ベッドルームで群論を―数学的思考の愉しみ方 [著]ブライアン・ヘイズ[掲載]2010年10月17日[評者]高村薫(作家)■暮らしの中の数学、夜ながの友に 日常生活から宇宙まで、数に変換できるものは何でも変換して数え上げ、アルゴリズムを探し、ランダムなものさえ操り、利用する。人間は古来そういう生きものらしいが、科学雑誌の編集者である著者も、見事にそんな日常生活を送っている。 たとえば眠れぬ夜に、著者を含めた欧米人は、ベッドのマットレスの凹(へこ)みを均(なら)すために定期的にこれをひっくり返す方法をついつい考え始めるものらしいが、その人に群論の素養があれば〈マットレスを対象として、これを対称変換させる〉と考えるのはわけもないだろう。すると、長方形のマットレスの操作は(1)そのまま(2)長軸方向へ回転(3)短軸方向へ回転(4)水平に180度回転の4種類があるので、クライン4群と呼ばれる群が出来
捕食者なき世界 [著]ウィリアム・ソウルゼンバーグ[掲載]2010年10月17日[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)■生物多様性が崩壊していく理由 示唆に富む書である。未来が悲しくなる書でもある。むろんその大半の理由は、人類がつくりだした価値観や文明観そのものが問われる内容を含んでいるからである。 本書によれば、どのような空間にも生物の捕食と被食の関係があり、それが頂点捕食者のもとにピラミッドの関係をつくっているという。科学を一般にわかりやすく説明する文筆家の著者は、その関係をふたつの面から地球規模で追いかけている。ひとつは、それぞれの空間での頂点捕食者に人類が関(かか)わっていくためにその生態系バランスが崩れていること、もうひとつはこの検証のために、あらゆるタイプの生物学者(古生態学者や保全生物学者など)が参加し、そして同じような結論に達することが指摘されていることだ。まるで生物学者
場所と産霊(ムスビ)―近代日本思想史 [著]安藤礼二[掲載]2010年10月17日[評者]中島岳志(北海道大学准教授・南アジア地域研究、政治思想史)■独学の世界放浪者、交錯し思想が誕生 近代日本のオリジナルな思想とは何か。日本哲学は、いつどこで生まれたのか――。著者は、その光源を19世紀末から20世紀初頭のアメリカに見いだそうとする。 鍵になる人物は、スウェーデンボルグ。彼は18世紀ヨーロッパの神秘主義思想家として知られ、霊的体験をもとに数々の著作をあらわした。 彼の思想は、アメリカの思想・社会運動に大きな影響を及ぼす。エマソン、ジェイムズ兄弟、パース……。彼らはスウェーデンボルグの思想を基に、独自の宗教哲学を発展させた。 そんな人脈に憧(あこが)れ、アメリカに渡ったのが若き日の鈴木大拙だった。彼はエマソンに心酔し、ジェイムズやパースの近くで思索を重ねた。そして、日本に帰国して間もなくスウ
前の記事 Facebook携帯:『Windows Phone 7』の戦略 「無意識」の判断力:心理学実験 2010年10月15日 サイエンス・テクノロジー コメント: トラックバック (0) フィードサイエンス・テクノロジー Jonah Lehrer 画像はAlden Jewell/Flickr 熟練した専門家は、入手可能な情報を全てシステマチックに分析して判断を下している、わけではないらしい。例えばサッカー試合の予想をするとき、選手の統計データなどを詳しいエクセル表にしたり、プラス点とマイナス点を長いリストにして検討したりしているわけではなく、無意識をうまく活用しているようだ。――そうした研究が発表されている。 オランダの心理学者Ap Dijksterhuis氏が『Psychological Science』誌に発表した研究[2009年11月号]では、サッカーに詳しい人と疎い人を集め、両
進化的に保存された恐怖反応を制御する仕組みを解明 -脳の手綱核は、恐怖経験に基づく行動の選択に欠かせない- ポイント 情動に関係する神経回路の機能を分子生物学的手法で解析 ゼブラフィッシュを用い、恐怖反応制御における生物共通の神経回路を発見 心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神疾患における治療の手がかりに 要旨 独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、モデル動物ゼブラフィッシュ※1を用いて、脊椎動物に共通して保存されている「手綱核(たづなかく)」と呼ばれる脳部位が、過去の恐怖経験に基づく行動の選択に重要な役割を果たしていることを発見しました。脳科学総合研究センター(利根川進センター長)発生遺伝子制御研究チームの岡本仁チームリーダー、揚妻正和研究員と大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立遺伝学研究所、および大学共同利用機関法人自然科学研究機構生理学研究所との共同研究によ
外国語に母音を挿入して聞く「日本語耳」は生後14カ月から獲得 -日本人乳幼児とフランス人乳幼児の子音連続の知覚は発達で変わる- ポイント 生後14カ月でフランス人乳幼児は外国語の子音連続を弁別、日本人乳幼児は不可能に 「日本語耳」は、語彙や文字を学ぶよりずっと早くから発達 今後開始される小学校の英語教育への知見にも 要旨 独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、日本人は生後14カ月までに「abna」のような子音の連続が含まれる単語と「abuna」のような子音連続が含まれない単語の音を区別して聞き取れなくなっていることを発見しました。これは、理研脳科学総合研究センター(利根川進センター長)言語発達研究チームの馬塚れい子チームリーダー、イボンヌ・カオ(Yvonne Cao)テクニカルスタッフ、フランスの国立科学研究センター(CNRS)のE・デュプー教授(Emmanuel Dupoux)、
海外FX業者を利用する上で、ボーナスは絶対に欠かせません。口座を新規開設するだけでもらえる「口座開設ボーナス」、入金時にもらえる「入金ボーナス」、その他にもキャッシュバックなど、様々なボーナスがもらえます。 受け取ったボーナスはそのまま取引に使え、利益が出た時は出金することも可能です。お得はあっても損はないボーナスなので、海外FX業者を選ぶ際には必ず比較しておきたいところです。 そこでこの記事では、海外FXボーナス(口座開設ボーナス・入金ボーナスキャンペーン)全195社を徹底的に研究した上で、おすすめ完全比較ランキングにまとめました。日本人に人気のFX業者だけでなく、マイナーの海外FX業者や注意点なども詳しく解説していきます。 「海外FXボーナスが豪華な業者をすぐに知りたい」という方向けに、海外FXボーナス選びに役立つカオスマップを作成したのでこちらも併せて参考にしてください。 「どのFX
海外FX業者を利用する上で、ボーナスは絶対に欠かせません。口座を新規開設するだけでもらえる「口座開設ボーナス」、入金時にもらえる「入金ボーナス」、その他にもキャッシュバックなど、様々なボーナスがもらえます。 受け取ったボーナスはそのまま取引に使え、利益が出た時は出金することも可能です。お得はあっても損はないボーナスなので、海外FX業者を選ぶ際には必ず比較しておきたいところです。 そこでこの記事では、海外FXボーナス(口座開設ボーナス・入金ボーナスキャンペーン)全195社を徹底的に研究した上で、おすすめ完全比較ランキングにまとめました。日本人に人気のFX業者だけでなく、マイナーの海外FX業者や注意点なども詳しく解説していきます。 「海外FXボーナスが豪華な業者をすぐに知りたい」という方向けに、海外FXボーナス選びに役立つカオスマップを作成したのでこちらも併せて参考にしてください。 「どのFX
海外FX業者を利用する上で、ボーナスは絶対に欠かせません。口座を新規開設するだけでもらえる「口座開設ボーナス」、入金時にもらえる「入金ボーナス」、その他にもキャッシュバックなど、様々なボーナスがもらえます。 受け取ったボーナスはそのまま取引に使え、利益が出た時は出金することも可能です。お得はあっても損はないボーナスなので、海外FX業者を選ぶ際には必ず比較しておきたいところです。 そこでこの記事では、海外FXボーナス(口座開設ボーナス・入金ボーナスキャンペーン)全195社を徹底的に研究した上で、おすすめ完全比較ランキングにまとめました。日本人に人気のFX業者だけでなく、マイナーの海外FX業者や注意点なども詳しく解説していきます。 「海外FXボーナスが豪華な業者をすぐに知りたい」という方向けに、海外FXボーナス選びに役立つカオスマップを作成したのでこちらも併せて参考にしてください。 「どのFX
理化学研究所(理研)とフランス国立科学研究センター(CNRS)の共同研究チームは10月12日、日本人は生後14カ月までに「abna」のような子音の連続が含まれる単語と「abuna」のような子音連続が含まれない単語の音を区別して聞き取れなくなっていることを発見したことを明らかにした。 日本人は、外国語の音の聞き分けが苦手といわれているが、その理由は個別の母音や子音の聞き分けができないだけでなく、音の組み合わせや強勢、韻律などのさまざまな要素がかかわっている。これまでの研究により、母語に含まれない母音や子音の弁別がどのように発達していくのかが徐々に明らかになってきており、乳幼児は、生後間もなくから、自分の母語にない外国語の音も聞き分けられるが、生後12カ月ごろまでにだんだんと聞き分けられなくなっていくことが知られている。しかし、音の並びの規則がどのように獲得されていくのかについては、よく分かっ
ロシア・カフカス地方、キスロボツク(Kislovodsk)の南にある山岳地帯の遺跡発掘現場(2009年10月撮影)。(c)AFP/ANDREY BELINSKY 【10月12日 AFP】これまで知られていなかった青銅器時代の新たな文明の遺跡が、40年前に撮影された空撮写真をもとに、ロシア・カフカス山脈地帯で発見された。発見した研究者らが11日、明らかにした。 ロシアとドイツの共同調査チームが、5年間にわたってロシアの北カフカス地方で遺跡の調査を行っていた。 調査チーム主任のアンドレイ・ベリンスキー(Andrei Belinsky)氏は、AFPの取材に「キスロボツク(Kislovodsk)の南の山岳地帯の高地で、紀元前16~14世紀ごろの文明を発見した」と語った。 見つかった遺跡は西がクバン(Kuban)川、東がナリチク(Nalchik)市のおよそ100キロの範囲に点在し、約200か所の遺跡
長崎市の樺島の古井戸にすむオオウナギ「うな太郎」の身体測定が15日、行われ、1年ぶりに元気な姿を見せた。 古井戸は1923年、オオウナギの生息地として国の天然記念物に指定された。現在のうな太郎は8代目。30歳前後で、人間に例えると50歳代とみられる。 市職員ら3人が網を使って引き上げ、おけに移すと、見物に来た幼稚園児や住民らから「ふとかねぇ」などと歓声が上がった。 測定の結果は、体長1メートル79、胴回り45センチ、体重12・6キロ。昨年と比べ、体長は5センチ伸びたものの、体重は2・1キロ減り、胴回りも2・2センチ縮んだ。約65年間、世話をしている幕亀太郎さん(86)は「思ったより元気そうでホッとした」と話した。
しぶしぶたたかうかんごふさん。新人の頃働いていたリハビリテーション病院に交通事故で脊髄を損傷し、下肢機能全廃の二十歳そこそこの男の子が入院してきた。 事故から間がないにもかかわらず、妙にさばさばとした明るい男の子で、入院時の機能測定をしたPTが「まだ機能回復が望めると思っているのかもしれませんね」と言っていたが、本人は「もうこれ以上よくなることはないと知っている」と、やはり元気にわたし達のアナムネに答えていた。わたし達はその明るさになんだか違和感を感じていたのだが、彼はまったく泣き言も言わずリハビリにも熱心で、自室でのトレーニングも欠かさず、他の患者とも仲良くやっていける、本当に「いい患者」だった。まだ若いし、これからの自立した生活に必要な準備を万端整えてから退院かと思っていたら 「必要最小限のことでいいんです」 と言って、自己導尿(脊髄損傷の度合いが高いと自力での排尿コントロールが難しく
この記事を書いた時点では『hatebte』の存在を詳しくは知らなかった。 この記事がいろんな方に読んでもらえたおかげで『hatebte』というサービスがあることを知ることができた。 教えてくれた @jun1log さんありがとうございました。 そしてこの記事の内容と『hatebte』を組み合わせるとYahoo! Pipesを使用しなくても良い。 教えてくれた @jun1log さんは、はてブした記事のEvernote保存はhatebteで行い、InstapaperなどこのようなwebサービスがないものをEvernoteに保存する場合にYahoo! Pipesでタイトル成形を行っているとのこと。 hatebteを使用してみて、ちょうど自分で設定した1アクションで5アクションのEvernote保存と、hatebteのサービスを用いたEvernote保存を重複して使用したのでちょっとだけ検証して
大阪市内の府立高校の女性教諭(52)が作ったゴキブリ駆除用のホウ酸団子を女子生徒が誤食した問題で、教諭は生徒がかじったことを知りながら他教諭から助言されるまで対応を放置していたことがわかった。 府教委は18日、教諭と、府教委に事実と異なる報告をしていた校長(60)計2人を戒告の懲戒処分にした。 教諭は同日、府教育センターでの研修命令を受け、改善が見られるまで学校に復帰できないという。 府教委の発表によると、教諭は9月21日朝、自宅で作ったホウ酸団子を職員室でまいていた際、訪ねてきた生徒に「特製クッキーよ」と言いながら1個手渡した。かじった生徒ははき出して自ら水道で口をすすいだが、教諭は教室に戻るよう指示。25分後に別の教諭から「保健室に行った方がいい」と助言を受けるまで放置していたという。生徒はその後、病院に救急搬送された。 府教委の調査に、教諭は「毒性のあるものという認識がなかった。深く
ラスキンに冠せられる呼称は、美術批評家、地質学者、経済学者、社会思想家等々、多岐にわたる。いわば一九世紀を生きたルネサンス的「万能人」である。プルーストは、彼の死に際して「ラスキンはヨーロッパの趣味についての師であり、美の先導者だった」と評した。 本書は、イギリス人ながら終生シャモニーの地を愛し、アルプスの山々の美を発見した登山家としての側面に光を当てた評伝である。タイトルは「山は地の大聖堂である」というラスキンの言葉に由来し、自筆の山岳デッサンが目の保養になる。 14歳のとき両親と共にヨーロッパ大陸を旅行し、シャモニーで「モンブランの針のような峰々」に心を奪われて以来、ラスキンは山岳風景の美の虜となる。それを増幅させたのは、ターナーの風景画へのさん仰(さんぎょう)の念であった。やがて彼は『近代画家論』第一巻を、批判を浴びていたターナーの画業の擁護に捧(ささ)げる。「もし誰かがターナーを理
序に「この書物は原型的イメージを探索した記録」であり、「分類学的な博物誌と系統学的自然史のあわいを揺れ動きながら、原型的イメージを図鑑のように編み、それが変容してゆく過程を歴史のなかにたどった」ものだとある。ちょっぴり重々しいが、5部27章からなるこのイメージの百科図鑑を読み終われば、芳醇(ほうじゅん)な香りに満ちたイメージの生命のうつろいを縦横多彩に描出した卓抜な本書からさらなるイメージを掻(か)き立てられるに違いない。 「進化のイメージ」を論じた章の一つに思わず引き込まれるヒトの「おもかげ」をめぐる考察がある。19世紀の動物学者エルンスト・ヘッケルの『人類の発生』から郷津晴彦の彫刻「泰治君の夢」にまで至るイメージの変容を論じたものだ。 ヘッケルの本の冒頭に掲げられたヒト、コウモリ、ヒツジ、ネコの顔の発達史を示す図をみると、それぞれの顔つきは全く違うにもかかわらず、生物の発生段階での胚(
史実だと信じていたことが、実はそうではなかった、と知ったときの衝撃。本書はノンフィクションだが、推理小説のように面白い。 電話を発明したのはグラハム・ベル、ということは多くの人が知っている。1876年3月10日、ベルは実験中の液体送信器によって、10メートルほど離れた場所にいた助手に導線を通して自分の声を伝えることに成功した。“電話による会話”が達成された瞬間として、約130年間語り継がれてきた有名な話である。 誰も疑うことがなかったこの“史実”を著者が調べ始めたのは、ベルの実験ノートに12日間の空白を発見したのが発端だった。その空白の後に起こった突然の成功。どうも腑(ふ)に落ちない。実は、電話に関する発明特許権保護願いを申請していたイライシャ・グレイという電気技師が存在し、ベルは急いで同様の特許を出願していた。それが法廷で争われ、従来はベルのほうが二、三時間早かったとされてきた。著者はそ
大川周明―イスラームと天皇のはざまで [著]臼杵陽[掲載]2010年10月10日[評者]中島岳志(北海道大学准教授・南アジア地域研究、政治思想史)■政教一致に大乗アジアの未来仮託 かつて竹内好は、講演の中で次のように述べたことがある。「イスラムによる世界征服というビジョンが大川にはあるような気がします」 近代日本を代表するアジア主義者として活躍した大川周明。彼はイスラームが政治と宗教の一体化を実現し、文化圏を超えて世界に拡張する姿に「世界統一」の夢と方法を見たのではないか――。それが竹内の指摘だ。 本書は大川周明のイスラーム観の変遷を綿密に辿(たど)りながら、彼の思想構造を明らかにする。 若き日の大川は、イスラームの中でも内面的・精神的・霊的な側面を重視するスーフィズムに強い関心を示し、「神秘的マホメット教」と呼んだ。しかし、その姿勢は、現実政治へのコミットという「転回」によって変化してい
沈黙の時代に書くということ―ポスト9・11を生きる作家の選択 [著]サラ・パレツキー[掲載]2010年10月10日[評者]鴻巣友季子(翻訳家)■「強いが等身大」ヒロインの背景 サラ・パレツキーといえば、日本では1980年代半ばから、しゃれた邦題に、江口寿史のクールな装幀(そうてい)画で刊行された、女探偵V・I・ウォーショースキーのシリーズで名高い。初めて「生活感」をもった女探偵の登場だった。同シリーズでは、格好いいヒロインもスーパーに行き、失恋をし、親子関係に悩む。こうした「強いけど等身大」のヒロインものが相前後して続々と翻訳され、4fミステリーなる名称も生まれた。作者、主人公、翻訳者、読者がみんな女性(female)という意味だ。とはいえ、パレツキーの作品は実は骨太。本人も人種・性差別に断固反対し、9・11テロ以降の管理社会に抗する社会運動家の一面をもつ。そんな作者が初めて、出自や作品の
古代ローマ人の24時間―よみがえる帝都ローマの民衆生活 [著]アルベルト・アンジェラ[掲載]2010年10月10日[評者]柄谷行人(評論家)■一日を再現、積年の疑問解けた 本書は、古代ローマ最盛期の社会を、一人の人物(語り手)の一日の経験として描くものだ。もちろん、フィクションであるが、細部に関しては最新の史料にもとづいている。私は古代ローマの政治や経済について多少勉強したが、具体的な姿はわからなかった。せいぜい小説や映画から得たイメージしかない。また、それに関して疑問に思っていたことがたくさんある。たとえば、なぜ彼らはいつも公衆浴場にいるのか、誰が奴隷かどうしてわかるのか、というような。 ローマは最盛期に人口150万人といわれるが、狭い土地にどうしてそんなに人が住めたのか? 高層の集合住宅が林立したのである。そのために投機的で悪質な開発業者が横行した。家賃が払えないと野宿者になる。その意
大統領オバマは、こうしてつくられた [著]ジョン・ハイルマン、マーク・ハルペリン[掲載]2010年10月10日[評者]久保文明(東京大学教授・アメリカ政治)■米大統領選を巡る、知られざるドラマ 2008年のアメリカ大統領選挙は民主党内でオバマとヒラリー・クリントンが接戦を演じ、最終的には初の黒人大統領が誕生するという歴史的かつ劇的な選挙であった。本書の原題は“Game Change”。競技のルール・環境・優劣関係を根本的に変えてしまうものをゲーム・チェンジャーという。アイオワ州党員集会、金融危機などはまさにそのようなものであった。同年の選挙はまさにゲーム・チェンジャーに溢(あふ)れた選挙であった。本書は2人の傑出した政治ジャーナリストが多数のインタビューに依拠して、候補者とその配偶者の肉声と人間関係のドラマを再現したものである。 08年選挙をそれなりに詳しく見てきたつもりでいる者にとっても
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く