隣が戦場となった森の中は陰鬱で、木漏れ日と呼ぶのもおこがましい弱々しい光しか入ってこない。 それでも、そんなところを全力で進むしかなかった。 真相を少しでも明らかにするために。 風を切るように疾駆する馬の上で、いつもよりも念入りに鎧を着込んだユーグは、ずっとひとつのことを考えていた。 ――なぜ、ロラント卿が裏切った。 理由がわからない。他の誰よりも忠誠心の高い騎士だったはず。 それがどうして? 推測しても答えは出そうにない。それくらい、本来ならば〝有り得ない〟はずのことだった。 ――会ってみればわかるか。 やや薄暗い森の中で突然変化があったのは、さらに速度を速めようとしたときのことだった。 前方に見慣れた影があった。 「ユーグ様、お待ちください」 「ティーロか」 急ぎ手綱を引き、止まった。 やや小柄で若さを顔立ちに残しながらも、その所作から十分に鍛えられていることがわかる従士。 〝表〟だけ