プロレスに、理屈なし。 丸井乙生=文 text by Itsuki Marui 島崎忠彦=写真 photograph by Tadahiko Shimazaki 2005年10月12日 プロレス界はこれまで、治外法権の世界だった。宿敵に「ブッ殺してやる」と言われ、「脅されたんです」と警察に駆け込むレスラーは皆無だ。試合を前に対戦相手と舌戦を繰り広げたら、観衆の前で恥部を暴露されてしまい、「名誉を毀損されました」と弁護士に相談に行く者もいない。試合後に選手が敵方の若手を連れ去る場合も多々あるが、「後輩がさらわれたんです」と110番するアホウは聞いたことがなかった。 脅迫、名誉毀損、未成年略取も罪として成立しないのは、リング上での事はすべてリング上での戦いで解決するというプロレスの流儀があるからだ。言ってみれば、全ては果たし合いで決着をつける武士のような世界。ちと褒めすぎだ。とに