――やっと、打てる手は打てたかな。 まだ落ち着けるような状況ではないことは、重々承知していた。だが、ようやく必要な指示は一通り出し終え、戦況を見守る余裕が生じていた。 いつもの自室、しかし常とは違う異常な町の様子に、アーデは顔をしかめるほかなかった。 「ナータン、レベッカは?」 「まだ戻ってきてない。ヴァイクの居場所もわからないよ」 「そっか……」 「大丈夫だって、アーデ。俺たちがいれば」 「わかってる、レーオ」 ゼークの指示で城の塔に戻っていた蒼い翼の戦士に、アーデはひとつうなずいた。 しかし、思うように進まない現状に気が気ではない。町中(まちなか)の戦闘に沈静化の気配はまるでなく、むしろ戦域は郊外へ向かって拡大しているようにも見える。 すぐに戦況が変わるはずもないのだが、今のところ見ていることしかできない現実に苛立ちを隠せなかった。 だが、状況の変化は突如として訪れるものだ。 「え、何