はじめに アニメーション作品の聖地巡礼とは何か。聖地巡礼はいかにして行われているのか。聖地巡礼はひとつの行為なのか、それとも、様々な聖地巡礼の行為がありうるのだろうか。 聖地巡礼を巡る問いは、様々な対象とトピックに関する問いを含んでいる。本稿では、アニメーション作品と聖地巡礼の行為者との虚構的関係、そして、行為者が巡礼地を用いて行う想像行為のあり方に注目し、それらの組み合わせから、聖地巡礼をいくつかの種類に分類することで、聖地巡礼を美学的に考察するための枠組みを提示することを目的とする*1。そして、その分類に基づいて、宗教的聖地巡礼との関係や、時間と空間との関わり、聖地の保存と改変の問題、そして、作品と巡礼の価値の関係について考察し、「聖地巡礼の美学」のひとつの輪郭を描き出すことを目論んでいる。 本稿の構成は以下の通り。第一に、重ね合わせと関係というふたつの概念の組み合わせから四つの聖地巡