時には大学のアトリエにまで押しかけることも……。美大生や若手アーティストの女性を執拗につきまとうのが「ギャラリーストーカー」だ。きらびやかに見える美術業界で、悪質な性加害がはびこるのはなぜなのか? 業界の異常構造、悪しき伝統に迫った弁護士ドットコムニュース記者の猪谷千香氏の新刊『ギャラリーストーカー 美術業界を蝕む女性差別と性被害』より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む) 「今、真奈美の大学の前にいるんだけど」 美術大学の大学院生、山口真奈美さん(仮名)は、携帯から流れる声に背筋が凍った。美術コレクターの男性、A氏(40代)だった。 その日、山口さんはいつものように大学のアトリエで制作に取り組んでいた。集中していると、A氏から電話がかかってきた。 「真奈美に会いにきたよ」 A氏は恋人でも、親しい友人でも、家族でもない。「真奈美」呼ばわりをされるほど、親しい関係ではない。し
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