石川県の能登半島では、古くからいかや魚を原料とした「魚醤油」づくりが行われてきました。地元では刺身や煮物の隠し味、郷土料理、伝統料理に今も広く使われています。なぜ魚醤づくりが盛んだったのか、いつごろからつくられたかについては正確な資料がなく、はっきりしませんが、地元の生産者によれば江戸中期以降、1700年代の後半にはすでに知られていたようです。能登町宇出津では、そのころのものと思われる木桶でいしりを漬け込む生産業者もいて、伝統的な製法は今に伝えられています。 能登の魚醤には大きく2種類あります。一つは、主に富山湾に面した内浦地区でつくられる真イカの内臓を使った「いしり」、もう一つは日本海側の外浦に面した地区に伝わり、いわしやサバなどを主な原料とする「いしる」です。それぞれの地域でむかしから漁獲量が多かった魚介類を原材料にしたのが特徴で、「いしる」は、輪島港(輪島市)や蛸島港(珠洲市)、富来