ブックマーク / dain.cocolog-nifty.com (31)

  • 死ぬときに思い出す傑作『イギリス人の患者』

    死ぬときに思い出す小説の一つ。 あれを読めば良かったとか、これがまだ途中だったとか、未練は必ずあるはずだ。どんなに読んでも足りることはないから。そんな後悔の中で、エピソードや描写を思い出し、読んでよかったと言える作品の一つが、『イギリス人の患者』だ。 映画が公開されたときだから、20年以上前に読んだのだが、いま再読しても美しい。詩的で情緒豊かに紡がれる、四人の男女の破壊された人生の物語だ。 あらすじはシンプルだ。 第二次世界大戦の終わり、イタリア北部の半ば廃墟となった修道院が舞台となる。そこで生活を共にするのは、看護婦のハナ、泥棒のカラヴァッジョ、インド人の工兵のキップ、そしてイギリス人の患者となる。人生のわずかな期間にすれ違う男女が、自身の半生を思い出す。 ただし、けっして読みやすい、ストレートなお話ではない。 時系列は無警告で前後するし、エピソードの粒度や解像度はバラバラだ。後になって

    死ぬときに思い出す傑作『イギリス人の患者』
  • ミスを責めるとミスが増え、自己正当化がミスを再発する『失敗の科学』

    人はミスをする。これは当たり前のことだ。 だからミスしないように準備をするし、仮にミスしたとしても、トラブルにならないように防護策を立てておく。人命に関わるような重大なトラブルになるのであれば、対策は何重にもなるだろう。 個人的なミスが、ただ一つの「原因→結果」として重大な事故に直結したなら分かりやすいが、現実としてありえない。ミスを事故に至らしめた連鎖や、それを生み出した背景を無視して、「個人」を糾弾することは公正なのか? 例えば、米国における医療ミスによる死亡者数は、年間40万人以上と推計されている(※1)。イギリスでは年間3万4千人もの患者がヒューマンエラーによって死亡している(※2)。 回避できたにもかかわらず死亡させた原因として、誤診や投薬ミス、手術中の外傷、手術部位の取り違え、輸血ミス、術後合併症など多岐にわたる。数字だけで見るならば、米国の三大死因は、「心疾患」「がん」そして

    ミスを責めるとミスが増え、自己正当化がミスを再発する『失敗の科学』
  • 死ぬまでに読みたかったベイトソンが「いま」読める幸せ『精神の生態学へ』

    面会にやってきた母親を、息子はハグしようとする。母親は身をすくませるため、息子はハグを諦めて、少し離れる。すると母親は悲しげに言う「もうお母さんのことを愛してくれなくなったの?」 母親が帰った後、息子は暴れ出したので、保護室へ収容される。 グレゴリー・ベイトソンは、統合失調症の息子ではなく、母親の言動に注目する。息子のことを愛していると言う一方で、息子からの愛情を身振りで拒絶する。さらに、息子からの愛が無いとして非難する。 息子は混乱するだろう。ハグしようとする愛情表現を拒絶するばかりでなく、そもそもハグそのものが「無かったこと」として扱われる。にも関わらず、息子のことを愛していると述べる……そんな母親に近づけばよいのか、離れればよいのか、分からなくなる。 矛盾するメッセージに挟まれる ベイトソンは、この状況をダブルバインドと名づける。会話による言葉のメッセージと、身振りやしぐさ、声の調子

    死ぬまでに読みたかったベイトソンが「いま」読める幸せ『精神の生態学へ』
  • なぜ、あの人は、あやまちを認めないのか?

    「謝ったら死ぬ病」をご存知だろうか? どんなに証拠を突き付けても、絶対に非を認めない人だ。 プライドの高さや負けず嫌いといった性格的なものよりもむしろ、過ちを認めることが、自分の命にかかわるものだと頑なに信じている。すなわち、「謝ったら死ぬ」という病(やまい)に取り憑かれている―――そんな人がいる。 もちろん、想像力が衰えて視野が狭く、無知な自分を認めたがらないような頑固者なら、可哀そうに思えども理解はできる。 だが、第一線で活躍する知識人や学者で、ものごとを客観視できるはずなのに、この病気に罹っている人がいる。それどころか、その優れた知性を用いてコジツケを考えだし、論理を捻じ曲げ、のらりくらりと言い逃れる。 なぜ、あの人は、あやまちを認めないのか? ずばりこのタイトルの書を読んだら、疑問が氷解した。 それと同時に、「謝ったら死ぬ病」は私も罹患していることが分かった。「あの人」ほどは酷く

    なぜ、あの人は、あやまちを認めないのか?
  • 認知言語学から小説の面白さに迫る『小説の描写と技巧』

    小説の面白さはどこから来るのか? 物語のオリジナリティやキャラクターの深み、謎と驚き、テーマの共感性や描写の豊かさ、文体やスタイルなど、様々だ。 小説の面白さについて、数多くの物語論が著されてきたが、『小説の描写と技巧』(山梨正明、2023)はユニークなアプローチで斬り込んでいる。というのも、これは認知言語学の視点から、小説描写の主観性と客観性に焦点を当てて解説しているからだ。 特に興味深い点は、小説の表現描写が、人間の認知のメカニズムを反映しているという仮説だ。私たちが現実を知覚するように、小説内でも事物が描写されている。 認知言語学から小説の描写を分析する 通常ならメタファー、メトニミーといった修辞的技巧で片づけられてしまう「言葉の綾(あや)」が、ヒトの、「世界の認知の仕方」に沿っているという発想が面白い。これ、やり方を逆にして、認知科学の知見からメタファーをリバースエンジニアリングす

    認知言語学から小説の面白さに迫る『小説の描写と技巧』
  • 苦しくて辛いとき寄り添ってくれる一冊『絶望名言』

    普通、名言集といったら人を励ますものだ。 明けない夜は無いとか、出口のないトンネルは無いとか、あきらめずに頑張ればいつか夢はかなうとか。ポジティブにさせ、前を向かせてくれる言葉が並んでいる。エナドリのように気分をブーストさせるのに向いているが、ちょっと眩しすぎる。 当に辛く苦しく落ち込んでいるときに、「ポジティブでいれば幸せしかない」なんて言われても、「せやな」としか返せない。後ろ向きのときに前向きの言葉は似合わない。失恋ソングなんてまさにそれで、悲しいときには悲しい曲を聴きたくなるものだ。 それと同様に、辛いとき、苦しいとき、自信を失って途方に暮れているときは、絶望的な言葉の方が心に沁みる。自分だけではなかったと慰められ、この気分に寄り添ってくれているように感じられる。 カフカ、ドストエフスキー、太宰治、芥川龍之介など、文豪たちが吐き出す絶望名言を紹介したのがこれである。 紹介する人は

    苦しくて辛いとき寄り添ってくれる一冊『絶望名言』
  • なぜ空からの大量虐殺が許されるのか『空爆の歴史』

    無抵抗な人に向けて、殺傷力の高い武器で、一方的に攻撃する。される側は、男女・子ども関係なく、住んでいる場所を焼かれ、家族を殺され、命が奪われる。 空爆がそれだ。無防備の市民を、空から皆殺しにする。これほど残虐で、非人道的な行為はないだろう。 しかし、なぜか、空爆は「普通に」まかり通って来たように見える。市街地一帯、ひいては都市全体を火の海にするために実行されてきた。 非難や反対の声は挙がるものの、それにより空爆が制限されたり抑止されるかというと、そうはならない。 なぜ、空爆による大量虐殺が正当化されるのか? この疑問に応えたのが、『空爆の歴史』だ。 空からの植民地支配を振り出しに、ゲルニカ、重慶、ドレスデン、東京、広島、ラオス、コソヴォと続く空爆の歴史を辿りながら、空爆する側のロジックと、黙殺された抗議の両方を知ることができる。 空爆は戦争犯罪 もちろん、空爆による大量虐殺は、戦争犯罪だ。

    なぜ空からの大量虐殺が許されるのか『空爆の歴史』
  • いかに良く生きるかは猫が知っている『猫に学ぶ』

    生きる意味とは何か いまの自分に満足できない 人生の価値が分からない 自分は何者かになれるのか、あるいは、何者にもなれないのか これらを考えている人に、「を見ろ」とそそのかす。人はにはなれないし、のように生きることもできない。 なぜこんな悩みを抱えているのかまで掘り下げると、超リアリスティックな解に行き着く。いかに良く生きるかは、に学べと。人は、のように生きることはできない。だが、が生きるように生きることはできるという。 人生に意味を求める理由 そもそも人は、なぜ生きる意味を求めるのか? 自分自身の生活を超えたところに「価値」だの「生きがい」を探すことをやめられないのはなぜか? この疑問に、古今東西の哲学者や文学者を召喚する。プラトン、ピュロン、エピクロス、マルクス・アウレリウス、パスカル、スピノザ、モンテーニュ、ウィトゲンシュタイン、コレット、谷崎潤一郎、ゲイツキル……引き出

    いかに良く生きるかは猫が知っている『猫に学ぶ』
  • 現実も幻覚の一つであることが見えてくる研究『幻覚剤は役に立つのか』

    LSDやサイロシビンなど、危険ドラッグと呼ばれているものは、持ってるだけで重罪だ。依存性があり、自分の意志ではやめられなくなる恐れがあると言われている。 だが、毒か薬か量による。 専門家の監督下で、正しい用法・用量を摂取することで、うつ病や不安障害といった精神疾患や、末期ガン患者に対し、驚くほどの効果が期待できるという。そして、著者自らが幻覚剤を体験することで、治療薬としての可能性を追求したのが、『幻覚剤は役に立つのか』である。 幻覚剤の効果 幻覚剤の体験で特徴的なものが、「子どもの目で世界を見る」である。 大人の場合、「見る」という行為ひとつとっても、「それは見たことがある」「あれに似ている」など、過去の経験や知識に基づいた見方をする。 だが子どもは、(経験が少ない分)そうした影響を受けにくい。見たもののを、そのままダイレクトに受け取ろうとする。 たとえば、緑色の点がフラクタルなパターン

    現実も幻覚の一つであることが見えてくる研究『幻覚剤は役に立つのか』
  • なぜバカは無敵で世の中に蔓延しているのか分かる『バカの研究』

    桃井かおり「世の中、バカが多くて疲れません?」から30年、バカはどんどん増えている。 バカは、激しく自己主張する。 感情的にわめきたて、他人の意見に聞く耳を持たない。ことが起きるたびに「ほら、私が言った通りだろ?」と叫ぶ。思い通りにならないと、全て人にせいにして、自分が間違っている可能性を考えない。自分を高く評価するあまり、客観的な判断ができない。 バカは、「間違えたら死ぬ病」にかかっている。 自分の間違いを、絶対に認めようとしない。自分の間違いが証明されそうになると、ゴールポストを動かす。都合の悪いことを完全に忘れる能力があり、「昔は良かったが、今はダメだ」を口癖とする。 「バカ=知識がない」ではない。 知識はあり、アカデミックな立場にいるにもかかわらず、信じがたい愚かな発言を繰り返すバカは、大量にいる。しかも、なまじ知識があるぶん厄介だ。自分のイデオロギーを裏付ける文献を引用しながら、

    なぜバカは無敵で世の中に蔓延しているのか分かる『バカの研究』
    nenesan0102
    nenesan0102 2020/10/25
    養老孟司の本とかもバカ研究に入りそう
  • 面白い物語の「面白さ」はどこから来るのか? 「物語の探求」読書会

    面白い小説・マンガ・映画ゲームに没頭しているときは分からない。だが、お話が終わった後、あらためて、なぜそれを面白いと思ったのかは、気になる。 その物語の「面白さ」はどこから来たのか 誰にでもウケるのか(「面白さ」は一般化できるのか) 「面白さ」は再現できるのか そんな疑問を抱えていたら、面白い読書会があったので、参加してきた。 「物語の探求」読書会(ネオ高等遊民サークル) タケハルさん(脚家) スケザネさん(シナリオライター) ネオ高等遊民さん(哲学Youtuber) Dain(ブロガー) 小説漫画映画、舞台、ゲームなどジャンルの垣根を越えて、「物語」について考えるオンライン読書会。たとえば、「ラストで感動させる仕掛けはどう使われているか」「物語世界に巻き込む外的焦点化とは何か?」など、物語を創る側の視点から考える。 第1回の課題 『物語の力 物語の内容分析と表現分析』 高田明典

    面白い物語の「面白さ」はどこから来るのか? 「物語の探求」読書会
  • きれいは汚い、汚いはきれい『不潔の歴史』

    歴史上、いちばん不潔な信徒は、次のうちのどれか。 キリスト教徒 イスラム教徒 ユダヤ教徒 『不潔の歴史』によると、史上最も不潔なのは、キリスト教徒だという。ホント!? 入信の際の洗礼のイメージから、きれい好きと思っていたが、違うらしい。 たとえば、イエスを事に招いたファリサイ派の人は、イエスが前に身体を清めなかったことに慄いたとある(ルカ11:37-54)。さらに、「あなたたち(ファリサイ派)は、杯や皿の外側はきれいにするが、その内側は強欲と悪意に満ちている(ルカ11:39)」と非難されている。 外見よりも内面を重視するエピソードだろうと思っていたが、これを真に受けて、わざと汚れたままでいることが、4~5世紀のキリスト教徒に流行したとある。手記や小説などで、キリスト教徒の汚さは相当なものだと紹介されている。 一方、ユダヤ教徒やイスラム教徒は、清潔でいることが宗教上の要求としてルール化さ

    きれいは汚い、汚いはきれい『不潔の歴史』
  • 『戦争の世界史 大図鑑』はスゴ本

    さらに、年代も場所も広範囲にわたって概説しているため、どんどんページをめくっていくことで、「いつ」「どこで」を取っ払って、「どのように」人は争ったのかに着目することができる。そして、時代を超えた視点から、全く別の時代の戦闘どうしの類似点やアイデアが浮き彫りになり、見るたびに発見がある。 たとえば、優れた将軍は、時代を超えた特質を備えていると指摘されている。チンギス・ハン率いるモンゴル騎馬軍と、1940年春にフランスに侵攻した装甲師団との間に類似性を見出し、機動力が戦闘と決する事例として紹介されている。 あるいは、敵軍包囲という古来の戦法は、古代ローマの世界でも第2次世界大戦でも等しく奏功しているが、5千年分の戦略図を眺めていると、戦いとは畢竟「どのように敵を包むか」のせめぎあいであり騙し合いであることが見えてくる。 テクノロジー戦争を変える テクノロジーが変えた戦争も興味深い(ここが一番

    『戦争の世界史 大図鑑』はスゴ本
  • 苦しまないと死ねない国で、上手に楽に死ぬために『医者には絶対書けない幸せな死に方』

    生活や仕事の質を上げるテクニックが「ライフハック」なら、書は、安らかに死ねるためのテクニックを集めた「デスハック」である。QOL(Quality Of Life)ならぬQOD(Quality Of Death)を向上させるノウハウ集やな。 「平均寿命」-「健康寿命」≒ 10年 日人の8割は病院で死ぬが、病院では迎える死は「安らか」でない場合が多いという。なまじ延命治療技術が発達してしまったため、病院のベッドに何か月も縛り付けられたまま拷問のような状態で死に至る人が大勢いるらしい。 WHOによると、「健康寿命」の定義は、「医療や介護に依存せず、自力で生活ができる期間」になる。日人の平均寿命(2016)と並べると、こうなる。 健康寿命/平均寿命 男  71歳 / 80歳 女  74歳 / 87歳 つまり、死ぬ前に、男は10年、女は12年程度、医療や介護のお世話になる期間があることが見込ま

    苦しまないと死ねない国で、上手に楽に死ぬために『医者には絶対書けない幸せな死に方』
    nenesan0102
    nenesan0102 2019/03/03
    首吊りが一番楽だと思う。
  • 胃がん100万、乳がん200万、肺がんだったら300万『がんとお金の本』

    がんになったときの、「お金」関連がまとめられている。検査や治療の明細、公的医療費助成制度の活用法、収入や生活の不安を支える公的制度など、「生きる」費用対効果を考える上で、有用な一冊。国立がん研究センター監修。 タイトルはもちろん乱暴だ。がんの発生場所、病期(ステージ)、治療方法、入院期間などによって、まるで違う。「がん」という名前だけで、全然別の病気に見える。例えば、胃がん100万の事例は、「ステージI期、腹腔鏡下幽門側胃切除術のみ、11日間入院」の場合。大動脈リンパ節転移で切除不能だと化学療法のみとなり、46万と半額になる。ステージが進むほどやれることが限られてくる傾向がある。 問題は、がんになるか、ならないかではない。問題は、「いつ」がんになるかということと、「どの」がんになるかである。 日人の2人に1人はがんになるのなら、がんに罹ることを前提としたほうがいい。問題は、それがいつ発見

    胃がん100万、乳がん200万、肺がんだったら300万『がんとお金の本』
  • 『土と内臓』はスゴ本

    人体をトポロジー的に見ると、消化器官を中心とした「管」となる。もちろん胃や腸には逆流防止のための弁が備えられているが、位相幾何学的には「外」の環境だ。 この見方を推し進め、内臓をぐるりと裏返しにしてみる。くつ下を裏返すように、内側を外側にするのだ(このグロい思考実験は、クライヴ・バーカーのホラー小説でやったことがある)。裏返しにされた小腸や大腸を見ると、そこに植物の根と極めてよく似た構造と営みを見出すことができる。「水分や栄養素を吸収する」相似だけでなく、そこに棲む微生物との共生関係により、健康や成長面で重要な物質がやり取りされている。根と腸は、微生物とのコミュニケーションや分子取引をする市場なのだ。 書の結論は、微生物を中心とした人体の腸と植物の根の相似型であり、これに頭をガツンとやられた。ばらばらに得てきた知識が書で一つにまとまるとともに、わたし自身が囚われていた先入観がぐるりと―

    『土と内臓』はスゴ本
  • 日本一簡単なオーブン料理『村井さんちのぎゅうぎゅう焼き』

    まず結論。オーブン料理はこの3ステップに尽きる。 1. 切れ 2. 予熱しろ 3. 焼け これだけ? そう、これだけ。 切るといっても「火が均一に通るよう、材の大きさをそろえて切る」とか、焼くといっても「200度で30分、ようすを見て追加で焼く」など、いろいろアドバイスがあるでしょう。そもそも、材は何? 味付けはしないの? オリーブオイルとか……確かにそうだ。 そうなんだけど、細かいことはいいんだよ。べたいのを、切って焼くだけ。下ごしらえしたら、後はオーブンに任せておけばいい。味付けは適当でおいしい。 ただし、一点だけポイントがあって、それは「予熱をする」なんだ。狙った時間で出来上がりにするために押さえておきたい。さもないと、時間になっても中まで火が通っておらず、外は焦げている代物ができあがる。そこさえ気をつければ、なんとかなる。 まずはオーブン機能を使ってみるのが大事。これ読むと、

    日本一簡単なオーブン料理『村井さんちのぎゅうぎゅう焼き』
  • 『なぜエラーが医療事故を減らすのか』はスゴ本

    「バグを排除しようと圧力をかけると、バグが報告されないプロジェクトになる」 この寸言は、よく忘れられる。シックス・シグマや日経ナントカに染まった管理者が、バグを目の敵にし、バグゼロの号令をかける。不具合が表面化すると、たまたまそこに詳しいだけの担当を犯人扱いし、なぜなぜ分析を強要し、ccメールや全体会議で晒し者にする。 なぜなぜ分析とは、「なぜそれが起きたのか?」「その原因の原因は?」と、原因を幾重にも掘り下げる手法のこと。5段階も遡及すると、たいてい「私の不注意でした」となり、対策は「意識を入れ替える」という小学校の学級目標になる。反面、もっと深刻な「仕様変更が電話口で伝えられていた」とか「アジャイルの名のもとにテストが省略されていた」などは放置される(なぜなら、「人」を原因にしたいから)。 こんな冗談みたいな施策を続けていくと、スケープゴートになった人はどんどん心をすり減らし、不具合の

    『なぜエラーが医療事故を減らすのか』はスゴ本
  • 絶望保険『絶望読書』『なぜ私だけが苦しむのか』

    いざというときが、いまというときであり、  いまというときが、いざというときである。 この「いざ」と「いま」を分けて考えているから、いざというときには間に合わない。だから常日頃、考えろと300年前のモノノフは言った。300年後のわたしは考える代わりに保険に入り、「いざ」というときに役立ちそうな保険を読む。 絶望の淵に立ち、「なぜ私だけが苦しむのか」と問いたくなったときに読むなら、文字通り『なぜ私だけが苦しむのか』を推す。病や事故、わが子や配偶者の死など、立ち直れないほどの出来事に遭遇したとき、人は宗教に救いを求める。だが、宗教はあまり役に立っていないという。ほとんどの宗教は「起こってしまった悪いこと」に対し、神を正当化することにかまけ、嘆き悲しむ人に寄り添っているものは少ないからだという。 いま読まなくてもいい、タイトルだけを頭の片隅に入れておくか、棚のあそこにあると意識しておくだけでい

    絶望保険『絶望読書』『なぜ私だけが苦しむのか』
  • この本がスゴい!2015

    「いつか読む」は一生読まない、いつ読むの? 人生は短いのに、読みたいが多すぎる。残り全部を注いでも、いまのリストは読みきれぬ。己の変化を確かめる、再読リストも増えている。今際に後悔しないため「読んでから死ね」が優先なのに、積まれるスピードさらに上。を通じて出会った人から教わったがまたスゴい。オフ会は危険な場、積読山がマシマシだ。それでも読むしかない、それも今しかない。 「このがスゴい!2015」は、この「今」を積み上げた一年間からピックアップしたもの。ネットや読書会を通じてお薦めされた作品もあれば、書店や図書館で「呼ばれた」もある。非常に愉しいのは、リアルで話し込んでいると、記憶の底からリレースイッチのようにタイトルが"発火"してゆくところ。完全に忘れてた、思いもよらない作品につながってゆく様は鳥肌もの。 世界は対話で拡張する。わたしが知らないスゴを"発火"させる、あなたが凄い

    この本がスゴい!2015