ナショナリズムと想像力 [著]ガヤトリ・C・スピヴァク[評者]中島岳志(北海道大学准教授・南アジア地域研究、政治思想史)[掲載]2011年6月12日著者:ガヤトリ・チャクラヴォルティ・スピヴァク 出版社:青土社 価格:¥ 1,680 ■市民国家への「脱皮」は可能か 自由や平等、民主主義などの諸価値を実現するためには、ナショナリズムの想像力こそ有用だとする「リベラル・ナショナリズム」論に注目が集まっている。セーフティーネットが崩壊する中、再配分への動機づけとして「同胞への愛着や信頼」を活用しようというのだ。社会民主主義者のようなリベラリストが、ナショナリズムの機能を再発見しようとしている。 しかし、スピヴァクの主張は異なる。彼女は国家による再配分を維持・強化しながら、ナショナリズムを放棄する道を模索する。 現在の国家は、ネイション・ステイト(国民国家)という形態をとる。これは国民主権の実現