Dine)」は、トンブクトゥをはじめマリ北部一帯を制圧、独立を宣言した。 Photograph by Brent Stirton, Getty Images/National Geographic 西アフリカ、マリの砂漠都市トンブクトゥ。サハラ南端にトゥアレグ族が季節キャンプを置くようになった12世紀から、征服者が何度も入れ替わってきた。2012年4月、トゥアレグ族の反政府勢力「アザワド解放民族運動(MNLA)」と、アルカイダ系イスラム原理主義組織「アンサール・ディーン(Ansar Dine)」は、トンブ

    トンブクトゥ、マリ反政府勢力の制圧
  • トンブクトゥ、禁じられた服装

    西アフリカ、マリのトンブクトゥで、欧米風の服をまとう女性。イスラム系反政府勢力に支配される前、同地域の公立高校ではこのようなファッションで通学する生徒が多かった。しかし、イスラム原理主義者がタリバン流の厳格なイスラム法の解釈を強要。女性は全身を覆うブルカの着用を義務づけられた上、学校へ通うことも禁じられている。 Photograph by Brent Stirton, Getty Images/National Geographic 西アフリカ、マリのトンブクトゥで、欧米風の服をまとう女性。イスラム系反政府勢力に支配される前、同地域の公立高校ではこのようなファッションで通学する生徒が多かった。しかし、イスラム原理主義者がタリバン流の厳格なイスラム法の解釈を強要。女性は全身を覆うブルカの着用を義務づけられた上、学校へ通うことも禁じられている。 Photograph by Brent Stir

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  • トンブクトゥ、サンコーレ・モスク

    マリの砂漠都市トンブクトゥのイスラム教寺院、サンコーレ・モスク。トンブクトゥが最盛期を迎えた14世紀前後に建設された精巧なモスクは、地域全体のイスラム学者たちの関心を集め、都市の宗教的・学術的な重要性を高めた。3つのモスクと16の共同墓地や霊廟を含むトンブクトゥの歴史地区は、世界遺産に登録されている。人気の観光スポットだったが、現在はイスラム系反政府勢力の支配下にある。 Photograph by Brent Stirton, Getty Images/National Geographic マリの砂漠都市トンブクトゥのイスラム教寺院、サンコーレ・モスク。トンブクトゥが最盛期を迎えた14世紀前後に建設された精巧なモスクは、地域全体のイスラム学者たちの関心を集め、都市の宗教的・学術的な重要性を高めた。3つのモスクと16の共同墓地や霊廟を含むトンブクトゥの歴史地区は、世界遺産に登録されている。

    トンブクトゥ、サンコーレ・モスク
  • トンブクトゥ、破壊される寺院

    イスラム系反政府勢力「アンサール・ディーン(Ansar Dine)」によって破壊された、マリ、トンブクトゥのシディヤヤモスク(2012年7月1日撮影)。奥には人々にあがめられる聖人の墓がある。トンブクトゥの3大モスクの1つで、砂漠地帯の中心都市として栄えた1400年ごろに建立された。アンサール・ディーンは、墓地や霊廟などの史跡が偶像崇拝であるとして破壊を進めている。ユネスコは6月、トンブクトゥを「危機遺産」に追加した。 Photograph from AFP/Getty Images イスラム系反政府勢力「アンサール・ディーン(Ansar Dine)」によって破壊された、マリ、トンブクトゥのシディヤヤモスク(2012年7月1日撮影)。奥には人々にあがめられる聖人の墓がある。トンブクトゥの3大モスクの1つで、砂漠地帯の中心都市として栄えた1400年ごろに建立された。アンサール・ディーンは、墓

    トンブクトゥ、破壊される寺院
  • トンブクトゥ、禁じられた服装

    西アフリカ、マリのトンブクトゥで、欧米風の服をまとう女性。イスラム系反政府勢力に支配される前、同地域の公立高校ではこのようなファッションで通学する生徒が多かった。しかし、イスラム原理主義者がタリバン流の厳格なイスラム法の解釈を強要。女性は全身を覆うブルカの着用を義務づけられた上、学校へ通うことも禁じられている。 Photograph by Brent Stirton, Getty Images/National Geographic 西アフリカ、マリのトンブクトゥで、欧米風の服をまとう女性。イスラム系反政府勢力に支配される前、同地域の公立高校ではこのようなファッションで通学する生徒が多かった。しかし、イスラム原理主義者がタリバン流の厳格なイスラム法の解釈を強要。女性は全身を覆うブルカの着用を義務づけられた上、学校へ通うことも禁じられている。 Photograph by Brent Stir

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  • ブラジルの15歳、11月ベストフォト

    15歳を迎えた少女たちがティアラやドレスでオシャレして、ピンク色の内装のリムジンに乗り込む。ブラジル、リオデジャネイロ市で11月8日撮影。ラテンアメリカの少女にとって、15歳の誕生日は社交界にデビューする重要なイベント。盛大に祝う場合が多い。写真の2人も、同市マンゲイラ(Mangueira)のファベーラ(スラム)で開催されるパーティーに向かう途中だ。マンゲイラのパーティーは、リオデジャネイロ州政府が実施している治安対策「UPP(Unidade de Policia Pacificadora=平和駐留部隊)」の一環という。 Photograph by Silvia Izquierdo, AP 15歳を迎えた少女たちがティアラやドレスでオシャレして、ピンク色の内装のリムジンに乗り込む。ブラジル、リオデジャネイロ市で11月8日撮影。 ラテンアメリカの少女にとって、15歳の誕生日は社交界にデビュー

    ブラジルの15歳、11月ベストフォト
  • 祝福のタトゥー、11月ベストフォト

    花嫁の手のひらに描かれたヘンナタトゥー(メンディ)。ハート模様が2人の門出を祝福する。11月7日に米ナショナル ジオグラフィックのフォトコミュニティ・サイト「My Shot」に投稿された作品だ。 Photograph by Heather Liebensohn, My Shot 花嫁の手のひらに描かれたヘンナタトゥー(メンディ)。ハート模様が2人の門出を祝福する。11月7日に米ナショナル ジオグラフィックのフォトコミュニティ・サイト「My Shot」に投稿された作品だ。◆ベストフォト選考理由 「ヘナ模様の素朴な図柄と赤い縦のラインがシンメトリカルで、大変気に入っている。手のヘナタトゥーは写真で何十枚と見てきたが、精細な装飾をあしらったモノトーンのドレスが効果的だ。素朴で優美。素晴らしいと言うほかない」、カテル・レドゥ(Katel Ledu)氏(フォトディレクター)。 「鮮やかな色と見事な構

    祝福のタトゥー、11月ベストフォト
  • フランスの鹿狩り、11月ベストフォト

    仕留めた牡鹿のまわりに集まった猟犬とハンターたち。フランス中部のアンボワーズ近郊で11月3日に撮影。ホルンを鳴らす合図や独特の作法は数世紀前から受け継がれている。動物愛護の観点などから批判も受けているが、フランスでは今も人気の高いスポーツだ。 Photograph by Alain Jocard, AFP/Getty Images 仕留めた牡鹿のまわりに集まった猟犬とハンターたち。フランス中部のアンボワーズ近郊で11月3日に撮影。 ホルンを鳴らす合図や独特の作法は数世紀前から受け継がれている。動物愛護の観点などから批判も受けているが、フランスでは今も人気の高いスポーツだ。 ◆ベストフォト選考理由 「犬も人も興奮醒めやらぬまま、倒れた牡鹿を取り囲む。ここには世代を重ねても変わらない伝統がある。立ち上る霧が、典雅で時代を超越した雰囲気を盛り上げているね」、ベン・フィッチ(Ben Fitch)氏

    フランスの鹿狩り、11月ベストフォト
  • オーナメント工場、11月ベストフォト

    塗料を乾燥させるため、棚の上に並べられたクリスマスツリー用の飾り。11月27日、ロシア、クラスノヤルスクの工場は追い込みに入っている。 Photograph by Ilya Naymushin, Reuters 塗料を乾燥させるため、棚の上に並べられたクリスマスツリー用の飾り。11月27日、ロシア、クラスノヤルスクの工場は追い込みに入っている。◆ベストフォト選考理由 「間違いなく注目に値する作品。まず目を奪われるのは、塗装したばかりのガラス製の飾りに工場内の照明が点々と反射する様子だろう。青色と灰色を基調とした地味な背景とのバランスも完璧だ。カメラのアングルも、ボールの列が背景のはるか奥まで続いているような効果を生み出している」、ベン・フィッチ(Ben Fitch)氏(フォト共同編集者)。 「クリスマスツリーには決まってこんなガラス球がぶら下がっている。見慣れているだけに、その製造工程には

    オーナメント工場、11月ベストフォト
  • 男女間の視線の違い、その理由に迫る

    人物を見る際には、性別によって注目する部分が異なる。上の画像を見せて、男女別の視線が最も集まった場所が下図(赤は女性、青は男性)。 Photograph from Moviestore/Alamy; Illustration (below) courtesy Felix Mercer Moss 男女は物の見方が違うと言われる。最新の研究によれば、性別によって注目する部分が異なると証明されたという。 男女計52人を対象に実験を行ったのはイギリス、ブリストル大学の研究チーム。さまざまな画像を見せたところ、注目する場所や視線を動かす範囲が男女で異なっていた。 研究チームは、映画、ドキュメンタリー、絵画の静止画を19~47歳の男女各26人に呈示し、その視線を記録した。使われたのは、映画『サウンド・オブ・ミュージック』、『インサイド・マン』、ドキュメンタリー『ブルー・プラネット』などの1コマや、エド

    男女間の視線の違い、その理由に迫る
  • チベット人、ジャンペル・イェシの抗議

    ジャンペル・イェシさんの追悼式。インド、ダラムサラにて。 Photograph by Dar Yasin, AP 中国のチベット族居住区で、中国共産党の高圧的政策に抗議して焼身自殺を図ったチベット人は、2009年以来、80人以上にのぼる。その1人が3月26日、自らに火を放った27歳の男性ジャンペル・イェシ(Jamphel Yeshi)さんだ。 焼身自殺を決意したジャンペル・イェシさんは、インド、デリーの北はずれにあるチベット難民の居住区マジュヌ・カ・ティラ(Majnu ka Tilla)に暮らしていた。居住区ができたのは1963年、最高指導者ダライ・ラマ14世が中国軍の侵攻から逃れてインドに亡命した4年後のことだ。 ジャンペル・イェシさんは友人たちからジャシ(Jashi)と呼ばれ、窓のないワンルームのアパートにチベット人男性4人と暮らしていた。彼のマットレスは今も、ダライ・ラマなどの高僧の

    チベット人、ジャンペル・イェシの抗議
  • パレンケ遺跡の墓地、本格調査開始

    1999年に発見され、最近新たな調査が始まったパレンケ遺跡の墓室。 Photograph courtesy INAH 1999年に発見されたマヤ時代の墓地で新たな調査が始まり、鮮やかな赤の壁画に彩られた埋葬室の入り口が公開された。 墓地の内部に初めて足を踏み入れたのは、メキシコ国立人類学歴史学研究所(INAH)の研究チーム。11個の土器と翡翠(ひすい)の小片も見つかったという。「赤は王墓の装飾によく使われる色で、マヤの人々にとっては血の象徴であり、神聖な生命力を表すと考えられていた」と、テキサス大学オースティン校でマヤ時代を研究するデイビッド・スチュアート(David Stuart)氏は話す。 マヤ人の祖先を含むアメリカ先住民は、紀元前8000年前後にユカタン半島に定住を始めた。以降、グアテマラ、ベリーズ、エルサルバドル、メキシコおよびホンジュラスにわたるメソアメリカ地域で、いくつもの文明

    パレンケ遺跡の墓地、本格調査開始
  • 王国初期の手掛かり、パレンケの墓地

    メキシコ南東部、パレンケ遺跡の墓室の壁に描かれたカン・バラム(Kan Bahlam)王。手の込んだ頭飾りと盾を誇示している。「カン」はヘビ、「バラム」はジャガーを意味する。全部で9人描かれた人物について、テキサス大学のデイビッド・スチュアート(David Stuart)氏は、「墓に埋葬されている王家の祖先たちであろう」と推測する。9人の描写は、他のパレンケ王家の墓でも繰り返し使われているテーマのようだ。パレンケで最も高いピラミッド「碑文の神殿」内に眠る、パカル王の壮大な墓もそのひとつだ。カン・バラム王の父親に当たるバカル王は紀元615年、12才で王位を継ぎ、80歳までパレンケの最盛期を築いたといわれる。世界クラスの繁栄都市に成長させ、多くの建造物を建立した。しかし、パカル王以前のことはほとんどわかっていない。 Photograph courtesy Hector Montano, INAH

    王国初期の手掛かり、パレンケの墓地
  • 被葬者の謎、パレンケの墓地

    メキシコ南東部の古代遺跡パレンケで発見された墓室の壁には、この横顔のような人物が9人描かれている。メキシコ国立人類学歴史学研究所(INAH)は、墓の主はパレンケ王朝の開祖、紀元431~435年在位のクック・バラム1世(K'uk' Bahlam I)と推測している。しかし、テキサス大学のデイビッド・スチュアート(David Stuart)氏によると、様式や内部で見つかった陶磁器などから、6世紀頃の造営である可能性もあるという。 Photograph courtesy Hector Montano, INAH メキシコ南東部の古代遺跡パレンケで発見された墓室の壁には、この横顔のような人物が9人描かれている。 メキシコ国立人類学歴史学研究所(INAH)は、墓の主はパレンケ王朝の開祖、紀元431~435年在位のクック・バラム1世(K'uk' Bahlam I)と推測している。 しかし、テキサス大学

    被葬者の謎、パレンケの墓地
  • 特徴的な深紅色、パレンケの墓地

    新たな調査が始まった、メキシコ南東部にある古代マヤの遺跡パレンケの墓地。地下の墓室でまず注目が集まったのは、鮮やかな深紅色で描かれた壁画だ。アメリカ、テキサス大学のマヤ研究者であるデイビッド・スチュアート(David Stuart)氏は、「写実的な描写で知られる古代都市パレンケでも、非常に特異なスタイルだ」と述べている。「大まかな内容を急いで描いたようだ」。マヤ人の祖先を含むアメリカ先住民は、紀元前8000年前後にユカタン半島に定住を始めた。以降、グアテマラ、ベリーズ、エルサルバドル、メキシコおよびホンジュラスにわたるメソアメリカ地域で、いくつもの文明が興亡。文化的、科学的な業績と共に、現在もそびえ立つ数々の驚くべき建築物で知られている。 Photograph courtesy Hector Montano, INAH 新たな調査が始まった、メキシコ南東部にある古代マヤの遺跡パレンケの墓地

    特徴的な深紅色、パレンケの墓地
  • ファラオを描いた最古の岩絵を再発見

    エジプトのナイル川付近、アスワン北西で再発見された古代の岩絵。「タブロー7a」と呼ばれるこの岩絵の幅は約3メートル。この地域の村名にちなんだ岩絵群、ナグ・エルハンドゥラブの中では最大である。 Photograph courtesy Hendrickx/Darnell/Gatto, Antiquity エジプト南部、アスワン北西のナグ・エルハンドゥラブ(Nag el-Hamdulab)で、5000年以上前のエジプト第1王朝のものと見られる岩絵が再発見された。初めて出土したのは1世紀以上も前になるが、以降その存在はほぼ完全に忘れ去られていた。今回の調査では、ファラオが描かれた最古の岩絵の可能性が出てきている。 岩絵は同国南部の都市アスワンから北西にある砂漠にそびえ立つ岩石に刻まれており、およそ紀元前3200~3100年の間に描かれたとみられる。 当時、北部と南部のエジプトは最高君主、すなわちフ

    ファラオを描いた最古の岩絵を再発見
  • 古代の囚人、エジプトで再発見の岩絵

    エジプト南部で再発見された古代の岩絵。3人の男が歩きながら、前方にあるボートに向かって拳を高く上げているように見える(右)。研究者たちは、ほぼ同時期の他の絵を基に、この男たちが囚人であると考えている。腕を宙に突き上げているような仕草はおそらく、ロープで繋がれた男たちの腕が、背中で縛られている状態を表していると推測される。付近にある2つ目の絵には、ボートに括りつけられているように見える1人の囚人が描かれている。 Photograph courtesy Hendrickx/Darnell/Gatto, Antiquity エジプト南部で再発見された古代の岩絵。3人の男が歩きながら、前方にあるボートに向かって拳を高く上げているように見える(右)。 研究者たちは、ほぼ同時期の他の絵を基に、この男たちが囚人であると考えている。腕を宙に突き上げているような仕草はおそらく、ロープで繋がれた男たちの腕が、

    古代の囚人、エジプトで再発見の岩絵
  • 王家の船、エジプトで再発見の岩絵

    エジプト南部で再発見されたファラオの岩絵。権力と地位を示す5隻の船が描かれている。王家の船に相応しい三日月形または動物の紋章が4隻に施され、神殿が載る1隻はその神聖さを表す。「船はエジプトの統一以前から権力を示す重要なシンボルだった」と、イェール大学の考古学者マリア・ガット氏は語る。太陽神は船に乗って天空を巡ると信じられていており、その化身であるファラオも同様に死後の世界へ向かうと考えられていた。船団を組む岩絵と碑文から、2年に1度ファラオが王国全土を巡る「ホルスの行幸」の様子と推測される。天空と太陽の神ホルスの化身とされていたファラオは家臣らと共に、壮麗に仕立てた船列でナイル川を航行しながら税金を徴収して回った。「一種の政治的な示威活動の先駆けと言える」と同氏は指摘する。「大勢でやって来る豪華な一行に、ナイル川沿いの小さな集落に暮らす住民たちは圧倒されたことだろう」。 Photograp

    王家の船、エジプトで再発見の岩絵
  • 狩猟の様子、エジプトで再発見の岩絵

    エジプト南部、アスワン北西のナグ・エルハンドゥラブ(Nag el-Hamdulab)で再発見された岩絵。判別が難しいが、長い角の牛の群れと、2人の人間、2匹のイヌが描かれており、狩りの様子とも考えられる。エジプト王朝の黎明期にはありふれた光景であった。狩猟は上流階級の娯楽で、自然に対する支配と自己の能力を野生の雄牛との対決で誇示する。一方、この岩絵の穏やかな筆致から、租税の1種として王に徴収された牛の群れと牛飼いの様子とも受け取れる。ナグ・エルハンドゥラブの国境は、かつてエジプト南部のヌビア(Nubia)に隣接していた。住人は遊牧民であったが、後にエジプト軍兵士として王朝に仕えるようになる。 Photograph courtesy Hendrickx/Darnell/Gatto, Antiquity エジプト南部、アスワン北西のナグ・エルハンドゥラブ(Nag el-Hamdulab)で再発

    狩猟の様子、エジプトで再発見の岩絵
  • 進む遺跡破壊、エジプトで再発見の岩絵

    丘陵の中腹にある傾斜した岩壁に、船に乗ったファラオが描かれている。エジプト南部、アスワン北西のナグ・エルハンドゥラブ(Nag el-Hamdulab)で見つかった岩絵は、いずれも不毛な砂漠地帯に隣接している。昔から孤立した険しい場所にも関わらず、破壊の手から免れることはできなかった。故意に削られたり、人の名前と“1960”という年を表す数字が約5000年前の岩絵に彫られていた例もある。今回再発見された岩絵の今後について、研究者らは懸念の色を隠せない。ナグ・エルハンドゥラブは監視員が2人体制で見張っているが、人口の多いナイル川東岸と西岸を結ぶ橋が建設され、ここ15年ほどで周辺には人が多く出入りするようになった。「岩絵の破壊は非常に残念。数十年前まではほぼ完全な状態で保存されていたのに。重要な遺跡なので、保護・保存する態勢を早急に整える必要がある」と、イェール大学の考古学者マリア・ガット氏は訴

    進む遺跡破壊、エジプトで再発見の岩絵
  • 冬虫夏草に抗炎症作用成分を確認

    冬虫夏草を売るチベットの遊牧民が都会のバイヤーと交渉中。 Photograph by Michael Yamashita, National Geographic チベットの山地に生息する冬虫夏草(トウチュウカソウ)は、土の中で暮らす蛾の幼虫に寄生する菌類だ。感染すると、幼虫の体内で菌がゆっくりと成長する。幼虫は脳を乗っ取られ、再び胞子を放出できる場所まで移動させられる。 SFの話に聞こえるかもしれない。しかし、病気に苦しむ中国人やチベットの遊牧民にとってこの冬虫夏草は希望であり、大金を手にするチャンスだ。中国の市場では「金の虫」、「チベットのキノコ」などと呼ばれ、1ポンド(約453グラム)あたり最高5万ドル(約410万円)で売られている。癌(がん)、ぜんそく、勃起不全(ED)などあらゆる病気を治すと考えられており、患者は伝統医学に従い、菌に感染した幼虫を茶にして飲んだり、そのままかみ砕い

    冬虫夏草に抗炎症作用成分を確認
  • 伸び悩むEV、ルノー・ゾエは起爆剤に?

    ルノーの小型EV「ゾエ」(ZOE)が、イギリスで開かれた「フューチャー・カー・チャレンジ」レースで優勝した。ヨーロッパで来年発売予定のゾエは、価格の安さでEV市場に消費者を引き込もうとしている。 Photograph courtesy Royal Automobile Club 低価格の小型電気自動車(EV)として来春ヨーロッパ市場にお目見えするルノーの「ゾエ」(ZOE)が、エネルギー効率の良さを競うイギリスのラリーで優勝を果たした。 ゾエは11月初旬に行われた英王立自動車クラブ(RAC)が主催する「フューチャー・カー・チャレンジ」の量産車部門で1位に輝いた。ブライトン~ロンドン間を走る同ラリーで、ゾエは燃費に換算して69.4km/L相当のエネルギー効率を達成した。 日産と13年前から提携しているフランスの自動車会社ルノーは、このゾエで消費者をEVの世界に引き込もうとしている。この小型EV

    伸び悩むEV、ルノー・ゾエは起爆剤に?
  • 宇宙から見るインドの夜景

    NASAの地球観測衛星スオミNPPがとらえた夜のインド亜大陸(11月12日撮影)。スオミNPP搭載の可視赤外撮像機放射計(VIIRS)によって緑から近赤外線までの波長データが集められた。この画像では、判別しやすいように都市の明るさを強調している。 インドの人口は約12億人、人口100万以上の都市が30ある。国境に近いバングラデシュ、ネパール、パキスタンの都市も見えている。毎年秋の5日間、世界中のヒンズー教徒はランプやろうそくに火を灯し、爆竹を鳴らして“光の祭り”ディワリを祝う。たいてい10月中旬から11月中旬に行われ、今年は11月11日に始まった。しかし、ディワリによる光の増加はわずかであり、人工衛星の高度からはその差を判別できない。 Image courtesy Jesse Allen and Robert Simmon, Earth Observatory/SNPP/NASA NASA

    宇宙から見るインドの夜景
  • 恒例のベネチア冠水、その対策は?

    記録的な高潮により浸水したイタリア北部、ベネチア。観光名所のサンマルコ広場には、年中行事を楽しんでしまおうと集う人々もいる(11月11日撮影)。 Photograph by Luigi Costantini, Associated Press 冬の洪水は“水の都”でも珍しくない。しかし、ロイター通信によれば、11日には1872年の観測開始以来6番目の高さとなる1.5メートルの水面上昇を記録したという。 アメリカ、フロリダ州にあるマイアミ大学の地球物理学者シモン・ウドウィンスキ(Shimon Wdowinski)氏は、「満潮と雨が重なると洪水になる。(最近は)強い南風が吹いていたため、潮位がさらに高くなったのだろう」と説明する。 地元の人たちが言う「アックア・アルタ(異常潮位現象)」が起きても、ベネチアの大部分にはまず影響がない。ところが12日は街の4分の3が浸水してしまった。13日現在、水

    恒例のベネチア冠水、その対策は?
  • オープンカフェ、ベネチアの冠水

    洪水に見舞われた夜のベネチア、サンマルコ広場のオープンカフェ。雨具姿でくつろぐ人たちがいる(2012年11月初旬)。可動式堤防「モーゼ計画」が完成していれば、わずかな被害で済んだかもしれない。ベネチアの潟(ラグーナ)とアドリア海を結ぶ3つの入り江の計4カ所に、中空の巨大鋼製パネルを78枚設置して、可動式防潮堤を建設する巨大プロジェクトだ。2003年に着工し、2014年の完成が予定されている。大規模な高潮で洪水の恐れがあるときには、パネルの内部に圧縮空気を送り込む。防潮堤が海底からせり上がって、街の浸水を防ぐ仕組みだ。潮が引いた後に空気を抜けばパネルは海面下に沈み、入り江は普段の姿を取り戻す。 Photograph by Manuel Silvestri, Reuters 洪水に見舞われた夜のベネチア、サンマルコ広場のオープンカフェ。雨具姿でくつろぐ人たちがいる(2012年11月初旬)。 可

    オープンカフェ、ベネチアの冠水
  • 地盤沈下が一因、ベネチアの冠水

    記録的な高潮に見舞われたイタリア北部のベネチア(11月11日)。浸水除けの板を戸口に立てる店舗も手慣れた様子だ。毎年ベネチアを襲う異常潮位現象「アックア・アルタ」は、被害が悪化の一途をたどっている。アメリカ、マイアミ大学のシモン・ウドウィンスキ(Shimon Wdowinski)氏のチームが「Geochemistry, Geophysics, Geosystems」誌で2012年に発表した研究によると、年間約2ミリの地盤沈下が一因という。 Photograph by Manuel Silvestri, Reuters 記録的な高潮に見舞われたイタリア北部のベネチア(11月11日)。浸水除けの板を戸口に立てる店舗も手慣れた様子だ。毎年ベネチアを襲う異常潮位現象「アックア・アルタ」は、被害が悪化の一途をたどっている。アメリカ、マイアミ大学のシモン・ウドウィンスキ(Shimon Wdowinsk

    地盤沈下が一因、ベネチアの冠水
  • 道路が運河のように、ベネチアの冠水

    高潮で水浸しになったイタリア北部のベネチア。11日、道路と運河の区別が付かなくなるまで水位が上昇した。ただし、気候変動のシナリオが悪い方に転んでも、ベネチアの街はそう簡単に水没しないと、科学者たちは口をそろえる。アメリカ、マイアミ大学の地球物理学者シモン・ウドウィンスキ(Shimon Wdowinski)氏は、「海面が9メートルほど上昇すれば話は別だが。100年後でもまずあり得ないね」と話す。 Photograph by Manuel Silvestri, Reuters 高潮で水浸しになったイタリア北部のベネチア。11日、道路と運河の区別が付かなくなるまで水位が上昇した。 ただし、気候変動のシナリオが悪い方に転んでも、ベネチアの街はそう簡単に水没しないと、科学者たちは口をそろえる。アメリカ、マイアミ大学の地球物理学者シモン・ウドウィンスキ(Shimon Wdowinski)氏は、「海面が

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  • 人面の装飾、トラキアの黄金細工

    ブルガリア北東部、スヴェシュタリ村で発掘された、古代トラキアの黄金細工。紀元前3世紀当時の交易相手、古代ギリシャの影響がうかがえる。 指輪やブローチのようだが、写真を見たナショナル ジオグラフィック協会の考古学者フレデリック・ヒーバート(Fredrik Hiebert)氏は、「裏側も確認する必要があるが、馬具の装飾的な留め具として使われた可能性もある」と指摘する。 スヴェシュタリ村には黄金の副葬品が埋められた墳墓が多数存在し、以前から盗掘被害が発生していた。今回の出土品が盗掘を免れたのは、隠し場所が巧妙だったおかげと考えられる。 「周辺数百カ所の墳墓は、盗掘を避けるためにすべて地下に造営されている。土で覆われているので、外部からはわからない」とヒーバート氏は説明する。

    人面の装飾、トラキアの黄金細工
  • 環状首飾り、トラキアの黄金細工

    イオンや空想の動物をあしらった古代トラキアの宝飾品。ブルガリア北東部、スヴェシュタリ村の古代墓地で発見された。アメリカの考古学者フレデリック・ヒーバート氏は「見事だ」と感嘆する一方、「ティアラ(頭部につける装飾品)やネックレスとされているが、トルク(柔軟さを持たない環状首飾り)の可能性がある。私にはティアラに見えない」と述べている。「アレクサンドロス大王やアマゾーン族は数々のハリウッド映画で有名だが、バルカン半島にはまだスポットライトが当たっていない。トラキアの女王を題材にした映画が待ち遠しいね」。 Photograph from ImpactPressGroup/AP ライオンや空想の動物をあしらった古代トラキアの宝飾品。ブルガリア北東部、スヴェシュタリ村の古代墓地で発見された。 アメリカの考古学者フレデリック・ヒーバート(Fredrik Hiebert)氏は「見事だ」と感嘆する一方、

    環状首飾り、トラキアの黄金細工
  • 馬の首、トラキアの黄金細工

    ブルガリア北東部のスヴェシュタリ村で、紀元前3世紀の古代トラキア墳墓から発掘された黄金細工。考古学者チームによると、写真の馬の頭部は、鉄製の轡(くつわ)に取り付けられていたという。古代トラキアでは、貴族階級の戦士が社会を支配。ドナウ川の河口付近にあった当時最大規模の金鉱床から、精巧な金細工を大量に製作していた。北の古代スキタイ、南の古代ギリシャなど、近隣地域と盛んに交易し、その影響は芸術様式にも現れている。 Photograph from ImpactPressGroup/AP ブルガリア北東部のスヴェシュタリ村で、紀元前3世紀の古代トラキア墳墓から発掘された黄金細工。写真の馬の頭部は、鉄製の轡(くつわ)に取り付けられていたという。 古代トラキアでは、貴族階級の戦士が社会を支配。ドナウ川の河口付近にあった当時最大規模の金鉱床から、精巧な金細工を大量に製作していた。北の古代スキタイ、南の古代

    馬の首、トラキアの黄金細工
  • 古代トラキアの黄金細工を発見

    ブルガリア北東部、スヴェシュタリ村で新たに発掘された紀元前4~3世紀の黄金細工。馬の頭部、指輪やブローチ(画像右上)、小さな女性の胸像など、衣服の装飾品と考えられている。 Photograph by Emil Iordanov, BGNES/Reuters ブルガリア北東部のスヴェシュタリ村で、紀元前4世紀末~3世紀初頭の古代トラキア墳墓から多数の黄金細工が発掘された。11月8日にブルガリアの考古学者チームが発表した。 見つかったのは、指輪やブローチ、小さな女性の胸像、馬の頭部を象った装飾品などで、スヴェシュタリ村にあるトラキア系民族ゲタイ人の墳墓150カ所のうち、最も大きな墳墓に副葬品として埋められていた。「ゲタイ人支配の最盛期に関する驚くべき発見だ」と、発掘調査を率いた考古学者ディアナ・ゲルゴバ(Diana Gergova)氏はロイター通信に語っている。 ブルガリア科学アカデミー付属考

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  • “巨人症”の古代ローマ人の骨を確認

    ホルモン異常の一種、巨人症を患っていた古代ローマの男性の脛骨(膝から足首の間の骨)。同時代の通常の男性(下)と比べるとはるかに大きい。 Photograph by Simona Minozzi, Endocrine Society 1991年にローマで発掘された古代人の骨をイタリアの研究チームが解析したところ、下垂体異常で成長ホルモンが過剰分泌される疾患、“巨人症”の患者と判明した。 身長は約202センチで、紀元3世紀ごろのローマ男性の平均167センチよりかなり高い。ちなみに現在、最も身長が高い男性は251センチである。 巨人症は幼少期に発症し、脳下垂体の異常によって過度に身長が伸びる。およそ30万人に1人の非常にまれな疾患で、古代人の骨には発見例がほとんどなかったという。 ポーランドとエジプトでは以前、巨人症の“可能性が高い”骨の一部は発見されていた。研究を主導したイタリア、ピサ大学の古

    “巨人症”の古代ローマ人の骨を確認
  • マヤ文明の衰退は気候変動のせい?

    最新の研究によると、マヤ文明が栄えたのは湿潤な気候のおかげだったという。 Illustration by Roy Andersen, National Geographic 文明の盛衰は世の常だが、高度なマヤ文明の衰退は謎に包まれている。滅びた原因はどこにあったのか。最新の研究によると、壊滅的な火山噴火や地震、伝染病ではなく、気候変動が大きな要因だったという。 マヤ文明は、まず紀元300~660年ごろに栄えた。「古典期」と呼ばれる時代の始まりで、グアテマラからベリーズ、メキシコのユカタン半島にかけておよそ60の都市が誕生。それぞれの都市に6~7万のマヤ人が暮らし、ピラミッド神殿や太陽暦、人類初のホットチョコレートを生み出していった。 ところが、200年以上にわたる衰退期が訪れ、1100年ごろにはかつて繁栄を極めたマヤの都市に住む者はいなくなっていた。マヤ人はどこに、そしてなぜ消えたのか。歴

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  • “欧州最古の町”、堅固な防壁の理由

    ブルガリアの塚から、おそらくヨーロッパ最初期の大規模な防御設備が見つかった。塩の生産施設が見つかったサルニツァータ近郊のバルナでも、銅器時代のバルカン半島で交易が盛んだったことを裏付ける金の遺物(枠内)が数十年前に見つかっている。 Photographs by V. Nikolov, Bulgarian National Institute of Archaeology/EPA; (inset) James L. Stanfield, National Geographic 先ごろ“ヨーロッパ最古の町”と報じられ、物議を醸しているブルガリアのサルニツァータ遺跡。6500年前の遺跡で、近郊からはヨーロッパ最古とされるまとまった金製品も出土している。しかし、同遺跡が歴史上にどのような位置を占めるにせよ、そこには大いに守る価値のあるものが存在したことは確かなようだ。 先週の発表によると、遺跡の集

    “欧州最古の町”、堅固な防壁の理由
  • ペリカンの羽、10月ベストフォト

    カッショクペリカンの羽を滑り落ちる雨滴。10月4日、ドイツ北部のハノーファー動物園で撮影。野生種の生息地は北米だが、DDTのような化学農薬の漏出で一時激減した。しかし、1972年にDDTの使用が禁止されてから復活し、2009年にはカリフォルニア州の絶滅危惧種リストから外れている。 Photograph by Jochen Luebke, European Pressphoto Agency カッショクペリカンの羽を滑り落ちる雨滴。10月4日、ドイツ北部のハノーファー動物園で撮影。野生種の生息地は北米だが、DDTのような化学農薬の漏出で一時激減した。しかし、1972年にDDTの使用が禁止されてから復活し、2009年にはカリフォルニア州の絶滅危惧種リストから外れている。◆ベストフォト選考理由 「ほとんどモノクロに近いが、美しい青みがかった灰色がそう見せている。大きさと方向が違う羽の組合せが、絶

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  • 溶ける滝、10月ベストフォト

    アイスランド南部にあるスコゥガフォスの滝。幅約25メートル、落差約60メートルの同国最大級の規模で、この地に最初に入植したバイキングが、裏側に財宝を隠したという言い伝えがある。夜間の長時間露光が効果的で、凍結した滝が下の方から溶けているように見える。 Photograph by Massimo Margagnoni, My Shot アイスランド南部にあるスコゥガフォスの滝。幅約25メートル、落差約60メートルの同国最大級の規模で、この地に最初に入植したバイキングが、裏側に財宝を隠したという言い伝えがある。夜間の長時間露光が効果的で、凍結した滝が下の方から溶けているように見える。◆ベストフォト選考理由 「長時間露光で滝を狙うケースは多いが、この作品には多くの独創性が感じられる。下方の闇に消えていく線が美しく、ネガティブスペース(被写体の周囲の空間)をうまく使って水平線を強調している点も新鮮

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  • チワワのあくび、10月ベストフォト

    チワワの子犬が大あくび。10月7日、米ナショナル ジオグラフィックのフォトコミュニティ・サイト「My Shot」に投稿された。アメリカンケネルクラブ(American Kennel Club)によると、チワワはアメリカの人気犬種ベスト15に入るという。 Photograph by Massimo Margagnoni, My Shot チワワの子犬が大あくび。10月7日、米ナショナル ジオグラフィックのフォトコミュニティ・サイト「My Shot」に投稿された。アメリカンケネルクラブ(American Kennel Club)によると、チワワはアメリカの人気犬種ベスト15に入るという。◆ベストフォト選考理由 「一見どこにでもいる可愛いチワワだけど、実は細めた目で飼い主の動きを追いながら、ドジだなぁって笑ってたりして」、モニカ・コーコラン氏(フォト編集主任)。 「色とりどりの柔らかなパステルカ

    チワワのあくび、10月ベストフォト
  • 雪の足跡、10月ベストフォト

    また1人の旅人が固雪の上に足跡を残す。ベラルーシ南東部の都市、ゴメリの風景(10月6日撮影)。 Photograph by Alexander Zozulya, Your Shot また1人の旅人が固雪の上に足跡を残す。ベラルーシ南東部の都市、ゴメリの風景(10月6日撮影)。◆ベストフォト選考理由 「写真の構図に注意が払われている。大小さまざまな足跡の来し方行く末をたどりたくなるね」、クリス・コムズ氏(ニュースフォト編集者)。 Photograph by Alexander Zozulya, Your Shot

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  • 客を待つタクシー、10月ベストフォト

    インドのムンバイ郊外、マンションの前で客を待つタクシードライバー(10月3日)。ムンバイには2種類のタクシーが走っている。塗装が黒と黄色のタクシーはエアコンがなく料金が安い。青と銀色はエアコン付きで割高だ。 Photograph by Vivek Prakash, Reuters インドのムンバイ郊外、マンションの前で客を待つタクシードライバー(10月3日)。ムンバイには2種類のタクシーが走っている。塗装が黒と黄色のタクシーはエアコンがなく料金が安い。青と銀色はエアコン付きで割高だ。◆ベストフォト選考理由 「興味深いストーリーが隠されているに違いない。このシーンの成り行きを知りたくなる」、アミナ・エル・バナヨシ(Amina El Banayosy)氏(フォト・インターン)。 「日常生活のワンシーンを切り取ったポートレートだね。“1日の終わり”とでも言おうか。格子状に並ぶ窓の明かりと、ハンド

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  • メッカ巡礼、10月ベストフォト

    サウジアラビア、イスラム教徒の聖地メッカ近郊のアラファト山(慈悲の山)に集う巡礼者(10月25日撮影)。イスラム教徒の神聖な義務である年1度の巡礼「ハッジ」の期間中、何百万人もの巡礼者がこのイスラム教誕生の地を訪れ、祈りを捧げる。 Photograph by Hassan Ammar, AP サウジアラビア、イスラム教徒の聖地メッカ近郊のアラファト山(慈悲の山)に集う巡礼者(10月25日撮影)。イスラム教徒の神聖な義務である年1度の巡礼「ハッジ」の期間中、何百万人もの巡礼者がこのイスラム教誕生の地を訪れ、祈りを捧げる。◆ベストフォト選考理由 「多層的で柔らかい色調の背景と、前景の男女との対比が印象的だ」、アミナ・エル・バナヨシ(Amina El Banayosy)氏(フォト・インターン)。 Photograph by Hassan Ammar, AP

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  • 2つの江南、10月ベストフォト

    韓国、ソウル市江南(カンナム)区のはずれ、九龍(クリョン)村と呼ばれるスラム街で、掘っ立て小屋のような教会の前を通行人が横切る(10月30日撮影)。遠くには、富裕層が暮らす江南区の超高層ビルがそびえ立つ。 Photograph by Lam Yik Fei, Getty Images 韓国、ソウル市江南(カンナム)区のはずれ、九龍(クリョン)村と呼ばれるスラム街で、掘っ立て小屋のような教会の前を通行人が横切る(10月30日撮影)。遠くには、富裕層が暮らす江南区の超高層ビルがそびえ立つ。◆ベストフォト選考理由 「非常に奥行きに富んだ作品だ。傾く外灯に照らされた雑草、十字架のネオン、そしてかなたにそびえる超高層ビル。ポツンとある明るい色彩によって構図の奥深さがうまく表現されている。なにか不穏な雰囲気とディティールの豊富さが人の目を引きつけるね」、ベン・フィッチ(Ben Fitch)氏(フォト共

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  • オタマジャクシ、10月ベストフォト

    スイレンの茎の森を泳ぐオタマジャクシの大群。10月10日、米ナショナル ジオグラフィックのフォトコミュニティ・サイト「My Shot」に投稿された。 Photograph by Eiko Jones, Your Shot スイレンの茎の森を泳ぐオタマジャクシの大群。10月10日、米ナショナル ジオグラフィックのフォトコミュニティ・サイト「My Shot」に投稿された。◆ベストフォト選考理由 「水中にこんな光景が隠されていたなんて。カメラは未知の世界への入り口だと改めて実感する。オタマジャクシと同じ視点が体験できる印象深い一枚だ」、アミナ・エル・バナヨシ(Amina El Banayosy)氏(フォト・インターン)。 「色、光、被写体ともに独特で、普通の水中写真とは一線を画している。隊列を組んだ兵士にも見えた」、モニカ・コーコラン氏(フォト編集主任)。 Photograph by Eiko

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  • 犠牲祭の準備、10月ベストフォト

    パキスタン最大の都市カラチ。イスラム教の祝日「イード・アル・アドハー(犠牲祭)」を翌日に控えて、生贄を屠るナイフを研ぐ商人(10月25日撮影)。忠誠心の証しとして息子を神に捧げた預言者アブラハム(イブラヒム)を讃えるために、世界中のイスラム教徒が執り行う祝祭である。 Photograph by Asif Hassan, AFP/Getty Images パキスタン最大の都市カラチ。イスラム教の祝日「イード・アル・アドハー(犠牲祭)」を翌日に控えて、生贄を屠るナイフを研ぐ商人(10月25日撮影)。忠誠心の証しとして息子を神に捧げた預言者アブラハム(イブラヒム)を讃えるために、世界中のイスラム教徒が執り行う祝祭である。◆ベストフォト選考理由 「黄金に輝くナイフの火花と、寒々しい色合いの作業着がうまく調和している」、アミナ・エル・バナヨシ(Amina El Banayosy)氏(フォト・インター

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  • ヒトの脳は加熱調理で進化した?

    コンゴ共和国、ポワント・ノワールに住むニシローランドゴリラ。エサを生でべる霊長類は、脳の発達に限界がある。 Photograph by Michael Nichols, National Geographic 最新の研究によると、およそ180万年前に人類の脳のサイズが急激に大きくなったのは、加熱調理の登場が直接影響しているという。 現生人類の祖先と考えられているホモ・エレクトスは、加熱調理を覚えて、60万年の間に脳が2倍に進化した。ゴリラやチンパンジーなど大型類人猿は、体の大きさはヒト属とそれほど変わらないが、未加工の料しかべないので、脳の拡大が起きなかった。 研究チームの一員で、ブラジルにあるリオデジャネイロ連邦大学、生物医科学研究所(Institute of Biomedical Sciences)の神経科学者スザーナ・エルクラーノ・アウゼル(Suzana Herculano-H

    ヒトの脳は加熱調理で進化した?
  • 地下鉄駅、「サンディ」上陸前のNY

    ハリケーン「サンディ」の接近に伴って一時閉鎖が決まったニューヨーク、グランドセントラル駅(10月28日撮影)。既に人影もまばらだ。サンディ上陸による洪水などの被害に備え、ニューヨークでは28日夜から交通機関がすべて運休となった。CNNによれば、北米最大の同市交通網は1日に約850万人が利用する。全面運休は異例の事態だという。 Photograph by Anthony Behar, Sipa/AP ハリケーン「サンディ」の接近に伴って一時閉鎖が決まったニューヨーク、グランドセントラル駅(10月28日撮影)。既に人影もまばらだ。 サンディ上陸による洪水などの被害に備え、ニューヨークでは28日夜から交通機関がすべて運休となった。CNNによれば、北米最大の同市交通網は1日に約850万人が利用する。全面運休は異例の事態だという。 Photograph by Anthony Behar, Sipa/

    地下鉄駅、「サンディ」上陸前のNY
  • 証券取引所、「サンディ」上陸前のNY

    普段の喧騒は鳴りを潜め、不気味なほど閑散としたニューヨーク証券取引所NYSE(10月29日撮影)。週明け月曜日のこの日、ハリケーン「サンディ」が東海岸に上陸するおそれを懸念して、アメリカの主要な証券取引所はすべて休場、30日も取引中止が決まった。AP通信によると、天候を理由に取引が中止されるのは過去にあまり事例がない。1996年1月8日に猛吹雪の影響で取引時間が短縮されたことはあるが、悪天候のためにNYSEが閉鎖されるのはハリケーン「グロリア」が襲来した1985年9月27日以来27年ぶりだという。 Photograph by Richard Drew, AP 普段の喧騒は鳴りを潜め、不気味なほど閑散としたニューヨーク証券取引所NYSE(10月29日撮影)。 週明け月曜日のこの日、ハリケーン「サンディ」が東海岸に上陸するおそれを懸念して、アメリカの主要な証券取引所はすべて休場、30日も取引中

    証券取引所、「サンディ」上陸前のNY
  • 繁華街、「サンディ」上陸前のNY

    閑散としたニューヨークのタイムズ・スクエア(10月29日未明)。通りを歩いている人はたった1人しかいない。CNNによると、ハリケーン「サンディ」が東海岸に接近した影響で、ニューヨークのほかワシントンD.C.やフィラデルフィアでも、空および陸上の交通機関はストップしているという。影響を受ける通勤者や通学者は1000万人以上に上ると見られている。 Photograph by John Minchillo, AP 閑散としたニューヨークのタイムズ・スクエア(10月29日未明)。通りを歩いている人はたった1人しかいない。 CNNによると、ハリケーン「サンディ」が東海岸に接近した影響で、ニューヨークのほかワシントンD.C.やフィラデルフィアでも、空および陸上の交通機関はストップしているという。影響を受ける通勤者や通学者は1000万人以上に上ると見られている。 Photograph by John M

    繁華街、「サンディ」上陸前のNY
  • 蛍光色の脳、顕微鏡の描く世界2012

    2012年度ニコン顕微鏡写真コンテスト“Small World”第1位:ゼブラフィッシュ胎芽の血液脳関門。20倍に拡大したゼブラフィッシュの胚の脳。クリスマスの電飾が絡まっているようだ。アメリカ、テネシー州メンフィスにある、聖ジュード小児研究病院(St. Jude Children's Research Hospital)のジェニファー・ピーターズ(Jennifer Peters)氏とマイケル・テイラー(Michael Taylor)氏が撮影。10月23日に結果発表があった顕微鏡写真コンテスト“Small World”で見事、第1位に輝いた。生きた動物の血液脳関門の形成をとらえた初の写真と考えられている。 Image courtesy Jennifer Peters and Michael Taylor, Nikon Small World 2012年度ニコン顕微鏡写真コンテスト“Smal

    蛍光色の脳、顕微鏡の描く世界2012
  • クモヒトデ、顕微鏡の描く世界2012

    2012年度ニコン顕微鏡写真コンテスト“Small World”第10位:クモヒトデ。トゲだらけのクモヒトデ。ブラジル、サンパウロ大学のアルバロ・ミゴット(Alvaro Migotto)氏が撮影し(8倍)、第10位に入賞した。試料が散乱した光を観察する「暗視野顕微鏡」を使用、高いコントラストを実現している。クモヒトデはヒトデと近縁で、全身がギザギザのトゲに覆われており、赤や白、縞模様など、さまざまな色の個体が存在する。 Image courtesy Alvaro Migotto, Nikon Small World 2012年度ニコン顕微鏡写真コンテスト“Small World”第10位:クモヒトデ トゲだらけのクモヒトデ。ブラジル、サンパウロ大学のアルバロ・ミゴット(Alvaro Migotto)氏が撮影し(8倍)、第10位に入賞した。試料が散乱した光を観察する「暗視野顕微鏡」を使用、高

    クモヒトデ、顕微鏡の描く世界2012
  • ハエの目、顕微鏡の描く世界2012

    2012年度ニコン顕微鏡写真コンテスト“Small World”第4位:キイロショウジョウバエのさなぎ。まるで宇宙船のように輝く、キイロショウジョウバエのさなぎの視覚系(1500倍に拡大)。アメリカ、バージニア州のハワード・ヒューズ医学研究所に所属するW・ライアン・ウィリアムソン氏の作品で、2012年度の第4位を獲得した。金色の小さな突起が付いた茶色の部分は網膜、青みがかった紫色は光受容体の軸索、緑色は脳である。 Image courtesy W. Ryan Williamson, Nikon Small World 2012年度ニコン顕微鏡写真コンテスト“Small World”第4位:キイロショウジョウバエのさなぎ まるで宇宙船のように輝く、キイロショウジョウバエのさなぎの視覚系(1500倍に拡大)。アメリカ、バージニア州のハワード・ヒューズ医学研究所に所属するW・ライアン・ウィリアム

    ハエの目、顕微鏡の描く世界2012
  • ドバイの人造湖、衛星画像

    アラブ首長国連合(UAE)の中心都市ドバイで一際目立つ、人造湖ブルジュ・ドバイの青。1月4日、超高解像度光学衛星プレアデス(Pleiades)が高度700キロから撮影、欧州宇宙機関(ESA)が公開した(10月10日)。世界一の高層ビル、ブルジュ・ハリファの足下から長い影が伸びている(右上)。 Image courtesy ESA アラブ首長国連合(UAE)の中心都市ドバイで一際目立つ、人造湖ブルジュ・ドバイの青。1月4日、超高解像度光学衛星プレアデス(Pleiades)が高度700キロから撮影、欧州宇宙機関(ESA)が公開した(10月10日)。世界一の高層ビル、ブルジュ・ハリファの足下から長い影が伸びている(右上)。 Image courtesy ESA

    ドバイの人造湖、衛星画像
  • 土食は妊婦だけじゃない? 異食の調査

    土、塩、植物性ショートニングを混ぜ合わせ、クッキーを作る女性たち。ハイチのポルトー・プランスで撮影(資料写真)。 Photograph by Ariana Cubillos, AP 品ではないものをべたがる異は妊婦だけではなく、意外なほど広範に認められる現象であることが判明した。新たな研究によると、異品ではない物質を無性にべたがり、実際に口にする行為)は、男性の間にも意外なほど頻繁に行われているという。 今回の研究は異の習慣が広く見受けられるマダガスカルで行われ、この習慣が男性の間でも高頻度で見られることを突き止めた初めての例だという。実際、今回調査対象になった男性たちは、これまでの研究で主に異が多いとされてきた妊婦や思春期の若者と比べても、少なくとも同頻度で品ではない物質をべていたとのことだ。 ではなぜ、異症の男性が急に数多く見つかったのだろうか? 今回の研究論文

    土食は妊婦だけじゃない? 異食の調査
  • バイキングの開拓地、バフィン島で発見

    考古学者のパトリシア・サザーランド氏(オレンジの上着)。バフィン島の遺跡で、バイキングの開拓地を探している。 Photograph by David Coventry, National Geographic 10月にカナダで開かれた会合で、考古学者のパトリシア・サザーランド(Patricia Sutherland)氏が、新たなバイキングの開拓地の強力な証拠を発見したと発表した。 カナダ、ニューファンドランド・メモリアル大学の非常勤教授(考古学)でスコットランド、アバディーン大学の研究員でもあるサザーランド氏率いるチームは、カナダ北極圏のバフィン島で何世紀も前の建物遺跡を発掘しているとき、非常に興味深い砥石を発見した。刃物を研いで刻まれた溝には、青銅などの銅合金の痕跡が残っていた。バイキングの鍛冶職人は銅合金を材料としていたが、北極圏の先住民には広まっていない。 バイキングの船乗りたちが、

    バイキングの開拓地、バフィン島で発見
  • サンゴ礁の浅瀬、9月ベストフォト

    ミドリイシ属の枝状サンゴが水面に映った自分の姿と向き合っている。オーストラリア、ヘロン島のグレートバリアリーフ付近で撮影された。われわれがサンゴだと思っているのは、実は軟らかいサンゴポリプの持つ石灰質の骨格が堆積したものだ。ポリプが岩に自らを固定し、たくさんのクローンに分裂し始めると、われわれの知るサンゴ礁ができあがる。 Photograph by Tom Northwood, Your Shot ミドリイシ属の枝状サンゴが水面に映った自分の姿と向き合っている。オーストラリア、ヘロン島のグレートバリアリーフ付近で撮影された。 われわれがサンゴだと思っているのは、実は軟らかいサンゴポリプの持つ石灰質の骨格が堆積したものだ。ポリプが岩に自らを固定し、たくさんのクローンに分裂し始めると、われわれの知るサンゴ礁ができあがる。 ◆ベストフォト選考理由 「接近して撮っているところがいい。とても不思議な

    サンゴ礁の浅瀬、9月ベストフォト
  • ニューアークの信号、9月ベストフォト

    ニュージャージー州ニューアークの嵐が来そうな空をバックに、信号の灯りがランタンのようにともっている(9月18日撮影)。 Photograph by Julio Cortez, AP ニュージャージー州ニューアークの嵐が来そうな空をバックに、信号の灯りがランタンのようにともっている(9月18日撮影)。◆ベストフォト選考理由 「いくつもの信号という絵的に目を引く要素以上に、バイクで通りを横切る人のシルエット、はためくアメリカ国旗、立ち並ぶ道路標識など、その間にちりばめられたディテールがこの写真を面白くしている」、アレクサ・キーフ氏(フォトプロデューサー)。 Photograph by Julio Cortez, AP

    ニューアークの信号、9月ベストフォト
  • “72歳は新しい30歳”:長寿の謎

    人は休むとサビ付くのだろうか? 温室で元気に働く日の高齢者(資料写真)。 Photograph by Randy Olson, National Geographic この100年間で先進国の死亡率が大幅に下がっている。最新の研究によれば、日の72歳の死亡率は産業革命前の30歳と同じだという。「つまり、72歳は新しい30歳の始まりだ」と研究論文には書かれている。 現代人は、現生種で人間に最も近いチンパンジーよりはるかに長生きだ。50歳を迎えるチンパンジーはめったにいない。高度な栄養や現代医療など、産業化された暮らしの恩恵にあまり縁のない狩猟採集民でさえ、出生時平均寿命は野生のチンパンジーの2倍に達する。 では、人間が類人猿だった時代から何が変わったのだろう? これほど長命になった大きな理由は生活様式の変化か、それとも遺伝子変異、つまり進化だろうか? 研究チームは、先進国と現代の狩猟採集

    “72歳は新しい30歳”:長寿の謎
  • ネアンデルタール人の謎、解明進む

    DNA情報を元に復元されたネアンデルタール人の女性「ウィルマ」。赤い髪、顔の斑点、白い肌がネアンデルタール人の特徴だ。 Photograph by Joe McNally, National Geographic ネアンデルタール人(ホモ・ネアンデルターレンシス)は、現生人類(ホモ・サピエンス)の近縁種として知られているが、謎の多い種でもある。最近、目覚ましく発達した分析技術により、ネアンデルタール人の秘密が徐々に明らかになり始めた。 例えば、現代の人間のDNAに残るネアンデルタール人の痕跡を分析した最新の研究によると、ネアンデルタール人は、3万7000年前まで現生人類と異種交配を行っていたという。また、別の研究では、アジア人と南アメリカ人に、ほかの地域と比べてネアンデルタール人と共通する遺伝子要素が多いことが判明した。 イギリスにあるロンドン自然史博物館の古人類学者クリス・ストリンガー(

    ネアンデルタール人の謎、解明進む
  • 青や緑の蜂蜜が出現、フランス

    フランス北東部、アルザス地方リボービル村で見つかった“カラフル”な養蜂箱。青や緑の蜂蜜が巣を埋めている。 Photograph by Vincent Kessler, Reuters フランス北東部、アルザス地方リボービル(Ribeauville)の養蜂家は、自分の巣箱で発生した厄介な問題に頭を悩ませている。普段は淡い黄金色の蜂蜜が突然、青や緑のゾッとしない色に変わってしまったのだ。 フランスの蜂蜜には、「植物の花蜜に由来し、色は無色に近いものから暗褐色」という品質基準が課せられている。当然ながら、この不思議な色をした蜂蜜は販売できない。 「新鮮な蜂蜜の風味や色は、蜜源の花の種類で決まる。オレンジの花蜜は明るい色で柑橘類の香りがする蜂蜜となり、ソバの花蜜は濃い色で土の香りが強くなる」と、メリーランド大学カレッジパーク校でミツバチを研究するデニス・ファンエンゲルスドープ(Dennis van

    青や緑の蜂蜜が出現、フランス
  • 北朝鮮の子ども、9月ベストフォト

    北朝鮮の学校の演芸会で、おもちゃのバーベルを持ち上げる子ども(9月13日撮影)。この子どもたちは幸運な境遇にあると言えるだろう。2012年に国連がまとめたレポートによると、北朝鮮では、5歳以下の子どもの3分の1近くが栄養失調に苦しんでいるという。 Photograph by David Guttenfelder, AP 北朝鮮の学校の演芸会で、おもちゃのバーベルを持ち上げる子ども(9月13日撮影)。この子どもたちは幸運な境遇にあると言えるだろう。2012年に国連がまとめたレポートによると、北朝鮮では、5歳以下の子どもの3分の1近くが栄養失調に苦しんでいるという。◆ベストフォト選考理由 「がらんとした無機質な空間が、かえってポップな雰囲気を生んでいる。鮮やかな色のカーペットと服、子どもとバーベル、とても奇抜な組合せだ」、モニカ・コーコラン氏(フォト編集主任)。 Photograph by D

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  • 丸い窓で休憩、9月ベストフォト

    インド西部、アフマダーバードの郊外に新しくできた商業ビルで休憩する労働者たち(9月8日撮影)。アフマダーバードはインドで10指に入る大都市で、急成長を遂げている。英誌「The Economist」の調査機関エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)と米金融大手シティグループが今年3月に発表した世界の都市競争力ランキングでも、「経済力(Economic strength)」の分野で19位にランクインした。 Photograph by Amit Dave, Reuters インド西部、アフマダーバードの郊外に新しくできた商業ビルで休憩する労働者たち(9月8日撮影)。アフマダーバードはインドで10指に入る大都市で、急成長を遂げている。英誌「The Economist」の調査機関エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)と米金融大手シティグループが今年3月に発表した世界の都市競争力

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  • 夢の輪、9月ベストフォト

    50階建て相当の高さがあり、いやでも目に入る。もともと観光客向けに、成長著しい中国の遼寧省撫順市に作られた巨大な鉄の輪が、いま都市冒険のジャンピングポイントになろうとしている(9月13日撮影)。EPA通信によると、輪の構造物の内側には4の縄ばしごが吊るされており、輪の頂点にはバンジージャンプの足場設置が検討されている。 Photograph by Heng Yuan, European Pressphoto Agency 50階建て相当の高さがあり、いやでも目に入る。もともと観光客向けに、成長著しい中国の遼寧省撫順市に作られた巨大な鉄の輪が、いま都市冒険のジャンピングポイントになろうとしている(9月13日撮影)。EPA通信によると、輪の構造物の内側には4の縄ばしごが吊るされており、輪の頂点にはバンジージャンプの足場設置が検討されている。◆ベストフォト選考理由 「輪の構造物と繊細そうなク

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  • ステージの袖、9月ベストフォト

    ナイジェリア最大の都市、ラゴスのナイトクラブ「ニュー・アフリカ・シュライン」で出番を待つダンサー(9月16日撮影)。ここでは、アフロビートの伝説であるフェラ・クティの息子、フェミ・クティが毎週プレイしている。 Photograph by Jon Gambrell, AP ナイジェリアのメガシティ、ラゴスのナイトクラブ「ニュー・アフリカ・シュライン」で出番を待つダンサー(9月16日撮影)。ここでは、アフロビートの伝説であるフェラ・クティの息子、フェミ・クティが毎週プレイしている。◆ベストフォト選考理由 「撮影者が、左上の角に見える金属屋根の位置など、たいていの人が見過ごすような背景の細部にまで注意を向けているのが明らかだ。同時に、ダンサーの様子からベストタイミングを計っている」、クリス・コムズ氏(ニュースフォト編集者)。 Photograph by Jon Gambrell, AP

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  • 中国の高速鉄道、急速な発展と課題

    高速鉄道は人気を誇っているが、安全性や汚職に対する懸念の声はいまだに減らない(写真は鄭州行きの乗客たち)。 Photograph by Michael Yamashita, National Geographic 土とレンガ作りの自宅に座ったイエ・シャオグァン(Ye Shaoguang)さんは、次の発破に備えて身構える。今は6月。イエさん宅の居間は中国湖南省の自然の恵みで一杯だ。テーブルには摘み取ったばかりのヤマモモ、壺には庭の蜂の巣から取ってきた新鮮な蜂蜜が溢れている。 庭向こうには田園が広がり、その先の谷の側面には大きな口が開く。一帯の山々を貫くトンネルを建設中なのだ。このジャンジアシー(Zhangjiashi)トンネルが2013年に完成すれば、南部の主要都市、昆明と、金融の中心地である上海が時速320キロの列車で結ばれる。 このプロジェクト中国の21世紀の野心を象徴している。高速鉄

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  • 夜の青森港、9月ベストフォト

    青森の港でフェリー搭乗に備える夜間作業員。9月17日に米ナショナル ジオグラフィックのフォトコミュニティ・サイト「My Shot」に投稿された1枚だ。先史時代から人が定住している青森は、フェリーターミナルとしても100年以上の歴史がある。 Photograph by Teruo Araya, Your Shot 青森の港でフェリー搭乗に備える夜間作業員。9月17日に米ナショナル ジオグラフィックのフォトコミュニティ・サイト「My Shot」に投稿された1枚だ。先史時代から人が定住している青森は、フェリーターミナルとしても100年以上の歴史がある。◆ベストフォト選考理由 「下からあおるようなアングルが、フェリーを異様に大きく見せている。奥深く内部に何かが潜んでいるような不穏な雰囲気もあり、彼らはまるでその出現をじっと待っているかのようだ」、ベン・フィッチ(Ben Fitch)氏(フォト共同編

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  • 文句あんの? 9月ベストフォト

    南半球、ペルーの首都リマにあるサンタモニカ女子刑務所で開かれた春分の日を祝う仮装パーティー(9月24日撮影)。受刑者のストレス解消と刑務所内の信頼醸成が目的という。 Photograph by Martin Mejia, AP 南半球、ペルーの首都リマにあるサンタモニカ女子刑務所で開かれた春分の日を祝う仮装パーティー(9月24日撮影)。受刑者のストレス解消と刑務所内の信頼醸成が目的という。◆ベストフォト選考理由 「写真にあふれる鮮やかな色が見る者をひきつける」、クリス・コムズ氏(ニュースフォト編集者)。 Photograph by Martin Mejia, AP

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  • ガザのパルクール、9月ベストフォト

    ガザ地区の朽ち果てた壁でトレーニングしているパレスチナの若者たち。彼らはパルクール(フリーランニング)の選手で、世界の仲間たちと同様、1つの街を巨大な障害物競走のコースと見立てている。パルクールは自己鍛錬のスポーツ。勝ち負けとは無縁で、登る、跳ぶ、走る、回るなどの身体動作を駆使して、設定した地点間をなるべく早く移動し、強靱な精神の獲得を目指すという。 Photograph by Mohammed Salem, Reuters ガザ地区の朽ち果てた壁でトレーニングしているパレスチナの若者たち。彼らはパルクール(フリーランニング)の選手で、世界の仲間たちと同様、1つの街を巨大な障害物競走のコースと見立てている。パルクールは自己鍛錬のスポーツ。勝ち負けとは無縁で、登る、跳ぶ、走る、回るなどの身体動作を駆使して、設定した地点間をなるべく早く移動し、強靱な精神の獲得を目指すという。◆ベストフォト選考

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  • 古代マヤ、ワカ王国の女王の墓を発見

    墓から出土したアラバスター(雪花石膏)製の小さな壺。老女の顔の彫刻が施されている。 Photograph by El Peru Waka Regional Archaeological Project グアテマラ北部の遺跡で、古代マヤ文明の女王が埋葬されたと考えられる墓と遺骨が見つかった。 発見場所は、かつての古代マヤ都市、エル・ペルー(ワカとも呼ばれる)の遺跡だ。西暦672~692年、ワカ王国(Wak=ムカデ)を軍事的に支配していた、カベル女王(Lady K'abel)の墓である可能性が高いという。 今年行われた発掘調査は、ワシントン大学の考古学者デイビッド・フレイデル(David Freidel)氏が率いた。 遺骨とともに、「カベル」という名前が記された陶器の花瓶、翡翠(ひすい)の装身具、石像などさまざまな副葬品が出土した。中でも決定的な証拠となったのが、ホラガイの形をしたアラバスター

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  • チベットでナチス発見の仏像、実は隕石

    “アイアンマン”(鉄の男)と呼ばれるこの仏像の胴体には、昔から吉祥とされる卍(まんじ)模様が刻まれている。 Photograph courtesy Elmar Buchner まさにあっと驚く新事実だ。かつてチベットでナチスが発見した大昔の仏像が、隕石を彫刻したものだったことが判明したのだ。 1938年、チベットに向かったナチスの調査隊がこの仏像を発見し、ドイツに持ち帰った。おそらくはナチスのシンボルである鉤十字と逆方向の卍模様が刻まれている点に興味を持ったとみられる。その後、この“アイアンマン”はミュンヘンで個人が所蔵していたが、2007年に調査が許可された。 それ以来、シュトゥットガルト大学惑星科学研究所のエルマー・ブフナー(Elmar Buchner)氏が、11世紀にチベットで作成されたと考えられているこの仏像の分析にあたってきた。ブフナー氏によれば、仏像はおよそ1万5000年前にモ

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  • 川底から17世紀の大理石、ワルシャワ

    ワルシャワを流れるビスワ川。干ばつで水位が下がり、川底から17世紀の大理石の構造物が多数現れた。写真の彫刻は噴水の一部だったと見られている。 Photograph by Kacper Pempel, Reuters ポーランドの首都ワルシャワを流れるビスワ川。干ばつに見舞われて水かさが減少し、9月には川底に沈んでいた多数の大理石の構造物が姿を現した。17世紀に王宮などの装飾として制作されたもので、ワルシャワの歴史を研究する上で、貴重な手掛かりになるという。 ビスワ川の水位は、18世紀後半に記録を開始してから最も低い状態にある。泥だらけの川底に散らばる大理石の噴水や柱などは、ワルシャワ王宮やカジミエシュ宮殿をはじめとする貴族の社交場を飾っていた。17世紀中葉の「スウェーデン大洪水」の戦乱で略奪されるが、スウェーデンへ運ぶ船がビスワ川で沈没。すべてが水中に沈んでしまった。スウェーデンの侵略者に

    川底から17世紀の大理石、ワルシャワ
  • キリストに妻? 言及の古文書を発見

    問題のパピルス紙片は、2~4世紀ごろのものとされる。 Photograph courtesy Karen L. King 2000年前に生きたイエス・キリストは、結婚していたのだろうか。これまで何世紀にもわたって取りざたされながら、有力な証拠を欠いていたこの問題が、新たに注目を集めている。きっかけは、キリストのに言及した古いパピルス紙の断片の存在が明らかになったことだ。 このパピルス紙片は、ハーバード大学の歴史学者カレン・キング(Karen King)氏が、その内容を明らかにした研究成果を発表したことで世界的ニュースとなった。名刺よりも小さなその紙片には、数行の手書きの文書が、キリスト教のシンボルを使用するコプト語で綴られていた。文書の最後の行には、イエスの発言の引用という形でこう書かれている。「そしてイエスは言った。私のは……」。 文章は途中で切れており、パピルス紙片はより大きな文書

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  • 瓶入り手紙、最古記録とその歴史

    98年前に海流調査の一環として放流された瓶の中から見つかったメッセージ。 Photograph courtesy Marine Scotland 北海を漂うこと98年、簡素なガラス瓶に入った紙切れが2012年4月、シェトランド諸島付近でスコットランドの船長に網で引き上げられた。しかしその紙切れは、失恋の手紙でもなければ、孤島に置き去りにされた船員のSOSでもなかった。 そこにはこう記されていた。「この葉書を発見した場所と時をご記入の上、お近くの郵便局からご投函ください。折り返し、これが海に放流された場所と時をお教えします。われわれの目的は、北海の深層海流の方向を調査することです」。ロマンチストには期待はずれな内容だ。 アンドリュー・リーパー(Andrew Leaper)氏によって発見され、これまでに回収された最古のものとして8月30日にギネス世界記録に認定されたこの“瓶入り手紙”は、約10

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  • 松林のアカシカ、英生物写真2012

    イギリス、スコットランド北部のハイランド地方にあるケアンゴームズ国立公園にて。2012年イギリス野生生物写真賞、「動物ポートレート(Animal Portraits)」部門優秀作品は、松林の間からこちらを見つめるアカシカのオスが受賞した。写真家ニール・マッキンタイア(Neil McIntyre)氏は、「冬の数カ月間、厳しい季節を乗り越えるためにエサ代をサポートする地権者もいる」とコメントで説明した。「ここでもアカシカを餌付けしていると聞いて、うまく行きそうな予感がしたんだ。ニアミスが続いた後、ついに1頭のオスが完璧な位置に立った。ピントが合う範囲を浅くして、背景をぼかし被写体を浮き上がらせる。狙い通りだ」。 Photograph by Neil McIntyre, BWP Awards イギリス、スコットランド北部のハイランド地方にあるケアンゴームズ国立公園にて。2012年イギリス野生生物

    松林のアカシカ、英生物写真2012
  • ガネットの泳ぎ、英生物写真2012

    今週発表された2012年イギリス野生生物写真賞の最優秀作品「ガネットのジャグジー」。ガネット(ペリカン目カツオドリ科の鳥の総称)が、波の下で魚を求めて激しく泳ぎ回っている。「様々な動きを一度に捉えられたところが気に入っている。水に飛び込む、魚に狙いを定める、捕まえる、べる、そして去って行く。てんでばらばらに見えるが、実は互いの位置を正確に把握している」とドゲット氏はコメントを寄せた。 Photograph by Matt Dogget, BWP Awards 今週発表された2012年イギリス野生生物写真賞の最優秀作品「ガネットのジャグジー」。ガネット(ペリカン目カツオドリ科の鳥の総称)が、波の下で魚を求めて激しく泳ぎ回っている。「様々な動きを一度に捉えられたところが気に入っている。水に飛び込む、魚に狙いを定める、捕まえる、べる、そして去って行く。てんでばらばらに見えるが、実は互いの位置

    ガネットの泳ぎ、英生物写真2012
  • キリギリスの跳躍、英生物写真2012

    見事なジャンプ披露するキリギリス。イギリス人写真家のデール・サットン(Dale Sutton)氏による「自由への跳躍(Leap for Freedom)」が、2012年イギリス野生生物写真賞の「知られざるイギリス(Hidden Britain)」部門で優秀作品に輝いた。高速度写真を専門とする同氏は、撮影の経緯について次のようにコメントしている。「ジャンプ中のキリギリスを見てほしかった。草の茎にとまったバッタやキリギリスは誰でも記憶があると思うが、飛び跳ねた瞬間はなかなかお目にかかれない。特殊な高速フラッシュなどの機材一式を使い、一番良いタイミングでカメラに収めることができた」。 Photograph by Dale Sutton, BWP Awards 見事なジャンプ披露するキリギリス。イギリス人写真家のデール・サットン(Dale Sutton)氏による「自由への跳躍(Leap for

    キリギリスの跳躍、英生物写真2012
  • 逃げるツノメドリ、英生物写真2012

    海でイカナゴを捕まえたニシツノメドリは、くちばしに魚をごっそりぶらさげて巣に戻ってくる。写真家のアマンダ・ヘイズ(Amanda Hayes)氏は、エサを横取りしようとセグロカモメが襲う瞬間を狙っていたが、小さなツノメドリは裏をかいて襲撃をかわし続けていた。1週間以上待たされてウンザリしていたある日、カモメは意外な行動に出る。「ニシツノメドリが着地した途端、セグロカモメが首根っこをくわえて持ち上げた」と同氏は振り返る。「ツノメドリは必死に抵抗。幸いなことに逃げ延びた。見ているこっちもドキドキする瞬間だった」。この攻防は、2012年イギリス野生生物写真賞の「動物行動(Animal Behaviour)」部門賞を獲得した。 Photograph by Amanda Hayes, BWP Awards 海でイカナゴを捕まえたニシツノメドリは、くちばしに魚をごっそりぶらさげて巣に戻ってくる。写真家の

    逃げるツノメドリ、英生物写真2012
  • ハイイロアザラシ、英生物写真2012

    イギリス海峡の洞窟をのぞき込む若いハイイロアザラシ。2012年イギリス野生生物写真賞の「生息地(Habitat)」部門で優秀作品に選ばれた。「カラフルな洞窟を通り抜けるアザラシを見かけて、私は撮影のチャンスを待ち続けた。魚の隠れ家になっているようで、約20分ごとに現れては中をのぞいていった。アザラシにとって重要なエサ場に違いない」と写真家アレキサンダー・マスタード(Alexander Mustard)氏はコメントしている。 Photograph by Alexander Mustard, BWP Awards イギリス海峡の洞窟をのぞき込む若いハイイロアザラシ。2012年イギリス野生生物写真賞の「生息地(Habitat)」部門で優秀作品に選ばれた。「カラフルな洞窟を通り抜けるアザラシを見かけて、私は撮影のチャンスを待ち続けた。魚の隠れ家になっているようで、約20分ごとに現れては中をのぞいて

    ハイイロアザラシ、英生物写真2012
  • 冬のウサギ、英生物写真2012

    寒風吹きすさぶ冬の寒さに、耳を後ろに倒してうずくまる野ウサギ。ジュールズ・コックス(Jules Cox)氏が、スコットランド北部のハイランド地方にあるケアンゴーム国立公園で撮影。2012年のイギリス野生生物写真賞、「イギリスの四季(British Seasons)」部門で優秀作品に輝いた。ケアンゴームの総面積は4528平方キロ、標高1245メートルのケアンゴーム山を擁するイギリス諸島最大の国立公園だ。 Photograph by Jules Cox, BWP Awards 寒風吹きすさぶ冬の寒さに、耳を後ろに倒してうずくまる野ウサギ。ジュールズ・コックス(Jules Cox)氏が、スコットランド北部のハイランド地方にあるケアンゴーム国立公園で撮影。2012年のイギリス野生生物写真賞、「イギリスの四季(British Seasons)」部門で優秀作品に輝いた。 ケアンゴームの総面積は4528

    冬のウサギ、英生物写真2012
  • ハチのゴミ出し、英生物写真2012

    壁の隙間にある巣から現れたハチ。大顎で綿ぼこりを挟み、“ゴミ捨て態勢”に入った。イギリス、ウェールズ地方タン・ア・フロン(Tan-y-fron)在住のデイビッド・トーマス・ハンドリー(David Thomas Handley)氏が裏庭で発見、脚立に登って撮影したという。「週末でハチの巣の駆除業者が休みだった。そこで、写真でも撮ってみようかと思いついたんだ」とハンドリー氏はコメントしている。 Photograph by David Thomas Handley, BWP Awards 壁の隙間にある巣から現れたハチ。大顎で綿ぼこりを挟み、“ゴミ捨て態勢”に入った。イギリス、ウェールズ地方タン・ア・フロン(Tan-y-fron)在住のデイビッド・トーマス・ハンドリー(David Thomas Handley)氏が裏庭で発見、脚立に登って撮影したという。「週末でハチの巣の駆除業者が休みだった。そ

    ハチのゴミ出し、英生物写真2012
  • 保護が課題、民家の台所からマヤ壁画

    グアテマラの民家に描かれたマヤ文明の壁画を記録する、考古学者カタジーナ・ラドニチェカ(Katarzyna Radnicka)氏。「御主人のラミレスさんは、この部屋を小さな博物館にしたい意向だが、資金が不足している」と、同僚のヤロスワフ・ジラウカ(Jaroslaw Zralka)氏は話す。「発見された2008年当時、壁画の背景は真っ白だったが、現在は黄ばんでしまった。ここで煮炊きして生活しているのだから無理もない」。 Photograph by Robert Slabonski グアテマラの民家に描かれたマヤ文明の壁画を記録する、考古学者カタジーナ・ラドニチェカ(Katarzyna Radnicka)氏。「御主人のラミレスさんは、この部屋を小さな博物館にしたい意向だが、資金が不足している」と、同僚のヤロスワフ・ジラウカ(Jaroslaw Zralka)氏は話す。「発見された2008年当時、壁

    保護が課題、民家の台所からマヤ壁画
  • 壁画に香炉、民家の台所からマヤ壁画

    マヤ時代の壁画が発見された、ルーカス・アシコナ・ラミレス(Lucas Asicona Ramirez)さんの台所。「薪ストーブの隣の壁画では、多数の香炉が煙を上げている」と考古学者ヤロスワフ・ジラウカ(Jaroslaw Zralka)氏は話す。ボストン大学の考古学者ウィリアム・サトゥルノ(William Saturno)氏はこう語る。「多分、壁画全体のテーマは“征服の踊り”だ。現在もマヤ人の一部が継承している儀式で、スペイン人風の仮面をかぶり、左手に十字架、右手に剣をもって、スペインによる侵略とマヤ人のキリスト教改宗を嘆いて踊る。そう考えると、壁画のちぐはぐな衣装は驚くに値しない。征服された民族の歴史を忘れないためだったのだろう」。 Photograph by Robert Slabonski マヤ時代の壁画が発見された、ルーカス・アシコナ・ラミレス(Lucas Asicona Ramir

    壁画に香炉、民家の台所からマヤ壁画
  • 文明の名残り、民家の台所からマヤ壁画

    ルーカス・アシコナ・ラミレス(Lucas Asicona Ramirez)さんの自宅で見つかった古代マヤの壁画。笛吹き奏者(左端)とスペイン人の服装をした太鼓奏者が、古代マヤ文明の装飾品を頭に被った人物(右端)のために演奏している様子が描かれている。ラミレス家では、調理や事をする生活の場だった。ポーランド、ヤギェウォ大学の考古学者ヤロスワフ・ジラウカ(Jaroslaw Zralka)氏によると、壁画は家屋の最も古い漆喰(しっくい)の壁に描かれており、スペイン人がグアテマラを征服した16世紀以降に制作されたものとみられる。家屋は築300年以上で、この地域で17~18世紀頃に描かれた絵文書と様式が似ているという。 Photograph by Robert Slabonski ルーカス・アシコナ・ラミレス(Lucas Asicona Ramirez)さんの自宅で見つかった古代マヤの壁画。笛吹き

    文明の名残り、民家の台所からマヤ壁画
  • 民家の台所にマヤの壁画、グアテマラ

    一家の堂になっている部屋で、マヤ時代の壁画を前にしたラミレス家の人たち。右端が主人のルーカス・アシコナ・ラミレス(Lucas Asicona Ramirez)さん。 Photograph by Robert Slabonski 中米グアテマラの民家の台所から、マヤ文明の壁画が発見された。 5年前、グアテマラ西部のチャフル(Chajul)村に住むルーカス・アシコナ・ラミレス(Lucas Asicona Ramirez)さんは、家をリフォームしようと壁土を剥がした。すると驚くことに、複数の壁の中からマヤ文明の壁画が現れたという。 ポーランド、ヤギェウォ大学の考古学者ヤロスワフ・ジラウカ(Jaroslaw Zralka)氏は、「数世紀の間、台所の壁土に閉じ込められていた」と話す。列を成して歩く人々が描かれており、服装は伝統的なマヤの様式とスペインの衣装が混在している。人の心臓を持った姿も含まれ

    民家の台所にマヤの壁画、グアテマラ
  • 心臓か仮面か、民家の台所からマヤ壁画

    グアテマラ西部のチャフル(Chajul)村で、民家の台所からマヤ文明の壁画が発見された。研究チームのリーダーで、ポーランドにあるヤギェウォ大学の考古学者ヤロスワフ・ジラウカ(Jaroslaw Zralka)氏は、「長いケープなど、伝統的なマヤ衣装をまとっている。しかし、ズボンやスペイン風に見える」と話す。「左の人物は、人間の心臓を掲げているようだ。突き出た大動脈がわかるだろうか」。一方、ボストン大学の考古学者ウィリアム・サトゥルノ(William Saturno)氏は、「ダンサーが仮面を手に持った姿に思える。山岳地方の踊りでは一般的なポーズだ」とコメントしている。 Photograph by Robert Slabonski グアテマラ西部のチャフル(Chajul)村で、民家の台所からマヤ文明の壁画が発見された。研究チームのリーダーで、ポーランドにあるヤギェウォ大学の考古学者ヤロスワフ

    心臓か仮面か、民家の台所からマヤ壁画
  • ペルーの水浸しの墓、水信仰を示唆?

    2のナイフ、陶器、大量の貝殻、金のイヤリング。ランバイエケ文化の墓から出土した埋葬品だ。 Photograph courtesy Carlos Wester La Torre, Bruning National Archaeological Museum 2011年、ペルーでランバイエケ文化の墓が発掘された。1人の巫女(みこ)と8人の遺体発見という成果を挙げた考古学者チームは沸き立ったが、これはプロローグに過ぎず、彼らはさらに大きな秘密を探し当てることになる。 最初の発掘から1年後、チームは埋葬品を探すため、巫女が埋められていた場所のさらに下を掘り進めた。すると、もう1つの墓が現れた。水を信仰する人々の造営で、水浸しになる設計だったと推測されている。 ペルー、ブリューニング国立考古学博物館(Bruning National Archaeological Museum)の館長で、発掘チーム

    ペルーの水浸しの墓、水信仰を示唆?
  • 水しぶき、8月ベストフォト

    ロンドンオリンピックの男子10メートル高飛込み予選を1位で通過した中国の邱波選手(8月10日撮影)。 Photograph by Francois Xavier Marit, AFP/Getty Images ロンドンオリンピックの男子10メートル高飛込み予選を1位で通過した中国の邱波選手(8月10日撮影)。◆ベストフォト選考理由 「珍しいカメラアングルで、非常に目を引く写真となっている」、クリス・コムズ氏(ニュースフォト編集者)。 Photograph by Francois Xavier Marit, AFP/Getty Images

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  • 干し草作り、8月ベストフォト

    スイスのフリューレンで、牧草の束を担いで急斜面を進む地元の農家のカリ・ギスラー(Kari Gisler)さん。(8月20日撮影)。スイス中部では約200年にわたって、天然の干し草が作られてきた。ロイター通信によると、作業は伝統的に7月中旬から9月中旬にかけて、動物に邪魔されにくい高地で行われるという。 Photograph by Michael Buholzer, Reuters スイスのフリューレンで、牧草の束を担いで急斜面を進む地元の農家のカリ・ギスラー(Kari Gisler)さん。(8月20日撮影)。 スイス中部では約200年にわたって、天然の干し草が作られてきた。ロイター通信によると、作業は伝統的に7月中旬から9月中旬にかけて、動物に邪魔されにくい高地で行われるという。 ◆ベストフォト選考理由 「背景が素晴らしい! 山の斜面に立って、牧草集めの興味深い様子を写真に収めるのは大変だ

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  • 赤い衣装の少女、8月ベストフォト

    中国西部、新疆ウイグル自治区の和田(ホータン)にある自宅で、民族衣装に身を包んだウイグル人の女の子(8月20日撮影)。 Photograph from Reuters 中国西部、新疆ウイグル自治区の和田(ホータン)にある自宅で、民族衣装に身を包んだウイグル人の女の子(8月20日撮影)。◆ベストフォト選考理由 「この子は年よりも大人っぽく見える。背景の細部も興味深いが抑制されていて、この子の落ち着いて大人びた様子を強調している」、クリス・コムズ氏(ニュースフォト編集者)。 Photograph from Reuters

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  • 古代マヤの“王子”のカップを発見

    新たに発掘されたマヤ文明のカップ。若い王子が飲み物の容器として使用していたようだ。 Photograph courtesy Uxul Archaeological Project, University of Bonn メキシコにあるマヤ文明の都市遺跡「ウシュル(Uxul)」の発掘調査で、若い王子の墓や珍しい遺物が発見された。 ウシュルには11の建物からなる王族用の複合施設がある。エントランスの役割を担う建物の床下から小部屋へと続く道が見つかり、20~25歳の男性とみられる遺体と9つの陶器が発見された。 「あるカップには、上品な象形文字で“若い王子のカップ”と書かれていた」と発掘に参加したドイツ、ボン大学の人類学者ニコライ・グルーベ(Nikolai Grube)氏は7月30日の声明で述べている。 別のカップには日付が記されていた。グルーベ氏と発掘チームのカイ・デルベンダール(Kai Del

    古代マヤの“王子”のカップを発見
  • イギリスの少年、高価な龍涎香を発見

    香水の原材料として高値で取引される龍涎香(資料写真)。イギリスの少年チャーリー・ネイスミス君は、この4倍も重い塊を発見した。果たしていくらの値が付くのだろうか。 Photograph by David Liittschwager, National Geographic 昔から香料として珍重されてきた龍涎香(りゅうぜんこう)。マッコウクジラの腸内で生成される結石で、海岸に漂着した塊が偶然見つかる場合がある。イギリスの少年チャーリー・ネイスミス(Charlie Naysmith)君も発見の幸運に恵まれた1人だ。 数日前、南西部ドーセット州の海岸を父親と散歩していたネイスミス君(8歳)は、風変わりな石にふと目が留まった。早速自宅に持ち帰りインターネットで調べてみると、貴重な龍涎香とわかったという。重さは600グラムで、4万ポンド(約500万円)ほどの値が付くと見られている。 龍涎香は香水の原材

    イギリスの少年、高価な龍涎香を発見
  • ミイラの着せ替え、8月ベストフォト

    インドネシア、南スラウェシ州に住む、先住少数民族トラジャ族の葬送儀式(8月23日)。親類が集まって、先祖のミイラを新しい服に着替えさせている。この儀式「マネネ(Ma'nene)」では、先祖に敬意を表すため、3年ごとにミイラの衣服を新調する。地元の人々の間では、たとえ数百年前に亡くなった先祖でも、自分たちの元を離れることはないと信じられているという。 Photograph by Yusuf Ahmad, Reuters インドネシア、南スラウェシ州に住む、先住少数民族トラジャ族の葬送儀式(8月23日)。親類が集まって、先祖のミイラを新しい服に着替えさせている。 この儀式「マネネ(Ma'nene)」では、先祖に敬意を表すため、3年ごとにミイラの衣服を新調する。地元の人々の間では、たとえ数百年前に亡くなった先祖でも、自分たちの元を離れることはないと信じられているという。 ◆ベストフォト選考理由

    ミイラの着せ替え、8月ベストフォト
  • ガラス越しの3人、8月ベストフォト

    ガラスで囲われた被告席に座るロシアのパンクバンド、「プッシー・ライオット(Pussy Riot)」のメンバー。左からナジェージダ・トロコンニコワ(Nadezhda Tolokonnikova)被告、マリア・アリョーヒナ(Maria Alyokhina)被告、エカチェリーナ・サムツェビッチ(Yekaterina Samutsevich)被告(8月8日撮影)。AFP通信によれば、同バンドは2012年2月21日、ロシア正教会の大聖堂でウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領を批判する歌「パンクの祈り」を演奏。フーリガン行為の罪に問われ、モスクワで公判最終日の最終弁論を行うところだという。8月17日、3被告には禁錮2年の実刑判決が言い渡された。 Photograph by Natalia Kolesnikova, AFP/Getty Images ガラスで囲われた被告席に座るロ

    ガラス越しの3人、8月ベストフォト
  • 自由シリア軍の兵士、8月ベストフォト

    シリア北部、古都アレッポの民家からライフルを発砲する、反体制派「自由シリア軍」の兵士(8月14日撮影)。2011年1月から続く反政府運動は、事実上の内戦に発展。苛烈な政府軍の爆撃、反体制派との市街戦が広がり、中世から残るアレッポの城塞など、国の至る所で文化財が破壊されている。 Photograph by Goran Tomasevic, Reuters シリア北部、古都アレッポの民家からライフルを発砲する、反体制派「自由シリア軍」の兵士(8月14日撮影)。2011年1月から続く反政府運動は、事実上の内戦に発展。苛烈な政府軍の爆撃、反体制派との市街戦が広がり、中世から残るアレッポの城塞など、国の至る所で文化財が破壊されている。◆ベストフォト選考理由 「これも戦いの真実なのかもしれない。緊張して身構える狙撃兵と、ソファで足を組みキャンディーをべる兵士。塹壕でもなく、質素な兵舎でもない。贅沢な

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  • カモメとパトロール、8月ベストフォト

    ドイツ北東のリゾート地「ウーゼドム」で、警察署長と巡査の間に並んでビーチをパトロールするカモメの着ぐるみ(8月7日撮影)。愉快なパトロールが奏功したのか、ウーゼドムでは2012年前半の犯罪発生数が2011年同期に比べて22%減少したという。 Photograph by Jens Koehler, DAPD/AP ドイツ北東のリゾート地「ウーゼドム」で、警察署長と巡査の間に並んでビーチをパトロールするカモメの着ぐるみ(8月7日撮影)。 愉快なパトロールが奏功したのか、ウーゼドムでは2012年前半の犯罪発生数が2011年同期に比べて22%減少したという。 ◆ベストフォト選考理由 「構図や明るい光だけ見れば、単純でありふれた写真だが、カモメが強烈な印象を与えている。“着ぐるみ”を身につけているのは、実は警官たちの方なのかもしれない」、モニカ・コーコラン氏(フォト編集主任)。 Photograph

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  • マンホールからリス、8月ベストフォト

    ドイツ北部の町イーザーンハーゲンで、マンホールの蓋の穴にはまり込んでしまったリス(8月5日撮影)。AFP通信によると、駆けつけた警官がオリーブオイルなどを使用して救助を試み、脱出に成功したという。 Photograph from AFP/Getty Images ドイツ北部の町イーザーンハーゲンで、マンホールの蓋の穴にはまり込んでしまったリス(8月5日撮影)。AFP通信によると、駆けつけた警官がオリーブオイルなどを使用して救助を試み、脱出に成功したという。◆ベストフォト選考理由 「マンホールから飛び出したリスの頭に釘付けになった。オリーブオイルを使って救助した警官たちの奮闘に敬意を表したい」、モニカ・コーコラン氏(フォト編集主任)。 「驚きにあふれた一枚だ。無事に救出されてホッとしたよ」、クリス・コムズ氏(ニュースフォト編集者)。 Photograph from AFP/Getty Ima

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  • アステカの生贄人骨を大量に発見

    メキシコシティの地下で見つかったアステカ時代の人骨。地下水面が高いため、地下水がしみ出している。 Photograph by Cortesia/Hector Montano/INAH-Conaculta/RML メキシコ首都メキシコシティの地下5メートルで、アステカ時代の子どもから大人までさまざまな年齢の多数の人骨が発掘された。その数は1789片に及び、1体は完全な状態で出土、若い女性とみられている。 墓地が建設された1480年代、一帯は古代国家アステカの首都テノチティトランの中心地で、地上にはテンプロ・マヨール(大神殿)がそびえていた。テノチティトランを1325年に築いたアステカ族は、メキシコ中央部で繁栄したが、1521年にスペイン人に征服され滅亡している。 現場付近では複数の人骨が埋められた墓地がいくつか発見されているが、これほど幅広い年齢層に渡る出土は初めてだ。現在、テンプロ・マヨー

    アステカの生贄人骨を大量に発見
  • 骨の識別、アステカの大量生贄

    メキシコの首都メキシコシティの地下、アステカ帝国の遺跡テンプロ・マヨールで発掘された大量の人骨。メキシコ国立人類学歴史学研究所(INAH)の考古学者が調査している。現在、遺跡とそれに隣接するテンプロ・マヨール博物館に続くアプローチを新たに建設中で、その工事の最中に出土した。積み重なった10個の頭蓋骨も発見され、3個が子ども、7個が大人と見られている。考古学者チームは多様な骨の中から複数の肋骨と大腿骨も特定。当初は別の場所に埋葬された遺体が後に掘り起こされ、一人の女性の周囲に撒かれたようだ。全体の人数とそれぞれの性別、年齢、最初の埋葬時期を特定するため、自然人類学者チームが調査を進めている。 Photograph by REUTERS/INAH/Handout メキシコの首都メキシコシティの地下、アステカ帝国の遺跡テンプロ・マヨールで発掘された大量の人骨。メキシコ国立人類学歴史学研究所(IN

    骨の識別、アステカの大量生贄
  • 人身御供の痕、アステカの大量生贄

    泥水に浸かったアステカの人骨の発掘現場。メキシコシティは地下水面が高いので、地下水がしみ出している。考古学者チームが遺骨を調査したところ、椎骨と胸骨の一部に切りつけられたような痕跡が見つかった。神への供物として生贄にされた可能性を示している。当時は、生きたまま石器のナイフで心臓を取り出し、神に捧げる儀式が頻繁に行われた。16世紀のスペインの記録には、喉を切ったり、矢で撃ち殺す様子や、絞殺、焼殺も記されている。雨乞いや豊穣を願う神事には、敵軍の兵士や見た目が高潔で健康な一般市民が選ばれた。中には、身分の高い女性や若者、幼児、アルビノ、小人、司祭、売春婦、奴隷が人身御供となった。王の死後は、その生まれ変わりまでお供をするため、使用人の心臓が神に捧げられた。 Photograph by REUTERS/INAH/Handout 泥水に浸かったアステカの人骨の発掘現場。メキシコシティは地下水面が高

    人身御供の痕、アステカの大量生贄
  • 市街の今と昔、アステカの大量生贄

    古代国家アステカの首都テノチティトランに存在した、ピラミッド式神殿の想像図。1970年代後半の航空写真にイラストを重ねてある。今も残る植民地時代の建物の地下には、テンプロ・マヨール遺跡が埋まっているという。スペイン人による征服後、入植者がアステカの都市を破壊し、ヨーロッパ式の建物を建設した。無秩序で現代的な大首都圏メキシコシティの中心部に今も点在する。数世紀にわたる変化を経ても、遺跡の周辺は神聖で宗教的な雰囲気が漂っている。発掘現場の上に見えるのは、完成から500年を越えるメトロポリタン大聖堂だ。建築には、破壊された神殿の石材が使われたと言われている。左上、大聖堂の隣にある「ソカロ」と呼ばれる中央広場では、宗教的な祭り、一般行事のパレード、文化イベントなどが行われている。メキシコシティは、古代、中世、現代と、3つの文化が共存している世界でも珍しい都市と言えるだろう。 Illustratio

    市街の今と昔、アステカの大量生贄
  • オークの幹、アステカの大量生贄

    メキシコシティの地下、アステカ帝国の遺跡テンプロ・マヨール。大量の人骨から約35メートル離れた地点では、割れたオーク(ナラの一種)の幹が埋められていた(中央下)。周囲には漆喰(しっくい)で固めた火山岩が円形に並んでいる(右)。16世紀のスペイン人が残した記録によれば、テノチティトランの中心部には神聖な木々が存在した。今回のオークはその1の可能性があるという。アステカの宗教では、木の枝が空を支え、根は地下世界につながっていると信じられていた。多数の木の杭は、建造物の基礎のようだ。テノチティトランはテスココ湖を干拓した島に築かれており、土壌の水分が多かった。木杭で補強しなければ、重い石造の儀式壇や神殿は沈み込んでいただろうという。 Photograph by Cortesia INAH-Conaculta. EGV メキシコシティの地下、アステカ帝国の遺跡テンプロ・マヨール。大量の人骨から約

    オークの幹、アステカの大量生贄
  • 悲運の南極探検船、テラ・ノヴァ号発見

    南極探検中のテラ・ノヴァ号(1911年撮影)。船員や科学者など65名のほか、3台の雪上車と羊肉162頭分、小型の馬19頭、犬33頭、石炭450トン以上を積んでいた。テラ・ノヴァ号は1943年にグリーンランド南部沖で氷山に衝突、沈没し、2012年7月に残骸が発見された。しかし南極探検時には、分厚い氷に囲まれた過酷な環境で大量の積み荷を運び、探検隊を率いたロバート・ファルコン・スコットも全幅の信頼を寄せていた。「氷塊にぶつかって大きな衝撃を受けながらも、強大な敵に立ち向かうように過酷な航路を突き進んでいった」とスコットは日記に書いている。 Photograph by Herbert Ponting 南極探検中のテラ・ノヴァ号(1911年撮影)。船員や科学者など65名のほか、3台の雪上車と羊肉162頭分、小型の馬19頭、犬33頭、石炭450トン以上を積んでいた。 テラ・ノヴァ号は1943年にグリ

    悲運の南極探検船、テラ・ノヴァ号発見
  • 海底の音響画像、テラ・ノヴァ号発見

    海洋調査船「R/V Falkor」は、音響測深機のデータ解析を画像化した(7月11日)。海底のピークが、1943年にグリーンランド南部沖で沈没したテラ・ノヴァ号の船体。「広範囲の音響データから、海底地形の立体画像を作成した」とアメリカ、ニューハンプシャー大学沿岸・海洋マッピングセンター(CCOM)のジョナサン・ボードイン(Jonathan Beaudoin)氏は説明する。今回の調査には、フランス国立海洋開発研究所(Ifremer)やアメリカのウッズホール海洋研究所からもメンバーが参加している。画像内の青い窪みや線は、氷山の移動によって削られた溝で、グリーンランド沖に多く見られるという。同氏は、「当時は船上が歓喜に包まれたよ。甲板員から船長まで、全員が熱心に取り組んでいたからね」と振り返る。「稀な体験だった。チーム競技でオリンピックの金メダルを獲得したような気分かな」。 Photograph

    海底の音響画像、テラ・ノヴァ号発見
  • 撮像装置、テラ・ノヴァ号発見

    南極探検船テラ・ノヴァ号の発見から1カ月後の8月11日、シュミット海洋研究所(Schmidt Ocean Institute)の調査船「R/V Falkor」から吊り降ろされる高解像度撮像装置「SHRIMP(Simple High Resolution IMaging Package)」。2台の水中カメラが搭載されている。回収したSHRIMPの映像から、全長約57メートルの木造船の残骸を確認できた。金属製の煙突も映っており、写真の外観と一致した。「徐々に朽ちていった船体を実際にこの目で見ると、1世紀の時に想いを馳せてつい感情的になってしまう」と、シュミット海洋研究所の科学運用担当者ビクター・ズィーコフ(Victor Zykov)氏はコメントしている。 Photograph courtesy Schmidt Ocean Institute 南極探検船テラ・ノヴァ号の発見から1カ月後の8月11

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  • 撮像装置の光、テラ・ノヴァ号発見

    投光器の光を頼りにテラ・ノヴァ号の残骸に接近する、高解像度撮像装置「SHRIMP(Simple High Resolution IMaging Package)」(8月11日撮影)。教育機関用に開発された機材だが、沈没船の画像情報の収集に初めて採用され、十分な成果を上げた。ドイツのシュミット海洋研究所(Schmidt Ocean Institute)の調査チームは10~1800メートルの範囲と、発見地点の正確な水深を公表していない。科学運用担当者ビクター・ズィーコフ(Victor Zykov)氏によると、今後の方針は、該当水域の管轄権を有するアメリカとデンマークの判断を仰ぐことになるという。 Photograph courtesy Schmidt Ocean Institute 投光器の光を頼りにテラ・ノヴァ号の残骸に接近する、高解像度撮像装置「SHRIMP(Simple High Res

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  • 南極探検船テラ・ノヴァ号を発見

    北大西洋グリーンランド沖の海底で見つかったテラ・ノヴァ号のマスト部分。 Photograph courtesy Schmidt Ocean Institute 100年前の南極探検で有名なテラ・ノヴァ号が、北大西洋グリーンランド沖の海底で見つかった。 テラ・ノヴァ号は南極探検用に改造された木造捕鯨船で、1910~1912年にイギリス海軍大佐ロバート・ファルコン・スコットが率いる探検隊が使用した。分厚い氷に囲まれた過酷な環境で大量の積み荷を運び、探検隊を率いたロバート・ファルコン・スコットも全幅の信頼を寄せていた。「氷塊にぶつかって大きな衝撃を受けながらも、強大な敵に立ち向かうように過酷な航路を突き進んでいった」とスコットは日記に書いている。 (写真:1911年に撮影されたテラ・ノヴァ号) その後は補給船として運用されていたが、1943年にグリーンランド南部沖で氷山に衝突、沈没している。 発

    南極探検船テラ・ノヴァ号を発見
  • デスマスク、チンチョーロのミイラ

    チリ北部のアタカマ砂漠に埋まっていた少年のミイラ。カツラをかぶり、編み込んだヨシの上に横たわっている。チンチョーロ文化のミイラ製作は、人体の再造形の工程を辿る。まず、遺体から肉をはがして内臓を取り除く。次に、むき出しの骨を洗浄・補強、体内に土やヨシを詰め、酸化マンガンを混ぜた灰色の粘土で“肉体”を形作る。チリ・カトリック大学の考古学者パブロ・マルケ(Pablo Marquet)氏率いる研究チームは、こうしたミイラ製作の慣習が始まったのは約7000年前、付近のアンデス山脈の降水量が増えた時期と一致していると推測している。 Photograph by Enrico Ferorelli, National Geographic チリ北部のアタカマ砂漠に埋まっていた少年のミイラ。カツラをかぶり、編み込んだヨシの上に横たわっている。チンチョーロ文化のミイラ製作は、人体の再造形の工程を辿る。まず、遺体

    デスマスク、チンチョーロのミイラ
  • 笑う仮面、チンチョーロのミイラ

    チリ北部のアタカマ砂漠に埋まっていた、約5000年前に作成されたチンチョーロ人の黒ミイラ。人毛のカツラを着け、仮面の下で笑っているかのようだ。チンチョーロ人は、紀元前5000年頃からミイラ作りを始めた。当初は酸化マンガンと灰を使用した黒ミイラで、紀元前2800年頃になると酸化第二鉄を塗った赤ミイラが製作されるようになった。チンチョーロ文化における色の意味が変化したか、主原料の黒い酸化マンガンが手に入りにくくなったことが原因と指摘されている。 Photograph by Enrico Ferorelli, National Geographic チリ北部のアタカマ砂漠に埋まっていた、約5000年前に作成されたチンチョーロ人の黒ミイラ。人毛のカツラを着け、仮面の下で笑っているかのようだ。 チンチョーロ人は、紀元前5000年頃からミイラ作りを始めた。当初は酸化マンガンと灰を使用した黒ミイラで、紀

    笑う仮面、チンチョーロのミイラ
  • 黒いミイラ、チンチョーロのミイラ

    黒い仮面を着けた5000年前のチンチョーロ人のミイラ。チリのアタカマ砂漠から出土した。最新研究によると、極めて乾燥したアタカマ砂漠の気候に加え、7000年前にチンチョーロ文化で発生した人口急増もミイラ製作の一因になったという。チリ・カトリック大学の考古学者パブロ・マルケ(Pablo Marquet)氏は、「人口規模が大きいほど、多様な技能が発達しやすい。ミイラ作成のテクニックが考案されると、急速に広まったのだろう」と説明する。 Photograph by Enrico Ferorelli, National Geographic 黒い仮面を着けた5000年前のチンチョーロ人のミイラ。チリのアタカマ砂漠から出土した。 最新研究によると、極めて乾燥したアタカマ砂漠の気候に加え、7000年前にチンチョーロ文化で発生した人口急増もミイラ製作の一因になったという。 チリ・カトリック大学の考古学者パブ

    黒いミイラ、チンチョーロのミイラ
  • ミニストーンヘンジ、7月ベストフォト

    空気で膨らませるストーンヘンジのレプリカ作品を設置する作業員たち。2012年のオリンピックのイベントの一環として、ロンドンのグリニッジ半島で7月21日に設置された。作品の名称は「サクリリッジ(神聖冒涜)」。 Photograph by Jae C. Hong, AP 空気で膨らませるストーンヘンジのレプリカ作品を設置する作業員たち。2012年のオリンピックのイベントの一環として、ロンドンのグリニッジ半島で7月21日に設置された。作品の名称は「サクリリッジ(神聖冒涜)」。◆ベストフォト選考理由 「意図はどうであれ、空気で膨らませるストーンヘンジを人々が移動させている様子は、不思議なくらいに、はるか昔に物がどのように建てられたかを連想させるようだ」、カテル・レデュー(Katel LeDu)氏(フォトディレクター)。 Photograph by Jae C. Hong, AP

    ミニストーンヘンジ、7月ベストフォト
  • 家族を埋葬、チンチョーロのミイラ

    クジラの骨で仕切った墓地で眠るチンチョーロの成人2体と幼児2体のミイラ。おそらく家族と思われる。チンチョーロ文化では、遺体を保存するために乾燥したアタカマ砂漠でミイラを作ったらしい。「多くの狩猟採集文化では、遺体が存在する限り、魂もそこに残ると考えられていた。ミイラを作れば服喪期間は永遠に終わらない。チンチョーロ人は、死別による喪失感をこうして慰めていたのではないか」と研究チームは推測している。 Photograph by Enrico Ferorelli, National Geographic クジラの骨で仕切った墓地で眠るチンチョーロの成人2体と幼児2体のミイラ。おそらく家族と思われる。チンチョーロ文化では、遺体を保存するために乾燥したアタカマ砂漠でミイラを作ったらしい。「多くの狩猟採集文化では、遺体が存在する限り、魂もそこに残ると考えられていた。ミイラを作れば服喪期間は永遠に終わら

    家族を埋葬、チンチョーロのミイラ
  • 砂漠のミイラ文化、チンチョーロ

    チリ北部のアタカマ砂漠に埋まっていた古代のミイラ(資料写真)。世界で最も乾燥した砂漠の気候により、皮膚や頭髪、衣服が今も保存されている。 Photograph by Enrico Ferorelli, National Geographic チリ北部のアタカマ砂漠から、古代のミイラが多数出土している。世界で最も乾燥した砂漠の気候により、皮膚や頭髪、衣服が今も保存されている。かつて同地に栄えたチンチョーロ文化のミイラは、脱水作用がもたらした偶然の産物だったのかもしれない。 チリ北部からペルー南部の沿岸部で狩猟採集生活を送っていたチンチョーロ人は、古代エジプトより数千年早く、紀元前5050年頃にはミイラを製作していた。ミイラ作りと死者崇拝が興った経緯は長く不明で、湿潤なアマゾン盆地から伝わったという説もある。 チンチョーロのミイラに関する最新研究を発表したチリ・カトリック大学の考古学者パブロ・

    砂漠のミイラ文化、チンチョーロ
  • サポテク文明のピラミッドを新たに発掘

    メキシコ南部、オアハカ州のシエラ・フアレス(Sierra Juarez)山脈を一望する古代サポテク文明のアツォンパ(Atzompa)遺跡。発掘調査はいまも進行中だ。 Photograph courtesy Hector Montano, INAH メキシコ南部、オアハカ州にある古代サポテク文明のアツォンパ(Atzompa)遺跡で発掘が進められていたピラミッドが、独自の建築様式を持ち、墓室内も珍しい壁画で彩られていた。7月後半にメキシコの考古学者チームが発表した。 墓の年代は紀元650~850年ごろ。サポテク人の特権階級が居住していた区域の一画にあった。ピラミッドは高さ約6.6メートルで、内部には3つの階層に分けられた墓室があり、中央階段で行き来できるようになっている。 古代サポテク文明の遺跡では、墓は宮殿の地下に設けられるのが普通だ。アツォンパの各墓室はサポテクの特徴を備えているが、地上の

    サポテク文明のピラミッドを新たに発掘
  • 動物と球戯場、サポテクのピラミッド

    メキシコ南部、サポテク文明のピラミッドで発見された壁画の一部。黒い点の集合と、アルファベットの「I」形の黄色い模様が交互に並び、壁画全体の上下端を縁取っている。「点はネコ科の動物、黄色い“I”は当時の球戯場の形状を表しているようだ」と、メキシコ国立人類学歴史学研究所(INAH)の考古学者ネリー・ロブレス・ガルシア(Nelly Robles Garcia)氏は話している。 Photograph courtesy Hector Montano, INAH メキシコ南部、サポテク文明のピラミッドで発見された壁画の一部。黒い点の集合と、アルファベットの「I」形の黄色い模様が交互に並び、壁画全体の上下端を縁取っている。「点はネコ科の動物、黄色い“I”は当時の球戯場の形状を表しているようだ」と、メキシコ国立人類学歴史学研究所(INAH)の考古学者ネリー・ロブレス・ガルシア(Nelly Robles G

    動物と球戯場、サポテクのピラミッド
  • 意図的な破壊、サポテクのピラミッド

    埋葬用ピラミッド内で、奥の墓室を調査するために木製の足場板を架ける発掘作業員(手前は中央階段)。墓室の屋根部分には、巨大な石板2枚が支え合うように組まれている。この墓室や壁画で彩られた部屋からは遺骨が見つからなかった。「スペイン征服以前に持ち去られた可能性がある」と、発掘調査を主導したネリー・ロブレス・ガルシア(Nelly Robles Garcia)氏は話す。また、ピラミッド自体にも故意に破壊された痕跡が残っている。ピラミッド内を埋めていた土や石の中からは、陶器の破片と共に1体の人骨と1匹の犬の骨も発見された。これらの特徴から、紀元850~900年頃にアツォンパ(Atzompa)の集落が何らかの理由で放棄された際、儀式を執り行って閉鎖した可能性があるという。 Photograph courtesy Hector Montano, INAH 埋葬用ピラミッド内で、奥の墓室を調査するために木

    意図的な破壊、サポテクのピラミッド
  • 象形文字、サポテクのピラミッド

    メキシコ南部、オアハカのピラミッドで発見されたサポテク文明の壁画の一部には、点と棒線で表現された数字の「12」と、アリゲーターを表す象形文字が描かれている。埋葬部屋の壁の中央部分(写真の範囲外)は破壊されているが、発掘チームによると、墓の所有者の名前が記されていた可能性があるという。 Photograph courtesy Hector Montano, INAH メキシコ南部、オアハカのピラミッドで発見されたサポテク文明の壁画の一部には、点と棒線で表現された数字の「12」と、アリゲーターを表す象形文字が描かれている。埋葬部屋の壁の中央部分(写真の範囲外)は破壊されているが、発掘チームによると、墓の所有者の名前が記されていた可能性があるという。 Photograph courtesy Hector Montano, INAH

    象形文字、サポテクのピラミッド
  • 鮮やかな壁画、サポテクのピラミッド

    メキシコ南部、オアハカのピラミッド内部で見つかった農耕文明「サポテク」の墓。3つの階層に分けられた埋葬部屋の1つだ。鮮やかな色彩で描かれた壁画は、サポテクの葬祭用建築物の中でも珍しいタイプという。7月後半にメキシコの考古学者チームが発表した。墓の年代は紀元650~850年ごろ。サポテク人の特権階級が居住していた区域の一画にあった。発掘調査を主導したネリー・ロブレス・ガルシア(Nelly Robles Garcia)氏は、「サポテクの墓に壁画が描かれるのは一般的だ。しかし他の場所では、司祭や軍人、指導者など、死亡した要人がモチーフになっている」と話す。今回の壁画は人物ではなく、古代メソアメリカで広まっていた儀式的な球戯の可能性があるという。サッカーとバスケットボールを合わせたようなルールで、ゴム製の固いボールをコート内で打ち合い、敗者が生贄になる場合もあった。 Photograph cour

    鮮やかな壁画、サポテクのピラミッド
  • 願いの道、仙台七夕まつり

    仙台市、定禅寺通グリーンベルトに設けられた“願いの道”(8月7日撮影)。国内だけでなく世界各国からも寄せられた支援短冊と数万羽の折鶴がケヤキ並木を飾っている。杜の都・仙台のシンボルでもある定禅寺通は今年の七夕で、“願いの道”と“希望への道”へ生まれ変わった。夜になれば、宮城ゆかりの著名人31人のメッセージが記された行灯と、天の川をイメージしたLEDのイルミネーションが“希望への道”を照らす。 Photograph by Naohisa Kubota 仙台市、定禅寺通グリーンベルトに設けられた“願いの道”(8月7日撮影)。国内だけでなく世界各国からも寄せられた支援短冊と数万羽の折鶴がケヤキ並木を飾っている。 杜の都・仙台のシンボルでもある定禅寺通は今年の七夕で、“願いの道”と“希望への道”へ生まれ変わった。夜になれば、宮城ゆかりの著名人31人のメッセージが記された行灯と、天の川をイメージした

    願いの道、仙台七夕まつり
  • ねぶたを取り囲む“ハネト”

    青森ねぶた祭の特色の1つがハネトと呼ばれる踊り手(8月2日撮影)。ハネトは漢字で「跳人」と表せるように、威勢のいい囃子のリズムに合わせたエネルギッシュな踊り方が特徴的で、ぶら下げた数重もの鈴の「シャンシャン」という音が鳴り響く。ねぶた1台につき500人~2000人のハネトが取り囲み、その熱気と鮮やかさに圧倒される。 Photograph by Kazushi Aburano 青森ねぶた祭の特色の1つがハネトと呼ばれる踊り手(8月2日撮影)。ハネトは漢字で「跳人」と表せるように、威勢のいい囃子のリズムに合わせたエネルギッシュな踊り方が特徴的で、ぶら下げた数重もの鈴の「シャンシャン」という音が鳴り響く。ねぶた1台につき500人~2000人のハネトが取り囲み、その熱気と鮮やかさに圧倒される。 ハネトの登場は明治中期と意外と新しい。荷揚げの盛んな港には、決まって花街ができ、ここの芸人衆が襦袢(着物

    ねぶたを取り囲む“ハネト”
  • 通りを埋める笹飾り、仙台七夕まつり

    大きな飾りが並ぶ仙台市の七夕まつり(8月6日撮影)。七夕まつりは全国各地で執り行われるが、仙台市の七夕まつりほど大規模なものはない。8月6日から8日にかけて開催され、仙台駅周辺やアーケード街は目いっぱいに飾り付けられる。市内で大小3000にもおよび、観光客も200万人以上となる。 Photograph by Naohisa Kubota 大きな飾りが並ぶ仙台市の七夕まつり(8月6日撮影)。七夕まつりは全国各地で執り行われるが、仙台市の七夕まつりほど大規模なものはない。8月6日から8日にかけて開催され、仙台駅周辺やアーケード街は目いっぱいに飾り付けられる。市内で大小3000にもおよび、観光客も200万人以上となる。 元々、七夕まつりはご節句としての年中行事のひとつであり、全国各地で古くからおこなわれていた。仙台でも、江戸時代初期に仙台藩主伊達正宗が七夕に関して詠んだ和歌が残っており、この

    通りを埋める笹飾り、仙台七夕まつり
  • 復興への願い、仙台七夕まつり

    「東北復興」「心はひとつ」などと書かれた願い短冊(8月6日撮影)。今年の仙台七夕まつりのテーマは「願い・希望・感謝」。復興への強い願いと全国からの復興支援に対する感謝の気持ちが込められている。震災で大きな被害をこうむった仙台市には、全国から励ましの言葉が集まっている。 Photograph by Naohisa Kubota 「東北復興」「心はひとつ」などと書かれた願い短冊(8月6日撮影)。 今年の仙台七夕まつりのテーマは「願い・希望・感謝」。復興への強い願いと全国からの復興支援に対する感謝の気持ちが込められている。震災で大きな被害をこうむった仙台市には、全国から励ましの言葉が集まっている。 Photograph by Naohisa Kubota

    復興への願い、仙台七夕まつり
  • 闇夜を照らす巨大ねぶた

    『為朝の武威 痘鬼神を退く』(作:北村蓮明氏) 日立連合ねぶた委員会。毎年8月2日から7日にかけて開催される青森ねぶた祭。その最大の呼び物と言えば、巨大なねぶた。主に歌舞伎の名場面や歴史物語が題材とされているが、近年では地元の伝説なども題材として使用される。今年の巨大ねぶたは総勢22台。ハネトと囃子と一体となって、青森の夏の夜を盛り上げている。 Photograph by Kazushi Aburano 『為朝の武威 痘鬼神を退く』(作:北村蓮明氏) 日立連合ねぶた委員会 毎年8月2日から7日にかけて開催される青森ねぶた祭。その最大の呼び物と言えば、巨大なねぶた。主に歌舞伎の名場面や歴史物語が題材とされているが、近年では地元の伝説なども題材として使用される。 元々は、竹をまげてつくった大まかな枠組みに和紙を張り、そこに絵を描いていた。しかし、昭和30年代に、針金を用いて細部まで立体的につく

    闇夜を照らす巨大ねぶた
  • ねぶたを魅せる扇子持ち

    8月2日から開催中の青森ねぶた祭で、巨大なねぶたの動きを指揮する「扇子持ち」(2日撮影)。手にした扇子でねぶたを自由自在に操る扇子持ちは、進路を導くだけでなく、上下に動かしたり回転させたり、ねぶたに躍動感を与え観客を魅了する祭りの花形の1つだ。扇子持ちの指示に合わせて台車を動かすのは総勢20名余りの曳き手。観客の声援に応え、約4トンもの巨大ねぶたを息の合った連係で自在に動かす。 Photograph by Kazushi Aburano 8月2日から開催中の青森ねぶた祭で、巨大なねぶたの動きを指揮する「扇子持ち」(2日撮影)。手にした扇子でねぶたを自由自在に操る扇子持ちは、進路を導くだけでなく、上下に動かしたり回転させたり、ねぶたに躍動感を与え観客を魅了する祭りの花形の1つだ。 扇子持ちの指示に合わせて台車を動かすのは総勢20名余りの曳き手。観客の声援に応え、約4トンもの巨大ねぶたを息の合

    ねぶたを魅せる扇子持ち
  • 自然に還るホテル、7月ベストフォト

    3年前の火災で荒れ果てたホテルの一室。ドイツには、かつての豪華絢爛な姿が失われ、徐々に自然に取り込まれているホテルが多数あるという。シールケ・ホテル、ホテル・ハインリッヒ・ハイネ、ビーリッツ・ヘイルスタッテンの病院などドイツの廃墟群は、“都市探検家”から注目を集めている。写真家ミヒャエル・メルホフ(Michael Mehrhoff)氏もその1人で、7月25日に米ナショナル ジオグラフィックのオンライン・フォトコミュニティ「Your Shot」に作品を投稿した。 Photograph by Michael Mehrhoff, Your Shot 3年前の火災で荒れ果てたホテルの一室。ドイツには、かつての豪華絢爛な姿が失われ、徐々に自然に取り込まれているホテルが多数あるという。 シールケ・ホテル、ホテル・ハインリッヒ・ハイネ、ビーリッツ・ヘイルスタッテンの病院などドイツの廃墟群は、“都市探検家

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  • 三峡ダムと警察官、7月ベストフォト

    中国湖北省にある世界最大の水力発電ダム「三峡ダム」を巡回する警察官。長江の記録的な洪水に対応するため大量の放水が実施され、図らずも写真に非現実的な印象を与えている。増水期のただ中の7月24日、三峡ダムの放水量は建設以来最大の毎秒約7万立方メートルを記録した。 Photograph by Xiao Yijiu, Xinhua/Zuma Press 中国湖北省にある世界最大の水力発電ダム「三峡ダム」を巡回する警察官。長江の記録的な洪水に対応するため大量の放水が実施され、図らずも写真に非現実的な印象を与えている。 増水期のただ中の7月24日、三峡ダムの放水量は建設以来最大の毎秒約7万立方メートルを記録した。 ◆ベストフォト選考理由 「隊列を組んで歩を進める警察官と背後にそびえる堰堤(えんてい)。整然とした印象を、水溜りに映る鏡像が強調している。一方、勢いよく噴き出す水はコントロールできない自然の

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  • 断崖からダイブ、7月ベストフォト

    ポルトガル領アゾレス諸島最大のサンミゲル島、ビラ・フランカ・ド・カンポ市沖合の小島で開催された、「レッドブル・クリフ・ダイビング・ワールド・シリーズ(Red Bull Cliff Diving World Series)」。高さ29メートルの断崖から、コロンビア人のオルランド・ドゥケ(Orlando Duque)氏が大西洋にダイブしている(7月20日撮影)。今年のシリーズは、フランス、ノルウェー、ポルトガルの3カ国から始まった。ドゥケ氏はこの日2位だったが、フランス大会では1位を獲得しており、総合成績はトップの座にある。 Photograph by Dean Treml, Red Bull/AFP/Getty Images ポルトガル領アゾレス諸島最大のサンミゲル島、ビラ・フランカ・ド・カンポ市沖合の小島で開催された、「レッドブル・クリフ・ダイビング・ワールド・シリーズ(Red Bull

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  • 海のリサイクル工場、未来の水上都市

    海上を漂うプラスチックを収集する「プラスチック・フィッシュ・タワー(Plastic Fish Tower)」。「太平洋ゴミベルト」の対策として考案された。アメリカのカリフォルニア州沿岸からハワイ諸島にかけて広がるゴミベルトには、大量のプラスチックの廃棄物が浮遊している。プラスチック・フィッシュ・タワーは、直径1キロのリング状浮きフェンスを利用してプラスチックを収集する。浮きフェンスは、中央にある球形の主要構造物(イラスト)から四方に伸びた支柱で固定されている。主要構造物の中心部ではプラスチックゴミから養魚場用のネットを再生する処理工場を稼働させ、外層部と水上部には居住スペースを設ける計画だ。 Illustration by Kim Hongseop/Cho Hyunbeom/Yoon Sunhee/Yoon Hyungsoo, eVolo 海上を漂うプラスチックを収集する「プラスチック・フ

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  • グリーンスター、未来の水上都市

    インド洋の島国モルディブで2014年オープン予定の浮遊式ホテル「グリーンスター(Greenstar)」。モルディブは世界で最も海抜が低く、気候変動による海面上昇の脅威が深刻な国の一つだ。オランダの建築事務所Waterstudio.NLが、周囲の海と調和するようにデザイン。800名が宿泊可能な客室と2000名規模の会議場を備える。Waterstudio.NLによると、地球温暖化に立ち向かうモルディブの決意に賛同し、環境負荷を最小化する効率性の高さを意識したという。「気候変動をテーマとする国際会議を開くなら、グリーンスターほど適した場所はない」と開発チームは述べている。 Illustration courtesy Koen Olthius インド洋の島国モルディブで2014年オープン予定の浮遊式ホテル「グリーンスター(Greenstar)」。モルディブは世界で最も海抜が低く、気候変動による海面

    グリーンスター、未来の水上都市
  • 海に浮かぶ摩天楼、未来の水上都市

    海に浮かぶ未来の摩天楼「ウォーター・スクレイパー(Waterscraper)」。中央にそびえる透明なドームは、水面下120メートルに伸びるラグビーボール形の建造物の一部である。強力な水圧にも耐えられ、高級マンションやホテル、研究施設としての用途が想定されている。周囲のリング状の構造で支持し、安定を維持する。海上を自由に移動できるが、錨(いかり)を下ろせば流される心配はない。ドームから差し込む自然光が、内部の明るさを保つ。ビーチやレストラン、マリーナ、ダイビング・センターなども備え、マンションの住人や宿泊客のニーズに応えるという。ウォーター・スクレイパーのようなアイデアには、都市の人口増加圧力を緩和する役目が期待されている。 Illustration by Mathias Koester, eVolo 海に浮かぶ未来の摩天楼「ウォーター・スクレイパー(Waterscraper)」。中央にそび

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  • シースクレイパー、未来の水上都市

    未来の水上コミュニティ「シースクレイパー(Seascraper)」の完成予想図。アメリカのチームによる独特なデザインは、カツオノエボシから着想を得たという。世界人口が70億人を超え、都市部の膨張が加速するなか、持続可能な水上都市に注目する建築家やイノベーターが増えている。世界的に高まる洪水や海面上昇リスクへの対処も狙いの一つである。シースクレイパーは、住居やオフィス、娯楽スペースを備えた自給自足型のコミュニティだ。電力は、深海に設置した海流発電タービンや、外壁に組み込んだ太陽電池で賄う。大きく窪んだ中央部からは、下層階まで届く日光が差し込み、雨水が集められる。必要な淡水は、浄化処理した雨水と、内部に設けた海水脱塩プラントで確保するという。 Illustration by William Erwin and Dan Fletcher, eVolo 未来の水上コミュニティ「シースクレイパー(S

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  • テパネカ王国の遺跡を発見、メキシコ

    メキシコシティで発見されたテパネカ(Tepanec)王国の遺跡。調査を指揮した自然人類学者ホルヘ・アルトゥーロ・タラベラ・ゴンサレス氏がブラシをかけているのは、生まれたばかりの赤ん坊を抱いた女性で、出産後に死亡したらしい。 Photograph from Cortesia/INAH/RML/AP メキシコの首都メキシコシティで、15世紀に滅んだテパネカ(Tepanec)王国の遺跡が発見された。現場からは、子ども11人を含む17人分の人骨が出土し、約700年前に全盛期を迎えた王国が商業都市を築いていた証拠と考えられている。 発掘現場はメキシコシティ北西部のアスカポツァルコ(Azcapotzalco)行政区。発掘プロジェクトはアパート建設の事前調査として2カ月前に開始。多数の人骨や陶器が見つかり、ほとんど未解明だったテパネカの宗教観を知る手掛かりになると期待されている。 アスカポツァルコ行政区

    テパネカ王国の遺跡を発見、メキシコ
  • 女神の像、テパネカ王国の遺跡

    メキシコシティで最近出土した女神像。15世紀にアステカ帝国によって滅ぼされたテパネカ(Tepanec)王国の作品と見られている。自然人類学者ホルヘ・アルトゥーロ・タラベラ・ゴンサレス(Jorge Arturo Talavera Gonzalez)氏によると、雨の女神とトウモロコシの女神が組み合わされているという。発掘プロジェクトはアパート建設の事前調査として2カ月前に開始。多数の人骨や陶器が見つかり、ほとんど未解明だったテパネカの宗教観を知る手掛かりになると期待されている。発掘現場はメキシコシティ北西部のアスカポツァルコ(Azcapotzalco)行政区。約700年前にはテパネカ王国の豊かで有力な首都が置かれていた。メキシコ国立人類学歴史学研究所(INAH)によると、今回の出土品から、商業が栄えて人々が集まり、宗教儀式も催されていたと推測できるという。 Photograph from Co

    女神の像、テパネカ王国の遺跡
  • 副葬品の意味、テパネカ王国の遺跡

    メキシコシティの遺跡から出土したテパネカ(Tepanec)王国の遺跡。子どもの骨の脇には供物も埋められていた。発掘された11人の子どもの死因は不明だが、病死の可能性があるとテンプロ・マヨール博物館の上級研究員レオナルド・ロペス・ルハン(Leonardo Lopez Lujan)氏は話す。同博物館は、アステカ帝国の遺跡テンプロ・マヨールに隣接している。供えられた楽器やお椀、香炉、動物などは、子どもの来世へのお伴としたものと推察できる。1つの墓からは犬の遺骸が発見されており、ロペス・ルハン氏によると、死後の世界を旅する主人のパートナーとして生贄にされた可能性が高いという。 Photograph by Alexandre Meneghini, AP メキシコシティの遺跡から出土したテパネカ(Tepanec)王国の遺跡。子どもの骨の脇には供物も埋められていた。 発掘された11人の子どもの死因は不明

    副葬品の意味、テパネカ王国の遺跡
  • 多数の陶器類、テパネカ王国の遺跡

    メキシコシティで発掘されたテパネカ(Tepanec)王国の陶器類。考古学者アレハンドラ・ハッソ・ペーニャ(Alejandra Jasso Pena)氏が調査を指揮している(左端)。「3個見つかったカップには、焼かれた人間の頭蓋骨が入っていた。非常に興味深い」。メキシコ国立人類学歴史学研究所(INAH)のホルヘ・アルトゥーロ・タラベラ・ゴンサレスは語る。2個はリュウゼツランを原料とした乳白色で粘りがある酒「プルケ」用のようだが、三脚付きカップの用途はわかっていない。 Photograph by Alexandre Meneghini, AP メキシコシティで発掘されたテパネカ(Tepanec)王国の陶器類。考古学者アレハンドラ・ハッソ・ペーニャ(Alejandra Jasso Pena)氏が調査を指揮している(左端)。「3個見つかったカップには、焼かれた人間の頭蓋骨が入っていた。非常に興味深

    多数の陶器類、テパネカ王国の遺跡
  • 高度3万メートルからのフリーフォール

    パラシュートで砂漠に降下するオーストリア人アスリート、フェリックス・バウムガートナー(Felix Baumgartner)氏。7月25日、アメリカ、ニューメキシコ州ロズウェルで、気球に吊り下げられたカプセルに乗って高度2万9455メートルまで上昇、フリーフォールに挑戦した。落下時間は3分48秒で、最高時速は862キロに達したという。オーストリアの飲料大手レッドブルとバウムガートナー氏が創設した「レッドブル・ストラトス」プロジェクトの2度目のテストで、次回が番である。その目標は、高度約3万7000メートルの成層圏に同氏を送り込んで実施する超音速の自由落下。成功すれば、生身で音速(時速約1100キロ)を超える初の人類となる。 Photograph by Joerg Mitter, Red Bull/AFP/Getty Images パラシュートで砂漠に降下するオーストリア人アスリート、フェリ

    高度3万メートルからのフリーフォール
  • 古代オリンピックの驚くべき姿(2)

    古代ギリシャの壺の絵からは、スポーツとエンターテイメントの結び付きが読み取れる。(Photograph from Ace Stock Limited/Alamy) << (1)より続く >> ◆同性愛は認められていたのですか? 古代ギリシャに同性愛という言葉はなく、大人の男同士の性行為は極めてショッキングと考えられていたでしょう。ただし、スポーツの世界では、少年との性的な関係が一般化していました。思春期を迎える前の少年を指導するという名目でした。このような行為は社会的に認知され、教育の一環と考えられていましたが、公然と話題に上ることはありませんでした。 ◆女子は参加しなかったのですよね。 その通りです。既婚の女性は観客席への立ち入りさえ許されませんでした。ただし、若い女性や未婚の女性は入場できました。オリンピックの優勝者と結婚させたい一心で、父親が娘を観戦に連れて来ていました。 売春もまん

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  • 五輪の象徴、パナシナイコ競技場の歴史

    上は1896年、第1回近代オリンピックの開会式が開催されたアテネのパナシナイコ・スタジアム。下は2004年夏季オリンピック、アーチェリー競技が行われているスタンドに、近代オリンピックの象徴「五輪」が観客席に影を落としている。男女マラソンのゴール地点にもなった。 Photographs by Tim Hawkins, Eye Ubiquitous/Corbis; (below) Mike King, NewSport/Corbis オリンピックを象徴する場所をひとつ挙げるとすれば、パナシナイコを措いてほかにない。幾多の歴史を秘めた最古のオリンピック会場「パナシナイコ・スタジアム」。 紀元前6世紀の竣工とされるパナシナイコ・スタジアムは、紀元140年の改修で5万人収容の大競技場になったという。数々の古代競技が繰り広げられたトラックは1周330メートル。再建を経た現在も、長い直線と半径の短いコー

    五輪の象徴、パナシナイコ競技場の歴史
  • 古代オリンピックの驚くべき姿(1)

    古代ギリシャの壺の絵からは、スポーツとエンターテイメントの結び付きが読み取れる。(Photograph from Ace Stock Limited/Alamy) まるでスポーツだけでは不十分とでもいうように、古代オリンピックは“異教的な娯楽の詰め合わせ”だったという。今年のロンドン五輪にも劣らない印象的な開会式に続いて行われたのは、“古代のウッドストック・フェスティバル”だった。公衆衛生の欠如、売春のまん延、骨折、動物の生贄、ドーピングなどの疑問について、『驚異の古代オリンピック』(原題:The Naked Olympics: The True Story of the Ancient Games)の著者トニー・ペロテット(Tony Perrottet)氏に解説してもらった。 ◆オリンピック競技会は紀元前776年から紀元394年まで、4年に1度開催されていました。定期的なイベントとしては

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  • ロンドン五輪、会場のその後は?

    7月27日(日時間28日早朝)に開会式を迎えるロンドンのオリンピックスタジアム。8万人を収容する公営のスタジアムは、閉幕後には上階の仮設観客席を解体し、2万5000席のコンパクトな競技場に生まれ変わるという。 Photograph from Yomiuri Shimbun/AP 7月27日(日時間28日早朝)の開会式で聖火台に火がともると、7年の月日と数十億ポンド(数千億円)を投じて準備されたロンドンオリンピックが開幕する。 しかし、大会後の各競技施設にはどのような未来が待っているのだろう。過去の開催都市を見る限り、必ずしも有効活用されてはいないようだ。 ロンドンでは再利用が計画されている。8万人を収容する公営のオリンピックスタジアムは、閉幕後に上階の仮設観客席を解体し、2万5000席のコンパクトな競技場に生まれ変わる。 例えば2004年アテネオリンピックの競技会場は、閉会後は再利用が

    ロンドン五輪、会場のその後は?
  • 二次大戦で沈没の英商船から大量の銀塊

    深度4700メートルの北大西洋海底に沈むイギリス商船ゲアソッパ号(S.S. Gairsoppa)の貨物室に積まれている銀塊。ゲアソッパ号は1941年2月、ドイツ軍の潜水艦Uボートの魚雷攻撃を受けて沈没した。 Photograph courtesy Odyssey Marine Exploration 第二次大戦中、アイルランド沖480キロの北大西洋海底に沈んだイギリスの商船ゲアソッパ号(S.S. Gairsoppa)から、大量の銀塊が回収された。同船の探査・回収作業にあたるオデッセイ・マリン・エクスプロレーション社(Odyssey Marine Exploration, Inc.)によると、船内にあった銀塊240トンのうちこれまでに48トンを回収しているが、沈没船から回収された貴金属としてはおそらく史上最深度、最大量だろうという。 ゲアソッパ号は全長120メートルあまり、名前はインドのカル

    二次大戦で沈没の英商船から大量の銀塊
  • アテネ、五輪会場のその後

    2004年アテネオリンピックで、ハンドボールとテコンドーの試合会場となったファリロ・スポーツ・パビリオン。現在はコンサートや政治集会、アイスショーなどがまれに開催されるだけである。スポーツ・パビリオンを含むファリロ沿岸部のオリンピック複合施設は荒廃が進行。ギリシャ内の他の競技施設も大半が同じ運命という。例えば、卓球と新体操の会場となったガラチ・オリンピック・ホールはショッピングモールに改装される計画だったが、現在もフェンスに囲まれ、放置されている状態だ。ギリシャ政府は債務危機対策として一部の施設を売却したい意向だが、遅々として進んでいないという。 Photograph by John Kolesidis, Getty Images 2004年アテネオリンピックで、ハンドボールとテコンドーの試合会場となったファリロ・スポーツ・パビリオン。現在はコンサートや政治集会、アイスショーなどがまれに開

    アテネ、五輪会場のその後
  • 北京のBMX場、五輪会場のその後

    2008年の北京オリンピックでBMX(バイシクルモトクロス)競技の会場として使用された老山BMX場。アクロバティックな技の数々に熱い視線が注がれた4年前が嘘のように、今では一面草に覆われてすっかり寂れ果てている。北京で初めて正式種目となったBMXは、2012年のロンドンでも実施される。しかし、老山BMX場での競技会は当面開催される予定はないという。オリンピックの成功に向けた中国の意気込みはすさまじかった。予報では雨だった開会式当日の天気を「人工消雨」で晴れにしてしまったほどだ。もちろん中国には、大会を通じて自国を世界中にアピールする狙いがあった。しかし、ある調査によると、オリンピックが開催都市にもたらす経済効果は一時的なケースがほとんどだという。 Photograph by David Gray, Reuters 2008年の北京オリンピックでBMX(バイシクルモトクロス)競技の会場として

    北京のBMX場、五輪会場のその後
  • ウォーターキューブ、五輪会場のその後

    水泡で覆われたような個性的な外観から「ウォーターキューブ」の愛称で知られる北京国家水泳センター。北京オリンピック閉幕後に改装され、2010年8月、ウォータースライダーや波の出るプール、流水プールなどを備えたアジア最大の屋内ウォーターパークとしてオープンした。「この利用法で元が取れるかどうかは不明だが、中国の場合は採算性を度外視していたかもしれない」とアメリカ、スミス大学の経済学者アンドリュー・ジンバリスト(Andrew Zimbalist)氏は指摘する。「五輪関連の施設建設やインフラ整備に費やした総額は約400億ドル。当時の中国は、経済成長率が年平均10%以上という急成長を続け、必要とあらば何でも建設できるだけの予算があった。中国は何としてでも国家の発展ぶりを世界に誇示したかったのだ」。 Photograph by Fu Tian, Color China Photo/AP 水泡で覆われた

    ウォーターキューブ、五輪会場のその後
  • モスクワ、五輪会場のその後

    2012年2月、ロシアのプーチン首相(当時)はモスクワのルジニキ・スタジアムに10万人以上の支持者を集め、3月の大統領選に向けた演説を行った。オリンピック後も競技施設が有効活用されている一例である。ルジニキ・スタジアム(旧称レーニン・スタジアム)は、スポーツ面の国力を誇示するためソビエト時代の1956年に建設された。1980年のモスクワオリンピックではメイン会場として利用されたが、アメリカを初めとする西側諸国の集団ボイコットもあり、後味の悪い大会となった。ルジニキ・スタジアムでは、現在も国内プロサッカーリーグや主要な国際大会が開催されている。2018年FIFAワールドカップロシア大会の決勝戦会場にも決まり、改修工事も検討されているという。 Photograph by Alexander Zemlianichenko, AP 2012年2月、ロシアのプーチン首相(当時)はモスクワのルジニキ

    モスクワ、五輪会場のその後
  • ゲアソッパ号、大戦中に沈没の英商船

    第二次大戦中に北大西洋の4700メートルの深海に沈んだイギリス商船ゲアソッパ号(S.S. Gairsoppa)。写真には、貨物室から甲板に向かうはしごが映っている。探索にあたったオデッセイ・マリン・エクスプロレーション社(Odyssey Marine Exploration, Inc.)によると、貨物室には積荷の銀塊240トンが眠っており、これまでにそのうち48トンの回収に成功しているという。沈没の原因となったドイツ軍の魚雷によって船底が破壊され、貨物室がむき出しになってはいるものの、ゲアソッパ号の船体はおおむね無事だった。上下の向きはそのままで海底にあり、塗装もかすかに確認できる。 Photograph courtesy Odyssey Marine Exploration 第二次大戦中に北大西洋の4700メートルの深海に沈んだイギリス商船ゲアソッパ号(S.S. Gairsoppa)。写

    ゲアソッパ号、大戦中に沈没の英商船
  • ソナー画像、大戦中に沈没の英商船

    北大西洋に沈む第二次大戦中のイギリスの商船ゲアソッパ号(S.S. Gairsoppa)の探査・回収作業にあたるオデッセイ・マリン・エクスプロレーション社(Odyssey Marine Exploration, Inc.)は、サイドスキャンソナーの画像を公開した。セピア色の背景から白く浮き出ているのがゲアソッパ号の船体。サイドスキャンソナーは、扇形に広がる音波を海底に向けて発信し、戻ってきた音波を記録して海底の地形を描き出す技術。このような粒状の画像を元に、見込みのありそうな地点を絞り込んでから、ビデオカメラを搭載した遠隔操作無人探査機(ROV)などを投入して、さらに詳細な探査が行われる。 Photograph courtesy Odyssey Marine Exploration 北大西洋に沈む第二次大戦中のイギリスの商船ゲアソッパ号(S.S. Gairsoppa)の探査・回収作業にあたる

    ソナー画像、大戦中に沈没の英商船
  • トイレも無事、大戦中に沈没の英商船

    イギリスの商船ゲアソッパ号(S.S. Gairsoppa)は第二次大戦中の1941年、北大西洋でドイツ軍の潜水艦Uボートに撃沈された。写真は、4700メートルの深海底に沈んだ同船の上甲板のトイレで、ここも大きな破損はない。今回の調査中に付近の海域で、一次大戦中の1917年にやはりドイツ軍のUボートによって撃沈されたイギリスの蒸気船マントラ号(SS Mantola)も見つかっているという。 Photograph courtesy Odyssey Marine Exploration イギリスの商船ゲアソッパ号(S.S. Gairsoppa)は第二次大戦中の1941年、北大西洋でドイツ軍の潜水艦Uボートに撃沈された。写真は、4700メートルの深海底に沈んだ同船の上甲板のトイレで、ここも大きな破損はない。 今回の調査中に付近の海域で、一次大戦中の1917年にやはりドイツ軍のUボートによって撃沈さ

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  • 綱登り、消えた五輪種目

    1906年アテネ(正式なオリンピックには含まれない中間大会)で金メダルに輝いたギリシャのゲオルギオス・アリプランティス。(Images from Popperfoto/Getty Images) 1896~1932年の夏季オリンピックでは、体操競技に「綱登り」種目があった。写真は1906年アテネ(正式なオリンピックには含まれない中間大会)で金メダルに輝いたギリシャのゲオルギオス・アリプランティス(Georgios Aliprantis)。 アメリカ以外では人気が低く、正式種目としては4回しか行われていない。うち2回は、アメリカ開催の1904年と1932年である。 「五輪種目に採用されるには世界的な普及が不可欠だが、自国開催では多少強引に決められたのだろう」と、国際オリンピック史学会(ISOH)の元会長ビル・マロン(Bill Mallon)氏は指摘する。 1896年にアテネで開催された第1回

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  • 消えていったオリンピックの競技種目

    1992年のバルセロナオリンピック会場で、シンクロナイズドスイミング・ソロを練習するクリステン・バブ・スプレーグ選手。同種目でアメリカに金メダルをもたらしたが、シンクロ・ソロはバルセロナを最後に廃止された。(Photograph by Richard Mackson, Sports Illustrated/Getty Images) 100年を超える近代オリンピックの歴史では、初期から現在まで変わらず実施されてきた競技種目に加え、新たに登場した種目がある中で、途中で姿を消してしまった種目も数多くある。 例えば、水泳競技のシンクロナイズドスイミング・ソロ(写真)は、1984年のロサンゼルスで正式種目となり、3回目の1992年バルセロナを最後に廃止された。一見矛盾を感じる競技名だが、シンクロの対象は他の選手ではなく音楽である。オリンピック以外の大会では引き続き競技されており、見た目の華麗さとは

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  • 綱引き、消えた五輪種目

    廃止された数々のオリンピック種目の中で、綱引きは例外的に高い人気を誇っていた。現在では校庭や広場などで実施させるのどかなイメージだが、20世紀初頭はかなり熱気のあるスポーツだった。(Photograph from Topical Press Agency/Getty Images) 廃止された数々のオリンピック種目の中で、綱引きは例外的に高い人気を誇っていた。国際オリンピック史学会(ISOH)の元会長ビル・マロン(Bill Mallon)氏は、「綱引きは当に見ごたえのあるスポーツだ」と話す。 1900年のパリから1920年のアントワープまで、夏季オリンピックの花形の1つだったが、国際オリンピック委員会(IOC)が五輪種目には国際的な統括組織が必要と決定。組織を持たなかった綱引きはやむなく除外された。後に組織された国際綱引連盟(TWIF)は2002年にIOCに加盟し、競技種目として復帰を目

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  • 熱気球、消えた五輪種目

    1900年のパリオリンピックは万国博覧会の付属大会であり、空前絶後の数の公開競技が実施された。好例が熱気球レース(写真)である。(Image from Popperfoto/Getty Images) 1900年のパリオリンピックは万国博覧会の付属大会であり、空前絶後の数の公開競技が実施された。好例が熱気球レース(写真)である。「あまりにも多くのイベントが開催され、どれがオリンピック種目か判断できないほどだった」と、国際オリンピック史学会(ISOH)の元会長ビル・マロン(Bill Mallon)氏は説明する。 飛行距離、飛行時間、既定の場所に着陸する正確性が競われ、フランスが圧勝している。 機械の推進力を利用する競技の禁止に伴い、熱気球も五輪で実施されることはなくなった。近年、五輪憲章で機械的推進力を認める動きが出ているが、熱気球の復活はないとマロン氏は考えている。

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  • ベロドローム、ロンドン五輪のエコ

    ロンドン五輪の自転車競技場「ベロドローム」。250メートルトラックには、総延長56キロのシベリアマツが採用されている。持続可能な方法で生産されており、他の木材も含めてFSC(森林管理協議会)認証を取得済みだ。コンパクトな設計によって優れたエネルギー効率を実現しており、競技場内の空調量は最小限に抑えられている。自然換気を利用したパッシブクーリング(受動的冷房)システムを備え、照明には自然光も活用。雨水貯留システムや効率性の高い配管設備、水を使用しない小便器などが、水道使用量の70%削減に貢献している。また、基礎部分の規模を縮小したほか、軽量なケーブルネット構造の屋根を導入し、鋼材使用量を約1000トン減らした。 Photograph courtesy Justin Setterfield, LOCOG 自転車競技施設ベロパークで、競技場(ベロドローム)のトラックを時速70キロ以上で疾走する選

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  • 赤と銀の塔、ロンドン五輪のエコ

    2012年ロンドン五輪のオリンピック・パークにそびえ立つタワー、「アルセロール・ミタル・オービット」。高さ約115メートル、赤と銀の鋼管が螺旋を描く抽象的なモニュメントである。内部にはエレベーターや階段が設置され、ロンドンを一望できる展望台の役割も兼ねている。スリル満点のジェットコースターのようにも見えるオービットは批評家の評価も分かれている。地元紙には、フランスのエッフェル塔(Eiffel Tower)になぞらえて「“Eyeful Tower(魅惑の塔)”が完成」などの見出しが並んだ。一方、「Commission for a Sustainable London 2012(持続可能な2012年ロンドン・オリンピック&パラリンピック競技大会を目指す委員会)」は、大会が掲げるエコ精神に適合しない無意味な建造物と指摘。製造時に大量のエネルギーを消費する鉄材の使用も非難の的になっている(ただし、

    赤と銀の塔、ロンドン五輪のエコ
  • 発電施設、ロンドン五輪のエコ

    オリンピック・パーク内に建設された高さ18メートルのエネルギーセンター(茶色の建物)。1階部分の窓から発電施設内部を見ることができる。天然ガスとバイオマス(ウッドチップ)を燃料とする冷却熱電併給(CCHP)技術を使用し、炭素排出量を抑えている。発熱・発電の際の排熱で吸収式冷凍機が冷房用の冷水を生成、空調装置を稼働する。所有するフランスの電力会社GDFスエズが運営にもあたる。オリンピック閉幕後は、開発予定の周辺地域の建物やコミュニティに、電力、熱、冷房を供給。隣接する黒いビルは、ビジターセンターの設置が予定されているという。天然ガス発電の炭素排出量は石炭の半分だが、今後40年間も化石燃料を使い続けるという契約内容に批判の声もある。 Photograph by Julian Finney, Getty Images オリンピック・パーク内に建設された高さ18メートルのエネルギーセンター(茶色の

    発電施設、ロンドン五輪のエコ
  • ロンドン五輪の聖火トーチは旧式燃料

    金色に輝くロンドンオリンピックの聖火トーチは高さ80センチ、重さ800グラム。航空宇宙産業グレードのアルミニウムを使用し、史上最軽量を実現している。デザインや製造はイギリス国内で実施された。 Photograph from Reimschuessel/Splash News/Corbis ロンドンオリンピックの公式スポンサーを務めるエネルギー企業、EDFエナジー(EDF Energy)は2007年、ススキを利用したトーチ用バイオ燃料を開発すると明言していた。カーボンニュートラル(二酸化炭素の排出と吸収がプラスマイナスゼロ)を達成する初のトーチが期待されたが、計画は失敗したという。 5月19日から8000人のランナーが掲げてイギリス各地を回っている聖火は、プロパンとブタンの混合ガスで灯されている。2000年のシドニーオリンピック以来変わらない燃料だ。 「Commission for a Su

    ロンドン五輪の聖火トーチは旧式燃料
  • ロンドン五輪のエコ対策

    ロンドンのオリンピック・パークに完成した自転車競技施設ベロパーク。屋根は曲線を描き、外装部分にはスギ材が使用されている。総工費は8600万ポンド(約105億円)で、予算やスケジュールの混乱もなく竣工したという。オリンピック・パーク内で最も高いエネルギー効率を誇る競技場である。 Photograph by Edmund Sumner, View/Corbis ロンドンに集結したアスリートたちは19日間かけて“ゴールド”を競うが、競技場への電力供給で重視されたのは“グリーン”。2005年にオリンピック招致を勝ち取った当初から、イギリスは環境志向を運営方針の中核に掲げており、外部機関である「Commission for a Sustainable London 2012(CSL:持続可能な2012年ロンドン・オリンピック&パラリンピック競技大会を目指す委員会)」による監査も受け入れた。 CSLや

    ロンドン五輪のエコ対策
  • ブルガリアの吸血鬼、鉄杭と抜歯の意味

    ブルガリアの国立歴史博物館で公開された700年前の“吸血鬼”。ブルガリア南東部、黒海沿岸の都市ソゾポルで、胸を鉄の棒(右上の赤茶色の塊)で刺され、歯を引き抜かれた状態で出土した。 Photograph by Nikolay Doychinov, AFP/Getty Images 吸血鬼が怪奇小説の題材となったのは19世紀末だが、そのはるか昔から恐れられていたことを物語る証拠がブルガリアで見つかった。 2012年6月、ブルガリア南東部の黒海沿岸の都市ソゾポルにある教会跡に埋葬されていた700年前の人骨は、胸を鉄の棒で刺された状態で出土した。さらに、遺体の歯は引き抜かれていた。当時は死者が吸血鬼に変身すると信じられており、村人たちが予防的に行ったようだ。 恐怖の対象として人々の記憶に深く刻み込まれているヨーロッパの伝承について、ナショナル ジオグラフィックの歴史学者も務めたマーク・コリンズ・ジ

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  • 教会跡で出土、ブルガリアの“吸血鬼”

    ブルガリア南東部、黒海沿岸の都市ソゾポルにある修道院横で発掘された教会跡。2012年6月、“吸血鬼”とされる2体の遺骨が出土した。ロイター通信によると、12~14世紀のブルガリアでは異教信仰が広がっており、現世で悪行を働いた人間は死後に吸血鬼となって蘇ると考えられていたという。遺体に鉄の棒などを打ち込む行為は、吸血鬼への変化を防ぐために行われた。 Photograph courtesy National Museum of History, Bulgaria ブルガリア南東部、黒海沿岸の都市ソゾポルにある修道院横で発掘された教会跡。2012年6月、“吸血鬼”とされる2体の遺骨が出土した。 ロイター通信によると、12~14世紀のブルガリアでは異教信仰が広がっており、現世で悪行を働いた人間は死後に吸血鬼となって蘇ると考えられていたという。遺体に鉄の棒などを打ち込む行為は、吸血鬼への変化を防ぐた

    教会跡で出土、ブルガリアの“吸血鬼”
  • 鉄棒で封印、ブルガリアの“吸血鬼”

    ブルガリア南東部の町ソゾポルで、胸に鉄の棒が突き刺さった2体の人骨が発掘された。“吸血鬼”としての蘇りを防ぐため、地中に固定したと考えられている。写真はその1体で、茶色の鉄の塊が確認できる。埋葬されたのは約700年前の中世と見られる。遺体が吸血鬼に変身するという信仰が広まっていた時代だ。イタリア、フィレンツェ大学の法医考古学者マッテオ・ボリニ氏によると、当時は腐敗した遺体が吸血鬼と誤解されるケースも多かったという。 Photograph from AP ブルガリア南東部の町ソゾポルで、胸に鉄の棒が突き刺さった2体の人骨が発掘された。“吸血鬼”としての蘇りを防ぐため、地中に固定したと考えられている。写真はその1体で、茶色の鉄の塊が確認できる。 埋葬されたのは約700年前の中世と見られる。遺体が吸血鬼に変身するという信仰が広まっていた時代だ。 イタリア、フィレンツェ大学の法医考古学者マッテオ・

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  • 女性飛行士、アメリア・イアハート

    1937年の世界一周飛行の2年前に撮影された女性飛行士アメリア・イアハート。 Photograph from George Eastman House/Getty Images 2012年7月24日のGoogleトップに、単発単葉のクラシカルな航空機が掲載された。深紅に塗られたこのロッキード・ベガ5bに搭乗し、女性初の大西洋単独横断飛行に成功したアメリカの飛行士アメリア・イアハートの生誕115年を記念してのことだ。 イアハートはチャールズ・リンドバーグに続き、1932年に女性として初めての大西洋単独横断飛行に成功した。この快挙により、彼女は一躍脚光を浴び、アメリカ国内で国民的な人気を博することになる。彼女はその後、ハワイからアメリカ土までの単独飛行にも成功。イアハートは女性の地位向上にも熱心に取り組み、彼女の名前を冠した奨学金制度は今も運営され、その伝説的な生涯は伝記映画にもなっている。

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  • マヤ文明、“夜の太陽の神殿”を発見

    “サメ男”の顔で表現されたマヤの太陽神。グアテマラで発見された神殿を飾るマスクの1つだ。 Photograph courtesy Edwin Roman, Brown University グアテマラのジャングルで長年眠っていた神殿がついに姿を現した。アメリカ、ブラウン大学の考古学者チームは7月19日、「夜の太陽の神殿(Temple of the Night Sun)」を発見したと発表。サメ、血を飲む人、ジャガーなどの姿で表現された太陽神の巨大なマスクで装飾されており、約1600年前には深紅に輝く姿が数キロ先からも見えたという。マヤ文明の競合する都市国家について新たな手掛かりも得られた。 マヤ文明は現在のグアテマラ、ベリーズ、メキシコのユカタン地域で繁栄。中央集権化が進んだアステカ帝国やインカ帝国とは異なり、都市国家の緩やかな集合体だった。 プロジェクト責任者でブラウン大学の考古学者スティ

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  • モン・サン・ミシェルを衛星から見る

    軌道上から眺めたフランスのモン・サン・ミシェル。5月3日、超高解像度光学衛星プレアデス(Pleiades)が撮影した。19世紀末まで、モン・サン・ミシェルと陸をつなぐ堤防は存在しなかった。そのため、干潮を待たなければ渡ることはできなかったという。欧州宇宙機関(ESA)が公開したこの画像では、干潟の泥に流れた水の跡が確認できる。プレアデス・プロジェクトは間もなく2基体制になる。2011年12月に打ち上げられたプレアデス1Aに続き、2012年内にほぼ同一のプレアデス1Bが軌道投入される予定。 Image courtesy ESA 軌道上から眺めたフランスのモン・サン・ミシェル。5月3日、超高解像度光学衛星プレアデス(Pleiades)が撮影した。 19世紀末まで、モン・サン・ミシェルと陸をつなぐ堤防は存在しなかった。そのため、干潮を待たなければ渡ることはできなかったという。 欧州宇宙機関(ES

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  • 古代都市パルミラ、繁栄の謎を解明か

    雄大な廃墟は、シリアのパルミラが数世紀にわたりローマ帝国の支配下にあったことをはっきりと示す証拠だ。左下枠内はパルミラ近くで発見された井戸。 Photographs by Annie Griffiths, National Geographic; (inset) Jergen Christian Meyer シリアにある今日のパルミラは、雄大な廃墟が蜃気楼のように立ち並ぶ遺跡だが、歴史的、考古学的証拠から見て、ローマ帝国の支配下にあった時代には巨大な交易都市だったと考えられている。 パルミラ遺跡の調査は100年近く前から行われてきた。だが、不毛なシリア砂漠の真ん中で20万人もの人口を抱えていたこの都市がどのようにして繁栄できたのかという重大な疑問には、いまも答えが出ていない。 かつてパルミラは、アジアの品物をローマに運んだ隊商路に欠かせない中継地のオアシスだった。商人たちがインド産や中国

    古代都市パルミラ、繁栄の謎を解明か
  • セディバ猿人、全身骨格を発見か?

    自身の発見した歯を指差してポーズを取る大学院生のジャスティン・ムカンク(Justin Mukanku)氏。写真の右に置かれているのはセディバ猿人の頭蓋骨標。 Photograph courtesy Wits Institute for Human Evolution, University of the Witwatersrand ある研究室で先月、岩の塊から突き出た1の歯をきっかけとして、進化学上の“お宝”が発見されるという出来事があった。その岩の中には、人類の祖先の全身標を完成に近づける化石が残されていたのだ。ところがこの岩は、そうとは知られないまま何年もこの研究室に保管されていた。 その後のスキャンにより、この岩には200万年前の化石が埋もれていることが分かった。これは「ほぼ間違いなく」アウストラロピテクス・セディバ(Australopithecus sediba、セディバ猿人

    セディバ猿人、全身骨格を発見か?
  • バイキングの軍事都市、ドイツで発見?

    ドイツ北部で発掘が進む8世紀頃に栄えた都市遺跡。 Photograph courtesy Andres S. Dobat, Aarhus Universitet 8世紀頃に栄えた軍事都市がドイツ北部で発見された。歴史的文献にも記されている、史上最古のバイキング居住地の可能性があるという。 発掘現場は、デンマークと国境を接するシュレースヴィヒ・ホルシュタイン州の町フュージンク(Fusing)。フランク王国のカール大帝に仕える書記官が西暦804年に記した、“失われたバイキング都市”スリエストルプ(Sliesthorp)ではないかと取りざたされている。 「スリエストルプは、スカンジナビアの最初期の王が軍事基地として利用していた。最近まで所在地の見当も付いていなかった」と、発掘チームのリーダーでデンマーク、オーフス大学のアンドレス・ドバット(Andres Dobat)氏は話す。 文献の都市かどうか

    バイキングの軍事都市、ドイツで発見?
  • アスキア墳墓、危機遺産2012

    西アフリカ、マリ共和国のガオにあるアスキア墳墓(2007年撮影)。イスラム教の巡礼者が、高さ17メートルのピラミッド状の墓を訪れている。15~16世紀に同地で栄えたソンガイ帝国の皇帝アスキア・ムハンマド1世の墓地で、1485年に造営された。ユネスコは2012年6月、マリ北部を掌握する武装グループが破壊活動を行う恐れがあるとして、アスキアとトンブクトゥを「危機にさらされている世界遺産リスト(危機遺産リスト)」に登録した。ユネスコのロニ・アメラン(Roni Amelan)氏によると、2012年に危機遺産リストへ登録された5件中、マリの2遺跡は特に切迫した状況という。「武装グループの行為は、ユネスコや世界遺産委員会の活動理念と相反する」と同氏は話している。 Photograph by Florin Iorganda, Reuters 西アフリカ、マリ共和国のガオにあるアスキア墳墓(2007年撮影

    アスキア墳墓、危機遺産2012
  • パナマの要塞群、危機遺産2012

    パナマの港町ポルトベロに残るサンティアゴ要塞。崩れ落ちそうな監視塔や錆びた大砲が保全対策の不備を示している。ポルトベロとサン・ロレンソの要塞群は、17~18世紀のスペイン植民地時代に建設された防衛施設として評価が高い。だが、2012年6月25日~7月5日にロシアのサンクトペテルブルクで開かれた世界遺産委員会で「危機遺産」リスト入りが可決された。世界遺産への登録は1980年。ユネスコの声明によると、「劣化が急速に進み、登録理由となった“全人類共通の普遍的価値”が損なわれかねない」という。委員会はパナマ政府に対して、建築構造のリスク評価を実施し、壁、砲台、土台を補強するよう求めている。 Photograph by Alfredo Maiquez パナマの港町ポルトベロに残るサンティアゴ要塞。崩れ落ちそうな監視塔や錆びた大砲が保全対策の不備を示している。ポルトベロとサン・ロレンソの要塞群は、17

    パナマの要塞群、危機遺産2012
  • フィリピンの棚田群、危機遺産2012

    フィリピン北部ルソン島、青々とした棚田に囲まれたイフガオ州のバタッド村。1995年、ユネスコの世界遺産に登録された「コルディリェーラの棚田群」の1つである。5カ所に広がる棚田群は、浸被害や観光の影響、後継者不足による耕作放棄地の増加、水利システムの停止などのため、2001年に「危機遺産」リストへ追加された。しかし2012年、同国の環境保護対策や国内外の支援、保全技術の開発などが実を結び、リストからの削除が決定した。イフガオ州の村々の棚田は、少数民族イフガオ族が営々と守り続けてきた。「2000年前から何代にもわたって受け継がれるイフガオの棚田は、近代化がもたらした課題や障害を乗り越え、古代文明の歴史を今に伝えている」とユネスコは説明する。 Photograph by Chris Stowers, Panos フィリピン北部ルソン島、青々とした棚田に囲まれたイフガオ州のバタッド村。1995年

    フィリピンの棚田群、危機遺産2012
  • パレスチナ聖誕教会、危機遺産2012

    小窓から日差しが差し込む聖誕教会。ヨルダン川西岸地区のベツレヘムにあり、イエス・キリストが生まれたとの伝承も残る。漏水による損傷がひどく、2012年のユネスコ世界遺産登録と同時に「危機遺産」にも加えられた。パレスチナは2011年にユネスコへの正式加盟が承認されたばかりで、同教会は世界遺産に登録申請した初の物件である。イスラエルとアメリカは、加盟、登録の一連の動きにより、ユネスコがパレスチナを独立国家と認めたことになると強く反発。イスラエルのビンヤミン・ネタニヤフ首相は遺産登録にあたり、「ユネスコは文化面の評価ではなく、政治的な思惑で動いている」との非難声明を発表した。 Photograph by Remi Benali, Corbis 小窓から日差しが差し込む聖誕教会。ヨルダン川西岸地区のベツレヘムにあり、イエス・キリストが生まれたとの伝承も残る。漏水による損傷がひどく、2012年のユネス

    パレスチナ聖誕教会、危機遺産2012
  • 海商都市リバプール、危機遺産2012

    イギリス北西部の都市リバプール、マージー川の河口に開けた埠頭「ピア・ヘッド(Pier Head)」。左奥のキューナード・ビルディング(Cunard Building)を筆頭に、美しい建造物や船が穏やかな水面に映る。ピア・ヘッドは、2004年にユネスコの世界遺産に登録された「海商都市リバプール」の一部である。ユネスコによると、リバプールは18~19世紀に世界の主要な交易中心地の一つとなり、大英帝国の発展に重要な役割を果たした。市内中心部の北にある歴史的な波止場地域で、2012年6月、「危機遺産」リストにも加えられた。大規模なウォーターフロント建設計画「リバプール・ウォーターズ」が原因だ。世界遺産委員会は、この開発が市内中心部を大幅に拡張し、港湾の景観を様変わりさせてしまうと危惧している。 Photograph by Seppo Olkinuora, Avecphoto イギリス北西部の都市リ

    海商都市リバプール、危機遺産2012
  • トンブクトゥ、危機遺産2012

    西アフリカ、マリの砂漠都市トンブクトゥに建つジンガリベリ・モスク(Djinguereber Mosque)。ユネスコは2012年6月、トンブクトゥなど5つの世界遺産を「危機遺産」リストに追加した。世界遺産委員会がトンブクトゥをリストに登録すると決断した背景には、史跡の略奪や破壊に対する国際的な懸念の高まりがある。2012年に入り、トンブクトゥは2つの武装グループ、「アザワド解放民族運動(MNLA)」と「アンサール・ディーン(Ansar Dine)」に占領されている。ボイス・オブ・アメリカによれば、アンサール・ディーンはトンブクトゥの寺院について、偶像崇拝であり反イスラム的と発言しているという。 Photograph by Bruno Cossa, Grand Tour/Corbis 西アフリカ、マリの砂漠都市トンブクトゥに建つジンガリベリ・モスク(Djinguereber Mosque)。

    トンブクトゥ、危機遺産2012
  • イギリスのミイラ、複数人体から合成

    イギリス、スコットランドのクレイド・ハラン(Cladh Hallan)で発掘された青銅器時代の女性のミイラ。複数人の骨の組み合わせと判明した。 Photograph courtesy Mike Parker Pearson, University of Sheffield イギリス、スコットランドで発掘された3000年前の男女2体のミイラは、計6人の骨を組み合わせて作成されていたという。 最新の同位体年代測定とDNA分析を行った結果、泥炭地で発掘されたミイラ状の遺体「ボグボディー(bog body)」が、さまざまな部位の骨の寄せ集めと判明した。ただし、この奇怪な合成物を作り出した目的は、歴史の謎として残りそうだ。 問題のミイラは10年以上前に、スコットランド沖合のサウス・ウイスト島にある先史時代の村、クレイド・ハラン(Cladh Hallan)で出土。現場は11世紀の屋敷跡の地下だった。

    イギリスのミイラ、複数人体から合成
  • シャーリマール庭園、危機遺産2012

    パキスタン北部、ラホールにあるシャーリマール庭園。幅の狭い橋を観光客が行き交う。ラホールの城塞とシャーリマール庭園は2000年、パキスタン政府の強い要請を受けて「危機遺産」リストに追加された。道路の拡張工事により給水施設が破壊されたことなどが理由だった。しかし2012年、晴れてリストから外された。ユネスコの声明によれば、「遺跡の多くはすでに修復が完了。排水と設計の見直しによって外壁の保存状態が改善され、湿気の問題が解決した」という。城塞と庭園は1981年にユネスコの世界遺産に登録。「16~17世紀に栄華を極めたムガル帝国の芸術表現を見事に残している」とユネスコは説明する。ムガルの文明はイスラム、ペルシア、ヒンズー、モンゴルの要素が融合しており、数世紀にわたってインド亜大陸に影響を及ぼした。 Photograph by Christophe Boisvieux, Corbis パキスタン北部

    シャーリマール庭園、危機遺産2012
  • ロイヤルアスコット、6月ベストフォト

    競馬発祥の地イギリスでも格式が一段高い「ロイヤルアスコットレース」。2012年は、「ロイヤル・エンクロージャー」(王室関係者と招待客用の特別観覧席)などのドレスコードが厳格化された。伝統への回帰が目的で、背後の巨大なポスターの女性はコーディネイト例という(6月20日撮影)。例えば、「大腿部の露出」、「幅1インチ(2.5センチ)未満の肩紐」、「ファッシネーター(頭飾り)」は御法度。一般席であるグランドスタンドのドレスコードは少し緩いが、シルバーリングでは「正式なドレスコードは適用しないが、胸部の露出は禁止」となっている。 Photograph by Stefan Wermuth, Reuters 競馬発祥の地イギリスでも格式が一段高い「ロイヤルアスコットレース」。2012年は、「ロイヤル・エンクロージャー」(王室関係者と招待客用の特別観覧席)などのドレスコードが厳格化された。伝統への回帰が目

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  • サリー工場の少年、6月ベストフォト

    ネパールの首都カトマンズにあるサリー(民族衣装)工場で、インド系移民の少年が刺しゅうを施している。6月12日の「児童労働反対世界デー(World Day Against Child Labour)」に撮影された。この記念日は、2002年に国際労働機関(ILO)の主導で開始。子どもたちから「教育の機会、心身の健康、遊ぶ時間、基的な自由を奪い、権利を侵害する」雇用慣行に、世界の耳目を集めることを目的としている。 Photograph by Niranjan Shrestha, AP ネパールの首都カトマンズにあるサリー(民族衣装)工場で、インド系移民の少年が刺しゅうを施している。6月12日の「児童労働反対世界デー(World Day Against Child Labour)」に撮影された。この記念日は、2002年に国際労働機関(ILO)の主導で開始。子どもたちから「教育の機会、心身の健康、

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  • ナイアガラの綱渡り、6月ベストフォト

    ナイアガラの滝に張られた長さ約550メートルのケーブルを渡るニック・ワレンダ(Nik Wallenda)氏(6月15日撮影)。曾祖父のカール・ワレンダ(Karl Wallenda)が創立した曲芸師集団「フライング・ワレンダ」の7世代目で、セーフティーネットなしの綱渡りを継承している。33歳のワレンダ氏は、アメリカとカナダにまたがるナイアガラを25分で世界初横断。普段は命綱を使わないが、今回はスポンサーの求めで装着し、パスポートも持参していた。予想以上の風と霧に見舞われたが、AFP通信に「どの瞬間も当に楽しめた」と語っている。 Photograph by Frank Gunn, Canadian Press/AP ナイアガラの滝に張られた長さ約550メートルのケーブルを渡るニック・ワレンダ(Nik Wallenda)氏(6月15日撮影)。曾祖父のカール・ワレンダ(Karl Wallenda

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  • 決死の手術、6月ベストフォト

    中国浙江省の省都、杭州市の病院で、出稼ぎ労働者に突き刺さった細い鉄筋を切断する救助隊員(6月12日撮影)。被害に遭ったジェン(Zheng)さんはこの日、福建省寧徳市の建設現場で作業していた。機械の誤動作により鉄筋がほぼ真横から刺さって貫通し、胸部上側と背中から突き出た状態になった。約5時間に及ぶ手術を受け、集中治療室で回復中という。 Photograph by Chen Zhongqiu 中国浙江省の省都、杭州市の病院で、出稼ぎ労働者に突き刺さった細い鉄筋を切断する救助隊員(6月12日撮影)。 被害に遭ったジェン(Zheng)さんはこの日、福建省寧徳市の建設現場で作業していた。機械の誤動作により鉄筋がほぼ真横から刺さって貫通し、胸部上側と背中から突き出た状態になった。約5時間に及ぶ手術を受け、集中治療室で回復中という。 ◆ベストフォト選考理由 「火花が散り、鉄筋の切断音が響き渡る。歯を

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  • 手の上の水、6月ベストフォト

    吊り下がった水風船が破裂した瞬間をとらえた一枚。6月21日、米ナショナル ジオグラフィックのオンライン・フォトコミュニティ「Your Shot」内の「Daily Dozen」コーナーに掲載された。水が風船の形を保っているのは、ほんの一瞬のみ。サージ・レイモンド(Serge Raymond)氏は、その千分の何秒かの世界を見事に切り取った。撮影したのは、カナダ、オンタリオ州南西部のウォータールーにある地下室。3日間の試行錯誤を経て、レイモンド氏は“勝利の方程式”にたどり着いた。黒地の背景、速いシャッタースピード、6つの照明、そして風船を持つ手の親指に付けた針である。 Photograph by Serge Raymond, Your Shot 吊り下がった水風船が破裂した瞬間をとらえた一枚。6月21日、米ナショナル ジオグラフィックのオンライン・フォトコミュニティ「Your Shot」内の「D

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  • 晩餐会の芝生、6月ベストフォト

    イギリス、ヨーク大聖堂の床に敷きつめられた天然芝(6月6日撮影)。エリザベス女王在位60年を記念する「ダイヤモンド・ジュビリー」の晩餐会用に準備された。6月8日の当日は900人が参加し、大聖堂の修復費用も集められた。芝は織物をリサイクルしたフェルト上であらかじめ栽培。土は使用しておらず、撤去も簡単だという。 Photograph by John Giles, PA/AP イギリス、ヨーク大聖堂の床に敷きつめられた天然芝(6月6日撮影)。エリザベス女王在位60年を記念する「ダイヤモンド・ジュビリー」の晩餐会用に準備された。6月8日の当日は900人が参加し、大聖堂の修復費用も集められた。芝は織物をリサイクルしたフェルト上であらかじめ栽培。土は使用しておらず、撤去も簡単だという。◆ベストフォト選考理由 「まるでおとぎの国の世界だね。CGかも、なんて無粋なことを言うのは止めにしよう」、クリス・コム

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  • ネパールのクマリ、6月ベストフォト

    ネパールの古都パタンで化粧を施される10歳のクマリ(生きた女神)、サミタ・バジュラチャルヤ(Samita Bajracharya)さん。クマリを乗せた赤い山車を引いて地域の豊穣を願う祭り、「ラト・マチャンドラナート(Rato Machchhindranath)」の一幕だ(6月24日撮影)。クマリの伝統は17世紀にさかのぼる。「法螺貝のような首」、「牛のような目」など、いくつもの厳しい身体的条件を満たし、一連の試験に合格する必要があるという。初潮を迎えると在位は終了し、神性も失われる。 Photograph by Narendra Shrestha, European Pressphoto Agency ネパールの古都パタンで化粧を施される10歳のクマリ(生きた女神)、サミタ・バジュラチャルヤ(Samita Bajracharya)さん。クマリを乗せた赤い山車を引いて地域の豊穣を願う祭り、「

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  • 南米の大西洋岸森林、存続危機の観光地

    ブラジル南東部の都市ベロ・オリゾンテには、多様な生物が暮らす「大西洋岸森林」が隣接している(2004年撮影)。ブラジル北東部からパラグアイ、アルゼンチン、ウルグアイに達する森林地帯で、かつては135万平方キロに広がっていた。しかし、伐採や農地開発で破壊され、現在の面積は当時の7%以下まで縮小している。残った森林の大部分も道路などで分断されており、数ヘクタール以下の規模で孤立しているエリアもあるという。 Photograph by Mark Moffett, Minden Pictures/Corbis ブラジル南東部の都市ベロ・オリゾンテには、多様な生物が暮らす「大西洋岸森林」が隣接している(2004年撮影)。ブラジル北東部からパラグアイ、アルゼンチン、ウルグアイに達する森林地帯で、かつては135万平方キロに広がっていた。 しかし、伐採や農地開発で破壊され、現在の面積は当時の7%以下まで縮

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  • “氷河”国立公園、存続危機の観光地

    美しい氷河で有名なアメリカ、モンタナ州のグレーシャー国立公園。しかし国立公園局(NPS)によると、気候変動の影響で2020年までにすべての氷河が消失する可能性があるという。アメリカ地質調査所(USGS)の「山岳生態系における気候変動(Climate Change in Mountain Ecosystems)」プログラムのデータでは、公園設立当時の1910年には約150箇所。1世紀後の2010年、10ヘクタール以上の氷河は25までに減っている。 Photograph by Sumio Harada, Minden Pictures/Corbis 美しい氷河で有名なアメリカ、モンタナ州のグレーシャー国立公園。しかし国立公園局(NPS)によると、気候変動の影響で2020年までにすべての氷河が消失する可能性があるという。 アメリカ地質調査所(USGS)の「山岳生態系における気候変動(Climat

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  • ブータン、存続危機の観光地

    鎖国政策を長く続けていた仏教国ブータンは、外国からの観光客を受け入れ始めている。写真は、ブータンの玄関口、唯一の国際空港がある都市パロ。ワールド・モニュメント財団(WMF)のエリカ・アブラミ(Erica Avrami)氏は、「観光産業と歴史や伝統との調和が重要な課題となる」と話す。例えば、奥地にあるパジョディン(Phajoding)寺院の僧侶も、訪れる旅行者に背を向ける訳にはいかない。「数が増えると、宗教的な生活にも影響が出てくるだろう。外国人に門戸を開き、国全体が変化のさなかにあるブータンは、今こそ注目すべき観光地だ」とアブラミ氏は語る。 Photograph by Singye Wangchuk, Reuters 鎖国政策を長く続けていた仏教国ブータンは、外国からの観光客を受け入れ始めている。写真は、ブータンの玄関口、唯一の国際空港がある都市パロ。ワールド・モニュメント財団(WMF)の

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  • 死海、存続危機の観光地

    ヨルダンとイスラエル、ヨルダン川西岸地区に囲まれた死海。世界各地で存続の危機にさらされている魅力的な観光地の1つである。この巨大な塩湖の水位は、ヨルダン川上流部の取水などが原因で過去40年間に25メートル以上低くなったという。死海の海抜は地上最低のマイナス約400メートルだが、水量が減ればさらに低くなる可能性がある。1950年代、ヨルダンとイスラエルを含む中東諸国は飲み水を確保するため、死海へ注ぐヨルダン川からの取水を実施。死海の水位が著しく低下し、そのペースは毎年1メートル近くにもなる。 Photograph by Paolo Pellegrin, National Geographic ヨルダンとイスラエル、ヨルダン川西岸地区に囲まれた死海。世界各地で存続の危機にさらされている魅力的な観光地の1つである。この巨大な塩湖の水位は、ヨルダン川上流部の取水などが原因で過去40年間に25メート

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  • 京都の町屋、存続危機の観光地

    京都、東寺の前を流れる自動車のライト。ワールド・モニュメント財団(WMF)の研究教育担当ディレクター、エリカ・アブラミ(Erica Avrami)氏によれば、古都京都の近代化に伴い、伝統的な町屋の多くが取り壊されているという。「成長し、繁栄する都市環境では町屋の減少も理解できる。しかし同時に、歴史を伝える上で非常に重要な意味があり、すべて失われてはならない」とアブラミ氏は話す。町屋の歴史は江戸時代(1603~1867年)にさかのぼり、京都の町人たちの住居兼仕事場として使われていた。 Photograph by Justin Guariglia, National Geographic 京都、東寺の前を流れる自動車のライト。ワールド・モニュメント財団(WMF)の研究教育担当ディレクター、エリカ・アブラミ(Erica Avrami)氏によれば、古都京都の近代化に伴い、伝統的な町屋の多くが取り壊

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  • ソロモン諸島、存続危機の観光地

    南太平洋のソロモン諸島、テテパレ島周辺を泳ぐツマグロの群れ。南半球の熱帯地方で最大の無人島である。コンサベーション・インターナショナル(CI)の両生類専門家ロビン・ムーア氏によると、ソロモン諸島に属する多くの島では伐採が横行し、環境破壊が進んでいる。幸いなことにテテパレは、所有者が自然保護に積極的で、熱帯雨林への被害を免れているという。「地上の楽園だ。ジュゴンやツマグロの群れと一緒に泳ぐこともできる」とムーア氏は話す。 Photograph by Robin D. Moore 南太平洋のソロモン諸島、テテパレ島周辺を泳ぐツマグロの群れ。南半球の熱帯地方で最大の無人島である。 コンサベーション・インターナショナル(CI)の両生類専門家ロビン・ムーア氏によると、ソロモン諸島に属する多くの島では伐採が横行し、環境破壊が進んでいる。幸いなことにテテパレは、所有者が自然保護に積極的で、熱帯雨林への被

    ソロモン諸島、存続危機の観光地
  • 花形イヤリング、イスラエルの埋蔵財宝

    イスラエル中部の都市キリヤットガット近郊で発見された花のイヤリング。イスラエル考古学庁の考古学者エミル・アラジェム(Emil Aladjem)氏は、「純金製で所有者は非常に裕福だったと考えられる。2000年前、ローマ帝国時代のこの地域では、石に金箔を施した装飾品が一般的だった」と説明する。 Photograph courtesy Clara Amit, Israel Antiquities Authority イスラエル中部の都市キリヤットガット近郊で発見された花のイヤリング。イスラエル考古学庁の考古学者エミル・アラジェム(Emil Aladjem)氏は、「純金製で所有者は非常に裕福だったと考えられる。2000年前、ローマ帝国時代のこの地域では、石に金箔を施した装飾品が一般的だった」と説明する。 ローマ帝国の時代まで遡る家屋遺跡の庭から出土。住人が他の貴重品と一緒に布で包み、略奪を免れるた

    花形イヤリング、イスラエルの埋蔵財宝
  • 封蝋指輪、イスラエルの埋蔵財宝

    イスラエル中部の都市キリヤットガット近郊で発掘された古代ローマ時代の指輪。ローブをまとった女性像が刻まれ、約2000年前に封蝋の刻印に使用されていたとみられる。「ローマ神話の勝利の女神、ビクトリアだろう。非常に象徴的で様式化されている」と、イスラエル考古学庁の考古学者エミル・アラジェム(Emil Aladjem)氏は話している。 Photograph courtesy Clara Amit, Israel Antiquities Authority イスラエル中部の都市キリヤットガット近郊で発掘された古代ローマ時代の金の指輪。ローブをまとった女性像が刻まれ、約2000年前に封蝋の刻印に使用されていたとみられる。「ローマ神話の勝利の女神、ビクトリアだろう。非常に象徴的で様式化されている」と、イスラエル考古学庁の考古学者エミル・アラジェム(Emil Aladjem)氏は話している。 Photo

    封蝋指輪、イスラエルの埋蔵財宝
  • ローマの金貨、イスラエルの埋蔵財宝

    イスラエル考古学庁の考古学者エミル・アラジェム(Emil Aladjem)氏が持っているのは、イスラエル中部の都市キリヤットガット近郊で見つかった古代ローマ時代の金貨(6月5日撮影)。同国では最近、北部のメギド地域からも約3000年前の黄金の財宝が発掘されている。アラジェム氏によると、キリヤットガットで出土した金貨4枚などは、バル・コクバの乱(紀元132~135年)の時代に埋めて隠されたという。 Photograph by Jim Hollander, European Pressphoto Agency イスラエル考古学庁の考古学者エミル・アラジェム(Emil Aladjem)氏が持っているのは、イスラエル中部の都市キリヤットガット近郊で見つかった古代ローマ時代の金貨(6月5日撮影)。同国では最近、北部のメギド地域からも約3000年前の黄金の財宝が発掘されている。アラジェム氏によると、キ

    ローマの金貨、イスラエルの埋蔵財宝
  • モアイ像、ロープで揺らして移動?

    研究者らがモアイを「歩かせた」実験の様子。 数世紀にわたり解明が試みられてきたイースター島のモアイ像の運搬方法に、新たな説が提案された。 重さ数十トンもある巨大なモアイの大多数は、削り出された石切り場から最大18キロの距離を移動している。車輪やクレーンはもちろん、大型動物の力も借りていない。 いくつもの方法が試された結果、丸太を並べたコロやロープ、木のそりの組み合わせを活用したに違いないと考えられていた。しかし、ハワイ大学のテリー・ハント(Terry Hunt)氏とカリフォルニア州立大学ロングビーチ校のカール・リポ(Carl Lipo)氏は、「モアイはロープと人の力だけで左右に揺らし、直立で移動するように設計された」という新説を考え出した。 ハント氏とリポ氏は、考古学者のセルジオ・ラプ(Sergio Rapu)氏の協力を得てアイデアを練り上げた。ラプ氏は南太平洋のイースター島に暮らす先住民

    モアイ像、ロープで揺らして移動?
  • 交尾中のカメの化石、脊椎動物では初

    化石化した交尾中の古代のカメ(学名:Allaeochelys crassesculpta)。オス(左)の方がメスより小さいという特徴も手伝って、交尾中であることが判明した。 Photograph courtesy Stephan Schaal, Senckenberg Society ドイツの研究チームがこのほど、脊椎動物では初の例となる交尾中のつがいのカメの化石を発見したと発表した。化石における史上初の発見の興奮と共に、もう1つの謎についても解明が進みそうだ。4700万年前のカメの化石は、先史時代の湖が世界有数の化石の宝庫になった経緯についても、手がかりを与えてくれている。「つがいの化石だけでも、世界に類を見ない発見だ」と、研究を率いたウォルター・ジョイス(Walter Joyce)氏は語っている。「このような姿で発掘された脊椎動物の化石は他に例がない」。 このカメのつがいの化石が見つか

    交尾中のカメの化石、脊椎動物では初
  • 壊れた甲冑、兵馬俑の最新調査

    兵馬俑1号坑の第3次発掘調査で出土した陶製の甲冑(6月9日撮影)。2000年以上前の彩色が良好な状態で残っている。新たに開発された退色を防ぐ薬剤で塗料を安定させた後、慎重に復元される予定という。 Photograph by Li Yibo, Xinhua/Corbis 兵馬俑1号坑の第3次発掘調査で出土した陶製の甲冑(6月9日撮影)。2000年以上前の彩色が良好な状態で残っている。新たに開発された退色を防ぐ薬剤で塗料を安定させた後、慎重に復元される予定という。 Photograph by Li Yibo, Xinhua/Corbis

    壊れた甲冑、兵馬俑の最新調査
  • カラフルな装束、兵馬俑の最新調査

    米ナショナル ジオグラフィック誌がCGで再現した秦の始皇帝陵の兵馬俑(へいばよう)の1つ。この像は将軍だが、階級の上下に関係なく、すべてに大胆な彩色が施されていたという。「当時としては前代未聞の配色だ。以後も数世紀にわたり、これほどカラフルな像は作られなかった」とアメリカ、スタンフォード大学の中国史の名誉教授アルバート・E・ディエン(Albert E. Dien)氏は話す。 Illustration by Pure Rendering GmbH, National Geographic 米ナショナル ジオグラフィック誌がCGで再現した秦の始皇帝陵の兵馬俑(へいばよう)の1つ。この像は将軍だが、階級の上下に関係なく、すべてに大胆な彩色が施されていたという。「当時としては前代未聞の配色だ。以後も数世紀にわたり、これほどカラフルな像は作られなかった」とアメリカ、スタンフォード大学の中国史の名誉教

    カラフルな装束、兵馬俑の最新調査
  • 埋葬当時を再現、兵馬俑の最新調査

    米ナショナル ジオグラフィック誌がCGで再現した埋葬当時の兵馬俑(へいばよう)1号坑。出土した兵士像の姿勢、残存する塗料、銅製の武器など、さまざまな手掛かりを基に作成された。兵馬俑は、秦の始皇帝が敵対する隣国を次々と征服し中国統一を果たした際の主力軍を模したと言われている。古代中国では、死後も生前と同様の生活が続くと考えられていた。アメリカ、スタンフォード大学のアルバート・E・ディエン(Albert E. Dien)氏によると、始皇帝は死後の世界でも皇帝に君臨し続けることができるよう、兵馬俑を陵墓周辺に副葬させたという。 Illustration by Pure Rendering GmbH, National Geographic 米ナショナル ジオグラフィック誌がCGで再現した埋葬当時の兵馬俑(へいばよう)1号坑。出土した兵士像の姿勢、残存する塗料、銅製の武器など、さまざまな手掛かりを

    埋葬当時を再現、兵馬俑の最新調査
  • 彩色の残る頭部、兵馬俑の最新調査

    中国、陝西省西安郊外にある秦の始皇帝陵から出土した兵馬俑(へいばよう)。驚くべきことに、最新調査で発掘された多数の像には、紀元前3世紀の塗料が色あせずに残っていたという。肌はこのようなピンク色が多く、黄褐色の場合もあった。素焼きの甲冑(左上)は漆塗りを施した革を模している。赤色はヒモ、表面の突起は革のプレートをつなぐ革ヒモの再現である。以前に発掘された兵馬俑は、顔料が酸化して色がほとんど失われてしまった。しかし、中国ドイツの専門家チームが退色を防ぐ薬剤の開発に成功し、今回の像は鮮やかな色彩を保てるという。 Photograph by Zhang Yuan, Color China Photo/AP 中国、陝西省西安郊外にある秦の始皇帝陵から出土した兵馬俑(へいばよう)。驚くべきことに、最新調査で発掘された多数の像には、紀元前3世紀の塗料が色あせずに残っていたという。肌はこのようなピンク色

    彩色の残る頭部、兵馬俑の最新調査
  • 革製の盾、兵馬俑の最新調査

    中国陝西省の兵馬俑(へいばよう)遺跡から初めて出土した革製の盾。高さ70センチ、幅50センチの表面には、鮮やかな模様の痕跡が確認できる。すぐ脇には戦車も埋まっていた。漆を塗って強度を高め、槍、剣、短剣、戦斧、矢など、あらゆる武器から身を守るために使用されたという。 Photograph by Li Yibo, Xinhua/Corbis 中国陝西省の兵馬俑(へいばよう)遺跡から初めて出土した革製の盾。高さ70センチ、幅50センチの表面には、鮮やかな模様の痕跡が確認できる。すぐ脇には戦車も埋まっていた。 漆を塗って強度を高め、槍、剣、短剣、戦斧、矢など、あらゆる武器から身を守るために使用されたという。 Photograph by Li Yibo, Xinhua/Corbis

    革製の盾、兵馬俑の最新調査
  • 兵馬俑3次調査、鮮やかな彩色を再現

    中国、陝西省西安郊外で出土した兵馬俑(へいばよう)。考古学者チームが細心の注意を払って付着した土を取り除いている(2012年6月撮影)。 Photograph by Ruan Banhui, Imaginechina/AP 兵馬俑坑は、紀元前221年に中国を統一した秦の始皇帝の陵墓周辺にある。兵士や馬などをかたどった陶製像(俑)が大量に出土しており、陵墓を守るために埋葬された兵士軍団と考えられている。兵馬俑坑は1974年の発見以来、発掘が断続的に続けられてきた。2009年に始まった第3次調査では、等身大の兵士像百体あまりが新たに発掘されたほか、陶製の馬、戦車、武器、太鼓などが確認された。また、実際の兵士が使っていたと見られる革製の盾も初めて出土した。 兵馬俑は、秦の始皇帝が敵対する隣国を次々と征服し中国統一を果たした際の主力軍を模したと言われている。古代中国では、死後も生前と同様の生活が続

    兵馬俑3次調査、鮮やかな彩色を再現
  • 権力の予期理論 : 了解を媒介にした作動形式

    タイトル 権力の予期理論 : 了解を媒介にした作動形式 著者名 宮台, 真司, 1959- 著者別名 ミヤダイ, シンジ, 1959- 学位授与大学 東京大学 取得学位 社会学博士 学位授与番号 甲第8382号 学位授与年月日 1990-03-06

  • 洗礼者ヨハネの遺骨発見?

    洗礼者ヨハネのものとされる遺骨を納めた箱。ブルガリアのソフィアにある大聖堂で公開された。枠内は15世紀に描かれた洗礼者ヨハネ像。 Photograph by Valentina Petrova, AP; Photograph (inset) from Photoservice Electa/Getty Images 洗礼者ヨハネは、「キリストの先駆者」とされ、イエスに洗礼を施した人物だ。そのヨハネの遺骨であると伝えられる骨が、紀元1世紀のものであることが確認された。したがって、これをヨハネの遺骨と考えてもおかしくないという。 この遺骨は2010年にブルガリアの教会の遺跡から発掘された。右手の指関節、歯、頭蓋骨の一部、肋骨、前腕の尺骨の6個の人間の骨があった。 指関節の骨に含まれていたコラーゲンのDNA鑑定と放射性炭素測定から、紀元1世紀に中東で生きていた人の骨である可能性が高いことがわかっ

    洗礼者ヨハネの遺骨発見?
  • 陶器で隠蔽、聖書時代の財宝

    イスラエルのメギド近くで発見された約3000年前の宝飾品と陶器の一部。テルアビブ大学の考古学者イスラエル・フィンケルシュタイン(Israel Finkelstein)氏によると、宝飾品を隠した陶器は人目に付きやすい場所に置かれていたという。 Photograph by Dan Balilty, AP Dan Balilty イスラエルのメギド近くで発見された約3000年前の宝飾品と陶器の一部。テルアビブ大学の考古学者イスラエル・フィンケルシュタイン(Israel Finkelstein)氏によると、宝飾品を隠した陶器は人目に付きやすい場所に置かれていたという。 フィンケルシュタイン氏は次のように話す。「宝飾品を入れた陶製の容器が部屋の片隅に置かれ、その上にボウル状の陶器が2つかぶせてあっただけだ。おそらく、床下に埋める時間すらないほど切迫した状況だったと推測できる。例えば、建物には火がかけ

    陶器で隠蔽、聖書時代の財宝
  • 黄金のイヤリング、聖書時代の財宝

    イスラエル北部のメギド地域で発掘された黄金のイヤリング。アイベックス(山ヤギの一種)の装飾が施されており、テルアビブ大学の考古学者イスラエル・フィンケルシュタイン(Israel Finkelstein)氏は、「実に素晴らしい逸品だ」とコメントしている。 Photograph from Tel Aviv University via European Pressphoto Agency イスラエル北部のメギド地域で発掘された黄金のイヤリング。アイベックス(山ヤギの一種)の装飾が施されており、テルアビブ大学の考古学者イスラエル・フィンケルシュタイン(Israel Finkelstein)氏は、「実に素晴らしい逸品だ」とコメントしている。「メギド地域の典型的なイヤリングはシンプルな三日月形だが、これはさらに大きく、作りも精巧だ。私が知る限りでは、レバント地方で他に類例がない」。レバントは地中海東

    黄金のイヤリング、聖書時代の財宝
  • 貴重な指輪、聖書時代の財宝

    イスラエルで陶器に入れられた3000年前の宝飾品が発見された。金や銀が使用されており、何らかの危機的状況に追い込まれた所有者が隠したとみられている。陶器は2010年に古代の家屋跡で発掘され、内容物の分子解析が2011年後半に始まった。そして2012年5月末、指輪(手前)やイヤリング(奥)などが公表された。 Photograph by Dan Balilty, AP イスラエルで陶器に入れられた3000年前の宝飾品が発見された。金や銀が使用されており、何らかの危機的状況に追い込まれた所有者が隠したとみられている。 陶器は2010年に古代の家屋跡で発掘され、内容物の分子解析が2011年後半に始まった。そして2012年5月末、指輪(手前)やイヤリング(奥)などが公表された。 発掘調査を主導したテルアビブ大学の考古学者イスラエル・フィンケルシュタイン(Israel Finkelstein)氏による

    貴重な指輪、聖書時代の財宝
  • メギドの丘、聖書時代の財宝

    イスラエル北部に位置するメギドの丘(テル・メギド)。付近で発見された財宝は、20にもおよぶ遺跡層の年代測定の結果、紀元前11世紀頃に隠されたと考えられている。当時、メギドはカナン人の有力な古代都市国家だった。テルアビブ大学の考古学者イスラエル・フィンケルシュタイン(Israel Finkelstein)氏によると、「古代エジプトの支配が終わりを告げた時代であり、エジプト人の撤退時に残された可能性がある」という。 Photograph courtesy Megiddo Expedition イスラエル北部に位置するメギドの丘(テル・メギド)。付近で発見された財宝は、20にもおよぶ遺跡層の年代測定の結果、紀元前11世紀頃に隠されたと考えられている。当時、メギドはカナン人の有力な古代都市国家だった。テルアビブ大学の考古学者イスラエル・フィンケルシュタイン(Israel Finkelstein)氏

    メギドの丘、聖書時代の財宝
  • 母の日の陰で:「父の日」の起源と今

    マニラの舗道で家族とくつろぐフィリピン人の男性(資料写真)。 Photograph by Aaron Favila, AP 「父の日」は、現在ではグーグルのロゴという、おそらくインターネット最高の栄誉をもって祝われているが、歴史的には常に「母の日」の陰に隠れた存在だった。しかし、父親たちはおおむねそれで満足しているようだ。 それでも、家庭内の伝統的役割が徐々に変化するのに伴い、「父の日」への関心も高まりつつある。少なくとも今年見込まれたプレゼントの消費額からは、そのような傾向がうかがえる。「父の日」は、今年は6月17日に世界数十カ国で祝われた。 今から102年前に始まった「父の日」は、ある意味では「母の日」のおかげで誕生した。1909年、ワシントン州スポケーンに住むソノラ・スマート・ドッド(Sonora Smart-Dodd)氏は、教会で「母の日」の説教を聞きながら、自分を含め6人の子を男

    母の日の陰で:「父の日」の起源と今
  • スペインの洞窟壁画、世界最古か?

    スペイン北部のエル・カスティージョ洞窟に描かれた手形。同じ洞窟内の赤い丸模様は、世界最古の洞窟壁画の可能性があるという。 Photograph courtesy Pedro Saura via Science/AAAS スペイン北部の洞窟内に描かれた先史時代の赤い丸模様や手形を新たな手法で年代測定した結果、世界最古の洞窟壁画と判明した。「ネアンデルタール人=洞窟壁画の先駆者」論を裏付ける最有力の証拠となるかもしれない。 事実なら、われわれ現生人類との文化的隔たりが狭まることになる。ネアンデルタール人と現生人類は別の種とする考えが一般的だが、人種の違いにすぎないと主張する議論が高まる可能性もある。 チームが調査したのは、スペイン北部のビスケー湾沿いにある11カ所の洞窟壁画。その1つ、エル・カスティージョ洞窟に描かれたシンプルな赤い丸模様が世界最古の壁画と見られている。 イギリス、ブリストル大

    スペインの洞窟壁画、世界最古か?
  • ストーンマン橋、米の危機史跡2012

    そびえ立つ花崗岩「ハーフドーム」はアメリカ、カリフォルニア州にあるヨセミテ国立公園のシンボルだ。手前の川に架かる石橋はストーンマン橋(Stoneman Bridge)。1928年と1932年にマーセド川に架けられた3橋の1つである。アメリカ国立公園局による包括的な管理計画の一環として、これらの橋の撤去が検討されている。 Photograph courtesy Jim M. Goldstein そびえ立つ花崗岩「ハーフドーム」はアメリカ、カリフォルニア州にあるヨセミテ国立公園のシンボルだ。手前の川に架かる石橋はストーンマン橋(Stoneman Bridge)。 1928年と1932年にマーセド川に架けられた3橋の1つである。アメリカ国立公園局による包括的な管理計画の一環として、これらの橋の撤去が検討されている。 アメリカ・ナショナル・トラスト(National Trust for Histo

    ストーンマン橋、米の危機史跡2012
  • 大統領の牧場、米の危機史跡2012

    アメリカ、ノースダコタ州の荒野に広がるエルクホーン牧場。開いたのは若き日のセオドア・ルーズベルト(第26代大統領)である。しかし一帯に道路の敷設計画が浮上し、交通量や騒音、ゴミ、ほこりなどの増加が危惧されている。アメリカ・ナショナル・トラスト(National Trust for Historic Preservation)によって、2012年度版「アメリカで最も危機にさらされている11の史跡(America's 11 Most Endangered Historic Places)」に選定された。 Photograph courtesy Dickinson State University アメリカ、ノースダコタ州の荒野に広がるエルクホーン牧場。開いたのは若き日のセオドア・ルーズベルト(第26代大統領)である。しかし一帯に道路の敷設計画が浮上し、交通量や騒音、ゴミ、ほこりなどの増加が危惧

    大統領の牧場、米の危機史跡2012
  • エリス島病院、米の危機史跡2012

    アメリカ、ニュージャージー州にあるエリス島の病院施設。同島には1892年から1954年まで移民局が設けられ、自由の天地を目指し海を渡ってきた世界中の人々の受け入れ口となった。下級船室に押し込まれ長旅で病気になった移民は、この病院で治療を受けたとされる。しかし、閉局以降はその大部分が使用されず、閉鎖されている。アメリカ・ナショナル・トラスト(National Trust for Historic Preservation)の2012年度版「アメリカで最も危機にさらされている11の史跡(America's 11 Most Endangered Historic Places)」に選ばれた。 Photograph courtesy Clara Daly アメリカ、ニュージャージー州にあるエリス島の病院施設。同島には1892年から1954年まで移民局が設けられ、自由の天地を目指し海を渡ってきた世界

    エリス島病院、米の危機史跡2012
  • マルコムXの家、米の危機史跡2012

    アメリカ、ボストンに建つマルコムX-エラ・リトル・コリンズ・ハウス(Malcolm X - Ella Little-Collins House)。かの有名な黒人公民権運動家が育った家だが、無人の状態が長く続き、窓には板が打ちつけられている。手前で見つめるのはマルコムXの甥、ロドネル・コリンズ(Rodnell Collins)氏と、歴史的建造物の保護に取り組むNPOヒストリック・ボストン・インコーポレイテッド(Historic Boston Incorporated)のキャシー・コタリディス(Kathy Kottaridis)氏。 Photograph by Barry Chin, Boston Globe/Getty Images アメリカ、ボストンに建つマルコムX-エラ・リトル・コリンズ・ハウス(Malcolm X - Ella Little-Collins House)。かの有名な黒人

    マルコムXの家、米の危機史跡2012
  • ゾアル共同体、米の危機史跡2012

    アメリカ、オハイオ州東部の史跡「ゾアル(Zoar)共同体」にあるレンガ造りの家。連邦政府の再開発計画により、まもなく取り壊される可能性がある。ゾアル村は、信仰の自由を求めてドイツを脱出したプロテスタント分離派の一団が1817年に開拓。現在でもおよそ200人が暮らしている。 Photograph by Andre Jenny アメリカ、オハイオ州東部の史跡「ゾアル(Zoar)共同体」にあるレンガ造りの家。連邦政府の再開発計画により、まもなく取り壊される可能性がある。 ゾアル村は、信仰の自由を求めてドイツを脱出したプロテスタント分離派の一団が1817年に開拓。現在でもおよそ200人が暮らしている。 1930年代に建設された堤防が村を浸水から守ってきたが、2005年に記録的な洪水が発生、水防施設としての信頼性が揺らいだ。そこで、土木工事などのエンジニアリングを行う政府機関、アメリカ陸軍工兵隊が3

    ゾアル共同体、米の危機史跡2012
  • 米英戦争の沈没船、発掘開始へ

    米英戦争の沈没船から引き揚げられた品々。陶製のボウルや皿、酒のカップ、粘土製のパイプ、歯科用具など、さまざまな物が当時の姿のまま残されている。 Photograph courtesy Naval History and Heritage Command, U.S. Navy アメリカの首都ワシントンD.C.の近くを流れるパタクセント川には、1812年に始まった米英戦争の船が沈んでいる。調査が進めば、戦争に関するさまざまな謎の解明につながると期待されている。 米英戦争は、1803年以来フランスと戦っていたイギリスが海上封鎖を続け、フランスとの交易を制限したことで始まった。この規制にアメリカは反発。さらに、公海上でイギリス船がアメリカ船を襲い、イギリス生まれの船員を連れ去って海軍に強制的に編入するようになり、両国の関係は一層悪化していった。そして1812年6月、アメリカ議会はイギリスに対して宣

    米英戦争の沈没船、発掘開始へ
  • 胎位の人骨、パチャカマック遺跡

    胎児のように体を折り曲げられた人骨。ペルーの古代遺跡パチャカマックの巨大な墓地で2012年5月に発掘された約80体の一つだ。すでに朽ち果てているが、1000年前の埋葬当時はミイラだったと考えられる。木製の作り物の頭部がいくつかと、周囲には複数の幼児の人骨があった。 Photograph courtesy Universite libre de Bruxelles 胎児のように体を折り曲げられた人骨。ペルーの古代遺跡パチャカマックの巨大な墓地で2012年5月に発掘された約80体の一つだ。すでに朽ち果てているが、1000年前の埋葬当時はミイラだったと考えられる。木製の作り物の頭部がいくつかと、周囲には複数の幼児の人骨があった。 ベルギー、ブリュッセル自由大学の考古学者ペーター・エウクハウト(Peter Eeckhout)氏が率いるチームによれば、この墓地はかつて葦葺(よしぶ)き屋根で覆われてい

    胎位の人骨、パチャカマック遺跡
  • ミイラ処理の痕跡、パチャカマック遺跡

    ペルーの首都リマから南東約40キロのパチャカマック遺跡で新たな墓地が発見され、人骨や陶器の副葬品が出土した。長方形の墓穴は当時、木の幹で支えた葦葺(よしぶ)き屋根で全体が覆われていたという。 Photograph courtesy Universite libre de Bruxelles ペルーの首都リマから南東約40キロのパチャカマック遺跡で新たな墓地が発見され、人骨や陶器の副葬品が出土した。長方形の墓穴は当時、木の幹で支えた葦葺(よしぶ)き屋根で全体が覆われていたという。 過去に荒らされた様子はなく、16世紀のスペイン人征服者やその後の盗掘者も存在に気付かなかったようだ。内部には布地の痕跡があり、死者はミイラ処理が施されていたと見られる。 発掘チームを指揮したベルギー、ブリュッセル自由大学の考古学者ペーター・エウクハウト(Peter Eeckhout)氏は、「一部の遺体は布で巻かれて

    ミイラ処理の痕跡、パチャカマック遺跡
  • サラエボのサフラン、5月ベストフォト

    ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボ郊外で春の訪れを告げるサフラン。写真家のデニス・ルービック(Denis Ruvic)氏が、5月7日に米ナショナル ジオグラフィックのオンライン・フォトコミュニティ「Your Shot」へ投稿した。 Photograph by Denis Ruvic, Your Shot ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボ郊外で春の訪れを告げるサフラン。写真家のデニス・ルービック(Denis Ruvic)氏が、5月7日に米ナショナル ジオグラフィックのオンライン・フォトコミュニティ「Your Shot」へ投稿した。◆ベストフォト選考理由 「フラッシュの光を反射した雪粒が構成のポイントだ。フレーム全体に視覚効果を詰め込むと魅力的な風景写真に仕上がることがある」、クリス・コムズ氏(ニュースフォト編集者)。 Photograph by Denis Ruvic, Your

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  • アオミドロの接合、5月ベストフォト

    有性生殖を行うアオミドロの顕微鏡写真。「接合管」が伸びて細胞同士が接続し、遺伝情報を交換している。イギリス在住のグレッグ・パーカー氏が米ナショナル ジオグラフィックのフォトコミュニティ・サイト「My Shot」に投稿。 Photograph by Greg Parker, My Shot 有性生殖を行うアオミドロの顕微鏡写真。「接合管」が伸びて細胞同士が接続し、遺伝情報を交換している。イギリス在住のグレッグ・パーカー氏が米ナショナル ジオグラフィックのフォトコミュニティ・サイト「My Shot」に投稿。 淡水の小川や池で繁殖するアオミドロは、細胞内に螺旋状の葉緑体がぎっしりと詰まっている。葉緑体はクロロフィル(葉緑素)を多量に含み、光合成によるエネルギー生成を司る。アオミドロの属名「Spirogyra」は、ギリシャ語の接頭語「spir」(螺旋)とラテン語の「gyrus」(輪)から合成された

    アオミドロの接合、5月ベストフォト
  • マニラのスラム火災、5月ベストフォト

    フィリピン首都マニラのスラム街で火災が発生し、ボートに家財道具を積んで避難する住民(5月11日撮影)。地元メディアによれば、少なくとも1000棟が全焼、約5000世帯が家を失った。出火原因は不明という。 Photograph by Cheryl Ravelo, Reuters フィリピン首都マニラのスラム街で火災が発生し、ボートに家財道具を積んで避難する住民(5月11日撮影)。地元メディアによれば、少なくとも1000棟が全焼、約5000世帯が家を失った。出火原因は不明という。◆ベストフォト選考理由 「災害の写真を見るのはつらいが、他国の生活を理解し、困難に見舞われた人々に関心を寄せる機会ともなる」、モニカ・コーコラン氏(フォト編集主任)。 Photograph by Cheryl Ravelo, Reuters

    マニラのスラム火災、5月ベストフォト
  • スラム街の遊園地、5月ベストフォト

    パキスタン、イスラマバード郊外のスラム街に設営された即席の遊園地(5月11日撮影)。中央の少女が住んでいた村では武装勢力と治安部隊の衝突が発生、家族は避難を余儀なくされたという。 Photograph by Muhammed Muheisen, AP パキスタン、イスラマバード郊外のスラム街に設営された即席の遊園地(5月11日撮影)。中央の少女が住んでいた村では武装勢力と治安部隊の衝突が発生、家族は避難を余儀なくされたという。◆ベストフォト選考理由 「写真には緊張の色が見え隠れしている。少女は環境の変化に戸惑い、気持ちの整理ができていないようだ」、モニカ・コーコラン氏(フォト編集主任)。 Photograph by Muhammed Muheisen, AP

    スラム街の遊園地、5月ベストフォト
  • IEDを持つ米兵、5月ベストフォト

    処理予定の即製爆発装置(IED)を持つアメリカ兵。アフガニスタン南部ザーブル州で5月24日に撮影。 Photograph by Tim Wimborne, Reuters 処理予定の即製爆発装置(IED)を持つアメリカ兵。アフガニスタン南部ザーブル州で5月24日に撮影。◆ベストフォト選考理由 「こんな粗末な爆弾で多くの命が奪われているとは。被写体を強調した構図とモノトーンの色調で静かな印象を受ける写真だが、IEDの当の恐ろしさも忘れてはいけない」、モニカ・コーコラン氏(フォト編集主任)。 Photograph by Tim Wimborne, Reuters

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  • 霧のタージ・マハル、5月ベストフォト

    霧に煙るインド北部アーグラのタージ・マハル。門扉を開けて別世界に誘うこの写真は、米ナショナル ジオグラフィックのオンライン・フォトコミュニティ「Your Shot」へ5月10日に投稿された。 Photograph by Prashansa Poddar, Your Shot 霧に煙るインド北部アーグラのタージ・マハル。門扉を開けて別世界に誘うこの写真は、米ナショナル ジオグラフィックのオンライン・フォトコミュニティ「Your Shot」へ5月10日に投稿された。 大理石を丹念に積み上げたタージ・マハルは、17世紀のムガル帝国第5代皇帝シャー・ジャハーンが、14人目の出産後に死去した愛妃ムムターズ・マハルの霊廟として建立した。 ◆ベストフォト選考理由 「この構図はユニークこの上ない。荒野のような不気味な荒々しさを前にすると、おなじみの荘厳な印象も一変する。わずかに開く有刺鉄線の門が暗示的で、

    霧のタージ・マハル、5月ベストフォト
  • 多数の陶器、メキシコ湾の沈没船

    メキシコ湾の沈没船が積んでいた陶器の皿やガラス製品。ボトルには、ジンやビール、黒ビール、ワインなどが入っていたようだ。アメリカ海洋エネルギー管理局(BOEM)のジャック・イリオン(Jack Irion)氏によれば、白い皿は「クリームウェア」ではないかという。乳白色の陶器で、19世紀初頭、人気の高いイギリスの輸出品だった。 Photograph courtesy NOAA Okeanos Explorer Program メキシコ湾の沈没船が積んでいた陶器の皿やガラス製品。ボトルには、ジンやビール、黒ビール、ワインなどが入っていたようだ。アメリカ海洋エネルギー管理局(BOEM)のジャック・イリオン(Jack Irion)氏によれば、白い皿は「クリームウェア」ではないかという。乳白色の陶器で、19世紀初頭、人気の高いイギリスの輸出品だった。 現場からは、クリームウェアの1種である「パールウェア

    多数の陶器、メキシコ湾の沈没船
  • 200年前の航海、メキシコ湾の沈没船

    メキシコ湾で200年前の沈没船が発見された。木造の船体は分解が進んでおり、緑青を吹いた銅製の船底被覆が時代を感じさせる。周辺からは、マスケット銃、ビール瓶、錨(いかり)などの遺物が多数発見されたが、船の正確な年代や出自、航海の目的は明らかになっていない。 Photograph courtesy NOAA Okeanos Explorer Program メキシコ湾で200年前の沈没船が発見された。木造の船体は分解が進んでおり、緑青を吹いた銅製の船底被覆が時代を感じさせる。周辺からは、マスケット銃、ビール瓶、錨(いかり)などの遺物が多数発見されたが、船の正確な年代や出自、航海の目的は明らかになっていない。 船首部分の右(画像中央)には、鉛製の2つのローマ数字が見える。ねじれが大きく判読できないが、喫水標として排水量の計測や過積載の予防などに利用されたと考えられる。 全長約24メートルの沈没船

    200年前の航海、メキシコ湾の沈没船
  • マスケット銃、メキシコ湾の沈没船

    メキシコ湾の水深1200メートル地点で、19世紀の沈没船が発見された。鮮やかな色のイソギンチャクが踏み台にしているのは、積み荷のマスケット銃(歩兵銃の一種)。当時は木箱に何丁も詰められていたようだ。いくつかの大砲も見つかっており、私掠船(政府から敵国の船を攻撃する許可を得た個人船)、または重武装の商船だった可能性がある。 Photograph courtesy NOAA Okeanos Explorer Program メキシコ湾の水深1200メートル地点で、19世紀の沈没船が発見された。鮮やかな色のイソギンチャクが踏み台にしているのは、積み荷のマスケット銃(歩兵銃の一種)。当時は木箱に何丁も詰められていたようだ。 いくつかの大砲も見つかっており、私掠船(政府から敵国の船を攻撃する許可を得た個人船)、または重武装の商船だった可能性がある。 米国海洋大気庁(NOAA)の海事考古学者フランク・

    マスケット銃、メキシコ湾の沈没船
  • 4度の延長戦、2012年ジオ・ビー

    2012年の「ナショナル ジオグラフィック・ビー」決勝ラウンドの進行役、アレックス・トレベック氏(中央)。左は優勝したラフル・ナグベカール君、右はバンシュ・ジャイン君。 Photograph by Rebecca Hale, National Geographic 米国時間5月24日、子供向け全米地理コンテスト「ナショナル ジオグラフィック・ビー」(通称「ジオ・ビー」)の決勝ラウンドが開催され、ドイツのバイエルン州に関する問題に正解したテキサス州代表の14歳の少年が優勝の栄冠を手にした。 優勝したラフル・ナグベカール君は、3歳のときから地球儀を手にすると離さない子供だったという。そして14歳になった2012年5月の第4週、その地理に対する並々ならぬ関心が報われるときが来た。スポットライトを浴び、テレビ中継というプレッシャーがかかる中、ナグベカール君は「1663年から1806年まで神聖ローマ

    4度の延長戦、2012年ジオ・ビー
  • ベンツの三輪自動車、車と燃料の歴史

    内燃エンジンを搭載した世界初の自動車「パテント・モトールヴァーゲン」。ドイツのカール・ベンツが1886年に発明した三輪式で、ガソリンエンジン用に設計されている。その単気筒エンジンは、現代の車と同様、ニコラウス・オットー考案の4ストローク・サイクル式(吸入、圧縮、燃焼、排気)を活用。電気式点火装置や水冷装置、バランスウェイト付きのクランクシャフトも装備していた。 Photograph courtesy Library of Congress 内燃エンジンを搭載した世界初の自動車「パテント・モトールヴァーゲン」。ドイツのカール・ベンツが1886年に発明した三輪式で、ガソリンエンジン用に設計されている。 その単気筒エンジンは、現代の車と同様、ニコラウス・オットー考案の4ストローク・サイクル式(吸入、圧縮、燃焼、排気)を活用。電気式点火装置や水冷装置、バランスウェイト付きのクランクシャフトも装備し

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  • T型フォード、車と燃料の歴史

    1908年、ヘンリー・フォードはT型フォードを市場に投入する。ピーターソン自動車博物館のレスリー・ケンドール(Leslie Kendall)氏は、「同じ価格帯で販売されていた車とは歴然とした差があった。コンパクトさを誇っていた他の車がすべて廃れてしまったほどだ」と話す。車重は550キロ弱、燃費は推定で5.5~9km/L。「とても頑丈で、機構が非常にシンプルなため、自分で簡単に修理できた。時代にマッチした車だった」。 Photograph from Bettmann/CorbisCorbis 1908年、ヘンリー・フォードはT型フォードを市場に投入する。ピーターソン自動車博物館のレスリー・ケンドール(Leslie Kendall)氏は、「同じ価格帯で販売されていた車とは歴然とした差があった。コンパクトさを誇っていた他の車がすべて廃れてしまったほどだ」と話す。 車重は550キロ弱、燃費は推定で

    T型フォード、車と燃料の歴史
  • タタ・ナノ、車と燃料の歴史

    T型フォードは100年ほど前、アメリカで大衆車として一時代を築いた。そして21世紀に入った今、新時代の低価格車をめぐりメーカー間で開発競争が激化している。特に注目を集めるのが、2008年に10万ルピー(当時のレートで約28万円)での販売を目指して発表されたインド、タタ・モーターズ社のタタ・ナノ(写真)だ。初めて車を購入する発展途上国の人々をターゲットにしている。 Photograph by Valentin Flauraud, Reuters T型フォードは100年ほど前、アメリカで大衆車として一時代を築いた。そして21世紀に入った今、新時代の低価格車をめぐりメーカー間で開発競争が激化している。特に注目を集めるのが、2008年に10万ルピー(当時のレートで約28万円)での販売を目指して発表されたインド、タタ・モーターズ社のタタ・ナノ(写真)だ。初めて車を購入する発展途上国の人々をターゲット

    タタ・ナノ、車と燃料の歴史
  • 1957年型シボレー、車と燃料の歴史

    1957年型のシボレー・ベル・エアー。エアコンなど新しくラグジュアリーなオプションで重量が増した一方、機械式燃料噴射装置を搭載し、キャブレター式エンジンよりも少ない燃料で同程度の出力を実現していた。コンパクトで比較的効率のよいV型8気筒4.6Lスモールブロック・エンジンは、「マイティマウス(Mighty Mouse)」のニックネームがある。 Photograph from Lambert/Getty Images 1957年型のシボレー・ベル・エアー。エアコンなど新しくラグジュアリーなオプションで重量が増した一方、機械式燃料噴射装置を搭載し、キャブレター式エンジンよりも少ない燃料で同程度の出力を実現していた。コンパクトで比較的効率のよいV型8気筒4.6Lスモールブロック・エンジンは、「マイティマウス(Mighty Mouse)」のニックネームがある。“パワー優先で効率性は二の次”の時代に誕

    1957年型シボレー、車と燃料の歴史
  • ベンツ260D、車と燃料の歴史

    世界で初めて市販されたディーゼル乗用車、1936年型メルセデス・ベンツ260D。1893年にルドルフ・ディーゼルが発表したディーゼルエンジンは、圧縮熱によって燃料を自然着火させる。電気火花で点火するガソリンエンジンよりも高効率で、約30%の燃費向上を実現できるという。 Photograph courtesy Daimler 世界で初めて市販されたディーゼル乗用車、1936年型メルセデス・ベンツ260D。1893年にルドルフ・ディーゼルが発表したディーゼルエンジンは、圧縮熱によって燃料を自然着火させる。 電気火花で点火するガソリンエンジンよりも高効率で、約30%の燃費向上を実現できるという。1933年、フランスのシトロエンは世界初の試みとして乗用車「ロザリー」にディーゼルを換装。2年後にはプロトタイプ100台が個人ドライバーに提供されているが、当時の法規制で発売には至らなかった。 260Dが

    ベンツ260D、車と燃料の歴史
  • 三菱i-MiEV、車と燃料の歴史

    三菱自動車のi-MiEV(写真はアメリカ仕様の「Mitsubishi i」)は、EPAの2012年度EV燃費ランキングで1位を獲得している。市街地と高速走行を合わせた記録112MPGeは、ガソリン車の47.6km/Lに相当する。2位はフォードのフォーカスBEVで、105MPGe(44.6km/L)。日産リーフは99MPGe(42.1km/L)を達成し3位に入った。 Photograph courtesy Mitsubishi Motors 完全な電気自動車(EV)は1滴のガソリンも使用しないが、電気としてエネルギーを消費することに変わりはない。アメリカ環境保護庁(EPA)は、電気消費量をガソリン使用量に換算する単位「MPGe(Miles per gallon gasoline equivalent)」を考案した。 三菱自動車のi-MiEV(写真はアメリカ仕様の「Mitsubishi i」)

    三菱i-MiEV、車と燃料の歴史
  • ダットサン240Z、車と燃料の歴史

    人気を博したスポーツカー、ダットサン240Z(日名:フェアレディZ)。1970年代、日産自動車がアメリカ市場で主要なプレーヤーとなる基盤を形成した。1973年のアラブ諸国による石油禁輸措置で世界中がオイルショックに突入、燃費に注目が集まるようになった時代である。240Zの燃費は8.6km/L。燃料効率とデザイン、パワーを兼ね備えており、消費者に広く受け入れられた。 Photograph by Jeff Ludes, Transtock/Corbis 人気を博したスポーツカー、ダットサン240Z(日名:フェアレディZ)。1970年代、日産自動車がアメリカ市場で主要なプレーヤーとなる基盤を形成した。1973年のアラブ諸国による石油禁輸措置で世界中がオイルショックに突入、燃費に注目が集まるようになった時代である。 240Zの燃費は8.6km/L。燃料効率とデザイン、パワーを兼ね備えており、消

    ダットサン240Z、車と燃料の歴史
  • 電気自動車とエジソン、車と燃料の歴史

    1900年代初頭、発明家トーマス・エジソンは電気自動車(EV)こそが輸送機関の未来形だと考えていた。エジソンは電球や映画技術などの発明でよく知られているが、ニッケル・鉄系の「エジソン電池」を使用したEVも3台設計している(左端に立つのがエジソン)。 Photograph courtesy Thomas Edison NHP, NPS/DOI 1900年代初頭、発明家トーマス・エジソンは電気自動車(EV)こそが輸送機関の未来形だと考えていた。エジソンは電球や映画技術などの発明でよく知られているが、ニッケル・鉄系の「エジソン電池」を使用したEVも3台設計している(左端に立つのがエジソン)。 1910年9月にはプロモーション活動の一環として、ニューヨーク・ニューハンプシャー間の約1600キロを走破した。「理想的な旅(ideal tour)」と題され、途中で充電を重ねながら走行、最終関門はニューハ

    電気自動車とエジソン、車と燃料の歴史
  • ダイムラーの四輪車、車と燃料の歴史

    1880年代、ドイツ南西部の都市マンハイムではカール・ベンツが三輪自動車「パテント・モトールヴァーゲン」を開発。約120キロ離れたシュトゥットガルトでは、ゴットリープ・ダイムラーが内燃エンジンを搭載した四輪自動車「モトールキャリッジ」(画像)を世界で初めて製造していた。 Photograph from Bettmann/Corbis 1880年代、ドイツ南西部の都市マンハイムではカール・ベンツが三輪自動車「パテント・モトールヴァーゲン」を開発。約120キロ離れたシュトゥットガルトでは、ゴットリープ・ダイムラーが内燃エンジンを搭載した四輪自動車「モトールキャリッジ」(画像)を世界で初めて製造していた。 アメリカ、カリフォルニア州ロサンゼルスにあるピーターソン自動車博物館のレスリー・ケンドール(Leslie Kendall)氏は、「2人ともお互いの存在を知らなかったようだ」と話す。ダイムラーは

    ダイムラーの四輪車、車と燃料の歴史
  • 折りたたみ式EV、車と燃料の歴史

    スペインのバスク地方で2013年から試験生産が予定されている「Hiriko」プロジェクトの折りたたみ式電気自動車(EV)。駐車時には、後輪のユニットが前方にスライド、車体が迫り上がってほぼ直立しコンパクトに畳まれる。駐車場1台分に3台を収められ、都市部の交通問題解決に一役買いそうだ。 Photograph by Olivier Hoslet, European Pressphoto Agency スペインのバスク地方で2013年から試験生産が予定されている「Hiriko」プロジェクトの折りたたみ式電気自動車(EV)。駐車時には、後輪のユニットが前方にスライド、車体が迫り上がってほぼ直立しコンパクトに畳まれる。駐車場1台分に3台を収められ、都市部の交通問題解決に一役買いそうだ。 Hirikoのコンセプトを開発したマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボの研究チームは、「エンジン性能や居

    折りたたみ式EV、車と燃料の歴史
  • ホンダ・インサイト、車と燃料の歴史

    ホンダが発売した同社初のガソリン・電気併用型ハイブリッドカー「インサイト」は、燃費効率の水準を大幅に引き上げた。1997年に東京モーターショーでコンセプト・モデルを発表。その2年後、アメリカで市販される初のハイブリッドカーとなった。アメリカ環境保護庁(EPA)の調査では、初代モデル(5速MT)の燃費は約22.5km/L(市街地約21km/L、高速走行約26km/L)を達成している。 Photograph from AP ホンダが発売した同社初のガソリン・電気併用型ハイブリッドカー「インサイト」は、燃費効率の水準を大幅に引き上げた。1997年に東京モーターショーでコンセプト・モデルを発表。その2年後、アメリカで市販される初のハイブリッドカーとなった。 アメリカ環境保護庁(EPA)の調査では、初代モデル(5速MT)の燃費は約22.5km/L(市街地約21km/L、高速走行約26km/L)を達成

    ホンダ・インサイト、車と燃料の歴史
  • ロンドン蒸気車、車と燃料の歴史

    イラストのロンドン蒸気車(London Steam Carriage)は1803年、イギリス南西部のコーンウォールの鉱山技師で蒸気機関修理の経験も持つリチャード・トレビシック(Richard Trevithick)が製作。高圧蒸気でピストンを動かしていた。高圧蒸気機関は当時普及していた低圧蒸気機関よりも小型で高出力だったが、トレビシックの蒸気車は馬車に比べると高価すぎた。 Illustration from SSPL/Getty Images 世界的な不況で原油価格の上昇が抑制される中、車社会のアメリカではメモリアルデー(戦没将兵追悼記念日、5月28日)の週末を迎える。例年、この頃から夏のドライブシーズンが始まり、ガソリンスタンドでは値段が急騰するという。だが、今後のガソリン価格の動向に関わりなく、燃費向上は世界各国で重要な課題となっている。「国際クリーン交通委員会(ICCT:Intern

    ロンドン蒸気車、車と燃料の歴史
  • サハラで発見、2次大戦の英軍戦闘機

    第2次世界大戦当時の戦闘機が、先ごろエジプトで油田探査チームにより発見された。70年間にわたりサハラ砂漠に放置されていたため傷みは見受けられるものの、過去からの「タイムカプセル」と言っていい状態にあるという。戦闘機はカーチスP40(愛称キティホーク)だが、イギリス空軍(RAF)博物館のイアン・サースク(Ian Thirsk)氏によると「私が長年見てきた中でも、第2次大戦当時の軍用機としては最も保存状態が良い例だ」という。 Photograph by Jakub Perka, BNPS 第2次世界大戦当時の戦闘機が、先ごろエジプトで油田探査チームにより発見された。「航空の世界ではツタンカーメン王の墓に匹敵する発見」と評価されるこの飛行機は、70年間にわたりサハラ砂漠に放置されていたため傷みは見受けられるものの、過去からの「タイムカプセル」と言っていい状態にあるという。 ロンドンにあるイギリス

    サハラで発見、2次大戦の英軍戦闘機
  • 操縦士は依然不明、2次大戦の英戦闘機

    第2次世界大戦当時の戦闘機が、先ごろエジプトで油田探査チームにより発見された。70年間にわたりサハラ砂漠に放置されていたため傷みは見受けられるものの、過去からの「タイムカプセル」と言っていい状態にあるという。戦闘機はカーチスP40(愛称キティホーク)だが、イギリス空軍(RAF)博物館のイアン・サースク(Ian Thirsk)氏によると「私が長年見てきた中でも、第2次大戦当時の軍用機としては最も保存状態が良い例だ」という。 Photograph by Jakub Perka, BNPS 写真は3月にエジプト南部のワディ・アル・ジャディド県で見つかった第2次大戦当時の戦闘機、カーチスP40(愛称キティホーク)のプロペラ部分。形が歪んでいるのは、1942年の墜落時の衝撃によるものだ。ポーランド人の油田労働者ヤクブ・ペルカ(Jakub Perka)さんが撮影した写真を見る限り、アメリカで製造された

    操縦士は依然不明、2次大戦の英戦闘機
  • 大きな骨壺、カンボジアの未知部族

    カンボジア南西部、カルダモン山脈の山腹で発見された墓地「クノルン・スロアル(Khnorng Sroal)」。数百年前のものと見られ、大きな骨壺から人骨がはみ出している。骨壺として使われている陶器の瓶(かめ)は高さ約50センチ。遺骨は肉が微生物で分解されるか、動物にべられてから納めたと考えられる。 Photograph courtesy John Miksic カンボジア南西部、カルダモン山脈の山腹で発見された墓地「クノルン・スロアル(Khnorng Sroal)」。数百年前のものと見られ、大きな骨壺から人骨がはみ出している。 骨壺として使われている陶器の瓶(かめ)は高さ約50センチ。遺骨は肉が微生物で分解されるか、動物にべられてから納めたと考えられる。 「カルダモンの高地人は、鳥葬のような手段で肉を削ぎ落としていたようだ」とニュージーランド、オタゴ大学のナンシー・ビーバン(Nancy

    大きな骨壺、カンボジアの未知部族
  • 王朝との関係、カンボジアの未知部族

    人骨が納められた丸太の棺。カンボジアで新たに年代が調査された4カ所の墓地の1つ、プノンペル(Phnom Pel)遺跡から発掘され、失われた部族を知る手掛かりと期待されている。4墓地の年代はかつて東南アジアの大部分を支配したクメール王朝の末期と一致し、同王朝の首都アンコールから160キロ余りの場所にある。 Photograph courtesy Nancy Beavan 人骨が納められた丸太の棺。カンボジアで新たに年代が調査された4カ所の墓地の1つ、プノンペル(Phnom Pel)遺跡から発掘され、失われた部族を知る手掛かりと期待されている。 4墓地の年代はかつて東南アジアの大部分を支配したクメール王朝の末期と一致し、同王朝の首都アンコールから160キロ余りの場所にある。 だが、危険な崖の中腹にこれらの墓地を作った人々に対し、クメール王朝は文化的な影響をほとんど及ぼしていないと研究チームは考

    王朝との関係、カンボジアの未知部族
  • 断崖の墓、カンボジアの未知部族

    カンボジアで発見された丸太の棺を調べる研究者ナンシー・ビーバン(Nancy Beavan)氏。危険な崖の中腹などに、棺や“遺骨を納めた瓶(かめ)”が置かれていたという。知られざる部族の謎を解くため、年代特定の作業が始まっている。 Photograph courtesy Damnak Tep Sokha カンボジアで発見された丸太の棺を調べる研究者ナンシー・ビーバン(Nancy Beavan)氏。危険な崖の中腹などに、棺や“遺骨を納めた瓶(かめ)”が置かれていたという。知られざる部族の謎を解くため、年代特定の作業が始まっている。 同国南西部に位置するカルダモン山脈では2003年以降、このような墓地が10カ所発見されている。少なくとも1つは高さ50メートル超の崖にあり、「簡単には墓を荒らさせない目的のようだ」と、研究リーダーでニュージーランドのオタゴ大学解剖学科に所属するビーバン氏は分析する。

    断崖の墓、カンボジアの未知部族
  • 「母の日」、その起源と反対運動

    「母の日」創設を推進し、後に反対派に転じたアンナ・ジャービス。(Photograph from Bettmann/Corbis) 「母の日」といえば、今では事やプレゼント、グリーティングカードを贈る日だが、かつては戦死した兵士を悼み、平和のために活動する母親たちの日だった。この祝日が商業利用されるようになると、「母の日」誕生の立役者となった人物は反対運動に身を捧げ、ついには財産を使い果たし、衰弱して療養所で亡くなった。しかし、彼女の死後もむろん「母の日」は消えることなく、現在もなお世界中で、さまざまな形で祝われている。 米ウェストバージニア・ウェズリアン大学の歴史学者キャサリン・アントリーニ氏によると、早くも1850年代には、ウェストバージニア州で女性による社会活動を展開していたアン・リーブス・ジャービスという人物が、「母の日ワーク・クラブ」(Mother's Day Work Club

    「母の日」、その起源と反対運動
  • 未来の日付、最古のマヤ暦

    中央アメリカのグアテマラで、1200年前の遺跡からマヤ文明最古の暦が発見された。住居跡を調査したところ、北側の壁に4つの数字が縦に記されていた。マヤ文明の“長期暦”を示しており、およそ7000年後の未来も存在した。発掘チームによると、それぞれの日付は月や惑星の動きなど、天文的周期を記録しているという。 Illustration by William Saturno and David Stuart, National Geographic 中央アメリカのグアテマラで、1200年前の遺跡からマヤ文明最古の暦が発見された。住居跡を調査したところ、北側の壁に4つの数字が縦に記されていた。マヤ文明の“長期暦”を示しており、およそ7000年後の未来も存在した。発掘チームによると、それぞれの日付は月や惑星の動きなど、天文的周期を記録しているという。 アメリカ、ボストン大学の考古学者ウィリアム・サト

    未来の日付、最古のマヤ暦
  • 人類滅亡説を否定、最古のマヤ暦

    グアテマラ北部にあるシュルトゥン遺跡で、住居内部を埋め尽くしていた石を取り除く考古学者ウィリアム・サトゥルノ氏。およそ1200年前の住居からマヤ文明最古の暦が見つかった。壁に描かれた計算表は「マヤ暦の終わり」と言われていた2012年12月21日より先まで続いているという。また、壁画などのマヤ美術が住居で発見されたのはこれが初めてだ。 Photograph by Tyrone Turner, National Geographic グアテマラ北部にあるシュルトゥン遺跡で、住居内部を埋め尽くしていた石を取り除く考古学者ウィリアム・サトゥルノ氏。およそ1200年前の住居からマヤ文明最古の暦が見つかった。壁に描かれた計算表は「マヤ暦の終わり」と言われていた2012年12月21日より先まで続いているという。また、壁画などのマヤ美術が住居で発見されたのはこれが初めてだ。 長らく放置された住居跡は、古代

    人類滅亡説を否定、最古のマヤ暦
  • マヤの世界終末論を否定する壁画が発見

    新たに発見されたマヤ遺跡の住居内の超高解像画像。書記官とみられる男性(中央)と王(右)など3人の人物が描かれている。 GigaPan by Tyrone Turner, National Geographic 未発掘建造物が数多く残る古代マヤ文明の遺跡シュルトゥンの住居跡で、世界終末論を否定する壁画が発見された。 王とその従者が鮮やかに描かれているが、何よりも注目すべきは当時の書記官が残した計算表だ。数千年先の未来を予測する目的と考えられ、古代マヤ文明が予言したとされる2012年の世界終末とは完全にい違っている。 部屋自体は簡素な造りだが、発見の重要性は極めて高い。マヤ社会の新たな一面が浮き彫りになった格好だ。「同様の壁画は他の地域では見つかっていない」と発掘チームを率いるウィリアム・サトゥルノ氏はナショナルジオグラフィック ニュースに話す。 シュルトゥンはグアテマラ北部の古代マヤ都市遺

    マヤの世界終末論を否定する壁画が発見
  • ツタンカーメン王墓発見者をめぐる誤解

    1922年、ツタンカーメン王の石棺を調べるイギリスの考古学者ハワード・カーター(彩色写真)。 Photograph by Harry Burton, Apic/Getty Images 5月9日にインターネット検索をした人は、画面上に思いがけずセピア色を帯びた黄金の遺物を“発見”したことだろう。Googleのロゴはこの日、イギリスの考古学者ハワード・カーターの生誕138年を記念するアートに変わっていた。カーターは1922年に古代エジプトのファラオ、ツタンカーメンの墓を発見した人物だ。 ツタンカーメン王の墓を発見したことで、ハワード・カーター(Howard Carter)は一夜にして不朽の名声を得ることになった。しかしそれは、単なる幸運などではないと専門家たちは言う。 ツタンカーメン王の墓について語るとき、「誰もが“思いがけず発見”という表現を使いたがるが、私はそのことにいつも軽い苛立ちを覚

    ツタンカーメン王墓発見者をめぐる誤解
  • カラフルなゴール、4月ベストフォト

    色とりどりの粉をかけ合っているのは、ゴール地点を駆け抜けるマラソンランナー達(4月22日撮影)。アメリカ、カリフォルニア州アーバイン市で開催されたマラソン大会「カラーラン(Color Run)」での一コマ。1キロごとに決められた色の粉を浴びるのがルールで、5キロ先のクライマックスではジャクソン・ポロックの抽象画さながらの光景が完成する。 Photograph by Mindy Schauer, Orange County Register/AP 色とりどりの粉をかけ合っているのは、ゴール地点を駆け抜けるマラソンランナー達(4月22日撮影)。アメリカ、カリフォルニア州アーバイン市で開催されたマラソン大会「カラーラン(Color Run)」での一コマ。1キロごとに決められた色の粉を浴びるのがルールで、5キロ先のクライマックスではジャクソン・ポロックの抽象画さながらの光景が完成する。「“魔法のカ

    カラフルなゴール、4月ベストフォト
  • ハンマー投げの一瞬、4月ベストフォト

    スロベニア東部の町ブレージツェでハンマー投げのトレーニングに励む、プリモジュ・コズムス(Primoz Kozmus)選手(3月22日撮影)。2008年の北京オリンピックで金メダルを獲得、今夏のロンドンで連覇を目指している。 Photograph by Srdjan Zivulovic, Reuters スロベニア東部の町ブレージツェでハンマー投げのトレーニングに励む、プリモジュ・コズムス(Primoz Kozmus)選手(3月22日撮影)。2008年の北京オリンピックで金メダルを獲得、今夏のロンドンで連覇を目指している。◆ベストフォト選考理由 「ロンドンオリンピックには世界中の人々が熱狂するだろう。一大イベントを目前に控えた嵐の前の静けさがうまく表現されている。アスリートが今まさに自らのパワーを解放しようとする瞬間が、シンプルな構図に凝縮している」、サラ・ポルガー氏(フォト編集主任)。 P

    ハンマー投げの一瞬、4月ベストフォト
  • 絵に描いたような、4月ベストフォト

    ラッパスイセンの花びらに付いたほこりを筆で払う園芸家のレイ・ベックウィズ氏(4月25日撮影)。イングランド北部のハロゲートで開催された春のフラワーショーの1コマだ。このフラワーショーは、チャールズ皇太子の後援のもと、半年に一度開催されている。毎回100以上の園芸業者が集まり、収益はイングランド北部の園芸を支援する慈善団体に寄付されるという。 Photograph by Christopher Furlong, Getty Images ラッパスイセンの花びらに付いたほこりを筆で払う園芸家のレイ・ベックウィズ氏(4月25日撮影)。イングランド北部のハロゲートで開催された春のフラワーショーの1コマだ。このフラワーショーは、チャールズ皇太子の後援のもと、半年に一度開催されている。毎回100以上の園芸業者が集まり、収益はイングランド北部の園芸を支援する慈善団体に寄付されるという。◆ベストフォト選考

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  • カバの歯のお手入れ、4月ベストフォト

    飼育員アンソニー・ドリアン氏にやすりで歯を削ってもらうカバの「ハッピー(Happy)」(4月20日)。オーストラリア、ニューサウスウェールズ州のダッボー(Dubbo)にあるタロンガ・ウェスタン・プレイン動物園で撮影。下顎から生える2の犬歯は30センチ以上に伸びることもあるという。 Photograph by Mark Kolbe, Getty Images 飼育員アンソニー・ドリアン氏にやすりで歯を削ってもらうカバの「ハッピー(Happy)」(4月20日)。オーストラリア、ニューサウスウェールズ州のダッボー(Dubbo)にあるタロンガ・ウェスタン・プレイン動物園で撮影。下顎から生える2の犬歯は30センチ以上に伸びることもあるという。◆ベストフォト選考理由 「最初は毛の生えたヘルメットかと思ったよ。“紛らわしい”と文句をつけることもできるが、意外な作業を見せてくれたので気に入っている」、

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  • 発掘の現場、中国南北朝の仏像

    2012年1月に南北朝時代の仏像3000体が出土した中国、河北省邯鄲市(かんたんし)の発掘現場(3月20日撮影)。仏像の大きさは高さ20センチから等身大までさまざまである。 Photograph by Sun Zifa, Imaginechina/AP 2012年1月に南北朝時代の仏像3000体が出土した中国、河北省邯鄲市(かんたんし)の発掘現場(3月20日撮影)。仏像の大きさは高さ20センチから等身大までさまざまである。 シカゴ大学東アジア芸術センター(Center for the Art of East Asia)のキャサリン・シアン(Katherine Tsiang)氏によると、仏像の大量出土は珍しいが、過去にも例があるという。1950年代、河北省定州市(ていしゅうし)の寺院からは、大理石の断片が2000個以上見つかっている。 「いずれも、今回の古代都市ギョウ(「業」におおざと)遺跡

    発掘の現場、中国南北朝の仏像
  • 3000体を発見、中国南北朝の仏像

    中国北東部の河北省邯鄲市(かんたんし)で、西暦500年頃の仏像が3000体近く発掘された。中国社会科学院の考古学者は3月下旬、AP通信の取材に対し、「1949年の新中国建国以来、この種の発見では最大」と語っている。ほとんどが白大理石と石灰岩から形作った彫像で、時代は534~577年の東魏(とうぎ)、北斉(ほくせい)王朝時代まで遡るという。 Photograph by Sun Zifa, Imaginechina/AP 中国北東部の河北省邯鄲市(かんたんし)で、西暦500年頃の仏像が3000体近く発掘された。 中国社会科学院の考古学者は3月下旬、AP通信の取材に対し、「1949年の新中国建国以来、この種の発見では最大」と語っている。 ほとんどが白大理石と石灰岩から形作った彫像で、時代は534~577年の東魏(とうぎ)、北斉(ほくせい)王朝時代まで遡るという。 現地のギョウ(「業」におおざと)

    3000体を発見、中国南北朝の仏像
  • 蓮華の頭光、中国南北朝の仏像

    中国北東部では2012年に入ってから、約3000体の仏像が発掘されている。この頭部から放たれる頭光(ずこう)の中心には大きな蓮華のモチーフが彫られている。蓮華は仏教において清らかさと転生を表す重要なシンボルである。 Photograph by Sun Zifa, Imaginechina/AP 中国北東部では2012年に入ってから、約3000体の仏像が発掘されている。この頭部から放たれる頭光(ずこう)の中心には大きな蓮華のモチーフが彫られている。蓮華は仏教において清らかさと転生を表す重要なシンボルである。「頭頂の突起(肉髻:にっけい)はブッダの優れた智恵を表す。ただし、この像の場合はそれほど高さがなく、わずかに盛り上がっているだけだ」とアメリカ、シカゴ大学東アジア芸術センター(Center for the Art of East Asia)のキャサリン・シアン(Katherine Tsia

    蓮華の頭光、中国南北朝の仏像
  • 北朝鮮、ミサイル発射に続き核実験も?

    西海衛星発射場の「銀河3号」ロケット前で敬礼する北朝鮮兵士(4月8日撮影)。 Photograph by David Guttenfelder, AP 北朝鮮が“人工衛星運搬ロケット”と称する同国の「銀河3号」が、まもなく打ち上げられる模様だ。同ロケットが衛星とは別のもの、すなわち核兵器を搭載する可能性もあるとして、観測筋は警戒の目を向けている。 最近になって、同国が文字通り“大地を揺るがす”ような地下核実験を近く行うのではないかと報じられたこともあり、この可能性はいっそう懸念されるところだ。地下核実験はどのように行われ、また実験後、どのような影響が予想されるのだろうか。 韓国の諜報機関当局者によると、最近の衛星写真から、金正恩体制の北朝鮮が地下核実験を準備していることが明らかになったという。これは国連安全保障理事会の決議に違反する行為であり、アメリカをはじめ数カ国がすでに非難を表明してい

    北朝鮮、ミサイル発射に続き核実験も?
  • タイタニックに塗装を、発見者が提言

    ちょうど100年前に沈没したタイタニック号。手すり部分を“ラスティクル”と呼ばれるつらら状のさびが覆っている(資料写真)。枠内は、船体保護のために塗装処理を提案している深海探検家のロバート・バラード氏。 Photographs by Emory Kristof, National Geographic; (inset) Priit Vesilind, National Geographic “ペイント・ザ・タイタニック!” 沈没から100年を迎えたタイタニック号について、深海作業が可能なロボットを使い、水深3800メートルに沈む船体を保護する塗装を施すよう、深海探検家のロバート・バラード(Robert Ballard)氏が提案している。 1985年に北大西洋の海底に沈むタイタニックの船体を発見した人物でもあるバラード氏によれば、塗装の目的はタイタニックを沈没前の白と黒の姿に戻すことではない

    タイタニックに塗装を、発見者が提言
  • 赤い星の指揮者、3月ベストフォト

    北京の人民大会堂でリハーサルに臨む中国人民解放軍軍楽隊の指揮者。重要な政治的決定を行う中国人民政治協商会議の開会を目前に控えた一瞬である。同会議は年1回、国会にあたる全国人民代表大会と同時に開催される。 Photograph by Ng Han Guan, AP 北京の人民大会堂でリハーサルに臨む中国人民解放軍軍楽隊の指揮者。重要な政治的決定を行う中国人民政治協商会議の開会を目前に控えた一瞬である。同会議は年1回、国会にあたる全国人民代表大会と同時に開催される。◆ベストフォト選考理由 「中国政治を象徴する人民大会堂は、多くの写真家にとって魅力的な建造物のようだ。内外を撮影した作品は数多く見てきたが、これほど目を引き付けられたのは初めてだ。奇抜なアングルから絶妙のタイミングでシャッターを押している。みなぎる活力や振り上げられた権威と共に、わずかな風刺も込められている」、エチョ・シー(Echo

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  • アンクル・サム、3月ベストフォト

    アメリカ、アラバマ州ハンツビルにあるアメリカ宇宙ロケットセンターのベンチに腰掛けた地元在住のウィリアム・ハウスさん(3月6日撮影)。共和党の予備選候補者ニュート・ギングリッチ氏の到着を待っている。AP通信によると、ギングリッチ氏は同センターの体験学習施設「スペースキャンプ」で演説し、宇宙探査の推進を訴えたという。 Photograph by Evan Vucci, AP アメリカ、アラバマ州ハンツビルにあるアメリカ宇宙ロケットセンターのベンチに腰掛けた地元在住のウィリアム・ハウスさん(3月6日撮影)。共和党の予備選候補者ニュート・ギングリッチ氏の到着を待っている。 AP通信によると、ギングリッチ氏は同センターの体験学習施設「スペースキャンプ」で演説し、宇宙探査の推進を訴えたという。 ◆ベストフォト選考理由 「期待感、尊大さ、疲労など、選挙運動のさまざまな面を想起させる点を高く評価したい」、

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  • スキーマラソン、3月ベストフォト

    3月11日、スイスで開催されたエンガディン・スキーマラソン(Engadin Skimarathon)のスタート前の一コマ。凍り付いたシルス湖上にたくさんのスキー板が並べられ、スキーヤー達が準備している。東部の山岳リゾート、サンモリッツからほど近いマローヤ村とシャンフ村の間で42.2キロのレースが行われ、1万1000人を超えるクロスカントリースキーヤーが参加した。 Photograph by Arnd Wiegmann, Reuters 3月11日、スイスで開催されたエンガディン・スキーマラソン(Engadin Skimarathon)のスタート前の一コマ。凍り付いたシルス湖上にたくさんのスキー板が並べられ、スキーヤー達が準備している。東部の山岳リゾート、サンモリッツからほど近いマローヤ村とシャンフ村の間で42.2キロのレースが行われ、1万1000人を超えるクロスカントリースキーヤーが参加し

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  • イースター・ツリー、3月ベストフォト

    ドイツ中部の町ザールフェルトにある自宅の木に1万個のイースター・エッグを飾るボルカー・クラフト(Volker Kraft)さん(3月21日撮影)。クラフト家では40年以上にわたり復活祭(イースター)の飾り付けを行っているという。 Photograph by Jens Meyer, AP ドイツ中部の町ザールフェルトにある自宅の木に1万個のイースター・エッグを飾るボルカー・クラフト(Volker Kraft)さん(3月21日撮影)。クラフト家では40年以上にわたり復活祭(イースター)の飾り付けを行っているという。◆ベストフォト選考理由 「優れた写真に欠かせない基的な要素はいくつか存在する。しかし、見る人の心に訴えかける強烈な印象には敵わないこともある」、モニカ・コーコラン氏(フォト編集主任)。 「面白い! この男性のイースターへの情熱と愛には思わず微笑んでしまう。いろいろな疑問も湧いてくる

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  • ホーリー祭、3月ベストフォト

    ヒンズー教の春祭り「ホーリー祭」で色水を浴びる信者たち。インド北部、ダウジ(Dauji)にあるバルデブ(Baldev)寺院で3月9日に撮影。男性が女性に色水をかける集まり「フランガ(Huranga)」が終わった後のワンシーンだ。 Photograph by Kevin Frayer, AP ヒンズー教の春祭り「ホーリー祭」で色水を浴びる信者たち。インド北部、ダウジ(Dauji)にあるバルデブ(Baldev)寺院で3月9日に撮影。男性が女性に色水をかける集まり「フランガ(Huranga)」が終わった後のワンシーンだ。◆ベストフォト選考理由 「祭りの一瞬を完璧にとらえていて、自分も参加している気分になる。この後の展開に想像が膨らむよ。右の男性は足下の水槽に落ちるのでは? 子どもたちは逃げ出すのかな。左端で口元まで浸かっている男性は? たくさんのディテールとストーリーを秘めている」、エチョ・シー

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  • マサイ族の青年、3月ベストフォト

    足に伝統的な化粧を施し、成人の儀式を迎えるマサイ族の若者たち。ケニアの首都ナイロビ西部で3月18日撮影。 Photograph by Thomas Mukoya, Reuters 足に伝統的な化粧を施し、成人の儀式を迎えるマサイ族の若者たち。ケニアの首都ナイロビ西部で3月18日撮影。◆ベストフォト選考理由 「マサイの人々は魅力的な被写体だが、ジャンプの踊りやコスチュームに焦点を当てるケースが多い。細部にフォーカスし、独自の風習の新たな面を浮かび上がらせた1枚を高く評価したい」、モニカ・コーコラン氏(フォト編集主任)。 「直立した足とリラックスした足のバランスが絶妙だ。乾燥した絵の具のざらざらとした質感も見事に表現されている」、ジャンナ・ドチュカル(Janna Dotschkal)氏(フォト共同編集者)。 Photograph by Thomas Mukoya, Reuters

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  • タイの万仏祭、3月ベストフォト

    タイ、バンコクの郊外にあるタンマガーイ寺院(Dhammakaya Temple)で経文を唱える僧侶たち。約2500年前のブッダの人生における重要な出来事を記念するマカブーチャ(万仏祭)の1コマである。伝承によれば、悟りを開いた1250人の弟子が説法を聞くため、ブッダのもとへ偶然に集まったという。旧暦3月の満月の日と定められ、今年は3月7日に行われた。 Photograph by Rungroj Yongrit, European Pressphoto Agency タイ、バンコクの郊外にあるタンマガーイ寺院(Dhammakaya Temple)で経文を唱える僧侶たち。約2500年前のブッダの人生における重要な出来事を記念するマカブーチャ(万仏祭)の1コマである。伝承によれば、悟りを開いた1250人の弟子が説法を聞くため、ブッダのもとへ偶然に集まったという。旧暦3月の満月の日と定められ、今年

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  • 竜巻のあと、3月ベストフォト

    竜巻で壊滅的な被害を受けたアメリカ、テネシー州ハリソンの民家(3月3日撮影)。かねてより警戒されていた激しい雷雨が、3月1日を皮切りにメキシコ湾沿岸から五大湖周辺へと北上。各地で竜巻を発生させた。 Photograph by Billy Weeks, AP 竜巻で壊滅的な被害を受けたアメリカ、テネシー州ハリソンの民家(3月3日撮影)。かねてより警戒されていた激しい雷雨が、3月1日を皮切りにメキシコ湾沿岸から五大湖周辺へと北上。各地で竜巻を発生させた。◆ベストフォト選考理由 「母なる自然が持つ絶対的な力と“気まぐれさ”がよくわかる。部屋の屋根は完全に吹き飛ばされているが、棚の上のフットボール用ヘルメットは微動だにしていない」、モニカ・コーコラン氏(フォト編集主任)。 「このアングルから見ると、テレビ番組のセットのようだ。屋根を失い物が散乱した家の中で、男性が棚に手を伸ばし、外では木が倒れ

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  • エイプリルフール、いたずらの歴史

    1900年頃のエイプリルフールの絵葉書。 Illustration from Apic/Hulton Archive/Getty Images いたずら好きの人にとって、何世紀と続くエイプリルフールの伝統ほど楽しいものはない。「多くの人は(エイプリルフールは)不快なもので、なくなればいいと思っている」と、カリフォルニア州サンディエゴでWebサイト「ウソの歴史博物館(The Museum of Hoaxes)」の“館長”を務めるアレックス・バーザ(Alex Boese)氏は話す。 「しかし、いたずらが好きな人たちはこの日を心底愛していて、伝統を捨て去る気はない。エイプリルフールを存続させているのはこのような人たちだ」と、バーザ氏は2008年のナショナルジオグラフィック ニュースの取材に対して述べている。しかし同氏によると、米国では近年、家庭や職場で仕掛けられるいたずらの件数は減っており、代わ

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  • カリッツォの岩絵、米歴史建造物

    アメリカ、カリフォルニア州南部の遺跡「ペインテッド・ロック(Painted Rock)」(2000年撮影)。ここは先史時代のネイティブアメリカンの住居だった。洞窟の壁面を観察しているのは、サン・ルイス・オビスポ郡チュマッシュ評議会のチーフ、マーク・ビギル(Mark Vigil)氏。 Photograph by Reed Saxon, AP アメリカ、カリフォルニア州南部の遺跡「ペインテッド・ロック(Painted Rock)」(2000年撮影)。ここは先史時代のネイティブアメリカンの住居だった。洞窟の壁面を観察しているのは、サン・ルイス・オビスポ郡チュマッシュ評議会のチーフ、マーク・ビギル(Mark Vigil)氏。 岩の高さは約17メートルで、壁面には多数の絵が描かれている。同州のベーカーズフィールドとサン・ルイス・オビスポの間に広がる、面積約1000平方キロのカリッツォ・プレイン遺跡(

    カリッツォの岩絵、米歴史建造物
  • フロリダサザンカレッジ、米歴史建造物

    近代建築の巨匠フランク・ロイド・ライトが設計したウィリアム・H・ダンフォース・チャペル(2010年撮影)。このチャペルを含むフロリダサザンカレッジのキャンパスが、新たにアメリカ国定歴史建造物に指定された。ライト建築が世界で最も集中している場所である。 Photograph by Julie Fletcher, AP 近代建築の巨匠フランク・ロイド・ライトが設計したウィリアム・H・ダンフォース・チャペル(2010年撮影)。このチャペルを含むフロリダサザンカレッジのキャンパスが、新たにアメリカ国定歴史建造物に指定された。ライト建築が世界で最も集中している場所である。「個々の建築物もさることながら、その集合にこそ、このキャンパスの存在意義と美が見られる」とアメリカ国立公園局は声明で述べている。 1938~1958年、同キャンパスはライトの有機的建築の理念に基づいて建てられた。10棟の建物はサイズ

    フロリダサザンカレッジ、米歴史建造物
  • モントーク岬灯台、米歴史建造物

    ニューヨーク州ロングアイランドで長年にわたって船舶を導いてきたモントーク岬灯台(Montauk Point Lighthouse)(2004年撮影)。3月16日、新たなアメリカ国定歴史建造物13件の一つに選ばれた。国立公園局の声明によれば、1796年に完成したモントーク岬灯台はニューヨーク州最古で、「19世紀前半のヨーロッパからニューヨークを目指す船にとって、陸地の位置を示す最も重要な光」だったという。 Photograph by Andre Jenny, Alamy ニューヨーク州ロングアイランドで長年にわたって船舶を導いてきたモントーク岬灯台(Montauk Point Lighthouse)(2004年撮影)。3月16日、新たなアメリカ国定歴史建造物13件の一つに選ばれた。 国立公園局の声明によれば、1796年に完成したモントーク岬灯台はニューヨーク州最古で、「19世紀前半のヨーロッ

    モントーク岬灯台、米歴史建造物
  • 失われた万里の長城、モンゴルで発見

    西暦1100年頃、モンゴルで築かれる「万里の長城」の一部(想像図)。右下モンゴル、ウムヌゴビ県で発見された“長城”の一部。 Illustration by Ren Chao, National Geographic China; Photograph (inset) courtesy James A. Lindesay “失われた”万里の長城が、中国国外のゴビ砂漠奥地で発見された。 2011年8月、国際探検隊がモンゴル南部の国境地帯にある立入制限区域で、古代の壁を約100キロにわたって調査。情報収集にはGoogle Earthも活用されたという。 この防御壁は、中国歴代王朝が北方からのモンゴル民族侵入を防ぐために建設した「万里の長城」の一部と見られている。 探検隊責任者で長城を研究しているウィリアム・リンジー氏によると、発見された高さ2.75メートルの壁は、モンゴルの遺跡群「チンギス・ハー

    失われた万里の長城、モンゴルで発見
  • 黄金の十字架、英最初期キリスト教墓

    イ7世紀の古代アングロサクソン人の墓から発掘された胸飾りの十字架。純金製でガーネットが埋め込まれている。発掘調査を率いたケンブリッジ大学考古学科のアリソン・ディケンズ(Alison Dickens)氏によると、イギリスで発見されたこのタイプの十字架はこれを含めて5個しかなく、古代アングロサクソン時代のイギリスのキリスト教徒が作った工芸品としては、知られている限り最初期のものだという。 Photograph courtesy University of Cambridge 7世紀の古代アングロサクソン人の墓から発掘された胸飾りの十字架。純金製でガーネットが埋め込まれている。 発掘調査を率いたケンブリッジ大学考古学科のアリソン・ディケンズ(Alison Dickens)氏によると、イギリスで発見されたこのタイプの十字架はこれを含めて5個しかなく、古代アングロサクソン時代のイギリスのキリスト教徒

    黄金の十字架、英最初期キリスト教墓
  • 眠れる美女、英最初期キリスト教墓

    イギリスで、約1400年前の「埋葬台」に横たえられたキリスト教徒の貴族の少女の骨が発掘された。考古学者にとっては、イギリス最初期のキリスト教会の様子を知る貴重な手がかりとなる。16歳で亡くなったこの少女の骨は、2011年にケンブリッジ近くの村で発掘された。 Photograph courtesy University of Cambridge イギリスで、約1400年前の「埋葬台」に横たえられたキリスト教徒の貴族の少女の骨が発掘された。考古学者にとっては、イギリス最初期のキリスト教会の様子を知る貴重な手がかりとなる。 16歳で亡くなったこの少女の骨は、2011年にケンブリッジ近くの村で発掘された。少女は、信仰の証しである金とガーネットでできた素晴らしく精巧な十字架を胸に付けていた(写真では首のところにその一部が見えている)。 ケンブリッジ大学の発掘調査チームは先週、この華麗な貴金属の装飾品

    眠れる美女、英最初期キリスト教墓
  • 信仰の移行期、英最初期キリスト教墓

    イギリスのケンブリッジ近くの宅地開発現場で発掘された貴族の少女の墓の中から黄金の十字架がのぞいている。7世紀に遡るこの墓地からは、ほかに鉄製のナイフ、腰飾りの鎖、ガラスのビーズが見つかっている。ビーズは腰の鎖につながった袋に入っていたと見られる。 Photograph courtesy University of Cambridge イギリスのケンブリッジ近くの宅地開発現場で発掘された貴族の少女の墓の中から黄金の十字架がのぞいている。 7世紀に遡るこの墓地からは、ほかに鉄製のナイフ、腰飾りの鎖、ガラスのビーズが見つかっている。ビーズは腰の鎖につながった袋に入っていたと見られる。 発掘調査チームを率いたケンブリッジ大学のアリソン・ディケンズ氏は、十字架は明らかにキリスト教の象徴としての副葬品だが、ほかの品物はキリスト教以前の信仰に遡ると話す。 異教の埋葬では、死者が死後の暮らしで用いるものと

    信仰の移行期、英最初期キリスト教墓
  • シーザー暗殺、3月15日の歴史

    紀元前44年3月15日に暗殺されたジュリアス・シーザーの葬儀(後世の想像画)。 Illustration by C. Vottrier, Mary Evans Picture Library/Alamy シーザー: 3月15日は来たぞ。 予言者: 来はしたが、まだ去っていない。 ~『ジュリアス・シーザー』第3幕第1場より 紀元前44年の3月15日(アイズ・オブ・マーチ:Ides of March)、共和政ローマの軍人・政治家、ジュリアス・シーザー(ユリウス・カエサル)が腹心の裏切りで暗殺された。ウィリアム・シェイクスピアの悲劇『ジュリアス・シーザー』により、“裏切りの日”として広く知られている。 「予言者が言い放つ“3月15日に気を付けよ”というセリフが印象的だ。なぜだか耳にこびりついて離れない」とアメリカ、ワシントンD.C.のフォルジャー・シェイクスピア・ライブラリーで資料部門のトップを

    シーザー暗殺、3月15日の歴史
  • ダ・ヴィンチの失われた壁画を発見?

    イタリア、フィレンツェにあるジョルジョ・ヴァザーリの壁画に穴を開け、小型カメラを通して裏の映像を見ている調査チームのマウリツィオ・セラチーニ氏(手前)。 Photograph courtesy Dave Yoder 16世紀イタリアの貴重な壁画の裏側に、“レオナルド・ダ・ヴィンチの失われた壁画”が隠れている可能性があるという。壁画の裏に高性能カメラを通して調査した結果、大発見に「希望が持てる」初の証拠が見つかった。 チームはヴェッキオ宮殿(フィレンツェ政庁舎)の「500人大広間」を調査し、ジョルジョ・ヴァザーリの壁画「マルチャーノ・デッラ・キアーナの戦い」の裏にもう1つの壁を発見。二重壁の隙間の空洞を小型カメラで撮影した。 黒い顔料と合成塗料も発見され、失われたレオナルド作品がかなり昔に修復を受けた証拠と見られている。 調査は現在、政治家や一般市民から激しい抗議を受け中断されており、新発見

    ダ・ヴィンチの失われた壁画を発見?
  • 自動誘導弾の軌跡、2月ベストフォト

    砂漠をうねりながら進む白い光線。アメリカ、ニューメキシコ州のサンディア国立研究所が開発した、小口径火器用の自動誘導弾の飛跡である。夜間のフィールドテストでは全長約10センチの弾丸にLEDを装着、光跡を長時間露光で撮影している。 Photograph from Sandia National Laboratories/AP 砂漠をうねりながら進む白い光線。アメリカ、ニューメキシコ州のサンディア国立研究所が開発した、小口径火器用の自動誘導弾の飛跡である。夜間のフィールドテストでは全長約10センチの弾丸にLEDを装着、光跡を長時間露光で撮影している。 光センサーを仕込まれた弾丸は、尾部のフィンで軌道をコントロールしながらレーザビームで照らされた標的に向かっていく。同研究所によれば、空中で1秒間に最大30回の軌道修正が可能という。1.6キロ以上先の標的にも命中させることができる。 ◆ベストフォト選

    自動誘導弾の軌跡、2月ベストフォト
  • ゴールデンイヤーズ、2月ベストフォト

    結婚50周年を迎えたモルドバ人夫、ナデジダ・チェルバ(Nadejda Cerva)さん(左)とペトル・チェルバ(Petru Cerva)さん。 Photograph by Ramin Mazur, My Shot 結婚50周年を迎えたモルドバ人夫、ナデジダ・チェルバ(Nadejda Cerva)さん(左)とペトル・チェルバ(Petru Cerva)さん。 モルドバ共和国は、ルーマニアとウクライナに挟まれた小さな内陸国だ。第二次世界大戦以前、モルドバの大半はルーマニアの版図に組み込まれており、現在でもモルドバ人の3分の2がルーマニア語を話す。1940年にはソ連に併合されたが、1991年に独立を果たしている。 ◆ベストフォト選考理由 「構図、背景、色、すべてがシンプルだ。しかし、幾重にも折り重なった歴史や感情が伝わってくる。のほほ笑み、夫の目に浮かぶ優しさがすべてを物語っている」、エチョ

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  • シロサイの角、国際年間写真賞2012

    アフリカ、クラークスドープで撮影されたシロサイの角(2011年3月25日)。角を目当てにする密猟者から狙われないよう、あらかじめ切断したという。ナショナル ジオグラフィック誌への掲載用に写真家ブレント・スタートン氏が撮影した1枚で、国際年間写真賞(POYi)の科学/自然史部門1位を獲得した。 Photograph by Brent Stirton, Getty Images/National Geographic 南アフリカ、クラークスドープで撮影されたシロサイの角(2011年3月25日)。角を目当てにする密猟者から狙われないよう、あらかじめ切断したという。ナショナル ジオグラフィック誌への掲載用に写真家ブレント・スタートン氏が撮影した1枚で、国際年間写真賞(POYi)の科学/自然史部門1位を獲得した。「腕と手、そして角。要素を絞り込んだ方が多くのことを伝えられるという好例だ」とコンテス

    シロサイの角、国際年間写真賞2012
  • 鉄人レース、国際年間写真賞2012

    ハワイ島西部コナで開催された2011年アイアンマン世界選手権(Ironman World Championship)。スタート直後の選手たちが、魚の群れの上を軽やかに泳いでいる。写真家ドナルド・ミレイユ(Donald Miralle)氏が撮影し、国際年間写真賞(POYi)のスポーツ部門で1位に輝いた。 Photograph courtesy Donald Miralle via POYi ハワイ島西部コナで開催された2011年アイアンマン世界選手権(Ironman World Championship)。スタート直後の選手たちが、魚の群れの上を軽やかに泳いでいる。 写真家ドナルド・ミレイユ(Donald Miralle)氏が撮影し、国際年間写真賞(POYi)のスポーツ部門で1位に輝いた。「人間と張り合うかのように泳ぐ小魚を取り込んだ構図が高評価につながったようだ」とPOYiのディレクター、

    鉄人レース、国際年間写真賞2012
  • アラブの春、国際年間写真賞2012

    リビア北東部の都市ベンガジでカダフィ政権打倒を求めるデモ隊。「Time」誌の取材でロシアの写真家ユーリ・コジレフ(Yuri Kozyrev)氏(中央)が撮影した。国際年間写真賞(POYi)のニュース部門「ニュース組写真」カテゴリーで1位に選ばれている。 Photograph courtesy Yuri Kozyrev for Time via POYi リビア北東部の都市ベンガジでカダフィ政権打倒を求めるデモ隊。「Time」誌の取材でロシアの写真家ユーリ・コジレフ(Yuri Kozyrev)氏(中央)が撮影した。国際年間写真賞(POYi)のニュース部門「ニュース組写真」カテゴリーで1位に選ばれている。 POYiのディレクター、リック・ショー氏は、「黙想しているかのようなコジレフ氏と、熱狂的なデモ隊の対比が際立っている。最高潮に達した抵抗運動の中心に自分自身を置くことで、市民の激しい感情を浮

    アラブの春、国際年間写真賞2012
  • タイタニック沈没は天文現象のせい?

    タイタニック号沈没の要因のひとつは、めったにない天文現象の組み合わせだったのかもしれない。 Photograph by Omikron Omikron, Photo Researchers/Getty Images タイタニック号沈没100周年を数週間後に控え、近代史上最も著名な海難事故の原因解明に一石を投じる新しい理論が発表された。 研究論文によれば、1912年の4月14日の悲劇は、太陽と満月と地球のめったにない並びによってもたらされた可能性がある。 タイタニック号が沈没したのは月のない夜だったが、タイタニックを沈めた氷山が漂流し始めたのは、事故から3か月半前の満月に一因があるという。 論文の著者でテキサス大学の天文学者ドナルド・オルソン氏によれば、満月を迎えた1912年1月4日は潮の満ち引きの差がことのほか大きく、いくつもの氷山が南へ流出して不幸にもタイタニックの処女航海に出くわしたと

    タイタニック沈没は天文現象のせい?
  • カラリパヤット、2月ベストフォト

    インド南部ケララ地方に3000年前から伝わる世界最古級の武術「カラリパヤット」。現地のショーで“空中戦”を演じる剣士を撮影した。実戦武術としては衰退したが、現在も愛好家が稽古に励んでいる。独特な動きを採り入れたモダンダンスやフィットネスの振り付けもあるという。 Photograph by Armand Poblete, Your Shot インド南部ケララ地方に3000年前から伝わる世界最古級の武術「カラリパヤット」。現地のショーで“空中戦”を演じる剣士を撮影した。実戦武術としては衰退したが、現在も愛好家が稽古に励んでいる。独特な動きを採り入れたモダンダンスやフィットネスの振り付けもあるという。◆ベストフォト選考理由 「狙って撮れる写真ではない。影の位置もドンピシャだし、美しさと緊張感が凝縮していて、誰もが次の展開を想像してしまう」、エチョ・シー(Echo Xie)氏(フォト・インターン)

    カラリパヤット、2月ベストフォト
  • 切り開いた頭部、イタリアのミイラ

    頭蓋骨を切り開いたミイラの頭部。19世紀イタリアで標として作成された8体の1つで、その保存方法が解明された。“ミイラ・コレクション”の作り手は、イタリア北部の町サロの解剖学者ジョバン・バティスタ・リーニ(Giovan Battista Rini、1795~1856年)。新たな化学分析やCTスキャンによると、遺体やその一部を水銀などの重金属を混ぜた溶液に浸す方法で“化石化”したと見られる。 Photograph courtesy Dario Piombino-Mascali, EURAC, and Clinical Anatomy/Wiley 頭蓋骨を切り開いたミイラの頭部。19世紀イタリアで標として作成された8体の1つで、その保存方法が解明された。“ミイラ・コレクション”の作り手は、イタリア北部の町サロの解剖学者ジョバン・バティスタ・リーニ(Giovan Battista Rini、1

    切り開いた頭部、イタリアのミイラ
  • CTスキャン、イタリアのミイラ

    19世紀のイタリア人男性の頭部と肩部。ミイラ化した筋肉や気道、血管などを研究するために分解されている。保存時に遺体を化学薬品に浸した術者は、体内組織に水銀などの鉱物も注入していたらしい。 Photograph courtesy Dario Piombino-Mascali, EURAC, and Clinical Anatomy/Wiley イタリア北部、ブレシア県サロ近郊の病院でCTスキャンされる19世紀のミイラ。通常は県内の別の病院で保管されている。 これらのミイラは教育と研究用に作成された。有機物を無機物に置き換える「石化」手法が用いられており、非常に硬い。 研究チームのダリオ・ピオンビーノ・マスカリ氏は、「まるで木のような硬さだ」と説明する。「19世紀のイタリアには、人間の遺体を石化するテクニックを持った術者が複数存在した。非常に高い技術で作成されたミイラも残っている」。 マスカリ

    CTスキャン、イタリアのミイラ
  • 頭部と肩部、イタリアのミイラ

    19世紀のイタリア人男性の頭部と肩部。ミイラ化した筋肉や気道、血管などを研究するために分解されている。保存時に遺体を化学薬品に浸した術者は、体内組織に水銀などの鉱物も注入していたらしい。 Photograph courtesy Dario Piombino-Mascali, EURAC, and Clinical Anatomy/Wiley 19世紀のイタリア人男性の頭部と肩部。ミイラ化した筋肉や気道、血管などを研究するために分解されている。 保存時に遺体を化学薬品に浸した術者は、体内組織に水銀などの鉱物も注入していたらしい。「一部の血管は完璧な保存状態だ。化学薬品だけではなく、別の技法を併用したに違いない」と研究チームのダリオ・ピオンビーノ・マスカリ氏は話す。 Photograph courtesy Dario Piombino-Mascali, EURAC, and Clinical

    頭部と肩部、イタリアのミイラ
  • 若すぎる花嫁、ベスト報道写真2011

    イエメン北西部のハッジャ州で、夫に寄り添う少女たち(2010年6月撮影)。ピンクの服を着たタハニ(Tahani)は6歳だった2年前に、当時25歳の夫マジェド(Majed)と結婚した。イエメンでは9歳未満の女児との結婚も可能で、半数近くが子ども時代から結婚生活を始める。 Photograph courtesy Stephanie Sinclair, VII/National Geographic/World Press Photo イエメン北西部のハッジャ州で、夫に寄り添う少女たち(2010年6月撮影)。ピンクの服を着たタハニ(Tahani)は6歳だった2年前に、当時25歳の夫マジェド(Majed)と結婚した。イエメンでは9歳未満の女児との結婚も可能で(※注)、半数近くが子ども時代から結婚生活を始める。※注: 一般的な古典イスラム法解釈では、女性は9歳で一人前となり、結婚も可能とされる。イス

    若すぎる花嫁、ベスト報道写真2011
  • 震災と希望、ベスト報道写真2011

    宮城県東松島市の自宅で、瓦礫の中から娘の卒業証書を見つけた女性(2011年4月3日撮影)。3月11日に東北地方を襲った巨大地震と津波によって、数十万人が家を失い、1万5000人以上が犠牲となった。 Photograph courtesy Yasuyoshi Chiba, AFP/World Press Photo 震災で倒壊した自宅の瓦礫の中から娘の卒業証書を見つけた女性の写真が2011年世界報道写真コンテスト「ニュースの中の人々」部門で第1位に選ばれた。 受賞した写真はAFP通信の千葉康由氏が撮影した「Aftermath of the Tsunami(津波の爪跡)」シリーズ。審査員を務めた米ナショナル ジオグラフィック誌の寄稿写真家ジョエル・サルトル氏は、「破壊されつくした極限状況の中でも希望の瞬間がある」と感想を述べた。 「人間の質を見た。強靱な精神、希望、思いやり、ユーモア。私たち

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  • 断崖のクマ、ベスト報道写真2011

    北極海、ロシア領ノバヤゼムリャ列島の断崖を進むホッキョクグマ。列島北部のオランスキー諸島(Ostrova Oranskie)で、ジェニー・E・ロス氏が2011年6月に撮影した。海氷の減少でアザラシを捕まえられず、海鳥の卵を狙うようになったという。2011年世界報道写真コンテスト「自然部門」で単写真の第1位を獲得した。 Photograph courtesy Jenny E. Ross, World Press Photo 北極海、ロシア領ノバヤゼムリャ列島の断崖を進むホッキョクグマ。列島北部のオランスキー諸島(Ostrova Oranskie)で、ジェニー・E・ロス氏が2011年6月に撮影した。海氷の減少でアザラシを捕まえられず、海鳥の卵を狙うようになったという。2011年世界報道写真コンテスト「自然部門」で単写真の第1位を獲得した。 ロス氏は2012年1月、ナショナルジオグラフィック ニ

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  • サイの角、ベスト報道写真2011

    アフリカのトゥゲラ私設保護区(Tugela Private Game Reserve)で向かい合うサイのオスとメス(2010年11月)。左のメスの角は、密猟者にチェーンソーで切り取られている。写真家ブレント・スタートン氏が米ナショナル ジオグラフィック誌の2012年3月号用に撮影した作品で、2011年世界報道写真コンテスト「自然部門」の組写真1位を獲得した。 Photograph courtesy Brent Stirton, Getty Images/National Geographic/World Press Photo 南アフリカのトゥゲラ私設保護区(Tugela Private Game Reserve)で向かい合うサイのオスとメス(2010年11月)。左のメスの角は、密猟者にチェーンソーで切り取られている。写真家ブレント・スタートン氏が米ナショナル ジオグラフィック誌の201

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  • イエメン争乱、ベスト報道写真2011

    イエメンの大統領退陣を求めるデモで負傷した身内を介抱する女性(2011年10月撮影)。ミケランジェロの彫刻「ピエタ」を彷彿とさせる痛ましい瞬間を、「New York Times」紙のサミュエル・アランダ氏がとらえた。2月10日、「2011年世界報道写真コンテスト」の大賞に選出されている。 Photograph courtesy Samuel Aranda, Corbis/NYT/World Press Photo イエメンの大統領退陣を求めるデモで負傷した身内を介抱する女性(2011年10月撮影)。ミケランジェロの彫刻「ピエタ」を彷彿とさせる痛ましい瞬間を、「New York Times」紙のサミュエル・アランダ氏がとらえた。2月10日、「2011年世界報道写真コンテスト」の大賞に選出されている。「心に訴える慈悲深い瞬間、そして今もなお続く大きな騒乱に翻弄される人間の姿をとらえている」と、

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  • 老夫婦の日常、ベスト報道写真2011

    アルゼンチンの首都ブエノス・アイレスにある自宅の居間で、65年間連れ添った伴侶の手を引く89歳のマルコス。アルツハイマー病をテーマにしたシリーズ写真が、2011年世界報道写真コンテスト「日常生活」部門の組写真1位を獲得した。 Photograph courtesy Alejandro Kirchuk, World Press Photo アルゼンチンの首都ブエノス・アイレスにある自宅の居間で、65年間連れ添った伴侶の手を引く89歳のマルコス。アルツハイマー病をテーマにしたシリーズ写真が、2011年世界報道写真コンテスト「日常生活」部門の組写真1位を獲得した。 タイトル「Never Let You Go(決して1人にしない)」のとおり、マルコスはのモニカが2007年にアルツハイマー病と診断されてから、2011年7月に息を引き取るまで片時も離れずに介護したという。 「遠く離れた戦場の写真でな

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  • 早暁の平壌、ベスト報道写真2011

    建物が密集する北朝鮮の首都平壌(ピョンヤン)の早朝(2011年10月撮影)。唯一ライトアップされているのは建国者、金日成主席の肖像画だ。 Photograph courtesy Damir Sagolj, Reuters/World Press Photo 建物が密集する北朝鮮の首都平壌(ピョンヤン)の早朝(2011年10月撮影)。唯一ライトアップされているのは建国者、金日成主席の肖像画だ。 死亡から20年近く経つが、北朝鮮の憲法には“永遠の主席”と記されている。国の統治を引き継いだ金正日総書記は2011年12月に急死。ボスニア・ヘルツェゴビナの写真家ダミール・サゴルジ(Damir Sagolj)氏がこの写真を撮影したのはその直前だった。 2011年世界報道写真コンテストで「日常生活」部門の単写真1位に選んだ理由について、審査員のジョエル・サルトル氏は次のようにコメントした。「北朝鮮の日常

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  • ソチの歌手、ベスト報道写真2011

    ロシア南西部のリゾート都市ソチで歌手活動をしているマリカ・バジュル(Marika Bajur)さん。2014年冬季オリンピックの開催地で撮影されたシリーズが、2011年世界報道写真コンテスト「アート&エンターテインメント」部門の組写真1位に輝いた。 Photograph courtesy Rob Hornstra, Sochi Project/World Press Photo ロシア南西部のリゾート都市ソチで歌手活動をしているマリカ・バジュル(Marika Bajur)さん。2014年冬季オリンピックの開催地で撮影されたシリーズが、2011年世界報道写真コンテスト「アート&エンターテインメント」部門の組写真1位に輝いた。 観光客目当てのソチのレストランは、集客を見込んでライブミュージシャンを定期的に雇っている。オランダ人写真家ロブ・ホルンストラ(Rob Hornstra)氏は、「ソチ・プ

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  • チャマココ語、絶滅危機言語の辞書

    南米パラグアイのプエルト・ディアナ(Puerto Diana)に暮らすチャマココ(Chamacoco)族のシャーマン、ティト・ペレス(Tito Perez)さん。羽根のネックレスや頭飾りなど、伝統的な衣装を身にまとっている。チャマココ族の言語は、2月17日に公開された危機言語のオンライン辞書「Talking Dictionaries(話す辞書)」に登録されている。 Photograph by Chris Rainier, National Geographic 南米パラグアイのプエルト・ディアナ(Puerto Diana)に暮らすチャマココ(Chamacoco)族のシャーマン、ティト・ペレス(Tito Perez)さん。羽根のネックレスや頭飾りなど、伝統的な衣装を身にまとっている。 チャマココ族の言語は、2月17日に公開された危機言語のオンライン辞書「Talking Dictionarie

    チャマココ語、絶滅危機言語の辞書
  • パナウ語、絶滅危機言語の辞書

    パプアニューギニアで「Talking Dictionaries(話す辞書)」プロジェクトの取材をする言語学者グレゴリー・アンダーソン氏(右)。相手のジョン・アギド(John Agid)さんは、話者約600人で絶滅が危ぶまれるマトゥカル・パナウ(Matukar Panau)語を使うことができる。 Photograph by Chris Rainier, National Geographic パプアニューギニアで「Talking Dictionaries(話す辞書)」プロジェクトの取材をする言語学者グレゴリー・アンダーソン氏(右)。相手のジョン・アギド(John Agid)さんは、話者約600人で絶滅が危ぶまれるマトゥカル・パナウ(Matukar Panau)語を使うことができる。 マトゥカルという漁村は、非常に多くの言語が入り交じる地域に位置する。パプアニューギニアではクレオール語と英語

    パナウ語、絶滅危機言語の辞書
  • レモ語、絶滅危機言語の辞書

    古くから伝わる独特な衣装に身を包んだインドの少数民族。彼らが話すレモ(Remo)語は非常に長い歴史を持ち、言語学者の関心が高い。失われつつある言語を記録してオンライン上に保管するプロジェクト「Talking Dictionaries(話す辞書)」の対象にも選ばれている。 Photograph by Chris Rainier, National Geographic 古くから伝わる独特な衣装に身を包んだインドの少数民族。彼らが話すレモ(Remo)語は非常に長い歴史を持ち、言語学者の関心が高い。失われつつある言語を記録してオンライン上に保管するプロジェクト「Talking Dictionaries(話す辞書)」の対象にも選ばれている。 同プロジェクトに携わる言語学者のグレゴリー・アンダーソン氏は、「かなり古くからインドに伝わる言語で、ヒンズー教よりも長い歴史がある」と話す。 一つの言語が失わ

    レモ語、絶滅危機言語の辞書
  • オンラインで公開、絶滅危機言語の辞書

    パプアニューギニアで消滅の危機にあるマトゥカル・パナウ(Matukar Panau)語を記録する言語学者デイビッド・ハリソン氏(中央)。紫色の服を着た男性は、協力したネイティブスピーカーのジョン・アギド(John Agid)さん。マトゥカル・パナウ語は、2月17日に発表された「Talking Dictionaries(話す辞書)」プロジェクトの対象となった8言語の1つである。同プロジェクトは、失われつつある言語の音声をオンラインに保存し、誰でも利用可能にする試みだ。 Photograph by Chris Rainier, National Geographic パプアニューギニアで消滅の危機にあるマトゥカル・パナウ(Matukar Panau)語を記録する言語学者デイビッド・ハリソン氏(中央)。紫色の服を着た男性は、協力したネイティブスピーカーのジョン・アギド(John Agid)さん。

    オンラインで公開、絶滅危機言語の辞書
  • バレンタインデー:ルーツと愛の科学

    バレンタインデーのルーツとされる古代ローマ、ルペルカリア祭の多産を祈る儀式で女性を打つ祭司(左下)。 Illustration by Labrousse Del., Mary Evans Picture Library/Alamy 今年もやってきたバレンタインデーだが、その起源はどこにあるのだろうか。また、毎年多くの人がこのイベントに夢中になるのはなぜだろう。バレンタインデーの由来や愛の脳科学について探ってみよう。◆バレンタインデーの歴史:ルーツはローマ時代 バレンタインデーはハロウィーン以上に盛り上がる“ホールマーク・ホリデー”(商業的に重要な祝日)だが、もともとはキリスト教とは無関係の祝祭に起源がある。 コロラド大学ボルダー校の古典学者ノエル・レンスキ氏によると、ローマ帝国では毎年、男性が裸になり、多産を祈願して、ヤギや犬の皮でできたムチで未婚女性をたたくという騒々しい祭りが開かれてい

    バレンタインデー:ルーツと愛の科学
  • 炎を駆ける人馬、1月ベストフォト

    燃えさかる炎の中を駆け抜ける人馬。スペインのサン・バルトロメ・デ・ピナレス(San Bartolome de Pinares)村で2012年1月16日に撮影された。ピナレス村では「聖アントニオの日」の前夜、動物の守護聖人を祝福して村人数百人が馬で通りを走り抜ける。 Photograph by Gregorio Borgia, AP 燃えさかる炎の中を駆け抜ける人馬。スペインのサン・バルトロメ・デ・ピナレス(San Bartolome de Pinares)村で2012年1月16日に撮影された。ピナレス村では「聖アントニオの日」の前夜、動物の守護聖人を祝福して村人数百人が馬で通りを走り抜ける。 500年以上の歴史を持つ伝統行事「ルミナリアス(Luminarias)」では、火の中を通過すると馬が清められ、今年1年間の安全がもたらされると信じられている。 ◆ベストフォト選考理由 「写真の芸術的価

    炎を駆ける人馬、1月ベストフォト
  • ズボンを待ちながら、1月ベストフォト

    インド、ニューデリーの路上で、男性が破れたズボンの補修を仕立屋に頼んでいる(2012年1月19日撮影)。 Photograph by Kevin Frayer, AP インド、ニューデリー。路上の仕立屋に破れたズボンの補修を頼み、仕上がりを待つ男性(2012年1月19日撮影)。◆ベストフォト選考理由 「良い写真は想像力を刺激してくれる。後ろに干してある長方形の毛布と、階段の段差が生む視覚効果がまず目を引く。そうして眺めていると、やがてズボンを脱いだ男性に行き着く。シンプルな構図だが、面白いストーリーを秘めた一枚だ」、ドーン・ディークス氏(フォト共同編集者)。 Photograph by Kevin Frayer, AP

    ズボンを待ちながら、1月ベストフォト
  • ホルムズ海峡封鎖、代替輸送経路は?

    スペースシャトル「コロンビア」から見たホルムズ海峡(1991年6月撮影)。ペルシア湾(上)とオマーン湾(下)の間の狭い海峡で、世界の原油の約20%が通過する。右はイラン国土、左はアラビア半島。 Photograph from NASA/Corbis 核開発計画を巡って欧米諸国との対立を深めるイラン。経済制裁への連携を強める各国に対抗して、世界で最も重要な原油の輸送経路「ホルムズ海峡」の封鎖という強硬手段に出る構えを見せている。 軍事戦略家や外交専門家の間には、海峡が封鎖されれば世界経済の混乱が数十年間続くとの懸念が広がっている。一方、原油の代替輸送経路の確保はほとんど進んでいないのが現状だ。 先週、イスラエルのエフード・バラック国防相がイランの核開発計画中止の期限は差し迫っているとの警告を発し、緊張が一気に高まった。イランは自国のウラン濃縮施設について、平和利用が目的であり、核兵器製造用で

    ホルムズ海峡封鎖、代替輸送経路は?
  • モルモット、16世紀欧州でペット化

    ブラバント公国(現在のベルギー北部)の画家ヤン・ブリューゲル(父)が1615年に描いた作品。中央下部に多色種のモルモットが確認できる。 Painting by Jan Brueghel the Elder, Stapleton Collection/Corbis モルモットの飼育がヨーロッパで広まったのは16世紀らしい。南アメリカに渡ったスペイン人のコンキスタドール(征服者)が持ち帰った小さな“珍品”は、すぐにペットとして幅広い階級で愛されたようだ。 2007年、ベルギー南部の町モンスで、かつての中流階級の屋敷からモルモットの骨が発見された。裏庭の穴蔵に収められていたという。モンスはかつてスペイン帝国の版図に含まれていた歴史を持つ。 研究チームのリーダーでブリュッセルにあるベルギー王立自然史博物館所属のファビエンヌ・ピジエル(Fabienne Pigiere)氏は、「放射性炭素年代測定で骨

    モルモット、16世紀欧州でペット化
  • カタツムリの殻、エジプトの鳥ミイラ

    エジプトの古代遺跡アビドスから発掘された鳥のミイラ。アフリカクロトキの成体で、生贄として神に捧げられたと考えられている。体内にはカタツムリの殻が確認されており、死後のエサとして意図的に詰められたようだ。このミイラは現在アメリカのイェール大学に保管中で、今回CTスキャンデータから立体化された。 Image courtesy Andrew Wade and Yale Peabody Museum (item ANT.006924.004) アフリカクロトキのミイラの体内で発見されたカタツムリの殻(CTスキャン画像)。神々の使者として死後の旅へ出発する際に、古代エジプト人が与えた“事”の一部だという。 今回の調査では、魚などの小型脊椎動物や穀物なども確認されている。研究チームを率いたアンドリュー・ウェイド氏によると、動物、人間を問わず、ミイラ化する際にべ物を詰めていたケースは今回が初めてだと

    カタツムリの殻、エジプトの鳥ミイラ
  • 胃にカタツムリも、エジプトの鳥ミイラ

    エジプトの古代遺跡アビドスから発掘された鳥のミイラ。アフリカクロトキの成体で、生贄として神に捧げられたと考えられている。体内にはカタツムリの殻が確認されており、死後のエサとして意図的に詰められたようだ。このミイラは現在アメリカのイェール大学に保管中で、今回CTスキャンデータから立体化された。 Image courtesy Andrew Wade and Yale Peabody Museum (item ANT.006924.004) エジプトの古代遺跡アビドスから発掘された鳥のミイラ。アフリカクロトキの成体で、生贄として神に捧げられたと考えられている。体内にはカタツムリの殻が確認されており、死後のエサとして意図的に詰められたようだ。このミイラは現在アメリカのイェール大学に保管中で、今回CTスキャンデータから立体化された。 研究チームのリーダーを務めたカナダ、ウェスタンオンタリオ大学のアン

    胃にカタツムリも、エジプトの鳥ミイラ
  • 体内に穀物、エジプトの鳥ミイラ

    新たな研究によると、古代エジプト人は動物のミイラを“満腹”にしてから死後の旅へ出発させたという。麻の布で包まれた写真のミイラはアフリカクロトキの幼鳥で、カナダ、モントリオールのマギル大学に保管されている。2500年前まで遡るこのミイラをCTスキャンしたところ、体内で穀物が確認された。 Photograph courtesy Andrew Nelson, University of Western Ontario 新たな研究によると、古代エジプト人は動物のミイラを“満腹”にしてから死後の旅へ出発させたという。 麻の布で包まれた写真のミイラはアフリカクロトキの幼鳥で、カナダ、モントリオールのマギル大学に保管されている。2500年前まで遡るこのミイラをCTスキャンしたところ、体内で穀物が確認された。神々の使者として任務を全うできるよう、死後に詰められたと見られる。今回の調査では合計4体の標が分

    体内に穀物、エジプトの鳥ミイラ
  • 北アメリカ先住民、起源はシベリアか

    アルタイ山脈を馬で移動するカザフ族の鷹匠(たかじょう)。 Photograph by David Edwards, National Geographic アメリカ先住民の起源はシベリア南西部の山岳地帯にあることが、最新の遺伝子調査によって明らかになった。 調査を行ったのはアメリカ、ペンシルバニア州フィラデルフィアにあるペンシルバニア大学で人類学を研究するセオドア・シューア(Theodore Schurr)氏のチーム。アルタイ山脈一帯に居住する複数の民族を対象にDNAを分析したところ、ある特徴的な遺伝子変異を発見。現代の北アメリカ先住民と共通する変異であることが判明した。 シューア氏によると、シベリア人(シベリアに住むモンゴロイド系住民を指す)とアメリカ先住民とが近縁関係にあるという説は、大航海時代にアメリカ大陸を訪れたヨーロッパの探検家たちの指摘まで溯る。探検家の中にはアジアにも足を踏み

    北アメリカ先住民、起源はシベリアか
  • 腫瘍の死、ベスト科学画像2011

    2011年度ベスト・サイエンス・イメージ イラスト部門選外佳作:「腫瘍の死 - 乳癌細胞の細胞受容体」(Tumor death-cell receptors on breast cancer cell) Illustration courtesy E. Paul and Q. Paul, Echo Medical Media, and R. Gamble, UAB Insight 2011年度ベスト・サイエンス・イメージ イラスト部門選外佳作:「腫瘍の死 - 乳癌細胞の細胞受容体」(Tumor death-cell receptors on breast cancer cell) 緑色のT字型をした薬物分子が、「触手を持つ恐ろしげな姿」の乳癌細胞と戦っている。エコー・メディカル・メディア(Echo Medical Media)社のエミコ・ポール氏が手がけたこのイラストは、2011年度国際科

    腫瘍の死、ベスト科学画像2011
  • 謎の穴、南北戦争の潜水艦

    アメリカ南北戦争時の南軍の潜水艦H・L・ハンリー。船首付近の長方形開口部(写真中央)は、保存作業の一環としてパネルを外した跡である。しかし、右端の展望塔に開いたグレープフルーツ大の穴は、引き上げ前から存在した。「北軍の艦船フーサトニックを襲撃した際にできたのかもしれない」と考古学者のマリア・ジェイコブソン氏は述べる。 Photograph by Randall Hill, Reuters アメリカ南北戦争時の南軍の潜水艦H・L・ハンリー。船首付近の長方形開口部(写真中央)は、保存作業の一環としてパネルを外した跡である。しかし、右端の展望塔に開いたグレープフルーツ大の穴は、引き上げ前から存在した。「北軍の艦船フーサトニックを襲撃した際にできたのかもしれない」と考古学者のマリア・ジェイコブソン氏は述べる。「敵艦の銃弾が展望塔に命中した可能性があるが、銃弾は艦内から発見されていない」。ハンリーは

    謎の穴、南北戦争の潜水艦
  • 人力で推進、南北戦争の潜水艦

    潜水艦「H・L・ハンリー」の推進用クランクを動かす乗組員(イメージ図)。一人ずつ中に入り、各自の持ち場まではしゃがんで歩くか這って進んだという。舵を握る艦長は最後に乗り込んだ。アメリカ南北戦争で使用されたハンリーは2000年に海底から引き上げられ、乗組員8人の遺骸が確認された。脱出を試みた形跡は見つかっていない。乗組員は意識を失い、酸素不足で窒息死したと考えられている。 Illustration by Don Foley, National Geographic 潜水艦「H・L・ハンリー」の推進用クランクを動かす乗組員(イメージ図)。一人ずつ中に入り、各自の持ち場まではしゃがんで歩くか這って進んだという。舵を握る艦長は最後に乗り込んだ。 アメリカ南北戦争で使用されたハンリーは2000年に海底から引き上げられ、乗組員8人の遺骸が確認された。脱出を試みた形跡は見つかっていない。乗組員は意識を失

    人力で推進、南北戦争の潜水艦
  • 修復が完了、南北戦争の潜水艦

    アメリカ南北戦争で沈没した南軍の潜水艦H・L・ハンリー。歴史上初めて敵艦を撃沈した潜水艦だ。引き上げ後、サウスカロライナ州ノースチャールストンのクレムゾン大学ウォーレン・ラッシュ保存センター(Warren Lasch Conservation Center)で11年におよぶ保存・復元作業が実施されていた。 Photograph by Randall Hill, Reuters アメリカ南北戦争で沈没した南軍の潜水艦H・L・ハンリー。歴史上初めて敵艦を撃沈した潜水艦だ。引き上げ後、サウスカロライナ州ノースチャールストンのクレムゾン大学ウォーレン・ラッシュ保存センター(Warren Lasch Conservation Center)で11年におよぶ保存・復元作業が実施されていた。 ハンリーは1864年、サウスカロライナ州チャールストンの沖合で北軍の艦船フーサトニックを撃沈したが、その直後に自

    修復が完了、南北戦争の潜水艦
  • 敵艦を撃沈、南北戦争の潜水艦

    アメリカ南北戦争末期の1864年2月17日夜、サウスカロライナ州チャールストン沖合で敵を襲撃する南軍の人力潜水艦H・L・ハンリー。船首から突き出た鉄棒の先端に外装水雷を装着し、目標に引っ掛けた後にすかさず後退を始める。しばらくの後、水雷が爆発し、北軍の木造蒸気帆船フーサトニックは沈没。ハンリーは敵を撃沈した史上初の潜水艦となった。 Illustration by Richard Schlecht, National Geographic アメリカ南北戦争末期の1864年2月17日夜、サウスカロライナ州チャールストン沖合で敵を襲撃する南軍の人力潜水艦H・L・ハンリー。船首から突き出た鉄棒の先端に外装水雷を装着し、目標に引っ掛けた後にすかさず後退を始める。しばらくの後、水雷が爆発し、北軍の木造蒸気帆船フーサトニックは沈没。ハンリーは敵を撃沈した史上初の潜水艦となった。 攻撃の直前、フーサトニッ

    敵艦を撃沈、南北戦争の潜水艦
  • グラウンドホッグデー2012予言発表

    2月2日、アメリカ、ペンシルバニア州にある小さな町パンクサトーニーで毎年恒例の「グラウンドホッグデー(Groundhog Day)」が開催された。写真は2012年度のグラウンドホッグデー、世話係のジョン・グリフィス氏の肩に登る世界一有名なグラウンドホッグ「パンクサトーニーのフィル」。フィルの予言では、アメリカの冬はあと6週間続くことになるという。 Photograph by Jeff Swensen, Getty Images 2月2日、アメリカ、ペンシルバニア州にある小さな町パンクサトーニーで毎年恒例の「グラウンドホッグデー(Groundhog Day)」が開催された。 早朝に花火が上がり、町の郊外にあるゴブラーズノブ(Gobbler's Knob)という森の中の広場に、特別会員グループ「インナーサークル(Inner Circle)」の面々が登場。そして、副会長のマイク・ジョンストン氏が

    グラウンドホッグデー2012予言発表
  • グラウンドホッグデー、今年も開催

    リスの一種、グラウンドホッグ(ウッドチャック)の資料写真。 Photograph by Joel Sartore, National Geographic 毎年2月2日にペンシルバニア州の小さな町パンクサトーニーで行われる一大イベント、「グラウンドホッグデー(Groundhog Day)」の季節が今年もやってきた。2012年で126周年を迎え、北アメリカの恒例行事としてすっかり定着。海外からの観光客も増えているという。「ロシアドイツ、イギリスからも見に来る」と、地元紙「The Punxsutawney Spirit」の編集主任トム・チェーピン氏は語る。「毎年こんなことをやっているなんて、信じられない人もいるかもしれない。わざわざ冬の寒空の下に出て、リスが巣穴(厳密には切り株を模した仮の巣穴)から顔を出すのを待っているんだからね。酔狂な話だよ」。 主役は「パンクサトーニーのフィル」という名

    グラウンドホッグデー、今年も開催
  • ストーンヘンジの原型? 英北部の遺跡

    スコットランドのネス・オブ・ブロッガー遺跡。現時点で1割前後の発掘に留まる。 Photograph courtesy Hugo Whymark, ORCA イギリス北部の島で発掘された石器時代の儀式用建造物群は、ストーンヘンジより古い可能性が浮上した。 この海辺の遺跡はネス・オブ・ブロッガー(「ブロッガー岬」の意)。スコットランドのオークニー諸島で最大のメインランド島にあり、2002年に発見された。 最近になり放射性炭素年代測定で木の燃えかすを調べたところ、この岬に人の手が入ったのは紀元前3200年ごろと判明。巨大な壁に囲まれた空間に100近い建造物が築かれていったことがわかった。 一方、イギリス南部のソールズベリー平原にあるストーンヘンジでは、初期の土塁は紀元前3000年ごろに現れた。あの有名な石が置かれ始めたのは、さらに約500年後のことだ。 また、ネス・オブ・ブロッガーで行われた儀式

    ストーンヘンジの原型? 英北部の遺跡
  • コスタ・コンコルディア、衛星写真

    イタリアのジリオ島沿岸で1月13日に座礁した豪華客船コスタ・コンコルディア号の衛星写真(1月17日撮影)。船体の片側を海中に沈めて横たわっている。 Photograph from DigitalGlobe via European Pressphoto Agency イタリアのジリオ島沿岸で1月13日に座礁した豪華客船コスタ・コンコルディア号の衛星写真(1月17日撮影)。船体の片側を海中に沈めて横たわっている。 1月20日には、救助活動が荒波によって一時中断された。岩の浅瀬に乗り上げた船体が、荒波によって浅瀬から少し動いたためだ。この動きによって船が深い海中へ滑り落ち、救助隊員が道連れになることを関係者は懸念している。 「New York Times」紙が、イタリア海軍のアレッサンドロ・ブソネロ中佐の話として伝えたところによると、船体は2時間に2.5センチずつ動いているという。 Photo

    コスタ・コンコルディア、衛星写真
  • 古代のポップコーン、ペルーで出土

    ペルーで出土した、古代の軸付きトウモロコシ。写真左上の軸にはポップコーン状の実がついている。 Diagram courtesy Tom Dillehay 一説には1月19日とも言われる全米ポップコーンの日に合わせるように、現在のペルー付近に住む古代人がこれまでの説より2000年も前からこのスナックをべていたことが、新たな研究でわかった。 現在のペルー沿岸部に住んでいた古代人が、最も昔では6700年前からトウモロコシを調理していたことが、このほど発掘されたペルー北部の海岸地帯にあるパレドネス(Paredones)、ワカ・プリエタ(Huaca Prieta)の両遺跡の発掘物の分析から判明した。ここからはトウモロコシの軸、皮、穂、茎が出土している。 これまでも約5000年前にトウモロコシがべられていた証拠は見つかっていたが、これらはほとんどが微化石と呼ばれる形態であり、顕微鏡レベルの大きさの

    古代のポップコーン、ペルーで出土
  • “閏週”で曜日を固定する新しい暦

    ローマ教皇グレゴリウス13世は1582年、ユリウス暦の改正にあたる委員会で議長を務めた。 Painting by G. Dagli Orti, De Agostini/Getty Images 休暇がもう1週間ほしいという人に朗報だ。1年364日で毎年曜日が変わらず、5~6年に一度“追加の週”を設ける暦が提案されており、これが数年中に採用されれば、2017年の年末には“おまけの1週間”がついてくる。「ハンキ=ヘンリー・パーマネント・カレンダー」(Hanke-Henry Permanent Calendar)という新しい暦では、このような“閏週”が5~6年に1度めぐってくる。 数年に一度、12月の後に追加の1週間を設けることで月と季節のずれが補正され、暦のそれ以外の部分は毎年ずっと変わらないという。 この暦は1年364日だが、地球の公転日数は365.2422日であるため、追加の1週間を5~6

    “閏週”で曜日を固定する新しい暦
  • 船長のモラル、客船事故の教訓

    イタリア中部のジリオ島沿岸から数百メートルの地点で座礁事故を起こした豪華客船、コスタ・コンコルディア号(1月16日撮影)。船体の片側が海中に沈んでおり、被害の全貌はいまだ明らかになっていない。有名な100年前のタイタニック号沈没をはじめ、過去の豪華客船事故を教訓に、乗客の安全確保に向けた新たな対策を求める動きが強まっている。 Photography by Gamma-Rapho via Getty Images 【 コスタ・コンコルディア 2012年 】 イタリア中部のジリオ島沿岸から数百メートルの地点で座礁事故を起こした豪華客船、コスタ・コンコルディア号(1月16日撮影)。船体の片側が海中に沈んでおり、被害の全貌はいまだ明らかになっていない。有名な100年前のタイタニック号沈没をはじめ、過去の豪華客船事故を教訓に、乗客の安全確保に向けた新たな対策を求める動きが強まっている。 イタリアのコ

    船長のモラル、客船事故の教訓
  • 救命ボート、客船事故の教訓

    豪華客船タイタニック号の手すりから“さびのつらら”が伸びている(資料写真)。イギリス、サウサンプトンからアメリカ、ニューヨークまでの処女航海に出たタイタニックは氷山と衝突、翌日の1912年4月15日に北大西洋の海底へ沈んだ。 Photograph by Emory Kristof, National Geographic 【 タイタニック 1912年 】 豪華客船タイタニック号の手すりから“さびのつらら”が伸びている(資料写真)。イギリス、サウサンプトンからアメリカ、ニューヨークまでの処女航海に出たタイタニックは氷山と衝突、翌日の1912年4月15日に北大西洋の海底へ沈んだ。 この事故による死者は1500人を超える。主な原因は、当時タイタニックを所有していた海運企業ホワイト・スター・ラインが、乗船者の半数分しか救命ボートを用意していなかったことだ。 2012年3月に出版される『Titani

    救命ボート、客船事故の教訓
  • 防火対策、客船事故の教訓

    黒こげの無惨な姿でジャマイカのモンテゴ・ベイに入港するクルーズ船、スター・プリンセス号(2006年3月撮影)。 Photograph from Reuters TV 【 スター・プリンセス 2006年 】 黒こげの無惨な姿でジャマイカのモンテゴ・ベイに入港するクルーズ船、スター・プリンセス号(2006年3月撮影)。 スター・プリンセスの火災は客室バルコニーで発生。原因はタバコの吸殻だが、悪条件が重なったようだ。「バルコニーに敷かれたマットは燃えやすい合成ゴム製だった。炎はバルコニー越しに次々と燃え移りデッキの端まで達すると、上の2つのデッキにも広がった」とクルーズ史研究者ジョン・マックストーン・グラハム氏は話す。 火災が鎮火したスター・プリンセスは修復工事の後、現在も運航している。すべてのバルコニーにはスプリンクラーが設置されたという。国連の国際海事機関(IMO)はこの事故をきっかけに、客

    防火対策、客船事故の教訓
  • ずさんな避難対応、客船事故の教訓

    大量の放水を受ける沿岸クルーズ客船、モロ・キャッスル号。最初の出火が確認されたのは、1934年9月8日の夜明け前だった。モロ・キャッスルはアメリカ、ニューヨーク市からキューバの首都ハバナへ向け航海中だったが、ニュージャージー州アズベリーパーク沖で炎上し、引き上げられた。 Photography by Gamma-Rapho via Getty Images 【 モロ・キャッスル 1934年 】 大量の放水を受ける沿岸クルーズ客船、モロ・キャッスル号。最初の出火が確認されたのは、1934年9月8日の夜明け前だった。モロ・キャッスルはアメリカ、ニューヨーク市からキューバの首都ハバナへ向け航海中だったが、ニュージャージー州アズベリーパーク沖で炎上し、引き上げられた。 2012年1月13日にイタリアで発生したコスタ・コンコルディア号の座礁事故と同様に、「残骸と化したモロ・キャッスルが海岸からはっき

    ずさんな避難対応、客船事故の教訓
  • 南極航海、客船事故の教訓

    1969年に南極海を初めて航行したクルーズ船、MSエクスプローラー号。2007年11月に氷山と衝突し、この極寒の海へ沈没した最初の船となった。 Photograph from Chilean Navy/Reuters 【 MSエクスプローラー 2007年 】 1969年に南極海を初めて航行したクルーズ船、MSエクスプローラー号。2007年11月に氷山と衝突し、この極寒の海へ沈没した最初の船となった。 乗員乗客154人全員が救出されたが、この事故により南極海のクルージングは乗客100人までと定められた。 客船の歴史に詳しいジョン・マックストーン・グラハム氏は、「制限の理由の1つは、氷山衝突時の衝撃に耐えられる強度を持った大型船はほとんどないことだ。船体があまりにも弱い」と述べる。 数百人から数千人の乗客がいた場合、避難も困難を極める。「非常に寒く、海も荒れている可能性がある。その状況下で、多

    南極航海、客船事故の教訓
  • 区画分けの設計、客船事故の教訓

    1914年、カナダ、ケベック・シティー近郊のセントローレンス川で沈没したカナダ船籍客船、エンプレス・オブ・アイルランド号。 Illustration from Hulton Archive/Getty Images 【 エンプレス・オブ・アイルランド 1914年 】 1914年、カナダ、ケベック・シティー近郊のセントローレンス川で沈没したカナダ船籍客船、エンプレス・オブ・アイルランド号。 エンプレス・オブ・アイルランドは同年5月29日、霧の濃い朝にモントリオール港を出港した。ところがノルウェー船籍の貨物船、ストールスタッド号と衝突して船体中央部を損傷。瞬く間に海中へ沈み、1000人以上の犠牲者を出した。 客船の歴史に詳しいジョン・マックストーン・グラハム氏は、「左舷を下にして傾き、石のように海底へと向かっていった」と語る。 同氏によると、短時間で沈没してしまった原因は区画分けにあるという。

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  • 記録写真、スコット南極探検百周年

    南極、マクマード湾近くの氷山に立つ写真家ハーバート・ポンティング(1911年撮影)。極度の低温で口ひげが凍っている。ポンティングは1910~1912年に行われたテラ・ノヴァ号の南極探検に記録スタッフとして随行していた。 Photograph by Herbert G. Ponting, National Geographic 南極、マクマード湾近くの氷山に立つ写真家ハーバート・ポンティング(1911年撮影)。極度の低温で口ひげが凍っている。ポンティングは1910~1912年に行われたテラ・ノヴァ号の南極探検に記録スタッフとして随行していた。 探検隊を率いたのはイギリス人のロバート・ファルコン・スコットで、1912年1月17日に南極点へ到達。今年は100周年にあたり、ポンティングの撮影した写真は一行の姿を鮮やかに伝える貴重な歴史記録となった。一部はナショナル ジオグラフィックの資料庫に保存さ

    記録写真、スコット南極探検百周年
  • エヴァンス岬、スコット南極探検百周年

    100年前の1912年1月17日、イギリス人探検家ロバート・ファルコン・スコット率いるテラ・ノヴァ号の探検隊が南極点へ到達した。写真は前年1月7日に南極のエヴァンス岬へ上陸した直後の一行。テントを張り、昼を取っている。ロス棚氷に面しているエヴァンス岬は、遠征拠点に都合が良かった。フランスとほぼ同じ面積の南極最大の棚氷で、探検の出発地点となる。 Photograph by Herbert G. Ponting, National Geographic 100年前の1912年1月17日、イギリス人探検家ロバート・ファルコン・スコット率いるテラ・ノヴァ号の探検隊が南極点へ到達した。写真は前年1月7日に南極のエヴァンス岬へ上陸した直後の一行。テントを張り、昼を取っている。 ロス棚氷に面しているエヴァンス岬は、遠征拠点に都合が良かった。フランスとほぼ同じ面積の南極最大の棚氷で、探検の出発地点とな

    エヴァンス岬、スコット南極探検百周年
  • 天体観測、スコット南極探検百周年

    1911年6月8日、望遠鏡で空を見上げるスコット南極探検隊のエドワード・エヴァンズ副隊長。木星による恒星の掩蔽(えんぺい:木星が地球と恒星の間を通過する際に恒星が隠される現象)を観測している。テラ・ノヴァ号の探検隊は、さまざまな気象現象も目にしていた。オーロラは特に素晴らしかったようだ。 Photograph by Herbert G. Ponting, National Geographic 1911年6月8日、望遠鏡で空を見上げるスコット南極探検隊のエドワード・エヴァンズ副隊長。木星による恒星の掩蔽(えんぺい:木星が地球と恒星の間を通過する際に恒星が隠される現象)を観測している。 テラ・ノヴァ号の探検隊は、さまざまな気象現象も目にしていた。オーロラは特に素晴らしかったようだ。 1911年5月、ロバート・スコット隊長は次のように記している。「今夜、かつてないほど見事なオーロラを目撃した。

    天体観測、スコット南極探検百周年
  • 日本の講義、スコット南極探検百周年

    滞在中に撮影した写真のスライドショーを南極探検隊員に披露するイギリス人写真家ハーバート・ポンティング(1911年5月29日撮影)。探検隊を率いたロバート・ファルコン・スコットは、日誌に次のように記している。「今晩はポンティングが日について、素晴らしい画像とともに魅力的なレクチャーをしてくれた。彼は日の人々の芸術性を語るときに最も幸せそうで、最大限の共感を示していた」。 Photograph by Herbert G. Ponting, National Geographic 日滞在中に撮影した写真のスライドショーを南極探検隊員に披露するイギリス人写真家ハーバート・ポンティング(1911年5月29日撮影)。 探検隊を率いたロバート・ファルコン・スコットは、日誌に次のように記している。「今晩はポンティングが日について、素晴らしい画像とともに魅力的なレクチャーをしてくれた。彼は日

    日本の講義、スコット南極探検百周年
  • ダッカの満員列車、旅行写真2011

    バングラデシュの首都ダッカ北部を走る“すし詰め”“鈴なり”の列車。屋根や出入口にも乗客が溢れかえっている。シンガポールの写真家、ヤオ・クワン・イオ(Yeow Kwang Yeo)氏がイスラム教の大集会当日に撮影。イギリスの旅行写真家グループが主催する「トラベル・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー(TPOTY)2011」の「ベスト単写真(Best Single Image)」部門で最優秀作品に選ばれた。 Photograph courtesy Yeow Kang Yeo, www.tpoty.com バングラデシュの首都ダッカ北部を走る“すし詰め”“鈴なり”の列車。屋根や出入口にも乗客が溢れかえっている。シンガポールの写真家、ヤオ・クワン・イオ(Yeow Kwang Yeo)氏がイスラム教の大集会当日に撮影。イギリスの旅行写真家グループが主催する「トラベル・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー

    ダッカの満員列車、旅行写真2011
  • 氷山に立つ、旅行写真2011

    小さな氷山に登り、地形を調査する研究者。北極圏カナダ、ヌナブト準州に属するコーンウォリス島で写真家マーティン・ハートレー(Martin Hartley)氏が撮影した。「トラベル・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー(TPOTY)2011」コンテストの「冒険心(Spirit of Adventure)」部門第2位に選ばれている。 Photograph courtesy Martn Hartley, www.tpoty.com 小さな氷山に登り、地形を調査する研究者。北極圏カナダ、ヌナブト準州に属するコーンウォリス島で写真家マーティン・ハートレー(Martin Hartley)氏が撮影した。「トラベル・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー(TPOTY)2011」コンテストの「冒険心(Spirit of Adventure)」部門第2位に選ばれている。 ナショナル ジオグラフィック トラベラー誌のフ

    氷山に立つ、旅行写真2011
  • 求婚の儀式、旅行写真2011

    パプアニューギニアの中央高地、求婚の儀式で親密な時間を共有する男女。写真家ティモシー・アレン氏の作品で、「トラベル・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー(TPOTY)2011」コンテストの「異国情緒(Exotic)」部門第2位を獲得した。 Photograph courtesy Timothy Allen, www.tpoty.com パプアニューギニアの中央高地、求婚の儀式で親密な時間を共有する男女。写真家ティモシー・アレン氏の作品で、「トラベル・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー(TPOTY)2011」コンテストの「異国情緒(Exotic)」部門第2位を獲得した。 ナショナル ジオグラフィック トラベラー誌のフォト編集委員、クリスタ・ロッソー(Krista Rossow)氏は次のようにコメントする。「深い絆で結ばれた二人が美しい。構図も見事で、色鮮やかな衣装やビーズの首飾りが縁取りとなっ

    求婚の儀式、旅行写真2011
  • パナマの黄金文化、新たな遺跡を発見

    パナマ中部、エル・カーニョの首長の墓で見つかった金の装飾品。タツノオトシゴのペンダントも確認できる。 Photograph by David Coventry, National Geographic 中米パナマで新たに発見された墳墓から、1000年前の金や宝石が出土した。先住民がフグによって絶命した形跡も残っているという。黄金の装飾品を身にまとった人々が築いた謎の「コクレ(Cocle)文化」を解明する手掛かりとして期待されている。「成果は非常に大きい。すぐそばのシティオ・コンテ(Sitio Conte)遺跡が調査された1930年代以降では、コクレ文化に関する最も有意義なプロジェクトだろう」と述べるのはアメリカ、カンザス大学の人類学者ジョン・フープス氏。シティオ・コンテはパナマ中部に位置し、黄金の副葬品が大量に出土している。 コクレ文化に関する明確な証拠が報告されたのはシティオ・コンテから

    パナマの黄金文化、新たな遺跡を発見
  • ストーンヘンジ石材、未知の産地が判明

    ウェールズにあるブルーストーンの露頭、クレイグ・ロス・ア・フェリン(Craig Rhos-y-Felin)。ストーンヘンジの材料と考えられている。 Photograph courtesy National Museum of Wales イギリスの巨石遺跡ストーンヘンジの中心で円を描く火山岩「ブルーストーン」。その一部が、約260キロ離れたウェールズにある露頭の岩と一致したという。この発見により、遺跡の巨大な構成要素がソールズベリー平原に到着した過程が2つに絞られる。すべて人力で運ばれたか、途中まで氷河によって動かされたかだ。 5000年前に作られたストーンヘンジは20~30トンの砂岩が並ぶ外側の円、3~5トンのブルーストーンで構成される内側の円と馬蹄形の構造物から成る。 外側の大きな「サルセン石」は32~48キロほど離れた現在のイングランドで切り出された可能性が高い。イングランドでは砂岩

    ストーンヘンジ石材、未知の産地が判明
  • 天使の変遷、霊的存在から守護者へ

    14世紀イタリアの礼拝堂壁画に描かれた天使。 Photograph from SuperStock/Getty Images クリスマス時期になると、店頭やクリスマスツリーなどにおなじみの天使のオーナメントが飾られる。しかし、時代の変遷とともに天使の姿や概念も様変わりしてきたようだ。 少なくともキリスト教では、天使は常に透けたガウンをまとって飛んでいたわけではない。肉体を持たない霊的存在の時代もあれば、羽の生えた守護者と考えられていた時代もあり、数千年の宗教的思想の紆余曲折を反映している。 聖書において、天使は神の使いとされる。英語の「Angel」はギリシャ語の「Angelos」に由来し、「使者」を意味する。しかし、それ以外の点について、聖書には多様な解釈の余地が残されている。 ◆神と同一質 「初期のキリスト教では、イエス・キリストも数多くいる天使の1人だと考えられていた」と、中東を専門

    天使の変遷、霊的存在から守護者へ
  • 2012年終末説、マヤ暦の予言を探る

    マヤ文明の村の日常生活を描いた絵画。 Illustration by H. Tom Hall, National Geographic 数年前から映画などで話題となった「2012年終末説」。その根拠とされるのは古代マヤ文明の“予言”だった。しかしメソアメリカ文化の研究者は、「来年12月に人類滅亡の可能性がゼロとは言わないが、マヤ暦に裏付けを求めるのはナンセンスだ」と否定している。 マヤ文明の「長期暦」は約5125年周期で、紀元前3114年から始まっている。2012年12月21日に周期の終わりに到達するのは事実だ。 長期暦の単位では約400年を「1バクトゥン」と数えており、12月21日に13バクトゥンが終了する。しかし、次のバクトゥンには進まず、13回目の周期が終わると暦が“リセット”される。1960年代の自動車の走行距離メーターを想像して欲しい。9万9999.9マイルに達するとカチッと音が

    2012年終末説、マヤ暦の予言を探る
  • 耐えるトンボ、写真コンテスト2011

    世界大会最優秀賞 自然・動物部門 シクヘイ・ゴー(Shikhei Goh)/インドネシア 光の矢のような雨粒がトンボの羽を激しく叩く。インドネシア、リアウ諸島でシクヘイ・ゴー氏が撮影、「しぶき(Splashing)」と名付けた。「ナショナル ジオグラフィック国際写真コンテスト2011」でグランプリと自然・動物部門の最優秀賞に輝いている。 Photograph by Shikhei Goh 世界大会最優秀賞 自然・動物部門 シクヘイ・ゴー(Shikhei Goh)/インドネシア 光の矢のような雨粒がトンボの羽を激しく叩く。インドネシア、リアウ諸島でシクヘイ・ゴー氏が撮影、「しぶき(Splashing)」と名付けた。「ナショナル ジオグラフィック国際写真コンテスト2011」でグランプリと自然・動物部門の最優秀賞に輝いている。 不意の暴風雨に見舞われたゴー氏は、難しい決断を迫られる。「カメラを濡

    耐えるトンボ、写真コンテスト2011
  • 虹と海と人と、写真コンテスト2011

    世界大会最優秀賞 人部門 イザベル・ノルドフュエル(Izabelle Nordfjell)/スウェーデン 作品タイトルは「グリーン・ゾーンの中へ(Into the Green Zone)」。暴風雨が去ったフィリピン西部パラワン州のオヌク(Onuk)島。二重の虹が空にアーチを描く。 Photograph by George Tapan 世界大会最優秀賞 風景部門 ジョージ・タパン(George Tapan)/フィリピン 暴風雨が去ったフィリピン西部パラワン州のオヌク(Onuk)島。二重の虹が空にアーチを描く。 審査にあたったティム・レイマン氏は、写真家ジョージ・タパン氏のセンスを高く評価。「美しい風景と2つの小さな人影が見事に調和している。シャッタータイミングと構図が素晴らしい」。 作品タイトルは「グリーン・ゾーンの中へ(Into the Green Zone)」。「暗い雲、虹、青と緑の中で

    虹と海と人と、写真コンテスト2011
  • トナカイ猟、写真コンテスト2011

    世界大会最優秀賞 人部門 イザベル・ノルドフュエル(Izabelle Nordfjell)/スウェーデン タイトルは「フュエルマン一家(The Fjellman Family)」。「ナショナル ジオグラフィック国際写真コンテスト2011」人部門の最優秀賞に選ばれた。スウェーデンの長い冬に備え、家族の料を確保するため、サーミ人のトナカイ猟師はライフルの一撃に賭ける。 Photograph by Izabelle Nordfjell 世界大会最優秀賞 人部門 イザベル・ノルドフュエル(Izabelle Nordfjell)/スウェーデン スウェーデンの長い冬に備え、家族の料を確保するため、サーミ人のトナカイ猟師はライフルの一撃に賭ける。 タイトルは「フュエルマン一家(The Fjellman Family)」。「ナショナル ジオグラフィック国際写真コンテスト2011」人部門の最優秀賞に選ば

    トナカイ猟、写真コンテスト2011
  • エジプト誌焼失か、エジプト学士院火災

    エジプト学士院の焼け跡で回収された『エジプト誌』(Le Description de l'Egypte)の1ページ(12月19日撮影)。『エジプト誌』は24巻からなる図版入り文献で、1798年のナポレオンのエジプト遠征に同行した学者、芸術家、技術者など百数十人の調査団が作成。エジプトで発見した古代から近代にいたる文化遺物の総合的な目録を目指し、1809年から1828年の最終巻まで20年をかけて公刊された。 Photograph by Amr Abdallah Dalsh, Reuters エジプト学士院の焼け跡で回収された『エジプト誌』(Le Description de l'Egypte)の1ページ(12月19日撮影)。『エジプト誌』は24巻からなる図版入り文献で、1798年のナポレオンのエジプト遠征に同行した学者、芸術家、技術者など百数十人の調査団が作成。エジプトで発見した古代から近代

    エジプト誌焼失か、エジプト学士院火災
  • 修復の可能性、エジプト学士院火災

    エジプト首都カイロで火を噴くエジプト学士院(12月17日撮影)。軍による暫定統治への抗議デモが治安部隊と衝突し、火災が発生した。左下の人物はデモ参加者。燃えた収蔵文書は、研究者や一般市民がボランティアで調査中だ。少しでも修復の可能性があれば救出しようと懸命になっているという。 Photograph by Mohamed Omar, European Pressphoto Agency エジプト首都カイロで火を噴くエジプト学士院(12月17日撮影)。軍による暫定統治への抗議デモが治安部隊と衝突し、火災が発生した。左下の人物はデモ参加者。 燃えた収蔵文書は、研究者や一般市民がボランティアで調査中だ。少しでも修復の可能性があれば救出しようと懸命になっているという。 Photograph by Mohamed Omar, European Pressphoto Agency

    修復の可能性、エジプト学士院火災
  • 貴重文書焼失、エジプト学士院火災

    先週末、エジプト首都カイロで軍による暫定統治に反対するデモ隊と治安部隊が衝突。エジプト学士院(Institut d'Egypte)収蔵の歴史的文書が多数焼失した。燃え残った古文書のページから、歴代のファラオが顔を覗かせている(12月19日撮影)。火災は17日、カイロ中心部のタハリール広場で発生。学士院の建造物は現在、崩壊の危機にあるという。 Photograph by Nasser Nasser, AP 先週末、エジプト首都カイロで軍による暫定統治に反対するデモ隊と治安部隊が衝突。エジプト学士院(Institut d'Egypte)収蔵の歴史的文書が多数焼失した。燃え残った古文書のページから、歴代のファラオが顔を覗かせている(12月19日撮影)。 火災は17日、カイロ中心部のタハリール広場で発生。学士院の建造物は現在、崩壊の危機にあるという。 「ニュースを聞いて震え上がった。歴史的にも偉大

    貴重文書焼失、エジプト学士院火災
  • 色彩の村、旅行写真2011

    独特の模様を施した家屋の玄関先で、辺りを見回す大人と子ども。西アフリカの内陸国、ブルキナファソ南部にあるガルンシ族の村ティエベレで、写真家のルイス・モントローズ(Louis Montrose)氏が撮影した。同氏は、イギリスの旅行写真家グループ主催の「トラベル・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー(TPOTY)2011」に出品。メキシコ南部の都市オアハカで撮影した写真と合わせて、総合1位に輝いた。 Photograph courtesy Louis Montrose, www.tpoty.com 独特の模様を施した家屋の玄関先で、辺りを見回す大人と子ども。西アフリカの内陸国、ブルキナファソ南部にあるガルンシ族の村ティエベレで、写真家のルイス・モントローズ(Louis Montrose)氏が撮影した。同氏は、イギリスの旅行写真家グループ主催の「トラベル・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー(TPO

    色彩の村、旅行写真2011
  • 夢の跡、中国の偽ディズニーランド

    朽ち果てながらそびえる中国版の“シンデレラ城”と、その下を歩く農民(12月5日撮影)。1990年代末に遊園地“ワンダーランド・アミューズメント・パーク”(Wonderland Amusement Park)の建設計画が頓挫した後、再び農地として利用されているこの場所が、写真家のデイビッド・グレイ(David Gray)氏によって“再発見”された。 Photograph by David Gray, Reuters 朽ち果てながらそびえる中国版の“シンデレラ城”と、その下を歩く農民(12月5日撮影)。1990年代末に遊園地“ワンダーランド・アミューズメント・パーク”(Wonderland Amusement Park)の建設計画が頓挫した後、再び農地として利用されているこの場所が、写真家のデイビッド・グレイ(David Gray)氏によって“再発見”された。 冒険好きな旅行者なら驚くほど簡単

    夢の跡、中国の偽ディズニーランド
  • 時代の象徴、中国の偽ディズニーランド

    今から10年以上前に頓挫した偽ディズニーランド計画。この出来事が前触れだったかのように、中国ではその後、土地をめぐる争いが各地で激増している。 Photograph by David Gray, Reuters 今から10年以上前に頓挫した偽ディズニーランド計画。この出来事が前触れだったかのように、中国ではその後、土地をめぐる争いが各地で激増している。 土地をめぐる紛争は、中国における社会不安の主な原因となっており、毎年何万件もの暴動、ストライキ、抗議行動を引き起こしていると、2011年6月の公報には記されている。中国社会科学院によると、過去30年の間に土地を失った農民の数は5000万人を超えるという。 ワンダーランドの事例では、地元農民たちがひっそりと土地を農業に再利用し始めたが、中国の頓挫した開発計画のすべてがそのような形で落ち着くわけではない。 ワンダーランドとは対照的なのが、中国

    時代の象徴、中国の偽ディズニーランド
  • 閉じた入口、中国の偽ディズニーランド

    板が打ち付けられたワンダーランド入場口。同じような光景は、廃墟となった高級住宅、誰もいない高級ショッピングモール、ゴーストタウンなど、今や中国各地に見受けられる。それでも中国の新たな富裕層は、空っぽの建物に投資し続けている。不動産価格は1998年から140%上昇した。 Photograph by David Gray, Reuters 板が打ち付けられたワンダーランド入場口。同じような光景は、廃墟となった高級住宅、誰もいない高級ショッピングモール、ゴーストタウンなど、今や中国各地に見受けられる。それでも中国の新たな富裕層は、空っぽの建物に投資し続けている。不動産価格は1998年から140%上昇した。 ところが2011年に入って、不動産価格は何年かぶりに下落した。今になって見ると、ワンダーランドの姿は中国の現状を予言していたかのようだ。 「何年も前に万里の長城へ旅行したとき、このすばらしい場

    閉じた入口、中国の偽ディズニーランド
  • ベルト金具、中世東欧の墓地発見

    1000年前の「若き戦士(Young Warrior)」の墓から見つかったブロンズ製のベルト金具。「最も驚くべき副葬品だ」と、発掘を率いたポーランド科学アカデミー(PAN)考古学・民族学研究所の所長アンジェイ・ブコ(Andrzej Buko)氏は語る。 Photograph courtesy M. Jordeczka 1000年前の「若き戦士(Young Warrior)」の墓から見つかったブロンズ製のベルト金具。「最も驚くべき副葬品だ」と、発掘を率いたポーランド科学アカデミー(PAN)考古学・民族学研究所の所長アンジェイ・ブコ(Andrzej Buko)氏は語る。「刻まれた二叉の紋章の先に、十字架が1つ付いている。着用者が“呪われたスヴャトポルク”ことスヴャトポルク1世と関係が深いか、血縁者だったことを示す」。 スヴャトポルク1世は、現在のポーランド東部にバイキングと東スラブ人が建国した

    ベルト金具、中世東欧の墓地発見
  • 豪華なネックレス、中世東欧の墓地発見

    銀、水晶、赤いカーネリアンのビーズをあしらったネックレス。所有者の富と地位を示す豪華な作りで、銀のビーズに小さな粒で描いた模様は古代スラブ文化のデザインだ。ポーランドで新たに発見されたバイキング時代の墓地から、250点以上のガラスビーズが出土した。金箔や銀箔に包まれたビーズや、コンスタンティノープル(現イスタンブール)を拠点とする東ローマ帝国の工房から持ち込まれた品もある。 Photograph courtesy M. Jordeczka 銀、水晶、赤いカーネリアンのビーズをあしらったネックレス。所有者の富と地位を示す豪華な作りで、銀のビーズに小さな粒で描いた模様は古代スラブ文化のデザインだ。 ポーランドで新たに発見されたバイキング時代の墓地から、250点以上のガラスビーズが出土した。金箔や銀箔に包まれたビーズや、コンスタンティノープル(現イスタンブール)を拠点とする東ローマ帝国の工房から

    豪華なネックレス、中世東欧の墓地発見
  • 若き戦士、中世東欧の墓地発見

    剣を傍らに眠る「若き戦士(Young Warrior)」(左)。ポーランドで発見された1000年前の墓地の遺骨だ。墓地からは宝飾品のほか、人間を生贄にしていた手掛かりも発掘された。さらに、バイキングや中世東欧の支配者と関係がある謎の人々の墓も数十見つかった。 Photograph courtesy S. Gronek 剣を傍らに眠る「若き戦士(Young Warrior)」(左)。ポーランドで発見された1000年前の墓地の遺骨だ。墓地からは宝飾品のほか、人間を生贄にしていた手掛かりも発掘された。さらに、バイキングや中世東欧の支配者と関係がある謎の人々の墓も数十見つかった。 研究者は中でも若き戦士に注目している。この男性は20代で非業の死を遂げたと見られ、顎が骨折し、頭蓋骨に切られた痕が複数ある。傍らの剣からも、戦士だったことがうかがえる。 ポーランド科学アカデミー(PAN)考古学・民族学研

    若き戦士、中世東欧の墓地発見
  • 埋葬用の剣、中世東欧の墓地発見

    ポーランドのワルシャワ近郊で10世紀末~11世紀初頭の墓が発見された。埋葬されていた遺体「若き戦士(Young Warrior)」の傍らからは剣が出土。ただし、実際に戦闘で使用された可能性はほとんどないという。銀の装飾が施されており、高価で実用性に欠けているためだ。墓地からはさまざまな武器が発掘されており、被葬者の謎を解明する大きな手掛かりとなるだろう。 Diagram courtesy Andrzej Buko ポーランドのワルシャワ近郊で10世紀末~11世紀初頭の墓が発見された。埋葬されていた遺体「若き戦士(Young Warrior)」の傍らからは剣が出土。ただし、実際に戦闘で使用された可能性はほとんどないという。銀の装飾が施されており、高価で実用性に欠けているためだ。墓地からはさまざまな武器が発掘されており、被葬者の謎を解明する大きな手掛かりとなるだろう。 発掘チームのリーダーでポ

    埋葬用の剣、中世東欧の墓地発見
  • シングー川と生活、アマゾンのダム計画

    アマゾン川支流のシングー川で水浴びするカヤポ族の母子。ブラジル北部のアウクレ(Aukre)村の住民にとって、シングー川は料や飲み水の供給源であり、沐浴にも欠かせない。この上流の巨大ダム建設計画をめぐって議論が続いている。 Photograph by Cristina Mittermeier アマゾン川支流のシングー川で水浴びするカヤポ族の母子。ブラジル北部のアウクレ(Aukre)村の住民にとって、シングー川は料や飲み水の供給源であり、沐浴にも欠かせない。「日に何度も川で体を洗うなど、カヤポ族の文化では清潔さが重要だ。不衛生な生活は反社会的で健康を阻害すると見なされている」と、カヤポ族の文化をテーマにする写真家クリスティーナ・ミッターマイヤー氏は語る。「女性は14歳か15歳で結婚し、子どもを産むのが一般的だ」。 この地域でベロモンテ(Belo Monte)水力発電ダムの建設を進める企業連

    シングー川と生活、アマゾンのダム計画
  • スマートフォンで旅行が変わる?

    スマートフォンのカメラを向けると、拡張現実(AR)ソフトウェアが情報を表示してくれる。オランダ、アムステルダムのホテルで撮影。 Photograph by Jerry Lampen, Reuters iPhoneiPadAndroidなど、インターネットにアクセス可能なスマートフォンやタブレットの大部分には、GPSが搭載されている。GPSとインターネットをベースとして、デジタル写真、地図、ソーシャルネットワーキング、翻訳ソフト、拡張現実(AR)など多様なサービスが開発され、私たちの旅行体験が驚くべき変貌を遂げようとしている。 旅行情報サイト「トリップアドバイザー」がアメリカの2700人以上を対象に行った最新調査によれば、2012年の旅行でスマートフォンを“移動中の情報源”として頼りにするとの回答が44%に上った。 【 1. 交通渋滞のいらいらを回避 】 例えば、アメリカ、ニュージャージ

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  • 熱水噴出孔と未知の生物の発見

    ナショナル ジオグラフィック支援研究の成果 海洋学者ロバート・バラード氏は、1977年にナショナル ジオグラフィック協会の支援を受け、潜水調査艇アルビン号(写真)による海底探査プロジェクトを実施した。太平洋ガラパゴス諸島沖のガラパゴス地溝帯で熱水噴出孔を確認したバラード氏は、周辺で光合成に依存しない未知の生物、チューブワームを発見した。 Photograph by Emory Kristof and Alvin Chandler, National Geographic ナショナル ジオグラフィック支援研究の成果 設立2年後の1890年以来、ナショナル ジオグラフィック協会がさまざまな研究・探査に関して行ってきた支援が今年1万件に達した。その中から代表的なプロジェクトをいくつか紹介する。 海洋学者ロバート・バラード氏は、1977年にナショナル ジオグラフィック協会の支援を受け、潜水調査艇ア

    熱水噴出孔と未知の生物の発見
  • ジェーン・グドールの霊長類研究

    ナショナルジ オグラフィック支援研究の成果 野生のチンパンジー研究の世界的権威、霊長類学者ジェーン・グドール氏(撮影日不明)。1961年からナショナル ジオグラフィック協会の助成金を受け、先駆的な研究を続けてきた。主な業績に、チンパンジーが行う道具作成の行為の発見がある。 Photograph by Vanne Goodall, National Geographic ナショナル ジオグラフィック支援研究の成果 設立2年後の1890年以来、ナショナル ジオグラフィック協会がさまざまな研究・探査に関して行ってきた支援が今年1万件に達した。その中から代表的なプロジェクトをいくつか紹介する。 野生のチンパンジー研究の世界的権威、霊長類学者ジェーン・グドール氏(撮影日不明)。1961年からナショナル ジオグラフィック協会の助成金を受け、先駆的な研究を続けてきた。主な業績に、チンパンジーが行う道具作

    ジェーン・グドールの霊長類研究
  • 1万件の支援プロジェクト

    ナショナル ジオグラフィック支援研究の成果 ナショナル ジオグラフィック協会は設立2年後の1890年以来、多数の研究・探検プロジェクトを支えてきた。その数はついに1万件に到達。1万件目の助成プログラムに選ばれたのは、保全生物学者クリシー・カランス(Krithi Karanth)氏である。 Photograph by Sandesh Kadur, National Geographic ナショナル ジオグラフィック支援研究の成果 ナショナル ジオグラフィック協会は設立2年後の1890年以来、多数の研究・探検プロジェクトを支えてきた。その数はついに1万件に到達。世紀の大発見も成し遂げており、選考委員会は、「地球の謎を解明する上で、大きな役割を果たしてきた」とコメントしている。 マチュピチュの発掘、沈没したタイタニック号の発見、霊長類学者ジェーン・グドール氏のチンパンジー研究など、120年の歴史

    1万件の支援プロジェクト
  • ハイラム・ビンガムのマチュピチュ調査

    ナショナル ジオグラフィック支援研究の成果 南米ペルーの山頂に築かれた古代インカの「マチュピチュ」遺跡。アメリカ、イェール大学の考古学者ハイラム・ビンガムが発見し、ナショナル ジオグラフィック協会の資金援助を受けて1911年に発掘を始めた。写真は調査開始直後。 Photograph by Hiram Bingham, National Geographic ナショナル ジオグラフィック支援研究の成果 設立2年後の1890年以来、ナショナル ジオグラフィック協会がさまざまな研究・探査に関して行ってきた支援が今年1万件に達した。その中から代表的なプロジェクトをいくつか紹介する。 南米ペルーの山頂に築かれた古代インカの「マチュピチュ」遺跡。アメリカ、イェール大学の考古学者ハイラム・ビンガムが発見し、ナショナル ジオグラフィック協会の資金援助を受けて1911年に発掘を始めた。写真は調査開始直後。

    ハイラム・ビンガムのマチュピチュ調査
  • オオカバマダラ、越冬地の解明

    ナショナルジ オグラフィック支援研究の成果 メキシコのツアーガイドの帽子に留まっているのは、渡りや集団越冬で知られるオオカバマダラ(資料写真)。1975年、ナショナル ジオグラフィックの資金援助を受けた生物学者フレッド・アーカート氏のチームが、越冬地の解明に成功した。 Photograph by Bianca Lavies, National Geographic ナショナル ジオグラフィック支援研究の成果 設立2年後の1890年以来、ナショナル ジオグラフィック協会がさまざまな研究・探査に関して行ってきた支援が今年1万件に達した。その中から代表的なプロジェクトをいくつか紹介する。 メキシコのツアーガイドの帽子に留まっているのは、渡りや集団越冬で知られるオオカバマダラ(資料写真)。1975年、ナショナル ジオグラフィックの資金援助を受けた生物学者フレッド・アーカート氏のチームが、越冬地の解

    オオカバマダラ、越冬地の解明
  • スカイツリー、世界一タワーの耐震構造

    今月、東京スカイツリーが世界一高いタワーとしてギネス世界記録に認定された。 Photograph by Koji Ito, Yomiuri Shimbun/AP 成長ホルモンで背が伸びた宇宙時代のエッフェル塔のようにそびえ立つ東京スカイツリー。まだ建設中で、公式オープンは2012年5月の予定だ。 だが、2008年に着工し、高さが634メートルあるこの新たな日のランドマークは、すでに大きな名声を手に入れた。今月、世界一高いタワーとしてギネス世界記録に認定されたのだ。 しかしちょっと待ってほしい。ドバイのブルジュ・ハリファがあるではないか。2010年に完成したこの超高層ビルの高さは828メートルにもなる。 ギネス・ワールド・レコーズ社の説明によると、たしかにその通りだが、ブルジュ・ハリファは世界一高い「建物(building)」なのだという。 東京スカイツリーは「タワー(tower)」であり

    スカイツリー、世界一タワーの耐震構造
  • ルネサンス期の教会にステレオ効果?

    イル・レデントーレ聖堂をはじめとするベネチアの教会の音響効果が、コンピューターモデルによって再現された(試料写真)。 Photograph by Neville Morgan, Alamy ルネサンス期のベネチアの貴族たちは、音楽を“ステレオ”で聴いた最初の人々かもしれない。教会の建築にもたらされた変化は、別々の場所で歌う聖歌隊の声をはっきりと分けて聞かせることを目的としていた可能性のあることが、先ごろ発表された音響学研究によって明らかになった。 研究チームは、サン・マルコ大聖堂のような観光スポットを含むイタリア、ベネチアの一部教会を対象に、そうした場所での音楽演奏が400年前はどのように聞こえていたかを、コンピューターモデルを使ってシミュレーションした。 「われわれはまず、現在の教会の音響効果をモデリングした」と、ニューヨーク大学で音響学を専攻するブラクストン・ボーレン(Braxton

    ルネサンス期の教会にステレオ効果?
  • ガラマンテスの要塞を発見、リビア

    古代北アフリカの謎の民族ガラマンテスが作った泥レンガの構造物。 Photograph by Toby Savage リビアで繁栄した謎の文明の遺跡が素晴らしい保存状態で発見された。サハラ砂漠の複数の衛星写真に、リビア南西部の“失われた文明”によって築かれた100を超える要塞集落が写っていたという。 このコミュニティーは高度な文明を持つ謎多き民族ガラマンテス(Garamantes)が作り上げ、紀元前後から500年ごろに存在したと推測される。リビア中部のフェザーン地方を支配していたガラマンテス人は、紀元前2世紀から紀元7世紀ごろにかけて繁栄した。 研究チームは石油業界で使われる高精細な写真を含む最近の衛星画像と、1950~1960年代に撮影された航空写真を詳しく調べ、壁で囲まれたガラマンテスの町や村、農場を発見した。 そして2011年に入り、現地調査でガラマンテスの陶器を収集、首都トリポリから

    ガラマンテスの要塞を発見、リビア
  • バイキングの“太陽の石”、正体解明か

    透明度の高い方解石の一種、「アイスランドスパー(氷州石)」。バイキングはこの石を使って船の方位を把握していた可能性があるという。 The Natural History Museum / Ala 大昔のバイキングは、透明度の高い方解石の結晶「アイスランドスパー(氷州石)」を使い、方位を把握していた可能性があるという。 アイスランドには、バイキングは空が曇っているとき、「サンストーン(太陽の石)」と名付けた石を方位磁針代わりにして船の舵を取っていたという伝説がある。 この石によって、太陽光の偏光度を検出できたと考えられている。 自然光は、あらゆる方向に振動する光が混合している。結晶や霧などの物質を通過すると、規則的な振動に変わって特定の方向に向きが変わる。これを偏光という。 太陽光は大気を通過した後に偏光して方向が変わる。光の偏光を感知する能力は、ハチなどの生物に生来的に備わっているという。

    バイキングの“太陽の石”、正体解明か
  • フカヒレ目当てのサメ乱獲が激化、台湾

    材用として処理される大量のサメのヒレ。アメリカの環境NGO「ピュー慈善財団」が台湾の漁港を取材、10月19日に公開した。同財団によると、高級材としてフカヒレの需要が増大し、世界で捕獲されるサメは年間7300万匹にも達している。ほとんどの場合、ヒレを切り取られた後に生きたまま海中へ投棄されるという。 Photograph courtesy Paul Hilton, Pew Environment Group 材用として処理される大量のサメのヒレ。アメリカの環境NGO「ピュー慈善財団」が台湾の漁港を取材、10月19日に公開した。 中には、アカシュモクザメやヨゴレザメなど、絶滅危惧種のヒレや体の一部も含まれている。 ピュー慈善財団によると、高級材としてフカヒレの需要が増大し、世界で捕獲されるサメは年間7300万匹にも達している。ほとんどの場合、ヒレを切り取られた後に生きたまま海中へ投棄さ

    フカヒレ目当てのサメ乱獲が激化、台湾
  • ハロウィーンのトリビア2011

    躍動感のある悪霊が美しく描かれたハロウィーンのカボチャ(撮影日不明)。現在のハロウィーンのジャックランタン(カボチャのちょうちん)は、何世紀も前の古代ケルト人が、新年が始まるサウィン祭の前夜にかがり火をたいて祝祭を行っていたことに起源があると言われている。 Photograph by Richard Nowitz/NGS 日でも広がりつつあるハロウィーンのお祝いだが、いったい何を祝っているのかはあまり知られていないようだ。ハロウィーンの歴史、今年(アメリカで)最も人気のある仮装、ギネス記録のお化けカボチャなど、ハロウィーンにまつわるさまざまなトリビアを最新データとともに紹介しよう。【ハロウィーンの歴史】 ◆起源は古代宗教 ハロウィーンの起源は2000年以上前にさかのぼる。古代ヨーロッパのケルト人は、現在の11月1日に当たる日を新年の始まりとして祝い、この祝祭を「サウィン祭」と呼んでいた。

    ハロウィーンのトリビア2011
  • ブータンの競技場、10月ベストフォト

    ブータンの首都ティンプーで、屋外競技場のグラウンドを金属探知機で検査する警備員たち。10月13日に結婚したジグミ・ケサル・ナムギャル・ワンチュク国王の祝賀会に向けて、徹底的な検査と清掃が実施されていた。ブータンは中国とインドに挟まれたヒマラヤ山脈の小さな王国で、独自の文化を維持している。 Photograph by Kevin Frayer, AP ブータンの首都ティンプーで、屋外競技場のグラウンドを金属探知機で検査する警備員たち。10月13日に結婚したジグミ・ケサル・ナムギャル・ワンチュク国王の祝賀会に向けて、徹底的な検査と清掃が実施されていた。 ブータンは中国とインドに挟まれたヒマラヤ山脈の小さな王国で、独自の文化を維持している。 ◆ベストフォト選考理由 「一見したところ、シンプルで面白い写真だ。しかし、実は構図も素晴らしい。三角形をなす警備員の配置、緑の芝の縦線、スタジアムが生み出す

    ブータンの競技場、10月ベストフォト
  • 果物の仮庵、10月ベストフォト

    果物でできた仮庵(かりいお:仮設の小屋)を仕上げるサマリア人の女性。10月11日、ヨルダン川西岸地区北部の都市ナーブルスの近郊で撮影。 Photograph by Menahem Kahana, AFP/Getty Images 果物でできた仮庵(かりいお:仮設の小屋)を仕上げるサマリア人の女性。10月11日、ヨルダン川西岸地区北部の都市ナーブルスの近郊で撮影。 ユダヤ教の三大祭りの1つ「仮庵の祭り(スコット)」では、屋内外に儀式用の仮庵を建て、古代ヘブライ人のエジプト脱出を記念する。 ◆ベストフォト選考理由 「7日間の祭りの間、ここで事をしたり寝たりするそうだが、よくもまぁこれだけ飾り付けたと感心する。ちなみに、どのように天井に固定しているのだろう? 傷んだら入れ替えるのかな? 落ちて頭に当たったら痛いよきっと。誰だってそう思うじゃないか」、ドーン・ディークス氏(フォト共同編集者)。

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  • 北米奥地でスペイン遠征隊の宝飾品発見

    先住民イチシ族の案内でジョージア州のオクモルギー(Ocmulgee)川を渡るエルナンド・デ・ソト(想像図)。 Illustration courtesy Fernbank Museum of Natural History アメリカ南東部、ジョージア州の奥地にある先住民の村跡地で、考古学者チームが16世紀スペインの宝飾品や工芸品を発見した。「コンキスタドール」の一人、スペイン人探検家エルナンド・デ・ソトは、遠征途中で奥地に分け入り、草ぶき屋根のピラミッド型寺院で先住民の儀式に参加していたという。デ・ソトの遠征隊は、最南東部のフロリダ州に上陸し中西部のミズーリ州まで到達した。 デ・ソトはスペイン人探検家フランシスコ・ピサロの南アメリカ遠征に参加し、インカ帝国崩壊に関与していた。1539~41年の自身の北アメリカ遠征では、その栄光を再現しようと望んだ。今回の発見により、当時の遠征地図が塗り替え

    北米奥地でスペイン遠征隊の宝飾品発見
  • ハチドリの一撃、環境写真2011

    2011年度エンバイロンメンタル・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー・コンテスト:自然の世界部門最終選考作品「突きあり(Touche)」 ミドリボウシテリハチドリのメスがオスに“有効打”をお見舞いしているこの写真は、ハンガリーの写真家ツァバ・テケイ(Csaba Tokolyi)氏が撮影した。 Photograph by Csaba Tokolyi, EPOTY.org/Fame/Barcroft 2011年度エンバイロンメンタル・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー・コンテスト:自然の世界部門最終選考作品「突きあり(Touche)」 ミドリボウシテリハチドリのメスがオスに“有効打”をお見舞いしているこの写真は、ハンガリーの写真家ツァバ・テケイ(Csaba Tokolyi)氏が撮影したもの。ミドリボウシテリハチドリは、中央アメリカ南部や南アメリカ北西部の山岳地帯に生息する。 Photograp

    ハチドリの一撃、環境写真2011
  • ホームレスの子ども、環境写真2011

    2011年度エンバイロンメンタル・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー・コンテスト:総合最優秀賞「ホームレス(Homeless)」 ネパール、カトマンズのスクラップ置き場で互いを慰めあう子どもたち。2011年に香港の写真家チャン・クォック・ホン(Chan Kwok Hung)氏が撮影した。 Photograph by Chan Kwok Hung, EPOTY.org/Fame/Barcroft 2011年度エンバイロンメンタル・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー・コンテスト:総合最優秀賞「ホームレス(Homeless)」 ネパール、カトマンズのスクラップ置き場で互いを慰めあう子どもたち。2011年に香港の写真家チャン・クォック・ホン(Chan Kwok Hung)氏が撮影したこの写真は、先ごろ受賞者が発表された2011年度「エンバイロンメンタル・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー・コンテス

    ホームレスの子ども、環境写真2011
  • 滝と稲妻、環境写真2011

    2011年度エンバイロンメンタル・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー・コンテスト:自然の世界部門最優秀賞「カイエトゥール滝の稲(Lightning at Kaieteur Falls)」 カイエトゥール滝の上空で光る夜の稲。イギリスの写真家ジェームズ・ブロスコム(James Broscombe)氏が撮影した。 Photograph by James Broscombe, EPOTY.org/Fame/Barcroft 2011年度エンバイロンメンタル・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー・コンテスト:自然の世界部門最優秀賞「カイエトゥール滝の稲(Lightning at Kaieteur Falls)」 カイエトゥール滝の上空で光る夜の稲。イギリスの写真家ジェームズ・ブロスコム(James Broscombe)氏が撮影したこの写真は、「自然の世界」部門で最優秀賞を獲得した。ガイアナの

    滝と稲妻、環境写真2011
  • ハロン湾、世界危機遺産2012

    ベトナム北部、ハロン湾の漁港。伝統的な笠「ノンラー」をかぶった地元漁師たちが日々の作業にいそしむ。ハロン湾は、2012年度の「ワールド・モニュメント・ウォッチリスト」(危機遺産リスト)に掲載された67カ所の1つ。ワールド・モニュメント財団(WMF)が隔年で発表するリストは、自然や社会、政治、経済の変化により危機に瀕している世界中の歴史的建造物や文化遺産への注意喚起を目的としている。 Photograph by Bill Hatcher, National Geographic ベトナム北部、ハロン湾の漁港。伝統的な笠「ノンラー」をかぶった地元漁師たちが日々の作業にいそしむ。 ハロン湾は、2012年度の「ワールド・モニュメント・ウォッチリスト」(危機遺産リスト)に掲載された67カ所の1つ。ワールド・モニュメント財団(WMF)が隔年で発表するリストは、自然や社会、政治、経済の変化により危機に瀕

    ハロン湾、世界危機遺産2012
  • ハイチ伝統建築、世界危機遺産2012

    1900年前後に建てられたハイチを代表する歴史的建造物、ジンジャー・ブレッド・ハウスの1棟。世界の歴史的建造物や文化遺産の保存に取り組むワールド・モニュメント財団(WMF)の2012年度「ワールド・モニュメント・ウォッチ・リスト」(危機遺産リスト)に掲載された。 Photograph courtesy Martin Hammer, World Monuments Fund 1900年前後に建てられたハイチを代表する歴史的建造物、ジンジャー・ブレッド・ハウスの1棟。世界の歴史的建造物や文化遺産の保存に取り組むワールド・モニュメント財団(WMF)の2012年度「ワールド・モニュメント・ウォッチ・リスト」(危機遺産リスト)に掲載された。 ハイチは2010年1月に大地震に見舞われたが、この家は見事に持ちこたえた。周囲で崩れている新しいブロック塀とは対照的だ。格子状に並ぶ木材や、レースのような複雑な

    ハイチ伝統建築、世界危機遺産2012
  • ナスカの地上絵、世界危機遺産2012

    ペルー、ナスカ地域の海岸平野に刻まれた「ナスカの地上絵」の巨大クモ。ナスカの地上絵は紀元前500~紀元500年頃に描かれた巨大な芸術作品で、450平方キロ以上の“キャンバス”に広がっている。ワールド・モニュメント財団(WMF)が発表した2012年度の「ワールド・モニュメント・ウォッチリスト」(危機遺産リスト)に選定された。 Photograph by Robert R. Clark, National Geographic ペルー、ナスカ地域の海岸平野に刻まれた「ナスカの地上絵」の巨大クモ。ナスカの地上絵は紀元前500~紀元500年頃に描かれた巨大な芸術作品で、450平方キロ以上の“キャンバス”に広がっている。ワールド・モニュメント財団(WMF)が発表した2012年度の「ワールド・モニュメント・ウォッチリスト」(危機遺産リスト)に選定された。 WMFの研究教育担当ディレクターであるエリカ・

    ナスカの地上絵、世界危機遺産2012
  • 土造の王宮、世界危機遺産2012

    アフリカ西部のブルキナファソにある土造の住居「ティエベレの王宮(Cour Royale de Tiebele)」。その一角で女性が土壁を塗装し直している。世界の歴史的建造物や文化遺産の保存に取り組むワールド・モニュメント財団(WMF)の2012年度「ワールド・モニュメント・ウォッチ・リスト」(危機遺産リスト)に掲載された。 Photograph courtesy Barthelemy Kabore, World Monuments Fund アフリカ西部のブルキナファソにある土造の住居「ティエベレの王宮(Cour Royale de Tiebele)」。その一角で女性が土壁を塗装し直している。世界の歴史的建造物や文化遺産の保存に取り組むワールド・モニュメント財団(WMF)の2012年度「ワールド・モニュメント・ウォッチ・リスト」(危機遺産リスト)に掲載された。 敷地面積1.2ヘクタールの“

    土造の王宮、世界危機遺産2012
  • モダニズム建築、世界危機遺産2012

    アメリカ、ニューヨーク市マンハッタンの5番街510番地に建つ旧マニュファクチュラーズ・トラスト・カンパニー社ビル。世界の歴史的建造物や文化遺産の保存に取り組むワールド・モニュメント財団(WMF)が発表した2012年度の「ワールド・モニュメント・ウォッチリスト」(危機遺産リスト)に選定された。 Photograph courtesy Theodore H. M. Prudon, World Monuments Fund アメリカ、ニューヨーク市マンハッタンの5番街510番地に建つ旧マニュファクチュラーズ・トラスト・カンパニー社ビル。世界の歴史的建造物や文化遺産の保存に取り組むワールド・モニュメント財団(WMF)が発表した2012年度の「ワールド・モニュメント・ウォッチリスト」(危機遺産リスト)に選定された。 WMFによると、20世紀半ばに建てられた近代建築のランドマークだという。アルミと

    モダニズム建築、世界危機遺産2012
  • 人類最古の“絵の具工房”、南アの洞窟

    アフリカのブロンボス洞窟で見つかった10万年前のアワビの貝殻。縁には粘土状物質(オーカー)まみれの砥石が置かれている。 Photograph courtesy Science/AAAS 内側に鮮紅色(せんこうしょく)の粉末が付着した10万年前のアワビの貝殻2枚が発見された。最古の“絵の具工房”が存在した証拠と見られている。 発見場所は、南アフリカ南岸の町スティル・ベイに程近いブロンボス洞窟。さまざまな色の粘土状物質(オーカー)、アザラシ骨粉、炭、珪岩片、液体(水など)を混ぜ合わせた、原始的な顔料と考えられる。 研究チームを率いた考古学者クリストファー・ヘンシルウッド氏は、「1つの貝殻は開口部が丸い石で閉じられていた。外すと、中は真っ赤に染まっていた」と語る。同氏は、ノルウェーのベルゲン大学と南アフリカのウィットウォータースランド大学に在籍している。 洞窟では、砥石、ハンマーストーン(石器

    人類最古の“絵の具工房”、南アの洞窟
  • 古代ローマ兵士の靴60足、英国で発見

    ローマ時代のものとみられる、捨てられたが大量に見つかった古代の砦の発掘現場。 Photograph courtesy Martin Cook ローマ帝国の兵士が履いていたとみられる約60足のサンダルとが、スコットランドのキャメロンでスーパーマーケット建設予定地から見つかった。 約2000年前のものとみられる革製の履物は、ローマ時代の宝石や硬貨、陶器、動物の骨などとともに見つかった。この発掘場所は、当時のローマ帝国領土の北端に位置している。 今回発掘されたローマ時代のやサンダルなどの遺物群は、スコットランドで見つかったものとしては最大級の規模で、アントニヌスの長城沿いに設けられた紀元2世紀の砦の出入り口付近に掘られた溝の中から最近発見された。アントニヌスの長城は、スコットランドがローマ帝国の領土だったごく短い期間に、北方のカレドニア人(スコットランド人)の侵入を防ぐために東西60キロに

    古代ローマ兵士の靴60足、英国で発見
  • 米先住民の頭蓋骨萎縮、タールが原因か

    アメリカ先住民のチュマッシュ族が作るカヌーは、板と板の隙間をタールでふさいでいた(想像図)。 Illustration by W. Langdon Kihn, National Geographic 現在のカリフォルニア州付近で暮らしていたアメリカ先住民「チュマッシュ族」について、健康の悪化が進んでいたという研究結果が公表された。頭蓋骨萎縮などの原因として考えられるのが、日常的に使用されていたタールだという。 タールには天然の化学物質「多環芳香族炭化水素(PAH)」が含まれている。チュマッシュ族の頭蓋骨が約7500年間に萎縮した要因として、PAHが考えられるという。集団の頭蓋骨萎縮は発育不全の表れであり、生物学的に見ると全般的な健康状態悪化を示している。 チュマッシュ族が住んでいたのは、ロサンゼルスからサンディエゴ沖のチャンネル諸島。各集落には最大2万の人口が密集し、貝殻で作ったビーズが貨

    米先住民の頭蓋骨萎縮、タールが原因か
  • 食人の痕跡を示す骨、メキシコで発見

    メキシコ、マゲイ洞窟(Cueva del Maguey)における住居の発掘作業。人の習慣を示す骨はここで見つかった。右下は、見つかった矢2と人間の肋骨1。文様が刻まれている。 Photograph courtesy Jose Luis Punzo, INAH 現在のメキシコ北部に孤立して暮らしていた先住民が、トウモロコシの豊作を願って同族の人間の肉をべていたという説は、以前から知られていた。 そしてこのほど、シシメ(Xixime)と呼ばれる先住民が、実際に人の習慣を有していたことが裏付けられたという。40ほどの人骨を分析した結果、ゆでて肉をはがされた痕跡が見つかったのだ。 イエズス会宣教師が残した歴史的記録によると、シシメの人々は、敵の肉体と魂を取り込み、きれいにした骨を儀式に用いることで、穀物の豊作が約束されると信じていたという。 今回見つかった人骨は、人が「彼らの世界観、

    食人の痕跡を示す骨、メキシコで発見
  • 海への生贄か、チムー王国の遺跡発掘

    2011年9月、ペルー北部の漁村ワンチャキート(Huanchaquito)に近い砂丘で、42体の子どもの骨が発掘された。800年前のチムー王国時代に埋葬されたと考えられ、浅い地中から見つかったという。 Photograph by Mariana Bazo, Reuters 2011年9月、ペルー北部の漁村ワンチャキート(Huanchaquito)に近い砂丘で、42体の子どもの骨が発掘された。800年前のチムー王国時代に埋葬されたと考えられ、浅い地中から見つかったという。 付近には、ラクダ科の動物76頭の骨も埋まっていた。リャマの可能性が高いが、アルパカとも考えられる。犠牲になった子どもたちを死後の世界に運ぶ意図があると研究者たちは推測している。 子どもたちはチムー王国の宗教儀式で殺されたのではないかと、考古学者オスカー・ガブリエル・プリエト氏(写真)のチームは考えている。高度な灌漑技術で知

    海への生贄か、チムー王国の遺跡発掘
  • 子どもの生贄、チムー王国の遺跡発掘

    ペルー北部の砂丘で発見されたチムー王国時代の子どもの頭蓋骨。800年以上前、海に祈願する豊穣の儀式で生贄として捧げられたと見られるが、まだ髪の毛も残っている。 Photograph by Mariana Bazo, Reuters ペルー北部の砂丘で発見されたチムー王国時代の子どもの頭蓋骨。800年以上前、海に祈願する豊穣の儀式で生贄として捧げられたと見られるが、まだ髪の毛も残っている。 42体の子どもが身に着けていた衣服から、チムー王国時代と特定。アメリカ、イェール大学の考古学者オスカー・ガブリエル・プリエト氏は、「布地の織り方は、明らかにチムーの特徴を示している」と話す。 約10体の骨格には、手斧などの刃物で胸を強く切りつけられた跡が残っていた。胸郭を折ってこじ開け、心臓を取り出した後に神に捧げたと考えられる。心臓は人間の体で最も霊的な価値のある部分とされていた。 臓器を取り出した跡に

    子どもの生贄、チムー王国の遺跡発掘
  • 動物と埋葬、チムー王国の遺跡発掘

    ペルー北部の砂丘から、子どもや動物の骨が大量に発見された。約800年前のチムー王国時代に生贄の儀式で埋葬されたと見られている。「動物はリャマの可能性が高いが、アルパカかもしれない。確定にはさらなる調査が必要だ」と考古学者のオスカー・ガブリエル・プリエト氏は語る。 Photograph by Mariana Bazo, Reuters ペルー北部の砂丘から、子どもや動物の骨が大量に発見された。約800年前のチムー王国時代に生贄の儀式で埋葬されたと見られている。「動物はリャマの可能性が高いが、アルパカかもしれない。確定にはさらなる調査が必要だ」と考古学者のオスカー・ガブリエル・プリエト氏は語る。「アンデス山脈の古代文明の多くで、リャマは死者の魂を来世に運ぶと信じられていた。子どもと一緒に埋葬されていても不思議ではない」と同氏は説明する。見つかった76頭分は人骨の数を大きく上回るが、その理由は不

    動物と埋葬、チムー王国の遺跡発掘
  • 出土した骨、チムー王国の遺跡発掘

    800年前のチムー王国の埋葬地から発掘された動物の骨。リャマかアルパカと見られている。考古学者オスカー・ガブリエル・プリエト氏の話によると、ペルーで別のチムー遺跡を発掘中に、現地の村人から砂丘にある人間の頭蓋骨をいくつか調べないかと持ちかけられたという。 Photograph by Mariana Bazo, Reuters 800年前のチムー王国の埋葬地から発掘された動物の骨。リャマかアルパカと見られている。考古学者オスカー・ガブリエル・プリエト氏の話によると、ペルーで別のチムー遺跡を発掘中に、現地の村人から砂丘にある人間の頭蓋骨をいくつか調べないかと持ちかけられたという。「彼は、“信じてくれ。ぜひ来るべきだ”と訴えたんだ」とプリエト氏は振り返る。現場にかけつけると、6体前後の子どもの骨がすぐ見つかった。さらに調査を進めると、子どもと動物の骨が相次いで現れた。 ニューヨーク州立大学ビンガ

    出土した骨、チムー王国の遺跡発掘
  • 貴族が操縦、東周王朝の戦車発掘

    中国中央部の河南省洛陽市で最近発掘された数千年前の二輪戦車。乾燥を防ぐため作業員が水を散布している。国営メディア新華社によると、この墓からは二輪戦車5台とウマ12頭の骨が見つかったという。約2500年前の東周王朝期に、大臣など貴族階級の葬儀の一環として造営されたと考えられている。 Photograph by Zhang Xiaoli, Xinhua via Fame/Barcroft 中国中央部の河南省洛陽市で最近発掘された数千年前の二輪戦車。乾燥を防ぐため作業員が水を散布している。 国営メディア新華社によると、この墓からは二輪戦車5台とウマ12頭の骨が見つかったという。約2500年前の東周王朝期に、大臣など貴族階級の葬儀の一環として造営されたと考えられている。 「周王朝時代、二輪戦車は重要な兵器で、貴族出身の戦士が操縦した。彼らは矛槍(ほこやり)や槍の扱いにも長けていた」と、テキサス大学

    貴族が操縦、東周王朝の戦車発掘
  • ピラミッドの内部へ、マヤの王墓発見

    ナクムのピラミッド内部へ降りていく考古学者たち。最近公開された写真で、このピラミッドは以前は建造物15号と呼ばれていた。 Photograph courtesy Robert Stabonski, Nakum Archaeological Project ナクムのピラミッド内部へ降りていく考古学者たち。最近公開された写真で、このピラミッドは以前は建造物15号と呼ばれていた。 この古代の建造物は、2006年の発掘開始以前はジャングルに完全に埋没しており、土と植物に覆われた小さな丘だけがその存在をほのめかしていた。この丘と、隣接する別の塚(建造物14号)は、ナクム遺跡のパティオ(中庭)エリアの東側に位置している。 「マヤ人は東という方角を重要視していたため、私は2003年から、ナクムに王墓が存在するなら、この建造物から見つかるはずだと予想していた」と研究の共著者で、ポーランドのクラクフにあるヤ

    ピラミッドの内部へ、マヤの王墓発見
  • 古代マヤの女王の墓を発見、グアテマラ

    グアテマラにあるマヤ文明のナクム遺跡で2つの王墓が発見され、その1つから、女性の支配者のものとみられる遺骨が見つかった。頭部はなぜか2つの鉢状の容器に挟まれていた。 Photograph courtesy Wieslaw Koszkul, Nakum Archaeological Project グアテマラにあるマヤ文明のナクム遺跡で2つの王墓が発見された。ひとつは1300年前のもので、その下の約2000年前の墓から、女性の支配者のものとみられる遺骨が見つかった。 墓が見つかった建造物は、2006年の発掘開始以前はジャングルに完全に埋没しており、土と植物に覆われた小さな丘だけがその存在をほのめかしていた。これは建造物15号と呼ばれたピラミッドで、ナクム遺跡のパティオ(中庭)エリアの東側に位置している。 研究の共著者で、ポーランドのクラクフにあるヤギェウォ大学考古学研究所に所属するビエスラフ

    古代マヤの女王の墓を発見、グアテマラ
  • 手つかずの墓、マヤの王墓発見

    建造物15号のピラミッドの上層を発掘する考古学者たち(2008年撮影)。この墓に埋葬されていたのは、高位の人物であることがわかっている。貴重な副葬品に囲まれていただけでなく、埋葬されてから200年の間、捧げ物が続いていたためだ。 Diagram courtesy Robert Stabonski, Nakum Archaeological Project 建造物15号のピラミッドの上層を発掘する考古学者たち(2008年撮影)。 この墓に埋葬されていたのは、高位の人物であることがわかっている。貴重な副葬品に囲まれていただけでなく、埋葬されてから200年の間、捧げ物が続いていたためだ。 「建造物15号の周辺には盗掘者の掘った穴が残っているにもかかわらず、墓が盗掘にあっていなかったことは実に驚きだ」とナクム遺跡発掘プロジェクトの責任者を務めるヤロスワフ・ジラウカ(Jaroslaw Zralka)

    手つかずの墓、マヤの王墓発見
  • 頭にかぶせられた容器、マヤの王墓発見

    2000年前の墓から見つかった女性の遺体は、頭部に容器をかぶせられていた。なぜ容器をかぶせて埋葬されていたのか、研究者たちにもはっきりした理由はわからないが、「ティカル遺跡でも同様の例が見つかっている」という。 Photograph courtesy Jarostaw Zratka, Nakum Archaeological Project 2000年前の墓から見つかった女性の遺体は、頭部に容器をかぶせられていた。 なぜ容器をかぶせて埋葬されていたのか、研究者たちにもはっきりした理由はわからないが、「ティカル遺跡でも同様の例が見つかっている」という。同じくグアテマラにあるティカル遺跡は、コロンブス到来以前のマヤ文明において、最も繁栄していた都市のひとつだ。 墓から見つかった王族の性別も研究チームを驚かせた。「男性だと予想していたので驚いた」と研究の共著者で、ポーランドのクラクフにあるヤギェ

    頭にかぶせられた容器、マヤの王墓発見
  • 海賊のイメージは娯楽映画の産物

    18世紀の軍人ジョン・ポール・ジョーンズを海賊に見立てたイギリスの風刺画(1917年)。 Illustration courtesy Harris & Ewing Collection, Library of Congress 9月19日は「世界 海賊のように喋る日(International Talk Like a Pirate Day)」である。「shiver me timbers(ちくしょう)」など17~18世紀の海賊が使ったとされる言い回しを用いて参加者同士が会話する催しで、1995年にアメリカのオレゴン州で始まった。 黄金時代の海賊たちは、いつも大げさでガラの悪い会話をしていたのだろうか? 専門家の多くは否定的だ。 海賊に詳しい歴史家コリン・ウッダード氏は、「海賊弁については学術的な証拠がほとんど残っていない」と話す。会話の録音はもちろん無く、文字資料についても、その場に居合わせ

    海賊のイメージは娯楽映画の産物
  • 人間の自信過剰は進化の置き土産?

    ゴリアテの首をはねようとするダビデの図。旧約聖書の挿話では、ダビデは絶大な強さを誇るゴリアテに自信を持って臨み、勝利を収めたとされている。 Illustration courtesy of Lebrecht Music and Arts Photo Li/Alamy 自分の能力を実際より高く評価することが成功を招く場合のあることが、新たな研究で明らかになった。 今回の研究を率いたスコットランド、エディンバラ大学の進化生物学者ドミニク・ジョンソン氏は、人が自らの能力を過大評価しがちな点は、かなり以前から心理学者によって確認されてきたと語る。 専門家の中には、自信過剰は目標に向かう熱意や決意などを高め、自己暗示によって願望を叶えるという意味ではプラスに働くとの見方もある。 しかし自分が優れているという過剰な思い込みは、誤った評価や非現実的な期待、危険な判断を招くことも研究から明らかになっている

    人間の自信過剰は進化の置き土産?
  • 巨大グラディエーター養成所跡を発見

    ウィーン近郊で見つかった古代ローマの剣闘士養成学校をデジタルで再現。 Illustration courtesy LBI ArchPro オーストリアのウィーン近郊で、古代ローマの巨大な剣闘士養成学校の遺跡が見つかった。大規模な複合施設で、ローマのコロッセオ周辺の養成施設に匹敵する。 発見された遺跡は木製の訓練用ダミーの痕跡など、ローマの剣闘士養成学校(ラテン語でルードゥス)にはこれまで見られなかった特色がある。門の外で剣闘士の墓地が見つかったが、ルードゥスの構内にあるのは初めてだと調査チームは話している。 遺跡が発見されたカルヌントゥム考古学公園の科学主任であるフランツ・フーマー氏は、「私のキャリアで考えられる最も興味深いもののひとつだ」とも話している。 養成学校はおそらく、隣接する1万3000人収容の円形闘技場と同時に作られている。円形闘技場はマルクス・アウレリウスがローマ皇帝だった西

    巨大グラディエーター養成所跡を発見
  • 第2の“9・11”を防ぐ6つの新技術

    旅客機の翼下に装備されたミサイル対策装置JETEYEの一部(資料写真)。 Photograph by Rex C. Curry, AP アメリカ同時多発テロから10年が経とうとしている。しかし不安定な世界情勢は変わらず、第2の9・11の可能性も捨てきれない。いま再び、カッターナイフで武装したテロ集団が旅客機に侵入し、自爆攻撃を試みたらどうなるのだろう。 テロリストがコックピットに押し入ると、センサーが作動して地上のテロ対策機関に通報が入る。当局者は遠隔操作で自動操縦装置に切り替え、コックピットでは一切操縦ができなくなる。安全な場所に着陸させると、アメリカ海軍特殊部隊が機内に突入、テロリストを制圧する。 非現実的なシナリオと感じるかもしれないが、決して突飛な話ではない。 アメリカ政府の公文書、学術論文、テロ対策専門家などによると、旅客機の遠隔操作は実用化が近い対策技術の1つで、9・11のよう

    第2の“9・11”を防ぐ6つの新技術
  • 悪夢の日、9・11から10年

    2001年9月11日午前9時3分(現地時間)、ニューヨーク世界貿易センター(WTC)の南棟にユナイテッド航空175便が突入した。画像は地上で撮影された動画より。9・11テロでは4機の旅客機がハイジャックされ、ニューヨーク、バージニア州、ペンシルバニア州で約3000人の命が奪われた。 Still from video by Evan Fairbanks, Magnum Photos 2001年9月11日午前9時3分(現地時間)、ニューヨーク世界貿易センター(WTC)の南棟にユナイテッド航空175便が突入した。画像は地上で撮影された動画より。 9・11テロでは4機の旅客機がハイジャックされ、ニューヨーク、バージニア州、ペンシルバニア州で約3000人の命が奪われた。 テロ発生から10年の今年、ナショナル ジオグラフィックでは、アメリカ合衆国史上最悪の事件を象徴的に伝える写真をピックアップした。

    悪夢の日、9・11から10年
  • 断たれた退路、9・11から10年

    9・11テロ直後の世界貿易センター(WTC)北棟。せまり来る火の手と炎熱で行き場を失った人々が、地上約400メートルの上層階の窓から身を乗り出している。「10年前、このような衝撃的な写真の掲載は、激しい社会的論議を呼び起こした。今でも平静さを保てない人は多いが、しだいに受け入れられるようになっている」と国立9・11記念博物館のアドバイザー、クリフォード・チャニン氏は話す。 Photograph by Jose Jimenez, Primera Hora/Getty Images 9・11テロ直後の世界貿易センター(WTC)北棟。せまり来る火の手と炎熱で行き場を失った人々が、地上約400メートルの上層階の窓から身を乗り出している。「10年前、このような衝撃的な写真の掲載は、激しい社会的論議を呼び起こした。今でも平静さを保てない人は多いが、しだいに受け入れられるようになっている」と国立9・11

    断たれた退路、9・11から10年
  • 落下、9・11から10年

    9・11テロ発生時に、世界貿易センター(WTC)の北棟から飛び降りる男性をとらえた衝撃的な写真。「フォーリング・マン(落下する男性)」として広く知られている。この男性の他にも、上層階にいた多くの人々が身を投げて死亡した。2001年当時、このような極限状況を公にすべきか否かについては意見が分かれた。 Photograph by Richard Drew, AP 9・11テロ発生時に、世界貿易センター(WTC)の北棟から飛び降りる男性をとらえた衝撃的な写真。「フォーリング・マン(落下する男性)」として広く知られている。この男性の他にも、上層階にいた多くの人々が身を投げて死亡した。 2001年当時、このような極限状況を公にすべきか否かについては意見が分かれた。 間もなく一般公開される国立9・11記念博物館のクリフォード・チャニン氏は次のように話す。「博物館ではビルから落下する人々の写真も展示する

    落下、9・11から10年
  • 逃げ惑う人々、9・11から10年

    崩壊するニューヨーク、世界貿易センター(WTC)を背に逃げる市民。巨大な灰色の煙が青空を覆い、周辺は大量の粉じんや灰に包まれた。2001年9月11日、アメリカ最大の都市ニューヨークを襲った悲劇は世界を震撼させた。犠牲者の出身国は約115カ国に及んでいる。 Photograph by Suzanne Plunkett, AP 崩壊するニューヨーク、世界貿易センター(WTC)を背に逃げる市民。巨大な灰色の煙が青空を覆い、周辺は大量の粉じんや灰に包まれた。 2001年9月11日、アメリカ最大の都市ニューヨークを襲った悲劇は世界を震撼させた。犠牲者の出身国は約115カ国に及んでいる。 Photograph by Suzanne Plunkett, AP

    逃げ惑う人々、9・11から10年
  • ブルックリン橋、9・11から10年

    2001年9月11日朝、同時多発テロによりビジネスの中心地であるニューヨークの様子は一変した。写真はテロ発生直後のブルックリン橋。煙が立ち込め混乱状態にあるマンハッタンから避難すべく、出勤して間もない人々が先を争うように引き返していく。 Photograph by Daniel Shanken, AP 2001年9月11日朝、同時多発テロによりビジネスの中心地であるニューヨークの様子は一変した。 写真はテロ発生直後のブルックリン橋。煙が立ち込め混乱状態にあるマンハッタンから避難すべく、出勤して間もない人々が先を争うように引き返していく。 Photograph by Daniel Shanken, AP

    ブルックリン橋、9・11から10年
  • 廃墟と化した街路、9・11から10年

    9・11テロ事件後、ニューヨークの路上は灰に覆い尽くされた。「10年経った今でも、写真の生々しさは変わらない。テロ直後に人々が体験した非現実感が戻ってくる」と、国立9・11記念博物館のアドバイザー、クリフォード・チャニン氏は話す。「当に起きた事件なのか、今でも信じられなくなることがある」。 Photograph by Jason Florio, Corbis 9・11テロ事件後、ニューヨークの路上は灰に覆い尽くされた。「10年経った今でも、写真の生々しさは変わらない。テロ直後に人々が体験した非現実感が戻ってくる」と、国立9・11記念博物館のアドバイザー、クリフォード・チャニン氏は話す。「当に起きた事件なのか、今でも信じられなくなることがある」。 Photograph by Jason Florio, Corbis

    廃墟と化した街路、9・11から10年
  • 消せない記憶、9・11から10年

    白煙を上げる世界貿易センター(WTC)南棟のガレキ。9・11テロから約1カ月後の10月9日も、まだくすぶり続けていた。10年が経過した現在、跡地のグラウンド・ゼロでは新しいビルの建設が進められているが、当時の惨状が人々の記憶から消えることはない。 Photograph by Michael Conroy, AP 白煙を上げる世界貿易センター(WTC)南棟のガレキ。9・11テロから約1カ月後の10月9日も、まだくすぶり続けていた。 10年が経過した現在、跡地のグラウンド・ゼロでは新しいビルの建設が進められているが、当時の惨状が人々の記憶から消えることはない。 Photograph by Michael Conroy, AP

    消せない記憶、9・11から10年
  • 2機目の衝突、9・11から10年

    煙と炎に包まれたニューヨークの世界貿易センター(WTC)。2001年9月11日、WTCツインタワー北棟に突入したアメリカン航空11便に続き、ユナイテッド航空175便が南棟に突入し爆発炎上、2棟は相ついで崩落した。 Photograph by Spencer Platt, Getty Images 煙と炎に包まれたニューヨークの世界貿易センター(WTC)。2001年9月11日、WTCツインタワー北棟に突入したアメリカン航空11便に続き、ユナイテッド航空175便が南棟に突入し爆発炎上、2棟は相ついで崩落した。 イスラム原理主義過激派の国際組織アルカイーダのテロリストによってハイジャックされた2機のボーイング767の衝突とそれに続くツインタワーの崩壊で、ニューヨーク市では2800人余りが犠牲となった。 Photograph by Spencer Platt, Getty Images

    2機目の衝突、9・11から10年
  • 物言わぬ証人、9・11から10年

    2001年9月11日、煙を上げる世界貿易センター(WTC)ツインビルを背に立つニューヨークのシンボル、エンパイア・ステート・ビルディング。 Photograph by Marty Lederhandler, AP 2001年9月11日、煙を上げる世界貿易センター(WTC)ツインビルを背に立つニューヨークのシンボル、エンパイア・ステート・ビルディング。 Photograph by Marty Lederhandler, AP

    物言わぬ証人、9・11から10年
  • 煙とちりの雲、9・11から10年

    2001年9月11日、雲のような煙とちりに包まれたニューヨーク中心街、ロウアーマンハッタン(マンハッタン島南端部)のビル群。WTCツインビルの2棟目が崩落した直後、ハドソン川を挟んで対岸のジャージーシティから撮影。 Photograph by Steffan Kaplan, New York Times via Redux 2001年9月11日、雲のような煙とちりに包まれたニューヨーク中心街、ロウアーマンハッタン(マンハッタン島南端部)のビル群。WTCツインビルの2棟目が崩落した直後、ハドソン川を挟んで対岸のジャージーシティから撮影。 Photograph by Steffan Kaplan, New York Times via Redux

    煙とちりの雲、9・11から10年
  • アルプスの綱渡り、8月ベストフォト

    ノック氏はドイツ、オーストリア、スイスで、7日間に7つの高所綱渡り世界記録を打ち立てる試みに挑戦した。しかしUPI通信社によると、8月27日にスイスのトゥーン湖で強風に見舞われ計画を断念している。 ◆ベストフォト選考理由 「写真の構図には、“地平線を中央に置かない”、“何もない空を過度にフレームに入れない”といったルールがあるが、あえて破ることで素晴らしい一枚に仕上がっている。綱渡り名人の姿が風景の中で際立ち、見る者の感覚に強く訴えかけてくる」、クリス・コムズ氏(ニュースフォト編集者)。 「縦の構図によってノック氏が歩くワイヤーの高さが強調され、命知らずの挑戦の迫力が直に伝わってくる」、アレクサ・キーフ氏(フォトプロデューサー)。 Photograph by Arno Balzarini, European Pressphoto Agency スイス東部、ディアボレッツァ展望台のロープウェ

    アルプスの綱渡り、8月ベストフォト
  • カモフラージュ、8月ベストフォト

    自分の体にペイントして周囲に溶け込む“カモフラージュ・アート”で知られる中国人アーティスト、劉勃麟(Liu Bolin)氏。北京の自身のスタジオで8月10日に撮影。この後アシスタントが顔にペイントを施し、ソフトドリンクの陳列棚と完全に同化した。 Photograph from AP 自分の体にペイントして周囲に溶け込む“カモフラージュ・アート”で知られる中国人アーティスト、劉勃麟(Liu Bolin)氏。北京の自身のスタジオで8月10日に撮影。この後アシスタントが顔にペイントを施し、ソフトドリンクの陳列棚と完全に同化した。「可塑剤」と題されたこの作品のテーマは、「台湾で発覚した飲料への可塑剤混入問題に対する言葉にならないほどの衝撃」とAP通信は伝えている。可塑剤は来、プラスチックなどの柔軟性を高めるために使われ、品への添加は認められていない。 ◆ベストフォト選考理由 「最も魅力的な瞬間

    カモフラージュ、8月ベストフォト
  • 伝説の黒ひげ海賊船、当局が本物と認定

    海賊黒ひげの旗艦「クイーン・アンズ・リベンジ」号から見つかった鋳鉄(ちゅうてつ)製の大砲。(Photograph by Robert R. Clark, National Geographic) 1995年にアメリカ、ノースカロライナ州沖で見つかった沈没船が、18世紀の悪名高き海賊「黒ひげ」の旗艦「クイーン・アンズ・リベンジ」(アン女王の復讐)号と公式に認定された。 クイーン・アンズ・リベンジは1718年、同州の港町ビューフォートに近い砂州で座礁し、黒ひげ一行は船を放棄したことで知られている。 ノースカロライナ州文化財課は最近まで、沈没船がクイーン・アンズ・リベンジ号であるという断定を避けてきた。しかし今回、包括的な調査によって、歴史上最も恐ろしく、最も個性的な海賊の船であると発表された。 「決定的な証拠が出てきたわけではない。いくつもの要素を積み重ねていった結果、この結論にたどり着いた」

    伝説の黒ひげ海賊船、当局が本物と認定
  • 乗員のパイプ、9・11跡地から木造船

    世界貿易センター(WTC)の跡地「グラウンド・ゼロ」から2010年夏に発掘されたパイプの火皿(下の市松模様の1升が1センチ)。数百年前のハドソン川埋め立て工事で木造船を沈めた際に、船内に残っていたようだ。「火をつけた痕跡があるので、誰かが使用していたのは確かだ。乗組員、もしかしたら船大工達かもしれない」とエンジニアリング会社AKRFの考古学者エリザベス・ミード氏は語る。 Photograph courtesy A. Michael Pappalardo, AKRF 世界貿易センター(WTC)の跡地「グラウンド・ゼロ」から2010年夏に発掘されたパイプの火皿(下の市松模様の1升が1センチ)。数百年前のハドソン川埋め立て工事で木造船を沈めた際に、船内に残っていたようだ。「火をつけた痕跡があるので、誰かが使用していたのは確かだ。乗組員、もしかしたら船大工達かもしれない」とエンジニアリング会社AK

    乗員のパイプ、9・11跡地から木造船
  • 装飾タイル、9・11跡地から木造船

    2001年9月11日のアメリカ同時多発テロで崩壊した世界貿易センター(WTC)跡地で、18世紀建造の木造船の残骸が発見された。周辺でも数多くの遺物が発掘されている。ニューヨークが急激に成長していた数百年前には、埋め立て工事に伴ってさまざまな品々もハドソン川へ捨てられていたようだ。写真の装飾タイルの破片もその一例だ。 Photograph courtesy A. Michael Pappalardo, AKRF 2001年9月11日のアメリカ同時多発テロで崩壊した世界貿易センター(WTC)跡地で、18世紀建造の木造船の残骸が発見された。周辺でも数多くの遺物が発掘されている。ニューヨークが急激に成長していた数百年前には、埋め立て工事に伴ってさまざまな品々もハドソン川へ捨てられていたようだ。写真の装飾タイルの破片もその一例だ。 ニューヨーク・ニュージャージー港湾公社と契約しているエンジニアリング

    装飾タイル、9・11跡地から木造船
  • 船首を発見、9・11跡地から木造船

    今年は9・11アメリカ同時多発テロ発生から10年目を迎える。世界貿易センター(WTC)の跡地「グラウンド・ゼロ」では、再開発の途中で18世紀の木造船の船尾が発掘されており、今年7月には船首部分もその姿を現した。 Photograph by Lucas Jackson, Reuters 今年は9・11アメリカ同時多発テロ発生から10年目を迎える。世界貿易センター(WTC)の跡地「グラウンド・ゼロ」では、再開発の途中で18世紀の木造船の船尾が発掘されており、今年7月には船首部分もその姿を現した。 現在、5棟の高層ビルと国立9・11記念博物館からなる新世界貿易センタービルが建設中で、木造船は駐車場予定地で見つかった。 マンハッタン南部西岸が埋め立てられる数百年前、グラウンド・ゼロ付近はハドソン川を航行する船の停泊地だった。 ニューヨーク・ニュージャージー港湾公社と契約しているエンジニアリング会社

    船首を発見、9・11跡地から木造船
  • 船体の測定、9・11跡地から木造船

    2010年夏に世界貿易センター(WTC)跡地で発見された木造船の一部(長さ10メートル)。周辺のビルの基礎は、固い岩盤に到達するまで掘削されていた。しかしWTCはそれほど深くなかったため、船体や他の埋蔵物が破壊されずに残ったと考えられる。 Photograph by Mark Lennihan, AP 2010年夏に世界貿易センター(WTC)跡地で発見された木造船の一部(長さ10メートル)。周辺のビルの基礎は、固い岩盤に到達するまで掘削されていた。しかしWTCはそれほど深くなかったため、船体や他の埋蔵物が破壊されずに残ったと考えられる。 考古学者のエリザベス・ミード氏はこう話す。「都会の真ん中で1、2街区にも相当する範囲をこれほど深く掘り下げた事例はないだろう。我々としても全く予想していなかった。しかも、ニューヨーク市内で船が発掘されるのは1982年以来で、非常に珍しい」。 Photogr

    船体の測定、9・11跡地から木造船
  • 木片の来歴、9・11跡地から木造船

    世界貿易センター(WTC)跡地で発掘された18世紀の船舶の木片を洗浄し、目印を付けていくボランティア・スタッフたち。2010年、メリーランド州セントレオナルドの州立考古学研究所(Archaeological Conservation Laboratory)で撮影。 Photograph by Marvin Joseph, The Washington Post/Getty Images 世界貿易センター(WTC)跡地で発掘された18世紀の船舶の木片を洗浄し、目印を付けていくボランティア・スタッフたち。2010年、メリーランド州セントレオナルドの州立考古学研究所(Archaeological Conservation Laboratory)で撮影。 コロンビア大学の調査によるとこれらの部材は、遅くとも1770年代までに伐採されたフィラデルフィア付近の木材が使われているという。当時は独立宣言の

    木片の来歴、9・11跡地から木造船
  • 封鎖突破船、南北戦争時代の沈没船

    バミューダ諸島の沖で147年前に沈没した外輪式蒸気船メアリーセレスティア号の残骸から見つかった塗料缶の破片を、考古学者のジム・デルガド氏が調査している。南北戦争時代の封鎖突破船だ。メアリーセレスティア号は1864年9月6日、当時もイギリス領だったバミューダ諸島、サウサンプトンの港をジョン・バージンを舵手として出航した。 Photograph by Tane Casserley, NOAA バミューダ諸島の沖で147年前に沈没した外輪式蒸気船メアリーセレスティア号の残骸から見つかった塗料缶の破片を、考古学者のジム・デルガド氏が調査している。南北戦争中、北軍によって海上封鎖された南部連合への物資輸送を担った封鎖突破船だ。 昨冬の嵐が沈泥が洗い流され、新たに露出した積み荷などの遺物を引き揚げるため調査チームが海域に潜った。香水のビンや未開封のワインなどが見つかっている。 メアリーセレスティア号は

    封鎖突破船、南北戦争時代の沈没船
  • 19世紀の香り、南北戦争時代の沈没船

    バミューダ諸島の沖で147年前に沈没した南北戦争時代の封鎖突破船、メアリーセレスティア号の残骸から見つかった19世紀のオーデコロンを米国海洋大気庁(NOAA)の考古学者ウェイン・ルサルディ氏が調べている。フロリダウォーターという、現在も作られている柑橘系のオーデコロンが瓶に入っている。沈没船の船倉で、4のワイン、香水瓶、ヘアブラシ、などとともに発見された。 Photograph by Tane Casserley, NOAA バミューダ諸島の沖で147年前に沈没した南北戦争時代の封鎖突破船、メアリーセレスティア号の残骸から見つかった19世紀のオーデコロンを米国海洋大気庁(NOAA)の考古学者ウェイン・ルサルディ氏が調べている。フロリダウォーターという、現在も作られている柑橘系のオーデコロンが瓶に入っている。沈没船の船倉で、4のワイン、香水瓶、ヘアブラシ、などとともに発見された。 同

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  • “熟成”ワイン、南北戦争時代の沈没船

    沈没したメアリーセレスティア号を調査する考古学者チームは、コルクで栓をされたワイン瓶が4入った木箱を発見した(写真)。木箱には藁(わら)が詰められ、船首部分にある乗組員のロッカーにしまってあった。 Photograph by Tane Casserley, NOAA 沈没したメアリーセレスティア号を調査する考古学者チームは、コルクで栓をされたワイン瓶が4入った木箱を発見した(写真)。木箱には藁(わら)が詰められ、船首部分にある乗組員のロッカーにしまってあった。 現在バミューダで分析が行われているが、調査チームの一員である考古学者のドミニク・リッソーロ氏は、おそらく甘い白ワインで、マデイラのような酒精強化ワインかもしれないと話す。 リッソーロ氏によると、コルク越しにワインのにおいをかぐことができたが、「かなり強烈なにおい」だったという。同氏が所属するウェイト研究所は、バミューダの保全局お

    “熟成”ワイン、南北戦争時代の沈没船
  • ダブルダイブ、7月ベストフォト

    ガラス張りの建物に映った飛び込み競技中のミーガン・ベンフェイト選手(カナダ)。左が鏡像で、建物には焦点が合っていない。中国の上海で開かれた第14回世界水泳選手権、女子高飛び込み準決勝にて(2011年7月20日撮影)。 Photograph by Feng Li, Getty Images ガラス張りの建物に映った飛び込み競技中のミーガン・ベンフェイト選手(カナダ)。左が鏡像で、建物には焦点が合っていない。中国の上海で開かれた第14回世界水泳選手権、女子高飛び込み準決勝にて(2011年7月20日撮影)。◆ベストフォト選考理由 「周囲の反射に細かく注意を向けた撮影者を賞賛したい。シルエットを避ける、画面を埋める、といったよく言われる撮影の鉄則のいくつかを巧みに破り、結果としてさらに力強い写真となっている」、クリス・コムズ氏(ニュースフォト編集者)。 「これは写真だろうか? それともロールシャッ

    ダブルダイブ、7月ベストフォト
  • 噴出直前の間欠泉、7月ベストフォト

    アイスランドのストロックル間欠泉が噴き上がる直前の盛り上がった水面(7月4日撮影)。米National Geographicの写真投稿サイト「My Shot」のユーザー、イスラエルのルーティ・フォートレフリッヒ(Ruthy Vortrefflich)氏がこの一瞬をとらえた。「空気の中に満ちた緊張感に惹きつけられた」と同氏は書いている。 Photograph by Ruthy Vortrefflich, My Shot アイスランドのストロックル間欠泉が噴き上がる直前の盛り上がった水面(7月4日撮影)。米National Geographicの写真投稿サイト「My Shot」のユーザー、イスラエルのルーティ・フォートレフリッヒ(Ruthy Vortrefflich)氏がこの一瞬をとらえた。「空気の中に満ちた緊張感に惹きつけられた」と同氏は書いている。◆ベストフォト選考理由 「すごい! この写

    噴出直前の間欠泉、7月ベストフォト
  • 巡礼者の告解、トラベルフォト2011

    スペイン北西部の街サンティアゴ・デ・コンポステーラの大聖堂で、巡礼者の告解に耳を傾ける司祭。この街はキリスト教三大巡礼地の一つであり、「カミーノ・デ・サンティアゴ(聖ヤコブの巡礼路)」の終着地として知られる。 Photograph by Jaime Murcia スペイン北西部の街サンティアゴ・デ・コンポステーラの大聖堂で、巡礼者の告解に耳を傾ける司祭。この街はキリスト教三大巡礼地の一つであり、「カミーノ・デ・サンティアゴ(聖ヤコブの巡礼路)」の終着地として知られる。 ナショナル ジオグラフィック トラベラー誌主催、2011年度写真コンテストで第2位を受賞。オーストラリア在住のジャイメ・マーシア(Jaime Murcia)氏が撮影し、「偶然の瞬間(Spontaneous Moments)」部門へのエントリーだった。 同誌のダン・ウェスターグレン氏は次のようにコメントした。「場所の感覚がよく

    巡礼者の告解、トラベルフォト2011
  • イルカと共演、トラベルフォト2011

    バハマの海で踊るように泳ぐダイバーとマダライルカ。ナショナル ジオグラフィック トラベラー誌が主催する2011年度写真コンテストで入賞を果たした。 Photograph by Becky Kagan Schott バハマの海で踊るように泳ぐダイバーとマダライルカ。ナショナル ジオグラフィック トラベラー誌が主催する2011年度写真コンテストで入賞を果たした。「人と野生動物が交流する美しいシーンでした」と、ペンシルバニア州アストン在住の撮影者ベッキー・ケーガン・ショット氏はコメントを添えている。「澄んだ海に潜ってみると、イルカたちが仲良くダンスしてくれたのです。あの感動は生涯忘れないでしょう」。 コンテストの審査員を務めたダン・ウェスターグレン氏は、「偶然の瞬間(Spontaneous Moments)」部門にエントリーしたこの作品について、「ボディーランゲージを交わしながら、一緒に泳ぐダイ

    イルカと共演、トラベルフォト2011
  • インドの少女、トラベルフォト2011

    色鮮やかな衣装を身にまとい、楽しげに舞い踊る少女たち。インド、マハラシュトラ州のプネーでガールガイド・ガールスカウト世界連盟が主催した記念日の一幕。ナショナル ジオグラフィック トラベラー誌2011年度写真コンテストで入賞作品となった。 Photograph by Holly Baker 色鮮やかな衣装を身にまとい、楽しげに舞い踊る少女たち。インド、マハラシュトラ州のプネーでガールガイド・ガールスカウト世界連盟が主催した記念日の一幕。ナショナル ジオグラフィック トラベラー誌2011年度写真コンテストで入賞作品となった。「少女たちはゲームの方法を喜んで教えてくれました。この後、私もカメラを置いて踊りに加わったのです」とカナダ、セントジョンズ在住の撮影者ホリー・ベーカー氏はコメントしている。 審査員のダン・ウェスターグレン氏は、「偶然の瞬間(Spontaneous Moments)」部門にエ

    インドの少女、トラベルフォト2011
  • キリンと少女、トラベルフォト2011

    キリンの頭が近くに来ると大迫力! 女の子の顔が隠れてしまった。敷地内で放し飼いしているケニアの一風変わったホテル「ジラフマナー」で餌やり体験中の一ひとコマ。このロスチャイルドキリン(キリンの亜種)は、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅危惧IB類(絶滅危機)に分類されている。 Photograph by Robin Moore キリンの頭が近くに来ると大迫力! 女の子の顔が隠れてしまった。敷地内で放し飼いしているケニアの一風変わったホテル「ジラフマナー」で餌やり体験中の一ひとコマ。このロスチャイルドキリン(キリンの亜種)は、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅危惧IB類(絶滅危機)に分類されている。ナショナル ジオグラフィック トラベラー誌主催、2011年度写真コンテスト第3位を獲得したのはワシントンD.C.在住のロビン・ムーア氏。審査員のダン・ウェスターグレン氏は

    キリンと少女、トラベルフォト2011
  • ジャガー3頭の彫刻、メキシコで発見

    3頭の大型ネコ科動物が刻まれた岩。メキシコ、チャルカツィンゴ遺跡で見つかった。 Photograph from INAH via AP メキシコ中部のモレロス州で、数千年前のジャガーのレリーフ(浮き彫り)が発掘された。 オルメカ文明の影響を感じさせる3頭のジャガー(あるいはピューマ)は、座った姿で一枚岩に刻まれていた。レリーフが見つかった丘の斜面は、ネコ科動物の像で装飾されていた可能性があるという。 「Triad of Felines(3頭のネコ科動物)」と命名されたレリーフは、紀元前700年頃の作と推定される。出土はメキシコシティから南に約100キロ離れたチャルカツィンゴ(Chalcatzingo)遺跡で、アメリカ大陸最古のオルメカ文明ゆかりの地として知られる場所だ。 高さ約1.5メートル、幅約1.1メートルの岩は当時、丘の斜面に立てられており、ふもとの村からはっきり見えたはずだという。

    ジャガー3頭の彫刻、メキシコで発見
  • 蜂のシャツ、7月ベストフォト

    中国、湖南省邵陽(しょうよう)市で7月16日、どれだけ多くの蜂を身にまとえるかを競う大会が開催された。20歳の養蜂家、呂孔江(Lu Kongjiang)さんは60分間で23キロを達成(写真)。しかし、王大林(Wang Dalin)さんの26キロには及ばず、惜しくも優勝を逃した。呂さんはショートパンツとゴーグルのみ身に付け、自ら育てた女王蜂を使って他の蜂を引き寄せた。 Photograph from China Daily/Reuters 中国、湖南省邵陽(しょうよう)市で7月16日、どれだけ多くの蜂を身にまとえるかを競う大会が開催された。20歳の養蜂家、呂孔江(Lu Kongjiang)さんは60分間で23キロを達成(写真)。しかし、王大林(Wang Dalin)さんの26キロには及ばず、惜しくも優勝を逃した。 呂さんはショートパンツとゴーグルのみ身に付け、自ら育てた女王蜂を使って他の蜂を

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  • ストームトルーパー、7月ベストフォト

    オーストラリア、パースで子どもと交流する『スター・ウォーズ』の機動歩兵ストーム・トルーパー(7月15日撮影)。恐ろしい風貌とは裏腹に、慈善活動を続けている。ストーム・トルーパーに扮したのはジェイコブ・フレンチさん。病気で苦しむ子どもたちを支援する団体、スターライト財団への寄付を集めるため、西海岸のパースから東海岸のシドニーまで、約4000キロをこの“装備”で横断している。 Photograph by Paul Kane, Getty Images オーストラリア、パースで子どもと交流する『スター・ウォーズ』の機動歩兵ストーム・トルーパー(7月15日撮影)。恐ろしい風貌とは裏腹に、慈善活動を続けている。 ストーム・トルーパーに扮したのはジェイコブ・フレンチさん。病気で苦しむ子どもたちを支援する団体、スターライト財団への寄付を集めるため、西海岸のパースから東海岸のシドニーまで、約4000キロを

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  • “生贄の儀式”執行人の墓を発見?

    14世紀ごろの支配階級に属し、生贄の儀式を執り行っていたとみられる人物の墓。周囲には陶器などのささげ物が置かれている。 Photograph courtesy Carlos Wester La Torre 南米ペルーにあるプレ・インカ時代の遺跡で発見された墓に、14世紀の“死刑執行人”とみられる男性の遺骨が埋まっていた。近くで古代の儀式用ナイフも発見されており、生贄の儀式を執り行っていた人物の可能性があるという。 墓が見つかったのは太平洋岸の商業都市、チクラヨ近郊のチョトゥナ・チョルナンカプ(Chotuna-Chornancap)遺跡。シカン(ランバイエケ)文化で、さまざまな儀式の中心地として重要な地位にあった。 紀元800年ごろからペルー北岸で栄えたシカン文化は、1375年、同地域で興ったチムー王国によって征服された。 発掘チームを率いたのは、ランバイエケにある国立ブリューニング博物館の

    “生贄の儀式”執行人の墓を発見?
  • 発見の瞬間、マチュピチュ発見百年

    ジャングルの草木に覆われたマチュピチュ遺跡(左)。100年前の1911年7月24日、初めて訪れたアメリカ、イェール大学の考古学者ハイラム・ビンガムが撮影した。右は現在の姿。 Photographs by Hiram Bingham, National Geographic (left) and Harvey Lloyd, Getty Images (right) ジャングルの草木に覆われたマチュピチュ遺跡(左)。100年前の1911年7月24日、初めて訪れたアメリカ、イェール大学の考古学者ハイラム・ビンガムが撮影した。右は現在の姿。 ビンガムの想像とは異なり、マチュピチュを含めペルーで訪れた古代インカ遺跡はどれも隠されておらず、見捨てられてもいなかった。テキサス大学オースティン校のクリストファー・ヒーニー氏は、「尾根の頂部で先住民の家族を見つけ、ビンガムは非常に驚いたようだ」と話す。 先住

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  • 発掘調査、マチュピチュ発見百年

    1911年にマチュピチュを発見したアメリカ、イェール大学の考古学者ハイラム・ビンガムは翌年、発掘チームを率いて調査を開始した。1915年にも一時的に訪れている(左)。右は発掘も終わり整備された80年後の姿(1997年撮影)。 Photographs by Hiram Bingham, National Geographic (left) and from Kuttig Travel/Alamy (right) 1911年にマチュピチュを発見したアメリカ、イェール大学の考古学者ハイラム・ビンガムは翌年、発掘チームを率いて調査を開始した。1915年にも一時的に訪れている(左)。 3年前に発掘した建造物はジャングルに埋もれてしまっており、大きなショックを受けた様子が彼の日誌から伺える。 「遺跡がジャングルや茂みに戻って行くのを目の当たりにして泣きそうになった。かろうじて見通しが利く一角も、6頭の

    発掘調査、マチュピチュ発見百年
  • 遺跡の入口、マチュピチュ発見百年

    1912~15年当時のマチュピチュ(左、撮影日不明)。現地の男性が遺跡の入り口にある階段に腰を下ろしている。2007年になっても整備された入り口は発見当時とあまり変わりがない(右)。 Photographs by Hiram Bingham, National Geographic (left) and Chris Deeney, Alamy (right) 1912~15年当時のマチュピチュ(左、撮影日不明)。現地の男性が遺跡の入り口にある階段に腰を下ろしている。「発見時の様子を実際にこの目で見られたら」と、テキサス大学オースティン校のクリストファー・ヒーニー氏は熱望する。「今では想像も付かない別世界だったようだ」。 建設目的はいまだ謎だが、15世紀のインカ皇帝パチャクテクの“御用邸”とする説が有力視されている。 「パチャクテクやその親族集団パナカは年に数日、数週あるいは数カ月を過ごした

    遺跡の入口、マチュピチュ発見百年
  • 新たに確認、アマゾン未接触部族

    ブラジル、アマゾン盆地奥地で、新たな“未接触部族”の存在が確認された。ブラジル国立インディアン・ファンデーション(FUNAI)の6月下旬の発表によると、新築の2軒の大きな住居が航空調査で見つかった。 Photograph courtesy Peetsa/Arquivo CGIIRC-Funai ブラジル、アマゾン盆地奥地で、新たな“未接触部族”の存在が確認された。ブラジル国立インディアン・ファンデーション(FUNAI)の6月下旬の発表によると、新築の2軒の大きな住居が航空調査で見つかった。 4月に行われた調査の前には、地上からの探索や衛星写真の研究など広範な準備が行われていた。調査隊リーダーでFUNAIの民族環境保護チームを統括するファブリシオ・アモリム(Fabricio Amorim)氏は、「まぐれで結果が出ることはめったにない。パズルを組み立てるように、さまざまな調査が必要だ」と話す。

    新たに確認、アマゾン未接触部族
  • ベースジャンプ、6月ベストフォト

    6月10、11日にスペイン東部のベニドルムで開催された「ベースジャンプ世界選手権(BASE Jump World Championship)」で、華麗なジャンプ披露するスペインのダリオ・バリオ(Dario Barrio)選手。 Photograph by Xavier Coll Sola, My Shot 6月10、11日にスペイン東部のベニドルムで開催された「ベースジャンプ世界選手権(BASE Jump World Championship)」で、華麗なジャンプ披露するスペインのダリオ・バリオ(Dario Barrio)選手。 ベースジャンプは、橋や断崖、ダムなど地上の高所からダイブするスポーツ。もちろんパラシュートを使うが、飛行機から飛び降りるスカイダイビングとは区別されている。ベース(BASE)とは、ジャンプ地点として最も一般的な「Building(高層ビルなどの建築物)」、「A

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  • 決死の道路建設、6月ベストフォト

    中国中部、湖南省の石佛山で、断崖絶壁に山道を造る工事が進んでいる(6月1日撮影)。木製の構造で支えられた山道としては中国最長の約3.2キロに達する予定だ。 Photograph by Fu Zhiyong, Imaginechina/Getty Images 中国中部、湖南省の石佛山で、断崖絶壁に山道を造る工事が進んでいる(6月1日撮影)。木製の構造で支えられた山道としては中国最長の約3.2キロに達する予定だ。◆ベストフォト選考理由 「この男性の無事を願わずにはいられない。非常にスリリングな状況にもかかわらず、平穏な空気も感じられる。このギャップが魅力だ」、クリス・コムズ氏(ニュースフォト編集者)。 「驚いて何度も見てしまった。この男性はどこから来て、資材はどのように使うのだろう。今でもこんな風に道路を造っている場所があるなんて」、モニカ・C・コーコラン氏(フォト編集主任)。 「現実離れし

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  • 400人規模? アマゾン未接触部族

    アマゾンの熱帯雨林に暮らし、外部社会との接触を持たない未知の部族が4月に確認された。場所はブラジル北西部のジャバリ川流域にある先住民保護区。整地した3カ所の土地に計4つの住居が見つかり、周囲ではバナナの木やピーナッツと見られる作物も栽培されていた。 Photograph courtesy Peetsa/Arquivo CGIIRC-Funai アマゾンの熱帯雨林に暮らし、外部社会との接触を持たない未知の部族が4月に確認された。場所はブラジル北西部のジャバリ川流域にある先住民保護区。整地した3カ所の土地に計4つの住居が見つかり、周囲ではバナナの木やピーナッツと見られる作物も栽培されていた。 最も大きい建物の幅は30メートル、高さ6メートルで、サイズから部族の規模を推測できる。 「どのような社会なのかまだ不明だが、4軒合わせて少なくとも400人が暮らせるだろう」と、ブラジル国立インディアン・フ

    400人規模? アマゾン未接触部族
  • 「接触」の定義、アマゾン未接触部族

    ブラジル北西部のジャバリ谷には、いくつもの“未接触部族”が暮らしている(撮影日不明)。 Photograph courtesy Peetsa/Arquivo CGIIRC-Funai ブラジル北西部のジャバリ谷には、いくつもの“未接触部族”が暮らしている(撮影日不明)。 ブラジル国立インディアン・ファンデーション(FUNAI)は、接触を避けながら、居住する地域が侵害されていないかどうか監視する方針だ。イギリス、ロンドンに部を置く先住民権利団体、サバイバルインターナショナルが挙げるのは、資源開発企業による不法な環境破壊だ。あらゆる手だてを尽くして保護する態勢がブラジル当局に求められていると主張している。 「外部社会や他の先住民グループとまったく接触がないとは考えにくい」と、首都ブラジリアを拠点とする非営利組織、先住民ワーキング・センター(Indigenous Working Center)

    「接触」の定義、アマゾン未接触部族
  • 数年で移住、アマゾン未接触部族

    ブラジル国立インディアン・ファンデーション(FUNAI)は、同国内で77の孤立した部族を確認している。「調査済み」、「調査中」、「最近接触」を含めた数字だ。彼らは、写真のような森の中の住居で暮らしている(撮影日不明)。 Photograph courtesy Peetsa/Arquivo CGIIRC-Funai ブラジル国立インディアン・ファンデーション(FUNAI)は、同国内で77の孤立した部族を確認している。「調査済み」、「調査中」、「最近接触」を含めた数字だ。彼らは、写真のような森の中の住居で暮らしている(撮影日不明)。 FUNAIのファブリシオ・アモリム(Fabricio Amorim)氏によると、同じ場所に住み続けるわけではないという。家屋や土地の状況、料や飲み水を調達する周辺の変化が、2~4年ごとの移住の判断基準になっているらしい。 新しい部族が見つかった今年4月の調査飛行

    数年で移住、アマゾン未接触部族
  • 待たれる調査、アマゾン未接触部族

    ブラジル北西部のジャバリ谷に築かれた孤立部族の住居(撮影日不明)。2011年4月に確認された新グループも、同じような生活を営んでいると見られる。 Photograph courtesy Peetsa/Arquivo CGIIRC-Funai ブラジル北西部のジャバリ谷に築かれた孤立部族の住居(撮影日不明)。2011年4月に確認された新グループも、同じような生活を営んでいると見られる。 ブラジル国立インディアン・ファンデーション(FUNAI)は、衛星画像による継続調査を計画している。個人の識別は2011年後半、もしくは2012年に予定されている現地調査に期待したい。ただし、部族との直接的な接触は避けるほか、航空機での観察も控えるという。 「居住地上空の飛行は警戒心をあおるので、必要最低限に留めたい。また、外部との接触を望まない彼らの考えを尊重する必要もある」と調査隊リーダーのファブリシオ・ア

    待たれる調査、アマゾン未接触部族
  • 迫る開発の危険、アマゾン未接触部族

    アマゾンの未接触部族は、熱帯雨林に囲まれて暮らしている(撮影日不明)。ブラジル国立インディアン・ファンデーション(FUNAI)の民族環境保護チームを統括するファブリシオ・アモリム(Fabricio Amorim)氏によると、2011年4月に住居が確認されたジャバリ谷の部族は今のところ危機的状況にはない。だが、周辺地域では漁業や狩猟、伐採、採鉱、料生産、布教活動、麻薬取引、石油採掘などが違法に行われ、深刻な脅威となっている。 Photograph courtesy Peetsa/Arquivo CGIIRC-Funai アマゾンの未接触部族は、熱帯雨林に囲まれて暮らしている(撮影日不明)。 ブラジル国立インディアン・ファンデーション(FUNAI)の民族環境保護チームを統括するファブリシオ・アモリム(Fabricio Amorim)氏によると、2011年4月に住居が確認されたジャバリ谷の部族

    迫る開発の危険、アマゾン未接触部族
  • 陶器と骨、マヤ遺跡のセノーテ

    古代マヤ遺跡チチェン・イッツァの水中洞穴から見つかった人骨の周囲には、陶器や動物の骨、翡翠(ひすい)のビーズ、貝殻、ナイフなどの遺物が散在していた。現地調査を率いるユカタン自治大学教授のギレルモ・アンダ氏は、「生贄の儀式の証拠だ」と話す。 Photograph courtesy Guillermo Anda 古代マヤ遺跡チチェン・イッツァの水中洞穴から見つかった人骨の周囲には、陶器や動物の骨、翡翠(ひすい)のビーズ、貝殻、ナイフなどの遺物が散在していた。現地調査を率いるユカタン自治大学教授のギレルモ・アンダ氏は、「生贄の儀式の証拠だ」と話す。 骨や遺物は、地上から約26メートル下にある水中洞穴で見つかった。水面下約5メートルの洞穴への通路は、マヤ文明の時代には歩いて入れた可能性が高い。当時は干ばつにより水位が下がっていた。 Photograph courtesy Guillermo And

    陶器と骨、マヤ遺跡のセノーテ
  • 雨乞いの儀式、マヤ遺跡のセノーテ

    メキシコのチチェン・イッツァ遺跡にある「オルトゥン・セノーテ」へ下降する調査チームのメンバー。セノーテは地下水の貯まった天然の陥没穴で、古代に井戸として使われていた。2009年から2010年にかけて実施された調査で、古代マヤの儀式で生贄にされた人骨が新たに発見された。付近には、遺跡中心部の階段ピラミッド「エル・カスティージョ」があり、羽毛のあるヘビの姿をした古代マヤの最高神ククルカンを奉っている。 Photograph courtesy Guillermo Anda メキシコのチチェン・イッツァ遺跡にある「オルトゥン・セノーテ」へ下降する調査チームのメンバー。セノーテは地下水の貯まった天然の陥没穴で、古代に井戸として使われていた。2009年から2010年にかけて実施された調査で、古代マヤの儀式で生贄にされた人骨が新たに発見された。付近には、遺跡中心部の階段ピラミッド「エル・カスティージョ」

    雨乞いの儀式、マヤ遺跡のセノーテ
  • 生贄の人骨を発見、マヤ遺跡のセノーテ

    メキシコ東部、ユカタン半島のマヤ遺跡で、新たに子ども2人を含む6体分の人骨や、翡翠(ひすい)のビーズ、貝殻、石器などが発見された。世界遺産のチチェン・イッツァ遺跡にある陥没した泉、セノーテとつながった水中洞穴内を調査したチームは、紀元850~1250年頃、干ばつ時に行われた人間を生贄として捧げる儀式との関連性を指摘している。 Photograph courtesy Guillermo Anda メキシコ東部、ユカタン半島のマヤ遺跡で、新たに子ども2人を含む6体分の人骨や、翡翠(ひすい)のビーズ、貝殻、石器などが発見された。世界遺産のチチェン・イッツァ遺跡にある陥没した泉、セノーテとつながった水中洞穴内を調査したチームは、紀元850~1250年頃、干ばつ時に行われた人間を生贄として捧げる儀式との関連性を指摘している。 現地調査を率いるユカタン自治大学教授のギレルモ・アンダ氏は、ナショナルジオ

    生贄の人骨を発見、マヤ遺跡のセノーテ
  • 人間が運んだ遺物、マヤ遺跡のセノーテ

    メキシコの古代マヤ遺跡チチェン・イッツァで、地下水の貯まった陥没穴「オルトゥン・セノーテ」につながった水中洞穴から人骨が発見された。写真の頭蓋骨を含め、最低でも6体分はあるという。人骨は他の遺物とともに、セノーテ内部へ水平な通路を21メートルほど進んだ空間で見つかった。人間が故意に運んだとしか考えられないという。当時は干ばつで水位が低下し、水がない通路内に歩いて入った可能性が高い。 Photograph courtesy Guillermo Anda メキシコの古代マヤ遺跡チチェン・イッツァで、地下水の貯まった陥没穴「オルトゥン・セノーテ」につながった水中洞穴から人骨が発見された。写真の頭蓋骨を含め、最低でも6体分はあるという。 人骨は他の遺物とともに、セノーテ内部へ水平な通路を21メートルほど進んだ空間で見つかった。人間が故意に運んだとしか考えられないという。当時は干ばつで水位が低下し、

    人間が運んだ遺物、マヤ遺跡のセノーテ
  • イヌとシカの骨、マヤ遺跡のセノーテ

    メキシコ、チチェン・イッツァ遺跡にある水中洞穴の中央部付近では、人間のすねの骨やイヌの頭蓋骨、硬い燧石(すいせき)のナイフ、シカの骨が発見された。荒らされた形跡はなく、「このセノーテで行われていた儀式を詳細に知る手掛かりになる」と調査チームのリーダーを務めるギレルモ・アンダ氏は述べている。 Photograph courtesy Guillermo Anda メキシコ、チチェン・イッツァ遺跡にある水中洞穴の中央部付近では、人間のすねの骨やイヌの頭蓋骨、硬い燧石(すいせき)のナイフ、シカの骨が発見された。 荒らされた形跡はなく、「このセノーテで行われていた儀式を詳細に知る手掛かりになる」と調査チームのリーダーを務めるギレルモ・アンダ氏は述べている。 Photograph courtesy Guillermo Anda

    イヌとシカの骨、マヤ遺跡のセノーテ
  • 内部を初撮影、パレンケのピラミッド

    メキシコの古代マヤ遺跡パレンケにあるピラミッド地下の墓。2011年4月、1500年前に造営された内部を小型カメラで初めて撮影した。壁が赤く塗られた埋葬室の保存状態は良く、初期のパレンケを理解する手掛かりになるという。 Photograph courtesy INAH メキシコの古代マヤ遺跡パレンケにあるピラミッド地下の墓。2011年4月、1500年前に造営された内部を小型カメラで初めて撮影した。壁が赤く塗られた埋葬室の保存状態は良く、初期のパレンケを理解する手掛かりになるという。 墓の発見は1999年だが、上部のピラミッドが不安定なため内部調査ができなかった。調査チームはメキシコ国立人類・歴史学研究所(NIAH)と連携してさまざまな方法を検討するも、損傷を及ぼす恐れを払拭できず実現には至らなかった。 人が入る代わりにチームが採用したのは小型カメラだ。ピラミッドのフロアから直径15センチほど

    内部を初撮影、パレンケのピラミッド
  • 崩壊寸前、パレンケのピラミッド

    崩壊が危ぶまれるメキシコ、パレンケ遺跡のピラミッド「テンプル20(Temple 20)」。考古学者のマルタ・クエバス氏(写真)が共同リーダーを務める「パレンケ・プロジェクト(Palenque Project)」は最近、地下の墓を小型カメラで調査した。 Photograph courtesy Mauricio Marat, INAH 崩壊が危ぶまれるメキシコ、パレンケ遺跡のピラミッド「テンプル20(Temple 20)」。考古学者のマルタ・クエバス氏(写真)が共同リーダーを務める「パレンケ・プロジェクト(Palenque Project)」は最近、地下の墓を小型カメラで調査した。 古代都市パレンケの南アクロポリス地区に位置し、マヤの統治者が埋葬されたと考えられているが、遺骨はまだ見つかっていない。構造が似た近くのピラミッドからは、1959年に統治者の遺骨が発見されている。 クエバス氏はプレス

    崩壊寸前、パレンケのピラミッド
  • 人物像の壁画、パレンケのピラミッド

    1999年にメキシコ南東部の古代マヤ遺跡パレンケで発見された墓の内部を、小型カメラが初めて撮影した。壁面には黒い人物像が合計9体描かれていた。上部のピラミッドが不安定なため、人の侵入を受けておらず、保存状態はきわめて良好だという。壁画の人物が何者で、何を表現しているのかは不明だが、美術様式から紀元400~550年頃の制作とわかった。マヤの都市国家の1つ、パレンケ王朝の初期にあたる。 Photograph courtesy INAH 1999年にメキシコ南東部の古代マヤ遺跡パレンケで発見された墓の内部を、小型カメラが初めて撮影した。壁面には黒い人物像が合計9体描かれていた。上部のピラミッドが不安定なため、人の侵入を受けておらず、保存状態はきわめて良好だという。 壁画の人物が何者で、何を表現しているのかは不明だが、美術様式から紀元400~550年頃の制作とわかった。マヤの都市国家の1つ、パレン

    人物像の壁画、パレンケのピラミッド
  • 副葬品、パレンケのピラミッド

    メキシコ、パレンケ遺跡の墓で、床に置かれた土器。小型カメラの照明で合計11個が見つかったが、中身は不明だという。近くには翡翠(ひすい)や貝の破片も散らばっていた。「非常に希少な副葬品で、埋葬されているのは重要人物とみて間違いない」と調査チームはコメントしている。 Photograph courtesy INAH メキシコ、パレンケ遺跡の墓で、床に置かれた土器。小型カメラの照明で合計11個が見つかったが、中身は不明だという。 近くには翡翠(ひすい)や貝の破片も散らばっていた。「非常に希少な副葬品で、埋葬されているのは重要人物とみて間違いない」と調査チームはコメントしている。 Photograph courtesy INAH

    副葬品、パレンケのピラミッド
  • 墓の主は? パレンケのピラミッド

    メキシコの古代遺跡パレンケにあるピラミッド地下の墓室。小さな穴から小型カメラを約5メートル下ろして内部を遠隔撮影した。調査プロジェクトの共同責任者を務める考古学者マルタ・クエバス氏によると、初代クック・バラム1世(K'uk' Bahlam I)、または初期の別の統治者が葬られている可能性があるという。 Photograph courtesy INAH メキシコの古代遺跡パレンケにあるピラミッド地下の墓室。小さな穴から小型カメラを約5メートル下ろして内部を遠隔撮影した。調査プロジェクトの共同責任者を務める考古学者マルタ・クエバス氏によると、初代クック・バラム1世(K'uk' Bahlam I)、または初期の別の統治者が葬られている可能性があるという。 アメリカ、テキサス大学のマヤ碑文学者デイビッド・スチュアート氏は、パレンケの有名な女性統治者イクス・ヨール・イクナル(Ix Yohl Ik'n

    墓の主は? パレンケのピラミッド
  • スーパーツリー、6月ベストフォト

    シンガポールで建設が進む、巨大な木を模した高さ25~50メートルの高層庭園「スーパーツリー」(6月29日撮影)。背景には高層ビル群が立ち並んでいる。コンクリート製の“人工の木”で、熱帯のつる植物やシダ植物、着生植物に覆われる予定だ。 Photograph by Wong Maye-E, AP シンガポールで建設が進む、巨大な木を模した高さ25~50メートルの高層庭園「スーパーツリー」(6月29日撮影)。背景には高層ビル群が立ち並んでいる。コンクリート製の“人工の木”で、熱帯のつる植物やシダ植物、着生植物に覆われる予定だ。 AP通信によると、シンガポール政府出資の一大緑化プロジェクト「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」の一環という。中心部のマリーナ地区に植物庭園を配する総面積101ヘクタールのプロジェクトで、開業予定は2011年だ。最終的に200種以上の植物に彩られた18のスーパーツリーが建設さ

    スーパーツリー、6月ベストフォト
  • アメリカ独立記念日、俗説の真相

    独立宣言は1776年、トーマス・ジェファーソン(右)、ベンジャミン・フランクリン(左)、およびジョン・アダムズ(中央)により起草された。 Illustration courtesy Jean Leon Gerome Ferris, Library of Congress 7月4日のアメリカ独立記念日には数多くの俗説が存在する。今回は、そのうち9つの真相を紹介しよう。【 1. 独立宣言は7月4日に署名された 】 独立記念日は来、2日前に祝うべきだ。なぜなら、独立宣言が第2次大陸会議で可決されたのは7月2日だからである。第2代大統領となるジョン・アダムズは次のようにへ書き送っている。「この後、幾世代を経ようとも、毎年この記念すべき日(7月2日)には盛大な祝祭が催されるに違いない」。 アダムズは、ショーやゲーム、スポーツの試合、銃声やベルが鳴り響く通り、かがり火を焚いたセレモニーやパレードを

    アメリカ独立記念日、俗説の真相
  • 急がれる保存、第2の太陽の船

    エジプトの太陽の船博物館に展示されている「第1の太陽の船」(2008年撮影)。ギーザの大ピラミッドからほど近い砂漠で数十年前に発掘された。今年6月23日から発掘が始まった「第2の太陽の船」は、復元完了後に同博物館で展示される。第1はギーザで建設中の大エジプト博物館への移設が予定されている。 Photograph by Amr Nabil, AP エジプトの太陽の船博物館に展示されている「第1の太陽の船」(2008年撮影)。ギーザの大ピラミッドからほど近い砂漠で数十年前に発掘された。今年6月23日から発掘が始まった「第2の太陽の船」は、復元完了後に同博物館で展示される。第1はギーザで建設中の大エジプト博物館への移設が予定されている。 第2の発掘が遅れた理由は、保存状態の悪さもある。しかし、今こそ取り組むべきだと専門家たちは述べている。「危険な状態を放置できない。今すぐ保存しなければと考えるよ

    急がれる保存、第2の太陽の船
  • 発掘開始、第2の太陽の船

    6月23日、エジプトの首都カイロの郊外ギーザで、「第2の太陽の船」の発掘が開始された。4500年前から、大ピラミッド(クフ王のピラミッド)の脇の地下に安置されており、その上には重さ数トンの石灰岩の石板が約40枚並べられている。数千年の時を経て、ついに太陽の船の“墓”から蓋が外される瞬間を迎えた。 Photograph by Khalil Hamra, AP 6月23日、エジプトの首都カイロの郊外ギーザで、「第2の太陽の船」の発掘が開始された。4500年前から、大ピラミッド(クフ王のピラミッド)の脇の地下に安置されており、その上には重さ数トンの石灰岩の石板が約40枚並べられている。数千年の時を経て、ついに太陽の船の“墓”から蓋が外される瞬間を迎えた。 蓋の下には、分解された状態で木製の部材が数百個埋まっている。複雑で非常にもろく、調査には慎重な扱いを要する。発掘に先立つ2008年には現場を覆

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  • 謎が深まる建造目的、第2の太陽の船

    エジプト中部、古代遺跡アビドスの寺院壁面にエッチングされた、夜明けの空に浮かぶエジプト神話の船(資料写真)。カイロ郊外ギーザの大ピラミッド付近で発見された「太陽の船」のデザインは、壁画などから着想を得た可能性が高い。エジプト最高考古庁の事務局長で、ナショナル ジオグラフィック協会付き探検家のザヒ・ハワス氏によると、太陽の船は通常の船と同じ大きさで、そのオールは太陽神ラーが使う武器を表しているという。 Photograph by Kenneth Garrett, National Geographic エジプト中部、古代遺跡アビドスの寺院壁面にエッチングされた、夜明けの空に浮かぶエジプト神話の船(資料写真)。カイロ郊外ギーザの大ピラミッド付近で発見された「太陽の船」のデザインは、壁画などから着想を得た可能性が高い。 エジプト最高考古庁の事務局長で、ナショナル ジオグラフィック協会付き探検家の

    謎が深まる建造目的、第2の太陽の船
  • 石蓋の撤去、第2の太陽の船

    エジプト、ギーザにある大ピラミッドの脇で、1987年に発見された「第2の太陽の船」の発掘作業が始まった。船が納められた石坑を覆う石灰岩の蓋が、慎重に持ち上げられている(6月23日撮影)。「第1の太陽の船」は1954年に見つかっており、既に復元も完了している。第2の船と同様、多数の部材に分解された状態で長さ約30メートルの地下室に安置されていた。2隻の船は全く同じ造りだろうと専門家は見ている。 Photograph courtesy Egyptian Supreme Council of Antiquities エジプト、ギーザにある大ピラミッドの脇で、1987年に発見された「第2の太陽の船」の発掘作業が始まった。船が納められた石坑を覆う石灰岩の蓋が、慎重に持ち上げられている(6月23日撮影)。「第1の太陽の船」は1954年に見つかっており、既に復元も完了している。第2の船と同様、多数の部材

    石蓋の撤去、第2の太陽の船
  • 石坑内の船の部材、第2の太陽の船

    エジプトの首都カイロ郊外のギーザで発掘が開始された、古代エジプトの木造船「第2の太陽の船」。この写真は1987年に、ナショナル ジオグラフィックのチームが超小型カメラで撮影した未開封状態の石坑内部。大ピラミッド脇の地下に、分解してまとめられた状態で納められていた。2008年、早稲田大学の吉村作治名誉教授が率いる調査チ―ムも、同じ方法で外から部材の状態を確認している。この調査から今年6月23日の発掘までの間、石坑は完全に閉じられていた。外気や虫が侵入し船梁(ふなばり)の部材が損傷するのを防ぐためだという。 Photograph by Claude E. Petrone, National Geographic エジプトの首都カイロ郊外のギーザで発掘が開始された、古代エジプトの木造船「第2の太陽の船」。この写真は1987年に、ナショナル ジオグラフィックのチームが超小型カメラで撮影した未開封状

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  • コロンビアで摘発、コカイン密輸潜水艦

    南米コロンビアのマングローブ林の奥深くで、コカイン密輸用の潜水艦がアメリカ麻薬取締局(DEA)によって摘発された。動力はディーゼルエンジンで、丸ごと水中に身を沈めて走行できる。完全潜行型の麻薬潜水艦がコロンビアで発見されたのは初めてになる。グラスファイバー製の船体は全長30メートル、6人の乗員を収容し、深さ9メートルまで潜行可能だという。最大約8トン麻薬、末端価格にして2億5000万米ドル(約200億円)分を積んで、1週間以上の連続航行を行う性能がある。 Photograph courtesy Carlos Hernandez, National Geographic Channel 南米コロンビアのマングローブ林の奥深くで、コカイン密輸用の潜水艦がアメリカ麻薬取締局(DEA)によって摘発された。動力はディーゼルエンジンで、丸ごと水中に身を沈めて走行できる。完全潜行型の麻薬潜水艦がコロンビ

    コロンビアで摘発、コカイン密輸潜水艦
  • 性能調査、コカイン密輸潜水艦

    コロンビア沿岸警備隊の隊員が、押収されたコカイン密輸用の半潜水艇の性能を調べている。現役の完全潜行型の隻数は、アメリカ麻薬取締局(DEA)も把握していない。コロンビアのマングローブ林で初めて発見されるなど、増加している可能性もある。 Photograph by Ryan Hill, National Geographic Channel コロンビア沿岸警備隊の隊員が、押収されたコカイン密輸用の半潜水艇の性能を調べている。現役の完全潜行型の隻数は、アメリカ麻薬取締局(DEA)も把握していない。コロンビアのマングローブ林で初めて発見されるなど、増加している可能性もある。 DEAがさらに危険視しているのは、遠隔操作可能な潜水艦だ。ナショナルジオグラフィック チャンネルで麻薬潜水艦のドキュメンタリー番組を担当したスティーブン・ホガード氏は、「無人航空機を思い浮かべてほしい」と話す。「(コロンビアの

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  • 「ユダの福音書」の持つ意味

    1970年前にエジプトで発見された「ユダの福音書」写。1700年以上前に書かれたものと見られる。 Photograph by Kenneth Garrett/NGS イスカリオテのユダはイエス・キリストを裏切った悪者か、それともキリストの指示に忠実に従っていた信者だったのか。その答えは今もまだ解き明かされていない。 1700年間、表舞台から姿を消していたユダの福音書が修復・公開されてから5年。写の鑑定と修復・翻訳プロジェクトは、ウェイト歴史的発見研究所、マエケナス古美術財団とともにナショナル ジオグラフィック協会の支援で行われ、修復写の初公開も2006年4月にワシントンD.C.の協会部で行われた。 新約聖書によれば、イスカリオテのユダはイエス・キリストを裏切ったとされる人物だ。ユダは銀貨30枚と引き換えにイエスを官憲に売り渡したとされる。しかし、実際ところユダについての記述はあまり

    「ユダの福音書」の持つ意味
  • 兵士の家、米の危機史跡2011

    アメリカ、ウィスコンシン州ミルウォーキーに佇む「兵士の家(Soldiers Home)」(6月14日撮影)。退役軍人の療養などに利用されたが、現在は敷地内の多くの歴史的建造物が放置され、荒れ果てている。アメリカ・ナショナル・トラスト(National Trust for Historic Preservation)によって、2011年度版「アメリカで最も危機にさらされている11の史跡(America's 11 Most Endangered Historic Places)」の一つに選定された。 Photograph by Mike De Sisti, Journal-Sentinel/AP アメリカ、ウィスコンシン州ミルウォーキーに佇む「兵士の家(Soldiers Home)」(6月14日撮影)。退役軍人の療養などに利用されたが、現在は敷地内の多くの歴史的建造物が放置され、荒れ果てている

    兵士の家、米の危機史跡2011
  • ミネソタ製粉所、米の危機史跡2011

    ミネソタ州ミネアポリスに建つピルズベリーA製粉所(Pillsbury A Mill)。アメリカ・ナショナル・トラスト(National Trust for Historic Preservation)によって、2011年度版「アメリカで最も危機にさらされている11の史跡(America's 11 Most Endangered Historic Places)」に選定された産業建築の傑作である。写真は、最近撮影された内部を流れる水路。 Photograph courtesy City of Minneapolis/NTHP ミネソタ州ミネアポリスに建つピルズベリーA製粉所(Pillsbury A Mill)。アメリカ・ナショナル・トラスト(National Trust for Historic Preservation)によって、2011年度版「アメリカで最も危機にさらされている11の史跡

    ミネソタ製粉所、米の危機史跡2011
  • 人糞が明かす古代ローマ人の生活

    古代ローマの下水施設から、何トンもの腐敗したゴミや排泄物が発掘された。 Photograph courtesy Domenico Camardo, Herculaneum Conservation Project かつてないほど大量に見つかった人間の排泄物の調査から、古代ローマ帝国の日常生活が明らかになったという。 何百袋もの排泄物をふるいにかけて調べる仕事と聞けば、誰でも顔を背けるに違いない。しかしイタリアでは、ある研究チームが喜び勇んでこの作業を進めている。 アメリカ、パッカード人文研究所主導のヘルクラネウム保存プロジェクトで責任者を務める古代ローマ研究者アンドリュー・ウォレスハドリル(Andrew Wallace-Hadrill)氏は、「約2000年も昔の有機物で、臭いはまったく感じない。堆肥と同じだ」と話す。 発掘された量は計10トン。ナポリ近郊の古代の町ヘルクラネウムの地下に造ら

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  • アイスマンは最後にヤギを食べていた

    5000年前のミイラ「アイスマン」は、1991年にイタリアアルプスの氷河で発見された。 Photograph from Vienna Report Agency/Sygma/Corbis アイスマン(エッツィ)の胃の残留物を分析した結果、死の数時間前に大量の野生ヤギの脂身で腹ごしらえしていたと判明した。 エッツィは約5000年前の銅器時代のハンターで、1991年にイタリア北部のアルプス山中から凍った状態で発見された。死亡時の状況は完全には解明されていないが、背中の矢傷などから、山中を逃亡する途中で他のハンターに殺害されたという説が有力だ。 2008年の腸内残留物の分析では、死の最大30時間前に穀物のほか、調理したと見られるアカシカやヤギの肉もべていたと判明。しかし胃の内視鏡でのサンプル採取は失敗した。内視鏡が届かなかった理由は翌年、CTスキャン画像の分析で明らかになった。胃が適切な位置に

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  • 夏至2011:変容する夏至の意味

    マケドニア、コキノの天文台遺跡で2011年の夏至の日の出を迎える人たち。 Photograph by Georgi Licovski, European Pressphoto Agency 2011年の夏至は、米国東部夏時間6月21日午後1時16分(日時間22日午前2時16分)に訪れた。この時刻から、少なくとも北半球では、1年で最も昼が長い夏至日が始まる。グーグルのトップページには、この日を祝って日人アーティスト、村上隆氏の描いたカラフルなクマとウサギのキャラクターが登場している。 夏至は地球を南北に貫く地軸が、太陽の周りを回る公転面に対して約23.4度傾いていることから発生する現象だ。この傾きにより、地球では緯度によって日照量が異なる。 夏至日は、北極が2011年の中で公転面に対して最も傾く日だ。一方、南半球では反対の現象が起き、同じ日が1年で最も昼が短い冬至日となる。その結果、北半

    夏至2011:変容する夏至の意味
  • 豪華な副葬品、ドイツで古代ケルトの墓

    金や琥珀をあしらった見事な装飾品。ドイツ南部、ホイネブルクのドナウ川沿いのケルト人の墓から発見された。この他にもケルト文化の多数の宝飾類が見つかっている。 Photograph courtesy Stuttgart Regional Council 金や琥珀をあしらった見事な装飾品。ドイツ南部、ホイネブルクのドナウ川沿いのケルト人の墓から発見された。この他にもケルト文化の多数の宝飾類が見つかっている。 総重量80トンの墓は、2010年12月に大型クレーンによって地中から引き上げられた。その後、北に100キロほど離れたシュトゥットガルト郊外の研究施設に移送されテントで囲まれた。現在もシュトゥットガルト市議会(Stuttgart Regional Council)の考古学者たちが内部の分析を進めている。 巨大な木製の埋葬室からは、2600年前の身分の高いケルト人女性とみられる骨も発見された。3

    豪華な副葬品、ドイツで古代ケルトの墓
  • 純金ブローチ、ドイツで古代ケルトの墓

    見事な意匠をこらした純金のブローチ(2011年3月撮影)。ドイツ南部で発掘されたケルト人の墓から見つかった装飾品の1つで、鉄器時代の高貴な女性にふさわしい豪華さだという。 Photograph courtesy Stuttgart Regional Council 見事な意匠をこらした純金のブローチ(2011年3月撮影)。ドイツ南部で発掘されたケルト人の墓から見つかった装飾品の1つで、鉄器時代の高貴な女性にふさわしい豪華さだという。 女性の墓の近くでは、同時代とみられる少女の墓が2005年に発掘されている。「両者の装飾品には共通点がある」と、ドイツのシュトゥットガルト市議会(Stuttgart Regional Council)の考古学者で、プロジェクトの共同責任者であるニコール・エビンガーリスト(Nicole Ebinger-Rist)氏は指摘する。 「少女はブローチとイヤリングを2個ず

    純金ブローチ、ドイツで古代ケルトの墓
  • 研究所へ移送、ドイツで古代ケルトの墓

    2台の大型クレーン車によって引き上げられる、重量80トンの古代ケルト人の墓(2010年12月撮影)。ドイツ南部ホイネブルクで発見され、シュトゥットガルト近郊にある考古学施設に移送された。埋葬室を14の大きな鋼管で補強し、周囲は鉄骨フレームで覆われた。わざわざ移送したのは、研究室レベルの環境で顕微鏡による詳細な分析を進めるためだという。 Photograph courtesy Stuttgart Regional Council 2台の大型クレーン車によって引き上げられる、重量80トンの古代ケルト人の墓(2010年12月撮影)。ドイツ南部ホイネブルクで発見され、シュトゥットガルト近郊にある考古学施設に移送された。 埋葬室を14の大きな鋼管で補強し、周囲は鉄骨フレームで覆われた。わざわざ移送したのは、研究室レベルの環境で顕微鏡による詳細な分析を進めるためだという。発掘チームの考古学者ニコー

    研究所へ移送、ドイツで古代ケルトの墓
  • 英国ドルイド教、世界の夏至祭

    イギリス、ロンドンから西に約200キロのどんよりとした空の下、ドルイド教の僧が北半球の夏至を迎え入れる。現地時間6月21日、巨石遺跡ストーンヘンジで執り行われた儀式の一幕だ。1年で最も昼が長い夏至は、古代から世界中の文化でさまざまに祝われてきた。 Photograph by Kieran Doherty, Reuters イギリス、ロンドンから西に約200キロのどんよりとした空の下、ドルイド教の僧が北半球の夏至を迎え入れる。現地時間6月21日、巨石遺跡ストーンヘンジで執り行われた儀式の一幕だ。1年で最も昼が長い夏至は、古代から世界中の文化でさまざまに祝われてきた。 ストーンサークルの直立巨石の中心部に立つと、すぐ外側のヒール・ストーンから夏至の朝日が昇る様子を今でも確認できる。 2010年秋、イギリス政府組織「イングランドおよびウェールズチャリティ委員会(Charity Commissio

    英国ドルイド教、世界の夏至祭
  • エルサルバドルのマヤ族、世界の夏至祭

    中米エルサルバドルにある古代マヤ文明遺跡タスマルで、6月21日の夏至を前に祈祷するマヤ族の人々(6月19日撮影)。祭司のホセ・エレネスト・カンポス(Jose Erenesto Campos)さんによると、母なる地球のエネルギーバランスが保たれ、豊作が訪れるように、マヤ族は毎年夏至の日に儀式を行う習慣があるという。ただし、熱帯に位置するエルサルバドルでは6月の至日(しじつ)を“冬至”と呼ぶ。5月から10月にかけて雨季を迎え、現地の人々は冬と見なしているからだ。 Photograph by Luis Romero, AP 中米エルサルバドルにある古代マヤ文明遺跡タスマルで、6月21日の夏至を前に祈祷するマヤ族の人々(6月19日撮影)。祭司のホセ・エレネスト・カンポス(Jose Erenesto Campos)さんによると、母なる地球のエネルギーバランスが保たれ、豊作が訪れるように、マヤ族は毎年

    エルサルバドルのマヤ族、世界の夏至祭
  • ニューヨークのヨガ、世界の夏至祭

    アメリカ、ニューヨークのタイムズ・スクエアで、夏至を記念した大規模なヨガイベントが開催され、数千人がヨガに熱中した(6月21日撮影)。夏至は地球を南北に貫く地軸が、太陽に対して23.4度傾いているために起こる現象。また、地域によって日射量が異なる理由も、この地軸の傾きにある。 Photograph by Mario Tama, Getty Images アメリカ、ニューヨークのタイムズ・スクエアで、夏至を記念した大規模なヨガイベントが開催され、数千人がヨガに熱中した(6月21日撮影)。 夏至は地球を南北に貫く地軸が、太陽に対して23.4度傾いているために起こる現象。また、地域によって日射量が異なる理由も、この地軸の傾きにある。 夏至の日、北極は太陽に対して1年で最も傾く。逆に南半球では1年で一番昼が短い冬至にあたる。北半球の夏の扉が開く夏至の正午になると、太陽がほぼ真上にまで昇り、1年で最

    ニューヨークのヨガ、世界の夏至祭
  • アフガニスタンで生まれた双子

    アフガニスタン北東部、ファイザバードの病院で、生後10日目の双子(男女)を抱く23歳の母親(6月2日撮影)。ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)によると、アフガニスタンでは8人に1人が妊娠中もしくは出産時に命を落とすという。 Photograph by Paula Bronstein, Getty Images アフガニスタン北東部、ファイザバードの病院で、生後10日目の双子(男女)を抱く23歳の母親(6月2日撮影)。 ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)によると、アフガニスタンでは8人に1人が妊娠中もしくは出産時に命を落とすという。妊産婦死亡率として世界最悪だ。ユニセフはその要因として、若年妊娠、極度の貧困、助産婦の不足、貧弱な診療体制などを挙げている。さらに、男性が同伴しなければ女性は外出を控える風習が災いして日光を浴びる機会が少なく、ビタミンDの欠乏症を招いているという。

    アフガニスタンで生まれた双子
  • 2011年ジオ・ビー、白熱の決勝戦

    子ども向け全米地理コンテスト「ナショナル ジオグラフィック・ビー」の司会者が、今年度の優勝者ティネ・ヴァレンシッチ君の勝利を祝福する。左は準優勝のニライ・サルダ君。 Photograph by Rebecca Hale, National Geographic 2011年5月25日にアメリカ、ワシントンD.C.で開催された子ども向け全米地理コンテスト「ナショナル ジオグラフィック・ビー」。テキサス州在住の7年生(日の中学1年生)ティネ・ヴァレンシッチ(Tine Valencic)君が、第23代チャンピオンに輝いた。 コンテストに向けて念入りに準備してきた出場者たちは、地理に関する問題を次々にクリアし、激戦の末ようやく優勝者が決定した。 例年どおり、ナショナル ジオグラフィック協会部で開催され、アメリカの人気クイズ番組「ジョパディ!」の司会者アレックス・トレベック氏が進行役を務めた。

    2011年ジオ・ビー、白熱の決勝戦
  • 引き揚げ、モーガン船長の大砲

    パナマのチャグレス川河口近くで17世紀の大砲が見つかった。写真は、エアバッグを使って重量のある砲身を海底から引き揚げているダイバー(2010年撮影)。この大砲は、17世紀に活躍したイギリスの海賊ヘンリー・モーガン船長が率いた船団のものと思われる6門のうちの1つ。後世、モーガンは血に飢えた海賊と見なされるようになった。 Photograph courtesy Donnie Reed パナマのチャグレス川河口近くで17世紀の大砲が見つかった。写真は、エアバッグを使って重量のある砲身を海底から引き揚げているダイバー(2010年撮影)。この大砲は、17世紀に活躍したイギリスの海賊ヘンリー・モーガン船長が率いた船団のものと思われる6門のうちの1つ。後世、モーガンは血に飢えた海賊と見なされるようになった。 1671年、パナマ・ビエホ(現パナマシティ)攻略に向かったモーガン船長の旗艦サティスファクション

    引き揚げ、モーガン船長の大砲
  • 大小の砲、モーガン船長の大砲

    パナマのチャグレス川河口付近に沈む難破船から2010年に引き揚げられた大砲を調べるウェイト研究所の考古学者フリッツ・ハンセルマン氏(左)とジェームズ・デルガド氏。写真の大砲は、17世紀に海賊ヘンリー・モーガン船長がスペインの艦船や入植地を攻撃するために用いたものと思われる。およそ350年も海底にあったため、凝固した有機物に覆われている。 Photograph courtesy Donnie Reed パナマのチャグレス川河口付近に沈む難破船から2010年に引き揚げられた大砲を調べるウェイト研究所の考古学者フリッツ・ハンセルマン氏(左)とジェームズ・デルガド氏。写真の大砲は、17世紀に海賊ヘンリー・モーガン船長がスペインの艦船や入植地を攻撃するために用いたものと思われる。およそ350年も海底にあったため、凝固した有機物に覆われている。 小型の砲は、モーガンが乗る船の甲板に据えて接近戦でショッ

    大小の砲、モーガン船長の大砲
  • 固着物、モーガン船長の大砲

    2010年にパナマのチャグレス川河口で引き揚げられた小型砲は、300年を超える時間の中で、固化した大量の有機物に覆われていた。17世紀の海賊モーガン船長の乗艦サティスファクション号の甲板に据えられていたと見られている。 Photograph courtesy Donnie Reed 2010年にパナマのチャグレス川河口で引き揚げられた小型砲は、300年を超える時間の中で、固化した大量の有機物に覆われていた。17世紀の海賊モーガン船長の乗艦サティスファクション号の甲板に据えられていたと見られている。 写真は大砲の“小ささ”を示すために、あえてピックアップトラックの荷台に乗せて撮影したもので、このような形で運搬することはないという。 手前の物体は、サティスファクション号に搭載されていたバラスト石。この石を移動したり投棄することで船のバランスをとる。海底に長く沈んでいる間に、付着物によって大砲と

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  • 代理総督、モーガン船長の大砲

    1680年に製作されたヘンリー・モーガン船長の版画には、背景に彼の船団がスペイン艦隊を攻撃する様子が描かれている。モーガンは、私掠船団を率いる提督としてだけでなく、政治家としても輝かしい経歴を持っている。中南米のスペイン植民地を荒らし、カリブ海のスペイン船を襲撃する“海賊”活動を続けた後、1674年に英国王チャールズ2世から騎士の称号を与えられ、ジャマイカの代理総督という公職にも就いている。 Illustration from Rischgitz/Getty Images 1680年に製作されたヘンリー・モーガン船長の版画には、背景に彼の船団がスペイン艦隊を攻撃する様子が描かれている。 モーガンは、私掠船団の首領としてだけでなく、政治家としても輝かしい経歴を持っている。中南米のスペイン植民地を荒らし、カリブ海のスペイン船を襲撃する“海賊”活動を続けた後、1674年に英国王チャールズ2世から

    代理総督、モーガン船長の大砲
  • 5月21日、繰り返される終末説

    アメリカのラジオ伝道師ハロルド・キャンピング氏(2002年12月撮影)が世界の終末を予言していた2011年5月21日には、結局何も起きなかった。イエス・キリストが再び地上に降り、信者を天上へと導く「最後の審判」が訪れると主張していたが、過去何千年の間に何度となく唱えられたさまざまな終末説と同じ結果に終わったようだ。 Photograph from AP アメリカのラジオ伝道師ハロルド・キャンピング氏(2002年12月撮影)が世界の終末を予言していた2011年5月21日には、結局何も起こらなかった。イエス・キリストが再び地上に降り、信者を天上へと導く「最後の審判」が訪れると主張していたが、過去に何度となく唱えられたさまざまな終末説と同じ結果に終わったようだ。 同氏は89歳の元土木技師。宗教放送局「ファミリーラジオワールドワイド」を立ち上げ、伝道師として活動している。番組の熱心な聴取者を通じて

    5月21日、繰り返される終末説
  • 古代ローマ、繰り返される終末説

    マヤ文明の暦が“この世は2012年で終わる”と予言していると信じる人もいるようだが、古代ローマでも西暦79年のベスビオ山の噴火をこの世の終わりの前兆と考える人々がいた(イラストは、逃げまどうポンペイ市民の想像図)。 西暦65年に死んだ古代ローマの哲学者セネカの「地球は煙のように消えてなくなる」との予言に基づくものだ。1999年に出版された『Apocalypses: Prophecies, Cults, and Millennial Beliefs through the Ages(終末観と予言の歴史)』によるとセネカはこう言ったという。「この世で私たちが目にしているもの、敬っているものはすべて炎に包まれ、正義と幸福の新しい世界が到来するだろう」。 結局この世の終わりが来ることはなかったが、それ後も古今東西のさまざまな人々が人類の破滅を繰り返し予言し続けてきた。 Artwork by Pet

    古代ローマ、繰り返される終末説
  • ハレー彗星、繰り返される終末説

    76年の周期で地球に接近するハレー彗星は、いつの時代も災難の前兆と見なされてきた。例えば1910年、ハレー彗星の接近が目前に迫った欧米諸国はこの世の終わりが来るという噂で大騒ぎとなった(イラストは、この世の終わりを唱える人々を皮肉る当時のフランスの風刺画)。 1999年出版の『Apocalypses: Prophecies, Cults, and Millennial Beliefs through the Ages(終末観と予言の歴史)』によると、「地球はハレー彗星の尾に含まれる有毒ガスで覆われ、地球上の生物はすべて窒息死する恐れがある」というフランスの天文学者カミーユ・フラマリオンの説を多くの人々が信じていたという。 Artwork courtesy Library of Congress 76年の周期で地球に接近するハレー彗星は、いつの時代も災難の前兆と見なされてきた。例えば1910

    ハレー彗星、繰り返される終末説
  • ロンドン大火、繰り返される終末説

    ヨーロッパのキリスト教徒の多くは恐れおののきながら1666年を迎えた。聖書が666を不吉な“獣の数字”としていたからだ(新約聖書「ヨハネの黙示録」)。 ロンドンでは1665年にペストの流行が長引いて多くの命を奪ったが、それでも人々の不安は収まらなかった。そして翌1666年、ロンドン大火(図)が起きたとき、多くの人は“そのとき”がやってきたと信じたのだ。 2002年に出版された『The Great Fire of London: In That Apocalyptic Year, 1666(ロンドンの大火:世界の終わりが来る年、1666年)』によると、この大火災に接したロンドン市民はついに“最後の審判”の日が到来し、罪深い地上の民に怒れる神の裁きが下されたと恐れたという。 Artwork from Getty Images/Bridgeman Art Library ヨーロッパのキリスト教徒

    ロンドン大火、繰り返される終末説
  • 天体の“合”、繰り返される終末説

    「合」により並んで見える月と金星。フロリダ州のポンス・デ・レオン・インデット灯台で2009年2月27日に撮影。複数の天体が近い位置に見える現象である「合」は、これまで数多くの人々を終末論に駆り立ててきた。英科学誌「New Scientist」によると、特に、水星、金星、火星、木星、土星、太陽、月が狭い範囲に集まって見えた2000年5月5日の合に関連して多くの終末論が唱えられたという。 同誌によると、作家のリチャード・ヌーン氏は氷が世界を飲み込むと予言し、自称「心霊考古学者」のジェフリー・グッドマン氏は1977年出版の著書『We Are the Earthquake Generation(地震の世代)』の中で、「地軸の移動によって生じる圧力が解放されるとき、地震と火山の噴火が世界中で発生し、大地に亀裂が走り、地球は分裂する」と主張していた。 Photograph by Your Shot u

    天体の“合”、繰り返される終末説
  • ヘールボップ彗星、繰り返される終末説

    ストーンヘンジ上空に尾を引いて輝くヘールボップ彗星(1997年3月28日撮影)。1995年に発見された非常に明るいこの彗星が前回地球に接近した1997年3月、悲劇は起きた。 UFOを信仰するカルト教団ヘブンズ・ゲートのメンバー39人が、彗星の地球への最接近に合わせてカリフォルニアで集団自殺したのである。ヘブンズ・ゲートは、彗星を追ってやって来るUFOが、破滅を迎える地球から自分達を救い出してくれると信じていた。 1999年出版の『Apocalypses: Prophecies, Cults, and Millennial Beliefs through the Ages(終末観と予言の歴史)』によると、この教団の信者は、悪魔が地球を支配しており、人類は「まもなく世界を破滅に導く炎に焼かれて滅亡する」と信じていたという。 Photograph by Alastair Grant, AP スト

    ヘールボップ彗星、繰り返される終末説
  • 惑星直列、繰り返される終末説

    1997年に出版された『Ice: The Ultimate Disaster(氷:究極の災害)』の中で、2000年5月5日に太陽系の惑星が一直線上に並び、その影響で極地の氷が溶けて赤道方向へ大量に流れ出し、地球上の生命を絶滅させると予言されていた。写真は夏の北極、スバールバル諸島北東島のアウストフォンナ氷帽が溶ける様子。 著者のリチャード・ヌーン氏は、前回地軸の傾きが変動した時期は、氷河期のように著しい気候変動が起きた時期と一致しており、2000年の惑星直列でも同様の“想像を絶する結末”が再び訪れると主張していた。 そのような大災害は起きなかったが、温暖化という別の理由から氷についての懸念を示す科学者は多い。気温の上昇により、世界各地で今まで凍っていた地域の氷が徐々に溶けつつある。 Photograph by Paul Nicklen, National Geographic Stock

    惑星直列、繰り返される終末説
  • ブラックホール、繰り返される終末説

    スイスとフランスの国境をまたいで建設された大型ハドロン衝突型加速器(LHC)の内部。世界最大の加速器で、2009年9月に稼動が開始された。一部の物理学者は、LHCを使用した実験の過程で、ごく小さな確率ではあるがブラックホールが生成され、地球の内部で奇妙な軌道を描きながら、地球が消えて無くなるまで物質の粒子をい尽してしまうと主張していた。 同じように確率が低いことながら、悲惨な結果が生じる可能性がほかにも指摘されたことから、外部の数人の科学者が2008年春にLHCの運転停止を求めて訴訟を起こすに至った。 しかし心配は無用だった。この加速器が稼動しても悲劇は生まれていない。もっとも、まだ1回しか稼動していないのだが。 Photograph courtesy Maximilien Brice, CERN スイスとフランスの国境をまたいで建設された大型ハドロン衝突型加速器(LHC)の内部。世界最

    ブラックホール、繰り返される終末説
  • 13日の金曜日、起源と現代の迷信

    裏切り者として有名なユダ(左から4人目)。最後の晩餐では13番目の席に着いたとされている。 Painting by Leonardo da Vinci via Getty Images 数字13を忌み嫌う人は、先週の13日をやり過ごして胸をなで下ろしているだろう。主に西洋で不吉とされる「13日の金曜日」だが、今年も去年と同じく1回だけなのをご存じだろうか。 アメリカ、インディアナ州にあるデポー大学の名誉教授(数学)アンダーウッド・ダッドリー氏は、「グレゴリオ暦では、13日の金曜日が1度もなかったり4回以上巡ってくる年はない」と語る。同氏は『Numerology: Or, What Pythagoras Wrought』(邦題:『数秘術大全』)の著者でもある。現在の暦では年に1~3度のいずれかだという。 民間伝承の専門家で、『Holiday Folklore, Phobias and Fun

    13日の金曜日、起源と現代の迷信
  • インドの巡回映画、世界写真賞2011

    インド、マハーラーシュトラ州の僻地の村で野外上映された映画に見入る村人。4月末にロンドンで発表された2011年度ワールド・フォトグラフィー・アウォード(World Photography Awards)プロフェッショナル部門の「芸術文化」カテゴリーで最優秀賞を受賞した。撮影したインド人カメラマン、アミト・マデシヤ(Amit Madheshiya)氏によると、巡回映画映画館が近くにない村々を年に1度回り、1人40米セント(約32円)ほどの料金でいろいろなジャンルの映画を合わせて上映するという。 Photograph courtesy Amit Madheshiya, Sony World Photography Awards インド、マハーラーシュトラ州の僻地の村で野外上映された映画に見入る村人。4月末にロンドンで発表された2011年度ワールド・フォトグラフィー・アウォード(World P

    インドの巡回映画、世界写真賞2011
  • ロヒンギャ難民、世界写真賞2011

    カメラを見つめるロヒンギャ難民の子ども。バングラデシュ南部にて撮影。2011年度ワールド・フォトグラフィー・アウォード(World Photography Awards)プロフェッショナル部門「時事問題」カテゴリーの最優秀作品。撮影したスペイン人カメラマン、ハビエル・アルセニジャス(Javier Arcenillas)氏によると、ミャンマーのイスラム教少数民族ロヒンギャの人々は、ミャンマー政府による抑圧と迫害を受け、50年以上前から安全な場所を求めてバングラデシュなど近隣の国で暮らしているという。 Photograph courtesy Javier Arcenillas, Sony World Photography Awards カメラを見つめるロヒンギャ難民の子ども。バングラデシュ南部にて撮影。2011年度ワールド・フォトグラフィー・アウォード(World Photography A

    ロヒンギャ難民、世界写真賞2011
  • タイのコムローイ、世界写真賞2011

    タイ、チェンマイのロイ・クラトン祭りで夜空に昇っていく無数のコムローイ(紙の熱気球)。2011年度ワールド・フォトグラフィー・アウォード(World Photography Awards)一般公募部門「夜景」(After Dark)カテゴリーで最優秀作品となった。撮影したアマチュアカメラマン、チュムロン・ニルコン(Chumlong Nilkon)氏はコムローイについて、「私たちはこれを悩みや心配事が流れ去っていくことの象徴と考えているのです」とコメントした。 Photograph courtesy Chumlong Nilkon, Sony World Photography Awards タイ、チェンマイのロイ・クラトン祭りで夜空に昇っていく無数のコムローイ(紙の熱気球)。2011年度ワールド・フォトグラフィー・アウォード(World Photography Awards)一般公募部門「

    タイのコムローイ、世界写真賞2011
  • 時代を表すドレス、英王室ウェディング

    1947年、ロンドンのウェストミンスター寺院で挙式した若き日の現イギリス女王エリザベス2世。身にまとっているウェディングドレスは、イギリス王室御用達のデザイナー、ノーマン・ハートネル氏が手掛けた。王室の文化遺産を管理している慈善団体ヒストリック・ロイヤル・パレスのジョアンナ・マルシュナー氏によると、このドレスのデザインで重視されたのはファッション性だけではないという。 Photograph from Popperfoto/Getty Images 1947年、ロンドンのウェストミンスター寺院で挙式した若き日の現イギリス女王エリザベス2世。身にまとっているウェディングドレスは、イギリス王室御用達のデザイナー、ノーマン・ハートネル氏が手掛けた。王室の文化遺産を管理している慈善団体ヒストリック・ロイヤル・パレスのジョアンナ・マルシュナー氏によると、このドレスのデザインで重視されたのはファッション

    時代を表すドレス、英王室ウェディング
  • 白いドレスの起源、英王室ウェディング

    1893年に後のイギリス国王ジョージ5世との結婚式でメアリー・オブ・テック王妃が着用したロイヤルウェディングドレス。歴代王妃のウェディングドレスを所蔵するロンドンのケンジントン宮殿で展示されている。 Photograph courtesy Royal Collection/Historic Royal Palaces 1893年に後のイギリス国王ジョージ5世との結婚式でメアリー・オブ・テック王妃が着用したロイヤルウェディングドレス。歴代王妃のウェディングドレスを所蔵するロンドンのケンジントン宮殿で展示されている。 イギリス王室の花嫁は19世紀を境に、国家の富と権力を象徴するような金糸や銀糸で装飾された豪華なウェディングドレスではなく、よりシンプルで一般的な白のドレスを着用するようになった。 白のウェディングスタイルの起源は、ジョージ5世の祖母であるビクトリア女王とされている。大衆の流行を取

    白いドレスの起源、英王室ウェディング
  • チベットで冬虫夏草が「金のなる木」に

    中国西部青海省の冬虫夏草(2007年5月撮影)。 Photograph by Simon Zo, Reuters 中国のチベット高原に生息する冬虫夏草(トウチュウカソウ)が、地元の農村に多額の現金をもたらしているという。 冬虫夏草は蛾の幼虫に寄生する菌類で、死んだ幼虫の頭部から人の指ほどの長さの草のようなものを生やす。 ナッツのような風味で薬効があるという冬虫夏草は、癌の治療や老化対策、性欲増進などの分野で珍重されており、遠く離れた北京、上海などの急成長する都市部で需要が急上昇している。 中国ではすりつぶして粉末で売られているほか、そのまま飾りとして、つまり富を誇示するものとして使われている。 チベットや、ネパールからブータンのヒマラヤ地方では、ヤクを飼う遊牧民が冬虫夏草を採取し販売して現金収入を得て裕福になっている。 菌類の研究者でこの現象を調査しているダニエル・ウィンクラー氏は、冬虫夏

  • 密林の下に眠るマヤ文明の都市

    オルトゥンのピラミッドに穿たれた盗掘トンネルに入るブリジット・コバセビッチ氏。 Photograph courtesy Michael G. Callaghan 長い間密林の下に隠されてきた古代マヤ文明の都市オルトゥンの概容がついに判明した。今月発表された研究によれば、3次元マッピングを使って数世紀分の森林の成長を“消去”したところ、100棟近い建造物の大まかな輪郭が浮かび上がったという。 グアテマラの熱帯雨林の一角に何か巨大なものが埋まっているという話が、古くから地元に伝わっていた。今回ようやく考古学者の手により、オルトゥンの様子について詳細な調査に着手できるようになる。 GPSと電子測距技術を使った昨年の調査で、7階建てのピラミッド、天文台、儀式に用いた球技場、そして複数の住居といった構造物の位置と高さが明らかになった。 研究を率いた米テキサス州ダラスにある南メソジスト大学の考古学者ブ

  • マヤ文明、やせた土地で繁栄した理由

    グアテマラのティカル遺跡、ライトアップされた大ジャガーの神殿(資料写真)。 Photograph by Simon Norfolk, National Geographic 古代マヤでは火山から遠く離れた都市でもしばしば火山灰の降下を受けていたことが、最新の研究で明らかになった。この発見によって、マヤの古代都市がやせた土壌でも存続し繁栄できた理由を説明できる可能性がある。 グアテマラ、ティカル遺跡の運河跡で最近、特徴的な灰褐色の粘土鉱物が発見された。スメクタイトの一種で、火山灰の分解によってのみ形成される。ティカルはかつてマヤ南部の低地で最大の都市であった。 このティカルのスメクタイトは、アフリカから気流に乗って運ばれてきた塵に由来するというのが一般的な見方だったが、化学的分析によって、現在のグアテマラやエルサルバドル、ホンジュラス、メキシコにある複数の火山から来たものであることが明らかに

  • アメリカ南北戦争、開戦から150年

    ペンシルバニア州ゲティスバーグ、南北戦争の戦場に残された大砲(資料写真)。 Photograph by Michael Melford, National Geographic 2011年4月12日、アメリカは南北戦争の開戦から150年を迎えた。さまざまなイベントが準備されているが、歴史解釈の多様化や政府の予算不足により、従来とはかなり異なる様子となりそうだ。 1861年4月12日の夜明け前、北軍が守備するサウスカロライナ州のサムター要塞に向けて、南軍の最初の砲弾が弧を描く。ここから南北戦争が始まった。 今年から南北戦争終結150周年までの5年間、数々の講演、展覧会、シンポジウムが予定されており、宣伝にはFacebookやTwitterなど最新のデジタルツールも活用されている。 ただし、アメリカ全土が南北戦争一色にはならないようだ。主戦場となったミシシッピ川以東では記念式典の大騒ぎが見られ

    アメリカ南北戦争、開戦から150年
  • 地下墓地、エジプトのイヌのミイラ

    エジプトにある古代のイヌの地下墓地が初めて全面的に発掘されている。プロジェクトの一端として2500年前の動物の死骸が調査されているが、これは地下トンネルを満たすおよそ800万体の動物のミイラのほんの一部にすぎない。新たに発表された2010年の発掘に基づく研究によれば、動物は古代の「子イヌ工場」で生まれたものらしく、大半のミイラはイヌで、生後わずか数時間でミイラにされたものが多いという。 Photograph courtesy P.T. Nicholson エジプトにある古代のイヌの地下墓地が初めて全面的に発掘されている。プロジェクトの一端として2500年前の動物の死骸が調査されているが、これは地下トンネルを満たすおよそ800万体の動物のミイラのほんの一部にすぎない。新たに発表された2010年の発掘に基づく研究によれば、動物は古代の「子イヌ工場」で生まれたものらしく、大半のミイラはイヌで、生

    地下墓地、エジプトのイヌのミイラ
  • 古代の祈り、エジプトのイヌのミイラ

    変質したミイラが積み重なるイヌの地下墓地のトンネルからは、ジャッカルの頭を持つ神アヌビスに願いを聞き届けてもらおうと祈った古代エジプトの人々の強烈な思いが見て取れる。 Photograph courtesy P.T. Nicholson 変質したミイラが積み重なるイヌの地下墓地のトンネルからは、ジャッカルの頭を持つ神アヌビスに願いを聞き届けてもらおうと祈った古代エジプトの人々の強烈な思いが見て取れる。 今日では「教会でロウソクに火を灯すことがある。その煙に乗って、祈りが神の下へとまっすぐに届く」。同じように、ミイラにされたイヌの魂が人の祈りを冥界に運ぶと考えられたのだろうと、考古学者のサリマ・イクラム(Salima Ikram)氏は話す。イクラム氏はカイロのエジプト博物館による動物ミイラプロジェクト(Animal Mummy Project)の創設者だ。 「イヌはアヌビス神と同じ種であり、

    古代の祈り、エジプトのイヌのミイラ
  • ヒツジ減少で温暖化、エイプリルフール

    ニュージーランド南島でのどかに草をむヒツジたち。“まじめ”な気候科学Webサイト「RealClimate.org」が、「地球温暖化の原因は、大気中の温室効果ガス蓄積ではなく、ニュージーランドのヒツジの生息数減少」と報告したのは、2007年のエイプリルフール。 Photograph by Paul Chesley, National Geographic ニュージーランド南島でのどかに草をむヒツジたち。“まじめ”な気候科学Webサイト「RealClimate.org」が、「地球温暖化の原因は、大気中の温室効果ガス蓄積ではなく、ニュージーランドのヒツジの生息数減少」と報告したのは、2007年のエイプリルフール。 ニュージーランド獣医気候学研究所(New Zealand Institute of Veterinary Climatology)の科学者ユー・ノー・ワット(Ewe Noh-Wat

    ヒツジ減少で温暖化、エイプリルフール
  • ネッシー、エイプリルフールの動物

    20世紀最大級のミステリーと言えば、イギリス、スコットランドのネス湖に生息するとされる「ネッシー」だ。ネッシー伝説の発端となる奇妙な水獣に、アイルランドの修道僧、聖コルンバが遭遇したのは1400年以上も前になる。米ナショナルジオグラフィック ニュースでも2003年に取り上げられた。 Photograph from Keystone/Getty Images 20世紀最大級のミステリーと言えば、イギリス、スコットランドのネス湖に生息するとされる「ネッシー」だ。ネッシー伝説の発端となる奇妙な水獣に、アイルランドの修道僧、聖コルンバが遭遇したのは1400年以上も前になる。米ナショナルジオグラフィック ニュースでも2003年に取り上げられた。 しかし、その存在が脚光を浴びるのは湖までの道が整備され、見晴らしが良くなる1933年になってからだ。スコットランド北部、ドロムナドロケット(Drumnadr

    ネッシー、エイプリルフールの動物
  • 偽セイウチ、エイプリルフールの動物

    1984年のエイプリルフール、アメリカ地方紙「Orlando Sentinel」の紙面を飾った「タスマニアセイウチモドキ(Tasmanian mock walrus)」。記事では“理想のペット”と紹介されたが、正体はハダカデバネズミ(写真)だった。 Photograph by Robert Clark, National Geographic 1984年のエイプリルフール、アメリカ地方紙「Orlando Sentinel」の紙面を飾った「タスマニアセイウチモドキ(Tasmanian mock walrus)」。記事では“理想のペット”と紹介されたが、正体はハダカデバネズミ(写真)だった。 Webサイト「ウソの歴史博物館(Museum of Hoaxes)」によると、「セイウチによく似た体長10センチの動物で、のように喉を鳴らし、ハムスターのように人慣れする。体を洗う必要がなく、ペット用ト

    偽セイウチ、エイプリルフールの動物
  • 埋蔵の意味、ローマ時代の財宝発見

    ブリタニアの僭称皇帝カラウシウスの肖像を刻んだ銀貨。イギリス南西部のサマセットで見つかった5万2000枚の硬貨はほとんどが銅貨であり、その中でこのような銀貨は目立つ存在だった。カラウシウスの銀貨は、大量に見つかった硬貨の中で最も新しいものであることから、硬貨が集められたのはカラウシウスが暗殺された紀元293年以降と推定されている。 Photograph by Ben Birchall, PA Wire/AP ブリタニアの僭称皇帝カラウシウスの肖像を刻んだ銀貨。イギリス南西部のサマセットで見つかった5万2000枚の硬貨はほとんどが銅貨であり、その中でこのような銀貨は目立つ存在だった。 カラウシウスの銀貨は、大量に見つかった硬貨の中で最も新しいものであることから、硬貨が集められたのはカラウシウスが暗殺された紀元293年以降と推定されている。 今回の発見は、考古学者の埋蔵金に対する見方も変えるこ

    埋蔵の意味、ローマ時代の財宝発見
  • 精巧な造り、鉄器時代の金の首飾り

    エディンバラにあるスコットランド国立博物館(National Museum of Scotland)が、先ごろ支給された一連の助成金により、ローマ帝国の支配下となる前の時代の黄金の首飾りを取得し、2011年夏から研究と展示を始めることになった。写真は3月21日、これらの首飾りを検分するスコットランド政府のフィオナ・ヒソップ文化・対外関係大臣(中央)氏と同博物館のゴードン・リントゥール館長(右)。 Photograph by David Cheskin, PA Wire/AP エディンバラにあるスコットランド国立博物館(National Museum of Scotland)が、先ごろ支給された一連の助成金により、ローマ帝国の支配下となる前の時代の黄金の首飾りを取得し、2011年夏から研究と展示を始めることになった。写真は3月21日、これらの首飾りを検分するスコットランド政府のフィオナ・ヒソ

    精巧な造り、鉄器時代の金の首飾り
  • 交易の証拠、鉄器時代の金の首飾り

    スコットランド中部のスターリングで発見された、豪華な装飾が特徴の黄金の首飾り。地中海沿岸で作られたものとみられ、他の3つの装飾品とともにほぼ完全な状態で埋まっていた。発見場所となった木造建築物の遺構は、おそらく神殿とみられる。 Photograph by David Cheskin, PA Wire/AP スコットランド中部のスターリングで発見された、豪華な装飾が特徴の黄金の首飾り。地中海沿岸で作られたものとみられ、他の3つの装飾品とともにほぼ完全な状態で埋まっていた。発見場所となった木造建築物の遺構は、おそらく神殿とみられる。 これらの首飾りは最終的に埋蔵された場所まで、長い距離を運ばれたと推定される。このことは、当時の豊かなケルト系ブリトン人が、遠く離れた地域との交易を行えるだけの財力を持っていたことを示している。 首飾りの価値は、46万2000ポンド(約6200万円)と鑑定された。ス

    交易の証拠、鉄器時代の金の首飾り
  • 5万枚の硬貨、ローマ時代の財宝発見

    イギリス南西部のサマセットで2010年に発見されたローマ時代の硬貨5万枚の一部。1隻の船から見つかった硬貨としては最も大量で、イギリスで見つかった古代の硬貨としても2番目の量だと、大英博物館の専門家は述べている。 Photograph by Ben Birchall, PA Wire/AP イギリス南西部のサマセットで2010年に発見されたローマ時代の硬貨およそ5万枚の一部。一つの容器に入って見つかった硬貨としては最も大量で、イギリスで一度に見つかった古代の硬貨としても2番目の量だと、大英博物館の専門家は述べている。 これらの硬貨は、先ごろ発見された鉄器時代の金の宝飾品とともにアマチュアのトレジャーハンターにより発見されたものだが、公的な助成金や民間からの寄付を受け、それぞれ別の博物館に収蔵されることが正式発表された。硬貨はサマセット博物館(Museum of Somerset)の所蔵とな

    5万枚の硬貨、ローマ時代の財宝発見
  • 欧州最古の文字が刻まれた粘土板を発見

    昨年の夏にギリシャで発見された古代の粘土板の裏側。名前と数字の一覧が刻まれている。 Photograph courtesy Christian Mundigler 最新の研究によると、ギリシャで発見された粘土板の破片に刻まれた記号が、ヨーロッパ最古の判読可能な文字であることが判明したという。 ギリシャ南西部にあるイクライナ(Iklaina)という村のオリーブ畑で発掘された粘土板は、紀元前1450~1350年ごろに古代ギリシャのミケーネ人書記官によって作られた。 ミケーネは紀元前約1600~1100年の間、ギリシャの大半を支配していた。ホメロスが長編叙事詩『イリアス』の中で描いた「トロイ戦争」などによって伝説化されている。 発掘チームのリーダーでアメリカにあるミズーリ大学セントルイス校の考古学者ミカエル・コスモプロス(Michael Cosmopoulos)氏は次のように話す。「イクライナで

    欧州最古の文字が刻まれた粘土板を発見
  • 最古の高層建築、恐怖心から建造か?

    地中深く埋まっていた「エリコの塔」。かつては地上3階建ての高層建築物だった。 Photograph from BibleLandPictures/Alamy ヨルダン川西岸地区に位置する最古の町エリコには、遠い昔の周壁がいまなお残る。併設された1万1000年前の3階建て石造建築物「エリコの塔」は、50年以上前から専門家の注目を集めてきた。しかし最新の研究成果は、夏至との関係性を示唆している。暗闇から市民を守る象徴的な存在だった可能性があるという。 当時のエリコ市民は遊牧生活から農耕社会へ移行を始めたばかりで、生活基盤がまだ確立されていなかった。どのようにして世界初の公共巨大建築物を建造したのだろうか。 考古学者のブライアン・バード氏は、「当時の市民も相当困惑したはずだ」とコメントしている。同氏は今回の研究には関わっていない。 最新のコンピューター・シミュレーションによると、夏至の夕刻には近

    最古の高層建築、恐怖心から建造か?
  • 明代に埋葬、中国“水漬けのミイラ”

    中国で発見された“水漬けのミイラ”。死後600年以上たっているが、眉毛や髪、皮膚が残り、極めて保存状態がよい。布団に包まれた彼女は、水浸しの棺で数百年を過ごしていた。埋葬されていたのは、江蘇省泰州市からほど近い道路建設現場。3月1日、遺体が木の棺から取り出された。 Photograph from Fame Pictures/Barcroft 中国で発見された“水漬けのミイラ”。死後600年以上たっているが、眉毛や髪、皮膚が残り、極めて保存状態がよい。布団に包まれた彼女は、水浸しの棺で数百年を過ごしていた。埋葬されていたのは、江蘇省泰州市からほど近い道路建設現場。3月1日、遺体が木の棺から取り出された。 アメリカ、ペンシルバニア大学の考古学者ビクター・メア氏は、「水に浸かった状態のミイラはいつまでも良い状態を保つことができる。酸素から遮断されているからだ」と説明する。つまり、無酸素の状況がバ

    明代に埋葬、中国“水漬けのミイラ”
  • 裕福な女性、中国“水漬けのミイラ”

    液体に浸されていた女性のミイラを慎重に持ち上げる泰州博物館(Taizhou Museum)のスタッフ(3月1日撮影)。2月に中国江蘇省泰州市の工事現場で発見された3つの木製棺の1つに収められていた。身長は150センチほどで、翡翠(ひすい)の指輪や銀の髪留めのほか、明代の豪華な服飾品を20点以上身に着け埋葬されていたという。 Photograph by Gu Xiangzhong, Xinhua/Corbis 液体に浸されていた女性のミイラを慎重に持ち上げる泰州博物館(Taizhou Museum)のスタッフ(3月1日撮影)。2月に中国江蘇省泰州市の工事現場で発見された3つの木製棺の1つに収められていた。 身長は150センチほどで、翡翠(ひすい)の指輪や銀の髪留めのほか、明代の豪華な服飾品を20点以上身に着け埋葬されていたという。 「鳳凰や龍のしるしが見あたらない。王族出身ではないようだ」と

    裕福な女性、中国“水漬けのミイラ”
  • 危険な発掘、ムスタンの“死の儀式”

    ネパールの秘境ムスタンの洞窟から、歴史的な人骨を回収する登山家ピート・アサンズ氏(2010年撮影)。浸の激しい崖で、背景には別の人骨も露出している。 Photograph by Cory Richards ネパールの秘境ムスタンの洞窟から、歴史的な人骨を回収する登山家ピート・アサンズ氏(2010年撮影)。浸の激しい崖で、背景には別の人骨も露出している。 アサンズ氏が手にするのは、洞窟内で発見された27体の一部で、1500年前の遺骨とみられている。2月25日の発掘チームの発表によると、遺骨の多くは肉を削ぎ取られた形跡があるという。かつてヒマラヤで“死の儀式”が行われていた事実を示す新発見だ。 洞窟と崖全体がきわめて不安定な条件下にあるため、ベテランの登山家が発掘にあたっている。 Photograph by Cory Richards

    危険な発掘、ムスタンの“死の儀式”
  • 並ぶ人骨、ムスタンの“死の儀式”

    ネパール、ムスタン地方サンドン(Samdzong)村の崖に掘られた洞窟から、2010年に大量の人骨が発見された。アメリカ、ウェスタンミシガン大学の生物考古学者ジャクリーン・イング氏が、テント内で記録作業に取り組んでいる。 Photograph by Cory Richards ネパール、ムスタン地方サンドン(Samdzong)村の崖に掘られた洞窟から、2010年に大量の人骨が発見された。アメリカ、ウェスタンミシガン大学の生物考古学者ジャクリーン・イング氏が、テント内で記録作業に取り組んでいる。 死後1000年以上経過しているが、遺体は幅広の木製棚に整然と安置されていたと研究者は考えている。その後の風雨に長い年月さらされたため、調査チームが到達した時点で骨はバラバラになり棚も壊れていたという。 洞窟内にはヤギやウシ、ウマの骨も散乱していた。死者への生贄と見られているが、その目的はいまだ明らか

    並ぶ人骨、ムスタンの“死の儀式”
  • 肉を削ぐ未知の葬儀を発見、ヒマラヤ

    ネパール、ムスタン地方の崖。浸された壁面の洞窟から登山家ピート・アサンズ氏が頭骨を取り出した(2010年撮影)。 Photograph by Cory Richards 2010年、ネパール、ムスタン地方の崖の壁面に掘られた人工洞窟から、太古の遺骨が27体分発見された。成人男女と子どもの骨には刃物の傷が残り、未知の方法で葬儀が行われていたらしい。 遺骨は1500年ほど前に高所の洞窟に安置されたと考えられている。7割弱の遺骨には肉を削ぎ取った痕跡があり、金属製のナイフが使われた可能性が高い。 処理が済んだ後は、幅広の木製棚に丁寧に横たえられたと推測される。しかし十数世紀も経過しているため、発見段階で骨や安置棚は既に激しく損傷しており、洞窟自体もほとんど崩壊していたという。 雑然とした洞窟には、ヤギやウシ、ウマの骨も散乱していた。死者への生贄と見られているが、その目的はいまだ明らかになってい

    肉を削ぐ未知の葬儀を発見、ヒマラヤ
  • ポリネシア伝統文化と近代科学を橋渡し

    ポリネシア諸島、モーレア島の住民と科学者が、写真の一覧を見ながら島の生物のタヒチ語名をリストアップしている。 Photograph by David Liittschwager, National Geographic 太平洋に浮かぶポリネシア諸島の一つ、モーレア島に住む老人は語る。「陸と海、それは分かちがたい。陸を苦しめれば海は悲しむ。海を追い詰めれば陸の我々に返ってくる」。 彼のような村人が持つ島と海の知識は世代を超えて受け継がれてきたが、その叡智はいまや西欧の近代科学の世界にも浸透し始めている。テ・プ・アティティア協会(Association Te Pu Atitia)のメンバーであり、カリフォルニア大学バークレー校のガンプ研究所(Gump Research Station)副所長でもあるヒナノ・ティーバイ・マーフィ(Hinano Teavai-Murphy)氏は、土着の知恵と近代科

    ポリネシア伝統文化と近代科学を橋渡し
  • ベスト報道写真2010:社会問題1位

    アラビア半島のイエメンに逃れるため夜通し歩き続けたソマリア人難民が、何もない砂漠で体を休めている(2010年3月15日撮影)。イスラム武装勢力間の対立に加え、テロ、干ばつなどに苦しむソマリアでは、行き場を失った人々が100万人を超えた。カナダ人写真家エド・ウー(Ed Ou)氏が組写真として記録し、世界報道写真財団が主催する「2010年世界報道写真コンテスト」の「現代社会の問題」部門第1位に選ばれた。 Photograph courtesy Ed Ou, Reportage by Getty Images アラビア半島のイエメンに逃れるため夜通し歩き続けたソマリア人難民が、何もない砂漠で体を休めている(2010年3月15日撮影)。イスラム武装勢力間の対立に加え、テロ、干ばつなどに苦しむソマリアでは、行き場を失った人々が100万人を超えた。 カナダ人写真家エド・ウー(Ed Ou)氏が組写真とし

    ベスト報道写真2010:社会問題1位
  • ベスト報道写真2010:社会問題2位

    ベトナム戦争時に使用された枯れ葉剤の影響と見られる障害に苦しむ9歳の女の子、グエン・ティ・リー(Nguyen Thi Ly)ちゃん。アメリカ人写真家エド・カシ氏がベトナム中部の都市ダナンで撮影し、2010年世界報道写真コンテストの「現代社会の問題」部門で単写真の第2位に選ばれた。米軍がジャングルに散布した大量の枯れ葉剤に含まれるダイオキシン類が、目に障害が発生するフレーザー症候群など、遺伝性疾患の原因と考えられている。 Photograph courtesy Ed Kashi, VII ベトナム戦争時に使用された枯れ葉剤の影響と見られる障害に苦しむ9歳の女の子、グエン・ティ・リー(Nguyen Thi Ly)ちゃん。アメリカ人写真家エド・カシ氏がベトナム中部の都市ダナンで撮影し、2010年世界報道写真コンテストの「現代社会の問題」部門で単写真の第2位に選ばれた。 米軍がジャングルに散布した

    ベスト報道写真2010:社会問題2位
  • ベスト報道写真2010:人々部門1位

    パキスタン、ダードゥを襲った大規模な洪水の被災者たちが料配布のヘリに殺到する(2010年9月13日撮影)。オーストラリアの写真家ダニエル・ベルフラック氏が、過去80年で最悪の洪水被害に見舞われた8~9月のパキスタンを取材。12枚のシリーズは、2010年世界報道写真コンテストの「ニュースの中の人々」部門で写真シリーズ第1位を獲得した。 Photograph courtesy Daniel Berehulak, Getty Images パキスタン、ダードゥを襲った大規模な洪水の被災者たちが料配布のヘリに殺到する(2010年9月13日撮影)。 オーストラリアの写真家ダニエル・ベルフラック氏が、過去80年で最悪の洪水被害に見舞われた8~9月のパキスタンを取材。12枚のシリーズは、2010年世界報道写真コンテストの「ニュースの中の人々」部門で写真シリーズ第1位を獲得した。 Photograph

    ベスト報道写真2010:人々部門1位
  • ベスト報道写真2010:大賞

    タリバンの兵士と12歳で結婚したが虐待され逃走、夫に耳と鼻をそぎ落とされる制裁を受けたアフガニスタン女性ビビ・アイシャ(Bibi Aisha)さんのポートレート写真(当時18才)。南アフリカの写真家ジョディ・ビーバー(Jodi Bieber)氏が撮影し、世界報道写真財団主催の2010年世界報道写真コンテストで大賞に選ばれた。2010年7月には米誌「Time」の表紙となり、論争を巻き起こした。 Photograph courtesy Jodie Bieber, Institute for Artist Management, shot for Time タリバンの兵士と12歳で結婚したが虐待され逃走、夫に耳と鼻をそぎ落とされる制裁を受けたアフガニスタン女性ビビ・アイシャ(Bibi Aisha)さんのポートレート写真(当時18才)。南アフリカの写真家ジョディ・ビーバー(Jodi Bieber)

    ベスト報道写真2010:大賞
  • ベスト報道写真2010:速報部門1位

    自らの体に火を放ち、ハンガリーの首都ブダペストにある「自由橋」の鉄塔から飛び降りる男性(2010年5月22日撮影)。歩道に落下し、即死した。ハンガリーの写真家ピーター・ラカトシュ氏の撮影で、世界報道写真財団が主催する「2010年世界報道写真コンテスト」のスポットニュース(速報)部門第1位に選ばれた。 Photograph courtesy Peter Lakatos, MTI 自らの体に火を放ち、ハンガリーの首都ブダペストにある「自由橋」の鉄塔から飛び降りる男性(2010年5月22日撮影)。歩道に落下し、即死した。 ハンガリーの写真家ピーター・ラカトシュ氏の撮影で、世界報道写真財団が主催する「2010年世界報道写真コンテスト」のスポットニュース(速報)部門第1位に選ばれた。 Photograph courtesy Peter Lakatos, MTI

    ベスト報道写真2010:速報部門1位
  • ベスト報道写真2010:自然部門2位

    北海道の東の果て、野付湾の氷上で夜を迎えるオオハクチョウの群れ。イタリアの写真家ステファノ・ウンターティナー氏が撮影し、2010年世界報道写真コンテスト「自然部門」第2位に輝いた写真シリーズの1枚。力強く羽ばたいて渡り、越冬地で優雅に休息するオオハクチョウの姿は、ナショナル ジオグラフィック誌に発表されている。 Photograph courtesy Stefano Unterthiner for National Geographic magazine 北海道の東の果て、野付湾の氷上で夜を迎えるオオハクチョウの群れ。イタリアの写真家ステファノ・ウンターティナー氏が撮影し、2010年世界報道写真コンテスト「自然部門」第2位に輝いた写真シリーズの1枚。 力強く羽ばたいて渡り、越冬地で優雅に休息するオオハクチョウの姿は、ナショナル ジオグラフィック誌に発表されている。 Photograph c

    ベスト報道写真2010:自然部門2位
  • 豪華な寝室、19世紀の大邸宅

    フランスで100年ぶりに一般公開された役人ルイ・マンタン(Louis Mantin)の大邸宅。学芸員補を務めるモード・レイヨウド(Maud Leyoudec)氏によると、金唐革(きんからかわ)という珍しい素材を壁に張り詰めた寝室が特に秀逸だという。1712年作の南フランス製で、なめし革に銀箔を貼り、黄色のニスを重ねた浮き出し模様に彩色を施してある。竣工の1896年当時はごくありふれた屋敷だった。しかし、「ルイ・マンタンは相当な収集家だったようだ。一歩足を踏み入れると、さまざまな様式を鑑賞できる」とレイヨウド氏は話している。 Photograph courtesy Jerome Mondiere フランスで100年ぶりに一般公開された役人ルイ・マンタン(Louis Mantin)の大邸宅。学芸員補を務めるモード・レイヨウド(Maud Leyoudec)氏によると、金唐革(きんからかわ)という

    豪華な寝室、19世紀の大邸宅
  • 密愛の部屋、19世紀の大邸宅

    ピンクを基調とした高級ホテルのような寝室。フランスの役人ルイ・マンタン(Louis Mantin)が莫大な遺産相続を機に建造した大邸宅の一部だ。生涯独身だったが、既婚女性ルイーズ・アライレ(Louise Alaire)とこの部屋で20年間にわたり密会を重ねていた。 Photograph courtesy Jerome Mondiere ピンクを基調とした高級ホテルのような寝室。フランスの役人ルイ・マンタン(Louis Mantin)が莫大な遺産相続を機に建造した大邸宅の一部だ。生涯独身だったが、既婚女性ルイーズ・アライレ(Louise Alaire)とこの部屋で20年間にわたり密会を重ねていた。 現在この邸宅は、博物館メゾン・マンタン(Maison Mantin)として約100年ぶりに一般公開されている。学芸員補モード・レイヨウド(Maud Leyoudec)氏は、「絹布が貼られたこの部屋

    密愛の部屋、19世紀の大邸宅
  • 奇妙な御殿、19世紀の大邸宅

    19世紀後半に建てられたフランスの大邸宅(西向き正面を撮影)。100年以上も閉ざされていた扉が開かれ、当時の贅沢品や珍品の数々が一般公開されている。 かつて裕福な役人ルイ・マンタン(Louis Mantin)が暮らしていた邸宅は、博物館メゾン・マンタン(Maison Mantin)として生まれ変わった。1905年に他界したマンタンは、100年後に一般公開してほしいという遺言を残していた。その2005年は短期間の公開で終わり、虫いやカビ跡の修復を大規模に行った後、2010年10月に再オープンした。 Photograph courtesy Jerome Mondiere 19世紀後半に建てられたフランスの大邸宅(西向き正面を撮影)。100年以上も閉ざされていた扉が開かれ、当時の贅沢品や珍品の数々が一般公開されている。 かつて裕福な役人ルイ・マンタン(Louis Mantin)が暮らしていた邸

    奇妙な御殿、19世紀の大邸宅
  • 電力駆動潜水艦、ヴェルヌの夢の現在

    2月8日は『海底2万マイル』などの著者として知られるフランスの小説家、ジュール・ヴェルヌの183回目の誕生日だった。“潜水艦仕様”のGoogleロゴ(Google Doodle)を見て気付いた人もいるだろう。SFの父が2011年の未来を訪れたら、きっと驚くに違いない。彼が描き出した空想の数々が最先端技術によって実現しつつあるのだ。 1870年の代表作『海底2万マイル』の中では、ネモ船長が電気駆動の超高性能潜水艦「ノーチラス号」で世界の海を駆け巡る。豪華なダイニングルームなど贅沢設備を除けば、現代の潜水艇も決して負けていない。例えば1964年に就役した3人乗りの「アルビン号」(写真)は、鉛酸蓄電池という特殊な動力源で駆動する。 Photograph by Emory Kristof and Alvin Chandler, National Geographic 2月8日は『海底2万マイル』な

    電力駆動潜水艦、ヴェルヌの夢の現在
  • “大気広告”、ヴェルヌの夢の現在

    SF界の巨匠ジュール・ヴェルヌは鋭い観察眼を持ち、幅広い分野に好奇心を持っていた。“広告”もその一つであり、短編『西暦2889年・アメリカの新聞王の1日』で“大気広告”という技術に触れている。現代で言えば飛行機による空中文字(写真)が近いだろう。「雲に掲載されたその巨大な広告に、誰もが目を奪われた。町中、国中の人々の視界に入るはずだ」とヴェルヌは作中に綴っている。 Photograph by Neville Elder, Corbis SF界の巨匠ジュール・ヴェルヌは鋭い観察眼を持ち、幅広い分野に好奇心を持っていた。“広告”もその一つであり、短編『西暦2889年・アメリカの新聞王の1日』で“大気広告”という技術に触れている。現代で言えば飛行機による空中文字(写真)が近いだろう。「雲に掲載されたその巨大な広告に、誰もが目を奪われた。町中、国中の人々の視界に入るはずだ」とヴェルヌは作中に綴って

    “大気広告”、ヴェルヌの夢の現在
  • ソーラーセイル、ヴェルヌの夢の現在

    太陽光を動力とするNASAのソーラーセイル小型実験衛星「ナノセイルD(NanoSail-D)」(イメージ図)。1865年にジュール・ヴェルヌがSF小説の古典『月世界旅行』で描いた夢が現実化した。ヴェルヌは、20世紀以降に実現したさまざまな技術を何十年も前に予言した作家として広く知られている。「彼は未来を見通していた。それは大量のを読み、人と話し、自分を取り巻く世界で何が起きているかを知っていたからだ。的中して当然だろう」とマサチューセッツ工科大学(MIT)のロザリンド・ウィリアムズ氏は語る。「魔法などではない。鋭い注意力のなせる業だ」。 Illustration courtesy NASA 太陽光を動力とするNASAのソーラーセイル小型実験衛星「ナノセイルD(NanoSail-D)」(イメージ図)。1865年にジュール・ヴェルヌがSF小説の古典『月世界旅行』で描いた夢が現実化した。 ヴェ

    ソーラーセイル、ヴェルヌの夢の現在
  • ニュース放送、ヴェルヌの夢の現在

    フランスの小説家ジュール・ヴェルヌは1889年に発表した短編『西暦2889年・アメリカの新聞王の1日』の中で、新聞に代わって“ニュース放送”が台頭する未来を予言している。毎朝、レポーターや政治家、科学者がその日の出来事を語ってくれる仕組みだ。アメリカ初のラジオニュースは、ヴェルヌの予言からわずか30年後の1920年に始まったとAP通信は伝えている。CBSニュースによると、テレビニュースもその28年後にスタートする。1974年には、何百万人もの人々がテレビでニクソン大統領の辞任演説を視聴するまでになった(写真)。 Photograph from Time & Life Pictures/Getty Images フランスの小説家ジュール・ヴェルヌは1889年に発表した短編『西暦2889年・アメリカの新聞王の1日』の中で、新聞に代わって“ニュース放送”が台頭する未来を予言している。毎朝、レポー

    ニュース放送、ヴェルヌの夢の現在
  • テレビ電話、ヴェルヌの夢の現在

    北朝鮮韓国に分断された離散家族をつなぐテレビ電話(2005年撮影)。ジュール・ヴェルヌは1889年の著書『西暦2889年・アメリカの新聞王の1日』で、テレビ電話の前身ともいえるテクノロジーを登場させている。彼のアイデアでは、ワイヤーで連結した高精度な鏡によって映像が送り届けられる。SF小説中の発明やアイデアをまとめたWebサイト「Technovelgy.com」によると、同書はテレビ電話が登場した最初期の作品だという。 Photograph by Lee Jin-man, AP 北朝鮮韓国に分断された離散家族をつなぐテレビ電話(2005年撮影)。ジュール・ヴェルヌは1889年の著書『西暦2889年・アメリカの新聞王の1日』で、テレビ電話の前身ともいえるテクノロジーを登場させている。 彼のアイデアでは、ワイヤーで連結した高精度な鏡によって映像が送り届けられる。SF小説中の発明やアイデアを

    テレビ電話、ヴェルヌの夢の現在
  • 自然の恵み、アマゾン孤立部族

    ブラジル・ペルー国境付近のアマゾンに住む“外部との接触を持たない”部族。住居の様子から、豊かな生活を営んでいることがよくわかる。2010年4月にチームを率いて写真を撮影したホセ・カルロス・メイレレス氏は、「自然の恵みに富んだ地域らしい。暮らしに問題は無さそうだ」と語った。同氏は2008年にもこの部族を空撮している。 Photograph courtesy Gleison Miranda, FUNAI/Survival ブラジル・ペルー国境付近のアマゾンに住む“外部との接触を持たない”部族。住居の様子から、豊かな生活を営んでいることがよくわかる。 左下のかごには大量のパパイヤが詰まっている。キャッサバ(マニオク)もうず高く積まれ、その傍らに皮が捨ててある。奥の小屋には持ち運び用の革ひもが付いたかごや、中身を保護するためか、バナナの葉の“ふた”も見える。収穫したトウモロコシやカボチャ、ピーナッ

    自然の恵み、アマゾン孤立部族
  • 森林伐採の危機、アマゾン孤立部族

    植物の抽出物で赤や黒にペイントした3人のアマゾン先住民。 Photograph courtesy Gleison Miranda, FUNAI/Survival 植物の抽出物で赤や黒にペイントした3人のアマゾン先住民。森からこちらを見上げる彼らは外部との接触を絶っている。ブラジル政府のヘリコプターで2010年4月に撮影した。「この部族は現在のところ危機的な状況にはない。しかし、違法伐採が進むペルーから、先住民保護が手厚いブラジルへとほかの部族が逃げ込んでくる可能性がある」と、ブラジル国立インディアン・ファンデーション(FUNAI)に長年勤務したホセ・カルロス・メイレレス氏は話す。 「この地域で長年対立してきた部族もいる。流入でどんな事態になるか想像もつかない。土地や料の奪い合いに発展しなければいいが」。メイレレス氏によると、同地域ではほかに3部族が生活している。ブラジル全土の孤立部族数は

    森林伐採の危機、アマゾン孤立部族
  • 新たな写真が公開、アマゾン孤立部族

    ブラジル北西部アクレ州に住む“外部との接触を持たない”部族の新たな空撮写真が公開された。2008年に撮影チームの飛行機へ矢を放つ姿が公開され一躍有名になったが、今回も元気に暮らす姿が確認された。 Photograph courtesy Gleison Miranda, FUNAI/Survival ブラジル北西部アクレ州に住む“外部との接触を持たない”部族の新たな空撮写真が公開された。2008年に撮影チームの飛行機へ矢を放つ姿が公開され一躍有名になったが、今回も元気に暮らす姿が確認された。 ヤシの葉の小屋のそばに立つ先住民は「外部との接触を持たない部族」と呼ばれているが、以前はそうでもなかったらしい。「だが、彼らは孤立を選んだ」と先住民問題の専門家ホセ・カルロス・メイレレス氏は言う。 メイレレス氏は2010年4月、ブラジル政府が毎年実施する調査視察飛行で約1200メートル上空からこの写真を

    新たな写真が公開、アマゾン孤立部族
  • バナナを栽培、アマゾン孤立部族

    アマゾン奥地に暮らす“外部との接触を持たない”部族の農耕地(2010年4月撮影)。バナナやベニノキが栽培されている。ベニノキの種子から採れる用色素アナトーは、体を赤くペイントする際に使用する。また、熱帯雨林から収穫した綿をつむいで布を織り、腰にまきつけているようだ。写真を撮影したホセ・カルロス・メイレレス氏の推測によれば、部族の人口は300人ほどだという。「小屋の数と農耕地の大きさが参考になる。上空から確認できた分だけなのでおおよその数字だ。だが、彼らに接触しないというブラジル政府の方針がある以上、正確な数字はわからない」。 Photograph courtesy Gleison Miranda, FUNAI/Survival アマゾン奥地に暮らす“外部との接触を持たない”部族の農耕地(2010年4月撮影)。バナナやベニノキが栽培されている。ベニノキの種子から採れる用色素アナトーは、体

    バナナを栽培、アマゾン孤立部族
  • 2600年前の顔復元、鉄器時代の少女

    何千年もの時を越えて視線を投げかける鉄器時代の少女「モーラ(Moora)」。頭蓋骨の断片を基にデジタル技術を駆使して復元され、1月20日に公開された。生きていれば2600歳の彼女の頭蓋骨は、ドイツのニーダーザクセン州で2000年、背骨や髪の毛とともに見つかった。最初に発見したのは現地の泥炭湿地の労働者。採掘機に巻き込まれ砕けていたという。 Illustration courtesy Ursula Wittwer-Backofen, University of Freiburg 何千年もの時を越えて視線を投げかける鉄器時代の少女「モーラ(Moora)」。頭蓋骨の断片を基にデジタル技術を駆使して復元され、1月20日に公開された。 生きていれば2600歳の彼女の頭蓋骨は、ドイツのニーダーザクセン州で2000年、背骨や髪の毛とともに見つかった。最初に発見したのは現地の泥炭湿地の労働者。採掘機に巻き

    2600年前の顔復元、鉄器時代の少女
  • 泥炭湿地から頭蓋骨、鉄器時代の少女

    ドイツの泥炭湿地で発見され、採掘機によりバラバラになっていた鉄器時代の少女「モーラ(Moora)」の頭蓋骨。鈍器による生前の外傷も残っているという。毎冬の糧不足によると思われる栄養不良の痕跡があり、背骨も曲がっていた。過酷な人生だったようだが、直接の死因ははっきりしない。 Photograph courtesy Andreas Bauerochse ドイツの泥炭湿地で発見され、採掘機によりバラバラになっていた鉄器時代の少女「モーラ(Moora)」の頭蓋骨。鈍器による生前の外傷も残っているという。毎冬の糧不足によると思われる栄養不良の痕跡があり、背骨も曲がっていた。過酷な人生だったようだが、直接の死因ははっきりしない。 衣服は残されておらず、「もし綿やそれに似た素材なら、泥炭の酸で分解されてしまったのだろう」と、ニーダーザクセン州文化財保護局の古生態学者アンドレアス・バウロシェ(Andr

    泥炭湿地から頭蓋骨、鉄器時代の少女
  • 頭蓋骨の模型、鉄器時代の少女

    わずかな断片から再現された鉄器時代の少女「モーラ(Moora)」の頭蓋骨。ドイツ、ニーダーザクセン州文化財保護局の古生態学者アンドレアス・バウロシェ(Andreas Bauerochse)氏らは、まず頭蓋骨の断片をスキャンし、3Dコンピューターモデルを生成した。 Image courtesy V. Minkus, NLD わずかな断片から再現された鉄器時代の少女「モーラ(Moora)」の頭蓋骨。ドイツ、ニーダーザクセン州文化財保護局の古生態学者アンドレアス・バウロシェ(Andreas Bauerochse)氏らは、まず頭蓋骨の断片をスキャンし、3Dコンピューターモデルを生成した。 次いで3Dモデルの破片をコンピューター上でつなぎ合わせ、3Dプリンタでプラスチック模型を作製。顔の復元を専門とするドイツとイギリス、スコットランドの形質人類学者5人に送り、作業を依頼した。「5人には別個に依頼した

    頭蓋骨の模型、鉄器時代の少女
  • 髪はブロンド? 鉄器時代の少女

    こちらは粘土で復元した鉄器時代の少女「モーラ(Moora)」の頭部。ドイツの泥炭湿地で発見された頭蓋骨から作成したプラスチック模型に肉付けしている。復元にあたった専門家らは、頭蓋骨を見れば顔立ちを想像できる。しかし、髪型、髪と目の色、唇の形、肌の色などいくつかの特徴については、経験から推測するしかないという。 Image courtesy V. Minkus, NLD こちらは粘土で復元した鉄器時代の少女「モーラ(Moora)」の頭部。ドイツの泥炭湿地で発見された頭蓋骨から作成したプラスチック模型に肉付けしている。 復元にあたった専門家らは、頭蓋骨を見れば顔立ちを想像できる。しかし、髪型、髪と目の色、唇の形、肌の色などいくつかの特徴については、経験から推測するしかないという。「90%までは科学的な根拠があるが、残りは職人の腕の見せどころだ」と、ニーダーザクセン州文化財保護局の古生態学者アン

    髪はブロンド? 鉄器時代の少女
  • 顔の特徴、鉄器時代の少女

    頭蓋骨模型から復元された鉄器時代の少女「モーラ(Moora)」の肖像。「合計5つの復元結果が得られたが、髪形などの違いで別人のように思えるかもしれない」とドイツ、ニーダーザクセン州文化財保護局の古生態学者アンドレアス・バウロシェ(Andreas Bauerochse)氏は話す。この肖像については年上気味に描かれていると指摘した。 Illustration courtesy Caroline Wilkison, University of Dundee 頭蓋骨模型から復元された鉄器時代の少女「モーラ(Moora)」の肖像。「合計5つの復元結果が得られたが、髪形などの違いで別人のように思えるかもしれない」とドイツ、ニーダーザクセン州文化財保護局の古生態学者アンドレアス・バウロシェ(Andreas Bauerochse)氏は話す。この肖像については年上気味に描かれていると指摘した。「だが復元結果

    顔の特徴、鉄器時代の少女
  • エジプトの宝、略奪から市民が守る

    カイロのエジプト考古学博物館で、特殊部隊を従え話をするエジプト最高考古庁事務局長ザヒ・ハワス氏(中央、1月31日撮影)。 Photograph by Tara Todras-Whitehill, AP ホスニー・ムバラク大統領の辞任を求める市民のデモが続くエジプトで、その混乱に乗じて博物館や史跡を狙う略奪が頻発している。だが、エジプト学者や国民たちは奮い立っている。古代エジプトの至宝を守ろうと、多くの市民たちが“人間の鎖”をつくり、非公式の検問所を設けた。政府によるインターネットと携帯電話の通信遮断にアイデアで対抗する研究者もいる。 カイロでは1月28日、エジプト考古学博物館に略奪者が侵入した。エジプト最高考古庁事務局長ザヒ・ハワス氏によると、「警備が万全でなかった」という。同館にはツタンカーメン王の黄金のマスクなど、約12万点の歴史的遺物が収蔵されている。 ヒョウの上に立つツタンカーメン

    エジプトの宝、略奪から市民が守る
  • エジプト博物館襲撃、乗り入れる戦車

    首都カイロのエジプト考古学博物館が面するタハリール広場に戦車が乗り入れている(1月30日撮影)。当局によると、28日の大規模な反政府デモの最中に、100年以上の歴史を持つ博物館の天窓から暴徒が侵入した。暴徒はミイラなどを破壊し、所蔵品を持ち出そうとしたが逮捕されている。 Photograph by Tara Todra Whitehill, AP 首都カイロのエジプト考古学博物館が面するタハリール広場に戦車が乗り入れている(1月30日撮影)。当局によると、28日の大規模な反政府デモの最中に、100年以上の歴史を持つ博物館の天窓から暴徒が侵入した。 暴徒はミイラなどを破壊し、所蔵品を持ち出そうとしたが逮捕されている。 Photograph by Tara Todra Whitehill, AP

    エジプト博物館襲撃、乗り入れる戦車
  • ミイラの頭部切断、エジプト博物館襲撃

    エジプト考古学博物館の床に横たわる古代ミイラ2体の頭部(1月31日撮影)。まだ鑑定が終わっていない段階のミイラで、28日に押し入った反政府デモの暴徒による仕業だという。 Photograph from AP エジプト考古学博物館の床に横たわる古代ミイラ2体の頭部(1月31日撮影)。 まだ鑑定が終わっていない段階のミイラで、28日に押し入った反政府デモの暴徒による仕業だという。 Photograph from AP

    ミイラの頭部切断、エジプト博物館襲撃
  • 特殊部隊が警備、エジプト博物館襲撃

    エジプト考古学博物館の床に横たわる古代ミイラ2体の頭部(1月31日撮影)。まだ鑑定が終わっていない段階のミイラで、28日に押し入った反政府デモの暴徒による仕業だという。 Photograph by Tara Todras-Whitehill, AP 3300年前にツタンカーメンが使用したチャリオット(戦車)の展示室で、エジプト軍の特殊部隊員が警戒中だ。 1月28日に反政府デモの暴徒がエジプト考古学博物館へ乱入、手前の展示用ケースも破られ、ツタンカーメンの黄金の儀式用扇の一部がケース上に放置されている(展示台上)。 Photograph by Tara Todras-Whitehill, AP

    特殊部隊が警備、エジプト博物館襲撃
  • アメリカ古代人はイヌを食料にしていた

    アメリカ、テキサス州の洞窟で見つかった古代人の排泄物。中にイヌの頭蓋骨の破片が含まれていた。 Photograph courtesy Samuel Belknap 最新の研究によると、アメリカ、テキサス州の洞窟から発見されたイヌの頭蓋骨片を分析した結果、北アメリカでは9400年前という早い段階で既にイエイヌを飼育し、料にしていたことが判明したという。 見つかった骨の破片は成人の小指のツメほどの大きさだったが、イヌ科の動物で、右側の後頭顆(こうとうか)の一部であるとまず確認された。頭蓋骨の底で脊椎と接する部分である。さらに詳しい遺伝子検査が行われ、オオカミやコヨーテ、キツネなどではなくイヌの骨と確定した。 研究チームの一員でアメリカにあるメイン大学気候変動研究所のサミュエル・ベルナップ3世氏は、「イヌの家畜化の証拠で、従来の説よりおよそ8000年繰り上がった」と話す。「遺伝子検査によってイ

    アメリカ古代人はイヌを食料にしていた
  • 小動物のエサを拝借、シベリアの旧習

    ベリーの実をべるツンドラハタネズミ(資料写真)。 Photograph by Michael S. Quinton, National Geographic シベリアやロシア極東地域で暮らす人々の間には19世紀末まで、酷寒の冬を生き延びる生活の知恵として、野ネズミなどの小動物が蓄えておいた料を“拝借”する習慣があったようだ。 最新の研究によると、ロシアやスウェーデン、ドイツの探検家たちが18世紀に残した見聞録には、野ネズミなどの小型哺乳類が集めた料の隠し場所を、棒や鍬(くわ)、鎌などであさる人々が登場するという。当時、この地域の先住民らは大半が遊牧生活を営んでおり、狩猟や漁労、家畜飼育で生計を立てていた。 スウェーデン、ウプサラ大学ロシア・ユーラシア研究センター(Centre for Russian and Eurasian Studies)の民族生物学者で、研究チームのリーダーを務

    小動物のエサを拝借、シベリアの旧習
  • 柄頭の紋章、黒ひげの船から装飾剣

    「クイーン・アンズ・リベンジ」号から発見された剣の柄頭(つかがしら)。一見すると花をかたどった装飾のある柄頭にしか見えないが、同船の調査にあたる専門家にとっては考古学的証拠の宝庫だ。例えば花の装飾は、「フルール・ド・リス」と呼ばれるフランスの王家の紋章であるアヤメを模している。この船は、黒ひげが奪取して「クイーン・アンズ・リベンジ」(アン女王の復讐)と名付けるまでは、フランスの「ラ・コンコルド」という名の私有の奴隷船だった。柄頭の花模様の刻印は、この剣もまたフランスで作られたものであることを示唆している。 Photograph courtesy Wendy M. Welsh, North Carolina Department of Cultural Resources 「クイーン・アンズ・リベンジ」号から発見された剣の柄頭(つかがしら)。一見すると花をかたどった装飾のある柄頭にしか見えな

    柄頭の紋章、黒ひげの船から装飾剣
  • 本人の剣? 黒ひげの船から装飾剣

    18世紀の悪名高き海賊「黒ひげ」の旗艦「クイーン・アンズ・リベンジ」(アン女王の復讐)号とみられる難破船の中から発見された装飾剣の柄。部分的に金箔が施されている。破片の状態で見つかった柄を修復したもので、同船からの最新の回収物として今月公開された。黒ひげ人の剣の柄なのか、今となっては確かめるすべはない。ノースカロライナ州沖で引き揚げられたクイーン・アンズ・リベンジ号の調査は1997年から続けられている。 Photograph courtesy Wendy M. Welsh, North Carolina Department of Cultural Resources 18世紀の悪名高き海賊「黒ひげ」の旗艦「クイーン・アンズ・リベンジ」(アン女王の復讐)号とみられる難破船の中から発見された装飾剣の柄。部分的に金箔が施されている。破片の状態で見つかった柄を修復したもので、同船からの最新の回

    本人の剣? 黒ひげの船から装飾剣
  • 装飾の名残、黒ひげの船から装飾剣

    今回発見された剣には、つば(写真)の穴から、柄の下部にある飾り用の取っ手である柄頭(つかがしら、写真になし)にかけて、装飾用の鎖がつけられていた。沈没した「クイーン・アンズ・リベンジ」(アン女王の復讐)号の遺物の保存にあたるノースカロライナ州文化財課のウェンディ・ウェルシュ氏によると、2008年に引き上げられたこのつばはイギリスかフランスで作られた可能性があるという。 Photograph courtesy Wendy M. Welsh, North Carolina Department of Cultural Resources 今回発見された剣には、つば(写真)の穴から、柄の下部にある飾り用の取っ手である柄頭(つかがしら、写真になし)にかけて、装飾用の鎖がつけられていた。 沈没した「クイーン・アンズ・リベンジ」(アン女王の復讐)号の遺物の保存にあたるノースカロライナ州文化財課のウェン

    装飾の名残、黒ひげの船から装飾剣
  • 世界最古のワイン醸造所、アルメニア

    アルメニアで発掘された、ワイン圧搾機(表示板手前)と発酵槽(右)。 Photograph courtesy Gregory Areshian 新たな研究によれば、先史時代に現在のアルメニアで生活していた人々は、現存する世界最古の皮を作っただけでなく、これまでに確認された中で最も古いワイン醸造所も建造していたようだ。埋葬地で行われていた当時のワイン醸造は死者に捧げられていた可能性があり、従事する人々はせっかくの皮も脱がなければならなかったのかもしれない。 5500年前のモカシンに似た皮が非常に良好な保存状態で発見されたばかりのアルメニア南部、アレニ村近郊の洞窟で、足踏み式のワイン用ブドウ圧搾機、発酵および貯蔵用の槽、コップ、干からびたブドウのつるや皮、種などが発掘されたと発表された。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の考古学者グレゴリー・アレシャン氏は、「ワイン製造を行った痕

    世界最古のワイン醸造所、アルメニア
  • モデルは地元民、メキシコの水中アート

    メキシコの水中アート「The Silent Evolution(無言の進化)」の立像は実際の人物をモデルにしている。制作した彫刻家ジェイソン・デケアレス・テイラー(Jason deCaires Taylor)氏によると、そのほとんどが地元の人々だという。写真中央はメキシコ在住の大工ラッキーさんを象ったもの。 Photograph courtesy Jason deCaires Taylor メキシコの水中アート「The Silent Evolution(無言の進化)」の立像は実際の人物をモデルにしている。制作した彫刻家ジェイソン・デケアレス・テイラー(Jason deCaires Taylor)氏によると、そのほとんどが地元の人々だという。写真中央はメキシコ在住の大工ラッキーさんを象ったもの。 3才の少年サンティアゴくんや85才の修道女ロサリオさんをはじめ、会計士、ヨガ講師、曲芸師など、モ

    モデルは地元民、メキシコの水中アート
  • 海底の群像、メキシコの水中アート

    メキシコ南東部のリゾート地カンクン近くの海底に等身大の像が並ぶ(2010年後半に撮影)。数カ月前からカンクンと沖合いの2つの島、イスラ・ムヘーレス(Isla Mujeres)とプンタ・ニスク(Punta Nizuc)にまたがる国立海洋公園で、400を超える立像が常設されている。「The Silent Evolution(無言の進化)」と題した壮大な芸術作品の一部で、海底美術館MUSA(Museo Subacuatico de Arte)の初企画だ。 Photograph courtesy Jason deCaires Taylor メキシコ南東部のリゾート地カンクン近くの海底に等身大の像が並ぶ(2010年後半に撮影)。 数カ月前からカンクンと沖合いの2つの島、イスラ・ムヘーレス(Isla Mujeres)とプンタ・ニスク(Punta Nizuc)にまたがる国立海洋公園で、400を超える立像

    海底の群像、メキシコの水中アート
  • “呼吸”する像、メキシコの水中アート

    イギリスの言語学者を象った「サラ」(2010年後半撮影)。メキシコにある水中アート「The Silent Evolution(無言の進化)」で、呼吸する像はサラだけだ。サラが吐く空気は、背中の穴にダイバーが自分で吹き込むか、エアタンクから補充する。像に組み込んだ“肺”を通して口からゆっくりと吐き出される仕掛けになっている。 Photograph courtesy Jason deCaires Taylor イギリスの言語学者を象った「サラ」(2010年後半撮影)。メキシコにある水中アート「The Silent Evolution(無言の進化)」で、呼吸する像はサラだけだ。サラが吐く空気は、背中の穴にダイバーが自分で吹き込むか、エアタンクから補充する。像に組み込んだ“肺”を通して口からゆっくりと吐き出される仕掛けになっている。 特殊なセメント製の像はサンゴなどの海洋生物が付着していくと外観が

    “呼吸”する像、メキシコの水中アート
  • 制作風景、メキシコの水中アート

    彫刻家ジェイソン・デケアレス・テイラー(Jason deCaires Taylor)氏が制作している像は、中国系メキシコ人の漁師チャーリー・ブラウンさん(67歳)がモデル。2010年2月、カンクン近郊の漁村プエルト・モレロスにあるアトリエで撮影した。「型取りの最中に眠ってしまったのは彼だけだった」とテイラー氏は振り返る。セメントや砂、マイクロシリカ、ガラス繊維、生きたサンゴが材料だという。 Photograph by Miguel Tovar, AP 彫刻家ジェイソン・デケアレス・テイラー(Jason deCaires Taylor)氏が制作している像は、中国系メキシコ人の漁師チャーリー・ブラウンさん(67歳)がモデル。2010年2月、カンクン近郊の漁村プエルト・モレロスにあるアトリエで撮影した。「型取りの最中に眠ってしまったのは彼だけだった」とテイラー氏は振り返る。セメントや砂、マイクロ

    制作風景、メキシコの水中アート
  • 海底へ設置、メキシコの水中アート

    2010年末、水中アート「The Silent Evolution(無言の進化)」の群像がメキシコ南東部のリゾート地、カンクン沖の海底に沈められた。彫刻家ジェイソン・デケアレス・テイラー(Jason deCaires Taylor)氏の指揮の下、アーティスト、建設業者、生物学者、エンジニア、スキューバダイバーの協力を得てこの作品は完成した。 Photograph courtesy Jason deCaires Taylor 2010年末、水中アート「The Silent Evolution(無言の進化)」の群像がメキシコ南東部のリゾート地、カンクン沖の海底に沈められた。 彫刻家ジェイソン・デケアレス・テイラー(Jason deCaires Taylor)氏の指揮の下、アーティスト、建設業者、生物学者、エンジニア、スキューバダイバーの協力を得てこの作品は完成した。 Photograph co

    海底へ設置、メキシコの水中アート
  • 国際写真コンテスト2010:佳作

    世界大会 佳作 ショーン・ヒービー(Sean Heavey)/アメリカ アメリカ、モンタナ州の草原でうなりを上げる雷雲「スーパーセル」。同国の写真家ショーン・ヒービー氏の作品が「ナショナル ジオグラフィック国際写真コンテスト2010」で佳作に選ばれた。NASAによると、このような巨大積乱雲の内部ではメソサイクロンと呼ぶ循環構造が生まれ、回転する上昇気流により集中豪雨や竜巻が発生するのだという。 Photograph by Sean Heavey, NGPC 世界大会 佳作 ショーン・ヒービー(Sean Heavey)/アメリカ アメリカ、モンタナ州の草原でうなりを上げる雷雲「スーパーセル」。同国の写真家ショーン・ヒービー氏の作品が「ナショナル ジオグラフィック国際写真コンテスト2010」で佳作に選ばれた。NASAによると、このような巨大積乱雲の内部ではメソサイクロンと呼ぶ循環構造が生まれ、

    国際写真コンテスト2010:佳作
  • 国際写真コンテスト2010:自然部門

    世界大会最優秀賞 自然・動物部門 アーロン・リム・ブーン・テック(Aaron Lim Boon Teck)/シンガポール インドネシア、ロンボク島の活火山を遠方からとらえた「グヌン・リンジャニの噴火(Eruption of Gunung Rinjani)」。「ナショナル ジオグラフィック国際写真コンテスト2010」で見事、グランプリと自然・動物部門の最優秀賞に輝いた。撮影者のアーロン・リム・ブーン・テック氏はシンガポール出身。当日予定していたトレッキングがキャンセルになってしまったが、そのおかげでこの決定的なシーンに出会えたという。 Photograph by Aaron Lim Boon Teck, NGPC 世界大会最優秀賞 自然・動物部門 アーロン・リム・ブーン・テック(Aaron Lim Boon Teck)/シンガポール インドネシア、ロンボク島の活火山を遠方からとらえた「グヌン

    国際写真コンテスト2010:自然部門
  • 国際写真コンテスト2010:人部門

    >世界大会最優秀賞 人部門 > >チャン・クォック・ホン(Chan Kwok Hung)/香港 > > 泥の中を突き進むインドネシアの農夫と水牛。この作品が「ナショナル ジオグラフィック国際写真コンテスト2010」人部門の最優秀賞に選ばれた。審査員の1人ジョエル・サルトル氏は、「まるで叙事詩の英雄のようだ」と評価する。 > >Photograph by Chan Kwok Hung, NGPC 世界大会最優秀賞 人部門 チャン・クォック・ホン(Chan Kwok Hung)/香港 泥の中を突き進むインドネシアの農夫と水牛。この作品が「ナショナル ジオグラフィック国際写真コンテスト2010」人部門の最優秀賞に選ばれた。審査員の1人ジョエル・サルトル氏は、「まるで叙事詩の英雄のようだ」と評価する。 年に1度行われるレースのシーンで、農民たちは自分が育てた水牛で勝利を目指す。撮影した香港の写真家

    国際写真コンテスト2010:人部門
  • 国際写真コンテスト2010:風景部門

    世界大会最優秀賞 風景部門 ヤナ・アシェンブレンネロヴァ(Jana Asenbrennerova)/アメリカ 解体作業によってむき出しとなった廃船内部。バングラデシュ、ベンガル湾の河口近くの港町チッタゴンには世界最大級の廃船解体所がある。「解体作業は危険で有害物質の汚染リスクもあるが、チッタゴンの一大産業として雇用機会を市民に提供している」とアメリカ、サンフランシスコ在住の写真家ヤナ・アシェンブレンネロヴァ氏は解説する。 Photograph by Jana Asenbrennerova, NGPC 世界大会最優秀賞 風景部門 ヤナ・アシェンブレンネロヴァ(Jana Asenbrennerova)/アメリカ 解体作業によってむき出しとなった廃船内部。バングラデシュ、ベンガル湾の河口近くの港町チッタゴンには世界最大級の廃船解体所がある。 「解体作業は危険で有害物質の汚染リスクもあるが、チッタ

    国際写真コンテスト2010:風景部門
  • 中南米の古代建造物に巧みな音響効果

    メキシコ、マヤ文明の古代都市パレンケの北部遺跡群にある神殿。 Photograph by Panoramic Images/National Geographic 中南米の古代文明では、スピーカーが発明されるはるか以前から建造物が音の増幅効果や特殊な音響効果を持っていたらしい。複数の考古学者チームが調査結果を発表した。 メキシコ国立自治大学の考古学者フランシスカ・サラケット(Francisca Zalaquett)氏が率いる調査チームによると、メキシコ南東部に位置する古代マヤ文明の都市パレンケの神殿は、全体が一種の拡声装置として機能し、そこから発する音はかなり広い範囲にまで届いていた可能性もあるという。 サラケット氏のチームは最近、パランケの北部遺跡群で紀元600年頃建造の公共広場や神殿に備わる優れた拡声効果を発見した。古代マヤ文明では神々を讃える祭礼儀式のほか、王の即位、王族の子女誕生、

    中南米の古代建造物に巧みな音響効果
  • 遊び方、古代メキシコのゲーム盤?

    4300年前の粘土床で発見された半円形に並ぶ穴。メキシコ南部沿岸に居住していた古代人チャントゥト(Chantuto)が残したと推定されている。アメリカ、アリゾナ州のワラパイ族が19世紀に使用したゲーム用の“スコアボード”に極めてよく似ている。「4000年の隔たりがあるとは思えないほどだ」と考古学者でカリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)の名誉教授バーバラ・ボーヒーズ氏は語る。 Photograph courtesy Barbara Voorhies 4300年前の粘土床で発見された半円形に並ぶ穴。メキシコ南部沿岸に居住していた古代人チャントゥト(Chantuto)が残したと推定されている。アメリカ、アリゾナ州のワラパイ族が19世紀に使用したゲーム用の“スコアボード”に極めてよく似ている。「4000年の隔たりがあるとは思えないほどだ」と考古学者でカリフォルニア大学サンタバーバラ校(U

    遊び方、古代メキシコのゲーム盤?
  • 謎の穴、古代メキシコのゲーム盤?

    メキシコ南東部チアパス州のトラクアチェロ(Tlacuachero)遺跡で、4300年前の粘土床を発掘する作業員たち(2009年2月撮影)。床の中央と右下にある半円形に並んだ穴の集まりは、サイコロを使ったゲームの“スコアボード”ではないかと、考古学者でカリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)の名誉教授バーバラ・ボーヒーズ(Barbara Voorhies)氏は話す。 Photograph courtesy Barbara Voorhies メキシコ南東部チアパス州のトラクアチェロ(Tlacuachero)遺跡で、4300年前の粘土床を発掘する作業員たち(2009年2月撮影)。床の中央と右下にある半円形に並んだ穴の集まりは、サイコロを使ったゲームの“スコアボード”ではないかと、考古学者でカリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)の名誉教授バーバラ・ボーヒーズ(Barbara Voor

    謎の穴、古代メキシコのゲーム盤?
  • メソアメリカ最古のゲーム盤を発見?

    メキシコ、タラウマラの人々が楽しんでいたゲームの“スコアボード”(1907年のイラスト)。トラクアチェロの遺跡で発見された、より古い時代の形とよく似ている。 Image courtesy Barbara Voorhies メキシコ南東部チアパス州にあるトラクアチェロ(Tlacuachero)遺跡では、粘土床に複数開けられた謎の穴が見つかっている。考古学者のバーバラ・ボーヒーズ(Barbara Voorhies)氏によると、ローマ字の「C」の形に配置された穴はサイコロを使ったゲームの“スコアボード”だった可能性があるという。「もし事実ならメソアメリカ最古のゲームの証拠となる」とボーヒーズ氏は話す。メソアメリカは現在のメキシコからコスタリカにまたがる領域を指す。チアパス州近くには3600年前の球技場があり、こちらの記録が更新されるかもしれない。 ボーヒーズ氏が半円形に配置した穴を最初に発見した

    メソアメリカ最古のゲーム盤を発見?
  • ストーンヘンジ、巨石の運搬方法に新説

    ストーンヘンジの巨石運搬をレールとボールの組合せで実験中のイギリスの考古学専攻学生たち。 Photograph courtesy University of Exeter イギリスにある巨石遺跡ストーンヘンジを作った石器時代のブリトン人は、どのようにして重さ45トンの厚い石板を何十キロも運搬したのだろうか。4500年前の環状列石にまつわる最大の謎の一つだ。新しい理論によると、車輪がなかった当時は、小型のボールを作って利用していた可能性があるという。 これまでの考えでは、つき固めた地面の上に切り出した丸太を並べた“木製ローラー”や、油を引いた木製レール上で巨大な木製そりを滑らせる方法などが提案されている。しかし、ローラー用の通路を固めた場合に証拠として残るはずの溝はまだ発見されていない。そりのアイデアもある程度の信憑性はあるが、膨大な労働力を要する。1997年の研究によると、ストーンヘンジで

    ストーンヘンジ、巨石の運搬方法に新説
  • アララト山でノアの箱舟を発見?

    アルメニアから見えるトルコのアララト山。この山頂付近でノアの箱舟を発見したと探検隊は主張している。 Photograph by Martin Gray, National Geographic キリスト教福音派の探検隊が、トルコのアララト山の積雪と噴火堆積物の下からノアの箱舟の残骸を見つけたと発表した。ただし、箱舟は過去にも何度かその残骸や痕跡が発見されたとの報告があり、今回もその類であるとして多くの考古学者や歴史学者は真剣に取り合っていない。「箱舟を探しに行った探検隊が手ぶらで帰ってきたという話は一度も聞いたことがない」と、アメリカ、ニューヨーク州のストーニーブルック大学で中東を専門に研究する考古学者ポール・ジマンスキ(Paul Zimansky)氏は言う。 トルコと中国の共同探検隊「Noah's Ark Ministries International」は4月26日、拠点とする香港で今

    アララト山でノアの箱舟を発見?
  • 2022年W杯開催地、カタールの素顔

    カタールの首都ドーハ、急発展するウェストベイ地区にあるシティ・センターで噴水を清掃する作業員(10月撮影)。2022年FIFAワールドカップの開催国にカタールが選ばれ、はるかに大規模な準備作業がまもなく始まる。 ペルシャ湾に臨むのどかな港町から、この数十年できらびやかな現代都市に変貌を遂げたドーハに世界中からサッカーファンが集まることになる。ナショナル ジオグラフィック誌の海外記事担当の上級編集者で、書籍『The World of Islam(イスラムの世界)』を編集したドン・ベルト氏は、カタールは過去のワールドカップ開催国と比べてかなり異質だと話す。 Photograph by Sean Gallup, Getty Images カタールの首都ドーハ、急発展するウェストベイ地区にあるシティ・センターで噴水を清掃する作業員(10月撮影)。2022年FIFAワールドカップの開催国にカタール

    2022年W杯開催地、カタールの素顔
  • 中世の地下牢、ノッティンガム城の地下

    イングランド中央部にあるノッティンガム城。地上部分の写真に、砂岩層を掘って造られた地下牢と通路の3Dレーザースキャンによる復元画像(手前)を合成している。 露出した砂岩の上に建つ現在のノッティンガム城は、1670年代にニューカッスル公ヘンリー・カベンディッシュが再建したもの。中世に建造された元の城はイングランド内戦(1642~1649年)で破壊されたが、地下の人工洞窟は戦火を免れた。この地下牢には、1346年にスコットランド王デイビッド2世が囚われていたと伝えられる。 Picture courtesy Nottingham Caves Survey イングランド中央部にあるノッティンガム城。地上部分の写真に、砂岩層を掘って造られた地下牢と通路の3Dレーザースキャンによる復元画像(手前)を合成している。 今年3月に始まった“ノッティンガム地下調査(Nottingham Caves Surve

    中世の地下牢、ノッティンガム城の地下
  • 権力の行方、ノッティンガム城の地下

    ノッティンガム城がそびえるキャッスルロックと呼ばれる岩壁内部の地下通路を3Dレーザースキャンによって復元した最近の調査により、“モーティマーの穴(Mortimer's Hole)”の全貌が明らかになった。 モーティマーの穴は、エドワード3世の母イザベラ・オブ・フランスの愛人だったロジャー・ド・モーティマーにちなんで名付けられた。 Picture courtesy Nottingham Caves Survey ノッティンガム城がそびえるキャッスルロックと呼ばれる岩壁内部の地下通路を3Dレーザースキャンによって復元した最近の調査により、“モーティマーの穴(Mortimer's Hole)”の全貌が明らかになった。 モーティマーの穴は、エドワード3世の母イザベラ・オブ・フランスの愛人だったロジャー・ド・モーティマーにちなんで名付けられた。エドワードは1327年に父王から14歳で王位を継承するが

    権力の行方、ノッティンガム城の地下
  • ビール醸造所、ノッティンガム城の地下

    「ノッティンガム城にはさまざまなトンネルが通じている。これらは中世に造られ、長い年月の間に忘却と再発見が繰り返されてきた」と、“ノッティンガム地下調査”を率いるデイビッド・ウォーカー氏は話す。 物資の運搬に使われていたトンネルもある。ノッティンガム城が建つキャッスルロックという砂岩の岩壁の下にはビールの醸造所があり(写真)、城へ通じる運搬用のトンネルが作られていた。トンネルは第2次世界大戦中には防空壕としても使われた。 Picture courtesy Nottingham Caves Survey 「ノッティンガム城にはさまざまなトンネルが通じている。これらは中世に造られ、長い年月の間に忘却と再発見が繰り返されてきた」と、“ノッティンガム地下調査”を率いるデイビッド・ウォーカー氏は話す。 物資の運搬に使われていたトンネルもある。ノッティンガム城が建つキャッスルロックという砂岩の岩壁の下に

    ビール醸造所、ノッティンガム城の地下
  • 2006年アジア大会、カタールの素顔

    カタールの首都ドーハ、急発展するウェストベイ地区にあるシティ・センターで噴水を清掃する作業員(10月撮影)。2022年FIFAワールドカップの開催国にカタールが選ばれ、はるかに大規模な準備作業がまもなく始まる。 ペルシャ湾に臨むのどかな港町から、この数十年できらびやかな現代都市に変貌を遂げたドーハに世界中からサッカーファンが集まることになる。ナショナル ジオグラフィック誌の海外記事担当の上級編集者で、書籍『The World of Islam(イスラムの世界)』を編集したドン・ベルト氏は、カタールは過去のワールドカップ開催国と比べてかなり異質だと話す。 Photograph by Paul Gilham, Getty Images/DAGOC カタールで開催された2006年アジア競技大会、ハリーファ国際スタジアムで行われた開会式でトーチを掲げ歓迎の意を表するカタール国民。FIFAワールドカ

    2006年アジア大会、カタールの素顔
  • バージニアで400年前のパイプを発見

    ジェームズタウンで発見された粘土を焼き固めるための小型の炉(破片)と、製作されたパイプ。 Photograph courtesy Michael Lavin, Jamestown Rediscovery アメリカ大陸初のイギリス人永住植民地であるバージニア州ジェームズタウンで、約400年前のパイプの破片が複数発見された。専門家の話では、イギリス人入植者による彫刻物としてはこれまでで最古だという。 パイプには、ウォルター・ローリー卿など名立たるイギリス紳士達の名前が刻まれている。当時ジェームズタウンで盛んに行われていた貿易事業への出資を集める目的があったようだ。 官民共同でイギリス植民地時代の史跡の保存や調査を行っているヒストリック・ジェームズタウンの発掘責任者ウィリアム・ケルソー氏は、「パイプから、入植活動の背後にあった当時のロンドンにおける政治、社会の複雑なネットワークをうかがい知ること

    バージニアで400年前のパイプを発見
  • 米先住民とバイキングに血縁関係?

    カナダに向けて出港したバイキング船のレプリカ。1991年にノルウェー沖で撮影。 Photograph from Robert Harding Picture Library, Alamy コロンブスがアメリカ大陸に到達したのは1492年。その500年も前に、アメリカ先住民の女性がバイキングとともにヨーロッパへ渡っていたとする興味深いDNA研究が発表された。 母親からしか遺伝しないミトコンドリアDNA(mtDNA)を解析した結果、80人を超えるアイスランド人が、主にアメリカ先住民由来の遺伝子と類似した変異を持つことがわかった。この特徴は、バイキングとアメリカ先住民が初めて交雑した西暦1000年ごろに、アイスランド人の血統へ入り込んだことによる可能性が高いという。 歴史的・考古学的な証拠から、アイスランドのバイキングは西暦1000年の直前にグリーンランドへ到達し、すぐ現在のカナダに向かったとさ

    米先住民とバイキングに血縁関係?
  • ポカホンタスが結婚した教会を発見

    キャプテン・ジョン・スミスの像、ポカホンタスのウエディングチャペル跡(右下)、および1900年代初頭に建設された教会(中央)。バージニア州ジェームズタウンで撮影。 Photograph courtesy Michael Lavin, Jamestown Rediscovery ヨーロッパに初めて渡ったとされるアメリカインディアンの女性ポカホンタス。彼女とイギリス人入植者ジョン・ロルフが結婚式を挙げた教会の跡がバージニア州ジェームズタウンで発見された。ここはアメリカ大陸で最初のイギリス人永住植民地である。「泥壁の狭い造りだが、採光は良かったようだ。ポウハタン族酋長の娘ポカホンタスとジョン・ロルフは、かつてここにあった教会で1614年春に結婚した。その後8年間は争いもなく穏やかな時間が流れた」と、入植の歴史が残るヒストリック・ジェームズタウンの発掘責任者ウィリアム・ケルソー氏は言う。 当時、入

    ポカホンタスが結婚した教会を発見
  • 「退役軍人の日」:90年の歩み

    退役軍人の日にパナマシティで行われた記念式典(11月11日撮影)。パナマとアメリカの二重国籍を持つ退役軍人が多く出席した。 Photograph by Arnulfo Franco, AP 今年も「退役軍人の日」を迎えたアメリカでは、過去および現在の軍務従事者に敬意を表して、さまざまなイベントが各地で開催されている。アメリカは11月11日を休日と定めているが、その経緯や変遷を時代と共に振り返ってみよう。 アメリカ在郷軍人会の広報責任者ジョン・ラフター氏によると、退役軍人の日はもともと「休戦記念日」と呼ばれていた。11月11日は休戦の象徴的な意味を持っているのだという。「11月11日午前11時に発効した第一次世界大戦の休戦協定に由来している」。 アメリカで初めてこの日を休戦記念日と宣言したのは1919年、当時のウッドロウ・ウィルソン大統領だ。その20年ほど後に、連邦議会によって法定休日に定め

    「退役軍人の日」:90年の歩み
  • ハロウィーンのトリビア2010

    魔女の衣装に身を包む少女(資料写真)。アメリカのハロウィーンでは今年、魔女など伝統的な衣装の人気が復活しているという。 Photograph by Joel Sartore, National Geographic あなたはハロウィーンについてどれくらい知っているだろうか。ハロウィーンの歴史、今年最も人気のある仮装、ギネス記録のお化けカボチャなど、さまざまなトリビアを最新データとともに紹介しよう。【ハロウィーンの歴史】 ◆起源は古代宗教 ハロウィーンの起源は2000年以上前にさかのぼる。古代ヨーロッパのケルト人は、現在の11月1日に当たる日を新年の始まりとして祝い、この祝祭を「サウィン祭」と呼んでいた。 祭の前夜には、死後の世界へと旅立つ霊が地上をさまよい歩くと考えられた。また、妖精や悪霊などさまざまな超自然的存在も家の外を漂うと信じられていた。 ◆ケルト人の仮装 アメリカ議会図書館のアメ

    ハロウィーンのトリビア2010
  • 古代イギリスの人骨、多くは異国出身者

    イギリス北部の都市ヨークの墓地遺跡で発見された人骨。頭部が切断されており、ローマ時代に埋葬されたと考えられている。 Photograph courtesy York Archaeological Trust イギリス北部の都市ヨークにある古代ローマ時代の墓地遺跡に埋葬されていた人骨のほとんどが、遠隔地の出身者だったと最近の研究で明らかになった。この遺跡は西暦2~3世紀の墓地で、2004~2005年にかけて発掘された。中からは80体の人骨が見つかり、ほぼすべて男性だという。また半数以上の頭部は、切断されて胴体部分とともに埋葬されていた。 ヨークは当時エボラクムと呼ばれ、古代ローマ帝国最北の属州ブリタニアの中心都市だった。 骨の分析を行ったイギリス、レディング大学のグンドゥラ・ミュルドナー(Gundula Muldner)氏は、人骨の身元は東ヨーロッパなど遠隔地の出身者である可能性が高いという

    古代イギリスの人骨、多くは異国出身者
  • 学校の幽霊、百年前のハロウィーン

    1905年、アメリカ農村部の学校で、ハロウィーンの飾りが並ぶテーブルを前に幽霊の仮装をする人。ハロウィーンに関するを出版予定のレスリー・バナタイン氏によると、100年前のハロウィーンの飾りや衣装は自然をモチーフとしたものが多く、トウモロコシの茎(写真)、野菜、木の枝や葉などがよく使われたという。 ハロウィーンは元々、“素朴な田舎風のお祭り”と見なされており、殊にビクトリア朝時代(1840~1900年頃)のアメリカではその傾向が顕著だったと同氏は説明する。「産業化の波に圧倒されていた当時の人々は、土地や自然とのつながりが深く物事がシンプルだった時代のイメージをハロウィーンに求めた。旧世界を思わせる初期ハロウィーンの古風な田舎風のスタイルに引かれたのだろう」。 Photograph by Historic Photo Archive, Getty Images 1905年、アメリカ農村部の学

    学校の幽霊、百年前のハロウィーン
  • 百年前のハロウィーン、仮装の謎

    ハロウィーンの仮装姿でポーズをとる女性(1910年撮影)。仮面に加えてローラースケートを履いているのはちょっとした思いつきだろうか。 近く刊行される『Halloween Nation: Behind the Scenes of America's Fright Night(ハロウィーンの国:アメリカの恐怖の夜の舞台裏)』の著者レスリー・バナタイン氏によれば、100年前のアメリカでは仮装パーティは今よりずっと一般的だった。当時はハロウィーンだけでなく、バレンタインデーや大みそかなどの祝祭日にも仮装する習慣があったという。 Photograph copyright DaZo Vintage Stock Photos, Images.com, Corbis ハロウィーンの仮装姿でポーズをとる女性(1910年撮影)。仮面に加えてローラースケートを履いているのはちょっとした思いつきだろうか。 近く刊

    百年前のハロウィーン、仮装の謎
  • スワスチカ、百年前のハロウィーン

    ハロウィーンのダンスパレードに向かう途中で、仮装姿でカメラに向かって微笑む少女たち。そのうちの1人は、スワスチカ模様の衣装に身を包んでいる(1918年10月25日撮影)。ナチス・ドイツが台頭する1930年代になるまで、スワスチカ(かぎ十字、まんじ)にはさまざまな別の意味があった。例えばヒンズー教や仏教では古くから吉祥の印として用いられてきた。 ダンススクール、教会、女性団体、軍人団体など、「20世紀前半には、アメリカにある市民組織や民間団体のほとんどが子ども向けのハロウィーンパーティーを開いていた。こうして子どもたちをハロウィーンで忙しくさせて、夜に悪さをする子どもの数を減らそうとしていたのだ」とレスリー・バナタイン氏は説明する。 Photograph by Bettmann, CORBIS ハロウィーンのダンスパレードに向かう途中で、仮装姿でカメラに向かって微笑む少女たち。そのうちの1人

    スワスチカ、百年前のハロウィーン
  • ペルー首都でミイラ発見:ピラミッド

    ペルーの首都リマにあるワカ・プクヤーナ遺跡の中心部ではピラミッドの発掘作業が続いている。ピラミッドの高さは8階建てのビルに相当し、ワリ帝国がこの地を支配する以前は、リマ文明の宗教儀式の中心だった。リマ文明は首都名の由来でもある。 ワカ・プクヤーナ遺跡では、今回のミイラを納めた未盗掘の墓のほかに、布に包まれたワリ文化時代のミイラが61体発見されているが、それらはすでに盗掘の被害にあっていた。発掘調査を率いるイサベル・フローレス・エスピノサ氏は、新たに見つかった未盗掘の墓を調査すれば、この地にかつて存在したとされるワリ文化の葬儀施設全体を再現できるはずだと期待する。 Photograph by Enrique Castro-Mendivil, Reuters ペルーの首都リマにあるワカ・プクヤーナ遺跡の中心部ではピラミッドの発掘作業が続いている。ピラミッドの高さは8階建てのビルに相当し、ワリ帝

    ペルー首都でミイラ発見:ピラミッド
  • ペルー首都でミイラ発見:埋葬品と共に

    ペルーの首都リマのワカ・プクヤーナ遺跡にあるピラミッド頂上近くの墓から、1150年前のワリ文化時代のミイラ4体が発見された。また、杯11個、陶製の椀1個、布袋6個も見つかっており、布袋にはトウモロコシや裁縫道具が入ったものがあった。 現時点でミイラの保存状態はわかっていない。ミイラを包んでいる布の上からX線分析を行った後、布をほどいて人類学的な分析を行う予定である。 Photograph by Enrique Castro-Mendivil, Reuters ペルーの首都リマのワカ・プクヤーナ遺跡にあるピラミッド頂上近くの墓から、1150年前のワリ文化時代のミイラ4体が発見された。また、杯11個、陶製の椀1個、布袋6個も見つかっており、布袋にはトウモロコシや裁縫道具が入ったものがあった。 現時点でミイラの保存状態はわかっていない。ミイラを包んでいる布の上からX線分析を行った後、布をほどいて

    ペルー首都でミイラ発見:埋葬品と共に
  • 消滅寸前の文化遺産:アニ遺跡、トルコ

    トルコのアニ遺跡にあるティグラン・ホーネント(アルメニア人寄進者)の聖グレゴリオ教会(Church of St. Gregory of Tigran Honents)。中世にアルメニアの都市として栄えたが、朽ち果てたフレスコ画が物語るように保存状態は悪化している。 10~11世紀頃にアルメニア人が定住し、王国の宗教的中心地として栄えた。ヨーロッパのゴシック様式にも影響を与えた教会などの建築物が残っている。14世紀にトルコの支配下に入るとアルメニア人は退去を余儀なくされ、アニは放棄された。適切な保護が失われて現在は廃墟と化し、略奪や破壊行為が横行している。 Photograph by Umit Bektas, Reuters トルコのアニ遺跡にあるティグラン・ホーネント(アルメニア人寄進者)の聖グレゴリオ教会(Church of St. Gregory of Tigran Honents)。

    消滅寸前の文化遺産:アニ遺跡、トルコ
  • 消滅寸前の文化遺産:ファマグスタ

    東地中海、キプロス島東部の都市ファマグスタにある競技選手の訓練施設ギュムナシオンの遺跡。米カリフォルニア州に拠点を置く非営利団体「グローバル・ヘリテージ・ファンド」によれば、紀元前3世紀に築かれたファマグスタは中東とヨーロッパを結ぶ重要な貿易港で、13世紀の後半には世界で最も富める都市の1つとして繁栄した。政治の中心地としても機能したという。 十字軍遠征の時代には王の戴冠式も執り行われるなど、ヨーロッパの影響も受けた。しかし16世紀のオスマン帝国占領以降、主だった遺跡や歴史的建築物は破壊、放棄されてしまった。現在は北キプロス・トルコ共和国支配下にあり、トルコ軍が占拠している。「誰も関心を寄せず資金もない。このまま劣化が進めば、二度と元の姿には戻せなくなってしまう」と、グローバル・ヘリテージ・ファンドは報告書で警告している。 Photograph from Photolibrary 東地中海

    消滅寸前の文化遺産:ファマグスタ
  • 消滅寸前の文化遺産:スワヒリの街ラム

    ケニア南東部の都市ラム。空から眺めると、密集した屋根がまるで美しいモザイク画のようだ。アフリカ東部で非常に長い歴史を持ち、かつ最高レベルの保存状態を保つスワヒリの町である。ラム旧市街(Lamu Old Town)で最古の地区は12世紀にさかのぼるが、現在でもスワヒリ文化の伝統的な建築様式が見事に息づいており、ユネスコの世界遺産に登録されている。 インド洋に面した小さなラム島にも、さまざまな脅威が迫っている。特に、港湾の建設計画と石油産業向けインフラストラクチャー整備が問題視される。米カリフォルニア州に拠点を置く非営利団体「グローバル・ヘリテージ・ファンド」は、「開発が進むと人口が急激に増大すると考えられ、この地域の文化的・自然的価値に多大な影響を及ぼす恐れがある」と懸念を表明している。 Photograph by Bobby Haas, National Geographic ケニア南東部

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  • 消滅寸前の文化遺産:インドの寺院群

    インド18世紀の姿を今に伝える村マルチ(Maluti)のテラコッタ寺院。赤褐色の堅い陶器が壁面に張り巡らされている。かつてマルチでは108カ所のテラコッタ寺院があったが、現存しているのは72カ所だけだという。一部の寺院はパーラ朝時代(8~12世紀)にヒンズー教の女神モウラクシ(Mowlakshi)の信者によって建設された。他にシヴァ、ドゥルガー、カーリー、ヴィシュヌなどの神々へ捧げられた寺院もある。 現在は放置され、雨水も溜まり、生い茂る植物に覆われた状態だ。米カリフォルニア州に拠点を置く非営利団体「グローバル・ヘリテージ・ファンド」の報告書は次のように指摘している。「修復と維持管理を適切に行えば、寺院群は小さな町マルチにとって重要な収入源になる可能性を秘めている。だが、計画が整備されなければ、急速に劣化して修復不可能になるだろう」。 Photograph courtesy Sourav

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  • 消滅寸前の文化遺産:ミラドール盆地

    グアテマラ北部のペテン県には、マヤ文明の発祥地と考えられているミラドール盆地と、隣接する世界遺産ティカルの有名な古典期マヤ文明遺跡群がある。写真はティカル国立公園の中心的遺跡、大広場(Great Plaza of Tikal)と大ジャガーの神殿(中央)。 ミラドール盆地には、ティカルより1200年も早く4都市が成立した。しかし古典期マヤ文明の崩壊後2000年間、ミラドールの遺跡は顧みられることもなく密林に覆われたままだった。現在、約40万5000ヘクタールの遺跡群は、略奪、焼畑農業、違法伐採といった脅威にさらされている。 Photograph by George P. Mobley, National Geographic グアテマラ北部のペテン県には、マヤ文明の発祥地と考えられているミラドール盆地と、隣接する世界遺産ティカルの有名な古典期マヤ文明遺跡群がある。写真はティカル国立公園の中心

    消滅寸前の文化遺産:ミラドール盆地
  • 生と死が共存する奇妙なピラミッド

    ペルーのワカ・コロラダ(Huaca Colorada)遺跡で発掘が進むピラミッド。頂上部の平らな壇は生贄台の可能性がある。 Photograph courtesy Edward Swenson ペルーで発掘中のモチェ文化のピラミッドから、生贄として捧げられたと見られる女性5人分の人骨が発見された。ただし今回の注目点は、同じピラミッドで確認された人の生活痕の方にある。 発掘チームを率いるカナダ、トロント大学の考古学者エドワード・スウェンソン氏はこう述べる。「普通、ピラミッドは死者の埋葬用に造営される。炊事を行うような生活の場ではないはずだ」。 ところが、現在ペルーのワカ・コロラダ(Huaca Colorada)遺跡で発掘が進む1400年前のピラミッドは違うようだ。同地の銅生産と加工に携わる数十人のエリートが暮らしていたらしい。 発掘チームによると、居住者たちはそこで重要な儀式を主宰し、リャマ

    生と死が共存する奇妙なピラミッド
  • 死海文書、ネット公開へ:実物の価値

    エルサレムにあるイスラエル博物館の研究室で、死海文書の保存作業を行う研究員(資料写真)。 死海文書をすべてデジタルスキャンし画像化する計画が進められている。イスラエル考古学庁(IAA)によると、新しい高解像度画像がネット上に公開されれば、死海文書の実物を直接調査する必要はなくなるという。 Photograph by Baz Ratner, Reuters エルサレムにあるイスラエル博物館の研究室で、死海文書の保存作業を行う研究員(資料写真)。 死海文書をすべてデジタルスキャンし画像化する計画が進められている。イスラエル考古学庁(IAA)によると、新しい高解像度画像がネット上に公開されれば、死海文書の実物を直接調査する必要はなくなるという。 しかし、IAAの死海文書プロジェクトで責任者を務めるプニナ・ショル氏は次のようにも話す。「そうは言っても、写の断片に接することはかけがえのない体験だ。

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  • 死海文書、ネット公開へ:デジタル保存

    イスラエルで進められている死海文書デジタル化作業の様子(撮影日不明)。 イスラエル考古学庁(IAA)のプロジェクト責任者プニナ・ショル氏は米ナショナルジオグラフィック ニュースの取材に対して、「デジタル化プロジェクトの最大の目的は、死海文書を次世代に無事引き渡すことにある」と話す。 Photograph courtesy IAA イスラエルで進められている死海文書デジタル化作業の様子(撮影日不明)。 イスラエル考古学庁(IAA)のプロジェクト責任者プニナ・ショル氏は米ナショナルジオグラフィック ニュースの取材に対して、「デジタル化プロジェクトの最大の目的は、死海文書を次世代に無事引き渡すことにある」と話す。 「数年前から、自分たちの研究が死海文書にダメージを与えていないか確認する方法を模索してきた。検討の結果、宇宙観測用にNASAが開発したマルチスペクトル撮影技術の採用が決まった」。 Ph

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  • 死海文書、ネット公開へ:新たな一歩

    イスラエル考古学庁(IAA)とGoogleは10月19日、現存する世界最古の聖書関連文書「死海文書」を、高解像度マルチスペクトル画像装置によってデジタルスキャンし、オンラインで来年公開すると発表した(写真はIAAの研究室で撮影)。 1940年代から1950年代にかけて、死海のほとりにある洞窟から、ヘブライ語やアラム語、ギリシャ語で書かれた巻物が大量に発見された。紀元前150年から西暦70年ごろに作成され、旧約聖書ほぼ全巻の写のほか、「エノク書」など伝統的な正典には属さない断片も多数見つかった。 Photograph by Sebastian Scheiner, AP イスラエル考古学庁(IAA)とGoogleは10月19日、現存する世界最古の聖書関連文書「死海文書」を、高解像度マルチスペクトル画像装置によってデジタルスキャンし、オンラインで来年公開すると発表した(写真はIAAの研究室で撮

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  • 死海文書、ネット公開へ:スキャニング

    "されたのは1950年代で、赤外線が使用された。肉眼では見えない部分まで、赤外線なら明らかにできる」と、イスラエル考古学庁(IAA)の死海文書プロジェクトで責任者を務めるプニナ・ショル氏は語る。 「今回導入した最新のイメージング技術は、さらなる発見をもたらすだろう。赤外線領域で複数の波長帯に分離してスキャンし、経年劣化によって読めなくなった部分も解読できるようになる」とショル氏は期待を述べた。 Photograph courtesy IAA マルチスペクトル画像装置によるデジタルスキャン中、紫色に輝く死海文書の詩篇。「死海文書が初めて撮影されたのは1950年代で、赤外線が使用された。肉眼では見えない部分まで、赤外線なら明らかにできる」と、イスラエル考古学庁(IAA)の死海文書プロジェクトで責任者を務めるプニナ・ショル氏は語る。「今回導入した最新のイメージング技術は、さらなる発見をもたらすだ

    死海文書、ネット公開へ:スキャニング
  • 死海文書、ネット公開へ:聖なるパズル

    死海文書に含まれていた旧約聖書中の一書で、モーセの十戒が記されている「申命記」の一部。約3万点の断片からなる死海文書が全編デジタルスキャンされ、2011年にネット上で一般公開されることになった。 イスラエル考古学庁で死海文書プロジェクトの責任者を務めるプニナ・ショル氏は、死海文書を「究極のパズル」と形容する。「古文書というと大きな巻物を思い浮かべる人が多いだろう。だが約2000年前の死海文書は膨大な数の断片からなる。現物をつなぎ合わせて復元する作業は、煩雑であるばかりか学術的にも難解だ」。 Photograph courtesy IAA 死海文書に含まれていた旧約聖書中の一書で、モーセの十戒が記されている「申命記」の一部。約3万点の断片からなる死海文書が全編デジタルスキャンされ、2011年にネット上で一般公開されることになった。 イスラエル考古学庁で死海文書プロジェクトの責任者を務めるプニ

  • 古代エジプト神官の墓:カフラー王

    エジプトで新たに発見された墓の壁画。描かれているのは、この墓に埋葬された神官ルジカ(Rudj-Ka、右側)とその。専門家は、およそ4350年前の古代エジプト第5王朝末期の人物ではないかと見ている。 ギーザの3大ピラミッドにほど近い断崖で墓は見つかった。内部の装飾や副葬品からこの神官は、第4王朝時代のファラオ、カフラー王(在位紀元前2558~2532年)の死後の祭礼儀式をつかさどっていたと考えられている。カフラー王はギーザの3大ピラミッドのうち、第2ピラミッドとスフィンクスの建造者としても知られている。 Photograph by Meghan E. Strong, SCA エジプトで新たに発見された墓の壁画。描かれているのは、この墓に埋葬された神官ルジカ(Rudj-Ka、右側)とその。専門家は、およそ4350年前の古代エジプト第5王朝末期の人物ではないかと見ている。 ギーザの3大ピラミ

    古代エジプト神官の墓:カフラー王
  • 古代エジプト神官の墓:魚捕りの壁画

    ナイル川で魚を突く神官ルジカ(Rudj-Ka)。背景には大きな船と船員が描かれている。今回発見されたような古代エジプトの墓では、日常生活のワンシーン、特に墓の主にとっての来世の楽しみを描いた壁画が数多く見られる。 エジプト最高考古庁事務局長のザヒ・ハワス氏によると、古代エジプト第5、第6王朝の神官は上流階級の出身とは限らなかったという。「神官には一般市民の出身者もいたし、労働者からの抜擢もあった」。ただし、ルジカが漁師だったかは不明だ。神官になる前の職業が壁画から正確にわかるわけではないと考古学者らは指摘している。 Photograph by Meghan E. Strong, SCA ナイル川で魚を突く神官ルジカ(Rudj-Ka)。背景には大きな船と船員が描かれている。今回発見されたような古代エジプトの墓では、日常生活のワンシーン、特に墓の主にとっての来世の楽しみを描いた壁画が数多く見ら

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  • 古代エジプト神官の墓:黄泉への入口

    エジプトで発見された神官ルジカ(Rudj-Ka)の墓の入口。ここから内部へと続く廊下には石灰石が積まれ、まるで迷路のように入り組んでいる。崖を掘り抜いて造られた複合墓で、神官人とその家族全員を葬ることができた。 完成には多大な労力と費用がかかったと推測される。「すべてに手が込んでいる。不死に対する切なる願いの表れではないか」とエジプト最高考古庁のザヒ・ハワス事務局長は説明している。 いずれにせよ神官ルジカは、それだけの財産を残したことはまず間違いない。当時、神官職は役得を期待できた。古代エジプトにもいわゆる撤饌(てっせん=おさがり)の風習があり、神官たちは祭礼儀式を執り行う見返りに、奉納された供物の一部を受け取っていたという。 Photograph by Meghan E. Strong, SCA エジプトで発見された神官ルジカ(Rudj-Ka)の墓の入口。ここから内部へと続く廊下には石

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  • 古代エジプト神官の墓:供物の壁画

    エジプトで発見された墓の壁画を調べるエジプト最高考古庁事務局長ザヒ・ハワス氏。神官ルジカ(Rudj-Ka)とそのの肖像の横に、パンやガチョウ、牛肉などの供物が描かれている。 18日に発表された古代エジプトの墓は、首都カイロ郊外ギーザ周辺に埋もれる大規模集団墓地の一部だった可能性があるという。「今回、カフラー王の死後の祭式を執り行う神官たちの墓を複数発見した。この地域では初めて、カフラー王のカルトゥーシュ(王の名を彫った文字を囲む楕円形の輪郭)も出土した」と、ナショナル ジオグラフィック協会付き探検家でもあるハワス氏は話している。 Photograph by Meghan E. Strong, SCA エジプトで発見された墓の壁画を調べるエジプト最高考古庁事務局長ザヒ・ハワス氏。神官ルジカ(Rudj-Ka)とそのの肖像の横に、パンやガチョウ、牛肉などの供物が描かれている。 18日に発表さ

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  • ストーンヘンジに葬られた地中海の少年

    イギリスにあるストーンヘンジの近くの墓穴で発見された“琥珀の首飾りの少年”。 Photograph courtesy Wessex Archaeology イギリスにあるストーンヘンジは、3500年もの長い間、多くの人々を古代へいざなう“観光名所”であり続けているようだ。今回、青銅器時代の人々が地中海沿岸からイギリスのソールズベリー平原まで、ストーンヘンジを訪れるために800キロを超える道のりをはるばる旅していたことを示す新たな証拠が発見された。 ストーンヘンジから約5キロ離れたエイムズベリーの郊外で2005年に、14歳か15歳の少年が埋葬されているのが見つかった。その歯を化学的に分析したところ、地中海地方の出身だと判明したという。 少年は90個ほどの琥珀のビーズをつなげた首飾りを身につけており、約3550年前に埋葬されたことがわかっている。ソールズベリーに社を置くコンサルティング会社「

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  • ヘロデ王の貴賓席:天国への階段

    パレスチナ自治区、ベツレヘムの南方にヘロデ王の複合宮殿として築かれた人工の山ヘロディウム。その麓の円形劇場には、王の観劇のための貴賓席が置かれている。廃墟になって久しいが、展望台や応接室と共に木製の壁と鉄の屋根で保護されている(写真右下、劇場の上部構造)。 「紀元前4年にヘロデ王が死去する直前、劇場をはじめとする施設が取り壊された。建造から10年も経たずに解体したのは、山を墓にふさわしいきれいな円錐形にするためだった」と、ヘブライ大学の考古学者エフド・ネツェル氏は説明する。「墓だけがそびえ、ほかの建造物はすべて破壊された」。 Photograph courtesy University of Haifa パレスチナ自治区、ベツレヘムの南方にヘロデ王の複合宮殿として築かれた人工の山ヘロディウム。その麓の円形劇場には、王の観劇のための貴賓席が置かれている。廃墟になって久しいが、展望台や応接室と

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  • ヘロデ王の貴賓席:鮮やかな内装

    ヘロデ王の複合宮殿へロディウムにある観劇用の“VIP席”には、窓を描いた壁画と彩色ブロック、そして仕切壁(中央)が残っている。粗雑な造りの仕切壁は、劇場の解体工事中に作業員が生活場所として使用した名残りだという。ヨルダン川西岸では、ヘロデ王の複数の宮殿と墓が発見されている。 2008年の発見以来、発掘を続けてきたエルサレムのヘブライ大学が、作業の完了を9月下旬に発表した。ヘロデ王が紀元前15年ごろに築いた円形劇場の最上部に設けられ、辺りを睥睨するようにそびえ立っていた。 Photograph courtesy University of Haifa ヘロデ王の複合宮殿へロディウムにある観劇用の“VIP席”には、窓を描いた壁画と彩色ブロック、そして仕切壁(中央)が残っている。粗雑な造りの仕切壁は、劇場の解体工事中に作業員が生活場所として使用した名残りだという。ヨルダン川西岸では、ヘロデ王の複

    ヘロデ王の貴賓席:鮮やかな内装
  • ヘロデ王の貴賓席:ローマの影響

    ヘロデ王の複合宮殿へロディウムに設けられた劇場の貴賓席を彩っていた、フレスコ画と複雑な装飾の一部。「現在のイスラエルとパレスチナ地域でこのような壁画は初めてだ」と、ヘブライ大学の考古学者エフド・ネツェル氏は語る。地中海地方ではごく一般的で、ユダヤ王の権力の源泉がローマにあったことを示唆している。 「わが国の美術史専門家は、様式、技法両面でのイタリア美術との類似性を指摘している。同じフレスコでも、湿った漆喰(しっくい)の上に描く一般的な技法ではなく、乾いた漆喰をキャンバスにする乾式フレスコ画であり、この地域ではあまり見られない」とネツェル氏は話す。 Photograph courtesy University of Haifa ヘロデ王の複合宮殿へロディウムに設けられた劇場の貴賓席を彩っていた、フレスコ画と複雑な装飾の一部。「現在のイスラエルとパレスチナ地域でこのような壁画は初めてだ」と、ヘ

    ヘロデ王の貴賓席:ローマの影響
  • ローマ時代のヘルメット:古代との対面

    古代ローマ時代のヘルメットと向き合う、ロンドンの競売会社クリスティーズの古美術品部門責任者ジョージアナ・エイトキン氏(9月13日撮影)。予想価格の約8倍、約360万ドル(2億9500万円)で落札された。 出土したイギリス、カンブリア州の村の名を取って「クロスビー・ギャレット(Crosby Garrett)」と名が付けられている。AP通信によると、6人の入札者が粘り強く競り合い、価格が釣り上がったという。 エイトキン氏は、「発見したトレジャーハンターにとって、生涯最高の戦利品だ」と話す。 「持ち込まれたヘルメットの鑑定のために最初に対面した私は、時を越えて見つめ返す彼に、思わず目を疑うほどの感動を覚えた」と同氏はAP通信に語っている。 Photograph courtesy Dan Kitwood, Getty Images 古代ローマ時代のヘルメットと向き合う、ロンドンの競売会社クリスティ

    ローマ時代のヘルメット:古代との対面
  • ローマ時代のヘルメット:3億円で落札

    西暦1世紀後半から2世紀のローマ時代の作とみられるヘルメット(撮影日不明)。イギリス、ロンドンで10月7日に開催されたオークションで、約360万ドル(2億9500万円)の高値で落札された。 この青銅製ヘルメット兼フェイスマスクは、イングランド北西部カンブリア州の平原で2010年5月、トレジャーハンターが金属探知器で探り当てた逸品だ。 競売会社クリスティーズは、「ローマ時代に金属細工が最盛期を迎えた頃の傑作と言えるだろう」と評価している。 Photograph courtesy Christie's Auction House 西暦1世紀後半から2世紀のローマ時代の作とみられるヘルメット(撮影日不明)。イギリス、ロンドンで10月7日に開催されたオークションで、約360万ドル(2億9500万円)の高値で落札された。 この青銅製ヘルメット兼フェイスマスクは、イングランド北西部カンブリア州の平原で

    ローマ時代のヘルメット:3億円で落札
  • インド山岳地帯で未知の言語を確認

    インド北東部、アルナーチャル・プラデーシュ州のコロ語を話す少数民族。 Photograph by Chris Rainier, National Geographic インド北東部、アルナーチャル・プラデーシュ州の山岳地帯で、まったく未知の言葉を話す少数民族を言語学者チームが確認した。 その言語はチベット・ビルマ語族に分類されるコロ語(Koro)だ。住民が住む山岳地域は中国との国境紛争地帯で立ち入りが厳しく制限されており、これまで言語学調査の“空白地帯”だった。東アジアから南アジアにかけて分布するチベット・ビルマ語の系統には、400種類近い言語が属しており、インドでは150種類が使われている。ナショナル ジオグラフィック協会の絶滅言語救済プロジェクトに参加した調査チームによると、コロ語はそれらいずれの言語とも異なっているという。 コロ語の存在が明らかになったのは2008年。ある少数民族の間

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  • イラク戦争の略奪文化財:カラシニコフ

    リアサイト部(後方の照準器)にサダム・フセイン元大統領の写真が張り付けられたAK-47“カラシニコフ”アサルトライフル。クロムめっき仕様で、ハンドガードとグリップは白蝶貝で飾られている。先日、このライフルを含め、イラクから略奪・捕獲された文化財が国に返還された。 全540点は9月7日よりバグダッドのイラク外務省で公開されており、アッシリアの女王のために作られた金のイヤリングや4000年前の頭部のない彫像など、貴重な歴史遺産も含まれている。 Photograph by Karim Kadim, AP リアサイト部(後方の照準器)にサダム・フセイン元大統領の写真が張り付けられたAK-47“カラシニコフ”アサルトライフル。クロムめっき仕様で、ハンドガードとグリップは白蝶貝で飾られている。先日、このライフルを含め、イラクから略奪・捕獲された文化財が国に返還された。 全540点は9月7日よりバグ

    イラク戦争の略奪文化財:カラシニコフ
  • イラク戦争の略奪文化財:謎の遺物

    約4800年前のシュメール時代に作られたと思われる男性像(木箱の上)、およそ1000年前のフラスコのような容器(木箱の前)、そして正体不明の遺物(左下)。これらはイラクへ返還されバグダッドで9月7日に展示された略奪品の一部である。 イラク国立博物館館長を務め、現在はニューヨークにあるストーニーブルック大学教授のドニー・ジョージ氏は当時、「戦争が始まれば略奪は凄いことになる」と警告していた。中東全域に点在する遺跡では、文化財の略奪が日常的に起きている。回収しても、略奪場所の特定は難しく不可能な場合も多い。 Photograph by Karim Kadim, AP 約4800年前のシュメール時代に作られたと思われる男性像(木箱の上)、およそ1000年前のフラスコのような容器(木箱の前)、そして正体不明の遺物(左下)。これらはイラクへ返還されバグダッドで9月7日に展示された略奪品の一部である。

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  • ペトラの洞窟壁画:よみがえった色彩

    ヨルダン、ペトラ遺跡の北に位置する「リトルペトラ」の洞窟壁画に描かれた横笛を吹く天使。修復プロジェクトが8月に完了し、約2000年前の色彩を取り戻した(写真右)。3年間の修復作業はイギリス、ロンドンにあるコートールド美術研究所の専門家チームが担当した。 「絵画の色使いをナバテア人たちは知り尽くしている。当時としては驚くべきテクニックだ」と、修復に携わったペトラ・ナショナル・トラスト(Petra National Trust)の事務局長アイサール・アクラウィ(Aysar Akrawi)氏は語った。「もう少し修復が遅かったら、剥がれ落ちて失われていたかもしれない」。 砂岩に穿たれた空間を装飾する西暦1世紀の壁画を、「あらゆる点で非常に重要だ」と修復作業を担当したリサ・シェケード(Lisa Shekede)氏は評価する。 Photograph courtesy Courtauld Institu

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  • ペトラの洞窟壁画:古代ギリシャ風絵画

    翼を背負った2000年前の子どもは何を見つめているのだろうか。岩を掘って築かれ、世界の“新七不思議”にも選ばれたヨルダンの古代都市ペトラ近くの洞窟壁画の一つだ。最近まですすけていたが鮮やかに復元され、8月後半に一般公開された。 この壁画にはキューピッドのような人物が複数登場し、絡み合うつるや花が描かれている。色鮮やかな鳥もあちこちにいる。美術品保存の専門家リサ・シェケード(Lisa Shekede)氏は、ペトラを築いた謎のナバテア人文化を解明する重要な手掛かりになると期待している。壁画を見る限り、この洞窟は古代ギリシャでブドウ酒の神とされたディオニュソスを崇拝する人々の隠れ家だった可能性があるという。 Photograph courtesy Courtauld Institute 翼を背負った2000年前の子どもは何を見つめているのだろうか。岩を掘って築かれ、世界の“新七不思議”にも選ばれ

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  • タイタニック再調査:発見から25年

    水深3800メートルの海底に沈んだ豪華客船タイタニック号。発見から25周年となる9月1日、つらら状のさびが付着した船首の手すりや錨(いかり)など、現在のタイタニック号の様子をとらえた写真が新たに公開された。 現在進行中のタイタニック号探査プロジェクトの一環として、8月末に撮影が行われた。音響画像装置やソナー、3D映像化技術を駆使して、現在のタイタニック号の状態をバーチャルに再現して記録し、船体の劣化状態を把握したり“寿命”を予測するプロジェクトだ。 Photograph courtesy Premier Exhibitions, Inc. and Woods Hole Oceanographic Institution 水深3800メートルの海底に沈んだ豪華客船タイタニック号。発見から25周年となる9月1日、つらら状のさびが付着した船首の手すりや錨(いかり)など、現在のタイタニック号の様子

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  • タイタニック再調査:増え続けるさび

    水深3800メートルの海底に沈んだ豪華客船タイタニック号。発見から25周年となる9月1日、つらら状のさびが付着した船首の手すりや錨(いかり)など、現在のタイタニック号の様子をとらえた写真が新たに公開された。 現在進行中のタイタニック号探査プロジェクトの一環として、8月末に撮影が行われた。音響画像装置やソナー、3D映像化技術を駆使して、現在のタイタニック号の状態をバーチャルに再現して記録し、船体の劣化状態を把握したり“寿命”を予測するプロジェクトだ。 Photograph courtesy Premier Exhibitions, Inc. and Woods Hole Oceanographic Institution タイタニック号探査プロジェクトで撮影された、これまでで最も鮮明な船首の写真。デッキから斜めに伸びるクレーンに垂れ下がるつらら状のさびまでくっきりと見える。この“つらら”は、

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  • タイタニック再調査:ウェルデッキ

    タイタニック号探査プロジェクトで8月末に撮影された、つらら状のさびが付着した船体前部の凹甲板(ウェルデッキ)。かつては3等船室乗客用の運動スペースだった。 沈没後は行方不明になっていた豪華客船タイタニック号は、ナショナル ジオグラフィック協会支援の下、海洋学者ロバート・バラード氏率いる調査チームによって1985年に発見された。 撮影された数々の画像から、鉄を消費するバクテリアや激しい海流により蝕まれた残骸の姿が明らかになっている。70年以上の時の経過もその一因だろう。この様子を見た専門家は、タイタニック号が完全にその姿を消す日も遠くはないと推測する。 Photograph courtesy Premier Exhibitions, Inc. and Woods Hole Oceanographic Institution タイタニック号探査プロジェクトで8月末に撮影された、つらら状のさびが

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  • 世界最大の“テント”:カザフスタン

    2010年7月5日にカザフスタンの首都アスタナにオープンした「カーン・シャティール」。同国のヌルスルタン・ナザルバエフ大統領と設計者たちが「世界最大のテント」と太鼓判を押すレジャーセンターだ。 針のような頂上部と全体が傾斜したデザインは、カザフ人の移動式住居ユルトをイメージしている。設計を担当したロンドンの建築事務所フォスター・パートナーズ社のシニア・パートナーであるナイジェル・ダンシー氏によると、ユルトは伝統的な遊牧民の建築物で、カザフスタンの歴史と結びつきが深いという。「カーン・シャティールとは、カーン(王者)のテントというような意味だ」。 Photograph by Will Webster, Getty Images 2010年7月5日にカザフスタンの首都アスタナにオープンした「カーン・シャティール」。同国のヌルスルタン・ナザルバエフ大統領と設計者たちが「世界最大のテント」と太鼓判

    世界最大の“テント”:カザフスタン
  • 世界最大の“テント”:モノレール

    2010年6月、建設中のカーン・シャティールの中を走るモノレールの車両に最後の仕上げを施す作業員。 オープンして間もないカーン・シャティールを訪れたインディアナ大学の中央ユーラシア学部教授ウィリアム・フィアーマン氏は、建物の外観は型破りだが内部は典型的なアメリカのショッピングモールと変わらないと語る。「最大の違いは、カーン・シャティールには娯楽用の乗り物があることだ」。 Photograph by Will Webster, Getty Images 2010年6月、建設中のカーン・シャティールの中を走るモノレールの車両に最後の仕上げを施す作業員。 オープンして間もないカーン・シャティールを訪れたインディアナ大学の中央ユーラシア学部教授ウィリアム・フィアーマン氏は、建物の外観は型破りだが内部は典型的なアメリカのショッピングモールと変わらないと語る。「最大の違いは、カーン・シャティールには娯

    世界最大の“テント”:モノレール
  • 世界最大の“テント”:巨大な支柱

    完成までに3年半を要したカーン・シャティールは、世界最大のテント、正確には世界最大の張力構造建築物とされている。中央には高さ150メートル、重量2000トンの三脚支柱が立ち(写真)、スチールケーブルでできた巨大なネットと3層構造の透明なプラスチックでできた屋根を支えている。この屋根から太陽光が取り込まれ、テント内の温度を暖かく保つ。 建設には650名に及ぶプロの登山家が集められ、気温が摂氏マイナス40度を下回ることもあるこの地域特有の厳しい冬に作業を行わずに済むよう慎重に日程を組まねばならなかった。 Photograph by Will Webster, Getty Images 完成までに3年半を要したカーン・シャティールは、世界最大のテント、正確には世界最大の張力構造建築物とされている。中央には高さ150メートル、重量2000トンの三脚支柱が立ち(写真)、スチールケーブルでできた巨大な

    世界最大の“テント”:巨大な支柱
  • 400年前の書簡に失われた言語を発見

    スペイン人が作成した書簡の裏面に記されていた数字の翻訳。 Photograph courtesy Jeffrey Quil 400年前の書簡の裏面に残されていた走り書きから、ペルー北部の先住民がかつて話していた未知の言語の存在が明らかになった。 無名のスペイン人が書き記し、400年間誰の目にも触れなかった古びた書簡は、スペインの植民地統治時代に建立されたペルーの教会遺跡で2008年に発見される。しかしごく最近まで、科学者と言語学者から成る研究チームは裏面に書かれた内容の重要性に気付かなかった。 書簡の執筆者は17世紀初頭に、スペイン語の数字「uno(1)」「dos(2)」「tres(3)」やアラビア数字を、現代の専門家が誰も知らない謎の言語に翻訳している。 「この書簡だけでは全容解明にほど遠いが、どの言語ともまったく異なるのは間違いない。しかも、他にも存在するようだ」と、プロジェクトを率い

    400年前の書簡に失われた言語を発見
  • ペルー、モチェ文化の生贄:死への通路

    当時は両脇に祭壇が並び、ゆるやかに上った先は刑場のピラミッドへ続いている。 Photograph courtesy National Archaeological Museum of Bruning, Peru ペルーのワカ・バンデラ(Huaca Bandera)で発見された「モチェ文化」の遺跡。1千年前の昔、戦争捕虜が裸で縛り上げられ、この死の通路を追い立てられていった。 当時は両脇に祭壇が並び、ゆるやかに上った先は刑場のピラミッドへ続いている。 Photograph courtesy National Archaeological Museum of Bruning, Peru

    ペルー、モチェ文化の生贄:死への通路
  • ペルー、モチェ文化の生贄:血の神官

    ペルーのワカ・バンデラ(Huaca Bandera)発掘地で発見された壁画の破片。「奉献(presentation)」という生贄の儀式を執り行う神官が描かれている。 「神官が儀式を執り行い、巫女らとともに囚人を生贄に捧げ、その血を杯に注いで神に捧げるのだ」と、発掘を率いた考古学者カルロス・ウェステル・ラ・トーレ(Carlos Wester La Torre)氏は語った。 Photograph courtesy National Archaeological Museum of Bruning, Peru ペルーのワカ・バンデラ(Huaca Bandera)発掘地で発見された壁画の破片。「奉献(presentation)」という生贄の儀式を執り行う神官が描かれている。 「神官が儀式を執り行い、巫女らとともに囚人を生贄に捧げ、その血を杯に注いで神に捧げるのだ」と、発掘を率いた考古学者カルロス・

    ペルー、モチェ文化の生贄:血の神官
  • ペルー、モチェ文化の生贄:生贄の空間

    ペルーの遺跡で、死者への生贄として捧げられた女性の遺骨が見つかった。考古学者によると、古代の「奉献(presentation)」と呼ぶ儀式がここで行われたようだという。 ワカ・バンデラ(Huaca Bandera)発掘地で先週公開された全長60メートルの生贄用の空間はモチェ文化に属するものだ。モチェ文化は、紀元前100年頃から紀元800年頃にペルー北岸で繁栄したプレ・コロンビアン(Pre-Columbian)時代の農業文明である。 写真の頭蓋骨は銅製の装飾品で飾られ、脇には陶器や貝殻が埋まっていた。壺には、向精神作用を目的に当時の儀式でよく用いられたクスノキ科ネクタンドラ属の植物の種が入っていた。 Photograph courtesy National Archaeological Museum of Bruning, Peru ペルーの遺跡で、死者への生贄として捧げられた女性の遺骨が見

    ペルー、モチェ文化の生贄:生贄の空間
  • 死海文書の謎に新説が浮上

    エルサレムのイスラエル博物館に展示された死海文書の一部(2008年撮影)。 Photograprh by Baz Ratner, Reuters 古代エルサレムの地下トンネルで発掘された謎のカップの暗号が解読された。そのほかの考古学的研究調査と共に、「死海文書を書いたのは誰か」という聖書時代最大の謎の1つを解明する手掛かりになりそうだ。 新しい手掛かりから、死海文書の作成には複数の共同体が関わり、ユダヤ戦争の戦火を避けて隠されたという説が浮上した。さらに、エルサレム神殿から持ち出された可能性もあるという。 死海文書はいまから60年以上前に、要塞都市クムラン付近の海岸の洞窟群で発見された。紀元前2世紀から紀元1世紀にかけてクムランで精力的に活動していたとされるユダヤ教の1グループ「エッセネ派」が、死海文書をすべて書いたというのがこれまでの一般的な見方だ。 ところが新しい研究では、死海文書の多

    死海文書の謎に新説が浮上
  • マヤ文明の王墓:苦悶の王?

    グアテマラにある古代マヤ文明の都市エル・ソツ(El Zotz)で発見された王墓から、奇妙な陶器が出土した。器の蓋のつまみにあしらわれた若い王侯、あるいは神と思われる頭像が、苦悶の表情を浮かべているのである。 この陶器を含め遺物全般の保存状態が良く、「失われた古代の芸術様式を知ることができる」と発掘責任者のスティーブン・ヒューストン氏は語る。 王墓の建造年代は紀元350~400年とみられている。平らな石と泥を交互にいくつも重ねた層が外気を遮断して良好な保存状態を保ち、王墓の上に建立されたピラミッド型寺院の土台としても機能したという。 Photograph courtesy Arturo Godoy グアテマラにある古代マヤ文明の都市エル・ソツ(El Zotz)で発見された王墓から、奇妙な陶器が出土した。器の蓋のつまみにあしらわれた若い王侯、あるいは神と思われる頭像が、苦悶の表情を浮かべて

    マヤ文明の王墓:苦悶の王?
  • マヤ文明の王墓:宝石の埋め込まれた歯

    マヤ文明の王墓で見つかった宝石の埋め込まれた歯。墓に安置されていた唯一の成人男性の口中にあったもので、遺体に関節炎の痕跡があることなどから、男性は王位に就いていた年長者と推測されている。 象形文字の一部を解読したところ、王は「赤いカメ」もしくは「偉大なカメ」という意味の名前を持っていたという。「マヤ人はカメを宇宙的な意味合いを持つ生き物として考えていた。世界そのものを表すとされていたのだ」と、発掘責任者のアメリカ、ブラウン大学の考古学者スティーブン・ヒューストン氏は説明する。 Photograph courtesy Andrew Scherer マヤ文明の王墓で見つかった宝石の埋め込まれた歯。墓に安置されていた唯一の成人男性の口中にあったもので、遺体に関節炎の痕跡があることなどから、男性は王位に就いていた年長者と推測されている。 象形文字の一部を解読したところ、王は「赤いカメ」もしくは「偉

    マヤ文明の王墓:宝石の埋め込まれた歯
  • マヤの王墓から指や幼児の埋葬品

    マヤ文明の王墓から発掘された陶器のふた。周囲では人間の指を入れた容器がいくつも見つかった。 Photograph courtesy Arturo Godoy 密林が覆うグアテマラのピラミッドの地下から、厳重に封印された1600年前の王墓が発見された。7月16日に行われた研究チームの発表によると、不気味な埋葬品と共に考古学的に貴重な発見が数多くあったという。 古代マヤ文明の都市エル・ソツ(El Zotz)の発掘責任者で、アメリカのブラウン大学の考古学者スティーブン・ヒューストン氏は、「何層にもわたって密閉されている様子は、まるで米連邦準備銀行の地下金庫のようだった」と振り返る。 平らな石と泥を交互に重ねた層が外気を遮断していたため、人骨や木の彫刻、布といった遺物が驚くほど良い状態で保存されていた。「マヤ文明の研究を前進させるまたとないチャンス」だと、専門家らは喜んでいる。「古代の芸術様式も知

    マヤの王墓から指や幼児の埋葬品
  • 古代文字の解読にコンピューターを活用

    土産品店で売られているウガリット語が刻まれた粘土板のレプリカ。 Photograph courtesy Regina Barzilay 聖書時代の文字が新しいコンピュータープログラムによって短時間で解読された。すでに“失われてしまった”古代のテキストが復活するかもしれない。 解読プログラムはマサチューセッツ工科大学のチームによって開発され、粘土板に尖筆で刻んだ点や楔形の印からなる「ウガリット語」の文章の自動翻訳に成功した。ウガリット語はシリア西部で紀元前1200年頃まで使われていた言語だ。 この“失われた言語”が刻まれた粘土板は1920年代後半にシリアの港町ウガリットを発掘していた考古学者チームが発見し、1932年には言語学者が文字の解読を完了している。それ以来、古代イスラエル文化や聖書のテキストの解明に役立ってきた。 高性能ノートパソコン程度の処理能力があれば実行できる今回のプログラムは

    古代文字の解読にコンピューターを活用
  • ウッドヘンジ、夏至の儀式の場か?

    ムーアヘッドサークルの発掘の様子(2010年7月8日撮影)。石灰岩が埋まった粘土床に柱穴が開いている。 Photograph courtesy Bob Riordan アメリカ、オハイオ州の都市シンシナティの北東部郊外で見つかった“木製のストーンヘンジ”は、考古学者チームの発掘調査によりその謎が解き明かされつつある。建造の目的には諸説あるが、約2000年前に儀式の場として使われていたことを裏付ける新たな証拠が見つかった。最近の研究によると、かつては木柱が環状に配置されていたこの遺跡は、イギリスのストーンヘンジのように、夏至などの天文学的な事象を祝うために使用されていた可能性が高い。 遺跡の正式名は「ムーアヘッドサークル(Moorehead Circle)」だが、「ウッドヘンジ(Woodhenge)」という呼び方が一般的だ。かつては、皮を剥いだ木柱が環状に立てられていた。不規則な同心円状の配

    ウッドヘンジ、夏至の儀式の場か?
  • 麻薬密輸潜水艦:エクアドルで押収

    エクアドル警察が、コロンビア国境のすぐ南、サンロレンソ近郊で押収した潜水艦(2010年7月2日撮影)。麻薬密輸業者が建造したもので、アメリカ側捜査当局によると“ゲームの流れを変える”最新型だという。従来の「麻薬潜水艦」は水面直下でしか航行できなかったが、今回押収された潜水艦は水深20メートル程度まで潜行できるようだ。 処女航海前だったこの潜水艦はグラスファイバー製で全長30メートル、6~10トンの麻薬と乗員6名を収容できる。潜水艦が建造されたキャンプは人里離れた湿地帯にあり、最大50名の作業員が配置される建造設備を備えていたが、強制捜査時に現場にいた作業員は1名だけだった。 Photograph from Reuters エクアドル警察が、コロンビア国境のすぐ南、サンロレンソ近郊で押収した潜水艦(2010年7月2日撮影)。麻薬密輸業者が建造したもので、アメリカ側捜査当局によると“ゲームの流

    麻薬密輸潜水艦:エクアドルで押収
  • 麻薬密輸潜水艦:テロの脅威も

    2008年、麻薬密輸用に造られた全長10メートルの潜水艦がメキシコの太平洋岸で摘発され、サリナクルスの桟橋に並べられた6トンの押収コカイン。 アメリカとコロンビアの麻薬捜査当局は、2011年だけでも新たに70隻、コカインの量にして約400トンを輸送可能な麻薬密輸潜水艦が建造されるだろうと推定している。そして、潜水艦が運ぶのはコカインだけとは限らない。「心配なのは麻薬とテロが結びつくことだ。国際的な麻薬取引には多くのテロ組織が絡んでいる。これらの潜水艦が麻薬輸送以外の用途にも利用されているのは明らかだ」と元アメリカ麻薬取締局(DEA)捜査官のマイケル・ブラウン氏は述べている。 Photograph by Eder Lopez, Reuters 2008年、麻薬密輸用に造られた全長10メートルの潜水艦がメキシコの太平洋岸で摘発され、サリナクルスの桟橋に並べられた6トンの押収コカイン。 通常の麻

    麻薬密輸潜水艦:テロの脅威も
  • 国際自然保護写真賞:温泉のニホンザル

    長野県の地獄谷野猿公苑で入浴を楽しむニホンザルの親子。同施設では、野生のニホンザルが人間さながらに温泉を満喫する光景が観察できる。 Photograph by Oksana Perkins, courtesy International Conservation Photography Awards (ICPA) 長野県の地獄谷野猿公苑で入浴を楽しむニホンザルの親子。同施設では、野生のニホンザルが人間さながらに温泉を満喫する光景が観察できる。 撮影者はオクサナ・パーキンス氏。世界の人々の自然環境に対する保護意識を喚起する目的で創設された国際自然保護写真賞(ICPA:International Conservation Photography Awards)の「野生生物」部門で見事第1位に輝いた。 ICPAの審査員であり、ワシントン州シアトルのデザイン会社ガービンで環境グラフィック・デザイナ

    国際自然保護写真賞:温泉のニホンザル
  • 国際自然保護写真賞:南極のオットセイ

    南極、ストロムネス湾の捕鯨基地跡に佇むオットセイ。ここは20世紀初頭、決死の南極大陸横断に挑んだアイルランドの探検家アーネスト・シャクルトンが、救出を求めてたどり着いた地でもある。当時、この基地を拠点に行われた捕鯨によって、絶滅の危機に追い込まれたクジラもいた。 Photograph by Susanne Weissenberger, courtesy ICPA 南極、ストロムネス湾の捕鯨基地跡に佇むオットセイ。ここは20世紀初頭、決死の南極大陸横断に挑んだアイルランドの探検家アーネスト・シャクルトンが、救出を求めてたどり着いた地でもある。当時、この基地を拠点に行われた捕鯨によって、絶滅の危機に追い込まれたクジラもいた。 写真家のスザンヌ・ワイセンベルガー(Susanne Weissenberger)氏は、この写真で国際自然保護写真賞(International Conservation

    国際自然保護写真賞:南極のオットセイ
  • 国際自然保護写真賞:デスバレー

    アメリカ、カリフォルニア州のデスバレー。おだやかな夕日に染まるこの荒涼とした地は、最高気温は摂氏57度に達し、年間降雨量は5センチに満たないという。 Photograph by Trixi Huish, courtesy ICPA アメリカ、カリフォルニア州のデスバレー。おだやかな夕日に染まるこの荒涼とした地は、最高気温は摂氏57度に達し、年間降雨量は5センチに満たないという。 砂嵐が過ぎ去った後のデスバレー東部、「ザブリスキー・ポイント(Zabriskie Point)」地域をとらえたトリシー・ハイシュ(Trixi Huish)氏は、国際自然保護写真賞(International Conservation Photography Awards)の「風景」部門第1位を受賞した。長い年月をかけた侵作用が丘陵地帯に複雑な紋様を刻み、自然が生んだ奇観をうかがう1枚となっている。 Photogr

    国際自然保護写真賞:デスバレー
  • ファラオの墓の地下道:断面図

    古代エジプトのファラオ、セティ1世の墓の断面図。多数の職人が工事と装飾の作業に従事している様子が描かれている。 この墓はツタンカーメンの墓で有名な王家の谷の上に位置し、石灰岩質の高い崖を丹念に穿って造られている。容易に訪れることのできない場所にあるが、一見の価値は十分にある。王家の谷の中で最大規模を誇り、装飾の美しさもトップクラスなのだ。しかも、最近は地下道の発見が相次いでおり、規模はさらに大きいことがわかってきている。 2008年、墓室から階段へ下る地下道が新たに発見され、100メートルの全長が136メートルに修正された。 Illustration by Christopher Klein, National Geographic 古代エジプトのファラオ、セティ1世の墓の断面図。多数の職人が工事と装飾の作業に従事している様子が描かれている。 この墓はツタンカーメンの墓で有名な王家の谷の上

    ファラオの墓の地下道:断面図
  • ファラオの墓の地下道:ヘビのレリーフ

    古代エジプトのファラオ、セティ1世の墓室の壁面に刻みこまれたレリーフ(資料写真)。墓室の下に伸びる急勾配の地下道を、数匹のヘビが見上げている様子が描かれている。 エジプトの考古学者ムスタファ・ワジリ(Mustafa Waziri)氏によると、このレリーフは当初から地下道の設置が予定されていたことを示す有力な証拠だという。古代エジプトでは、ヘビは善良な人間を死後の世界へ導く動物とされており、このレリーフもその信仰を反映しているらしい。 凝ったレリーフで飾られた墓室とは対照的に地下道は実用的な造りだ。階段のステップには赤文字で「側柱をどけて通路を広げよ」と書き記してあった。建築家の指示ではないかと考えられている。 Photograph courtesy Egyptian Supreme Council of Antiquities 古代エジプトのファラオ、セティ1世の墓室の壁面に刻みこまれたレ

    ファラオの墓の地下道:ヘビのレリーフ
  • ファラオの墓の地下道:未完成で中断

    古代エジプトのファラオ、セティ1世の墓から下る謎の地下道は、残念ながらどこへもつながっていないことが明らかになった。写真はエジプト最高考古庁事務局長ザヒ・ハワス氏(2009年撮影)。3300年前の石の階段は、発掘時に仮設された木造の階段で保護されている。また、ハワス氏の左に伸びるのは、がれきや埋蔵物の運搬用に設置されたトロッコ用のレールだ。 Photograph by Amr Abdallah Dalsh, Reuters 古代エジプトのファラオ、セティ1世の墓から下る謎の地下道は、残念ながらどこへもつながっていないことが明らかになった。写真はエジプト最高考古庁事務局長ザヒ・ハワス氏(2009年撮影)。3300年前の石の階段は、発掘時に仮設された木造の階段で保護されている。また、ハワス氏の左に伸びるのは、がれきや埋蔵物の運搬用に設置されたトロッコ用のレールだ。「発掘作業を3年続けたが、行き

    ファラオの墓の地下道:未完成で中断
  • アメリカ独立記念日:歴史と現在

    デトロイト川の夜空を彩る独立記念日の打ち上げ花火(資料写真)。 Photograph by Cosmin Nahaiciuc, My Shot アメリカ建国の父たちは7月4日をどのように祝ったのか? 毎年打ち上げられる花火の数は? アメリカ独立記念日にちなむエピソードをいくつか紹介してみよう。 人々がバーベキューや花火に興じ、アメリカ合衆国誕生の日を祝福する。7月4日の独立記念日は、アメリカ全土が熱気に包まれる夏の祭典だ。アメリカン大学の名誉司書ジェームズ・R・ハインツ(James R. Heintze)氏は、著書『The 4th of July Encyclopedia』の中で、アメリカ人は世界のどこにいても独立記念日を盛大に祝うと記している。 ハインツ氏によると、「1934年、南極のリトル・アメリカ基地に滞在していた探検家のリチャード・バードらは、気温マイナス34度の嵐の中で花火を打ち

    アメリカ独立記念日:歴史と現在
  • メソアメリカ文明の高度なゴム製造技術

    現在のメキシコ周辺に栄えたオルメカ文明で作られた、数世紀前のゴムボール(資料写真)。 Photograph by Kenneth Garrett, National Geographic チャールズ・グッドイヤーが19世紀半ばに加硫ゴムを発明する3000年も前、メキシコと中央アメリカの広範囲にわたり繁栄した古代文明では、既にさまざまな用途のゴムが製造されていたとの最新研究が発表された。 メソアメリカ地域に栄えたアステカ、オルメカ、マヤ文明では、植物から採取する樹液に似た乳白色液体(ラテックス)からゴムができると知っていた。メソアメリカは、メキシコ中央部からホンジュラスやニカラグア周辺に広がる地域を指す。 当時のゴムは、ゴムノキから採取した天然のラテックスとアサガオのつるの汁を混ぜて作る。アサガオには、固化したラテックスの耐久性を高める成分が含まれている。 マサチューセッツ工科大学(MIT

    メソアメリカ文明の高度なゴム製造技術
  • 夏至2010:祝祭の輪

    スラブ系のネオペイガニズム(復興異教主義)の信奉者たちがロシアの山林地帯で2010年6月19日に開催した夏至の儀式。 一年で昼間が最も長い夏至の日は古くから認識され、その日に何らかの儀式を執り行う文化は世界のあらゆる地域にみられる。例えば約5000年前に建設されたイギリスのストーンヘンジは、夏至の日と冬至の日の太陽の位置に合わせて石が並べられている。 Photograph by Konstantin Zavrazhin, Getty Images スラブ系のネオペイガニズム(復興異教主義)の信奉者たちがロシアの山林地帯で2010年6月19日に開催した夏至の儀式。 一年で昼間が最も長い夏至の日は古くから認識され、その日に何らかの儀式を執り行う文化は世界のあらゆる地域にみられる。例えば約5000年前に建設されたイギリスのストーンヘンジは、夏至の日と冬至の日の太陽の位置に合わせて石が並べられてい

    夏至2010:祝祭の輪
  • 夏至2010:炎のショー

    ロシア、モスクワから60キロ程離れた森の中で2010年6月19日に催された自然崇拝宗教の夏至の儀式“クパロ”で披露された炎のパフォーマンス。 今年の夏至の瞬間は世界時6月21日午前11時28分で、公式には、北半球では1年で昼が最も長い日のこの瞬間から夏が始まることになる。 夏至は、地球の地軸が公転軸に対して23.4度傾いているために起こる現象である。地球上の場所によって年間日照量が異なる原因も、この地軸の傾きにある。夏至の日、北極点は1年でほかのどの日よりも太陽に近くなる。南半球ではその反対となり、1年で最も昼の短い日、つまり冬至にあたる。 Photograph by Konstantin Zavrazhin, Getty Images ロシア、モスクワから60キロ程離れた森の中で2010年6月19日に催された自然崇拝宗教の夏至の儀式“クパロ”で披露された炎のパフォーマンス。 今年の夏至の

    夏至2010:炎のショー
  • 夏至2010:火の上をジャンプ

    2010年6月19日に行われた夏至の儀式で、燃え上がる炎を飛び越えるロシアの自然崇拝宗教の信者。 夏の最初の日の正午、北半球では太陽が最も高い位置、私たちのほぼ真上に見える。しかし夏の最初の日が一年中で最も暑いわけではない。 地球に届く太陽光線の熱は、海と大気が地球のヒートシンク(放熱板)の働きをして吸収し、時間をかけて再放射する。つまり夏至の日に地球が吸収した大量の太陽熱も、数週間の時間をかけてゆっくりと再放射されることになる。そのため、格的な夏の暑さがやって来るのは通常7月か8月頃となる。 Photograph by Konstantin Zavrazhin, Getty Images 2010年6月19日に行われた夏至の儀式で、燃え上がる炎を飛び越えるロシアの自然崇拝宗教の信者。 夏の最初の日の正午、北半球では太陽が最も高い位置、私たちのほぼ真上に見える。しかし夏の最初の日が一年中

    夏至2010:火の上をジャンプ
  • サッカーの科学:史上最高の選手は?

    2010年6月16日、南アフリカのダーバンでに行われたFIFAワールドカップ1次リーグ、スペイン対スイス戦でプレーするスペインのセルヒオ・ラモス(左)とスイスのディエゴ・ベナリオ。 Photograph by Daniel Ochoa de Olza, AP FIFAワールドカップの開催中に世界で最も盛り上がる話題のひとつといえば、“世界最高のサッカー選手は誰か”に尽きる。ペレか、マラドーナか、ロナウドか、はたまたロナウジーニョか。そんなサッカーファンの議論に科学的方法で終止符を打てるかもしれないと期待する科学者がいる。 あるサッカー好きな科学者の研究チームが、表面に現われにくい統計値を用いた最新のランキング法によってサッカー界のベストプレーヤーを客観的にランク付けできると発表した。 筋金入りのサッカーファンなら、誰しもお気に入りのサッカー選手の成績を比較して楽しむものだ。アメリカのノース

    サッカーの科学:史上最高の選手は?
  • 「父の日」100周年:起源と現在

    アメリカ、マサチューセッツ州のホームレス施設で父の日を息子と過ごすイラク戦争の退役軍人(2008年撮影)。 Photograph by Steven Senne, AP 2010年6月20日、父の日が100周年を迎えた。世界中のお父さん達は、息子や娘がこれを機会に財布のひもをゆるめてくれるよう期待している。世界経済の緩やかな回復に伴い、グリーティングカードやネクタイ、大工道具、衣服など、父の日向けプレゼントの消費額は2009年比で約4%増加すると予測されている。一方、100年前の当時は、非常につつましく、商業的要素のかけらもない清々しい感謝の一日であった。 6月の第3日曜日がアメリカで公式な国の記念日となったのは1972年で、リチャード・ニクソン大統領が宣言した。しかし、父の日の起源は20世紀初頭のワシントン州での出来事までさかのぼる。 1909年、ワシントン州スポケーンに住むソノラ・スマ

    「父の日」100周年:起源と現在
  • イスラエルの多神教遺物:儀式用の台

    6月上旬にイスラエル北部にある岩のくぼみから、謎めいた穴のある小振りな儀式用の台(写真)など約200点にのぼる多神教の遺物が発見された。テル・カシシュ遺跡の発掘現場からは、人間の顔が彫られたカップ、油壺、各種の器などが出土し、その内100点ほどは無傷だった。 イスラエル考古学庁の発掘チームに参加するエドウィン・バン・デン・ブリンク(Edwin van den Brink)氏とウージ・アド(Uzi Ad)氏によると、3500年前の遺物の多くは、地方の神殿で偶像崇拝の儀式に用いられたと見られる。 テル・カシシュは後期青銅器時代(紀元前1550~1200年)に破壊されたが、一部の遺物はその前に埋められて破壊を免れたと同氏は説明している。 Photograph courtesy Assaf Peretz, Israel Antiquities Authority 考古学者チームの発表によると、6

    イスラエルの多神教遺物:儀式用の台
  • イスラエルの多神教遺物:人面の杯

    イスラエル北部のテル・カシシュ遺跡で約200点の遺物が発見された。半数近くがきわめて良好な保存状態にあり、中には写真のような人の顔が彫られた杯もある(エルサレムのイスラエル考古学庁で撮影)。 発掘チームの考古学者エドウィン・バン・デン・ブリンク(Edwin van den Brink)氏は、「毎日が発見の連続だった。儀式用の遺物の多くは、ギリシャの都市ミケーネから持ち込まれたようだ」と話す。同地のミケーネ文明は紀元前1400~1200年頃に最盛期を迎えた。 地方の神殿で偶像崇拝の儀式に用いられていたと考えられるが、不要になって埋められた可能性もあるという。このような供養の慣習は現在のユダヤ教にも残っている。 Photograph by Sebastian Scheiner, AP イスラエル北部のテル・カシシュ遺跡で約200点の遺物が発見された。半数近くがきわめて良好な保存状態にあり、中に

    イスラエルの多神教遺物:人面の杯
  • クストー生誕100年、その功績と影響力

    ジャック・クストーのジェット推進式の円盤型潜水艇“ダイビングソーサー”が海底を探索する(撮影日不明)。 Photograph by Thomas J. Abercrombie, National Geographic 2010年6月11日は故ジャック・クストーの生誕100周年だった。当日はマスコミに大きく取り上げられ、朝にはインターネット時代の最高の栄誉とも呼ぶべきGoogleロゴにまで登場した。 海洋探検家クストーがこれほどまでに伝説的な存在であり続けるのはなぜだろうか。それには5つの理由がある。 ◆ 1. アクアラングの発明 トレードマークの赤いビーニー帽に有名な調査船カリプソ号でおなじみのクストーは、フランス人の海洋探検家、発明家、映画作家、自然保護論者である。20世紀後半のほぼ50年間に渡って世界の海を航海し、何百万人という人々に地球の海とそこに住む生物を紹介し、その保護を訴えた。

    クストー生誕100年、その功績と影響力
  • 中国西周時代の生贄遺骨:動物と人

    中国の河南省洛陽市で、今から少なくとも2700年前に生贄として埋められた動物と人間の骨が発見された。 これらの骨は、西周王朝の時代(紀元前1100年~前771年)のものと見られる墓群跡で発見された。この墓群は最近発見されたもので、1000平方メートル近い広さがあり、14基の墓、水路、59個の生贄用の穴から成る。 Photograph from Imagechina/AP 中国の河南省洛陽市で、今から少なくとも2700年前に生贄として埋められた動物と人間の骨が発見された。 これらの骨は、西周王朝の時代(紀元前1100年~前771年)のものと見られる墓群跡で発見された。この墓群は最近発見されたもので、1000平方メートル近い広さがあり、14基の墓、水路、59個の生贄用の穴から成る。 西周王朝時代の中国では、動物、ときには人間を祖先や神に生贄として捧げることは習慣となっていた。テキサス大学オース

    中国西周時代の生贄遺骨:動物と人
  • 中国西周時代の生贄遺骨:亀甲占い

    中国の河南省洛陽市で発見された西周王朝の時代のものとみられる生贄の跡からは、卜占(ぼくせん)に用いられたと思われる亀の甲羅のかけらも発見された。 テキサス大学オースティン校の中国史学者デイビッド・セナ氏によると、西周王朝の時代に甲羅を使った占いが行われていたことはあまり知られていないが、その前の殷王朝の時代には甲羅や動物の骨を加熱して生じた亀裂の形で占う方法が取られていた。 Photograph from Imagechina/AP 中国の河南省洛陽市で発見された西周王朝の時代のものとみられる生贄の跡からは、卜占(ぼくせん)に用いられたと思われる亀の甲羅のかけらも発見された。 テキサス大学オースティン校の中国史学者デイビッド・セナ氏によると、西周王朝の時代に甲羅を使った占いが行われていたことはあまり知られていないが、その前の殷王朝の時代には甲羅や動物の骨を加熱して生じた亀裂の形で占う方法が

    中国西周時代の生贄遺骨:亀甲占い
  • 中国の歴史を支える“もち米モルタル”

    もち米は、中華料理においても建築においても伝統的な重要素材だった(資料写真)。 Photograph by Bernd Lippert, Getty Images 箸でつまんでべるのに適したもち米は、中国で数世紀前に作られた橋や寺院、墓、街を囲む城壁の堅牢さを保つことにも役立っていることが新たな研究で明らかになり、この独特な建築素材の“伝説的な強さ”の秘密が解き明かされた。 600年前に南京で建造された城壁の漆喰(しっくい)を分析した結果、粉末状の石灰石ともち米で作った粥(かゆ)の混合物であったことが確認された。中国、浙江大学物理化学研究所の張秉堅(Zhang Bingjian)氏が率いた研究によれば、解明の糸口となったのは米に含まれる炭水化物アミロペクチンの存在だった。 漆喰の歴史に詳しいイズミール工科大学(トルコ)のセダト・アッカート氏は電子メールによる取材に対し、「長い歴史の中で、

    中国の歴史を支える“もち米モルタル”
  • 世界最古の革靴、アルメニアで発見

    アルメニアで見つかった世界最古とされる革。 Photograph courtesy Gregory Areshian アルメニアの洞窟で2008年に発見された革が、世界最古の革であることが2010年6月9日に確認された。しかしこののデザインは、デザイナーとして世界的に有名なマノロ・ブラニク氏が感心するほど非常に現代的だ。 の中には、断熱材として、あるいは型崩れを防ぐために詰められたと思われる草が入っている。ネイティブアメリカンが履いていた革製の袋状のモカシンに似たこのは約5500年前のもので、アルメニアにある洞窟の発掘調査で見つかった。大量のヒツジの糞の中に埋もれていたため、奇跡的に保存状態が良好だった。 の大きさは現在のアメリカで言う女性用の7号(24センチ)とほぼ同じで、このの持ち主の右足に合わせて作られたと思われる。ただし、この時代のアルメニア人の足に関する確実な

    世界最古の革靴、アルメニアで発見
  • 2010年ジオ・ビー、優勝は13歳

    2010年の子ども向け全米地理コンテスト「ナショナル ジオグラフィック・ビー」で優勝したアーディス・ムールティ君(中央)と他の参加者たち(5月26日撮影)。 Photograph by Rebecca Hale 子ども向け全米地理コンテスト「ナショナル ジオグラフィック・ビー」(通称「ジオ・ビー」)の決勝ラウンドが2010年5月26日に開催され、フロリダ州のアーディス・ムールティ君が素晴らしい歌声を披露するとともに優勝を果たした。 13歳のムールティ君は第1ラウンドの後、アメリカの人気クイズ番組「ジョパディ!」の司会者でジオ・ビー決勝ラウンドの進行役アレックス・トレベック氏のリクエストに応えて、ワシントンD.C.のナショナル ジオグラフィック協会部に集まった観客を前に、インド南部の古典音楽“カルナータカ”を歌った。 ムールティ君はその後の決勝ラウンドで、「ハイチ北部最大の都市は、ハイチが

    2010年ジオ・ビー、優勝は13歳
  • 史跡“ショーハリー水道橋”の危機

    アメリカ、ニューヨーク州フォート・ハンター近郊のショーハリー水道橋(Schoharie Creek Aqueduct)。1840年頃、当時の技術を駆使してエリー運河に架けられたが、150年の時間に押し流されて無惨にも崩れ落ちている。この水道橋をはじめとする州所有の史跡や州立公園が、アメリカ・ナショナル・トラストによって、2010年度版「アメリカで最も危機にさらされている11の史跡」の1つに選定された。 アメリカ・ナショナル・トラストの広報担当キャロリーヌ・バーカー氏は次のように話す。「選定対象は建築物1棟から地域全体まで幅広く、すべてがアメリカ歴史の語り部として大切な遺産だ。アメリカ国民にとってかけがえのない価値を体現している」。 Photograph courtesy New York Office of Parks, Recreation and Historic Preservat

    史跡“ショーハリー水道橋”の危機
  • マヤ遺跡カラコル:先進的な農業

    マヤの古代都市カラコルを4種類の異なる方法で示した画像。衛星写真(a)、レーザーによる測距技術LiDARで遺跡を覆う樹木を測定して作成した画像(b)、考古学地図(c)、段々畑と土手道のLiDAR画像(d)。 カラコルでは段々畑と貯水池を組み合わせた水の供給システムが広範に整備されていた。このことから、最近流行の“持続可能”な都市デザインが、マヤでは1000年以上も先駆けてすでに行われていたことがわかる。 LiDARを使用した今回の調査が行われるまでは、こうした段々畑は数カ所しか確認されておらず、マヤの古代都市での生活にとってこの農業形態が極めて重要なものだったことがわかっていなかった。 Image courtesy University of Central Florida Caracol Archaeological Project マヤの古代都市カラコルを4種類の異なる方法で示した画像

    マヤ遺跡カラコル:先進的な農業
  • マヤ遺跡カラコル:古代都市を3D復元

    蒼(うっそう)と生い茂る熱帯雨林を飛行機からレーザーを放射して“まる裸”にしてみると、今までの想像をはるかに超える規模の古代マヤ都市が姿を現した。2009年4月、レーザー光線を地上に照射して距離を測定するLiDAR(Light Detection and Ranging)技術を駆使して、ベリーズ西部の古代マヤ都市カラコルの3D地図の作成を目的とした調査が行われた。わずか4日間で、これまで知られていなかった建造物や道路などの形状が明らかになった。 実際の調査では、LiDARを搭載した双発機で上空からレーザーを放射し、森林の下の地面や建造物などに反射したレーザーを計測して、それらの形状を立体的に再現した。レーザーを放射および反射する際の軌跡を計測し、GPS装置を活用しながら三角法に基づいて、今回発表された3D地図のデータを作成した。 Image courtesy University of

    マヤ遺跡カラコル:古代都市を3D復元
  • マヤ遺跡カラコル:“天空の場”

    マヤの人々はカーナの神殿や宮殿を“天空の場”と呼んでいた。写真は神殿跡の頂上に座る人々(撮影日不明)。 今回のプロジェクトで、セントラルフロリダ大学の文化人類学者アーレン・チェイス氏とダイアン・チェイス氏らの研究チームは、レーザーによる測距技術LiDARのデータによってカーナ神殿などこれまでに確認された遺構の正確な3D画像の作成に成功した。しかも、カラコル全体に何千もの遺構、11の道路、何万もの段々畑が新たに発見され、さらには多数の洞窟が隠れていることも明らかになった。また、カラコルの面積が177平方キロ以上に及ぶことも確認された。 「カラコルはアンコールワットのような、いわゆる低密度農業型都心だった。このタイプの都市は文字通り農業と一体になっていて、景観全体が一つの都市として融合している」とダイアン・チェイス氏は説明する。 Photograph by Dan Hallman, Gett

    マヤ遺跡カラコル:“天空の場”
  • マヤ遺跡カラコル:カーナ神殿群

    今回の古代マヤ文明の都市国家カラコルのLiDAR(レーザー光線による測距)調査の最大の成果のひとつが、カラコルで最も高い建造物だった複数の神殿と寺院で構成されるカーナ神殿群である。 実際の調査では、LiDARを搭載した双発機で上空からレーザーを放射し、森林の下の地面や建造物などに反射したレーザーを計測して、それらの形状を立体的に再現した。レーザーを放射および反射する際の軌跡を計測し、GPS装置を活用しながら三角法に基づいて、今回発表された3D地図のデータを作成した。 Image courtesy University of Central Florida Caracol Archaeological Project 今回の古代マヤ文明の都市国家カラコルのLiDAR(レーザー光線による測距)調査の最大の成果のひとつが、カラコルで最も高い建造物だった複数の神殿と寺院で構成されるカーナ神殿群であ

    マヤ遺跡カラコル:カーナ神殿群
  • シンコ・デ・マヨ:戦いの歴史の意味

    シンコ・デ・マヨの祭りで、メキシコとフランスの戦いを再現するメキシコ・シティーの人々(資料写真)。 Photograph by Jaime Puebla, AP 5月5日、全米の祭り好きがメキシコの祝日「シンコ・デ・マヨ」を祝った。祭りの名はスペイン語で“5月5日”を意味するが、毎年の参加者の中には、これがビール祭りではなく、血塗られた歴史にちなんでいると知らない人もいるようだ。 シンコ・デ・マヨは、メキシコの独立記念日とよく間違えられるが、スペインの植民地から独立したのは1810年9月16日で、5月5日ではない。 祭りの起源は1862年の同月同日、メキシコ軍がプエブラの会戦でフランス軍を奇跡的に撃退した英雄的な日にちなむ。ただしメキシコ国では、南部の町プエブラといくつかの大都市など地域限定のお祭りだ。 しかし近年、シンコ・デ・マヨはアメリカで急激に広まっている。人口構成が変化し、文化

    シンコ・デ・マヨ:戦いの歴史の意味
  • 農業手法の大転換で省エネルギーを実現

    現代の穀物生産には大量の化石燃料が必要になる。研究チームは、農地に複合的な輪作サイクルを導入すれば、省エネルギーを実現できると主張している。 Photograph by John Stanmeyer, VII/National Geographic 1分の料生産で消費される燃料は意外と多い。もしかすると、その事の摂取エネルギー量をはるかに上回るかもしれない。 アメリカ料生産システムでは、農地の材料1カロリー分が卓に届くまで10カロリーの化石燃料を消費するといわれる。ところが2010年5月3日発行「Agronomy Journal」誌5/6月号で発表された研究結果によれば、実はそれほど多くは必要ないという。 アイオワ州立大学チームが行った6年間の研究は、化石燃料消費を削減しながら豊富な収穫量を維持し、農家は利益も出せると結論づけている。 同チームはアイオワ州の農場で、コーンベル

    農業手法の大転換で省エネルギーを実現
  • 下水処理で発癌性物質が生成?

    現在普及しているシャンプーが発癌(がん)性物質の生成につながる危険性が示唆された。 Photograph by Susanne Kracke, Getty Images 安全なはずのシャンプーが、発癌(がん)性物質の生成につながる恐れがあることが新たな研究で明らかになった。 アメリカの下水処理場で調査したところ、シャンプーをはじめとする家庭用製品が浄水処理過程で使用される消毒剤と反応して、ニトロソアミンという発癌性物質を生成することがわかった。ニトロソアミンはほとんど研究が進んでおらず、この物質が回り回って水道水に混入することもあり得るという。 今回の研究でイェール大学チームは、ニトロソアミン類のN-ニトロソジメチルアミン(NDMA)に注目した。アメリカ環境保護庁(EPA)はNDMAを“ヒトに対しておそらく発癌性がある(Probable human Carcinogen)”化学物質に分類し

    下水処理で発癌性物質が生成?
  • 最古のチリのミイラ、死因は砒素中毒

    南米チリの砂漠地帯で発見された古代チンチョーロ人の子どものミイラ。 Photograph courtesy B. Arriaza チリ北部の荒涼とした砂漠地帯で世界最古とみられるミイラが発見された。毒水を摂取して死亡した者もいたと考えられている。チリ北部に位置するカマロネス渓谷の飲料水には高濃度の砒素が含まれている。ミイラの毛髪分析から判断して、かつて近傍の沿岸部に居住していたチンチョーロ人は、少なくとも7000年前から砒素中毒で苦しんでいた可能性がある。「当時の人々はカマロネス特有の砒素濃度の高い水を毎日飲んでいたようだ」と、同国タラパカ大学の研究責任者ベルナルド・アリアザ(Bernardo Arriaza)氏は話す。 無味無臭かつ無色の鉱物に彼らは気付きようもなかったが、砒素の長期的な摂取は人体に深刻な影響を及ぼす。とりわけ皮膚や肺、膀胱、または腎臓の各臓器が癌に侵されていた可能性が高

    最古のチリのミイラ、死因は砒素中毒
  • エジプトの墓地遺跡:ローマ様式の棺 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト

    古代ローマ時代の衣服をかたどった約2000年前の石棺。エジプトの首都カイロの南西約360キロに位置するバハレイヤ・オアシスで新たに発見された墓地遺跡で見つかった。 未盗掘の墓が14基以上見つかっており、紀元前30年から紀元395年、エジプトがローマ帝国統治下にあった時代のものとされている。砂漠に埋もれていたため、湿気と地下水の浸により保存状態は良くなかったが、宝飾品や葬儀用の仮面、陶器なども見つかった。 未開封の石棺は全長約97センチ、高貴な女性が身につける装飾品をかたどった彫刻が施されている。 Photograph courtesy Egyptian Supreme Council of Antiquities 古代ローマ時代の衣服をかたどった約2000年前の石棺。エジプトの首都カイロの南西約360キロに位置するバハレイヤ・オアシスで新たに発見された墓地遺跡で見つかった。 この石膏製サ

    エジプトの墓地遺跡:ローマ様式の棺 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト
  • エジプトの墓地遺跡:ホルスの息子たち

    エジプトで新しく発見されたグレコローマン様式の墓から出土した金の薄板。表面の浮き彫り細工は、古代エジプトで天空と太陽をつかさどる神ホルスの4人の息子を表している。ケベフセヌエフ、ハピ、ドゥアムテフ、イムセティという名で、それぞれ腸、肺、胃、肝臓を守る存在と考えられていた。 エジプトのミイラは、遺体から取り出した各臓器を兄弟の意匠を施した4つの壺(つぼ)に収めることが多い。この金の薄板が発掘されたバハレイヤ・オアシスは、1996年に「黄金のミイラが眠る谷(Valley of the Golden Mummies)」の発見で有名になった。以来、この谷から発掘されたグレコローマン様式のミイラは数百体に上り、多くが金箔(きんぱく)で飾られた棺(ひつぎ)に納められている。 Photograph courtesy Egyptian Supreme Council of Antiquities エジプト

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  • エジプトの墓地遺跡:不死のマスク

    2000年前のグレコローマン様式の石膏マスク。バハレイヤ・オアシスの砂の中から新たに発掘された。 古代エジプトでは、葬儀用の仮面を着用すれば、死者は冥界から霊界の楽園にたどり着けると考えられており、この信仰はローマ支配下の紀元後300年頃まで変わらなかった。当時、ヨーロッパからの影響が大きくなっていたにもかかわらず、神殿での儀式で神官がエジプト様式の動物のマスクを着用していたことも知られている。 「マスクのミイラはまだみつかっていない。この地域の豊富な地下水が発掘を困難にしている」と、エジプト最高考古庁のカイロおよびギーザの古美術品管理責任者、マフマド・アフィフィ氏は語った。 Photograph courtesy Egyptian Supreme Council of Antiquities 2000年前のグレコローマン様式の石膏マスク。バハレイヤ・オアシスの砂の中から新たに発掘された。

    エジプトの墓地遺跡:不死のマスク
  • ベスト報道写真2009:人々部門2位

    アフガニスタンのコレンガル渓谷で、掩蔽壕(えんぺいごう)の外でタリバンの攻撃に応戦する3人のアメリカ軍兵士たち。AP通信のカメラマン、デイビッド・グッテンフェルダー氏が2009年5月に撮影。第53回世界報道写真コンテストの「ニュースの中の人々」部門で2位に選ばれた。 攻撃が始まった時には仮眠中だった特技兵のザカリー・ボイドさん(左)は、あわてて小隊の援護に駆けつけたため、“I Love NY”のピンクのボクサーパンツにTシャツという姿だ。 Photograph courtesy David Guttenfelder, The Associated Press アフガニスタンのコレンガル渓谷で、掩蔽壕(えんぺいごう)の外でタリバンの攻撃に応戦する3人のアメリカ軍兵士たち。AP通信のカメラマン、デイビッド・グッテンフェルダー氏が2009年5月に撮影。第53回世界報道写真コンテストの「ニュースの

    ベスト報道写真2009:人々部門2位
  • ベスト報道写真2009:一般部門1位

    ガザ地区北部の廃屋で、戦車の砲撃を受けて開いた屋根の穴から光が差し込む。スウェーデンの写真家、ケント・クリッヒ氏が2009年3月に撮影。 この家に住んでいた家族は、イスラエルによるガザ攻撃が始まった2008年12月に別の場所に避難した。1 Photograph courtesy Kent Klich ガザ地区北部の廃屋で、戦車の砲撃を受けて開いた屋根の穴から光が差し込む。スウェーデンの写真家、ケント・クリッヒ氏が2009年3月に撮影。 この家に住んでいた家族は、イスラエルによるガザ攻撃が始まった2008年12月に別の場所に避難した。 Photograph courtesy Kent Klich

    ベスト報道写真2009:一般部門1位
  • ベスト報道写真2009:大賞

    夜空に向かって抗議の叫びをあげるイラン人女性。激戦となったイラン大統領選挙の直後の2009年6月24日にイタリアの写真家ピエトロ・マスツルツォ氏が撮影したこの写真は、オランダのアムステルダムに部を置く世界報道写真財団が主催する第53回世界報道写真コンテストで大賞に選ばれた。 審査委員長のエイぺリ・カラブディ・エッセ氏は声明の中で、「この写真は、何かの始まり、とてつもない物語の始まりを思わせる。報道の視点を深めるもので、視覚的にも感情的にも訴えかけるものがある。私自身もあっという間に心をつかまれた」と評している。 Photograph courtesy Pietro Masturzo 夜空に向かって抗議の叫びをあげるイラン人女性。激戦となったイラン大統領選挙の直後の2009年6月24日にイタリアの写真家ピエトロ・マスツルツォ氏が撮影したこの写真は、オランダのアムステルダムに部を置く世界報

    ベスト報道写真2009:大賞
  • ベスト報道写真2009:自然部門1位

    うっかり水面に近づき過ぎた魚を捕える瞬間、カワセミの乳白色を帯びた目がきらりと輝く様子を水中から撮影した1枚。 多くの水鳥と同様に、カワセミには瞬膜と呼ばれる第3のまぶたがある。傷つかないように眼を防護するこの瞬膜のおかげで、カワセミは水中の獲物を見ることができる。 ハンガリーの写真家ヨエ・ペテルスブルガー氏がナショナルジオグラフィック・イメージ・コレクションのために撮影したこの写真は、第53回世界報道写真コンテスト自然部門で1位に選ばれた。 Photograph courtesy Joe Petersburger, National Geographic Image Collection うっかり水面に近づき過ぎた魚を捕える瞬間、カワセミの乳白色を帯びた目がきらりと輝く様子を水中から撮影した1枚。 多くの水鳥と同様に、カワセミには瞬膜と呼ばれる第3のまぶたがある。傷つかないように眼を防護

    ベスト報道写真2009:自然部門1位
  • ベスト報道写真2009:日常生活2位

    モザンビークの砂浜で日曜日にピクニックを楽しむ家族の風景を、フランス人ジョアン・バルデレッティ氏が撮影。今も世界で最も貧しい国の一つとされるアフリカ南東部の国で中産階級が台頭している事実を裏付ける1枚だ。第53回世界報道写真コンテストの日常生活部門で2位に選ばれた。 世界銀行によれば、モザンビークの経済は過去10年間で急成長を遂げてきた。同行は、世界の発展途上国における中産階級の人口は2030年までに10万人に増加すると予測している。 Photograph courtesy Joan Bardeletti モザンビークの砂浜で日曜日にピクニックを楽しむ家族の風景を、フランス人ジョアン・バルデレッティ氏が撮影。今も世界で最も貧しい国の一つとされるアフリカ南東部の国で中産階級が台頭している事実を裏付ける1枚だ。第53回世界報道写真コンテストの日常生活部門で2位に選ばれた。 世界銀行によれば、モ

    ベスト報道写真2009:日常生活2位
  • ベスト報道写真2009:社会問題1位

    イラク戦争の帰還兵ホセ・ペケーニョさんを病院のベッドから抱き起こす母親。アメリカ人写真家ユージン・リチャーズ氏が撮影した。第53回世界報道写真コンテストの「現代社会の問題」部門で組写真1位に選ばれた。ペケーニョさんは、イラクの都市ラマディをパトロール中の車内で手投げ弾が爆発し、脳の40%を失った。 イラク戦争では、開戦から2009年末までに4300人を超える米軍兵士が死亡、約3万人が負傷している。 Photograph by Eugene Richards, Getty Images Reportage for The Sunday Times Magazine/Paris Match イラク戦争の帰還兵ホセ・ペケーニョさんを病院のベッドから抱き起こす母親。アメリカ人写真家ユージン・リチャーズ氏が撮影した。第53回世界報道写真コンテストの「現代社会の問題」部門で組写真1位に選ばれた。ペケー

    ベスト報道写真2009:社会問題1位
  • ベスト報道写真2009:速報部門1位

    爆発はカブール市内のワジル・アクバル・ハーン地区にある外国大使館が数多く入居するホテルで発生した。8人が死亡、40人が負傷し、当時としては過去6週間で最も犠牲者の多い自爆テロとなった。 Photograph courtesy Adam Ferguson, VII Mentor Program for The New York Times 自爆テロの現場から女性を救出する兵士たち。2009年12月15日、アフガニスタンの首都カブールでオーストラリアの写真家アダム・ファーガソン氏が撮影。第53回世界報道写真コンテストのスポットニュース(速報)部門で1位に選ばれた。 爆発はカブール市内のワジル・アクバル・ハーン地区にある外国大使館が数多く入居するホテルで発生した。8人が死亡、40人が負傷し、当時としては過去6週間で最も犠牲者の多い自爆テロとなった。 Photograph courtesy Ada

    ベスト報道写真2009:速報部門1位
  • ウミガメの危機:小規模漁業

    漁網にからまって引きずられるブラジル沖のアオウミガメ。海洋生物学者のブライアン・ウォレス氏によると、ウミガメの事故死の90パーセント以上は沿岸の小規模漁業が原因だという。しかし実際のデータは非常に乏しい。 ウミガメの混獲被害に関する新たな研究では、主に商業航路上のオブザーバーから寄せられたデータが集計された。その結果、1990~2008年の10年で、合計8万5000頭余りの事故死が明らかになった。「この数値は現実を無視している」と話すウォレス氏は、実際の被害は数百万のオーダーに及ぶと持論を展開する。一方、アメリカの水産資源の業界団体である米国水産協会(NFI)の広報担当者ギャビン・ギボンズ氏は、「何の証拠もない非科学的な推測値にすぎない」と批判している。 Photograph courtesy Projeto Tamar Brazil, Image Bank 漁網にからまって引きずられるブ

    ウミガメの危機:小規模漁業