菅総理は「増税による成長」を掲げ、先に行われた参議院選挙の際には消費税率の引き上げに前向きの姿勢を見せていた。増税しても医療、介護といった分野に政府支出を集中させれば、経済成長に結び付くというのが菅総理の持論だという。筆者は「増税して政府支出を増やす」という考えには反対だが、全くの暴論だと頭から否定するのは問題だと思う。 成長戦略と言えば、通常は潜在成長率を高めること、つまりは設備投資や技術の進歩によって生産力を高めるという供給面の対応を意味する。全くの暴論だという言い方は、長期的には潜在成長率が経済成長を決めている、つまり需要不足は短期の問題だという、短期と長期の二分法に基づく考え方から発している。 しかし、現在の日本経済は供給力が需要を大きく上回っており、GDPギャップはGDPの5%程度もある。供給力を高めても需要不足で生産能力を発揮できない状態にあり、いかにして安定した需要を作り出す
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