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ブックマーク / honz.jp (53)

  • 『人は2000連休を与えられるとどうなるのか』前代未聞の実験の果てに辿り着いた場所とは……? - HONZ

    連休。なんと甘美な響きだろう。 ラジオの番組作りの仕事は面白いのだが、ネックは休みがとりづらいことかもしれない。先日のゴールデンウィークも、「最大10連休」なんてニュースで伝えながらまるで他人事だった。10日なんて贅沢は言わない。3日間でいいから続けて休んでみたい。 わずか3連休でも羨ましく感じるくらいだから、2000連休なんて桁が違いすぎて想像することすら難しい。著者は6年間にも及ぶ休み(正確には2190連休)を体験した。そこにあったのは巨大な空白だったという。これほどの空白を与えられると、いったい人はどうなってしまうのか。 一見、軽めのサブカルエッセイのようだが、とんでもない。書は世にも奇妙な人体実験の記録である。理系ということもあってか(京都大学工学部卒)、著者の言葉はきわめて精確で、曖昧な表現にとどまることがない。そうした解像度の高い言葉で、自身に生じた微細な変化が記録されている

    『人は2000連休を与えられるとどうなるのか』前代未聞の実験の果てに辿り着いた場所とは……? - HONZ
  • 『政治学者、PTA会長になる』これぞ街場の民主主義!政治学者が世間の現実と向き合った1000日の記録 - HONZ

    「その悩み、○○学ではすでに解決しています」みたいなタイトルのを見かけることがある。あなたが日々の仕事で直面する悩みや課題は、すでに最新の学説や理論で解決済みですよ、というわけだ。 だが当にそうだろうか。最新の学説や理論を応用すれば、世の中の問題はたちどころに解決するものだろうか。 著者は政治学を専門とする大学教授である。「話すも涙、聞くも大笑いの人生の諸々の事情」があって、47歳にして人の親となった。小学校のママ友やパパ友のほとんどは干支一回り以上年下だ。そんなママ友からある日「相談があります」と呼び出され、いきなりこんなお願いをされた。 「来年、PTA会長になってくれませんか?」 まさに青天の霹靂だ。驚いた著者は必死に出来ない理由を並べ立てる。「フルタイム・ワーカー」だから無理!「理屈っぽくて、短気で、いたずらにデカいジジイ」だから無理!ところがママ友は決してあきらめず、最後は情に

    『政治学者、PTA会長になる』これぞ街場の民主主義!政治学者が世間の現実と向き合った1000日の記録 - HONZ
  • 麻酔で意識が落ちた時、何が起こっているのか──『意識と感覚のない世界――実のところ、麻酔科医は何をしているのか』 - HONZ

    麻酔で意識が落ちた時、何が起こっているのか──『意識と感覚のない世界――実のところ、麻酔科医は何をしているのか』 歴史、特に最悪の医療の歴史などを読んでいると、あ〜現代に生まれてきてよかったなあと、身の回りに当たり前に存在する設備や技術に感謝することが多い。昔は治せなかった病気が今では治せるケースも多いし、瀉血やロボトミー手術など、痛みや苦しみを与えるだけで一切の効果のなかった治療も、科学的手法によって見分けることができるようになってきた。 だが、そうした幾つもの医療の進歩の中で最もありがたいもののひとつは、麻酔の存在ではないか。正直、麻酔のない世界には生まれたくない。切ったり潰したりするときに意識があるなんてゾッとする──現代の医療に麻酔は絶対絶対必須だ。そのわりに、患者に麻酔を施す麻酔科医の仕事は光が当たりづらい分野である。何しろ実際に手術や治療を担当することはめったにないから、麻

    麻酔で意識が落ちた時、何が起こっているのか──『意識と感覚のない世界――実のところ、麻酔科医は何をしているのか』 - HONZ
  • 『僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた』誘惑に勝てないのは意志が弱いせいじゃない - HONZ

    スティーブ・ジョブズは自分の子供たちにiPadを使わせていなかった――彼はその影響力をもって世界中に自社のテクノロジーを広める一方で、プライベートでは極端なほどテクノロジーを避ける生活をしていた。デジタルデバイスの危険性を知っていたから。彼だけでなく、IT業界の大物の多くが似たようなルールを守っている。まるで自分の商売道具でハイにならぬよう立ち回る薬物売人みたいではないか……。 そんなツッコミで幕を開ける書は、フェイスブックやツイッター、インスタグラム、ソーシャルゲームといったデジタルテクノロジーが持つ薬物のような依存性をわかりやすく噛み砕いて分析した一冊である。ネット依存を題材としたは他にもあるが、書が類書とちょっと違うのは、こうした依存症ビジネスを否定・糾弾するのではなく、人間心理への深い理解を促すことに重心が置かれている点だ。著者はニューヨーク大学の行動経済学や意思決定の心理学

    『僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた』誘惑に勝てないのは意志が弱いせいじゃない - HONZ
  • 『事実はなぜ人の意見を変えられないのか』 不都合な真実から目を背ける人たち - HONZ

    具体的な数字やデータを示してもダメ。明晰な論理で説いてもムダ。そんなとき、あなたはきっとこう思ってしまうのではないか。「事実はなぜ人の意見を変えられないのか」。 実際問題、日々の生活でそんな思いを抱いてしまう場面は少なくないだろう。失敗例がすでにいくつもあるのに、それでもまだ無理筋を通そうとする社内のプレゼンター。子育てのあり方をめぐって、何を言っても聞く耳を持ってくれないパートナーなど。また不思議なことに、たとえ高学歴の人であっても、「事実に説得されない」という点ではどうやらほかの人と変わらないようだ。 さて書は、冒頭の問いを切り口としながら、人が他人に対して及ぼす「影響力」について考えようとするものである。心理学と神経科学の知見を織り交ぜつつ、著者は早々に厳しい診断を下す。 多くの人が「こうすれば他人の考えや行動を変えることができる」と信じている方法が、実は間違っていた…。 数字や統

    『事実はなぜ人の意見を変えられないのか』 不都合な真実から目を背ける人たち - HONZ
  • あなたはなぜ特定の色を好むのか?──『好き嫌い―行動科学最大の謎―』 - HONZ

    あなたは何色が好きですか? と聞くと大抵の人はペラペラとこんな色が好きですと答えてみせる(僕は灰色だ、地味だから)。初対面同士の飲み会ならなんか嫌いなものorべたいものでもあります? と聞くものだし、映画小説など、作品を鑑賞する際にも、好みは密接に関わってくる。巨大人型ロボット物は嫌い、という人もいれば巨大人型ロボット物ならなんでも大好き! という人もいるものだ。 その違いはなぜ発生しているのだろうか? べ物に関してはアレルギーなどがあるだろうが、そうでない場合は何が関係しているのか? 育ってきた環境の違いか、進化論的に脳に組み込まれているのか? 日々の選択は現在、未来の嗜好にどのような影響を与えていくのだろうか。ひょっとしたら、好き嫌いは完全にただの思いこみだったりするのかもしれない。書『好き嫌い―行動科学最大の謎―』はそうした好き嫌いに関連した行動科学についての一冊である。 た

    あなたはなぜ特定の色を好むのか?──『好き嫌い―行動科学最大の謎―』 - HONZ
    nasuhiko
    nasuhiko 2018/06/28
  • 社会分断による英国の『チャヴ 弱者を敵視する社会』は日本の近未来かもしれない - HONZ

    『チャヴ』、聞き慣れない言葉である。もとはロマ族の「子供」を指す言葉「チャヴィ」から来た、英国において用いられる「粗野な下流階級」を指す蔑称である。いくつかの英語辞典を調べてみると、「生意気で粗野な態度によって類型化される若年下流階級(オクスフォード英語辞典)」、「教養の欠如や下流階級であることを、その衣服や話し方、行動があらわすような人を示す蔑称。通常は若者を指す。(ケンブリッジ英語辞典)」、「たとえ高価であっても、その趣味が低俗であるとされる若い労働者階級(コービルド英語辞典)」などとある。 さんざんな物言いである。しかし、これらの定義を全部あわせても、チャヴという言葉を正しく理解するには足りないようだ。そこには「公営住宅に住んで暴力的」、「中流階級の謙虚さや上品さがなく、悪趣味で品のないことにばかり金を使う浪費家」、さらには、「暴力、怠惰、十代での妊娠、人種差別、アルコール依存」とい

    社会分断による英国の『チャヴ 弱者を敵視する社会』は日本の近未来かもしれない - HONZ
  • 女性作家が描くED男子の物語が密かなブーム? なぜ女は勃たない男に萌えるのか | マンガ新聞

  • マンガ新聞 - 漫画の記事・無料連載・新刊情報・おすすめ漫画レビュー

    水虫治療のためならば千里の道も駆け抜ける!『乱世の薬売りシン』第... 2018年09月25日 秘伝の水虫薬を売ることに人生を賭ける男“シン”の活躍を描いた1P大河ギャグ『乱世の薬売りシン』第三十四話!⇒【第一話】はこちら【毎週火曜更新】佩月なおこ/作。シン・・お前は何しにきたんだ?! 次の...

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  • 【追悼:谷口ジロー】海外で圧倒的に賞賛される漫画家・谷口ジロー 『「坊ちゃん」の時代』 | マンガ新聞

    ※この記事は2017年2月12日にマンガHONZ(運営:株式会社マンガ新聞)にて掲載した記事の転載になります。 レビュアー:佐渡島 庸平 フランスやイタリアで最も有名な漫画家といえば、谷口ジローである。谷口ジローの作品は、多くの人に読まれているので、フランスのエンターテイメント小説の中の描写に普通に出てくるし、『遥かな町へ』という作品は、べルギーで映画化されている。ヨーロッパでは日漫画家といえば、谷口ジローで、ルイ・ヴィトンとのタイアップなども行っている。 世界は圧倒的に、谷口を賞賛しているが、日ではどうか? もちろん漫画業界で、知らぬ人はいないし、漫画家を目指す人の中で谷口の影響を受けている人は多い。しかし、海外の評価が逆輸入されることもなく、商業的な大ヒットはあまりない。 日国内で谷口を知っている人は、『孤独のグルメ』の作家としてだろう。ドラマ化もされ、国内でもっとも売れた作品

    【追悼:谷口ジロー】海外で圧倒的に賞賛される漫画家・谷口ジロー 『「坊ちゃん」の時代』 | マンガ新聞
  • 『兵士に聞け 最終章』ついに完結する「兵士シリーズ」 - HONZ

    ノンフィクション作家、杉山隆男の代表作といえば「兵士シリーズ」だろう。このシリーズは国防と言う重大な任務を背負いながら、国民にあまり知られることの無かった自衛隊、とくに兵士たちの生の姿を追い続け、見事なまでにその姿を浮き彫りにしてきた。第一作の『兵士に聞け』は1996年に新潮学芸賞を受賞、同作品はこれまでに6作目まで出版されている。そして今回ついにその続編にして完結編である7作目『兵士に聞け 最終章』が出版された。 24年という長い年月で著者がインタビューした自衛隊員の数は、ゆうに千人は超えるという。さらにその家族を含めると膨大な数の自衛隊関係者と接触している事になる。これほど深く自衛隊にコミットしたノンフィクション作家は他にいないのではないだろうか。 著者は自衛隊と言う巨大な組織の断片である兵士たち一人ひとりの背景にスポットを当て、自衛隊員という匿名な存在から名前を持つ一人の人間としてそ

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    nasuhiko
    nasuhiko 2017/02/28
  • 『自衛隊の闇 護衛艦「たちかぜ」いじめ自殺事件の真実を追って』 - HONZ

    もしも、自らが所属する組織の不正を知ったら、あなたは、その不正を正す勇気を持てるだろうか? 幹部自衛官でありながら、自衛隊組織の不正を、正々堂々と通報した男がいる。彼の階級は、3等海佐(以下、3佐)。「自衛隊は噓をついている」と裁判所に訴えたのだ。 2014年4月23日、東京高等裁判所。21歳の自衛官・Tさんの”いじめ自殺”を巡る裁判の控訴審判決が下された。国に約7300万円の賠償命令。一審の440万円を大幅に上回る遺族側の逆転勝訴判決だった。 この控訴審判決に重大な影響を与えたのが、3佐の存在だ。 そもそも3佐は、一審のときに自衛隊側の弁護士役に当たる指定代理人を務めた人物である。 裁判の経過の中で、自衛隊側は、Tさんが自殺した直後に隊員たちに実施した「直筆アンケート」を「破棄した」と主張し続けていた。しかし3佐は、破棄されたはずのアンケートを目撃してしまった。 「これは一体、どういうこ

    『自衛隊の闇 護衛艦「たちかぜ」いじめ自殺事件の真実を追って』 - HONZ
    nasuhiko
    nasuhiko 2016/05/04
    田母神がトップになれる空自、いじめで自殺に追い込む海自。9条とは無関係に組織として改善する必要あるんじゃね?こういうこと言うと「日本の国防を弱体化しようとする売国奴」呼ばわりされそうだが。
  • マンガ新聞 - 漫画の記事・無料連載・新刊情報・おすすめ漫画レビュー

    前代未聞!!女装した少年が悪と戦う少年漫画!『ボクらは魔法少年』... 2018年09月19日 2018年9月19日(水)に発売した「週刊ヤングジャンプ」コミックスの中から、日はマンガ新聞編集部イチオシのタイトルをお届けします!

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    nasuhiko
    nasuhiko 2016/04/16
  • 『発達障害の素顔 脳の発達と視覚形成からのアプローチ』 欠如ではなく、ずれ - HONZ

    書で取り上げられる発達障害は、教育現場でその問題が指摘される自閉症スペクトラム障害やディスレクシアなどから、遺伝子疾患によるウィリアムズ症候群まで幅広い。発達障害そのものではなく、「乳幼児の心と脳の発達」を研究の重心としてきた心理学者である著者は、従来は社会性の障害であるといわれていた発達障害に、視覚情報処理とその発達という科学的知見から新しい光をあて、これらの障害が何に起因するどのようなものであるかを丁寧に教えてくれる。 この世に生まれ落ちたばかりの赤ちゃんがどのように視覚を獲得し、脳を発達させ、世界を理解していくのかを知ることは、発達障害を抱える人々が見ている、感じている世界がどのようなものなのかを解明する助けとなる。さらに、そのようにして他者の視点を想像することは、わたしたち自身が世界をとらえる方法、社会と対峙する方法をより豊かにする。 自閉症のポイントは、何らかの欠如ではなく視点

    『発達障害の素顔 脳の発達と視覚形成からのアプローチ』 欠如ではなく、ずれ - HONZ
  • 知的興奮、大爆発!『生物はなぜ誕生したのか 生命の起源と進化の最新科学』 - HONZ

    生命がどのようにして誕生し、進化してきたのか?だれもが興味をいだくテーマだ。完全にわかるということはありえない。しかし、あたらしい技術が開発され、あらたな発見がなされ、次第に議論が収斂してきている。全地球凍結=スノーボールアース仮説の提唱者である地質生物学者著者ジョセフ・カーシュヴィンクと古生物学者ピーター・ウォードによるこのは、最新データを網羅してまとめあげられた最高の一冊だ。 原題は A New History of Life。生命の “新しい” 歴史として、三つの視点から生命の誕生と進化が描かれていく。その三つとは『環境の激変』、『単純な三種類の気体分子(酸素、二酸化炭素、硫化水素)』、『生物自体ではなく生態系の進化』。生物そのものよりも、その環境から生命の歴史が読み解かれていく。 我々の考え方というのは基的に保守的だ。だから、現在認められるプロセスが過去にもあてはまる、とする「

    知的興奮、大爆発!『生物はなぜ誕生したのか 生命の起源と進化の最新科学』 - HONZ
  • 失敗の本質ーエネルギー版『日本軍はなぜ満洲大油田を発見できなかったのか』 - HONZ

    国際政治経済のゲームのルールが変わりつつある。シェール革命により自国でエネルギーをまかなえるようになったアメリカは、中東の石油に依存する必要がなくなり、不安定化する中東情勢に介入しなくなった。 かつての世界の警察官が興味を失い、ますます混迷を極める現在の中東。一方で、資源の乏しい日はそんな不安定な地域にエネルギーの大部分を依存しつづけている。アメリカによる中東地域の安定が保障されない今、日は国家として戦略的にこのエネルギー問題に対処すべきである。 この絶妙なタイミングで、過去の日のエネルギー問題を振り返る書が発刊された。今や「エネルギー界の池上彰」と称されるエネルギー専門家によるエネルギー版 失敗の質論である。太平洋戦争時、なぜ日は石油を求めて戦争へと突入したのか。過去の失敗から学ぶべきことは多い。 太平洋戦争前後のエネルギー関連資料を読み漁った著者はこう語る。 太平洋戦争に突

    失敗の本質ーエネルギー版『日本軍はなぜ満洲大油田を発見できなかったのか』 - HONZ
  • 自己肯定感を育てる教育とは? 『ほめると子どもはダメになる』 - HONZ

    いま、世の中には「ほめて伸ばす」ことを標榜した子育てがあふれている。書は、それを実践している親御さんにこそ、読んで欲しい一冊だ。子育てに答えはない。同じ主張のばかり読むよりも、違う意見に耳を傾ける余裕こそが大切だと私は思う。最悪なのは、入れ知恵されて子供を操縦しようと考えることだ。おそらく書には、ほめる子育てを実践中の方をニュートラルに戻す効用がある。その状態を「迷いが深まった」というふうにとらえる人もいるかもしれないが、私はむしろ、それが子育ての正常な姿だと思う。子育ては単純なものではなく、一筋縄ではいかない千差万別なものなのだ。書を書くにあたり、著者は「ほめて伸ばす」子育てを数冊検討したそうだ。 結局、子育ての日々に疲れて、イライラしたり怒りを爆発させてしまいがちな親に向けて、冷静に叱れるようなヒントを示している内容なのだ。だが多くの人は中身は読まずにタイトルばかり目にする

    自己肯定感を育てる教育とは? 『ほめると子どもはダメになる』 - HONZ
  • 『シンギュラリティ 人工知能から超知能へ』訳者あとがき by ドミニク・チェン - HONZ

    人工知能(artificial intelligence)という言葉は、二重の問題を投げかけている。知能を人工的に再構築することができるのか、という問いと、そもそも知能とは一体何なのか、という問いである。人間の知能の全容がまだ解明されていないのにもかかわらず、その機械的な再構築を試みようとする過程を通して、逆に人間の知能とは何かということが浮き彫りになってきている。 書は、MIT PressのEssential Knowledgeシリーズの一冊として書かれた。このシリーズは、表面的な説明や意見が溢れる時代において、非専門家にとっても質的で批評的な視座を与えることを目指している。書は、現代社会が到達した、もしくは近い将来到達するであろうテクノロジーの水準の内実に光を当てながら、機械的な知能の条件から人間の知能の質を逆照射するような一連の思考実験を提供する。そうして著者のシャナハンは、

    『シンギュラリティ 人工知能から超知能へ』訳者あとがき by ドミニク・チェン - HONZ
  • 『「全世界史」講義 教養に効く! 人類5000年史』 学びを超えた知的エンターテインメント - HONZ

    のっけから著者に反論申し上げたいことがある。出口さんは「まえがき」で、「積み重ねられた歴史を学んで初めて、僕たちは立派な時代をつくれるのではないか」という。つまり書は良き未来を創りあげるという目的のために、テキストとして読むことができると言っているように聞こえるのだ。 たしかに歴史から学ぶべきこと、いや書から学べることはあまりにも多い。それは歴史だけでなく、生き様や人間関係、組織経営に至るまで、読んでいて気付かされることが多いのに驚くばかりだ。 しかし、書は時代をつくるという崇高な目的のためだけのものではないように思われるのだ。いやそれ以上に、純粋に読む愉悦に浸ることができるだと断言できる。これからの時代を考えることはひとまず脇に置いて、早く次のページを開きたいと思わせる書は高度に知的なエンターテインメントでもあるのだ。 書を読むときのイメージは「人類5000年史」という名

    『「全世界史」講義 教養に効く! 人類5000年史』 学びを超えた知的エンターテインメント - HONZ