怖い話とオカルトに関するonboumaruのブックマーク (97)

  • 焼き場の妖異が我をたばかる | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 遠きいにしえより、我が朝におきましては。 辻占(つじうら)だの、橋占(はしうら)だの。 そういったものをよく行います。 夜明け前や黄昏時ナド、薄暗く寂しい頃合いに。 四ツ辻や橋のたもとにひとり立ちまして。 行き交う人々の言葉にじっと耳を傾ける。 そうして事の吉兆を占うものでございます。 かの平清盛の娘が身籠ったときも。 母の時子が一条戻橋へ出かけまして。 橋占を行ったトもうします。 そのとき通りかかった童たちの言葉の中に。 「国王」トあったのを耳にいたしますト。 生まれてくる子は天子様になるに違いないト。 大いに安堵いたしたそうでございますが。 これが後の安徳帝なのだから、占いも侮れませんナ。 ところで、どうしてそんなところで占うのかト申しますト。 人通りの繁しい場所は、霊力も強かろうト考えたからで。 人ならぬ霊異が人の口を借りて。 神の意を語り示すトいうのでござい

    焼き場の妖異が我をたばかる | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
  • 我が背子、夢を覗かれよかし | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 播州は室津、室の泊まりト申しますト。 古くヨリ栄えた湊町でございまして。 また、我が朝の遊女の始まりの地トモ申します。 平安の昔、木曾義仲の愛妾、山吹御前が。 義仲亡き後、この室津の町へ流れ着くや。 友君ト名乗り、評判の「うかれめ」トなったトいう。 これが室津の遊女の起こりでございまして。 以来、この地第一の遊女を「室君」トカ申します。 さて、時代は下り、戦国の世。 周防の大名、大内義隆のその家中に。 浜田与兵衛ト申す剛の者がございましたが。 ある時、この室津の町に立ち寄りますト。 少し変わった女ト巡りあった。 名を但馬(たじま)ト申しまして。 年の頃は十六、七。 滑り落ちそうな撫で肩に。 触れれば折れそうな柳腰。 実に頼りのない女でございますが。 顔貌(かおかたち)はいと麗しく。 琴を奏でれば妙なる調べ。 舞えば天女のたおやかさ。 歌を詠めば小町もかくやの才覚で。

    我が背子、夢を覗かれよかし | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2019/12/23
    浅井了意「伽婢子」より
  • 業平と芥川の人喰い倉 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 平安の昔の話でございます。 在原業平(ありわらのなりひら)ト申しますト。 ご承知の通り、色男の総元締めみたいな嫌な奴で。 生まれは高貴にして、容姿は眉目秀麗であるばかりか。 美女に目がなく、狙った獲物は必ず手に入れるトいう。 天照大神に仕える伊勢斎宮でさえも。 神前にて潔斎中の身でありながら。 コロッと落ちてしまったトカ申します。 なんとも罰当たりな男でございますナ。 さて、この色男の業平にも。 肝をつぶす出来事がございまして。 ようやく我々も溜飲を下げられる。 これこそバチがあたったのだトモ申せます。 なにせ、このときモノにしようとした相手と申しますのが。 伊勢斎宮に勝るとも劣らぬお方でございまして――。 あるとき、右近の中将在原業平朝臣は。 ある人の娘が絶世の美女であると耳にした。 そうなるト、居ても立ってもいられないのが色男。 さっそく、あれやこれやト言い寄り

    業平と芥川の人喰い倉 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2019/06/20
    伊勢物語、今昔物語集より
  • 仏教説話の怖い話より 「朽ちても朽ちぬ赤い花」 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 都が奈良にあった頃の話でございます。 大安寺に弁西ト申す僧がございまして。 この者は白堂(びゃくどう)を生業トしておりましたが。 白堂トハなにかト申しますト。 欲深き民百姓どもがお寺にやってまいりまして。 あれやこれやト願い事を口にいたしますが。 その願いを仏に取り次いでやる者のことを申すそうで。 「子宝に恵まれとうございます」 「病身の母がどうか回復いたしますよう」 「縁結びをどうかひとつ」 ナドと、好き勝手なことを口々に申しますが。 弁西は嫌がる気色は微塵も見せず。 そのすべてを漏らさず書き留めてやり。 一つ一つを民に代わって丁寧に。 御仏(みほとけ)へ奏上いたします。 中には己のかつて犯した罪業の。 お目こぼしを求めに来る輩もある。 「実はむかし、朋輩を手に掛けたことがございます」 「隣の家の倅を人買いに売り渡しました」 「米蔵に盗みに入ったのは私でございます

    仏教説話の怖い話より 「朽ちても朽ちぬ赤い花」 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2018/12/20
    「日本霊異記」より
  • 落語の怖い話より「藁人形」 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 江戸四宿の一、奥州街道は千住の宿。 ここは小塚原(こづかっぱら)の刑場に近いためか。 はてまた、掘れば罪人の骨(こつ)が出るためか。 一名を「コツ」ト申しますナ。 さて、このコツに立ち並ぶ女郎屋を。 一軒一軒拝んで歩く坊主がひとり。 名を西念ト申す願人坊主(がんにんぼうず)。 千住いろは長屋、への九番に住むトいう。 良く言えば坊主でございますが。 有り体に申せば乞も同然で。 念仏の真似事をして、人様から施しを受けている。 朝は一番に観音様へお参りをし。 それから日暮れまで江戸中をもらって回る。 実に熱心なおもらいでございます。 そして、軒下に立つ西念のその姿を。 二階の手摺から見下ろしている。 美しくも、はかなげな人影がひとつ。 これは女郎屋若松の板頭(いたがしら)。 つまりこの店一番の人気女郎で。 年の頃なら二十二、三。 名をお熊ト申す、稀代の美人でございます。

    落語の怖い話より「藁人形」 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2018/05/20
    落語「藁人形」より
  • 苺の六郎、雪の十二郎 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 甲斐国は身延のあたりの山あいに。 母ひとり娘ふたりの女所帯がございました。 父は五年前に亡くなりまして。 母は元々その後添えでございました。 妹娘のお君は今の母の子でございますが。 姉娘のお雪はト申しますト。 これは死んだ前の母が産んだ子でございまして。 世の中に継母と継子の仲ほど面倒なものはございません。 誰しも腹を痛めて産んだ子が可愛いものでございましょう。 前の女が産んだ子など、まるで仇も同然で。 しかも、その父親はもうこの世におりませんので。 「お雪。お前はどうしてそんなにのろいんだよッ。一体、誰に似たんだろうね」 ト、おっかあは何かにつけて姉のお雪を責めますが。 実のところ、真にのろいのは妹のお君のほうでございます。 「おっかあ」 「何だい。お君」 「あたい、苺がべたい」 時は十二月。 外は一面の雪景色。 苺は六月に実をつける。 夏の水菓子でございます。

    苺の六郎、雪の十二郎 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2018/04/13
    山梨の民話より
  • 江戸怪談より 「金弥と銀弥」 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 さる国の城の奥御殿に。 侍女が二人おりまして。 名を金弥(きんや)に銀弥(ぎんや)ト申しましたが。 容姿は世にも愛らしく。 仲はト言えば睦まじく。 起き伏し常にともにあり。 いずれ菖蒲(あやめ)か杜若(かきつばた)で。 「銀弥さん」 「はい、金弥さん」 ふっくらト白いもち肌に。 緑の髪を肩まで下げ。 紅い唇をすぼませながら。 「お花が咲いておりますねえ」 「当。きれいに咲いておりますねえ」 ナドト微笑み合う様は。 まるでメジロの姉妹のようで。 十六の娘盛りではございますが。 あどけなさはほんの童女のよう。 二人の零れんばかりの愛嬌に。 主君も深く慈しんでおりましたが。 ある時のことでございます。 金弥がふとした風邪心地から。 ひどく患いつきまして。 遠く離れた父母の家に。 しばし里帰りトなりました。 ところが、それから待てど暮らせど。 一向に金弥の消息がございませ

    江戸怪談より 「金弥と銀弥」 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2018/03/25
    鈴木桃野「反古のうらがき」より
  • 九十九の指と一つの首 指鬘外道 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 天竺の話でございます。 舎衛国(しゃえいこく)に、さる高名な婆羅門(バラモン)がおりました。 婆羅門ト申すは、かの国古来の祭祀者でございまして。 かの国では人は生まれながらに四つの階層に分かれておりますが。 その最上位が、この婆羅門と呼ばれる者たちでございます。 王侯貴族でさえ、その下位に甘んじているトいう。 もっとも、釈尊は婆羅門ナドどこ吹く風でございましたので。 仏家ではこれを外道(げどう)ト称します。 この高名な婆羅門は、三経に通じ五典を究めた人物で。 国の政事から種々様々な学問に至るまで。 この者に学ぶ者は実に五百人を数えておりました。 さて、この婆羅門には寵愛する優れた弟子がおりまして。 一名を鴦掘摩(おうくつま)ト申しましたが。 かの国の言葉では「アングリマーラ」ト発します。 何だか、ボンヤリと間の抜けたような名前でございますが。 その意味するところは「

    九十九の指と一つの首 指鬘外道 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2018/03/18
    仏典「仏説鴦掘摩経」より。
  • 荘園の森の艶やかな童女 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 唐の国の話でございます。 只今では節分の日になりますト。 豆を撒いて鬼を追い払ったりナド致します。 ところで、この風俗の大元はト申しますト。 「追儺(ついな)」ト申す新年の宮中儀礼で。 古くに唐土から伝わったのだそうでございます。 この時、鬼を追い払う役を「方相氏(ほうそうし)」トカ申します。 熊の毛皮を頭から被り。 四つの目玉のある仮面を着け。 黒い衣に、朱い裳を履き。 手には矛と盾とを握りしめている。 威容を持って鬼を追い払おうト申すのでしょうが。 ――これでは、どちらが鬼だか分かりませんナ。 事実、我々が今日思い浮かべる鬼の姿は。 この方相氏が元になっているトカ申します。 さて、お話は唐の開成年間のこと。 洛陽に盧涵(ろかん)ト申す者がございまして。 この者は年は若く、見目麗しく。 おまけに財力にも恵まれている。 実にイヤらしい男でございます。 金と暇とを持て

    荘園の森の艶やかな童女 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2018/02/22
    唐代小説「伝奇」より
  • 江戸怪談より 「白い乳房に憑いたもの」 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 大和国のトある商家に。 尼僧がひとり立ち寄りまして。 一夜の宿を求めました。 そればかりなら何の事はない。 誰も妙には思いますまいが。 この尼がただならぬト申しますのは。 あまりに若く美しかったからで。 白い頭巾から覗くその美貌。 年の頃なら十八、九。 のような頬にうっすらト紅が差し。 墨衣に包まれた姿態も妙にしなやかで。 「それはもちろん構いませんがな」 ト、主人が舐めるようにその容姿を見下ろす脇から。 「お前様のような別嬪がどうして尼に」 ト、お内儀(かみ)が割って入りました。 「それでは、お話いたしましょうから、家の方々を集めてくださいませ」 尼僧がこう申し出ましたので。 家内は無論、隣近所からも人が詰めかける。 にわかに法話の席が設けられました――。 尼は俗名をお雪ト申します。 まだあどけない童女であった時に。 二親に立て続けに死なれまして。 幼いながら天

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    onboumaru 2018/01/29
    「耳嚢」より
  • 子殺し幻術 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 唐の国の話でございます。 唐の咸通年間のこと。 トある城下の、トある巷間に。 幻術使いが一人現れまして。 童子一人の手を引いておりましたが。 どうして、これが幻術使いと知れたかト申しますト。 「さあ、お立ち会い、お立ち会い。これから世にも不思議な幻術をお目にかけましょう。寄ってらっしゃい、見てらっしゃい――」 ト、みずから吹聴して歩いておりますから。 ナルホド、こいつは幻術使いだなト。 巷の人々にも知れたので。 まるで西域人みたような。 栗色の巻き毛に獣皮の帽子。 見るからに胡乱な男でございます。 ただし漢語は何故だか流暢で。 子どもたちは、二人の後をはしゃいでついていく。 大人たちも冷やかしに、後を追っていきますト。 トある広場に差し掛かるや、幻術使いは立ち止まった。 手を引かれてきた童子もまた、立ち止まる。 年の頃なら十歳ばかり。 まだあどけない童子でございます

    子殺し幻術 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2018/01/09
    「中朝故事」より
  • 江戸怪談より 「暗峠 姥の首の火」 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 河内国は暗峠(くらがりとうげ)。 峠を越えたその麓の村。 平岡の里ト申す地に。 娘が一人おりまして。 山家の花じゃ、今小町じゃト。 土地の小唄に謡われるほどに。 器量良しで知られておりましたが。 山の神は女だト。 山国ではよく申します。 娘のあまりの美しさト。 男たちからの評判に。 神も妬みましたかどうか。 乃至は「二物を与えず」か。 この美しい娘の生涯は。 それは哀れなものでございました。 年十六の娘盛り。 数多の男が娘を巡り。 互いに争い合う中で。 村のトある若い衆が。 娘をついに射止めました。 新郎新婦が盃を交わす。 袖にされた男たちは口惜しさに。 横目でやけ酒をあおっては。 慰めあっておりましたが。 ナント、この幸せ者の新郎が。 ひと月ト待たずに死んでしまった。 するト、慰めあっていた男たちが。 再び仇同士ト相成りまして。 娘を巡って争い合う。 そうして、ま

    江戸怪談より 「暗峠 姥の首の火」 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2017/12/22
    井原西鶴「西鶴諸国ばなし」より
  • 吹雪の夜 一つ褥の妖かし話 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 清国の話でございます。 かの国の都、北京は金魚胡同ト申す路地裏に。 徐四ト申す男が暮らしておりまして。 この者の家は赤貧洗うが如しでございます。 兄と兄嫁、徐四の三人が、狭い家に肩寄せあっておりましたが。 五倫の道にやかましいお国柄とは言いながら。 男二人に女一人がおしくらまんじゅうをしているのも同然で。 いくら義姉弟トハ申せども、そこは男と女でございます。 年来、徐四は兄嫁に禁断の恋心を抱き続けておりました。 この兄嫁は年は二十二。 郊外の百姓家から嫁いできたのが七年前で。 切れ長の涼し気な目に、鼻筋がスッと通っている。 色白の美人でございます。 対する徐四は年は二十。 童顔でおとなしい若者でございまして。 粗暴な兄とは見かけも中身も正反対という。 それはそれで釣り合いが取れてはおりましたが。 気性の荒い兄が兄嫁に手をあげるたび。 徐四は兄を制しては、ひとり胸を痛

    吹雪の夜 一つ褥の妖かし話 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2017/09/17
    清代の志怪小説「子不語」より
  • 丸山遊郭 猫の食いさし | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 肥州長崎は唐船着岸の津にございます。 綾羅錦繍の織物に金銀の糸、薬種にその他もろもろの品。 種々の珍貨が絶えることなく我が朝へ入ってくる。 その玄関口でございまして。 日六十余州のあきんどが当地へ来たりて商売をする。 その賑わいぶりは、難波を凌ぎ京にも劣らずト称されるほど。 かの地には丸山ト申す遊郭がございますナ。 唐人、紅毛人の気を引こうト、着飾った女郎たちがひしめいている。 いにしえの江口、神崎ナドもかくやト思わせる華やかさで。 もっとも、光が差せば影が従い、陽気が興れば陰気が篭もります。 裏路地へ一歩踏み入るト、表のきらびやかさトハもう別世界。 揚荷抜きの小悪党、行き場を失った年増女郎。 いはぐれたドラに、汚物にまみれたドブネズミ。 夜ともなれば、魑魅魍魎が跋扈するとかしないとか。 さて、この丸山遊郭の一角に、枡屋ト申す女郎屋がございまして。 ここに左馬

    丸山遊郭 猫の食いさし | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2017/09/10
    「新御伽婢子」より
  • 民話の怖い話より 「餓鬼憑き ヤビツ峠の落武者と霊」 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 長きに渡った戦国の世の、覇者は誰かト問われますト。 それは一も二もなく、徳川様ではございますが。 我々関東者にとりまして、戦国の雄はト申しますト。 それは一も二もなく、相模の北条家でございます。 その北条を最後に滅ぼしたのは、かの太閤秀吉公でございますが。 最も苦しめたのは誰かトなりますト、やはり甲斐の武田でございましょうナ。 城下町まで曲輪(くるわ)でそっくり取り囲んだ総構えは。 北条の居館、小田原城の誇りでございまして。 豊臣の大坂城に先んじ、また遥かに凌いだト申しますが。 これも元はといえば、武田の激しい攻撃に耐えるため。 武田の小田原城攻めを契機に、普請が始まったト申します。 この時、小田原に侵攻した武田の軍でございますが。 三日間だけ城を包囲するト、甲斐へ向けて退却していきました。 これを時の当主氏康の子、氏照と氏邦が待ち伏せ、迎え撃ちまして。 ここに両家

    民話の怖い話より 「餓鬼憑き ヤビツ峠の落武者と霊」 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2017/08/27
    三増峠合戦にまつわる神奈川の伝説より
  • 五色の鹿 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 平安の昔の話でございます。 信濃の国の山あいに。 猟師がひとり住まっておりまして。 この者はすこぶる変わり者でございます。 世の人々と交わろうトいたしません。 人嫌いかト申すトそうではない。 浮世を疎んでいるわけでもない。 ただ、生来の無口にかまけているうちに。 年経てしまったのがそもそもの始まりで。 朝は早くから山へ入り。 猪や鹿を待ち伏せますが。 そう常に獲物にありつけるわけではございません。 手ぶらで山を降りる日が続きますト。 律儀に毎夕、家へト帰っていくことが。 徐々に馬鹿馬鹿しくもなりまして。 どうせ、親類縁者もございません。 近所に住む者も多くはない。 親しい者ナドもとよりない。 麓にあった住処は年々山奥へ移っていく。 山に起き伏しし。 山を彷徨い。 獣を追い求め。 獣に焦がれる日々でございます。 こうして、三十路を越した時分には。 すっかり世捨て人のご

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    onboumaru 2017/08/20
    「宇治拾遺物語」より
  • 波の白雪 名刀捨丸の由来 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 羽州米沢の領主上杉家に、古刀が一振りございまして。 その名を「波の白雪」、又の名を「捨丸(すてまる)」ト申しますが。 持ち主の心映えを映す鏡トモいう、至極の名刀でございます。 かつて上杉家にてお家騒動が起きた際は。 刀身が赤く染まったトモ申します。 妖刀ト申すべきかもしれませんナ。 さて、木曽山中、切岸(きりぎし)の在に。 治兵衛ト申す百姓がございまして。 この者に年の離れた二人の倅がございました。 兄は治太郎、弟は治三郎。 兄の治太郎は幼いころから勝手気まま。 おまけに手癖が悪いときております。 十六の年に勘当されて村を出ていきまして。 それっきり行方知れずでございます。 一方の治三郎は、これはまじめで働き者でございます。 父母に孝養を尽くし、近所の人にも愛想がいい。 かてて加えて眉目秀麗の美男子ときておりますので。 誰からも好かれ、二親も大層自慢にしておりました

    波の白雪 名刀捨丸の由来 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2017/07/17
    講談「名刀捨丸の由来」より。
  • 猫塚鼠塚 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 森森たる木曽の山道、その夕暮れの景。 三十がらみの無口な猟師が一人。 その担え銃にぶら下がるように後を追う童が一人。 そして、その胸に抱かれた三毛が一匹。 二人の親子と一匹のが。 黙って山を下っておりましたが。 「父ちゃん」 「何だ」 「三毛が眠ったようだよ」 「飯をって眠くなったんだろう」 「おら、腹が減った」 「待っていろ。そのうち里に出るはずだ」 が黙っていたのは眠気のため。 親子の場合は疲れと空腹のためでございました。 やがて父の言葉通り、里が見えてくる。 ト、親子の者を見かけて、こちらへ声を掛けてきた村人がある。 「旅のお方かね」 「いや、山向こうの村の者だ」 「へえ。それがどうして」 「獲物を追っていて、日が暮れた。子連れで帰るには遅いから、宿を借りたい」 「それなら、お堂へ泊まるが良い。村の者で夜具やい物を持ち寄ってやるから」 愛想の良さとは

    猫塚鼠塚 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2017/07/08
    岐阜の民話より
  • 夜ごと女の首が飛ぶ 飛頭蛮 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 唐土(もろこし)の話でございます。 秦のころ、南方蛮地に落頭民ト申す異族がおりまして。 なんと首から上がひゅるひゅるトよく飛んだト申します。 この者たちの祭というのがまた凄まじい。 互いに首の飛ばしあいっこをして、ケラケラ笑っていたという。 その一部が飛びすぎて、海を越え我が日のまで飛び来たり。 ろくろっ首の先祖になったとかならなかったとか。 ――あまり当てにはなりませんナ。 ともあれ、秦の滅亡後。 この者たちも永らく忘れ去られておりました。 それから時代は降りまして。 時は三国鼎立の世でございます。 呉に朱桓(しゅかん)ト申す猛将がございまして。 孫権の側近として重んじられておりましたが。 この者がある時、下女をひとり、屋敷に置きました。 この下女というのがすこぶる愛嬌のある女で。 朱桓が通りかかると、上目遣いにニコッと笑う。 かと言ってそれが媚を売る風でもあり

    夜ごと女の首が飛ぶ 飛頭蛮 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
  • 吉田御殿 千姫乱行 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 番町皿屋敷ト申しますト。 これはもう、芝居の方で大変に名が知られておりますが。 あの皿を一枚、二枚――ト数えるくだりは。 実はある種の洒落でございます。 ト申しますのも、あれは元々「皿屋敷」ではない。 「更屋敷」ト書くのが当でございまして。 では、何故「更屋敷」が正しいのかト申しますに。 ここに、ひとつ恐ろしい由来が伝わっている。 時は元和元年五月七日。 大阪城は徳川方に攻め入られ。 今しも落城せんとしております。 茶臼山にて戦況を見守っていた家康公は。 城から火の手が上がるのを目にされまして。 「誰かある」 「ハッ――」 「城中へ忍び入り、千姫を救い出して参れ。厚き褒美を取らせるぞ」 「ハッ――」 千姫は言わずと知れた豊臣秀頼公の御簾中。 家康公には可愛い孫娘にございます。 ここで無事、姫を救出してくれば、これほどの勲功もございません。 ところが、敵陣はすでに火

    吉田御殿 千姫乱行 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2017/04/04
    講談「番町皿屋敷」より