社説については特にない。 なぜ、林被告はカレーにヒ素を混入したのか。被告が犯行を全面否認していたこともあり、動機は明らかにならなかった。 最高裁は、動機が不明であっても、「林被告が犯人であるとの認定を左右するものではない」とした。被告の犯行であることは、ほかの証拠が十分に証明しているとの判断からだ。今後の裁判にも影響を及ぼす考え方だろう。 動機がわからないというのと動機がないというのは違い、裁判の建前では、動機は愕然と存在している。問題はそれがわからないということと裁くという関係だ。 私の誤解なのかもしれないが、近代の裁判とは、人の意志を裁くのである。人が自由ゆえに罪を犯しうる存在だから、犯罪とは自由の言いでもある。人だからこそ自由があり犯罪が犯せるであって、そしてだからそれを裁くことができる。 そうして見ると、裁判としては動機がわからないとしながら、暗黙に承認された動機は大量殺人というこ