怖い…でも見たい!怪異と戦う弱小少年!『ミヤコ怪談』第8話後編 2018年09月21日 気弱な少年と不良少女のジュブナイルホラー。 虐められっこの草弥は、クラスメイトに脅されて、「タタリ場」への調査に向かうのだが、出会ったのは、世にも恐ろしい妖怪の数々だった…「ミヤコ怪談」はメディ...
天ぷらの語源がポルトガル語の「調理」を意味する「tempero」だとされることは、今日では多くの人の知るところであろう。しかし、この天ぷらという料理の起源をたどると、古代ペルシアの「シクバージ」と呼ばれる肉の甘酢煮料理にたどりつくことを、どれほどの日本人が知っているだろうか。本書はスタンフォード大学で言語学とコンピューターサイエンスを教える教授が言語学の観点から、料理にまつわる様々な歴史的事象を面白おかしく、多くのトリビアを織り交ぜながら紐解いていく、一風変わった作品だ。 さて、話を天ぷらに戻そう。ここまで読んで多くの人は、なぜ肉の煮込み料理であるシクバージが揚物になったかという事に疑問を持つであろう。この問題の鍵は酢という食材と船乗りたち、そして中世キリスト教の厳しい戒律にあるという。ササン朝ペルシアの王ホスロー一世の大好物であったシクバージは宮廷料理らしく非常に手の込んだ煮込み料理だ。
ベトナム戦争終結から、今年でちょうど40年。その間、この戦争について多くの研究書や回顧録、ルポルタージュが刊行され、映画もたくさん制作されてきた。もちろん、これを主題とする小説も書かれた。わたし自身も何度かベトナム帰還兵の登場する作品を訳し、この戦争について学ぶ機会を得ている。英日翻訳を専門とする出版翻訳家なら、誰もが一度は向き合わざるをえないテーマかもしれない。 最近はベトナム戦争についてよく知らない若い人が増えていると聞くが、安全保障問題への関心が高まるなか、年配の世代でも、祖国の今後を考えるためにもいま一度、この戦争について知識を整理し直したいとお考えのかたもいらっしゃるだろう。きちんと知るには、フランス、そして日本による植民地支配からベトナムの歴史をおさらいすべきだろうが、そんなふうに身構えずとも、ふと目を惹かれた本を手にとってみることで、思わぬ興味が広がり、理解が深まることもある
たとえば宇宙、あるいは深海、もしくは辺境。人類は未知の世界に魅了され、フロンティアを切り開いてきた。だが我々の日常には、もはや冒険すべきフロンティアは残されていないのだろうか。 材料科学という研究に従事してきた著者は、マンションの屋上から見えるありふれた風景を材料という視点から見つめ直すことにより、既知の世界をフロンティアへと変える。 文明とは煎じ詰めれば材料の集合体であり、万物は数々の材料から形づくられる。本書では鋼鉄やチョコレート、ガラスからインプラントまで10種類の材料を取り上げ、人間スケールの世界から微細なスケールの内なる宇宙へと旅立っていく。 根底にあるのは、「すべての材料は、材料からできている」というシンプルな事実である。本は紙から出来ており、その紙はセルロース繊維から出来ており、さらにセルロース繊維は原子から構成される。 それぞれの詳細を観察するために、描かれる対象は人間スケ
本書は、スタンフォードのコンピューター言語学者が、食の言語を手掛かりに人類史を探究するという異色の一冊である。そして「食と言語」と聞いて黙っていられなかったのが、辺境をこよなく愛するノンフィクション作家・高野秀行さん。食べ物の語源に舌鼓を打ちながら、いつしか現在取材されている納豆の話へ。本書の巻末に掲載されている、高野さんのエッセイを特別掲載いたします。(HONZ編集部) 世界のあちこちを30年近く旅してきたが、最近、人間集団──大きいものは国民や民族、小さいものは家族や学校まで──の内面的なアイデンティティを形作る三大要素は「言語」「食」「音楽(踊りを含む)」ではないかと思うようになった。 私自身、外国へ行って「なつかしい」と思うのは日本語、日本食、昔なじみの歌などであるし、多くの国の人もそうであるように見える。 ならば、食と言語の組み合わせが面白くないわけがないのだが、一つ問題なのは、
主流派経済学にひそむ欺瞞 2008年にアメリカで勃発した金融危機は、起きるべくして起きた出来事ではあった。 リスクが大きいローン債券を証券化した「デリバティブ」(金融派生商品)が主役を演じたバブル崩壊劇であったが、そんな危険物を扱う市場を透明にしようとする努力はクリントン政権時にわざわざ禁止されていた。個々のトレーダーたちは成功すれば莫大な報酬を得る一方、失敗してもダメージは比較して小さい仕組みだったから、おのずと高リスクの取引にのめり込んでいった。なかでも証券の値下がりリスクに備える保険商品であるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は住宅市場の過熱とともに住宅ローン担保証券の損失に対して広く用いられるようになっていたが、検査が厳格でなく、しかも発行者には準備金を積み立てる義務がなかったため、保険大手のAIGが保証金の
先日、友人とカレーを食べに行った。和風の店構えに「インドカレー」の看板、だけどメニューにはパキスタンカレーと書かれている、たぶん、パキスタンカレーのお店だ。寿司屋を居抜きでそのまま使っているらしい。店内には小上がりもある。でもそんなことはどうでもいい。鮮烈なスパイス、油がたっぷり使ってあるはずなのに、後味は爽やかだ。うまい。35年生きてきたが、ジャパニーズ・カレーライス以外のカレーを食べたのは初めてであった。 大学では東洋史研究室に所属し、ついていた先生は東南アジア史がご専門、友人はインドネシア・マレー史を学び、当時付き合っていた彼氏は北インド史を学んでいたにもかかわらず、スパイスに縁のない人生を送って来た。そのことを大いに悔やんだ一食であった。なぜだろう。皆、研究旅行のお土産は煙草か茶葉かドリアンキャンディー。カレー粉であったなら、と、セットのラッシーを飲みながらずうずうしく考えた。 そ
信長とイスラム主義 高野 僕は、清水さんが書かれているような歴史の本を読んでヒントを得て、現代のアジア・アフリカの辺境のことを想像することが多いんです。やっぱり現地の人の気持ちを理解するのはとても難しいし、特に紛争地となると、外国人である僕が何度通って話を聞いても、真相はなかなかわかるものじゃない。確信めいたものをつかむのはすごく大変で、そこに至るヒントとしては日本史の知識がすごく役に立つと思っているんです。 清水 それは責任重大だ(笑)。 高野 たとえばアフガニスタンでもソマリアでも、内戦のさなかに「イスラム主義」の過激派がどーっと出てきますよね。そのときの感じは、織田信長が出てきたときの感じに近いんじゃないかなって、ちょっと思っているんですね。 というのは、人々は初めからイスラム主義を支持していたわけじゃないんだけども、国内に戦国武将みたいな連中がたくさんいて、それぞれ争っていると、暮
億万長者になった自分を想像してみよう。生涯で使い切れないほどのお金を手にしたあなたは、サハラ以南アフリカ諸国への援助を考える。数多い国の中で、どの国から投資をすべきか?世界銀行による世界開発指標で国民1人あたりのGDPを調べてみると、コンゴ民主共和国の92米ドルが最も小さなものであることがわかる(本書による2009年の調査時点での2000年の値)。 念のために、経済学者にもよく利用される、ペン・ワールド・テーブル(PWT)とアンガス・マディソン(マディソン)のデータセットでも調べてみよう。PWTでもマディソンでも、コンゴ民主共和国の1人当たりGDPが最も小さな値を示している。「先ずはコンゴ民主共和国へ援助金を出そう」、と考えるかもしれない。しかし、これら3つのデータセットで貧困国ランキングを作成すると、奇妙な事実が浮かび上がる。例えばPWTでは貧困国ランキング7位のギニアが、マディソンでは
8月26日発売の『世界の辺境とハードボイルド室町時代』は、人気ノンフィクション作家・高野 秀行と歴史学者・清水 克行による、異色の対談集である。「世界の辺境」と「昔の日本」は、こんなにも似ていた! まさに時空を超えた異種格闘技の様相を呈す内容の一部を、HONZにて特別先行公開いたします。第1回は「高野秀行氏による前書き」と「かぶりすぎている室町社会とソマリ社会」について。(HONZ編集部) はじめに by 高野 秀行 私はふつうの人が行かないアジアやアフリカなどの辺境地帯を好んで訪れ、その体験を本に書くという仕事をしている。こんなことで生活できるのはありがたいと思うが、一つ困るのは話し相手がいないことだ。 たとえば、ここ5年ほど通って取材を行っているアフリカのソマリ人。彼らは数百年前から続く伝統的な社会システムを現在でも維持しており、それに従って内戦も和平も恋愛 も海賊行為も行われている。
市場均衡、合理的期待、効率的市場仮説…。これまでの経済思想では、もはや現実の世界を説明することは出来ない。物理学の視点から、経済学の常識へ果敢に切り込んだ『市場は物理法則で動く』。本書の翻訳者解説と、物理経済学の歴史的な経緯を紐解いたソニーCSL研究所・高安秀樹氏による解説記事「経済物理学の誕生と発展」を併せて掲載いたします。(HONZ編集部) 「『今回は違う(This time is different)』というのは、4つの単語からなる言葉の中で最も高くつくものだ」。これは、バリュー投資家として有名なジョン・テンプルトンが残した株式相場の格言である。 リーマン・ブラザーズ破綻直後の2008年9月、ある新聞コラムは、このテンプルトンの格言を引用してこう書いている。「テンプルトンが戒めた『今回は違う』という風潮は、バブル崩壊の初期に広がる。崩壊の怖さを知ってい
このように、2分でカップ1杯の水をお湯にしたいなら、700ワットの動力源が必要になる。 一般的な電子レンジの出力は700から1100ワット (日本の家庭用電子レンジの場合は200~1000ワット)なので、お茶を入れるためにカップ1杯の水を加熱するには約2分かかる。物事の帳尻がきっちり合うのは気分がいいね! カップ1杯の水を電子レンジで2分間加熱すると、ものすごい量のエネルギーが水に与えられる。ナイアガラの滝の一番上から落ちるとき、水は運動エネルギーを獲得し、その運動エネルギーは滝の落下点では熱に変わる。しかし、それだけの距離を落ちたあとも、水の温度は1度の数分の1も上がらない。カップ1杯の水を沸騰させるには、大気圏の一番上よりも高いところから落とさねばならない。 人間がかき混ぜて、電子レンジと張り合うなんて可能なのだろうか? 業務用ミキ
“耳鼻削ぎ”とは穏やかではない。というか、野蛮。現代人はそう感じるだろう。日本の歴史上で耳や鼻を削ぐといえば、戦国時代の話かな。敵の首をいくつとったか戦功を証明するのに、首だと持って帰るには重いから耳。いや耳だと左右二つ削いで数をごまかせるので鼻になったんだっけ。いやはや、戦国時代は血腥い…。 著者は日本各地の“耳塚”“鼻塚”を訪ね歩き調査する。無惨に討たれた武士たちの耳や鼻が何百と葬られたというのなら、さぞや怨念が染み付いているだろう、怨霊話もあるだろう。耳や鼻を削ぐという行為の意味もみえてくるだろう、と思いきや。 なぜかどこへいっても「耳の神様が耳の聞こえをよくしてくださるところ」という話ばかりだったのだという。 私は日本中の耳塚・鼻塚を訪ねてまわり〜(中略)けっきょくのところ、どこの耳塚・鼻塚からも不気味な怨霊譚が聞かれることはなかった。それどころか〜(中略)土地の人から愛され、ご利
我々日本人にとって、中東という地域は直視することが難しい存在である。欧米的なフィルターを通して見ることも多いため、馴染み深い価値観との違いにばかり目が向い、不可解で危険な存在と断定してしまうことも多いだろう。 本書のテーマとなっている「イスラム国」という存在についても、数多くの残虐な振る舞いがニュースやソーシャルメディアを通して喧伝され、その本当の姿を我々は知らない。だが我々が彼らの歴史を知っている以上に、彼らは我々の歴史をよく知っているようだ。 これらのバイアスを一度リセットし、むしろ我々にとって既知なるものとの類似性を対比することで評価を定めて行こうとするのが、本書『イスラム国 テロリストが国家を作るとき』である。 著者はテロ・ファイナンスを専門とする女性エコノミスト。そのような専門領域があったこと自体驚きなのだが、そこに行き着くまでの彼女のエピソードも面白い。かつて幼なじみの友達がテ
著者のダグ・メネズは1957年テキサス州生まれ。 1981年にはサンフランシスコ州立大学でフォトジャーナリズムの学位を取得した。 IBM-PCが発売された年である。パソコンがマニアの遊び道具から本格的なマシンへと変貌した年だ。 メネズはいまでもTIME、Newsweek、LIFEなどにフリーランスの写真家として報道写真を提供しつづけているという。これまでにもエチオピア飢饉やアマゾン流域、オリンピックや大統領選挙などの現場で活躍した経験がある。 なかでも長く関わったのはシリコンバレーという現場であった。 1985年から2000年にかけてシリコンバレーを訪れては25万枚もの写真を撮影した。撮影にあたっては映像人類学の視点から、人物や背景だけでなく、書類や黒板などに書かれた文字も人類史的な記録として残している。本書はその記録の一部を写真集にまとめたものである。 プロが使える本格的な一眼レフのデジ
『背信の科学者たち』、この刺激的なタイトルの本が化学同人から出版されたのは四半世紀前。1988年のことである。かけだし研究者であったころにこの本を読んだ。驚いた。捏造をはじめとする論文不正を中心に、科学者のダークな事件をあらいだし、その欺瞞から科学をとらえなおそうという試みである。最初におことわりしておくが、この本、後に講談社ブルーバックスとして出版されているが、いまは絶版になっている。 科学というのは、基本が正直ベース。性善説にのっとった営みである。こういったことと自分はまったく無縁だと思っていた。まさか、10年後に捏造事件に巻き込まれるとは夢にも思っていなかった。そして、今回のSTAP細胞騒動である。 STAP細胞について、直接は関係していない。しかし、主人公以外の登場人物は、論文調査委員会のメンバーも含めて、個人的に知っている人ばかりである。そして、専門領域が近いこともあってか、ある
除草剤アトラジンをめぐる長年の論争がひとつの山場を迎えているようで、『ニューヨーカー』の2月10日号にホットなレポートが載っていました。アトラジンは日本でも使われている除草剤でもあり、今後の成り行きが注目されます。 が、今回の記事はアトラジンの性質というよりもむしろ、医薬品や農薬などの安全性を調べている科学者が、その製品を製造販売している企業にとって好ましくないデータを出してしまったらどうなるのか--しかもそこに巨額の金が絡んでいるときには--という、われわれとして知っておくべき残念な事実に関するものでした。 除草剤アトラジンの問題は、両生類(とくにカエル)の内分泌学を専門とする、タイロン・ヘイズという研究者を抜きにしては語れないようで、『ニューヨーカー』の記事もヘイズを軸として展開されていました。 ヘイズは、サウスカロライナ州出身のアフリカ系アメリカ人で、彼が生まれ育った地域では、人口の
1939年に始まったソ連との冬戦争で活躍したフィンランド軍の狙撃手シモ・ヘイヘは、一部ネット上では有名だ。しかし、これまで日本では、ヘイへその人をテーマとした本は、これまで一冊も出ていなかった。本書は、1998年に60年間にわたって沈黙を続けてきたヘイへのインタビューを成功させた著者によるノンフィクションであり、一部マニアにとっては待望の書と言える。 ここでまず、ネット上にコピペで出回っているヘイへの逸話を見てみよう。 ・わずか32人のフィンランド兵なら大丈夫だろうと4000人のソ連軍を突撃させたら撃退された ・シモヘイヘがいるという林の中に足を踏み入れた1時間後に小隊が全滅した ・攻撃させたのにやけに静かだと探索してみたら赤軍兵の遺体が散らばっていた ・気をつけろと叫んだ兵士が、次の瞬間こめかみに命中して倒れていた ・スコープもない旧式モシンナガン小銃で攻撃、というか距離300m以内なら
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