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ブックマーク / www.tachibana-akira.com (38)

  • ヨハネスブルグは”未来社会” 週刊プレイボーイ連載(179) – 橘玲 公式BLOG

    昨年末に南アフリカのヨハネスブルグを訪れました。ここは「世界一危険な都市」として知られていますが、実際には一般の旅行者がトラブルに巻き込まれることはほとんどありません。これは治安がよくなったからではなく、(黒人以外の)旅行者が行動できる範囲がきわめて限定されているためです。 ヨハネスブルグで宿泊できるホテルは、実質的にはサントンとローズバンクという郊外の高級住宅地にしかありません。空港で客待ちしているタクシーも危険とされているので、あらかじめ送迎を手配しておきます。東京に例えるなら、羽田空港に着いたら迎えの車で田園調布か自由が丘に行き、都心にはいっさい近づけないという異常な状況です。 高級住宅地には六木ヒルズのような大型商業施設があり、民間警備会社のセキュリティガードが頻繁に巡回していてきわめて安全です。その周辺も昼間はふつうに歩けますが、夜になると人通りはもちろん車もほとんど走らなくな

  • ジコチューには集団的自衛権はわからない 週刊プレイボーイ連載(175) – 橘玲 公式BLOG

    ひとは誰でも、自分が世界の中心にいると思っています。映画小説で「世界の終わり」が繰り返し描かれるのは、自分が死ねばこの世界もいっしょに消えてしまうからです。この臨場感は圧倒的なので、世の中にジコチューばかりが溢れるのは仕方のないことです。 自分のことだけでなく、「国家」を語るときにも私たちは無意識のうちにジコチューになっています。集団的自衛権をめぐる議論が不毛なのは、「日戦争に巻き込まれる」とか、「沖縄の米軍基地がなければ日は守れない」とか、常に自分(日)のことしか考えていないからです。 第二次世界大戦がヒロシマ、ナガサキへの原爆投下という悲劇で幕を閉じたあと、大量の核兵器を保有する大国同士は戦争できなくなりました。植民地主義が全否定されて以降、あらゆる地域紛争は「防衛」の名の下で行なわれています。これは人類史的なパラダイム転換で、それを無視して「戦前の雰囲気に似てきた」との印象

  • アメリカの反人種差別デモに白人はなぜいないのか 週刊プレイボーイ連載(163) – 橘玲 公式BLOG

    アメリカ中西部ミズーリ州セントルイス近郊で18歳の黒人青年が白人警察官に射殺された事件で、現場では激しい抗議デモが続きました。黒人青年が撃たれた際に両手を上げていた、という目撃証言があったからです。 この事件は、アメリカがまだ人種差別を乗り越えられないことを世界に示しましたが、その一方でデモ隊の行動に違和感を覚えたひともいるでしょう。一部の参加者がスーパーなどへの略奪を繰り返したからです。 この事件を白人はどう見ているのでしょうか。ここでは歴史認識の問題と比較して考えてみましょう。 アメリカの人種差別は奴隷制に始まります。奴隷は近代社会では人権に対する絶対悪とされており、経済的な利益を求めてアフリカから奴隷を輸入した白人が加害者で、自らの意思に反してアメリカに“強制連行”された黒人が被害者であることは明白です。この歴史認識(加害/被害関係)を否定すると、アメリカ社会では生きていけません。

    アメリカの反人種差別デモに白人はなぜいないのか 週刊プレイボーイ連載(163) – 橘玲 公式BLOG
  • フクシマの悲劇を正しく語り継ぐのは難しい 週刊プレイボーイ連載(139) – 橘玲 公式BLOG

    足元にある深いプールの底に四角い影が漂っています。まわりでは全面マスクに白の防護服を着た作業員が忙しく立ち働いています。ここは福島第一原発4号機で、私が眺めていたのは使用済核燃料を納めたラックでした。プールには1500体を超える大量の使用済核燃料が保管されていて、現在、その移送作業が行なわれているのです。 2011年3月11日の東日大震災で巨大な津波が原発を襲い、運転中だった1号機、2号機、3号機が電源機能を喪失、次々とメルトダウンを起こします。その間、定期点検で原子炉が稼動していなかった4号機のことは誰も気にしていませんでしたが、3月15日の朝に突然、壁の一部が崩落して火災が起きていることが発覚します。 この火災について米国の専門家が、地震によって燃料プールが破壊され、使用済核燃料が露出して崩壊熱を発しているのだと主張しました。1500体もの核燃料が一挙に崩壊すれば膨大な放射性物質が飛

    フクシマの悲劇を正しく語り継ぐのは難しい 週刊プレイボーイ連載(139) – 橘玲 公式BLOG
  • 若者言葉はなぜ体育会化するのか?  週刊プレイボーイ連載(133) – 橘玲 公式BLOG

    「近頃の若い者は……」と説教するオヤジにはなりたくないのですが、それでも気になるのは「ありがとうございます」の多用です。近頃の若者は職場やバイト先で、上司からなにかいわれるたびに「ありがとうございます」とこたえているようです。 「そこはEXCELの集計機能を使えばいいよ」 「ありがとうございます」 「明日は早いから今日はこれで終わりにしましょう」 「ありがとうございます」 いずれも間違いとはいえませんが、もっとシンプルな返答があります。私たちの世代は(という言い方をしてしまいますが)、最初の例では「わかりました」、2番目の例では「そうですね」とこたえて、「ありがとうございます」とはいわなかったでしょう。 言葉は時代とともに変化しますが、「ありがとうございます」が若者のあいだでインフレ化するのは何を意味しているのでしょうか。 私がこの用法に違和感を持つのは、それが明らかに体育会言葉だからです

    若者言葉はなぜ体育会化するのか?  週刊プレイボーイ連載(133) – 橘玲 公式BLOG
  • 第37回 シンガポールの芝は青く見える(橘玲の世界は損得勘定) – 橘玲 公式BLOG

    シンガポールに注目が集まっている。日富裕層やベンチャー起業家たちが、続々とこの小さな国を目指しているのだという。一人あたりGDPが日を抜いてアジアでもっともゆたかになったことで、「シンガポールを見習うべきだ」という論調もしばしば目にする。 シンガポールの大胆な経済政策には参考になるものも多いが、どう頑張っても日はシンガポールにはなれない。国としての条件があまりにも違いすぎるからだ。 シンガポールは香港と並ぶアジアのタックスヘイヴンとして、グローバル金融機関の誘致に成功した。それを可能にしたのは、国内に主要産業がなく、税率の引き下げで失うものよりも、海外からの資移転で得るものの方が大きいからだ。欧米や日のような大規模で複雑な経済ではそうはいかない。 金融はITと並ぶ知識産業で、製造業やサービス業より賃金がずっと高い。金融が主要産業になれば高収入のひとが集まってくるから、一人あたり

  • マリファナも売春も合法化が進んでいる 週刊プレイボーイ連載(124) – 橘玲 公式BLOG

    アムステルダムに泊まったとき、部屋に置いてあった観光客向けのガイドブックに仰天したことがあります。そこは一流ホテルだったにもかかわらず、ガイドブックには「売春の仕方」や「マリファナの買い方」が載っていたからです。 よく知られているように、オランダでは売春とマリファナが合法化されています。 マリファナはコーヒーショップと呼ばれる専門店で購入でき、ヨーロッパじゅうから度胸試しの若者たちが集まってきます。とはいえマリファナの栽培や製造・販売がすべて合法化されているわけではなく、治安の悪化を懸念する声もあって試行錯誤が続いているようです(アメリカでも医療用大麻の合法化は進んでいますが、娯楽としての使用については意見が割れています)。 それに対して売春は世界的に合法化されつつあり、ドイツ、オランダ、デンマーク、ベルギー、スイス、オーストリアなどでは売春斡旋業(置屋)も認可制です。 売春合法化は女性の

  • そもそもメニューを信じる方がおかしい 週刊プレイボーイ連載(123) – 橘玲 公式BLOG

    材偽装問題で阪急阪神ホテルズの社長が辞任を表明しました。当初は勘違いによる誤表示と説明していたものの、再調査によって従業員が虚偽表示と認識していたケースが見つかったのが理由です。 トビコ(トビオウの卵)をレッドキャビア(マスの卵)、体長200ミリを超えるバナメイエビを150ミリほどの芝エビと表示するなど、当初から「プロの料理人が間違えるはずはない」との疑問の声が出ていました。ホテル側の再調査は、材の偽装表示が確信犯であったことを示しています。 この問題を受けて、ホテル側はメニューを正しい表示に変更しました。「鮮魚と六甲山ホテル自家製菜園野菜の天婦羅」が「海の幸と季節の野菜の天婦羅」に変わり、レトワール風オードブル ホテル菜園の無農薬サラダを添えて」がたんなる「レトワール風オードブル」になったのは、一部の魚が冷凍もので、菜園の野菜だけでは間に合わないときに市販のものを使用していたからだそ

  • プレゼンでは大事なことは決められない 週刊プレイボーイ連載(117) – 橘玲 公式BLOG

    2020年の夏季オリンピック開催地が東京に決まり日じゅうが沸いていますが、ここで注目されたのがIOC委員会での最終プレゼンテーションです。とりわけパラリンピック走り幅跳びのアジア記録保持者で、東日大震災の被災者でもある佐藤真海さんのスピーチがIOC委員のこころを大きく動かしました。 「プレゼン」という言葉がテレビのワイドショーで繰り返されたのは、おそらく前代未聞のことでしょう。なぜならこれまで、日の社会にはプレゼンなど必要ないとされてきたからです。 サラリーマンなら誰でも知っていますが、日の会議にはそもそも議論というものがありませんでした。根回しによってあらかじめ結論は決められており、会議とはそれを各部門の責任者が了承する儀式だからです。この根回しを組織の外に拡張したのが談合で、公共事業の入札では、各社が見積もりを出す前に落札先が決められていました。 根回しや談合でないと意思決定で

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  • ネオリベは「歴史認識」を語れない 週刊プレイボーイ連載(101) – 橘玲 公式BLOG

    橋下徹大阪市長が戦時中の旧日軍慰安婦を「必要だった」と述べ、沖縄県の米軍普天間基地の司令官に風俗業の活用を提言したことが国際的な波紋を拡げています。 慰安婦問題は日韓の歴史認識でもっともセンシティブな話題で、それを沖縄の米軍基地問題と絡めて論じたことで、アメリカの大手メディアにまで「性奴隷(セックススレイブ)を容認した」と報じられる有様です。橋下市長の真意がどうであれ、「奴隷は必要だった」と述べたと見なされれば、政治家として国際社会に居場所はありません。 弁護士出身の橋下市長は、Twitterを駆使してあらゆる批判に論駁することで人気を集めてきました。それなのになぜこんな事態になってしまったのでしょう。 橋下市長と日維新の会は、石原慎太郎前東京都知事の「太陽の党」と合併する以前は、「ネオリベ(新自由主義)」と呼ばれる政治思想で一貫していました。 ネオリベとはいったい何でしょうか? 第二

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  • 橋下市長は反論の相手を間違えているのではないだろうか? – 橘玲 公式BLOG

    この問題については、正直、あまり首を突っ込みたくないのだが、どうしても気になるのでひと言だけ。 橋下大阪市長は慰安婦問題について、Twitterや囲み取材で日のメディアを批判しているが、海外メディアでの報じられ方はその比ではない。 Japanese politician calls wartime sex slaves ‘necessary’ CNN Osaka mayor says wartime sex slaves were needed to ‘maintain discipline’ in Japanese military Washington Post(AP) “Sex Slave(性奴隷)”を「必要」だと容認するのではRacistと同じになってしまう。これこそ“誤報”なのだから、橋下市長はCNNにインタビュー取材を申し入れて真意を説明し、Washington Postに反

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  • 大惨事が生み出す“見えない”二次災害 週刊プレイボーイ連載(97) – 橘玲 公式BLOG

    アメリカ3大市民マラソンのひとつボストンマラソンで爆発事件が起き、沿道で父親を応援していた8歳の男の子を含む3人が死亡し、140人以上がケガをしました。中国では上海を中心に鳥インフルエンザの拡大が止まらず、すでに16人が死亡し、ヒトからヒトへの感染も疑われています。 私たちは無意識のうちに、今日と同じ平穏な日々がこれからも続くと思っています。だからこそ、その“常識”を覆すような特別な出来事にとても敏感です。 これは、ヒトが長い進化の過程で生き延びるための必須の能力でした。しかしその結果、私たちはある特定のリスクだけを過大に評価するようになりました。 もちろん、爆弾テロや鳥インフルを些細な出来事だといっているわけではありません。しかし、マスメディアがテロや感染症の恐怖をあまりにも言い立てると、深刻な二次災害を引き起こすことが知られています。 2001年の9.11同時多発テロは、イスラム過激派

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  • 【書評】日本の景気は賃金が決める – 橘玲 公式BLOG

    エコノミストの吉佳生氏は、スタバの価格から世界経済まで、あらゆる経済現象をわかりやすく解説することで人気がある。だがいちばんの魅力は、経済統計などの基礎データを徹底的に読み込んで、そこから思いもよらない結論を導き出す手際の鮮やさだ。 『日経済の奇妙な常識』はそうした特徴がよく出た一冊で、あまりに驚いたので「日銀の金融緩和がデフレ不況を生み出した」で紹介した。新刊『日の景気は賃金が決める』はその続編というか、「アベノミクス版」だ。 最近になってようやく経済メディアでも話題にされるようになったが、吉氏は前著で、「日の不況の質は賃金デフレだ」ということをいち早く指摘している。投機マネーによる資源価格の高騰で輸入物価が大きく上昇したものの、中小企業はそれを価格に転嫁できず、従業員の賃金を減らして生き残ろうとしたのだ。 その結果なにが起きたかを、このではさまざまな国際比較によって明解に

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  • 「自分にやさしく相手に厳しい」の失敗 週刊プレイボーイ連載(92) – 橘玲 公式BLOG

    アベノミクスによる株価の大幅な上昇を追い風に、安倍政権が高い支持率を維持しています。それとは対照的に、かつて政権を担った民主党の惨状は目を覆わんばかりです。 先日も、前復興大臣が7月の参議院選挙を見据えて民主党を離党しました。現職の閣僚が次々と落選した総選挙を見て、このままでは再選は困難だと判断したのでしょう。 参議院は任期が6年で解散もないので、いちど落選するとよくても3年、同じ選挙区に改選期の異なる同僚議員がいれば6年の浪人生活を覚悟しなければなりません。人生の残り時間が有限であることを考えれば、再選のためになりふり構わなくなるのも当たり前です。 私は政治にはさして関心はないのですが、たまたま知り合いが政治家になったので、2009年夏の政権交代直後の民主党のパーティを覗きにいったことがあります。当時、鳩山政権の支持率は70%を超えていて、事業仕分けが国民的な注目を集めていました。次々と

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  • 選択肢が多すぎると選択できなくなる不幸 週刊プレイボーイ連載(93) – 橘玲 公式BLOG

    その若者は、モデルのような容姿で、誰もがうらやむ一流企業に勤め、順風満帆の人生を送っているようにみえました。しかし彼には、ひとつ深刻な悩みがありました。あまりにもモテすぎるのです。 その会社では、新規事業として、若い女性をターゲットにしたコスメの開発にちからを入れていました。部員も社外スタッフもほぼ全員が20代の女性で、短期間で業界でも注目されるほどの成功を収めてきました。 その会社は、女性だけの部署はお互いが足を引っ張り合ってうまく機能しないというマネジメント理論を信奉しており、唯一の男性は40代前半の課長でした。女性差別のような気がしないでもありませんが、この人事は、「女同士でトップの座を争わなくてもいいから気が楽だ」との理由で、女性部員からも暗黙の支持を得ていました。その当否はともかくとして、現実にビジネスがうまく回っている以上、それを変える理由は会社にはありません。 ところがこの課

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  • 「富裕層増税」は道徳的に正当化できるのか? – 橘玲 公式BLOG

    『週刊東洋経済』2013年3月16日号に掲載された「資産フライトを狙い撃ち 富裕層“日脱出”に苦心」を編集部の許可を得て掲載します(雑誌掲載時とは若干異なっていますが、こちらがオリジナルです)。 ************************************************************************ 2014年からの消費税引き上げに先行して、所得税と相続税の「富裕層増税」が決まった。 民主政治質はポピュリズムなので、“金持ち”バッシングは常に大衆受けのする政策として人気がある。これは日だけではなく、フランスでは新自由主義的な改革を批判して新大統領になった社会党のオランドが、年収100万ユーロ(約1億2000万円)を超える個人の所得税率を40%から75%へと大幅に引き上げようとしている。 増税に反発した富裕層は、高級ブランドを展開するモエヘネシ

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  • 『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』発売のお知らせ – 橘玲 公式BLOG

    こんにちは。 新刊『日の国家破産に備える資産防衛マニュアル』がダイヤモンド社より発売されます。 Amazonではまだ予約受付中ですが、日中に「発送可」になると思います。都内の大手書店には明日から並びはじめます。 私のとしては珍しくベタなタイトルになりましたが、これは所謂「国家破産」ではありません。これまで繰り返し述べてきたように、複雑系の世界では誰も未来を予想できないからです。 事実として明らかなのは、これから日が「際限のない金融緩和」という未体験の金融政策に乗り出すことと、安倍政権と日銀が「2年で結果を出す」と国民に約束したことです。 このでは、標準的な資産運用理論(すなわち常識)でアベノミクスを考えれば、どのような金融商品で将来の経済的なリスクをヘッジすべきか、かなり明快にこたえられることを示しています。 リフレ政策が正しいかどうかは経済学者にとっては大問題かもしれませんが

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  • “ネオリベ化する福祉国家”オランダから日本の未来が見えてくる – 橘玲 公式BLOG

    『マネーポスト』の2013年新春号に書いた記事を、編集部の許可を得て転載します。日ではあまり馴染みのないオランダの政界の話ですが、非常に示唆的です。 なお、文でも述べていますが、この記事の元ネタは水島治郎氏の『反転する福祉国家 オランダモデルの光と影』で、これはヨーロッパの政治状況を考えるうえでの必読書です。 ************************************************************************ 今回は、オランダの政治について書こうと思う。 おそらく、この一行だけで読む気をなくしたひともいるだろう。でもこれは日でいま起きていることを知るうえでたいへん興味深い話なので、しばしおつき合い願いたい。 オランダは、売春とマリファナを合法化した国として有名だ。アムステルダムのホテルに泊まると、各部屋に観光協会の小冊子が置いてあって、そこ

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  • そしてみんなネオリベになった 週刊プレイボーイ連載(82) – 橘玲 公式BLOG

    2012年は民主党から自民党への政権交代で幕を閉じ、安倍政権への期待から株価は大きく上げて新しい年が始まりました。とはいえ、経済ばかりでなく外交や安全保障など問題は山積しており、波乱を予感させる年明けです。 今回の選挙の際立った特徴は、投票率が59.32%と戦後最低を更新する低さだったことです。第一党となった自民党の比例での得票率は27.62%ですから、「投票しない」という意思表示をしたひとはその1.5倍もいたことになります。 経済学では、人間が完全に合理的であれば選挙などに行くわけがない、と考えます。国政選挙では自分の1票が候補者の当落に与える影響力はほとんどゼロですから、貴重な休日にわざわざ投票所まで出かけていく費用対効果もゼロで、投票率は業界団体や宗教団体など、投票の動機が明快なひとの数で決まることになります。 実際には、投票率はこのシニカルな仮説をはるかに超えていて、「ひとは常に経

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  • ジコチューはどこで失敗するのか? 週刊プレイボーイ連載(76) – 橘玲 公式BLOG

    田中真紀子文部科学相が、秋田公立美術大学など3大学の新設を不認可と判断し、批判を受けると一転して「不認可処分はしていない」と強弁して来年春の開設を許可しました。記者団に対して「今回(の騒動が)逆にいい宣伝になって4、5年間はブームになるかもしれない」と述べ、野党から問責を突きつけられてようやく謝罪するという傲慢さです。 独断でものごとを決め、ひとの意見に耳を貸さず、自分の失敗を反省せず、部下に責任を押しつける……ここには、ジコチューな人間のイヤな面がすべて出ています。 ひとは多かれ少なかれ、世界が自分を中心に動いていると錯覚しています。田中文科相には田中角栄の娘としての強烈な自負があり、権力とは相手をちからでもって従わせることだと思っているのでしょう(たぶん)。ジコチューばかりが集まった国会ですら煙たがられるのですから、こんなタイプが会社にいたら部下はたまったものではありません。 ジコチュ

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