<著者は語る>背景に白人労働者の没落 『それでもなぜ、トランプは支持されるのか アメリカ地殻変動の思想史』 ジャーナリスト、思想史家・会田弘継さん(72) 米共和党のドナルド・トランプ前大統領は四つの刑事裁判を抱え、暴言や虚言を繰り返している。それでも人気は衰えず、むしろ高まって来月の大統領選で返り咲く可能性は十分にある。ワシントン勤務が長く、米保守思想史を専門とする元共同通信・論説委員長の会田弘継さんは、そんな現象を「起こるべくして起きている」と言う。 背景には1970年代からの産業構造の変化がある。グローバル化で製造業は新興国に移り、サービス産業化が加速。都市で情報技術(IT)産業や金融業で働く高学歴エリートと地方の製造業で働く低学歴の白人労働者の格差が拡大した。「製造業の全盛期には組合に守られた高級ブルーカラーだった白人労働者は変化に対応できず、収入も上がらずに没落していった」 90