匂いというものは、何も鼻だけで嗅ぎ分けるものではない。目や肌などのすべてで〝感じ取る〟ものだ。 初めのうちはまったくわからなくても、感覚を研ぎ澄ませていけばおのずと匂いというものを感知できるようになる。 そしてヴァイクは今まさに、翼人の匂いを嗅ぎつけていた。 ――やはり、この帝都の周りにも翼人はいたか。 予想していたことではあったが、驚きを禁じ得ないことでもあった。 帝都といえば、人間の世界における中心だ。翼人からすれば、そこを敬遠することこそあれ、みずから好んで近づくことなどないはずだった。 だが、確実に同族の気配がある。具体的にどこに、というのはまだわからないが、あの特有の雰囲気が帝都周辺の森に流れていた。 ヴァイクは、その上空をゆっくりと飛んでいた。 やや運任せのやり方ではあるが、こうしていればいつか見つけられるかもしれないし、逆に相手がこちらを見つけて襲いかかってくるかもしれない。
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