軍艦旗や大砲の間を縫って「占領」の文字が躍る絣(かすり)、満州建国を伝える新聞記事を染めた羽織の裏地−−。戦争をモチーフにした柄の着物を収集・研究して12年。コレクションは500枚を数えた。「これだけの枚数を集めた人も、研究しているのも相当珍しいでしょう」と苦笑いする。 民族芸術研究のため古い布を探していて、ネットオークションで一枚の着物が目に留まった。日の丸を振る唐子(からこ)人形を御所人形が見下ろす図柄。「母の愛情を感じさせる可愛らしい着物」と説明されていたが、明らかに題材は日中戦争。平和な場面と解釈され、それが子どもの着物であることに衝撃を受け、探し続けた。日清、日露、東郷元帥……次々見つかった。「これだけの史料を放ってはおけない」。私財をつぎ込み、落札した。 軍事研究家の助言を受け一枚一枚読み解いた。集めた戦争柄の着物は1895〜1942年に作られ、国策や戦争宣伝と直接には無縁に流