雨が上がりはじめた。 しかし、未だ空には雲が厚くたれ込め、そろそろ中天に差しかかっているはずの太陽を完全に遮っている。その黒い靄は、あたかも怨霊の群でもあるかのように不気味で重い。 それを恨めしげに見上げたあと、フェリクスはすぐさま視線をそらした。 ――今の空は見たくなかった。 あそこには、悪意が飛んでいる。そう、自分の放った最大の悪意が。 飛行艇オリオーンを使う決断を下したのは、他ならぬ自分であった。 現在の情勢、翼人への対応、そして今後の帝国のことを思えば、戦いの趨勢を決することができる兵器を投入することは当然のことではあった。 しかし、それと同時に、あれを使えば無実の人々にまで被害を及ぼすこともわかりすぎるほどにわかっていた。 それにもかかわらず、あえてその使用を断行した。 たとえどんな言い訳をしようと、その大罪を免れ得るようなことではない。犠牲を承知のうえでしでかしたことは、いつか